2月2日(土)盲ろう観劇サポートWS第7回目のご報告です。
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お疲れさまです。
高橋えりかです。原田です。よろしくお願い致します!
高橋:2月2日に盲ろう観劇サポートWS第7回目を行いました、そのご報告です。
去る、1月26日27日に国立能楽堂にて「手話狂言初春の会」公演が行われ、盲ろう観劇サポートWSの受講生も数名観劇しましたので、まずはその振り返りを行いました。
そこで、弱視ろうに対しての通訳方法の留意点を3つにわけて説明いたしました。
1つ目、公演当日は(手話狂言が始まる前に)今年初めて日本ろう者劇団様が視覚に障害を持つお客様への配慮として「触る舞台模型」というものをご用意くださり、盲ろうのお客様に対しての事前説明がありましたが、
(模型を使った)通訳方法はどうすればよいか、CLの表出方法はどうするか、わかりやすい説明はどのようなものか等々を説明し、話し合いました。
2つ目、能楽堂の舞台の形(設計)は普通の劇場とは異なり特徴的です。能舞台ならではの造りがあり、通訳者は事前に能楽堂や狂言の情報取集をしてしっかり把握し、当日迷わず盲ろう者に伝えられるよう、事前学習の大切さを話しました。
3つ目、当日配布されるパンフレットの内容説明についてです。パンフレットは情報が多いために文字が小さく、弱視ろうでは読むことができない、もしくは気づかずに捨ててしまう人もいるかもしれません。通訳者は舞台が始まる前の時間を有効活用し、パンフレットの内容を伝えます。その伝え方として、(原田:表紙をデモンストレーション)このようにします。
「はな」は「花」ではなく「華」という漢字であることもきちんと伝えてください。
次に(ページを開く)演目3つとそれぞれの演者が載っています。ここの的確な通訳方法や表現の仕方を説明しました。また、演目演者の下にあらすじが載っていますが、結構なボリュームがあります。時間との兼ね合いも考えて、日本手話でわかりやすく内容をまとめて通訳することが大切です。実際に、(弱視ろう当事者の)高橋が1対1で受講生一人ひとりからあらすじの説明を受け、内容が掴めず確認のやり取りが始まるとスタッフが補足説明をし、翻訳および通訳方法を指導しました。
観劇をする盲ろう者にとってあらすじを把握し、事前にイメージ作りをすることは大切です。パンフレットの文章のままだらだらと説明されても盲ろう者は内容を把握できません。ですので、わかりやすく内容を絞って通訳することの大切さをお話ししました。受講生の皆さんは最初緊張されていたものの、2回3回と繰り返すなかでコツをつかんでいかれたようです。
このようにパンフレットを通して弱視ろうに対する基本的な通訳方法を説明しました。
最後に恒例のシャドーイング、今回は手話狂言「盆山」を行いました。
以上、今回のWSの流れです。
原田:(高橋)えりかさんがおっしゃった通りDVDで「盆山」をシャドーイングしました。皆さん最初はぎこちなくて、表情のシャドーイングがない、盲ろう者の様子を見ない、タイミングが掴めない、内容に慣れていないということで、聴受講生はシャドーイングよりも音声に引きずられるということが見られました。先週手話狂言を鑑賞されたばかりのはずですのに大切なことを忘れてしまっているようでした。聴者は音声で理解しますが、ろう通訳は視覚での理解、演者の手話・表情・動きをそのまま通訳してゆきます。それを忘れてしまったようで、しっかりとシャドーイングすべきところを見取り通訳することの大切さを説明しました。
手話狂言とは、手話で観客の笑いを誘うものです。その笑いのポイントを通訳してほしいのです。笑えるところ(例えば、酔っぱらう、失敗する)を逃さずしっかりと通訳し、盲ろう者が他の観客と同等に笑い楽しんで貰うことが手話狂言における通訳の目的です。
高橋:ほかに例えば「サル」という手話の表現も、通訳者は「手の甲を掻く」で表していましたが、演者は「頭と顎を掻く」ほうの手話でした。確かに「サル」の意味は同じですが、自分の手話ではなく演者の手話をそのまま表すこと、それが盲ろう者への通訳です。
さて、次回3月は今年度最後のWSとなります。
原田:皆さん、最後ですので頑張っていきましょう!ご覧の皆さまも、応援をよろしくお願い致します。
高橋・原田:ありがとうございました。
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いろいろとやるべきことの多い盲ろう通訳ですが、舞台と盲ろう者を繋ぐ役割を果たすために必要な基本知識のひとつです。
シャドーイングだけでなく日本語から日本手話への翻訳、CLを用いた位置説明もこなせるようにならなければなりません。
ハードルが高くなっていくばかり・・・と思いきや、皆さんとても頑張ってくださっているのでスタッフ一同、最後まで気を引き締めていかなくては!と思いました。
*本事業は「アーツサポ東京」(社会福祉法人トット基金が運営する厚生労働省・東京都の障害者芸術文化活動普及支援センター)の鑑賞支援者育成事業の一環として実施しました。