• もっと見る
«障害者の就職促進、介護ヘルパー養成始まる−新潟 | Main | 環境省「熱中症マニュアル2011」»
Google

このブログ WWW


presented by 地球の名言


最新記事
カテゴリアーカイブ
最新コメント
最新トラックバック

点訳キーボード ブログパーツ
リンク集
月別アーカイブ
再犯防止…生活支援で負の連鎖断ち切れ〜毎日新聞より [2011年06月08日(Wed)]
記者の目:再犯防止…生活支援で負の連鎖断ち切れ

毎日新聞 2011年6月8日

http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20110608k0000m070110000c.html

 「刑務所が社会で行き場のない人たちの福祉施設になっている」。刑務所や更生保護の関係者から近年、こんな指摘を聞くことが増えた。「億単位の不正で執行猶予の人もいれば、おにぎり1個の万引きで懲役になる人もいる」という矛盾も耳にした。刑務所の「福祉施設化」の背景に、社会のひずみがありはしないか。軽微な罪を重ねて刑務所と社会を行き来する「累犯者」の取材を2年前から続け、生活を支えて再犯を防ぐ取り組みの強化の必要性を感じている。

 法務省統計によると、09年に刑務所に入った受刑者の7%が65歳以上。服役時に受刑者が受けるテストで知的障害が疑われる「知能指数70未満相当」は23%。服役2回以上の知的障害者を対象にした調査では、6割が前回の服役から1年未満で再犯に至っている。数字からは、老齢や知的ハンディを抱える受刑者の処遇が刑務所の課題になっている実情が見えてくる。

 ◇身寄りなく出所後また盗み
 彼らはなぜ刑務所に吸い寄せられるように罪を重ねるのか。まず、多くは身寄りがなく、出所しても迎える人はいない。刑務作業で得たわずかな報奨金しか持っておらず、数日たてば無一文だ。「食う寝るに困らない刑務所に行くしかない」と考えるようになるのも不思議ではない。

 「前科8犯で、極めて強固な盗癖がある。長期の施設内処遇が必要だ」。昨年4月、横浜地裁横須賀支部。検察官は常習累犯窃盗罪に問われた40代の男性被告を指弾し、懲役5年を求刑した。男性の背中は丸まり、小さく見えた。

 前年の6月、私は男性を取材していた。「刑務所は厳しい所。戻りたくないけど捕まったらあきらめるしかない」。盗みを重ね、成人になってから約半分の時間を刑務所で過ごしたという男性は小さく笑った。足し算ができず、会話からは罪の意識も乏しいように感じた。それでも出所者が一時的に身を寄せる更生保護施設で、さまざまな福祉制度を使える療育手帳を取得し、職にも就いた。

 私は当時、軌道に乗り始めていた出所後の元受刑者支援活動を紹介しようと、男性のケースを記事にしたが、半年ほどして起訴された。男性は自身の障害を受け入れられず、療育手帳も携帯していなかった。「出所者支援が成功することはほとんどない。また粘り強く支えればいい」。ショックを受けた私に、福祉関係者の言葉が重かった。

 この男性だけでなく、知的障害者や高齢者ら20人の累犯者たちに会った。会話がかみ合わなかったり、虚実入り交じる過去を語る人も多かったが、福祉・更生保護関係者の協力も得て整理してみると、課題が浮かんできた。例えば、20人の再犯理由は大半が「生活苦」。10人が路上生活経験者で、刑務所を出てから再犯までの期間は11人が半年未満だった。司法と福祉の連携を強め、出所後の生活支援の質的向上を図る必要がある。

 もちろん、国の支援も進んではいる。09年度以降に42都道府県で設置された「地域生活定着支援センター」は司法と福祉の橋渡し役として受刑者と面接を重ね、本人の希望を基に生活保護や福祉施設入所などの手続きを準備する。

 ◇捜査段階から福祉の視点を
 その延長線上で、逮捕・公判段階に福祉の視点を導入すべきだという新たな課題も指摘されるようになった。軽微な罪でも、再犯で身寄りもなければ実刑になる可能性が高い。加えて、知的障害者の場合、自分に不利なことでも迎合してしまう傾向がある。捜査段階で福祉的支援があれば、起訴猶予や執行猶予付き判決にできるケースが相当数あるとの指摘も出ている。ある検察幹部は「多くの検事は刑務所に送る意味が疑わしい障害者や高齢者を取り調べたことがある。だが、帰住先がないと、前例通りに実刑を求めてしまいがちだ」と明かし、福祉に関する捜査機関の研修を充実させる必要を説く。

 大阪地検の証拠改ざん・隠蔽(いんぺい)事件を契機とした「検察の在り方検討会議」は3月、知的障害者の取り調べ全過程に録音・録画(可視化)を導入するよう提言した。政府が国会提出した障害者基本法改正案は、障害者による刑事事件の捜査で障害の特性に配慮するよう捜査当局に対策を求める内容を盛り込んでいる。

 長年、「犯罪者」であるがゆえ、福祉の網からこぼれ落ちてきた人たちにようやく光が当たり始めた。逮捕・公判、受刑そして出所。彼らが歩むプロセスに、福祉の原則である「一人一人の特性に合わせた支援」を注ぐ。それは彼らのためだけではなく、安心して地域生活を送りたい多くの市民の願いにもかなう。社会的弱者の「おにぎり1個」を非難するよりも、再犯という負の連鎖を断ち切る重要性を痛感する。【石川淳一=東京社会部】
Posted by たまごハウス at 20:24 | 情報:その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
トラックバック
※トラックバックの受付は終了しました

コメントする
コメント