こんにちは。スタッフの金子です。 もう2月ですね。まだまだ寒い日も多いですが、日も長くなってきたように感じます。 本日は、さまざまな角度から今年度取り組んできた防災について考える連携による課題解決の事業について振り返っていきます。昨年9月25日に開催をしたTagajo Sustainable Relationship2021〜防災とインクルーシブなまちを考える〜の基調講演をレポートします。 基調講演は多賀城在住のJ.F.モリスさん(宮城学院女子大学名誉教授 東北大学災害科学国際研究所客員教授)に「転勤族はマイノリティか」のテーマでお話をしていただきました。 モリスさんは、東日本大震災の際に町内会や避難所に子どもたちの居場所をつくることを提案するなどの支援をされていました。 マイノリティとはどのような人なのか、また防災・減災をするために必要なことは何か、最近耳にするようになった「インクルーション」とは何なのか。「転勤族はマイノリティか」のモリスさんのお話から見えてくること、わかること、わたしたちにできることは何があるのでしょうか。 下記はモリスさんの講演の内容を要約してレポートしています。 □マイノリティとは マイノリティは、「少数派」という意味だが、単純に数の優劣ではなく、社会的・経済的な不利を背負っており、その不利が差別の結果でもあり、また差別を生み出す原因となる。 □転勤族はマイノリティなのか? 日本の転勤族の多くは、「日本人」で「雇用が保障されている人」であり、差別されるような不利な状況ではない人と考えられる。 しかし同行する家族は、地域で頼れる友人や知り合いもおらず、学校や地域から孤立する恐れがあり、社会的な不利を背負うことになるかもしれない。 !マイノリティは特別な人、どこか自分と違う人ではなく、ちょっとした状況の変化で誰でもなりうる可能性がある。 □防災・インクルーションと日常 多くの災害は急に発生し、これらは元々ある外国人差別などの社会的分断や貧困などの経済的格差による被害をさらに悪化させるもの。そのため、災害への対応はマイノリティへ適切な対処をするために社会的インクルーションの実現が必要不可欠となる。 ※インクルーション(インクルーシブ) 誰一人取り残さずに、その人のニーズ・特性に応じて、集団・コミュニティ・社会に積極的に参加できるようにし、発言できるような環境を整えるという非常に広い意味で使われている。 □市民のための仙台防災枠組み2015-2030 支援と復興過程の各段階ですべてのステークホルダーの参加を保障するという新しい視点が出てきた。さまざまなマイノリティが災害対応、復旧、復興過程から取り残さないような内容になっている。 ※仙台防災枠組み2015-2030 2015年3月に仙台で開催された第3回国連防災世界会議で、採択された内容であり、2030 年までの国際的な防災指針。内容はこちらからご覧いただけます。⇒sfdrr_2.pdf (sendai-resilience.jp) □仙台防災枠組みの中に出てくる「レジリエンス」 レジリエンスは強靭性という意味だが、 “「困難な状況下でも、基本的な機能などを保持し、また災害からの悪影響に対し抵抗できる強い芯を持ち、しなやかに回復できるシステム、コミュニティ、個人および社会の力」という意味で使っています。”(仙台防災枠組みP.10から引用) !個人・集団・社会のレジリエンスを高めるためにもっとも効果的なことは豊富な人間関係を育成すること。 逆に同質性の高い集団・社会は、レジリエンスと社会問題の解決力が極めて脆弱になるというリスクを抱えていることになる。 社会の中の多様性と向き合い、その多様性を社会の中に取り込むこと(インクルーション)こそ、社会的分断・経済格差、災害など社会が抱えている問題に対処するために必要。 J.Fモリスさんのプロフィール 宮城学院女子大学名誉教授 東北大学災害科学国際研究所客員教授 オーストラリア国立大学で日本語を専攻し、1974年に東北大学文学部国史研究室(当時)に留学、1986年文学博士(日本史)を授与される。1989年から宮城学院女子短期大学国際文学科で教鞭をとり、2020年3月に同大学日本文学科定年退職。専門は、仙台藩の武家社会を中心とした近世史だが、多文化共生、オーストラリア先住民の歴史、文化遺産レスキューや災害後の被災者に対する心理社会的支援について著書・論文も多数。多賀城在住。 いかがでしたでしょうか。 次はゲストとしてお話いただいた、多賀城市で「子どものことばの教室のび塾」を主宰している神桂子さんと、多賀城市にある会社で外国人技能実習生として働いているミャンマー人トーザーリンさん、キンチョーユインさん、サーチーソーさん、転勤族の支援をしている一般社団法人tentenの藤本菜月さん、真部さとみさんのお話を紹介します。お楽しみに。 ○以前のブログはこちらから |