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ICUS懇談会、「深層海洋大循環と気候変動」について [2019年04月17日(Wed)]
4月11日(木)、第7回ICUS懇談会が開催され、参加した。

ICUSは、「科学技術の統一に関する国際会議(International Conference on the Unity of the Sciences)の略称で、科学技術文明の未来と科学者の責任、科学の価値、諸科学の統一などをテーマに、政策提言を通じて諸問題の解決に寄与することを目指している世界のノーベル賞受賞者を含む科学者・専門家による政策研究懇談会であり、米国を中心としてこれまで25回にわたって開催されてきている。

ICUS懇談会は、それを受けて設けられた日本国内における科学者・専門家による政策研究懇談会(ICUS日本委員会・(一社)平和政策研究所主催)であり、政策提言を通じて諸問題の解決に寄与することを目指している。

第7回ICUS懇談会は、東京大学大学院理学系研究科教授の日比谷紀之氏が発題者となって、「深層海洋大循環と気候変動−未だ解明されていない深海の謎−」というテーマで行われた。

日比谷さんは、まず見慣れた深海をめぐる海流の大循環の模式図から話を始めて、海洋深層循環が停止した場合の気温変化、過去12万年の気温変化は深層海洋大循環のON-OFFと対応、深層循環の停止が海洋生物生産へ及ぼす影響、と話を進めた上で、大気における乱流混合が強風によって起こるのに対して深海における乱流混合は月による潮の満ち引き(潮汐)により起こるとして、問題の核心に話を進めた。そして、70枚ほどのスライドを用いて乱流混合の観測結果、研究でわかってきたことなどを説明した。

日比谷さんは、詳しい説明の後で研究から分かったことをまとめてくれたので、私のような文系の人間にもこの研究の重要性が理解できた。そのポイントは概略次の通り。

@深海の乱流は海表面からの熱を下方に伝える役目を果たす。深層水は、これによって暖められ、浮力を得て表層に上昇し、やがて元の深層水形成域である極域に戻っていく。これにより1500年で一周する深層海洋循環が形成される。
A深海乱流は、12時間周期の潮汐流と海嶺・海山との相互作用によって励起された24時間周期で1回転する平坦な円盤状の流れの周りに生じる。
Bこの24時間周期の円盤状の流れは、海底地形凹凸の激しい西太平洋で励起されるが、実際、深海乱流計を用いた観測から強い深海乱流は西太平洋の緯度30度より赤道側の海嶺・海山の近傍に限られることが示された。
Cこれらの乱流ホットスポットを全部足し合わせても、毎秒2千万トンと推察される深層水を表層に上昇させるには乱流の強さがまだ不足している。
Dまだ、どこかに強い深海乱流が発見されずに存在しているかもしれない。現在、このような乱流ホットスポットを見つけるため、投下式乱流計を用いて海面から海底直上までの深海乱流観測を行っている。

そして、日比谷さんは、将来は、こうして得られた乱流強度の情報を数値モデルに組み込むことによって、ミクロな情報からグローバルな深層海洋循環を解明していくと抱負を述べて、発表を締めくくった。

聞き終わって、これは地球を生存基盤とする我々人類にとって大変重要な科学研究だと思った。

そして、国連持続可能な開発のための海洋科学の10年が2021年からスタートする中で、このような研究をその取組みの重要テーマとして取り上げて、国際的にも国内でも積極的に研究を進める必要があるのではないかと思った。
Posted by 寺島紘士 at 23:19
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