CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る

2019年03月15日

小説「老後資金が足りません」 垣谷美雨著 中公文庫 を読んで

夜中の1時頃、最近だんだんと短くなってきた夜の尿意を感じて、トイレに行くと廊下越しのカミサンの部屋から灯が漏れています。
※団塊世代、神田川世代の私たち夫婦は、結婚前の1DKのアパート時代は別として、マンション購入後40年、寝室は別です。
カミサンの部屋をノックしてのぞいてみると、本を読んでいます。
「まだ寝てないの?、何を読んでいるの?」
「読み始めたら面白くてやめられないの?」
「何の本なの?」
「女性目線で書かれた、老後資金のお話、貴方のホームページの参考になるから、読み終わったら貸してあげるわ」

現役時代は往復2時間強の通勤電車でしたから、1週間に一冊のペースで文庫本を読んでいました。退職後はそんな空間・時間がないうえに、本格的なパソコン時代の到来で本を読む機会はめっきりと減りました。
その上、老化による視力の低下で、文庫本の小さな文字が疲れるようになってきています。

先月の旅先に同じ著者の本を持参したカミサンが読み終わった本を貸してくれました。
しかし、乗り鉄派の私はせっかく知らない土地なのですから、車窓に流れる風景のほうが優先でよみませんでしたが、帰宅してから東京に行く用事があったので、車内で読みました。
確かに、面白い。
老後退職後の生活、過ごし方については、多くの退職シニア男性の手記や小説は数多くありますが、女性、主婦目線で書かれたものは少なく、ここに登場する女性の性格、考え方があまりにも、我が家のカミサンと似ているのにびっくりしました。

rougo.jpg小説の粗筋は
主人公の篤子は55才パートで経理をしている、夫は58才中堅の商社勤め、戸建てに住み、退職金でローン返済を考えている。
子供は二人、上の女の子は28才で結婚を控えており、下の男の子は今年大学を卒業して就職も決まっている。
話は、篤子の失業から始まる。小さな会社のパートの経理ながら長年勤めており、代れるものはいないと自負していたところ、
経理のIT化で失業してしまう。貯金が1300万円あり、失業保険も貰えるしそんなに慌てなくても良いかとのんびりと次のパート先でも事務職とを考えている。
この頃、娘の結婚式の費用についての問題が起きる。
相手の男性は都内に勤める会社員、実家は地方のスーパーの経営者。
相手の実家としては、盛大にやりたいと都内の一流ホテルでの挙式を提案しており、費用は600万円、両家で半分づつ負担しなければならない、花嫁である長女は引っ込み思案で、自己主張できないタイプの子で、短大卒業後も定職につかずづっと派遣の為、貯金は全くない。
結婚式の費用半分と新婚旅行、新居への引っ越しなどで、親が400万ほど負担しなくてはならない。
主人公の篤子は、頭の中のソロバンを弾くまでもなく、老後資金が減るのを恐れ、簡単な質素な家族だけの結婚式を提案するが相手の実家はおろか、自分の夫までも、せっかくの自分の娘の一生に一度の晴れ舞台だからと云って結局、400万負担する。

やがて、次の問題が発生する。
夫の父親の死
夫の実家は都内の老舗の和菓子屋さんであった。
両親二人は、店を畳んで売却し、その金で千葉のリゾート型老人フォームに入居する。
入居一時金やら何やらは両親が払ったが、毎月35万円もかかる、入居して20年経つと、当初の自己資金は底をつき、二人の国民年金でははるかに足りず、夫と夫の妹が月に9万円仕送りしている。そこに父親の死、遺産は千葉の田舎の別荘戸建てのみ、預貯金はゼロ、葬式を上げなくてはならないな。
夫の妹は、篤子の夫が長男なので葬儀一式を取り仕切り、費用の全額負担を求めてくる。
葬儀社の打ち合わせが始まり、その費用明細にびっくりする。
燃やしてしまう棺桶一つが最低でも10万円もする。祭壇はピンキリで、葬儀社の担当女性は
「一般的には普通、中の上程度を選びます」というが、値段は100万もする
「どうせ使いまわしのリース品」なのにどうして、と思うが、夫は昔の和菓子業界知合いも来るから、ある程度の葬儀にしたいそれに、葬式はお香典で半分は還ってくるからと云う。
廃業して20年にもなる父親への昔の仲間は誰一人来ず、香典はわずか。結局、葬儀には300万の出費となる。
またしても、老後資金は減り600万円になり焦る。

市の学習センターのチラシで、老後資金と退職後についてファイナンシャルプランナーによる講座があると、出かけてみると、ほとんどは自分で調べたことや、ネットで書かれていること同じで幻滅する。
頭の中に、65才定年で必要な資金は、住宅ローンは完済されており、子供の結婚・学資がない状態、夫厚生年金・妻国民年金の夫婦の場合の必要な資金は最低3000万と云う数字のみが残る。

最悪の事態が発生する
夫の会社が倒産し、失業する、予定していた退職金はゼロ
夫婦二人で失業、姑への月々9万円の仕送りが負担になり、結局、男の子が就職で空いた部屋に姑を引き取り同居することになる。

この間に、主人公篤子の女友達との付き合い、確執などが細かく描かれている。
表から見た相手の生活の裏には表面化しない色々な事情がある。
篤子は自分は浪費家でもなく、家庭を守り節約してやってきた自負がある。
生まれた実家の環境、学歴、婚姻関係、50才を過ぎて初めて、日本社会の格差を知ることになる。

エンディングは
篤子は結曲事務職を諦め、コンビニのパートとして働きだす。
夫は昔の部下が起こした会社に拾ってもらう。
65才からは、年に250万円程度の年金が入る。
それで生活出来るように今から、削り落としていこう。
それでも二人とも70才までは、働こう。
他人の懐具合は詮索しない。
平均的な貯蓄高とか、平均的な生活費とかと比べるのを止そう。
で終わるのでした。

エピローグ
今月に終わるNPOセンターのwebプログラミング講座の生徒のなかに、この小説の主婦と同じ世代、環境の女性と、 社会保険労務士の55才の男性がいるので、この小説を紹介しました。
お二人とも、廻りにはこれによく似たお話が沢山あり、他人事ではないことは実感している、と云います。

社会保険労務士が云うには、「この小説のエンディングはまだ甘い」と云います。
厚生労働省が発表している夫婦二人、夫厚生年金、妻数年の独身時代の厚生年金と第3号被保険者の場合のモデルケースで 月22万、という数字を信じている社会保険労務士は誰もいない、と云います。
厚生労働省が発表している数値はあくまでも、平均値であるのと、現在貰っている団塊世代の実績値まで含まれて いると云うのです。
給与がどんどん減っていき、消費税増税が今後続くのを考慮すると、自分のような独立した、 個人営業の社会保険労務士の老後を考えると、この小説のようなソフトエンディングは考えられない、と云っていました。

後書き
カミサンは今、同じ著者垣谷美雨の「夫の墓には入りません」を読んでいます。
内容は、介護問題と遺産相続に関するお話のようです。
私も読んでみて、面白いようでしたら、次週、ご紹介致します

posted by 西沢 at 08:04| Comment(0) | TrackBack(0) | シニアライフ
この記事へのコメント
コメントを書く
トラックバックの受付は終了しました

この記事へのトラックバック