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2024年11月04日

南丹の森を知る│第一回「獣害から森を再生する自然配植とその技術」

かおだしたとき:2024年11月4日(月・祝)9時30分〜16時
かおだしたさき:天引倶楽部、園部町天引の山林

南丹の森を知る第1回.jpg

特定非営利活動法人つむぎが独立行政法人環境再生保全機構(地球環境基金)の支援を受けて開催する「南丹の森を知る」と題した3回シリーズの第1回に、ファシリテーター役としてかおだししました。

この3回シリーズのきっかけとなったのは、2023年2月開催の「農×地域シンポジウム 未来を耕す これからの農と地域を考える※1」(NPO法人つむぎと同実行委員会が主催)で、分科会の1つとして「森林と農村」をテーマにディスカッションが行われた際、「山林所有者不明」「荒れていて入山困難」「獣害」「林業の担い手不足」「土砂災害」「森や山に対する市民の関心が低い」などといろいろな角度の課題が出されました。それを受け、今年度の3回シリーズは、「生物多様性」「林業」「学びや遊びの場」の3テーマで、個人や団体、行政が今後どのような取り組みや関わりができるのかを模索する場として設けられました。

●NPO法人つむぎ 「南丹の森を知る」
https://tsumugi-kyoto.net/2024/10/11/nantanforest2024/

◇ 11月4日:終了
 「獣害から森を再生する自然配植とその技術」
   講師 自然配植技術協会 高田研一さん
 ファシリ NPO法人テダス 田畑昇悟

◇ 11月30日
 「林業の施業地視察@日吉町と市民による取り組み事例@びわ湖源流に学ぶ」
   講師 日吉町森林組合 堀田暢さん
      朽木GreenKONG 廣清乙葉さん
 ファシリ 自伐型林業家 林益郎さん

◇ 1月19日
 「“痕跡探し”で森の動物を知る」
   講師 南丹Wildlife tours 榎本拓司さん
 ファシリ NPO法人つむぎ 前田敦子さん

11月4日の第1回目は、生物多様性をテーマに自然配植※2の専門家である高田研一さん(自然配植技術協会 会長、NPO法人森林再生支援センター 常務理事)がゲスト講師に招かれました。午前中は高田さんからの講演、午後から会場の裏山に入って現地研修、下山後、学びの共有や意見交換などを行いました。私ははじめて知ることばかりで、ぎゅっと詰まった濃い時間となりました。
参加者は約20名で、森林プランナーや自伐林家、山主、ネイチャー活動プログラマー、集落活動の支援者など。「苗木を育ててみたくなった」「地球温暖化と森林との関係がよく分かった」「山を見る視点が少し分かった」「多様性の重要さが分かった」「もっと学びたい」「防獣するだけでは自然に回復しないところまできていると思った」などの感想がありました。

私はここ1年ほどの間、山や森について心地の悪さのようなものを感じていました。
関わりのある山が、多様な選択肢やメリット・デメリットといった議論がないまま大規模な森林計画※3で工事が進められることになりました。そのことに不満を持つ人も少なからずいます。また一方では、自伐型林業※4といわれる施業方法に注目する人が身近にもなってきています。2023年のシンポジウムに刺激を受けた市民や、松茸復活・城跡整備・トレッキングコースの整備といった活動をはじめる集落も増えつつあります。そうしたこともあって、日常の会話のなかで山や森が話題になることが増えてきていました。それは嬉しいのですが、会話がかみ合っているようで噛み合わない、そんな心地悪さがあったのです。同じことを言っていても、違った思いや規模をそれぞれが思っているような、そんな感覚です。
高田さんのお話の中で森林には「経済林」「防災林」「景観林」「生物多様林」の視点があることを知りました。この1年ほどの会話では、どの視点を主に、または従として語っているのかをお互いが明らかにしないまましていたせいで心地悪さになっていたのだろうと気づきました。また、これら4つの視点のどれも持たず、森林を放置していることへの罪悪感、それから森林に関与していること自体を善だとしたい感情のようなものを相手から感じ、目的不在の気持ち悪さもあったのだと気づきました。

後日、今回の参加者たちの数人から、代わりばんこに「地域性苗木※5を一緒に育てませんか」と誘われました。高田さんの話が、とても魅力的だったのでしょう。私もまんざらではありません。
(記事:田畑昇悟)

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【農×地域シンポジウム 未来を耕す】※1
地方移住や“小さい農”をはじめたい人、地域づくりに関わる人、農に携わる人など、さまざまな立場の参加者100人以上が”農”をテーマに集い、農と地域のこれからを話し合ったシンポジウム。2023年2月、南丹市日吉生涯学習センター遊youひよしで開催。

〈参考〉特定非営利活動法人つむぎ「農×地域シンポジウム 未来を耕す(https://tsumugi-kyoto.net/2023/03/30/smallfarmproject2023booklet/)」より。

【自然配植】※2
自然配植は、その場所の立地を読み解き、そこに適した樹種を選び自然のもつ多様な力を生かしながら植栽していく技術です。自然配植による緑化では苗木を使い、密に、あるいは疎に組み合わせて行われます。既往の樹林化工法では陥りがちな単純な同齢林とは異なる群落を志向しています。

〈参考〉自然配植技術協会「自然配植とは(http://www.shizenhaisyoku.org/page1/shizen1.html)」より。
〈参考〉一般財団法人環境イノベーション情報機構「事例6-1:宮川森林組合の取り組み(https://www.eic.or.jp/library/bio/case/c6_1.html)」より。

【森林計画】※3
森林計画は、森林整備、林業経営を行うために立案される計画です。無秩序な森林伐採による荒廃、無計画な伐採による森林資源の減少を防ぐため、森林法によって森林計画制度が定められています。規模によって分類され、農林水産大臣がたてる「全国森林計画」と「森林整備保全事業計画」、都道府県知事がたてる「地域森林計画」、森林管理局長がたてる「地域別の森林計画」、市町村がたてる「市町村森林整備計画」、森林所有者又は森林の経営の委託を受けた者がたてる「森林経営計画」、それに「一般の森林所有者に対する措置」があります。

〈参考〉林野庁「森林計画制度とは(https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/sinrin_keikaku/)」より。

【自伐型林業】※4
自伐型林業には、森林所有者が経営・管理・施業を委託する林業形態と、農家林家などによる自家伐採がある。一般的には、作業道の原則が道幅2.5m以下・切り高1.4m以下で、毎年間伐生産しながら長期的に営む森林経営手法のことを指します。

〈参考〉サストモ「大規模伐採ではなく「自伐型」林業を(https://sdgs.yahoo.co.jp/featured/328.html)」より。
〈参考〉Wikipedia「自伐型林業(https://ja.wikipedia.org/wiki/・・・)」より。

高田さんは自伐型林業のことを”良心的な林業”と表現されていました。

【地域性苗木】※5
地域性苗木は、その地域に自生する樹木の個体から種子を採取して育てた苗木のこと。地域性苗木の育成・植栽によって移入種による遺伝子の攪乱を防ぎ、「種の中の多様性」を保全することができます。

〈参考〉一般社団法人日本植木協会「地域性苗木(https://www.ueki.or.jp/?catid=100&itemid=1497)」より。
posted by テダス at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 南丹市広域
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