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2024年10月02日

開業医の正体 クリニックの舞台裏

カミさんが自宅リビングで、机の角に足をぶっつけて、小指・薬指を骨折した外出出来ず一日、家に閉じこもっており、私に買い物を命じます。
ついでに、本屋に行ってこの本を買ってきてと頼まれたのが、この本、カミさんの元職場業界に関係する本です。

ワケあって開業医になりましたが、開業医って大変です。
開業医のリアルと本音を包み隠さず明かします。
開業医の正体がわかれば、良い医者を見つける手かがりになるはずです。

・医者は何をかんがえているのか?
・医者が患者に伝えたいことは?
・クリニックはどうやって作るの?
・お金はどう工面するの?
・収入は?
・どんな生活をしているの?

● 患者と家族におもうことは?
● 上から目線の大学病院にイライラすることは?
● 看護婦さんに何を求めるの?
● 診察しながら何を考えているの?

著者紹介
松永正訓 1961年東京生まれ 千葉大医学部卒業 小児外科医となる。
千葉大病院勤務後、2006年「松永クリニック小児科・小児外科」院長となる (45才時)

どんな暴露本かとおもいきや

交通誘導員ヨレヨレ日記」「メガバンク銀行員ぐだぐだ日記」など、外から見た、これらのた職業内部の暴露話と同じレベル・・・かと思いきや、現代の日本の医療が抱えている社会問題を理解できるように、丁寧に書かれた良書でした。
私が退職後、鎌倉に越してきた時、今までの横浜時代とは変わって、これから先、長い老後生活に身を寄せる、信頼できる「かかりつけ医」「ファミリードクター」を確保しなければなりませんでした。
引っ越し当初は元住んでいた横須賀線駅前開発のビルの一角の内科医院に通ってはいましたが、最終的に、ここ鎌倉の地に何処かの「クリニック」に決めなくてはなりません。
引っ越した翌年、徒歩15分の場所に、日本有数の医療集団「徳洲会病院」の本部・旗艦病院がオープンしました。
まだ、初診時の受診料金設定が今のように厳しい時代ではなく、意外と簡単に受診できるよな時代でした。
三年もすると、私の住む周りには次々と「徳洲会湘南鎌倉病院」に半分席を置く「開業医」が続々と増えていきました。
当然なから、昔ながら鎌倉の大先生・お医者様先生の組合、鎌倉市医師会との間での軋轢はありました。が、しかし、この湘鎌(湘南鎌倉)出身の若手開業医のほうに患者は集中するようになりました。
私のメイン内科の女医先生は、やはりこの湘鎌の高血圧と老人医療の専門医で、勤務5年後、同僚の消化器内科の先生と共同でクリニックを開業しました。
現在私が通っている、老人医療も消化器内科も、整形外科も、脳神経外科も全て、出身は「湘南鎌倉総合病院」の元勤務医です。
これらの先生が、大船の町中のビルにクリニックを開業するのは、づっと見続けてきているので、この本の中身に興味がありました。
カミさんは元々同じ業界の人間です。
足のギブスで、買い物にも行けずにモヤモヤしていましたので、あっという間にこの本を読み切ったようです。

第一部 クリニックはどうやってつくられるのか

資金は幾らあれば開業できるのか?
 これはゼロでも大丈夫である。
 担保なしでも大丈夫である。
 少なくとも僕の場合はそうだった。
僕は19年間、大学病院(千葉大)の医局に在籍したが、開業を決意した時の貯金残高はおよそ200万円だった。
この200万円を全部つぎこんでしまうと、生活出来ないので、自分は開業医になれないと思った。
しかし、ちゃんとお金を貸してくれる人がいるのです
おまけに、コンサルタントのように開業までのステップを支えてくれるシステム・組織・会社があるのです。
僕がクリニックの経営を安定させれば、貸したお金に利子が回収できるのですから、互いにウィンウィンの関係です。
44才の春、僕は開業しようと決めた、しかし、ビルの一室を借りて、受付を一人、看護師一人の「ビル診療所」はやりたくない。
特に僕が目指す小児科医院は、明るく、子どもたち・両親が安心してこれるような、明るさ・広さが必要だ。
でも、そんなお金も不動産知識もない。
開業コンサルタントに相談すると、資金調達、医療に特化したリース会社があり特に、国立大学病院医局19年のキャリアで、開業となるとどこでも引き受けてくれるという。
相談すると若手営業マンはパソコンを広げて、すぐに医療機器を幾ら、一日の患者数が幾らで、何年後の収入が幾らだから、仮入金は当初幾らと、あっという間に弾き出します。
ちょっと待って、僕は別にお金が欲しくて開業医に為りたいわけではない、ちょっと違うと妻(元同僚・看護師)に話すと、やはり妻も「儲け話」には興味がなかった。

建て貸しという方法もありますよ。
迷っている時に先輩開業医から紹介されたのは、コピー器有名なRリースだった。
お金がないけど「ビル診」は嫌だ、それなら「建て貸し」がありますよ。と云われた。
自分で自分のスタイルにあった土地を捜し、地主の大家さんに自分好みのクリニックを建ててもらい、大家さんには土地代と建物リース代金を払ってもらいます。
「ビル診」より多少かかりますが、先生の希望通りの環境で開業が出来ます。という。
しかし、果たして借金を返せるか?
開業医というのは、自分のクリニツクをは始めときに、それまで働いてきた病院にかよう患者さんをそっくり自分のクリニックに連れてくるという話をよく聞く
、しかし僕の專門は「小児科」それも「小児外科」小児がんの専門医だが、そんなケースは考えられない。
心配している私に、Rリースの担当者は
「大丈夫です、失敗した人は見たことがありません」
「でも・・僕がその最初の人になるかも」
「大丈夫です、千葉大の先生てせもあるし、私達も人をみています」
「担保はありませんよ」
「大丈夫、貸します」
こうして、スタートした。

この本の第一部は続いて
■ 人を雇う難しさ
■ 開業医は儲かるか
■ クリニック設立時の時に「買ったもの」と「造ったもの」
■ 開業医にとっての最大のストレスは と続きます

第二部 医者と患者 この難しい距離感

ほほえましい、パパたちのおおぼけ育児奮闘記
今はもうないが、ネット上に日本中の小児科クリニックが検索出来て、感じ家族の口コミが並んでいた。
あまり気にしないタチだが、うちのクリニックへの書き込みか「院長はあまりニコニコしていませんが」・・・・とあった。
それを読んでちょっと驚くやら、呆れるやら。
僕は36年医者をやっているが、患者家族にニコニコしたことは一度もない。どうやら小児科医は子供相手だから、笑顔で診察すべきという概念があるらしい。
診察の基本は問診・視診・聴診・触診・打診でるが一番大切なのは問診、患者の訴えがなければ診察ははじまらない。

クレームで心が折れる時
ある時、患者から緊急電話にでるように受付から受話器を渡された
「〇〇の保護者です。なぜ肺炎をみのがしたのですか?、あの後、咳が治らないので他の病院でレントゲンをとったら、肺炎っていわれました。
マイコプラズマ肺炎の診断でした。なぜ分からなかったのですか?」と
電子カルテを操作して、その患者の診療録を開いた、たしかに診ている、ただし、後も先にも一回のみ、うちに一回だけきた患者、37台の熱と咳がある10才の少女だった
母親は「なぜレントゲンを撮らなかった」と詰問する。
「理由もなく、ただ37℃の熱と咳だけではレントゲンはとりません、被爆もします。肺炎を疑って初めてX線を撮るんです」
「じゃあ、何でマイコプラズマって分からなかったんですか」
「マイコプラズマ肺炎って、通常の細菌性肺炎です、お子さんは入院していましたか」
「いいえ」
「具合が悪く、呼吸が苦しそうでしたか」
「いいえ、そんなことは」
「クラリスという抗生剤の飲み薬を処方され、快方に向かっていませんか」
「それは、そうですが、でも残念です」
そこで電話が切れ、僕は心臓にグサリと一刺しむされたように胸がたたくなった。

セカントオピニオンとは何か
セカンドオピニオンは1回3万円、大学の収入だつた
セカンドオピニオンという言葉を知らない患者はいないだろう。
ところが言葉を聞いて知っていても、それが実ははどういう医療形態のことを指し、値段がいくらになるのか知っている人は少ないだろう。
つまり、セカンドオピニオンという医療は誤解されていると思う。
普段診療していているなかで、「先生のセカンドオピニオンを聞きたくて」と受診する患者家族が時々いる。
やはり、ぼくが小児科外科医のせいか、大病院で手術が決まっている患者の両親が本当に手術が必要かどうか悩んでぼくのところにやってくる。
セカンドオピニオンとは、一番目の意見に対して、二番目の医者が意見を述べるもの。
原則、診断や治療はしない。
あくまでも一晩目の診断ゆ治療方針にたいして自分の考えを伝えるだけのもの。
セカンドオピニオンは自由診療で、保険は適用されない。
保健医療が想定している一般診療ではなく、その医師の技術と経験を求めて患者が意見を聞きに来るのだから保険は効かない。
僕が千葉大病院にいた時はもセカンドオピニオンの料金は一回3万円だった。

僕かクリニックを造った時、大学時代に倣って料金は30〜60分で3万円と決めた。
こんな千葉の田舎のクリニックにセカンドオピニオンを求めてくる患者がやってくると全然思ってなかったが、東京から江戸川を超えて来る患者や九州からもくるようになった。僕が日本ても数すくない、小児がん外科の医師だったこともあるたろうが。
最初にセカンドオピニオンを求めてきた患者家族は小児がんの手術を終えた後の今後の抗がん剤治療について、どんな選択をするかであったであった。
わざわざ若い親が遠方から来て、交通費だつて結構な金額なのに、さらに何万円も請求されたら、辛いのではと10秒ほど考えて、初診料だけを受け取ることにした。
セカンドオピニオンはかなり骨がおれる。
患者の話をまよく聞き、相手病院の資料を読み込み、自分の意見を家族に伝える、それで終わりではない、向こうの先生に長文の手紙を書き、自分の意見を縷々述べる。
・・後略
■ 4日しか薬をださない理由
■ 薬にたよるんてすか?
■ 医療に対する疑心暗鬼
■ 危険なドクターショッピング
■ 薬が欲しくてクリニックに来る患者さん

第三部 医者の作り方、教えます

国家試験の合格率
医者はどういうステップを経て一人前のになるか。
これは説明するのは難しい、かなり複雑なキャリア形成を進んていくからだ。
先ずは医師国家試験を受けるためには、医学部を卒業しなければならない。医師国家試験の合格率は2023年は91.6%。これを新卒者に限ると94.9%、つまり現役生はほとんど全員が受かる。一方で国試浪人生にとってはカナリ難しく55.2%。
尚国公立大学と私立大学の合格率には差はない、実はこれにはカラクリがあり、私立大学医学部では国家試験に合格できないような学生は卒業させない。
そのために留年生が私立大学医学部には多数存在する、昔はこうした理由で留年させることがなかった為、私立大医学部の合格率は国公立大に比べて極端に悪かった

医者の収入はどれくらい
平成18年の資料だが、厚生労働省が勤務医と開業医の収支を公表している
病院勤務医はの年収は1479万円
法人開業医の年収は2530万円
個人開業医の収支差額は2458万円、収支差額とは、借入金の返済や準備金を含んでいる
勤務医の平均年齢は43.4歳
開業医の平均は59.4歳、さらに2020年のデータでは60.2歳とあがっていた。

ぼくのクリニックの収益は
開業医の場合、行列のでくる医院とつぶれかけとではかなり収益の差はある。
ぼくのクリニックは、千葉若葉区で小児に限れば二番目に多いだろう。
現在、年間1万6千人の患者をみている。
2023年1月の収支を紹介する。
保険診療と予防接種・健診の医業収益が785万円
ここから経費、材料費・人件費・家賃・消耗品・光熱費・事務費などなど合計295万円
医業収益から経費を引くと490万となり12倍すると年収6,000万になるが、そうはいかない、1月は風邪の季節で患者も多いし、年二回のボーナスやら、修繕積立
税金(所得税・住民税)などで、最終的に前項の開業医の年収とほぼ同じとなる。
しかし、2020年のコロナパンデミックで僕の年収は前年の61%まで落ち込んだ。
ともかく、開業医は働き続けなくてはならない、お正月・夏休みを長くとればそれだけ収入はおちる。
・・・後略
■ 勤務医と開業医という分け方 
■ 大学医局員・勤務医・開業医、楽しみは
■ 開業医という学問はない
■ 女性は医師に向いているか
■ 名医はどこにいる
■ 医師は看護師をこんなふうに見ている

第四部 医者は診察しながら何を考えているのか

恐怖の医療ミス
平成11年1月11日、医者であればこの日が何の日、何が置きたのか誰でも知っている。
横浜市大病院の手術室で患者の取り間違いがおきた。患者Aさんは、心疾患。患者Bさんは肺癌の疑い。
病棟の看護師は手術のホールまで搬送、ホールで手術室の看護師が引き継ぐ、ここで最初の間違いが起きた。
二人は入れ替わって本来とは別の手術室にはいり、麻酔医が麻酔をかけて手術が始まってしまった。
術後二人の患者はICUにはいり、そこで初めて取り間違いに気づけかれた。
これは取り返しのない医療ミス、無意味な手術は単なる暴力・傷害となる。
この事件を機会に、小児外科では鼠径ヘルニアの手術の左右を絶対に間違えない工夫をするようになった。
いままでの手書きのカルテは「右」「左」をなぐり書きすると判別が難しくなるが、ぼくは、手書きで「みぎ」「ひだり」とひらがなで書くようにした。
また、手術前に付き添いの保護者に左右を確認し、左足の裏にサインペンで大きく印をつけるようにした。

何にもしない方が儲かる仕組み
小児医療に関しては、特別なルールがある。
小児科外来外来診察料というものだ。対象患者は6歳未満、これは出来高ではなくどんな治療をやろうとも、報酬金額が一定をというもの。
こういう医療形態は包括医療という(マルメ)。検査をやろうが、処置をしようが報酬は同じ、つまり露骨いえば何もしないほうが儲かる。
初診料は599点(5,990円)再診料は(406点)、ところが処方箋を出さないと初診料は716点、再診料524点に跳ね上がる、薬もださず何もしないほうが儲かる?というシステムだ。
理由は、なるべく検査や処置や処方箋してくれということだろう。
僕のクリニックでは開院以来、ずっと「マルメ」である。その理由は、医療事務のスタッフがそのほうが楽だろうと思ったから、ただ僕はは子供に痛い検査や、被爆するレントゲン検査することや、やたらと薬を出すことが嫌いなので、マルメがあっている。
ちなみに、今は薬を多く出しても儲からない。
医薬分業がすすみ、院内処方よりも院外処方のほうが医療報酬が高い、更に国は医者が薬を沢山だすことを抑えようとしている。
院外処方で六種類以下のは68点だが、7種類以上になると40点に減額される。つまり薬を沢山だすと、損になるのです。

■ 熱がさがらないと夜も眠れない 
■ もっとも難しいのは軽症患者
■ 手術はストレス?それとも楽しい?
■ 開業医か虐待を発見した時

おわりに
2023年5月で僕のクリニックは18年目にはいる。
大家さんとは20年契約を交わしているから、あと3年でいったん契約がきれる。
僕ももその時は64歳になっているので、その後の人生をかんがえなければならない。
僕には二人の子供がいるが、医療には全く関心がない。
僕も医師になってなって欲しいとは思わない、
自分の道は自分で決めればいいい。
さて、ではクリニックはどうするか、以前に僕は64才で引退した友人と語ったことがあった。
するとそれは無責任だと窘められてしまった。人生100年時代(本当かどうかか別にして)に60代で引退するなんて早すぎる、
地域の患者にたいしてやるべきことがまだあると友人は差としてくれた。
日本人男性の平均健康寿命は72.68才にのだそうである。
せめて。そこまでは働いて地域に恩返しをしなくてはいけないかもしれない。
うちのクリニックには発達障害の子供が多数通っており、この子達の成長を見続けたいという気持ちも確かにある。
自分が健康であるかぎり、クリニックを走らせていこうと今は考えている。
だがいつかは必ずくる。大家さんに建物を返してそれで終了でいいだろうか。
後継者をみつけるまでが、僕の仕事かもしれない。
・・・・後略

私も来年喜寿77才になる、今年から来年にかけて、今、管理運営しているサイトを継続してくれる人材を育てるのが団塊世代、喜寿77才の任務・責任なんだろう。

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posted by 西沢 at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | シニアライフ