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「海洋空間計画(MSP)」について考える [2010年12月11日(Sat)]
12月10日(金)、第76回の海洋フォーラムを開催した。



その時々の時事テーマを取り上げて開催する海洋フォーラムの今回のテーマは、海洋政策ツールとして国際的に注目を浴びている「海洋空間計画(Marine Spatial Planning)」である。

海洋政策研究財団の太田義孝研究員が「米国と英国の沿岸域管理:海洋空間計画の考察」というタイトルで発表した。



「海洋空間計画(MSP)」については、国際機関ではユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)が熱心に提唱し、英国、EU及び欧州諸国、米国などでそれを海洋・沿岸域政策に取り入れる取組みが始まっている。

太田さんは、対象海域としては広大な「大規模海洋生態系(Large Marine Ecosystem)」から沿岸域まで、政策レベルでは立案段階から実践まで、と様々な海域、レベルで取り組まれている「海洋空間計画」について、主として英国と米国の取組みに焦点を当てて発表した。



様々な「海洋空間計画」の取組みを限られた時間で紹介したので、ひとつひとつの取り組みの説明が駆け足になった。しかし、発表の冒頭に、「海洋空間計画とは何か」、「何のために海洋空間計画は必要か?」という問を発し、聞いている皆さんがこれに対する答えをそれぞれ自問自答しながら発表を聞くという展開にもっていった太田さんの発表が、参加者の様々な問題意識を刺激するものとなったことは間違いない。そのことは、発表終了後に活発に行なわれた質疑からも窺われ、新しいコンセプトである「海洋空間計画」の手ほどきの発表として成功だったと言えよう。



さて、「何のために海洋空間計画は必要か?」であるが、この「何のために必要か」という問題提起自体が「海洋空間計画」が海洋政策の立案・実施のツールであるという性格を明らかにしている。太田さんの発表から米国の海洋空間計画についてみて見ると、次のとおり。

米国では、「海洋」だけでなく「沿岸」という言葉をつけ加えて、「沿岸・海洋空間計画(IMSP)」について次のような定義を置いてこれに取り組んでいる。

“沿岸・海洋空間計画は、健全な科学に基づいて、現在と今後の海洋、沿岸、五大湖の利用を分析・検討するための総合的、順応的、統合的、生態系に基づく、透明性のある空間計画作りプロセスである。”

そして、米国の海洋空間計画は、海洋、沿岸、五大湖地域の持続的利用と保護をどのように行なうかを社会がよりよく決定できるように、公共政策プロセスを提供する、米国のEEZ等を「大規模海洋生態系(LME)」を考慮した9つの地域計画区域に区分して取り組む、としている。

さらに「海洋空間計画の取り組み」として、次の6つを上げている。
1. データ統合(地域的概観と範囲)
2. 法制の整備(規則の状況)
3. 現在及び将来予測(地域アセスメント)
4. 地域目的案(意思決定メカニズム)
5. 法的一貫性(遵守メカニズム)
6. 地域実績指標(モニタリング)

このような米国の取り組みは、わが国のこれからの海域管理の取組みに大いに参考になると思った。

今回の海洋フォーラムでは、太田さんの発表やフロアからの発言の中で、「海洋空間計画」を用いる対象として、「洋上風力発電」「海洋生物の保全」「持続可能な漁業」「安全な海洋資源の利用」さらには、「持続可能な開発・利用」「生態系の保全」「多様化する海域利用の効率化」「海洋保護区」など様々な政策課題が提起された。

いずれの課題にもそれなりのニーズが認められるが、私は、先ず、海洋基本法が掲げる基本的施策のうちの「排他的経済水域・大陸棚の開発、利用、保全等」に取り組むのにこの「海洋空間計画」作りという政策ツールを用いることを提案したい。

わが国は、国連海洋法条約に則って、面積で世界第6位、体積で世界第4位という広大な海洋空間を管理する。このような海洋空間の開発、利用、保全、管理というのは、わが国だけでなく人類にとって未経験の政策課題である。それに取り組むのにはデータ統合などの新しい手法を含む「海洋空間計画」が有望なツールとなると考える。

もちろん、その手法は「沿岸域の総合的管理」などにおいても役に立ちそうであるが、沖合いの広大な三次元の海洋空間の開発、利用、保全等の問題にこそ、特にこの「海洋空間計画」が力を発揮しそうに思う。

米国の「沿岸・海洋空間計画」や英国の「海洋計画」などの新しい取り組みの進展に皆さんとともに注目していきたい。(了)
Posted by 寺島紘士 at 17:05
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