そんな時、新聞の特集記事「人生の最後を見つめる、それぞれの最終章」という記事が目に入りました。
子供のいない夫婦は、いつかは一人になる時がくる事は解っています。
しかし、日本全国の男性、否、世界中の男性は、自分が先に逝くと疑いもなく信じています。
確かに、人類の男女の間には平均的な余命の差があり、生物学的にも立証されている事実ですから、そうなんでしょうが、しかしそれが全ての男女・夫婦に当てはまる訳でもなく、妻、女性が先に逝くことだってありますが、統計的には先に逝くのは男性です。
20年の国勢調査によれば、65歳以上の高齢者で配偶者と死別した女性の割合は35%で、男性は同9%だった。これが75歳以上になると比率はさらに高まり、女性の51%、男性の15%が、配偶者との死別を経験しているのだ。
カミさんはこの統計を引き合いにだして、「私が先に逝くことも考えて、家事・炊事・洗濯・買物も今からやってもらういい機会よ」とおつしゃいます。
特集記事は「最愛の妻の死」によせられた感想が掲載されていました。
恐らく読者が期待しているのは、最愛りの妻をなくして途方にくれ涙する夫の手記なのでしょう。
妻の死と自殺一例として鎌倉文士江藤淳の例
(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
退職後鎌倉に越してきて、写真クラブに入って色々写真好きの方々のパソコンサポートでお宅に伺うことが増えました。
その一人の方のお宅に伺う時に、道に迷いとおりすがりの方に住所を告げて教えていただいた時、「ああ、奥様の後をおってなくなった作家、江藤淳さんのお隣さん」ですね。
と云います。
作家・戦後日本の著名な文芸評論家で、小林秀雄没後は文芸批評の第一人者とも評された。鎌倉文士の一人、20代の頃から長らく文芸時評を担当し、大きな影響力を持った。
1998年(平成10年)12月、癌により妻の慶子が死去。妻を亡くしてからはかつてのような気力を失っていったと言われている。
妻看病中に前立腺炎を患い、1999年6月には脳梗塞におそわれた。
最後は自らを「形骸」とし、1999年7月21日、鎌倉市西御門の自宅浴室で剃刀を用い、手首を切って自殺、66歳没。
遺書には「心身の不自由は進み、病苦は堪え難し。去る六月十日、脳梗塞の発作に遭いし 以来の江藤淳は形骸に過ぎず。自ら処決して形骸を断ずる所以なり。
乞う、諸君よ、これを諒とせられよ。平成十一年七月二十一日」とあった。
妻の葬儀のあとのことで、自身も脳梗塞の後遺症に悩んでいた。ライフワークであった『漱石とその時代』は、数回を残し未完に終わった。
妻の闘病生活を綴った『妻と私』を残し、続く『幼年時代』も未完に終わった。
まあ、これが子どものいない、わりと知的社会階層の男性の死とし受け入れられているケースだと思います。
しかし、プレジデントには、妻に先ただれて男性の投稿記事がありました。
ようやく私に自由な時間がきた。
30年以上、どこに行くのもいつも妻と一緒だった。
妻は出かける前の化粧や洋服選びに時間がかかるし、買い物の時間は長いし、荷物は持たされるしで、本当に一緒に出かけるのが億劫だった。
でも、これからはひとりでどこへでも行けるのだ。
まず何をしたいか?
そうだ、妻が生前に溜め込んだ服や食器を捨てよう!
まとめてゴミ袋に入れて、業者にでも引き取ってもらえばいいか。
気に入らなかったアジアン風の籐(とう)のベッドも、食器棚も本棚も全部捨てる!
50枚近くある犬の服も、こんなにはいらない。元々うちの犬は、服を着るのが嫌いなのだ。
これまで妻がうるさいから行けなかった友だちとの飲み会も、「毎晩でも付き合うよ」と友人たちにLINEしとこう!
そうそう。歌舞伎町のキャバクラのあみちゃんにも、もう堂々とLINEできるのだ。
LINEの通知音も消さなくていいし、男の名前で登録しておく必要もなし
しかし、 妻に先立たれ「自由だ!」「天国だ!」と全くならず・・・
「なんでもない日常ばかり思い出されて仕方ない。あれが幸せだと今になって気づいた」
私が先に逝くはずだったのに、現実は逆だった。
そして、妻が先に死んだからといって、冒頭に書いたようにはならなかった。
なぜならなかったのだ?
自由を手に入れ、ひとり暮らしを満喫し、新しい彼女でもつくって、優雅に海外にでも遊びにいけばいい。なぜそうしない。
現実は、未だ喪失感に苛まれ、ただ無為に4年の時を過ごしただけ。
LINEに友人からメールが来ても、既読スルー。キャバクラのお姉ちゃんはブロックした。五十肩でお姫様抱っこなんか到底無理! ひとりでは焼肉屋にすら入れない。
パーティーどころか、今日もせっせと自炊して、ひとりで侘びしく「金麦」を飲むだけ。
それが現実だ
ネットAIの解説に寄れば「妻に先立たれた夫」は
妻に先立たれた夫は「男やもめ」「寡夫」「鰥夫(やもお)」などと呼ばれますが、一般的には区別する呼び方が定着していません。
妻に先立たれた夫の寿命は平均3年という説があります。
妻が先立つと夫の余命は5年縮まるという説もあります。
妻の死後は、精神的にこたえることがあり、身体の半分がもぎとられたような気持ちになることがあります。
妻の死の直前の苦しむ姿を目の当たりにしているため、度々それがよみがえることがあります。
妻が使っていた道具がそのままになっているため、妻がいるような気がすることがあります。
妻がしていた家事をするごとにあれこれ思い出して、悲しい気持ちになることがあります
妻を亡くした男性は、余命が短くなる可能性が30%も高かった
妻が先立つと夫の余命は5年縮まり、夫が先立つと妻の考えて余命は延びる…
妻の死後、夫に一番多い"死因"とは
妻が先に亡くなると、夫は酒やたばこの量が増える
なぜ、こんなに差があるのか。夫の妻への依存の割合が高いからです。
多くの場合、65歳を過ぎたあたりから、夫にとっては妻だけが大きな心の支えになっていく。
だからこそ妻のほうが先に死ぬと、夫はガタッとくる。ガタッときて、何に対しても、興味も持てなくなり、好奇心もなくなる。欲望もなくなるのです。
とりわけ死因の中では、心臓病が一番多い。なぜかというと、妻が先に亡くなると、酒やたばこの量が増えたり、甘い物を食べ過ぎたりなど、アディクション(依存性)の状態になりやすいからです。それが血液の凝固性を高めて、心筋梗塞が起きやすくなる。まさにブロークン・ハートです。
がんになった場合も同様で、がんになったら、最初の2カ月はガタガタッとくる。ガタガタッと心が壊れて急性のうつ状態になっていく。
これも対象喪失です。自分の命はもう長くないんだ。そういう対象喪失状態に陥っていきます。
「対象喪失」というのはこのように、命を失う、健康を失う、妻を失う、大事な人を失う、といったように「大事な何かを失うという体験」そのものです。
妻の死について書き留めるという自己癒やしの法
奥様をなくされたNさんは8年間の介護を経て逝った妻への思いを手紙に綴った。
二人の出会いから、親に猛反対されての結婚、子どもに恵まれなかったが、二人して海外旅行によくでかけて、テレビの中に二人で行った国々の映像を見るたびに思い出をはなしていたこと、しかし70歳を過ぎて妻は寝たきりになり、Nさんは買物をしたり、食事を造ってきた。
死は突然やってきた。いつもより元気そうな妻の頭を両腕で支え、そうめんを食べさせた直後のこと、「美味しい」と云った後に天井を向き目を開き、ガクンと顎を落とした。
もう何度も呼びかけたが、返事はなかった。
それから三ヶ月、暗い自室にこもり遺影にてを合わせて泣いた。今年七月で一周忌、今も「いってらしゃい」「ごはんですよ」の声を思い出し、涙がとまらない。
今回、書くことをすすめられ、悩んだ。書いてみてどんなに妻が好きだったか解った。
今も妻がフラッシュバックして苦しい、でも書いて良かった。書かなくとも写真にするとか俳句に読むとか、表現方法は何でも良い、最愛の人はどんな人で、どんな時間を一緒に過ごしたか、死によってバラバラになっていく記憶の断片をまとめ、今とつなげる。そうやって残された人が前を向くことを死者は望むはずたから」と
私達夫婦の場合、1,000%私が先に逝くのは解っています。
そしてカミさんは私のが逝った後、恐らくですが20年は生を保っていることでしょう。
もうその頃は、私と暮らした思い出も残っていないかもしれません。
人は忘れることで生きていけると思っています。
いろいろな生きていた頃の思い出・経験など覚えていたらたまったもんではないはずなんてすから。
そう、我が家は全てにおいてサバサバしており、カミさんの写真も私の写真も今現在、何も残してありません。
カミさんは「人は忘れることが出来るから生きていけるのよ」とほざいています。
「解った認知症に女性が多いのは、これが原因かも知れない」
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