「市民キャビネット」発足の意味するもの [2009年11月17日(Tue)]
11月10日に「市民キャビネット」準備会が発足した。会場の芝公園福祉会館(東京都港区)には、会場を一杯にした約100名のNPO関係者が集まり、熱気あふれる議論が展開された。
当日の課題は、当面する政府の緊急雇用へのNPO側の協力姿勢と「市民キャビネット」構想を具体的に提示することであった。ここでは市民キャビネットについて考証したい。 |
本年9月に政権交代が実現し、「新しい公共」を実現するためにNPOの積極活用をはかろうとする民主党・鳩山政権が生まれた。このことはNPOにとってみれば、絶好のチャンスであり、また、期待にこたえての大きな負託にこたえなければならないこととなった。
○民主党の動き
われわれNPO事業サポートセンターはこの政権交代を予測し、総選挙以前の7月14日には「民主党と市民パワーの懇談会」を開くべく積極的な動きをし、当日は330名ものNPOが移動に会し、岡田幹事長、直嶋正行政策審議会長、福山マニュフェスト委員会事務局長など十数人の民主党国会議員と懇談をおこなった。そこにおいて、民主党は選挙後にNPOとの「定期協議」を提起した。
このような経過をへて、NPO事業サポートセンターは総選挙後に早速に民主党へのアプローチをした。だが、民主党の体制が整っておらず交渉窓口もはっきしないままに時間が過ぎた。10月下旬になって民主党の体制が整い、NPOの窓口になる「企業・団体委員会」の委員長が細野豪志氏に決定し、委員長代理に谷参議委員が就任し、NPOとの窓口は谷議員が行うことになった。早速に挨拶に伺い、今後の展開についての相談をした。
○NPOの動き
本来、日本のNPOが成熟していれば、全国ベースの中間支援団体があり、新政権との交渉を総選挙後に着手していたはずである。ところが、日本の中間支援団体は3団体が鼎立しており、NPO税制と制度に限定して「NPO/NGO制度・税制全国連絡会」がオールNPOをなんとか集める努力をしているにしか過ぎない。だが、NPOには17分野があり、広範囲な制度政策に関する発言をするのだが、これまでは政策提言やロビー活動はそれぞれの団体がおこない、NPO全体での調整や交渉は行われてこなかった。私が専務理事をしているNPO法人市民福祉団体全国協議会(市民協)は、主に介護保険制度・介護報酬について関心があり、それについての政策見解も持っているが、そのロビー活動は自主的に行ってきており、他のNPOに相談することはなかった。
こうした状況の継続では政権側も戸惑うだけになるし、NPO側のまとまりを何らかの形でつける必要があった。日本にNPOのナショナルセンターが存在すれば、そこがイニシアティブを取ればよいことであった。ところが鼎立しており、その機能を持っていない。そこで主要なNPOがあつまり協議をしたが、2つの見解が表面化した。
まず、7月17日に参集した中心的な中間支援団体であるNPO事業サポートセンター、日本NPOセンター、シーズ、日本サードセクター経営者協会が呼びかけて対応を協議した。そこでの意見の第1は、NPOとして政策を纏める作業をおこない政権との協議をする体制をつくるべきだという見解があったが、これは協議に参加したNPOの中では少数派であった(日本サードセクター経営者協会は欠席)。この見解に賛同しない人たちの見解は、「NPOの政策の集約はすべきでない。また、特定の政党との密着はよろしくない」ということであった。
こうした見解に立つ人々は、「『NPO政策広場』ということで、NPOが政策を議論する場をつくり、そこに全政党を招いて、市場にならぶそれぞれの政策から出席した政党が政策を買えばよい」ということであった。こういう発想の背景にはNPOはすべての政党と等距離関係でなければならないという“観念”が存在しているように私は思う。
ただし、この考え方はNPOの1つの論理であり、この動きを否定することはない。したがって、NPO事業サポートセンターは「NPO政策市場」にもかかわり、円滑に軌道に乗るように協力していく。
しかし、お分かりのようにこうした動きだけではNPOとして政権に対して強力なロビー活動をおこなうことは不可能である。なぜなら、下記のような理由があるからだ。
@政府は、NPOのバラバラな政策を取捨選択するような余裕はない(相手にされない)。NPOとして市民セクターの形成を担い、それなりの纏まりをもつ努力をしなければ社会的勢力として認知されないであろう。
A特定課題についても、NPOには見解の相違のある場合が多く、それなりの調整が必要である。(声の大きい人の政策が必ずしも正しくない。NPOはその中で自浄能力を持たなければならない。
B課題ごとに瞬間的に動くのではなく、日常的な情報の共有を政権党や政権としておくことが政策提案を受け入れやすくする。したがって、恒常的な機関の設置が必要である。
以上のような考えのもとに「市民キャビネット」を設置することにしたわけである。したがって、市民キャビネットは政策やロビー活動の分野に限っては中間支援団体=ナショナルセンターの機能を持つことにならざるをえない。
この市民キャビネットは、門戸開放型で、政策を協議するために福祉や子育て、まちづくりなどのグループを作ることになる。意見調整はそれぞれのグループでおこなうことになるが、意見調整ができないものは市民キャビネットとの意志にはならず、個別NPOに帰属することになる。また、グループで調整された政策についても、内容や時期などを判断する内部機関(執行委員会)があり、効果的に対応するようにする。
以上のような問題意識で「市民キャビネット」準備会はスタートした。民主党との「緊急雇用」に関する意見交換の日程がきまれば、その日に設立総会を開催する予定である。多くの方々の参加と協力を求む。
○民主党の動き
われわれNPO事業サポートセンターはこの政権交代を予測し、総選挙以前の7月14日には「民主党と市民パワーの懇談会」を開くべく積極的な動きをし、当日は330名ものNPOが移動に会し、岡田幹事長、直嶋正行政策審議会長、福山マニュフェスト委員会事務局長など十数人の民主党国会議員と懇談をおこなった。そこにおいて、民主党は選挙後にNPOとの「定期協議」を提起した。
このような経過をへて、NPO事業サポートセンターは総選挙後に早速に民主党へのアプローチをした。だが、民主党の体制が整っておらず交渉窓口もはっきしないままに時間が過ぎた。10月下旬になって民主党の体制が整い、NPOの窓口になる「企業・団体委員会」の委員長が細野豪志氏に決定し、委員長代理に谷参議委員が就任し、NPOとの窓口は谷議員が行うことになった。早速に挨拶に伺い、今後の展開についての相談をした。
○NPOの動き
本来、日本のNPOが成熟していれば、全国ベースの中間支援団体があり、新政権との交渉を総選挙後に着手していたはずである。ところが、日本の中間支援団体は3団体が鼎立しており、NPO税制と制度に限定して「NPO/NGO制度・税制全国連絡会」がオールNPOをなんとか集める努力をしているにしか過ぎない。だが、NPOには17分野があり、広範囲な制度政策に関する発言をするのだが、これまでは政策提言やロビー活動はそれぞれの団体がおこない、NPO全体での調整や交渉は行われてこなかった。私が専務理事をしているNPO法人市民福祉団体全国協議会(市民協)は、主に介護保険制度・介護報酬について関心があり、それについての政策見解も持っているが、そのロビー活動は自主的に行ってきており、他のNPOに相談することはなかった。
こうした状況の継続では政権側も戸惑うだけになるし、NPO側のまとまりを何らかの形でつける必要があった。日本にNPOのナショナルセンターが存在すれば、そこがイニシアティブを取ればよいことであった。ところが鼎立しており、その機能を持っていない。そこで主要なNPOがあつまり協議をしたが、2つの見解が表面化した。
まず、7月17日に参集した中心的な中間支援団体であるNPO事業サポートセンター、日本NPOセンター、シーズ、日本サードセクター経営者協会が呼びかけて対応を協議した。そこでの意見の第1は、NPOとして政策を纏める作業をおこない政権との協議をする体制をつくるべきだという見解があったが、これは協議に参加したNPOの中では少数派であった(日本サードセクター経営者協会は欠席)。この見解に賛同しない人たちの見解は、「NPOの政策の集約はすべきでない。また、特定の政党との密着はよろしくない」ということであった。
こうした見解に立つ人々は、「『NPO政策広場』ということで、NPOが政策を議論する場をつくり、そこに全政党を招いて、市場にならぶそれぞれの政策から出席した政党が政策を買えばよい」ということであった。こういう発想の背景にはNPOはすべての政党と等距離関係でなければならないという“観念”が存在しているように私は思う。
ただし、この考え方はNPOの1つの論理であり、この動きを否定することはない。したがって、NPO事業サポートセンターは「NPO政策市場」にもかかわり、円滑に軌道に乗るように協力していく。
しかし、お分かりのようにこうした動きだけではNPOとして政権に対して強力なロビー活動をおこなうことは不可能である。なぜなら、下記のような理由があるからだ。
@政府は、NPOのバラバラな政策を取捨選択するような余裕はない(相手にされない)。NPOとして市民セクターの形成を担い、それなりの纏まりをもつ努力をしなければ社会的勢力として認知されないであろう。
A特定課題についても、NPOには見解の相違のある場合が多く、それなりの調整が必要である。(声の大きい人の政策が必ずしも正しくない。NPOはその中で自浄能力を持たなければならない。
B課題ごとに瞬間的に動くのではなく、日常的な情報の共有を政権党や政権としておくことが政策提案を受け入れやすくする。したがって、恒常的な機関の設置が必要である。
以上のような考えのもとに「市民キャビネット」を設置することにしたわけである。したがって、市民キャビネットは政策やロビー活動の分野に限っては中間支援団体=ナショナルセンターの機能を持つことにならざるをえない。
この市民キャビネットは、門戸開放型で、政策を協議するために福祉や子育て、まちづくりなどのグループを作ることになる。意見調整はそれぞれのグループでおこなうことになるが、意見調整ができないものは市民キャビネットとの意志にはならず、個別NPOに帰属することになる。また、グループで調整された政策についても、内容や時期などを判断する内部機関(執行委員会)があり、効果的に対応するようにする。
以上のような問題意識で「市民キャビネット」準備会はスタートした。民主党との「緊急雇用」に関する意見交換の日程がきまれば、その日に設立総会を開催する予定である。多くの方々の参加と協力を求む。
【NPOと政治の最新記事】
Posted by
田中尚輝
at 11:50
静岡にて58名で共同生活&有機農業を営む木の花ファミリーの小柴と申します。
昨日の市民キャビネットの設立総会にうちの者が参加しその報告をうけて、民主党の本気度や、参加者の意識の高さに驚き、また嬉しくなりました。
このような流れ・機運づくりをされてこられた山田様に敬意を表します。
僕らも農都部会の方に参加させて頂き、新たな提案等を積極的にしていこうと思っております。
今後ともよろしくお願いします。