「ありがとう」を印刷すると法律違反になる [2009年07月03日(Fri)]
チーム3ミニッツ 生活デザイン研究所 ニューズレター 2009/07/03
「ありがとう」を印刷すると法律違反になることを知っていますか? 「ありがとうのはがきを出そう」の商標登録をした理由 チーム3ミニッツのありがとう商標は誰でも自由に使えます ........................................................................................................... 「ありがとう」を印刷すると法律違反になることを知っていますか? 多くの方がお気づきだと思いますが、チーム3ミニッツは昨年の秋以降から「ありがとうのはがき」の活動を積極的にしていませんでした。というよりも、活動をすることが出来ない状態になっていました。 それは、「ありがとう」が商標登録され、商標法に基づき商標登録者以外の第3者が使用することは認められないと法的に定められたからなのです。 「ありがとう」の商標登録をしたのは山形の印刷会社ですが、そこのホームページにはこう書いてあります。 ................................................................................................. 弊社は、「ありがとうの伝導」を使命に活動しています。この使命を全うするために、おかげさまで「ありがとう(◯にR)を商標法に基づく登録商標をすることができました。出願から、4年の歳月を経ての登録でした。これもご支援をくださる皆様のおかげでございます。ありがとうございます。 今後は、世界の企業とタイアップをしながら、日本で一番美しいと言われる「ありがとう(◯にR)」を伝導していく所存です。 つきましては、「ありがとう」という言葉を広めていただける企業や組織や個人の皆様に業務提携をご提案させていただきたいと思います。 *現在『ありがとう』を表記した商品などを提供している企業様で、商標法に抵触する恐れがあると思われる企業様は、ぜひ、ご一報くださいませ。一緒に活動をしていただけるならば、前向きにご検討させていただければと思います。よろしくお願いします。 私たちの家庭が、地域が、日本が、世界が「ありがとう」でいっぱいになる事を願っています。 (以下、企業名住所など省略) ........................ 原文のまま............................... この文章を見て、皆さんはどう感じるだろうか。 美しい言葉を羅列して、「『ありがとう』という言葉を広めていただける企業や組織や個人の皆様に業務提携をご提案させていただきたいと思います」。「一緒に活動していただけるならば、前向きにご検討させていただければと思います」と書いている。 言葉は謙虚だが、そこに美しい日本語「ありがとう」にある無益の精神や反対給付を求めない心を感じることはできない。 この会社に連絡をして使用許可を求めれば、快諾してくれる可能性はあるが、「ありがとう」を表現するたびに、なぜ山形の印刷会社にお伺いを立てなければいけないのかが理解できない。 「ありがとう」を利用して業務提携を計る会社との付き合いも疑問である。まして私たちの活動を、山形の印刷屋に検討してもらう必要はないと思うのである。 自分が創造した言葉ではないのに、「『ありがとう』という言葉を広めていただけるなら」という表現そのものが国辱的ないい方だと思える。 利権主義者はともかく、我々日本人は「ありがとう」を日常語として話してきた。「ありがとう」は、日本人が千数百年の歴史の中で慈しみ育ててきた言葉だ。 「ありがとう」は、形容詞「有り難し」の連用形「有り難く」がウ音便化して「ありがとう」となった。本来の意味は「有ることが難しい」で、「滅多に無い」や「珍しく貴重である」という意味であった。中世になると、仏の慈悲などの貴重で得難いものを自分は得ているという意味から、宗教的な感謝の気持ちを表すようになった。 (語源由来辞典) 「ありがとう」には、日本文化の歴史がある。そこに、日本人が慈しみ育ててきた日本の心や智慧がある。 「ありがとう」の商標登録はおかしいなものだ。中国では、「青森」や「つがる」などが商標登録され、本家の青森リンゴ生産者が中国で積極的に活動できない状態になっている。 山形在住の方には迷惑な話しかも知れないが、そこにある思想は、中国の金儲け利権主義者の商標登録と同じレベルであると思う。 「ありがとうのはがきを出そう」の商標登録をした理由 いくらワメイても商標登録されてしまったら、法的には商標登録申請者の勝ちである。被告となり商標法違反で裁判で争い、マスコミがこの事件を書き立てれば、商標申請者はこの権利を投げ出すかもしれない。社会的信用をこの会社は失うからである。 レベルは違うが歴史の中で、そのような事例を見ることが出来る。2003年だったと思うが、阪神タイガースが優勝をした。そのとき、「阪神優勝」というTシャツを球団が制作しようとした。が、それは商標登録されていたという事件があった。マスコミがその記事を書いた結果、球団に「阪神優勝」の商標登録が譲渡されたと記憶している。 社会に貢献することをしなければ、組織は成長しない。同時に、コンプライアンスを厳守していかなければならない。 チーム3ミニッツは、この問題に対してどのように対応したのかと言えば、私たちも登録商標を取得したのである。弊社の特許事務所と相談し、「ありがとうのはがきを出そう」という商標を申請してもらった。 山形の会社は、4年かかって「ありがとう」の商標を取得したが、弊社は弁理士と話し合い、いかに申請を通すかを考えた。結果、6ヶ月後に特許庁から商標登録証が送られてきた。山形の弁理士との力の差がここにある。 この書類を見て一応安堵はしたが、「ありがとう」に関連する特許がこんなに簡単にとれる社会はおかしいと思う。特許庁の審査官は何を基準としてこれらの書類をあげているのか理解が出来ない。 とはいえ、この登録証書を手に入れたことで、チーム3ミニッツは活動が再会出来るようになった。 チーム3ミニッツのありがとう商標は誰でも自由に使えます。 チーム3ミニッツが保有している商標は、「ありがとうのはがきを出そう」である。 この商標をとるために、数十万円の金が動いた。しかし、その言葉を我々は独占しようと考えてはいない。商標登録をした目的は、誰でも自由にこの言葉を使えるようにしたいからである。 だから、この商標登録を誰が使おうと、私たちは商標法に違反していますよとか、業務提携を求めたりは絶対にしない。それが、「ありがとう」の活動をする基本である。 弁理士からのアドバイスもあり、チーム3ミニッツはありがとうのはがきの販売を自粛してきた。それは、チーム3ミニッツの活動だけでなく財務にまで影響した。しかし、これからは社会の中で堂々と「ありがとう」を育んでいくことができるようになった。 「ありがとう」の商標登録を知ってから、チーム3ミニッツでは、ありがとうのはがきを実質的に販売してこなかったと書いた。ありがとうのはがきの購入を希望する方たちに無償で配っていたのである。 販売などをすれば、山形の会社が何を言ってくるか分からなかったし、売上げを要求されるリスクがあったからだ。これでも商標法的に問題はあるが、あえて無償で配布をした。 あえてそれを実行したのは、印刷会社からクレームが来た時が、社会に大きくアピールするチャンスだと考えていたからだ。いまのところその企業からの連絡は無い。 とはいえ、ありがとうのはがきは少しずつだが、チーム3ミニッツの名とともに、社会に浸透し始めている。 どの時代にあっても、「ありがとう」は美しく慈悲ある言葉である。 その美しい日本語を誰も独占してはならない。 |