■SERVICEGRANT LOUNGE Report Vol.1 ■マドレボニータ代表 吉岡マコさん
= Message =
「客観的な立場から徹底的に調べ上げてくれた提案書は、
いまでも私たちの宝物になっている」
「サービスグラントとは、助けてあげるというより、
サポートすることによって自分も得ることがある活動」
by マドレボニータ代表 吉岡マコ
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1. 産後の専門家不在の日本 〜 マドレボニータの問題意識の原点“マドレボニータ”とは、スペイン語で「うつくしい母」を意味します。私たちは、“産後女性のココロとカラダの自立支援”の観点から、オリジナルのヘルスケアプログラムを開発し、行政や企業ともパートナーシップをとりながら、アクティブに活動しています。
人類史上、何千年にも渡る営みの中で脈々と受け継がれてきた「出産」について、昨今の医療の高度化に加え、深刻な少子高齢化問題も相まって、環境や制度は飛躍的に改善されているだろう、とイメージしてしまいますが、実はマドレボニータの設立の背景には、「“産後”の女性の健康における専門家が公にはどこにもいない」という社会問題がありました。
“出産”という女性の一大イベントの様子は「鼻からスイカが出てくる!」「麻酔なしで、奥歯の虫歯を抜くような痛み」など、壮絶な例えが用いられます。それは本当にそうで、体重3kg台に育った赤ちゃんが出てきたぁ!と思ったのもつかの間、もう一度陣痛がきて今度はお好み焼き大の胎盤がべりべりと剥がれて出てくるというのが出産の現実です。
医学の世界にお医者さんや助産婦さんなど“出産”のエキスパートは数多くいても、そんな重病人のような状態のまま子育てをスタートする女性の産後ケアについて、“着目しようとする認識がない”、よって“研究されない”、結果、“専門家も育たない”という負のスパイラルがあり、産後ケア分野のプロが不在という状況を引き起こしています。
妊娠中のケアは手厚くあるのになぜ産後のケアがないのか? 自らの体験からその問題意識に立ってヘルスケアのプログラムを市民初でやってみよう!と思い立ったのが1998年のことです。
2.美しい母に向かう自立支援晩婚化の傾向が強まり、結婚、出産前に仕事を持つ女性が圧倒的に増える中で、出産を機にばりばり仕事をしていた人が、何も話が通じない赤ちゃんと向き合う産後の生活は、精神的にもいろいろな葛藤を抱え、コミュニケーションに飢えた状態になります。
産後欝や育児ノイローゼから虐待や育児放棄に発展してしまう状況は誰にでも可能性があります。
この女性共通の課題に対してフランスでは国のお金で産後ケアが受けられ、社会復帰のリハビリを支援したことで出生率が回復した、という成果が生まれていますが、日本ではまだ具体的な取り組みは行われていません。
そこに風穴をあけ、民間初、民間発として産後女性のケアに着目して開発されたマドレボニータのプログラムでは、有酸素運動によって持久力や筋力を取り戻すと共に、自分の内面を見つめて仲間と分かち合い、「自分の言葉」でアウトプットするといったコミュニケーションを主眼に置いたことに特徴があります。また、出産をきっかけに自分の心と体に向き合って自分で自分をケアするスキルを身につける、自立支援のプログラムであるという点が、他多くの営利企業が提供するフィットネスやエクササイズとのが差別化となり、多くの支持を集めているポイントといえます。当事者である産後女性の声をもとに、さらにプログラムを進化させながら、「産後のヘルスケア」という分野の確立を目指してインストラクターの養成と認定も進めています。(2009年10月現在、認定インストラクターは全国に18名)
マドレボニータが進めるような“母親が心身のケアを行うこと”がもっと普通にできるようになっていけば、出産後の仕事復帰を希望する女性のリハビリとして機能したり、産後欝やノイローゼに陥る女性を減らし、虐待や育児放棄を回避することに効果を持つだけでなく、ひいては日本の将来を担う子どもの健全な成長にもつながると思います。
社会問題の根本を捉え、解決に導く具体的なプログラムを持つマドレボニータの活動は、杉並区(この半年間で、年間出生数の約5%が受講した実績を上げている)やNECといった、行政や企業との連携にもつながってきました。10年後にはどんな人にも格差なくこのプログラムが提供されて、みんなが産後ケアを受けられることを目指して日々躍進中です。こうした健やかな産後女性の支援が未来の子どもを育む礎になるという主旨に賛同いただける方は、正会員または賛助会員を募集中です。
詳しくはこちら→http://www.madrebonita.com/wordpress/?page_id=139
3.マドレボニータとサービスグラントマドレボニータのように社会問題の解決を担う活動をしているにも関わらず、発信する情報や打ち出し方が適していないために周囲から理解されない、協力を得られにくい状況にあるNPOは多いと。。。情報発信力と信頼獲得は大きな課題です。
その課題改善を目的に、サービスグラントを使ってパンフレットの提供を受けたのは2007年のことでした。
サービスグラントへの印象については、新しいボランティアの形だなと。自分の持っている専門性を生かして、NPOという普段かかわりのない分野に触れ合うことで自分が成長できる、新しい分野を知って自分の人生が豊かになると考えている人がいるんだ!ということがすごいと思いました。
私たちのチームでは、約半年をかけて5人の皆さんが参加してくださいましたが、その中で最も時間をかける部分が「リサーチ」でした。今のパンフレットの形に落ち着くまでに何をしていただいていたかというと、とにかくすごく調べ上げてくれました。活動内容や競合がどれだけいるのか、実際のプログラムにも自ら参加したり、もう一つの支援元であるソーシャルベンチャーパートナーズさんや企業パートナーのNECさんにもアポをとってヒアリングをしたり、かなり綿密にこの事業がどういうもので、社会的にどういう位置づけにあって将来性がどうで、世にアピールするためにどういう形でどういう情報を出していかなければいけないのか・・・、を客観的な立場から徹底的に調べ上げてくれて、それでこそ支援だなと思いました。そして、そのリサーチとヒアリングをもとに出される「中間提案」は宝物になっています。
サービスグラントが提供したパンフレットによって、企業や行政と協働していくときにも、体裁が整ったパンフレットが1つあるだけでもぜんぜん印象が違い、「ママたちの趣味的な活動」ではなく、「社会的に意義があること」という印象を直感的に持ってもらうことができるというメリットがあります。ここで大切なのは、提供されるNPO側もそのツールをうまく使う主体性をもつこと。その姿勢がサービスグラントをNPO活動の強いエンジンに変換することができます。
様々なバックグランドを持つサービスグラントメンバーが客観的な立場からマドレボニータという団体の理解を深めていく過程は、内部のスタッフには見えていない部分を顕在化させることに寄与し、また、関わったメンバーのみなさんはみなさんで、きっと社会的な問題や、知らない世界を知るという点においてお互いによい収穫があったといえます。
自分のスキルが何かの役に立つのなら、という利他的な活動が利己的なものにもつながる、Giveしたつもりが、結果的に自分もGivenしている、そんな循環を生み出すプロジェクトがサービスグラントではないでしょうか。
文責;お