2005年9月28日、国会は衆院本会議で小泉首相の所信表明に対する各党の代表質問が行われました。中央競馬、自転車振興会、私たち日本船舶振興会などの公営競技法人については、「組織の在り方や助成金交付事業の透明化などについて議論し、本年度中に結論を得る」とのことです。
実は、
特殊法人改革で大多数の組織は独立行政法人などになったのですが、公営競技については、2005年度中に結論がだされることになっています。
審議は、
特殊法人等改革推進本部参与会議で進められています。
そこで、日本財団における現状の考え方をご紹介します。
ところで、日本財団という名称は通称です。正式名称は財団法人日本船舶振興会です。
1.日本財団は既に財団法人です。モーターボート競走法第22条の2第2項「日本船舶振興会は、民法第34条の規定により設立される財団法人とする。」
※ 民法第45条により、財団法人として東京法務局港出張所に登記
2.何故、日本財団が特殊法人として扱われるのか。昭和55年(1980年)に行政管理庁設置法が改正された折、財団法人でありながら行政監察の対象となる特殊法人として取り扱われるようになり、以後、財団法人でありながらも特殊法人としての規制を受けています。
なお、いわゆる特殊法人として法律上で取り扱われたのは「
特殊法人等改革基本法(平成13年(2001年)6月21日法律第58号)」が初めてです。
3.日本財団は特殊法人の中でも特殊な存在です。通常、特殊法人及び独立行政法人では、主務大臣が法人の長を任命し、任命された法人の長が役員を任命する「任命制」です。
日本財団は、大多数の民間人で構成する評議員会で理事が選任され、選任された理事により会長、理事長、常務理事が互選されます。そして、理事の選任は全て国土交通大臣の認可を得る「認可制」となっております。
役員の選任方法が「任命制」でなく「認可制」であるところが、特殊な存在なのです。
4.日本財団は他の公営競技4法人と登記方法及び組織形態が異なります。「一括横並び改革論」は適用されるべきではありません。
日本財団が民法第45条により登記された財団法人であることに対して、他の4法人は独立行政法人等登記令により登記された特殊法人です。
また、日本自転車振興会(競輪)、日本小型自動車振興会(オートレース)など他の公営競技4法人では、「競技運営事業」と「振興事業」が同一組織で実施されていますが、競艇では競技運営事業(全国モーターボート競走会連合会)と振興事業(日本財団)が分離され、それぞれ独立した運営がなされています。
日本財団を除く他の4法人は、独立行政法人化に異論が無いものと推測します。
その理由は、役員の選任が現在でも「任命制」となっており、4法人の長(会長又は理事長)全てが監督官庁OBで占められ、独立行政法人化されたところで、業務運営の実態が現状と何ら変わらないからです。
繰り返しになりますが、日本財団は他の4法人と登記方法及び組織形態が全く異ります。従って、「一括横並び改革論」は適用されるべきではない、と考えます。
5.国からの資金はゼロ日本財団は、競艇を施行する
地方自治体からの交付金を財源に運営しており、国から受ける資金は全くありません。
6.監督官庁である国土交通省の見解国土交通省は、「日本財団は特殊法人としての規制と、財団法人としての規制の二重規制を受けているが、政府(国土交通大臣)による管理・監督はモーターボート競走法において十分に担保されており、特殊法人としての規制を外しても何ら問題ない。」としています。
平成13年(2001年)12月10日、扇千景国土交通大臣(当時)が政府の特殊法人改革推進本部・副本部長会議において同発言を行っております。(国土交通省担当課からの説明)
7.結論今次の小泉内閣が推進する「特殊法人改革の大方針」に則れば、日本財団の改革は、国土交通省の見解のとおり「モーターボート競走法による政府(国土交通大臣)の監督は受けるが、特殊法人としての取扱いをやめて、純粋な財団法人として取扱う」ことが最善の策と考えます。
(1) 日本財団は特殊法人として取り扱われているにも拘らず、実態は「財団法人」として民間的運営を行っています。この事実は、すなわち、何ら改革の手を加えることなく、既に特殊法人改革の趣旨を実現しているのです。
(2) 日本財団を独立行政法人に移行することは、役員選任方法を「認可制」から「任命制」とし、役員の多数が天下りとなる危険性があります。それは、任命権者である大臣に人事案を示すのが官僚であるためです。
(3) 役員の多数が天下りとなることにより、日本財団の財団法人ならではの柔軟できめ細かな業務運営がより官僚的となり、国や他の公営競技法人には無い特長が失われることを危惧します。
(4) 財団法人を独立行政法人に移行することは「特殊法人改革の大方針に逆行」することになる、と考えます。
以 上
■参考資料■日本財団の業務運営日本財団は既に財団法人という組織形態で、
40年以上に亘り業務運営を続けております。その財団法人としての業務運営の特長は、特殊法人の中では特殊で例外的なことであります。
1.財団法人としての組織形態と業務運営(1) 理事会及び執行理事会日本財団の意思決定機関は理事会です。定例理事会は年4回開催されますが、業務の円滑な遂行を確保するため、会長、理事長、常務理事による執行理事会が毎週開催され、理事会の委任の範囲内での業務執行の審議が行われます。
(2)評議員会及び監事会日本財団での自立的なチェック機能を充実させるため、評議員会及び監事会が設置されています。これは他の特殊法人に先行して設置した機能であり、特殊法人の中にあって特殊(独自)な機能です。
(3)理事会、評議員会及び監事会による相互牽制と補完モーターボート競走法及び
寄附行為に基づき、事業計画の作成は、先ず評議員会において原案を審議し、了承された内容を理事会で議決します。その後国土交通大臣の認可を得て成立します。
また、事業報告の作成では、法人文書の作成状況、意思決定及び執行、並びに会計処理全てに亘り、先ず監事会が監査します。その後評議員会で承認されたものが理事会で議決され、国土交通大臣に報告されます。
(4) 理事、評議員及び監事の選任理事及び監事は評議員会で選出され国土交通大臣の認可を得ます。
他方、評議員は理事会で選出され国土交通大臣の承認を得ます。
なお、会長、理事長、常勤理事は理事会で互選された後、再度評議員会で審議され、その後国土交通大臣の認可を得ます。同じく常勤監事も監事会で互選された後、同様の手続きを経ます。
なお、他の特殊法人や独立行政法人では、主務大臣が法人の長を任命し、任命された法人の長が他の理事を任命する、という一方的な「任命制」となっており、官僚の天下りを助長するような選出方法となっております。
(5) 会長職は無給寄附行為第24条により、会長職は無給であります。
2.積極的な情報公開日本船舶振興会(日本財団)は、どの特殊法人、財団法人よりも積極的に
情報公開を行っております。
1996年にホームページを開設しました。その後、一般新聞での決算報告、日本財団図書館(電子図書館)の開設による事業内容の公開を行ってきました。
日本財団図書館(電子図書館)には、A4版換算で約90万ページ、約22,000事業の事業成果が収蔵されております。また、設立以来の
支援実績も全て(約39,000件)公開されています。
参考までに2005年8月、1ヶ月間の訪問者数は33万人、読まれたページ数は267万ページとなっています。
なお、日本財団は1998年7月に「情報公開要領(内規)」を制定、施行しております。つまり、2002年10月の「独立行政法人等情報公開法」施行の遥か以前から情報公開の重要性を認識し、独自の取り組みを行っているのです。
3.第三者機関による事業評価日本財団が助成する事業を厳正中立な立場から客観的に評価するため、1995年より
第三者機関(民間評価会社)による事業評価を行っています。これに伴い「経理・会計監査」と「事業評価」が両立するようになり、交付金の有効適切な活用が図られています。
この事業評価も、他の特殊法人に先行して実施しているものであり、民間の財団法人であるが故に実施できたものであります。
以 上
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