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種プロのブログ〜種あったね!

 種プロ(種プロジェクト)は「NPO法人 食の自給ネットワーク」の「種」をテーマにしたプロジェクトチームです。
 流通している野菜の多くは、規格がそろい、経済効率を求める市場に合うように作られた「F1種」です。一方、地域にはその風土に合って継承されてきた野菜があり「在来種」等といわれています。
 種プロは、在来種の栽培に取り組む農家との交流や、種に関する学習等を行っていきます。


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固定種、F1種、遺伝子組み換え種子、ゲノム編集種子 その6 [2021年11月29日(Mon)]
 2021.11.20に行った学習会の様子を紹介していきます。
 今回は最後、食べ物の選択と経済格差についてです。

 新しい技術による種子の作られ方と社会的な価値、そして遺伝子組み換えとゲノム編集に関する問題について考えてきました。
 最後に、学習会の中で提起された遺伝子組み換えとゲノム編集によって生まれてくる食べ物について経済格差の観点から考えてみます。

 さて、遺伝子組み換えまたはゲノム編集(以下 ゲノム編集に統一します)の生物から得られた食品については「ゲノム編集生物由来の食品である」ことを明記すべきだということは一致しました。
 ですが、これは「選択できること」を前提とした対策なのです。

 その食品が全てゲノム編集生物由来の食品では選択の意味はないですし、ゲノム編集生物由来ではない食品はすごく高価だったりすると選択できる人はl限られてきます。
 そうなると「ゲノム編集生物由来の食品である」ことを明記することはほとんど意味がなくなります。明記したら、貧富の差の象徴のようになってしまうかもしれません。

 今だって、経済的に余裕のない家庭は、食べ物の素材に気を配る余裕はありません。
 遺伝子組み換え云々で選択なんて、ある程度の経済的余裕がないとできないことなのです。
 
 食料としてゲノム編集生物を開発する目的の第一は、効率よく食料を確保することでしょう。
 言い換えればこれまでより経費をかけずに、そしてより多く生産するということ、すなわち消費者に対してはこれまでと同じレベルの味でより安く多く提供するということです。
 日本の現状を見れば、もしこの目的を達成するゲノム編集生物由来の食べ物が現れたら、あっという間に天然の方の食べ物を圧倒すると思います。
 そういう食べ物が増え、市民権を得れば「ゲノム編集生物由来の食品である」という表示は意味をなさなくなります。(ゲノム編集生物由来の食品ではないと言う表示は生き残るかも)

 確か、この辺までがこの日の議論だったと思います。
 これではどうにも収まりが悪いので、ここから少しブログ担当者の思いを追加します。


 食べ物の質は健康に影響を与えるし、食べ物の質を考えることも健康に影響を与えます。
 そして、健康は次の世代に影響していくし、考えていくことも知恵として次の世代に影響を与えます。

 ゲノム編集生物の育成が、肥料や飼料の消費が天然のものより少なくて済み、多くの人がそれを利用することでその効率が高まるものだとしたら、その中で非効率な天然のものを求める人は他の人に迷惑をかける存在として大きく非難されるかもしれません。
 食べ物の選択は任意のはずですが、事実上、よほどの強い意志や特権がないと天然のものは買えなくなってしまうかもしれない。

 では、この日本でどうすればゲノム編集生物由来の食べ物に頼らない社会を作り出すことができるのか?

 それは「食の自給ネットワーク」の目的そのものです。
 日本の食料自給率を上げるのです。
 ゲノム編集生物が一般化する前に。
 
 食べ物を輸入に頼っている限り、いずれゲノム編集生物由来の食べ物は大量に入ってくるでしょう、遺伝子組み換え食品のように。
 でも、輸入に頼らない状態であれば「ゲノム編集生物はNO!_」と言うことができます。
 経済格差にほぼ関係なく、多くの人がゲノム編集生物由来ではない食べ物を手にすることができるでしょう。

 それに…もし、それでも国内で生産されるものの主流がゲノム編集生物に置き換わってきたととしても、国内で管理できる分まだマシです。
固定種、F1種、遺伝子組み換え種子、ゲノム編集種子 その5 [2021年11月28日(Sun)]
 2021.11.20に行った学習会の様子を紹介していきます。
 今回は、新たな技術と私たちというテーマです。
 当日は、遺伝子組み換え作食品の輸入が認められてから25年経った現在、あらためて私たちが遺伝子組み換えの何を、そして新たな技術としてゲノム編集の何を不安に思っているのかを話し合いました。
 また、食品に関わらず医療分野でもゲノム編集技術が使われている中で、何を基準に判断していけばいいのかについても話し合いました。
 時間がなく、急ぎ足で進んだので結論は出ませんでしたが、この記事ではこの日の議論を踏まえ、現在の「遺伝子組み換え」「ゲノム編集」の定義等を紹介し、私たちはこれからどのように新しい技術に対峙していくのを投げかけたいと思います。


 遺伝子組み換えから始まった食料への「遺伝子への直接操作」という技術の適用は、ゲノム編集という技術により新しい局面に入ったと言えます。
 当初の遺伝子組み換え技術は、対象の生物に別の生物のDNAを組み込むだけで、どこに組み込むかまでは特定できませんでした。
 しかし、ゲノム編集技術により、対象の生物のDNAのどの部分を切り取り、別の生物のDNAをどこに組み込むかまでを特定・実行できるようになりました。
 このことは遺伝子組み換え生物を作れる主体が多様になったことを示します。
 農薬とセットで遺伝子組み換え作物を普及させていたモンサント社が医薬品関係を軸とするバイエル社に買収されたのはその象徴のように思います。

 さて、ゲノム編集を経た現在の遺伝子組み換えについて確認しましょう。

 遺伝子組み換えの定義です。
 食品の観点から見てみます。
 消費者庁HPではこのように定義づけしています。
 「遺伝子組換え食品とは、他の生物から有用な性質を持つ遺伝子を取り出し、その性質を持たせたい植物などに組み込む技術を利用して作られた食品です」

 環境相中央環境審議会のカルタヘナ法におけるゲノム編集技術等検討会での定義を見ると簡単に言うとこのように定義されます。(ゲノム編集技術により得られた生物のカルタヘナ法上の整理及び取り扱い方針について
 「ウイルス・ウイロイドを含めた生物について、その細胞からDNA(RNAやmRNAも含む)を取り出してそのDNAに何らかの加工をして、それを再び細胞内に戻されたことで組み替えられたDNAを持つ生物」
 「ウイルス・ウイロイドを含めた生物について、他の生物のDNA(RNAやmRNAも含む)がその生物の細胞内に入れられたことで組み替えられたDNAを持つ生物」

 この他、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)第2条の2項第二号から「(ウイルスや化学薬品を使って)異なる科に属する生物の細胞を融合させた細胞を持つ生物」(融合すると細胞の核が一つになる)

 要するに加工されたDNA(RNAやmRNAも含む)か他の生物のDNA(RNAやmRNAも含む)が細胞内に移入されたことにより本来のDNAが組み替えられた生物を遺伝子組み換え生物と言い、細胞内に移入されてもDNAが組み替えられなかった場合は遺伝子組み換え生物とは言わないのです。
 なので、DNAを切るだけのゲノム編集では遺伝子組み換え生物とは言わないのです。
 突然変異が起きて遺伝子が組み替えられているのにね。

 しかし、異なる意見もあります。
 遺伝子治療分野からは遺伝子組み換え技術を利用した治療を進める観点から、国民の遺伝子組み換えに関する不信感をなくすために正しい情報を発信すべきだとしています。その中で「ゲノム編集は遺伝子組み換え技術の一つである」と言っています。
 ここで言うゲノム編集技術の適用には、肉厚の魚などの食材の開発や新型コロナウイルス感染症ワクチン(mRNAワクチン)も含まれています。
(首相官邸HP 健康・医療戦略推進本部 第3回再生・細胞医療・ 遺伝子治療開発協議会資料) 


 さて、遺伝子組み換えの記事で指摘したように、今の私たち日本人は「自分の国で食料の自給もできないし、遺伝子組み換えを作ることも拒否してるくせに、いっぱい食料を輸入して、輸入したものなら遺伝子組み換えでもそんなに気にしない、ご都合主義の不思議な人たち」です。
 これからどうしたらいいのでしょう?

 最後に、みなさんに投げかけをしてこの記事を終えようと思います。

 
 殺虫成分を持った遺伝子組み換えの大豆、あなたは食べたいですか?

 殺虫成分を持った遺伝子組み換えの大豆を含んだ飼料を食べて育ったニワトリ、あなたは食べたいですか?
 ※資料もニワトリもたくさん輸入されてるので多分食べてますよね。

 生ワクチン(弱体化した細菌やウイルスが含まれたワクチン)、不活化ワクチン(死んだ細菌また不活性のウイルスが含まれたワクチン)を接種または飲水投与されたニワトリ、あなたは食べたいですか?
 ※フツーに行われているので多分食べてますよね。

 遺伝子組み換えワクチン(遺伝子組み換えされたウイルスが含まれたワクチン)を接種または飲水投与されたニワトリ、あなたは食べたいですか?
 ※遺伝子組み換えワクチンはすでにありますが、ニワトリ
  用の遺伝子組み換えワクチンは聞いたことがありませ
  ん。でも、これから実用化されるかもしれません。

 mRNAワクチン(説明は文末付記に)を接種または飲水投与されたニワトリ、あなたは食べたいですか?
 ※まだありませんが、これまでのワクチンより安く、簡単
  にできそうです。今後、実用化されるかもしれません。

 さて、みなさんは何を根拠にどこで食べる食べないの線を引きますか?

 次回は、当日の会議で提起された、食べ物の選択に経済状態が大きく関わっていることについて触れます。


付記 :mRNAワクチンについて)
 mRNAワクチンの代表的な例が新型コロナウイルス感染症ワクチンです。
 この感染症は、ヒトの体に入ったコロナウイルスがスパイクタンパク質を使って細胞に結合することによってこれをヒトが異物(抗原)として感知し、それに反応して侵された細胞を殺すために抗体を作り出して戦い出すこと(発症)で起こります。
 このスパイクタンパク質を作り出す遺伝子情報(mRNA)をゲノム編集技術で解読し複写して作り出してワクチンに入れたのがmRNAワクチンです。
 あなたがmRNAワクチンを接種すると、あなたの体の細胞は細胞に入ったmRNAの情報を読み解き自身の細胞の成分を使ってスパイクタンパク質を作ります。それをあなたの体は抗原として認識し、抗体を作り出します。
 なお、mRNAはDNAの中に入り込んだり、mRNAの情報がDNAに転写されることはないと言われています。
 ただし、これは現時点で言われていることです。
 誰でも普通に思いつくことだと思いますが、例えば、本来は遺伝情報になかった他の生物(ウイルスは生物ではないけど)の遺伝情報でスパイクタンパク質を自ら作り出したと言う経験が遺伝子レベルでどう処理され、それが子孫にどう伝わっていくのか(伝わらないのか)は誰もわかっていないのです。
固定種、F1種、遺伝子組み換え種子、ゲノム編集種子 その4 [2021年11月27日(Sat)]
 ※2021.11.27 一部修正しました。

 2021.11.20に行った学習会の様子を紹介していきます。
 今回は、ゲノム編集種子について。

 まずは基本から。

(1)ゲノムとは?
    「生物のもつ遺伝子(遺伝情報)の全体」のこと。

(2)これまでの品種改良と遺伝子の関係
     生物の体の中では、自然環境下でもDNAが切れ
    てしまうことがよくありますがが生物はそれを元
    通りに修復します。
     でも、たまに修復の仕方を間違えてしまって、
    その部分のDNAの配列が変化して、その生物の性
    質が変わってしまうことがあります。
     突然、同じ種の中で変わったものが現れるので
    「突然変異」と言われます。
     これまで見てきた固定種作りやF1種作りという
    う品種改良の手法は、DNA配列の変化を「突然」
    「偶然」行うのではなく、人が時間や手間をかけ
    て行っていくものです。その過程でDNA配列が変
    わってくので、その植物の性質が変わるという点
    では突然変異と同じです。
    注)細胞中のDNAには遺伝情報を持つ部分と持た
     ない部分があり遺伝情報を持つ部分を遺伝子と
     いいます。

(3)ゲノム編集とは?
     品種改良で使われる一般的なゲノム編集技術は、
    生物のDNAのどこを切るのか狙って切断すること
    です。
     ゲノム編集をするためにはその生物のDNA配列
    を正確に読み取らなければなりませんが、それは
    コンピュータで容易にできるようになりました。
     DNA解析により切り取りたいところを特定し、
    そこを集中的に切り続ければ、自然環境下と同じよ
    うに修復に間違いがおき、突然変異を人の手で起こ
    すことができます。
     ゲノム編集を行うためには、DNAの特定の場所を
    切るハサミの役目をするものが必要ですが、それも
    すでに「CRISPR/Cas9」に代表される手法が開発
    されており、容易にできるようになっています。
     要するに、例えば「もう少し収量の多い大豆が欲
    しい」と思えば、その大豆のなる量を抑制している
    DNA部分を特定して切り取ってしまい、同じ種なの
    のに、収量が際立って多い突然変異の大豆を作って
    しまうということなのです。
     これまで時間と手間をかけてやってきたものが、
    本当に簡単にできてしまうのです。
     さらに、最近では、DNAを「切らずに書き換え
    る」ゲノム編集技術も開発され、利用が進みつつ
    あるそうです。

(3)固定腫とF1種とゲノム編集種子の目的は同じ?
     固定種はヒトが毎年の種の選抜を繰り返し、一つ
    の品種としてどの株も同じようにできるようにした
    ものです。(同じ特徴を持つように変異していくの
    で、DNA配列が同じようになっていく)
     F1種は、違う品種をかけ合わせる試行錯誤を繰り
    返し、求める特徴を持つ品種が現れたら、毎年その
    配合で求める品種(同じDNA配列をもったもの)
    を作るものです。(これも〇〇という品種に△△と
    いう品種を配合した結果生まれた〇〇の変異種と
    言えます)
     遺伝子組み換え種子は、自然界では絶対に起きな
    いと思われる(突き詰めていうと本当に起きていな
    いと言えるのかは不明。全てを調べることなどでき
    ないから)遺伝子をもった種子なので突然変異とは
    異質なものでしょう。
     ゲノム編集種子は、突然変異が起きるように種子
    に人間が手を加えたものです。
     固定種、F1種、ゲノム編集…いずれも人間がその
    植物の特徴を変えていく、すなわち遺伝子の配列を
    変えていくのは同じです。
     違うのは遺伝子を直接操作するかしないかだけ
    でしょう。

(4)私たちはなぜゲノム編集を不安に思うのか
     種子に起きていることは同じこと、なのに、な
    ぜ私たちはゲノム編集種子(種子だけではなく、
    魚や家畜にも応用されていますが)を不安に思う
    のでしょうか?
     「ブロッコリー食べてるでしょう?あれも突然
    変異ですよ。ブロッコリー食べてどうにかなった
    って話は聞かないですよね?」
     そのとおりですね。
     でも、私たちの不安はその質問では解決され
    ません。
     この日の学習会で示された不安をはこうです。

    「ゲノム編集によって作られた種子は、人間の都
    合によって起こされた突然変異によって作られた
    ものであって、その植物が自然環境の中で生育す
    る中で起こった突然変異とは異質なもの。
     人間が起こした突然変異によるその植物への影
    響は現時点での人間の能力ないでしか推し量るこ
    とができない、だから、今後人体にどんな影響が
    起きるか分からない。
     この想定できない危険性は、食べた本人でなく、
    その子ども、さらにその子どもになって現れてい
    く可能性がある。それが一番の不安である」


 さて、 ここまでがこの日のゲノム編集種子についての議論でした。
 結論は、やはり遺伝子組み換えと共通する不安が示されましたね。

 ところで、上で示した不安をもう少し詳しく説明しましょう。
 遺伝子組み換えに関する記事と同じく、この日の議論から推測するものですが、やはり遺伝子組み換えと共通するものになります。

 ゲノム編集において想定する危険性は、強制的な突然変異によって起こされる植物の体の変化やそれによって作り出された何らかの物質です。
 このことによって人の健康上に悪影響が生まれ、例えば気づかないうちに何かのアレルギーを持ち、何かの要因によって突然それが発症するとか、内分泌撹乱化学部物質のように遺伝子を損傷したりしないかということ、そしてそれが遺伝情報として次世代へ伝わっていくことです。
 
 
 この記事のゲノム編集に関する部分は、以下を参考に作成しました。

 国研)農研機構 HP 「ゲノム編集とは」
  「品種改良とバイオ入門」
固定種、F1種、遺伝子組み換え種子、ゲノム編集種子 その3 [2021年11月25日(Thu)]
 2021.11.20に行った学習会の様子を紹介していきます。
 今回は、遺伝子組み換え種子について。

 遺伝子組み換え食品の輸入が認められたのが1996年です。
 あれから25年経ち、日本で栽培されて一般流通に乗っているのは青いカーネーションとバラだけですが、家畜の飼料や食用油脂や甘味料用にトウモロコシ、ダイズ、セイヨウナタネを大量に輸入しています。
 また、繊維用としてワタも大量に輸入されています。
 これらが原料としてではなく、加工品や衣服等としても輸入されていることを考えればものすごい量なのではないでしょうか。特にワタはほとんどなのでは?と思えます。

 その一方で、国内では栽培は厳しく制限されています。
 食料自給率37%の国なんだけどよほどの信念があるのかな?
 でも、前述のとおり輸入はいっぱいしてるんですよね。
 日本はろくに食べ物も作れないのに遺伝子組み換えは嫌だって。
 食べ物は他所から買えばいいっていっぱい買って、自分で作りたくないけど買ってきたものに入ってるのは仕方ないって。
 論理が破綻してますね、ご都合主義ですね。
 EUも遺伝子組み換えは拒否しています、食料自給率はフランスで125%、ドイツで86%、イギリスだって65%あって、それなりに自立しています。

 この日本人の考え方の一貫性のなさは、遺伝子組み換えとゲノム編集においてちょくちょく顔を出しますので注目していください。

 断っておきますが、種プロメンバーは、遺伝子組み換え作物はNO!です。
 
 さて、まずは「基本のき」。
 遺伝子についておさらいから順を追って調べましょう。

(1)遺伝子とは?
 遺伝子とは、細胞の核の中にあるDNA(デオキシリボ核酸)の一部です。
 でも、一般にはDNAも遺伝子も同義語で使いますね。
 遺伝子は20種類のアミノ酸を様々に組み合わせ様々なタンパク質を作り出す。
 タンパク質は、生命活動に必要な体内の化学反応を助ける酵素として働くほか、体の形態維持や運動、体内での栄養分等の輸送、情報伝達、病気の防御などに関わっています。
 つまり遺伝子とは、生物の個々の形質を決めているものであり、それが親から子以降に伝わっていくのが遺伝と言われるものなのです。
    
(2)遺伝子組み換えとは?
 ある生物から、目的とするタンパク質を作るため(=目的とする性質を表すため)の情報を持つ遺伝子を取り出し、改良しようとする生物の細胞の中に人為的に組み込むことで新しい性質を加えるものです。(植物遺伝子+昆虫遺伝子など自然界では起きない組合せ)
 従来の品種改良手法(例えばF1種育成の交配、自然または放射線等を使って起こす突然変異)においても、遺伝子の組み替えは起きています。 
 なお、改良しようとする生物への別な生物の遺伝子の組み込みは…面倒なので略しますが、微生物を使う「アグロバクテリウム法」か化学装置を使う「パーティクルガン法」があります。
 詳しく知りたい方は以下のリンクをご覧ください。
 (バイテク情報普及協会 「遺伝子組み換え作物の開発」

(3)遺伝子組み換え種子の作り方
  (参考 スギ花粉症治療イネ(改変Cry j蓄積イネ, Oryza sativa L.)(OsCr11)の栽培)
 (詳細は、農林水産技術会議 HP
 スギ花粉症の原因であるCry j 1というタンパク質とCry j 2というタンパク質にちょっと手を加えて変化させ、それを作り出す遺伝子を「コシヒカリ a123」の遺伝子に加える。この米を食べることにより食べた人の免疫がCry j 1というタンパク質とCry j 2というタンパク質を抗原として記憶するので、いざ花粉症の時期になってスギ花粉を吸い込んでも獲得免疫が働くので花粉症の症状を抑えられる。
 
 さて、種プロメンバーもそうですが、私たちが遺伝子組み換え種子、作物を拒否する理由はなんでしょう?
 地球環境や人体への悪影響、農業(食料)の支配といった視点では明らかです。
  ○農薬の使用が減るという触れ込みであったが、実際に
   は農薬の使用量は増えており(セット農薬)、人体や
   環境上の危険性が増加している。
  ○モンサントやデュポン等4社が遺伝子組み換え作物を
   独占しており種子の支配と利益の独占を行っている。

 そして、種プロメンバーの共通したもう一つの重要な視点は次のようなものでした。
 「遺伝子組み換え作物は自然界では絶対に起きない交雑、例えば『植物の遺伝子に昆虫の遺伝子を加える』ことで作られた作物である。その自然では絶対生まれない作物を食べることは、今後人体にどんな影響が起きるか全く分からない」
 「この想定できない危険性は、食べた本人でなく、その子ども、さらにその子どもになって現れていく可能性もある」
 「だから遺伝子組み換え種子は使うべきではない」

 ここまでがこの日の議論でした。
 もう少し、突き詰めたいですね。
 これだと、厚労省HPの以下の指摘に反論できません。

 厚労省HPでは遺伝子組み換え作物の人体に与える影響についてこのように言っています。
 「私たちの体では、食べたものが一度分解され、 用途に合わせて再構成されています。DNAも消化器官で分解されます」
 「食品に由来するDNA上の遺伝子がそのまま吸収され、体内で作用したりすることはありません」
 これはそのとおりだと思います。
 
 ここからは、議論を踏まえた上で、おそらくこの日出席した種プロメンバーも同感できると思われる反論をしてこの記事を終えます。

 例えば、フグの毒に当たるのはフグの遺伝子ではなくフグの遺伝子が作り出した毒です。
 私たちは遺伝子が遺伝子に直接影響を与えるのではなく、その食品に含まれた物質が遺伝子に影響を与える可能性を懸念しています。
 遺伝子組み換え作物においても、その危険性は作物の遺伝子ではなく、その遺伝子によって作り出された何らかの物質です。
 遺伝子組み換え作物に含まれる成分によって人の健康上に悪影響が生まれ、例えば気づかないうちに何かのアレルギーを持ち、何かの要因によって突然それが発症するとか、内分泌撹乱化学部物質のように遺伝子を損傷したりしないかということです。
 (参考:消費者庁HP 食品表示一元化検討会 遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン提出資料

〈補足〉
  遺伝子は消化されるといっても、例えば食べ物が中途半
 端な消化で便と一緒に排出されることがあるように、遺
 伝子にも消化しきれなかった場合もあると思います。
  また、栄養素や毒素は血液によって運ばれ、細胞に取り
 込まれていきます。
  未消化の遺伝子が細胞に取り込まれることはないのか?
  もしあったらどうなるのかはわかりません。
  「遺伝子組み換え作物を食べても遺伝子組み換え人間に
 はならない」なんていうのは当たり前のことで、そんなレ
 ベルの心配をしているのではないのです。
 

 親の遺伝子情報は子に伝わります。
 例えば、アレルギーや免疫力の低下など好ましくない形に遺伝子が影響を受け、それが子に伝わりさらにその次の世代へと…。
 実際に「化学物質によって体質が変わり、それが世代を超えて伝わっていく」、この可能性については研究が行われているのです。

 以上が、「子どもから、その子どもへ」と心配する理由です。


 ところで、遺伝子組み換えは農業だけで行われているわけではありません。
 医療分野でも利用されており、子宮頸癌ワクチン、B型肝炎ワクチンは遺伝子組み換えワクチンです。
 ワクチンがヒトの複雑な免疫システムを利用したものだということだと踏まえれば、そこに自然界にはないウイルスを送り込むということもなかなかリスクの高いことだと思います。

 いずれにしろ、社会は遺伝子組み換え作物が開発されたときとは大きく変わっています。
 25年間続けてきた「食べるの嫌だし、作っちゃダメだけど、外国から買ってくるのはいいよ」というご都合主義では、もうダメだと思います。
 このままでは、少なくとも「子ども、その子ども」に対する責任を果たしたことにはならないでしょうね。


 この記事は文中で紹介した他、以下を参考にして作成しました。
 
 農林水産省 HP「生物多様性と遺伝子組み換え
 Akira Magazine HP 「細胞核・遺伝子・染色体・ゲノムのお話」
 消費者庁 HP  知っていますか?遺伝子組み換え食品表示制度
 毎日新聞HP 医療プレミア(無料記事部分) 世代を超えて伝わる「化学物質による体質変化」
 KAKENN(研究概要紹介ページ) 環境化学物質の内分泌撹乱作用と遺伝毒性の発現機構 
固定種、F1種、遺伝子組み換え種子、ゲノム編集種子 その2 [2021年11月24日(Wed)]
 2021.11.20の種のイロハ学習会の様子。
 今回はF1種について。

 F1種とは、例えば「今の主力のきゅうりの『かっぱ三太郎』は見栄えも味もいいんだけど寒さに弱いから、もう少し耐冷性のある品種が欲しいなあ」といようなニーズがあった時に、かっぱ三太郎に寒さに強い品種を掛け合わせたり、かっぱ三太郎の先祖のどれかに寒さに強い品種を掛け合わせたり、はたまたかっぱ三太郎に近い特長を持つ品種に寒さに強い品種を掛け合わせたりなど、要するにある目的のために異なる品種を掛け合わせて作り出された品種のことです。

 これは、遺伝子に手を加えて作り出すのではなく、いろいろな配合を試しながら長い時間をかけて作り出していくのです。
 例えば、北海道米を代表するお米の一つ「ゆめぴりか」もそうです。
 ((独)北海道立総合研究機構 HP
   第1話 北海道の美味しいお米「ゆめぴりか」の誕生

 しかし、F1種を作り出すための作業はとても手間のかかる作業なのです。
 F1種を作り出すための方法は3通りあります。
  ○一つの花に雄蕊と雌蕊があるタイプ(ナスとか
   豆とか)
    →「除雄する(雄しべを摘み取ってしまう)
  ○一つの株に雄の花と雌の花があるタイプ(大根とか
     きゅうりとか)
    →自分の自身の花粉では受粉しない「自家不和合
     性」の花を使う。(大根などアブラナ科に多い)
  ○株ごとにオスとメスがあるタイプ(ホウレンソウとか
   サンショウとか)
    →雄しべの機能が不能となった「雄性不稔」という
     突然変異株を利用する。

 例えば「除雄」によるトマトのF1種作りはこうです。
  @母親株とするトマトと父親株とするトマトの2種類を
   植える。
  A母親株が開花する2、3日前に日前にトマトの花の蕾
   を開き、雌しべに密着している雄しべを全てピンセッ
   ットですべて抜き取る。
  B上の作業を全ての母親株で、毎日二か月間近く繰り返
   す。(除雄しそこなった花は全て取り除く)
  C除雄しておいた蕾が開花したら、父親トマトの株の花
   を揺すって花粉を集める。
  D集めた花粉を、母親トマトの雌しべに小指の先でなす
   り付けて受粉させる。
  E交配したトマトが完熟したら種子を取る。
  ※上記の箇条書きは以下のHPを参考にして作りました。
   とても勉強になるHPです。正く知って欲しいので、
   リンク表示してますのでぜひご覧になってください。
  (野口のタネ/野口種苗研究所 HP 交配種(F1)野菜とは何だ?【2】
  
 すごい手間でしょう。
 これが、土地が狭く人件費も高い日本で種が作られない理由なんじゃないでしょうか。
 日本人は、どんどんめんどくさい仕事を避けるようになってきていますし。
 
 消費者は勝手なもので、こういう手間を顧みずに、美味しいもの美味しいものって欲しがりますよね。
 そうなれば、品種を作り出す方も手早くできる方法があればそれを試したくなるんじゃないでしょうか?
 なんていう話は、次回以降にすることにして、F1種のメリットをまとめてみましょう。

 ○発芽時期や生育期間が揃っていて収穫が一斉に行えるの
  で、大量生産が可能となり価格の安定にもつながり市場
  に載せやすい。
 ○特定の病気に対して耐病性を持った品種などもあり、そ
  の野菜で起こりやすい病気を防ぐことができる。 
 ○形状が均一化されているので、出荷や梱包時の手間が省
  ける。
 ○F1種は一般的に生育が旺盛で収穫量にもいい影響をもた
  らす 。 
 ○苦みや香りなど元々はクセの強い野菜でも、F1種として
  品種改良をすることで、食べやすく一般受けする野菜を
  作ることができる。
 
 デメリットは自家採種できない(採取した2代目は、1代目に現れなかった遺伝が現れて、形状性質がバラバラのものが育つ)他は、メリットの裏返しと考えればいいですね。
 例えば、発芽時期が収穫時期が揃っていれば、その時に悪天候が続けば壊滅的になるとか。

  
 以上の記事は、記事中で紹介した他、以下を参考に作成しました。

 株式会社末吉商店 HP 「F1種子って何だろう?」
 SMART AGRY HP
 「「固定種」は安全、「F1種」は危険、はホント? 種子の多様性を知ろう」
 (独)独立行政法人農畜産業振興機構 HP
  「 地域に根差した伝統野菜〜在来きゅうりを事例として〜」 
 タキイ種苗 HP 調べる 園芸新知識2004.5
固定種、F1種、遺伝子組み換え種子、ゲノム編集種子 その1 [2021年11月23日(Tue)]
 2021.11.20に行った学習会の様子を紹介していきます。
 今回は、固定種について。

 固定種とは「固定された形質が親から子へ受け継がれる種」のことです。
 どうやって固定種を作るかというと、例えば手元に人参の種子があるとします。
 その種子を植えるとその地域の好みに合った味の人参ができるんだけど、あまり好みでない人参もたくさんできるし、成長度合いもバラバラという状況です。
 どれが好みに合う人参かは、葉の出方や人参の色合いで概ね判断できます。
 そこで、そのタイプの人参の種だけを採取して翌年にそれを播きます。
 そして、翌年に栽培した人参の中からさらにその特徴がはっきり分かる人参の種を採取して、その翌年に播く。
 そうやって選抜育成を長い間繰り返して、その種を播けばほぼ毎年同じ形質の人参が収穫できるようにしたもの、それが固定種となります。

 伝統野菜と言われているものはそうですし、そもそも大昔の日本には、野菜らしい野菜はなく、例えば小松菜など多くのものが中国など外国から入ってきて日本人の好みに合うように作り替えられていったのです。

 固定種のメリットとしては次のようなことが挙げられると思います。

 ○長い間、その地域で育成されてきた品種なのでその地域
  の風土にあっている。
 ○F1種より、環境の変化に強い。
 ○自家採種ができるので、少量でも品種を維持できるし、
  種の購入費用が無い。
 ○生育にばらつきがあるので、収穫期間が長い。

 デメリットは次のようなことでしょうか。

 ○生育や形状にバラツキがあるので、画一性が求められる
  市場には向かない。
 ○味が個性的なので、一般的な市場には乗せにくい。
 ○自家採種する手間がかかる。

 固定種のデメリットを反映したのがF1種と言えますね。

 気候変動が大きくなってきた現在、環境の変化に対応力のある固定種を自分(地域)で採種して、自分(地域)の食を守っていくということも大事なのだと思います。


 この記事は以下を参考にしながら作りました。

 野口種苗研究所 HP 「何代にも渡って受け継がれてきた種−固定種についての講演要旨−」
 (https://noguchiseed.com/hanashi/kouen.html)
 北海道 わたしの家庭菜園 石村桜 著 北海道新聞社1986年
 食の文化史 大塚滋 著 中公新書1975年
 株式会社グリーンフィールドプロジェクト HP 「タネにまつわるエトセトラ」
 (http://gfp-japan.com/column2c
エダマメ試食会。 [2021年11月22日(Mon)]
 遅くなりましたが...今頃!?種プロメンバーによる枝豆試食会です。

 試食会と言っても、苫小牧メンバーは今年はしないのだと勝手に思い込んで全部食べちゃっていたので提供するものがない。
 よって、札幌メンバーの育てたものだけで試食会。

sapporoyuagarimusume.jpg

 上が、去年採取した湯上り娘の種から栽培したもの。
 下は、去年残ったものを今年撒いたもの。

 上の自家採取した方が芽の出にも育ちもばらつきがあったそうです。
 やはり、きちんと選抜されている市販品の方が安定しているのですね。
 自家採取したものも、良質なものを選抜すれば安定するのでしょうけど。
 でも、味はおんなじでした。

 ついでに試食会で食べたもの一覧(笑)。

sisyokukai.png

 何の試食会だかわからん(笑)。

 中央下の南瓜の煮物は、札幌のメンバーのTさんが、昨年訪問した伊達農園さんからいただいた種子を栽培したものです。
 「東京かぼちゃ 」という種類だそうです。
 今のカボチャより、ねっとりした感じで「子どもの頃食べたカボチャはこんなんだった」という感じでした。
 調べてみたら、今、私たちが食べているエビスカボチャなどホクホク系の西洋南瓜の走りだったという記事がありました。
(参考:野菜情報サイト野菜ナビ https://www.yasainavi.com/blog/archive/431

 真ん中のソーセージと肉まんは苫小牧の銘柄豚「B1とんちゃん」を使ったもの。
 ウトナイ湖道の駅のプレジールで扱っています。
 美味しいですよ!

 この日は試食会兼種のイロハ学習会兼今年度活動振り返り兼来年度活動計画会議でありました。

 種のイロハ学習会については別にお知らせします。
札幌と苫小牧の大豆その4 [2021年11月21日(Sun)]
 全然更新してませんでした〜。

 もう時期外れですが、枝豆の様子です。
 と言っても、今回から苫小牧の状況だけですが…っていうか、もう収穫です。

 今年(2021年)9月5日の状態。
yuagarimusume1.png 

yuagarimusume2.png

yuagarimusume3.png

 いずれも「湯上り娘」です。
 去年、採取した種(豆)を育てたものです。

 同時に植えた、うちでずーっと植えてる(家宝種)の黒大豆は、食べるにはまだ早かったです。

 それから4日後の9月9日、黒大豆も食べれる状態のが出てきました。

 で…うっかり混ぜて茹でちゃった。

edamametobi-ru.png

 なんとなく緑の濃いのが「黒大豆」だけどよくわかんないね。

 やはり、枝豆としては香りも甘味も「湯上り娘」の方が上ですね。
 黒大豆も甘いんですが、ちょっと敵わない。
 さすが専用種。

 タコとガサエビ(シャコ)、そしてサッポロビール。

 いやーホッカイドーサイコー!!
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