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眞鍋博士 ノーベル物理学賞受賞 [2021年10月07日(Thu)]
10月5日、スウェーデン王立科学アカデミーが今年のノーベル物理学賞を真鍋淑郎博士に授与すると発表した。

眞鍋博士は、大気の流れと海洋の循環のデータを組み合わせ、長期的な気候の変化をシミュレーションする「大気・海洋結合モデル」を開発し、これを用いて地球温暖化を予測したことで知られている。今回の受賞は、これらの研究成果が評価されたものである。

実は、真鍋博士の受賞がテレビで報じられたのを見ていて、アッと思った。

というのは、4年前に眞鍋博士の特別講演会「地球温暖化と海洋」が海洋政策研究所主催で開催され、眞鍋さんの講演を聞いたことを思い出したからである。

2017年10月31日、米国在住の真鍋博士の来日の機会を捉えて、この特別講演会は虎ノ門の笹川平和財団国際会議場で開催された。

先ず、真鍋さんが「Role of Ocean in Global Warming」(地球温暖化における海洋の役割) というタイトルの下で真鍋さんが最も力を注いでおられる地球温暖化と海洋の関係に焦点を当てて講演を行った。

真鍋さんは「私が面白いと感じたほとんどの研究は、好奇心から始まっている」とノーベル賞受賞の記者会見で強調したと読売新聞が報じていたが、そのことはその時の真鍋さんの講演にも現れていた。

例えば、講演の中で、真鍋さんは、海について話を始めるときには‛海洋は面白い’と先ず朗らかに宣言し、また、水循環について話を始めるときにも‛水循環は面白い’切り出して話を進めた。

その楽しそうなお顔を見ているとこちらの気持ちが話の中に素直に入っていく。
「大気・海洋結合モデル」と最初に聞いたときは文系の私には難しくてわかるかなと思ったが、真鍋さんの話を聞いているとなんとなくわかったような気になったから不思議である。

講演の後は休憩をはさんで「海の未来に向けた特別対談:真鍋淑郎×山形俊男」が行われた。

真鍋博士と対談した山形俊男博士は、東京大学名誉教授、海洋政策研究所特別研究員、海洋研究開発機構特任上席研究員。エルニーニョ現象の発生機構の解明やインド洋のダイポールモード現象の発見、予測など、海洋と気象の研究において世界的に著名である。この眞鍋さんの特別講演会の開催にも尽力した。

対談では、その山形さんが相手となってお二人の間でにこやかに穏やかに地球温暖化と海洋の未来についての会話が展開した。

今思い返してみても滅多に聞くことのできないなかなか良い講演会だった。

この時の特別講演会については、私の海洋政策ブログ「真鍋淑郎博士・特別講演会「地球温暖化と海洋」に参加」(2017.10.31)でも取り上げたので、関心のある方はどうぞ覗いてみてください。
https://blog.canpan.info/terashima/archive/1539

真鍋淑郎博士、このたびのノーベル物理学賞受賞、誠におめでとうございます。
どうぞ好奇心をますます発揮され、地球温暖化と海の未来についての研究の発展のために貢献してください。
Posted by 寺島紘士 at 18:43
「国連海洋科学の10年」が動き出した [2021年05月05日(Wed)]
今日は5月5日「こどもの日」、そして陽気が増し夏の気配を感じる二十四節季の「立夏」が今日から始まる。そして、美しい新緑が日々その色を濃くしていき、青葉若葉を揺らす風がその香りを運ぶことから「薫風」「風薫る」が季語になっている。

しかし、今日は朝から南風が窓がガタガタと音を立てるほど強く吹いて、ちょっと騒がしい「立夏」である。今年はどうも季節の進行が暦より速いようだ。

さて、今年はこれまで、肺がんを患っていた家内の看護、その永眠、人生の伴侶に先立たれた衝撃の中での葬儀とその後の整理などに追われているうちに時が過ぎ、気がつけばもう5月である。

この間にも内外で海洋政策に関する会議や打ち合わせは進行しており、あちこちからメールやネットを通じてそれに関するお知らせや連絡を頂いていたが、上述したような状況下では、なかなか対応が出来なかった。

そんな中で4月下旬には、UN Decade of Ocean Science(国連海洋科学の10年)から届いた「Save the Date: Creating the Ocean We Want - High Level Event - 1 June」というお知らせには心惹かれたのでみなさんにも紹介したい。

これは、ドイツ連邦の教育研究省がUNESCO-IOCと組んでベルリンで開催するバーチャル形式の「国連持続可能な開発のための海洋科学の10年 ハイレベル出発式 High-Level Launch of the United Nations Decade of Ocean Science for Sustainable Development」(6月1日午前11時〜午後3時(CEST))のお知らせで、国連海洋科学の10年のスタートを祝う国際的共同行事に参加して“Creating the Ocean We Want”に貢献しようと呼びかけている。

そして、さらに具体的に
政府・ビジネスリーダー、博愛活動家、科学者、国連機関のリーダー、そして地球上の海洋関係アクターに仲間入りして、感動的なトークに耳を傾け、健康な海洋の再構築と保護のためのわれわれの10年計画の最初のステップを目の当たりに見て、これからの海洋科学の10年の活動をもっと学ぼうではないか、と語りかけていてなかなか魅力的である。

このイベントに関心のある方は、どうぞ下記ウェブでさらに詳しい情報をご覧ください。
www.oceandecade-conference.com

Posted by 寺島紘士 at 23:52
SIP2「革新的深海資源調査技術」第2回ピアレビュー会議 [2020年11月16日(Mon)]
先週、海洋研究開発機構が管理法人を務めるSIP「革新的深海資源調査技術」の2020年度第2回ピアレビュー会議が開催されたので、出席して座長を務めた。

SIP「革新的深海資源調査技術」は、内閣府が推進している「戦略的イノベーション創造プログラム第二期(SIP2)」のプロジェクトのひとつである(本ブログ2019年2月7日等参照)

SIP第2期の「革新的深海資源調査技術」は、SIP第1期「次世代海洋資源調査技術」における水深2,000m以浅の海底熱水鉱床を主な対象とした研究成果を活用し、我が国のEEZの94%を占める水深6,000ⅿ以浅の海域での深海資源調査技術、回収技術を世界に先駆けて確立・実証するとともに社会実装の明確な見通しを得ることを目指して2018年からスタートしている。

SIP第2期開始から3年目となる今年は、得られた成果及び社会実装に向けた体制構築に焦点を当てて中間評価を行うことになっているので、ピアレビュー会議でもその進捗状況をしっかりと把握してきちんと評価をしていかなければならない、と思いつつ久しぶりに日比谷の富国生命ビルまで出かけた。

コロナ禍の最中なので、この会議はオンライン参加を併用して行われ、委員の半数はオンラインで参加した。

会議は、最初に、内閣府から令和2年度課題評価の進め方について、そして管理法人からピアレビューのスケジュールについて、それぞれ説明があって始まった。

続いて「革新的深海資源調査技術」課題目標達成状況についての審議に入り、先ず石井プログラムディレクター(PD)がプロジェクト全体の進捗状況を総括的に説明し、プロジェクトが順調に進捗していることを明らかにした。

続いて本プロジェクトを構成する次の4つのテーマについて各テーマリーダー(TL)がそれぞれのテーマの目標と2020年度の達成度について説明した。

テーマ1:レアアース泥を含む海洋鉱物資源の賦存量の調査・分析 
テーマ2-1:深海資源調査技術の開発 
テーマ2‐2:深海資源生産技術の開発
テーマ3:深海資源調査・開発システムの実証

テーマ1では、南鳥島海域のレアアース泥概略資源量評価や賦存量の三次元マッピングの取り組みが計画通り実施されてきているとのこと。

テーマ2-1では、深海資源の調査効率を向上させるため、水深6,000mまでの海域の調査ができる世界最先端調査システムの開発を目指して、AUV複数機運用技術開発(音響通信・測位システム、隊列制御技術)、深海底ターミナル技術開発が計画通り実施され、AUVの大深度化運用技術開発も6,000m級AUVが年度内には完成の見込みとのこと。

テーマ2‐2では、水深6,000mからのレアアース泥回収技術の確立、及び産業化を検討するに値する検証データ・指標の提供を目指して、深海資源生産技術の開発(基本設計、レアアースの性状把握、解泥機の開発・解泥等大規模試験、採泥器の開発、揚泥システムの開発・楊泥管の製作)が概ね計画に沿って進んでいるとのこと。

テーマ3では、深海資源の産業化モデルの構築、民間参画の下でシステム実証、産業化に向けた課題の整理・具体的な解決策の提示、及び環境対策(環境モニタリング・環境影響評価・環境負荷軽減対策)を目標に、産業化モデル構築のための事業環境などの動向調査、対象海域の環境影響評価、環境影響評価手法の国際標準化及び人材育成、産業化モデル構築のための事業化検討、システム実証(テーマ間連携)が、コロナ禍の影響により一部に遅延はあるが、概ね計画通り実施されているとのこと。なお、2022年度にはレアアース泥回収に向けて水深3,000mでの海域統合試験が計画されているとのこと。

聞いていて、SIP「革新的深海資源調査技術」が3年目を迎えて、その研究開発が本格的に進んできていることを実感した。そしてこの調査技術が、深海の資源調査開発にとって重要なことはもちろんであるが、それだけでなく、それ以外の分野(洋上風力発電、海底ケーブル等の調査、検査)にも貢献する重要な調査技術となることを確信した。

また、テーマ3の環境影響評価の中で行われている「江戸っ子365」による南鳥島海域の深海における長期環境ベースライン調査は、世界初のものである。この「江戸っ子」による2018−2019年の映像観測結果はISO(国際標準化機構)により早ければ2021年には国際標準化される見込みという。
わが国が開発した海洋環境影響評価の手法が国際標準化されることは、今回開発する「革新的深海資源調査技術」が内外で普及して有効に活用されるためにも重要であることは論を待たない。その効果を期待したい。

さらにテーマ3では、本プロジェクトで開発され国際標準化を目指す海洋環境評価技術を用いた技術研修を太平洋島嶼国に対して実施することにより国際協力体制の構築を図ることにも取り組んでいる。これまでに延べ7カ国17名の環境技術研修を行い人的ネットワークを構築するとともに、日・フィジー官民合同セッションに参加、フィジー国土鉱物資源省等との意見交換を行っている。さらにISA(国際海底機構)総会でのサイドイベントの開催等も検討しているとのことで、これらを通じた海洋環境技術の海外への事業化展開に積極的に取り組んでいることが強く印象に残った。

4つのテーマについての各テーマリーダー(TL)の説明の後でそれぞれ質疑応答が行われたが、TLの説明は内容が濃く、また委員からは質問が次々と出されたので時間がどんどん過ぎていき、予定の時間を大幅にオーバーしてしまった。そこで最後のピアレビュー・総合討論は、今回がピアレビューの実質的第1回の会議で12月に次回が開催されるということもあって、質問、意見を簡潔にお願いして、何とか正午という予定終了時刻を30分オーバーにとどめて会議は終了した。

ピアレビュー会議出席者の皆さんどうもお疲れ様でした。
Posted by 寺島紘士 at 01:03
第3回海中海底工学フォーラム・ZERO(Web会議)参加 [2020年04月26日(Sun)]
季節は春たけなわであるが、社会は今、新型コロナウィルスの感染拡大という緊急事態のただなかにある。新型コロナウィルスは本人も気づかない発症前から強い感染力を持っているというから、感染拡大を防ぐためには一人一人が他人との接触を最小限にして毎日を過ごすことを求められている。

そんな状況なので海洋に関する会議、シンポジュウム等もほとんどが中止、延期となってきたが、最近ではWeb を利用して会議、シンポジュウム等が、開催されるようになってきた。

4月24日(金)に開催された第3回海中海底工学フォーラム・ZEROも、当初は東京大学生産技術研究所で開催される予定だったが、三密を避けて、Web会議形式で開催された。
(海中海底工学フォーラム・ZEROについては、本ブログ2019年4月20日も参照)

私にとってコロナウィルス騒ぎが起きてからのWebを用いた会議等への参加は、これが2回目である。Web会議のテクニカルな面には弱い私であるが、事務局の杉松さんから送られてきた参加手順に従って手続きをして、無事Web会議に参加することができた。

最初に、東京大学大気海洋研究所の道田豊教授が挨拶し、その後、次の4人の発表があった。(敬称略)
・「海を越えた最初の日本列島人 〜実験航海で探る3万年前の挑戦〜」
国立科学博物館・「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」代表 海部 陽介
・「海洋科学とヨットレースのコラボレーション‐Sailing towards a plastic Ocean」
 海洋研究開発機構 千葉 早苗
・「新造大型測量船「平洋」が就航」
 海上保安庁海洋情報部 木下 裕巳
・「海底では時間がゆっくり進む? 光格子時計とその測地応用の展望」
 東京大学理学部 田中 愛幸

プログラムを見たときから楽しみにしていた新造大型測量船「平洋」については、木下さんが測量船の構造や搭載している観測機器について映像を示しながら説明するのを聞いて大いに満足した。
他の方々の発表もそれぞれ海洋を工学の視点から考察する学会らしい発表で参考になった。

休憩をはさんで開始された後半は、まず、次の3人の発表があった。(敬称略)

・「事前に捕獲対象を設定しない生物捕獲用自律型海中ロボットに関する研究」
 九州工業大学 西田 祐也
・「海底調査の強力な味方Speedy Sea Scanner”」
 ウィンディネットワーク 坂本 真吾
・「フィールドロボットの社会実装を目指して‐福島ロボットテストフィールド」
 福島ロボットテストフィールド 前田 慶信

前半最後の田中さんの発表辺りから内容が専門的になってきて法文系の頭でついて行くのがきつくなってきたが、大きな会場で聞く発表と違ってパソコンの画面を見ながら発表を聞いていると内容がかなり直接的に伝わってきて、そういう研究が進められていること、そしてその研究の社会的意義などについて理解が進んだ。

最後に特別セッションとして、「肌で感じた海外の動向」があって、これが期待していた以上に面白かった。

・まず、司会の東京大学生産技術研究所の巻俊 宏氏からイントロとして、このセッションでは、海外の研究所に滞在した経験のある若手研究者が、自らの海外の経験とそこで関わった研究課題の動向及び研究環境、さらに教育のあり方や生活スタイルについて発表し、意見交換を行って日本の海の研究のあり方を問う、というこの特別セッションの趣旨説明があった。

続いて、次の4人が自らの海外研究経験に基づく発表を行った。(敬称略)
・その1 海洋音響技術を介して仏英の研究動向を探る
 水野 勝紀 東京大学新領域創成科学研究科
(フランス国立科学研究センター(CNCS)、英国サウサンプトン大学国立海洋センター(NOCS)で国際共同研究実施)
・その2 デルフト工科大学長期派遣報告
 海老原 格 筑波大学
(デルフト工科大学で滞在研究実施)
・その3 業界を牽引するラボの研究スタイル:ブレーメン大学滞在とドイツ船航海経験から
 高木 悠花 東京大学大気海洋研究所
(ドイツのブレーメン大学海洋環境科学センターのラボ滞在、研究航海に乗船)
・その4 米国水路測量研究の拠点で体験した先進的な測深技術の開発動向
 住吉 昌直 海上保安庁海洋情報部
(米国ニューハンプシャー大学留学、The Nippon Foundation/ GEBCO Postgraduate Certification in Ocean Bathymetry 修了)

この特別セッションは、4人の発表者がそれぞれ海外の大学で経験した楽しかったこと、厳しかったこと、そこで得たもの等々、そしてそれらが現在の研究にどう活かされているかなどについて発表した。

正直に言って最初はあまり期待していなかったのに、発表を聞いていると、パソコンの画面を通じて発表者の思いや考えていることがかなりストレートに伝わってきて、若手・中堅?の研究者の熱い思いにどんどん引き込まれていった。

これは自分でも予想外だったが、後で考えてみて、これは大きな会場で行うフォーラムではなくて、発表者と参加者が直接パソコン画面を通じて向き合うWeb会議だからこそ得られる効果ではないかと思った。

いずれにしても、コロナウィルス禍でなるべく外出を自粛している私にとっては、いいWEBフォーラムに参加することができて満足である。
Posted by 寺島紘士 at 23:00
精製されたレアアースの色は真っ白! [2019年11月30日(Sat)]
11月25日に内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期の「革新的深海資源調査技術」2019年度報告会がイイノホールで開催され、参加した。

会場に着くとすでにかなりの人々が来ていて一旦着席したが、まだ開始まで時間があり、別室には展示があるというので、そちらに行ってみた。

展示場に入ると展示パネルが並んでいてそれらの前で人々が展示を見たり、話をしたりしている。なんとなくその展示の真ん中辺りに進んでいくと真っ白な粉が入った瓶が中央に展示されているのが目に入った。
191130精製されたレアアース濃縮物IMG_1840.JPG

近づいてみると、なんと、それは南鳥島近辺の海底から採掘されたレアアース泥から精製されたレアアース濃縮物だった。
191125レアアースIMG_1841.JPG

<左63%濃縮、右98%濃縮されたもの>

海底から採取されたレアアース泥のピストンコアの試料は前にも見たことがあり、そのうちの黒茶色の濃いところにレアアースが多く含まれていると聞いていたので、レアアースの色も何となくそれに近いかと思っていたので真っ白な物質がレアアースだと知って驚いた。

レアアース(希土)は、産出するところが限られていて、その名が示す通りなかなか手に入りにくい資源で、これまでもその主たる産出国中国の輸出制限などに振り回されたりしたので、遥か離れた太平洋上の南鳥島周辺の水面下数千メートルの深海底に眠るレアアースは相当前から注目され、その採掘について海洋政策上の課題としても議論し、国を挙げてその活用に取り組んできている。

しかし、その現物を実際に自分の眼で見るのは初めてである。これを実用化するのにはまだまだ時間を要するとは思うが、この白い実物を目の前にして、まだまだ先のことと思っていたレアアース採掘の取組がここまで進んできたことに一種の感慨を覚えた。このレアアースの姿を皆さんとも共有したい。

報告会では、先ず、石井正一プログラムディレクター(PD)が「革新的深海資源調査技術」2018年度から2019年の成果報告を行い、続いてテーマ1「レアアース泥を含む海洋鉱物資源の賦存量の調査分析」成果報告を荒井晃作テーマレーダー(TL)が、テーマ2-1「深海資源調査技術の開発」成果報告を大澤弘敬TLが、テーマ2-2「深海資源生産技術の開発」成果報告を川村義久TLが、テーマ3「深海資源調査・開発システムの実証」成果報告を松川良夫TLが行った。

調査・分析、技術開発から社会実装の実証まで毎年その成果が具体的に見えるようにプログラムを着実に実施していくのはなかなか大変だと思うが、石井PDのリードで皆さんが連携協力・協働して熱心に取り組んでいるのがこちらにも伝わってくるいい発表だった。

それに続いて、「パネルディスカッション〜グローバルな視点からみたレアアース開発の意義〜」が、角南篤氏(笹川平和財団海洋政策研究所長)がモデレーターとなって行われた。朝日弘氏(住友金属鉱山)、大東道郎氏(経済産業省)、山崎哲生氏(大阪府立大学)、河合展夫氏(次世代海洋資源調査技術研究組合)、東垣氏(海洋研究開発機構)の各氏がパネリストとなって参加者にグロ-バルな視点にたってレアアース開発の意義を考えさせるなかなかいいパネルディスカッションを行った。

中味の十分詰まったこの報告会の内容やパネルディスカッションのやり取りをここでこれ以上紹介するのは難しいが、SIPU革新的深海資源調査技術の進展についてはまた機会を見つけてこのブログでも取り上げたいと考えているので、どうぞお待ちください。

なお、SIPU革新的深海資源調査技術については、本ブログ2019年2月7日、3月20日でも取り上げているので、関心のある方はそちらも参照ください。
Posted by 寺島紘士 at 18:00
ICUS懇談会、「深層海洋大循環と気候変動」について [2019年04月17日(Wed)]
4月11日(木)、第7回ICUS懇談会が開催され、参加した。

ICUSは、「科学技術の統一に関する国際会議(International Conference on the Unity of the Sciences)の略称で、科学技術文明の未来と科学者の責任、科学の価値、諸科学の統一などをテーマに、政策提言を通じて諸問題の解決に寄与することを目指している世界のノーベル賞受賞者を含む科学者・専門家による政策研究懇談会であり、米国を中心としてこれまで25回にわたって開催されてきている。

ICUS懇談会は、それを受けて設けられた日本国内における科学者・専門家による政策研究懇談会(ICUS日本委員会・(一社)平和政策研究所主催)であり、政策提言を通じて諸問題の解決に寄与することを目指している。

第7回ICUS懇談会は、東京大学大学院理学系研究科教授の日比谷紀之氏が発題者となって、「深層海洋大循環と気候変動−未だ解明されていない深海の謎−」というテーマで行われた。

日比谷さんは、まず見慣れた深海をめぐる海流の大循環の模式図から話を始めて、海洋深層循環が停止した場合の気温変化、過去12万年の気温変化は深層海洋大循環のON-OFFと対応、深層循環の停止が海洋生物生産へ及ぼす影響、と話を進めた上で、大気における乱流混合が強風によって起こるのに対して深海における乱流混合は月による潮の満ち引き(潮汐)により起こるとして、問題の核心に話を進めた。そして、70枚ほどのスライドを用いて乱流混合の観測結果、研究でわかってきたことなどを説明した。

日比谷さんは、詳しい説明の後で研究から分かったことをまとめてくれたので、私のような文系の人間にもこの研究の重要性が理解できた。そのポイントは概略次の通り。

@深海の乱流は海表面からの熱を下方に伝える役目を果たす。深層水は、これによって暖められ、浮力を得て表層に上昇し、やがて元の深層水形成域である極域に戻っていく。これにより1500年で一周する深層海洋循環が形成される。
A深海乱流は、12時間周期の潮汐流と海嶺・海山との相互作用によって励起された24時間周期で1回転する平坦な円盤状の流れの周りに生じる。
Bこの24時間周期の円盤状の流れは、海底地形凹凸の激しい西太平洋で励起されるが、実際、深海乱流計を用いた観測から強い深海乱流は西太平洋の緯度30度より赤道側の海嶺・海山の近傍に限られることが示された。
Cこれらの乱流ホットスポットを全部足し合わせても、毎秒2千万トンと推察される深層水を表層に上昇させるには乱流の強さがまだ不足している。
Dまだ、どこかに強い深海乱流が発見されずに存在しているかもしれない。現在、このような乱流ホットスポットを見つけるため、投下式乱流計を用いて海面から海底直上までの深海乱流観測を行っている。

そして、日比谷さんは、将来は、こうして得られた乱流強度の情報を数値モデルに組み込むことによって、ミクロな情報からグローバルな深層海洋循環を解明していくと抱負を述べて、発表を締めくくった。

聞き終わって、これは地球を生存基盤とする我々人類にとって大変重要な科学研究だと思った。

そして、国連持続可能な開発のための海洋科学の10年が2021年からスタートする中で、このような研究をその取組みの重要テーマとして取り上げて、国際的にも国内でも積極的に研究を進める必要があるのではないかと思った。
Posted by 寺島紘士 at 23:19
革新的深海資源調査技術 報告会 [2019年03月20日(Wed)]
「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」第2期の「革新的深海資源調査技術」プログラムが2018年からスタートしたことは、本ブログ2月7日で紹介した。

その「革新的深海資源調査技術 報告会」(内閣府/国立研究開発法人海洋研究開発機構共催)が3月18日(月)に「〜深海に眠る「海の恵み」の探索と新たな可能性への挑戦〜」というタイトルを掲げて開催されたので紹介したい。

イイノホールで開催された報告会は、このテーマに関心を有する人々が約250名参加して盛況だった。参加者の大部分は産業界からとのこと、研究成果の社会実装に向けて民間企業の積極的参画が求められているところなので、これは喜ばしい。

内閣府の須藤亮政策参与の開会挨拶に続いて、石井プログラムディレクター(石油資源開発株式会社顧問)が「革新的深海資源調査技術」2018年度成果報告を「日本の未来は深海にある」という題名のビデオを用いて行った。なかなかいいタイトルなので共感した。

続いて、各テーマリーダーが成果報告を行った。
テーマ1:レアアース泥を含む海洋鉱物賦存量の調査・分析
成果報告 荒井晃作 テーマリーダー(産業技術総合研究所)
テーマ2-1:深海資源調査技術の開発
成果報告 大澤弘敬 テーマリーダー(海洋研究開発機構)
テーマ2-2:深海資源生産技術の開発
成果報告 川村善久 テーマリーダー(海洋研究開発機構)
テーマ3:深海資源調査・開発システムの実証
成果報告 松川良夫 テーマリーダー(伊藤忠商事株式会社)

聞いていて、テーマ1では「AUV-SBP(海底面高解像度調査)、2020年に採泥候補サイトを絞り込んで選定等」、
テーマ2-1では「複数AUV運用技術、深海底ターミナル、探査システム大深度化等」、
テーマ2-2では「放射性・有害物質フリーのレアアース生産、レアアース泥の解泥・採泥・揚泥の方針決定、SIPの技術目標‐揚泥量3500トン/日、2019年中に概念設計完成等」、
テーマ3では「出口戦略:海洋調査産業の事業化・深海資源開発の産業化モデル構築、環境対策:現状把握・調査開始、社会実装:技術移転・異分野への展開・早期の制度化等」
の言葉が頭に残った。

そのあと休憩をはさんで「パネルディスカッション〜深海に眠る「海の恵み」の探索と新たな可能性への挑戦に向けて〜」が行われた。

このパネルディスカッションの登壇者は次の通り。
<モデレーター>
寺島 紘士(公益社団法人笹川平和財団参与)
<パネリスト>
朝日 弘(住友金属鉱山株式会社 取締役常務執行役員・資源事業本部長)
湯浅 鉄二(川崎重工業株式会社 船舶海洋カンパニー フェロー)
河合 展夫(次世代海洋資源調査技術研究組合 理事長)
東 垣((JAMSTEC) 理事)

私は海洋研究開発機構の依頼を受けてパネルディスカッションのモデレーターを務めたが、これは先日このプログラムの管理法人におけるピアレビューの主査を務めたご縁からと思われる。

冒頭に、私から、
「海洋の管理」を目指す国連海洋法条約の発効(1994)、リオ地球サミットから持続可能な開発目標(SDGs)採択(2015)に至る海洋の総合的管理と持続可能な開発の取組みの進展、そして近年の科学技術の進歩を受けて、今ようやく深海が私たちの前に姿を現しつつある、
本日のパネルディスカッションでは、AUVによる深海の自在な探査・生産技術の開発、将来の産業化を目指したビジョンなど、特に深海資源をめぐる国内外の情勢を俯瞰しつつ、我が国の強みを生かし国際競争力を有する技術システムを確立することを目指し、我が国として重視すべき戦略と解決すべき課題について議論いただく、
とパネルの趣旨を紹介してディスカッションを始めた。

まず各パネリストが、論点になりそうな国外の技術動向や将来展望等について紹介した。
旭さんは、電気自動車の普及や新興国のインフラ整備需要が伸び続ける中で陸上の優良な鉱山の開発は既に進んでいて残るは高難度案件ばかりという資源事業を取り巻く環境の変化や鉱山へのデジタルテクノロジーの導入について紹介し、湯浅さんは、長い間潜水艦関連業務に携わってきた経験に基づいてAUVの将来性と川崎重工の取組みについて紹介し、SIP1のときからこのプログラムに関わってきた河合さんは、SIP1「次世代海洋資源調査技術」とSIP2「革新的深海資源調査技術」の関係について紹介し、本プログラムの副PDでもある東さんは、本プログラムの意義と課題にもふれつつオールジャパンでの深海の恵みの探索と可能性への挑戦について紹介した。

続いて、環境と開発の取組みへの企業の参画、産官学の連携、海洋産業の活性化等について各パネリストが意見を述べ、会場との質疑応答を行った。そのあと各パネリストがそれぞれまとめの発言をし、総合海洋政策本部参与会議の座長代理の高島正之参与にも会場から発言いただいた。

最後に、「革新的深海資源調査技術」が産業界の積極的な参画を得て海洋調査産業の事業化・深海資源開発の産業化モデル構築などが前進し、それにより世界第4番目に広大なわが国の海洋空間の開発利用・保全が進展して、「日本の未来を深海が開く」日が早く来ることに期待を表明してパネルディスカッションを終了した。

そのあと海洋研究開発機構の平朝彦理事長が閉会挨拶をのべて、革新的深海資源調査技術 報告会は盛会裡に幕を閉じた。
Posted by 寺島紘士 at 23:15
SIP第2期「革新的深海資源調査技術」 [2019年02月07日(Thu)]
平成30年度からスタートした「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」第2期の12課題の一つに「革新的深海資源調査技術」がある、ということはご存知の方も多いと思う

私もSIPという言葉は時々耳にしていた。しかし、研究開発をしてその成果の実用化によるイノベーションの創出を促進するプログラムという程度で、必ずしもその仕組みを十分に承知していたわけではなかった。

ところが最近ふとしたきっかけで、SIP第2期の「革新的深海資源調査技術」の取組みに若干関わりができたので、少し関心を持って調べてみた。その結果を「革新的深海資源調査技術」に関心のある皆さんとも共有してみたい。

内閣府には、内閣府設置法に基づき、「重要政策に関する会議」のひとつとして「総合科学技術・イノベーション会議」が設置されており、わが国全体の科学技術を俯瞰し、各省より一段高い立場から、総合的・基本的な科学技術政策の企画立案及び総合調整を行っている。「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」は、この「総合科学技術・イノベーション会議」が、府省・分野の枠を超えて自ら予算配分して、基礎研究から出口(実用化・事業化)まで見据えた取組みを推進しているプログラムである。

2014年度からSIP第1期の5ヵ年計画が始まり、「次世代海洋資源調査技術」を含む11課題が取り上げられていたが、これを1年前倒しにして2018年度からSIP第2期(SIP2)がスタートした。この第2期は12の課題を取り上げており、海洋に関しては「革新的深海資源調査技術」がある。


「革新的深海資源調査技術」は、SIP第1期「次世代海洋資源調査技術」における水深2,000m以浅の海底熱水鉱床を主な対象とした成果を活用し、これらの技術を段階的に発展・応用させ、基礎・基盤研究から事業化・実用化までを見据え、2,000ⅿ以深での深海資源調査技術、回収技術を世界に先駆けて確立・実証するとともに社会実装の明確な見通しを得ることを目指している。

そのため、深海資源の調査能力を飛躍的に向上させ、水深6,000ⅿ以浅の海域(我が国のEEZの94%を占める)の調査を可能とする世界最先端調査システムを開発し、民間への技術移転を行うこと、現行の技術では不可能な深海鉱物資源の採泥、揚泥を可能とする技術を世界に先駆けて確立することを「目標」とし、開発した要素技術のシステム統合を図り、最終年度までに実証を行って民間企業に戦略的に移転することにより、「深海資源の産業化モデルの構築」に道筋をつけ、SIP終了後に国内外から様々な海洋調査等を受託することを「出口戦略」として掲げている。

研究開発の内容は、次の通り。

テーマ1:レアアース泥を含む海洋鉱物資源の賦存量の調査・分析
テーマ2:水深2.000ⅿ以深の深海資源調査技術・生産技術の開発
2-(1):深海資源調査技術の開発(深海AUV、深海底ターミナル技術)
2-(2):深海資源生産技術の開発(レアアース泥の採泥、揚泥技術)
テーマ3:深海資源調査・開発システムの実証

これによる「社会経済インパクト」としては、我が国のEEZにおいて、初めての深海資源開発の目途がつくこと、海洋資源の権益確保に貢献すること、スピンオフの創出により、幅広い分野への応用が可能になることが挙げられている。

ここに掲げられた社会経済インパクトは直接的なものであり、その通りであるが、この調査技術開発の社会経済インパクトはこれにとどまらないと思う。

わが国は、面積で世界第6位、体積では世界第4位の排他的経済水域(EEZ)を保有しており、その広大な海域の開発、利用、保全及び管理を適切に行うことが日本の新たな海洋立国実現への道を開く。しかし、そのためにはまずこの広大な海域の科学的知見を得るための海洋調査や生産等の技術開発から始める必要がある。しかし、水圧が高く、光も届かない深海についてはなかなか調査等が難しく、それらの海域の保全や資源の開発利用になかなか手が届かないまま今日に至っている。

海洋基本法は、「海洋の開発及び利用と海洋環境との調和」「海洋の安全の確保」「海洋に関する科学的知見の充実」「海洋産業の健全な発展」「海洋の総合的管理」などを基本理念に掲げているが、それらの基本理念も深海は素通りしているような状況が続いてきた。

とくに、海洋基本法制定の時に、海洋の開発、利用、保全等には、その担い手となる海洋産業の発展が不可欠という考え方の下に「海洋産業の健全な発展」を基本理念に取り上げたが、深海の開発、利用、保全等と海洋産業の発展を結びつけるのはなかなか難しく、厳しい道のりが続いてきた。

そうみてくると、今回の「革新的深海資源調査技術」は、「出口戦略」として、最終的には開発した要素技術のシステム統合を図り民間企業に戦略的に移転することを掲げており、海洋基本法制定から10年かかってようやくここまで来たかという感慨がわいてくる。
また、本課題が前面に掲げる深海資源の調査技術はもちろん重要であるが、それに止まらず、この調査技術はそれ以外の我が国の深海の開発、利用、保全及び管理にも広く役立つ革新的調査技術である。そしてさらに、海洋が国際的な空間であることから、我が国で開発されたこれらの技術が国際的な場で使われ、海洋のガバナンスにも広く貢献していくことになる。

SIP2「革新的深海資源調査技術」はその辺まで視野に入れて組み立てられており、頼もしい。

SIPの実施体制をみると、課題ごとにPD(プログラムディレクター)が選定され(内閣総理大臣任命)、関係府省庁等が緊密に連携して取り組む推進委員会が設置されている。「革新的深海資源調査技術」のPDは、深海資源の調査開発に経験豊かで構想力に優れた石井正一氏(石油資源開発(株)顧問)である。

推進委員会には、 内閣府、総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省、そして海洋研究開発機構(JAMSTEC)、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、産業技術総合研究所(AIST)、海上・港湾・航空技術研究所(うみそら研)が参加している。

本技術開発は相当に難易度が高いとされているが、石井PDのリードの下で課題目標を着実にクリアして、研究開発の成果を挙げ、わが国の新たな海洋立国に貢献することを期待したい。
Posted by 寺島紘士 at 22:48
ハイレベル会議「COP21から国連持続可能な開発のための海洋科学の10年に向けて」開催 [2018年08月24日(Fri)]
国連総会が、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が掲げるSDG14のターゲット達成を支える海洋科学の分野横断的な役割にかんがみ、ユネスコの政府間海洋学委員会(IOC−UNESCO)の提言を受けて、2021年〜2030年を「国連持続可能な開発のための海洋科学の10年」とすることを決議したことは、本ブログ4月1日、18日等で取り上げて紹介した。

「国連持続可能な開発のための海洋科学の10年」では、科学的知識の増進、研究能力の開発、海洋技術の移転に焦点を当てた分野横断的な取組が世界的に進められることになる。

決議は、このためにIOCに、メンバー国、専門機関、基金、プログラム、国連組織、政府間組織、非政府組織その他の関係者と協議して「国連持続可能な開発のための海洋科学の10年」実施計画を作成することを求めている。

これに関して先日、IOC−UNESCO/Ocean and Climate Platformから「High Level Scientific Conference」開催の知らせが届いた。国連を中心に海洋および気候の様々なステークホルダーが海洋科学の分野で連携協力・協働して取り組む最近の流れの中で、これは重要な会議と思われるので、既にご存知の方や既に対応している方もあると思うが、そのような会議が開催されることを紹介しておきたい。

「High Level Scientific Conference」のタイトルは「From COP21 towards the United Nations Decade of Ocean Science for Sustainable Development(CP21から国連持続可能な開発のための海洋科学の10年に向けて)」で、本年9 月10日・11日の両日にパリのユネスコ本部で開催される。(会議のプログラム等は、IOC-UNESCOのウェブサイト参照)

お知らせには、「登録締め切り8月27日(月)、SAVE THE DATE」と大書してあるが、これは時間的にちょっと厳しい。しかし、出席できない場合でもオンライン参加というのもありそうである。いずれにしても、このような重要会議が開催されるということを皆さんと情報共有しておきたい。
Posted by 寺島紘士 at 23:57
「海洋白書2018」と「国連 持続可能な開発のための海洋科学の10年」 [2018年04月18日(Wed)]
本日(4月18日)、笹川平和財団海洋政策研究所の『海洋白書 2018』発行記者会見が行われた。

『海洋白書』の記者会見は、これまで私の毎年の定例イベントだったが (本ブログ2017年4月12日等参照)、昨年6月末に海洋政策研究所長を角南篤さんに引き継いだので、今回は、角南篤海洋政策研究所長と海洋白書編集委員会の山形俊男委員長(東京大学名誉教授)が中心となって行う記者会見を、海洋政策研究所参与として後方で傍聴した。

『海洋白書2018』の概要については、本ブログ3月31日、4月4日等でも紹介したが、さらに関心のある方はhttps://www.spf.org/opri-j/news/article_24674.htmlも参照されたい。

会見の席上、山形教授は、ご自身で執筆した「序章」をベースにして、昨年6月の「国連海洋会議」やその他の国際的な海洋政策の新たな展開、さらに、第3期海洋基本計画の策定に向けてのわが国の海洋政策の新たな展開を紹介し、それらが『海洋白書 2018』第1部でどのような章立ての下で記述されているか、ポイントをついて説明した。

その中で、著名な科学者である山形さんは、ユネスコが提唱し、国連総会決議が昨年12月に宣言した「持続可能な開発のための海洋科学の10年」について言及し、これを契機として持続可能な開発目標(SDG)14達成の基盤となる海洋科学がさらに推進されることで、分野の壁を越えた総合的な政策の推進と持続可能な発展に向けて実効性のある対策が進むことに対する期待を表明した。

「国連持続可能な開発のための海洋科学の10年(UN Decade of Ocean Science for Sustainable Development)」プログラムは、2015年に「国連持続可能な開発サミット2015」が採択した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が掲げるSDG14等のターゲット達成に必要な海洋科学の重要性にかんがみ、この分野担当国連専門機関であるユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)が、「国連海洋会議」直後の2017年6月29日に決議して国連総会に提案したものである。

それを国連総会が取り上げて、2017年12月5日に「国連 持続可能な開発のための海洋科学の10年(UN Decade of Ocean Science for Sustainable Development) 2021〜2030)」を決議し、宣言したものである。

決議は、IOCに、メンバー国、専門機関、基金、プログラム、国連組織、政府間組織、非政府組織その他の関係者と協議して「国連持続可能な開発のための海洋科学の10年」実施計画を2020年までに作成することを求め、2021年1月1日からその取組みを開始するとしている。すなわち、「海洋科学の10年(Decade of Ocean Science)」は、2021年から2030年の10年間であり、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に合せて、2030年を目標年次としている。

「国連持続可能な開発のための海洋科学の10年」については、私も、今世界が一丸となって取り組んでいる2030年を目標とした「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の取組みにおけるこの国連総会決議の重要性に最近気が付き、4月1日の海洋政策ブログで取り上げて紹介したところである。

しかし、正直に言って、日本では、まだ、「国連持続可能な開発のための海洋科学の10年」の重要性があまり浸透していないように見えるのが気になっていた。

だから山形さんが、特に「国連持続可能な開発のための海洋科学の10年」を取り上げて説明するのを聞いて、私は「わが意を得たり」と思った。

そして、わが国も、2030年が、今世界中が協働して取り組んでいる「持続可能な開発」の当面の目標達成年であることをもっと明確に認識してこれに向けて真摯に取り組んでいく必要があるのではないかと思った。

まずは、これからユネスコIOCが中心となって取り組む「国連持続可能な開発のための海洋科学の10年」実施計画の作成にわが国関係者も積極的に参画していくようになることを心から願っている。
Posted by 寺島紘士 at 23:57
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