第二話 メルメルの初恋はビターチョコレート (1) [2010年03月01日(Mon)]
第2話 メルメルの初恋はビターチョコレート
一 じりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりり 「☆・・・!!!」ゲーコが、やっとのことで目覚まし時計の頭をポンっと叩いた。 「むー」っと言いながらまた仰向けに寝ると、頭上に浮かんでこっちを見ている… こっちを見ている… メルメルの姿が! そして隣に寝ているはずのメルメルを、布団の中でもぞもぞ動き、そーっと覗く。 こっちにもメルメルの姿が!!!!!!! (こ、怖い!) 「メルメル?」恐るおそる呼んでみたが、寝起きのせいだろうか、かすれた小さな声しか出なかった。仕事のために泊まったメルメルの部屋にいて、ゲーコはいつもより増してぎこちなくなってしまう。 「メルメルぅー」今度は、泣きそうになって懇願しているような言い方になってしまった。 「あ、ごめん、今戻るメル。」浮遊したメルメルがそう答え、静かに寝ているメルメルに近づき、重なった。 「ま、つまり、遊体離脱ってやつらしいメル♪」そしてにっこり笑顔。 これだからやってらんないわよ…疲れる…とゲーコは思う。 メルメルは無邪気に笑う。笑えば許されるなんて更更思っていないのが解るから疲れる。 なんか痛い。幸せな(もちろん幸せの化身なんだから当たり前だけど)メルメルが好きで、 そんなメルメルにため息が出ちゃう自分がなんか痛い。 朝のぼーっとした頭でふわふわした思考をするために、メルメルに背を向けて二度寝のふりをしていたゲーコは、仰向けに向き直してメルメルを横目で捉えた。 (平和な顔して寝てるよ…まぢ………) ゲーコは、変わらぬ気分でまた、目覚まし時計をみる。 (あっ!遅刻しちゃう!) 「メルメル〜。起きてゲコ?メルメル〜!!!」 白地にチェリー柄のカーテンから少しだけこぼれる朝陽は、メルメルとゲーコが一緒に眠る羽根布団の間を光の線で裁つ。とてもとても眩しい朝を迎えたメルメルとゲーコは、この日に起こるサプライズを予想だにせず、気持ちを会場へと焦らすのだった。 ![]() 続く。 |
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鶴ヶ島市社協
at 13:03