かおだしたさき:南丹市園部文化会館「アスエルそのべ」
ひよし魅力発信プロジェクトが制作するオムニバス4編映画「ボクらの歳時記」の夏編「地蔵に願いを」と春編「天道花」の上映会が南丹市園部文化会館「アスエルそのべ」であり、かおだししました。
今年度は同様の映画上映会が南丹市日吉町内の各地域と、園部町、美山町で開かれています。園部での上映会では、「地蔵に願いを」と「天道花」の上映と、監督・助監督・出演者によるトークショーが行われました。来場者は約120人、園部町内から来られた方のほか、日吉ダム建設で廃村した天若村や中村の出身者の方も来られていました。
〜あらすじ〜
映画「地蔵に願いを」
ツクルは3カ月前に東京から田舎に越してきたばかりの中学1年生。同級生で移住者の先輩であるトオルに誘われて、「絶対に探しちゃいけないお地蔵様」を探しに行くことになる。このお地蔵様は地蔵盆の日に見つけると、ひとつだけ願いが叶うらしい。地蔵探しの案内役として地元っ子の同級生マモルが加わり、3人で地蔵盆の日に森へ入っていくのだが、道に現れた不思議な鳥居をくぐった後、道に迷ってしまう…。
映画「天道花」
ミサキは父の再婚によって義母や義妹と一緒に父の実家に移り住んでいる。新しい土地や家族を受け入れられない彼女は義母義妹に冷たく接してしまう。町にはダム建設によって水没した集落があり、ミサキの実の母はこの集落の出身だった。ミサキは学校で出された課題をきっかけに、今はもう亡き母の故郷について友達と一緒に調べ始めていく。
両作とも、地蔵盆や天道花、花祭りといった民俗文化と、日吉ダム建設による移転者の生の語りといったノンフィクションが、フィクションのストーリーに盛り込まれた映画です。来場者のなかには、昔を思い出して涙を流されている方も少なくありませんでした。
私は、両作とも裏方や演者(ミサキの父役)として関わりました。同プロジェクトの映画制作は、監督の田中大志さん以外全員が映画素人で地域住民。「私も関わりたい」と言ってどんどん仲間が増えていきます。撮影に関わる演者や裏方、資金集めや上映会の段取りをする裏裏方のみなさんを見ていて、地域コミュニティのメッシュが強化されていく様子を感じています。朝から晩まで監督のOKが出るまで撮影を繰り返し、撮影合間に同じ釜の飯を食べたり、川や山で遊んだり、そうしたなかで関係性が醸成されていったのだと思います。
監督は、演者が素人だからと言って、妥協したOKは出してくれません。3〜5秒のシーンであっても何十回も撮り直します。家族でごはんを食べるシーンで、4時間ぐらいごはんを食べ続け、お腹パンパンで苦しんだのもよい思い出です。
最近読んだ小説『森田繁子と腹八分』(河ア秋子 著)で、「一緒に作業して飯を食って語り合うことで、関係が深まる」という場面がありました。地域映画制作もまさにそれだと思います。
4部作のなかでできているのは、今回上映した夏と春。残り2作ができれば、いったんの完結となります。現在、冬編の制作中で、五ヶ荘地域を舞台に撮影されています。夏・春編に負けず劣らず、すばらしい作品になりそうな予感がしています。お楽しみに〜。
(記事:田畑昇悟)