かおだしたとき:2024年3月10日(日)19時30分〜21時30分
かおだしたさき:とのだとーくホール(日吉町殿田)
日吉町殿田区の自治運営の改革案を検討する委員会に2年間、アドバイザーとしてかおだししてきました。
検討委員会の発端は2022年4月で、殿田に移り住まれた方々から現状に対する不満や疑問が組長会(9つの組代表による意思決定機関)で投げかけられたことにはじまります。それら意見を受けて同年7月、区自治会が公認する形で公募有志11人による検討委員会が発足し、区三役とともに検討を重ねてこられました。また、NPO法人テダスにアドバイザーとしての出席依頼があり、私が担当して約2年間関わらせていただきました。
2024年3月10日に委員任期満了による最後の検討委員会が開かれ、これまで話し合ってきた内容を区に報告するべく最終のまとめを行いました。委員のみなさんは「濃い話し合いができた」「関わることができて良かった」「しんどいこともあったが、勉強になった」「実りある2年間だった」などと話し、胸が熱くなっている様子でした。私自身も殿田区が大きな一歩を踏み出す瞬間に立ち会えたことに感極まる思いでした。「打ち上げをしよう」という話になっており、私も誘っていただけるとのことで、楽しみにしています。
この2年間、委員会の進め方はすごくシンプルで、課題に感じていることをはじめに棚卸しし、委員のモチベーションを基準に優先順位を決め、一つずつ検討するというもの。検討が終わった項目から順に、組長会や通常総会、臨時総会で審議されて形になっていきました。また、“誰が言ったのか批判”を避けるためのルール「議事録には発言者名を記さない」や、力の集中を避けるためのルール「自治会長は委員長と兼務できない」などの配慮もありました。
委員会で出された課題は15項目ほどで、それに対して検討できたのは8項目でした。
【検討された内容】
1)会計事務の効率化(定期預金の見直し、キャッシュカードの導入、複式簿記による会計ソフトの導入など)
2)財務の見直し(積立金の見直し、区費額の見直し、各種団体への支援金の見直しなど)
3)認可地縁団体としての規約遵守(総会議案の事前配布、会員名簿の整理など)
4)2つに分けられていた行政区の統一
5)役員体制の見直し
6)役員選考時期の前倒し
7)区独自の助成金制度 ※総会承認前のため未定
8)事務局の設置(担ってくれる団体に委託)
特に(7)と(8)の内容はほか地域からも注目を集め、2023年度だけで3件の視察を受け入れられました。
「(7)区独自の助成金制度」は、自治会役員主導の取り組みだけでは多様化する地域課題に対して限界があり、また役員への過度の負担になっているという実態を受けて検討された内容です。区民有志の団体、さらには区外の力も積極的に取り入れようというねらいで、殿田区民のためになることであれば何でも受け付けようとされています。また、地縁団体が持つ特有の力として全戸配布や回覧板といった「広報力」と、ホールや広場といった「施設」にも注目し、申請があった団体には積極的に使ってもらおうとされています。
この制度は、日吉町五ヶ荘地域の住みよいむらづくり協議会の取り組みを参考にされました。
「(8)事務局の設置」は、殿田区が抱えている3つの課題、@人口減少や働き方の多様化による「役員の成り手不足」や、年替わり持ち回り組長から三役を選出していることによる「Aノウハウが蓄積しにくい」と「B年度によって適材適所の役職にならない可能性」を解消するために検討されました。考えたり決めたりする“頭の役割”を役員の仕事とし、作業と情報蓄積の部分を担う“体の役割”を事務局がすることで、3つの課題の解消を図ろうとされています。
昨年9月、「殿田を愛している」を条件に事務局をしたい人を全戸配布チラシで公募したところ、43〜67歳の区民ら3名が名乗りを上げて任意団体「とのだofficeworks」を組織。役員会での審議などを経て、同年12月に委託契約を結ばれました。
検討委員会のミッションは「@円滑な自治運営のやり方を検討する」と「A殿田区民の住み心地向上策を検討する」の2つでしたが、進め方のコンセプトとして「“話し合えば変えられる”という前向きな空気感を次世代に残す」を掲げて話し合いを続けてこられました。最初に棚卸しをした全ての課題に対して検討しきれませんでしたが、コンセプトにしていた「話し合えば変えられる」の空気感を十分に残す成果だったように思います。
南丹市には185の行政区がありますが、自治運営のやり方を積極的に見直そうとする区は少なく、何年も同じやり方を繰り返すところばかり。近年で私が知っているうちでは、殿田区のように積極的に話し合っているところは、園部町宍人区だけです。
集落の支援に関わっていると、「昔からこうだった。(だから変えられない)」という言いぶりを時々耳にします。長老的ポジションの人がそう言ってしまうと、もう何も言いたくなくなったり、この人が死ぬまでは我慢しとこうと思ったりする若者もいるでしょう。しかし、集落の歴史を振り返ってみると、“ずっと前から同じ”の認識がだいぶん間違えていることに気づくと思います。ほんの30年ほど前には、毎年のように見直しをされていた集落も多くあるのです。興味があれば、(残っていればですが、)昔の議事録を見てみると面白いですよ。
自治運営のルールを含めて「集落規範」というのは、その時のご都合に沿って能動的に更新されていくのが本来の姿です。人口の流動があるとかないとかはそれほど関係なく、むしろ話し合いの場があることの方が重要です。
今のやり方で行き詰っていないのであれば、そのままでよいのですが、話し合う機会や習慣をじりじりと失って「変えたいけど変えられない」という状態に落ちてしまわないよう、日々小さな変革を話し合われることをお勧めします。
話し合いの始め方に興味があれば、『季刊地域(農山漁村文化協会)No52〜55』で私が執筆していた連載「集落会議のつくり方」を読んでいただけると参考になると思います。連載では、殿田区の事例にも少し触れています。バックナンバーは、こちら[田舎の本屋さん]から購入できますよ。
https://shop.ruralnet.or.jp/search/?ctid=012124
(記事:田畑昇悟)
2024年03月10日
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