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米国大統領選第1回討論会を観て [2020年10月01日(Thu)]

昨日、米国でトランプ大統領、バイデン前副大統領の公開討論会がありました。昨晩と今朝、2回に分けて観てみました。報道を見ると、どちらが優勢だったかとか、司会者がとか、これまでにない最低の討論会だとか、そんな論調が主流のように感じます。

実際に観てみると、最初の何十分間は、司会者とトランプ大統領の討論会か?と思わせるほど、司会のクリス・ウォレス氏がしゃべり過ぎじゃないかと、正直うざく感じ、途中で止めようかと思いました。ウォレス氏はFOXの人で、民主党支持者だとどこかに書いてありましたが、見続けていくと、中盤以降は面白い話もあったと思います。

そもそもトランプ大統領は、政治エリートではないので、従来の討論会と同じ形にならないのは当然のこと。理論や概念ではバイデン候補、リアリティではトランプ大統領という印象を受けました。

流し聞きをしていた中で、いくつか引っかかったところがあり、そこは注意して見返したりしました。

例えば、気候変動。

司会者は、カリフォルニアの山火事を絡めて、気候変動についての考え方、科学を信じているのかなどトランプ大統領に聞いていました。

トランプ大統領は、一瞬Yesと言っていたので、これが科学を信じているという意味かどうかちょっと分かりませんが、まず、きれいな森や空気の話をし、これは米国企業が努力し、CO2排出も削減していると言っていたと思います。(後段では、パリ協定に絡めて、中国、ロシア、インドは汚れた空気を出しているじゃないかとも言っていました。)

カリフォルニアの火事については、気候変動と絡めるのではなく、毎年のように発生している、たばこのポイ捨てが原因にもなる、マネージメントが重要だ。米国は何百万本の植樹を行っているなどと答え、経済の重要性を強調していました。経済面から見てパリ協定は災害だとも言っています。

自分のレベルでは、エリート政治家の話より、トランプ大統領の話は分かりやすい。

一方、バイデン候補は、トランプ大統領の話を間違いと指摘した後、2050年までにCO2排出ゼロ、火力発電は作らず再生可能エネルギーを増やす、数百万の高収入雇用を創出する、気候変動は境界のない問題でありパリ協定に復帰するなどと述べていました。また経済効果として200億米ドルの施策(?)について触れていました。(パリ協定復帰の話の際に、世界との繋がりが重要という点は、共感できました。)

バイデン候補も、トランプ大統領に煽られているのか、時々「黙れ」とか、荒い言葉を出すことがありましたが、この気候変動の部分で、200億米ドルの部分に対し、トランプ大統領が「グリーン・ニューディールはミリオンではなくトリリオンだろ?」と指摘したところ、バイデン氏は「グリーン・ニューディールは、自分の計画ではない」と明言しました。

その後の司会者の改めての問いに対しても、バイデン氏は「自分はグリーン・ニューディールを支持しない」と答えました。

確か民主党内は一枚岩ではなく、サンダース支持者らを含む極左側と中道左派等で分断があり、グリーン・ニューディールはこのサンダース支持者側の考えで、バイデン氏はこれも支持するとして大統領候補になったのだと思っていました。それが、明確に否定してしまったので、心配になります。

あと司会者は、気候変動に関して「経済と環境のバランス」という言葉を使い、トランプ大統領の立場をその視点から理解しているようでした。このバランスについてバイデン氏に問うと、あまり具体的な話が無かったように思います(つうか、頭に入ってこなかった)。

この気候変動の議論。太平洋島嶼国での話と被る部分が多くあります。

極端に単純化すると、気候変動により海面が上昇し島が小さくなったり災害が増えている→島嶼国は被害者→原因は温室効果ガス→温室効果ガスを出す元凶は先進国、という図式ができています。

個人的には太平洋島嶼国側の言い分も、気持ちも理解できます。

しかし、現実を見た場合、経済が維持できなければ、人々の生活も立ち行かなくなるわけで、島嶼国経済が先進国からの援助や世界経済・金融市場に強く影響を受けていることを考えると、それでいいのか?という疑問が湧きます。

きれいごとだけでは、生きていけないでしょう。交渉をする上では、それぞれが極端な主張から始めていくのはおかしなことではありませんが、極端な主張だけでは破滅(経済が破滅するか、環境が破滅する)になってしまうので、例えば、太平洋島嶼国と先進国との関係で言えば、「経済と環境のバランス」を維持しながら、新しい安定地点までどうやって遷移させていくのかという、建設的な議論が必要な時期なのだと思います。

最後は、島の話に落ち着きましたが、米国大統領討論会については、後半を観ると、印象はそれほど悪いものではありませんでした。他にも、引っかかったキーワードのようなものがありましたが、今回はここで終わります。
パラオ独立記念日・ミクロネシア大統領サミット! [2020年10月01日(Thu)]

今日は、パラオ独立26周年の記念日です。
おめでとうございます!

そして、何と、ミクロネシア大統領サミットが、今年の議長国パラオのレメンゲサウ大統領の対面で行いたいとの強い希望で、昨日9/30と明日10/2に開催されています。

ミクロネシア大統領サミットは、2003年に始まり、対象国はパラオ、ミクロネシア連邦、マーシャルの米国自由連合国、ナウル、キリバスになりますが、2年前までは、米国自由連合国3国によるものでした。それが、サブリージョナル枠組みの重要性が高まるにつれ、ナウル、キリバスも参加するようになりました。

今回は、ナウル航空をチャーターすることで、人の移動が可能となり、結果、ナウル、マーシャル、パラオの大統領が対面で参加、ミクロネシア連邦とキリバスの大統領がヴァーチャルで参加ということです。

ミクロネシア連邦とキリバスは、新型コロナに対する国内の意見のせいか、国内対策の日程のためか、国を離れられなかったようです。中国国慶節(10/1)のイベントがあるのかもしれないですね。


ここで、うがった見方をすると、ちょっと気になることがあります。
・なぜ、レメンゲサウ大統領は対面にこだわったのか。
・対面の参加国は、パラオ、マーシャル、ナウル。
・ナウル航空チャーター費は。

前に、エスパー長官の話でも書きましたが、対面にこだわる理由は、直接伝えなければならないことがあったり、会議以外での雑談、対話、リトリートでの本音の話し合いにあったりします。

一つの大きなトピックは、次期PIF事務局長ポストに関するもので、次はミクロネシア地域からという紳士協定が無視され、南側から4名も候補が立てられました。ミクロネシア地域5カ国として立てたのはマーシャルのザキオス駐米大使。確か母親がパラオ人で、マーシャルとパラオの候補との見方もできます。もともと、南側の空気感が強いPIFの枠組みからは、パラオは是々非々で距離を置くことがありました。PIF総会をホストしたときも、事務局から嫌がらせに感じられるチクチクした指示があり、いいイメージはあまりないものと思います。

そこで、今回の紳士協定が破られることがあれば、離脱もあり得るでしょう。PIF事務局自体、5年前とは雰囲気も変わってきているし。中国の影響も強くなったし。

これ以上書くのはやめますが、上述の3つのポイント、8月からここまでのパラオを取り巻く動き、4月以降のミクロネシア地域での動き、9月の国連、これらを俯瞰してみると、かなり興味深い状況だと思います。

レメンゲサウ大統領が、次の大統領のために、道を刻んでくれるでしょう。
ソロモン諸島陥落...新型コロナ [2020年10月03日(Sat)]

リンクが貼れないのですが、The Solomon Islands Heraldが本日、公式ツイッターで、ソロモン諸島で初の新型コロナ感染者が出たとのニュースを報じました。

フィリピンから帰国した学生とのことです。

まずは感染拡大が無いように、しっかり隔離し、接触者、感染判明までの行動追跡、必要であれば追加隔離、ということになるのではないかと思います。

仮に市中に広がることになれば、重症化した際の対応は難しいだろうし、国内治安に影響する可能性があると思います。

これまでフィジーとパプアニューギニアでは感染者が出ており、フィジーは管理できており、パプアニューギニアは大きな国なので爆発的な拡大を抑えつつ対応しているようです。

医療レベルの問題があり、生活習慣病・肥満が多く、コロナフリーを維持しなければならない島嶼国は、緊張感を持って、今回の推移を見守るのではないかと思います。

確かなのは、感染拡大地域との人の往来にはリスクが伴い、自国民を帰国させるという限られたケースでもリスクがあること。

今回は、追跡可能な人数だと思うので大丈夫だと思いますが、人数が増える入国緩和には事前の準備が重要だと思います。
トランプ大統領医師の会見 [2020年10月04日(Sun)]

つい先ほど、トランプ大統領の医師の会見がありました。
発症から72時間が特に重要とのことですが、大統領が入院した際には、咳や発熱の症状があったものの、現地時間で今朝の段階では悪化はしていない、精力的に執務を行っているとも言っていました。

メラニア夫人は症状がないため、入院する必要はないとも言っていましたね。

ただイギリスのジョンソン首相の時は、陽性が判明した後、1週間程度は平気そうだったものの、症状が出てからは急速に悪化し、人工呼吸器装着まで行きました。

まだまだ予断は許さないでしょう。

記者が盛んにオキシジン、オキシジンと聞いていましたが、酸素吸入ということでしょうが、自力で呼吸ができているとのことで今の時点では必要がないようです。この質問が出ているのは、人工呼吸器が装着されれば、段階がひとつ悪化したことになり、また執務を副大統領が代行するためでしょう。

トランプ大統領は高齢ではあるものの、酒もタバコもやらず、コーラをたくさん飲むといってもダイエットコークだったようなので、そういったことがプラスに働くかもしれません。


個人的に関心があるのが、現役の大統領がこのような、ある意味平時ではない状況にある時の、米国の、市民レベルの視点ではなく、国を動かす人々の動き、体制です。

トランプ大統領に対しては、就任以来批判が続いているものの、国民の半数近くは支持しているわけで、また現役の大統領であることに変わりはありません。

おそらく有事体制で、ピリッとしているのではないか。

例えば、日本が大規模災害にあうと、周辺国は日本の防衛力を試すように、戦闘機を飛ばしたりします。今回も、潜在的な敵対国が何か試そうとするかどうか。当然そのような想定はあるはずなので、米国が防衛面でどのように備えているのか。


大統領選についても、共和党も民主党も、今回ほど副大統領候補が重要視されることもないでしょうし、下院議長まで意識させるとは、、。
コロナ後のパラオの観光・経済 [2020年10月04日(Sun)]

1年半前のパラオ観光関連の投稿へのアクセスが増えているので、コロナ後の状況をざっくりと書いておきます。

コロナ前のパラオ経済の特徴(数字は目安)は、
・GDP約270億円
・GDPの官民比率1:2(政府支出90億、民間180億)
・民間産業は7割以上が観光関連
・居住者(パラオ人13,000、フィリピン人5,000、バングラデシュ人2,000、その他1,000)
・パラオ人労働力の8割以上が政府部門
・民間労働力の多くが外国人(フィリピン人、バングラデシュ人、その他)

今年3月時点で、政府歳入3割減の予測が出たため、ADB(ローン)、自国基金から、政府財政補填約30億、民間経済対策約30億円の資金を調達。(現地会計年度は10月〜9月)

パラオでは、台湾や米国の協力もあり、自国内でPCR検査ができ、隔離体制も整っていますが、コロナフリーを維持することが重要です。現地の人は言いませんが、肥満率が非常に高く、糖尿病など生活習慣病が多い。そのため、仮に国内で新型コロナウィルス感染症が流行すれば、重症化率が高くなる可能性もあり、現地の医療キャパシティでは対応できなくなることも考えられます。

そのため、3月以降、現在まで海外からの観光客は受け入れていません。資金の調達を行っているものの、観光部門が壊滅的打撃を受けているため、GDPで見て、仮に民間部門が7割減となれば、全体のGDPも相当なマイナスになります。

パラオ人だけに限れば、最低限、政府財政の縮小を抑えられれば、生活していけますが、民間部門、特に外国人は厳しくなっているでしょう。

現地では、観光が発展していなかった独立後1994年から2000年代前半に戻ったとし、腹を据えて、3〜5年後の観光再開を期待して、一から立て直していこうという声もあるようです。環境面では、観光客の影響がない状況に戻りつつあるようです。

コロナフリーを維持しつつで観光客を受け入れるには、入国後14日間隔離や、入国者の行動を追跡できるようにしなければならず、観光客の受け入れが始まる場合でも、入国者数は制限しなければならないでしょう。おそらく。

というわけで、現在のパラオは、コロナフリーの維持、観光部門休止、経済下落、政府部門強化を模索、という状況にあると思われます。経済の非常事態が続いており、中国、台湾、日本などの観光客について考えられる状況ではないようです。
ダイエット2 [2020年10月04日(Sun)]

今日、何カ月かぶりに、恵比寿〜渋谷〜代官山コースを走りました。小さな戦いに勝った。
体重は68キロ。8月最大で73キロは超えていたので、5キロ減。

67〜68キロを2〜3週間維持できれば、内臓にも体型にも変化が出てくるでしょう。

今回のダイエットは、単純な糖質制限ではなく、食べるタイミングと内容を変え、運動しながらなので、不健康な感じにはならないと思う。

次の一週間、どこまで行けるか。
日本政府、マーシャル諸島水供給プロジェクト承認 [2020年10月05日(Mon)]

なんと!15年進まなかったマーシャル諸島マジュロの水供給プロジェクトが動きました17百万米ドル(約18億円)のプロジェクト。マジュロの貯水容量が4割増える計画だそうです。

https://www.rnz.co.nz/international/pacific-news/426882/japan-to-expand-water-supply-in-marshall-islands-capital

2006年、自分が専門調査員でマーシャルに赴任した時には、すでに問題が発生しており、2009年に退任する前まで、手を変え品を変え、何とかできないものかと苦心していた案件です。給水パイプは交換されているのだろうか。2006年当時、給水パイプはすでに30年ほど経っており、漏水がひどく、新しい貯水槽を作って増える容量と漏れる量が同じじゃないか、それならばパイプを替えるのが先だ、といった議論もありました。

2014年頃には、ミクロネシア連邦に赴任しマーシャルのインフラ案件を担当していたキリバスの豪州大使館の友人(豪州外交官)が、もうすぐ何か動きそうだと言っていましたが、動かず(おそらくマーシャル国内政治のせいでしょう)。その後、何の音沙汰もありませんでした(おそらくマーシャル国内政治のせいだったのでしょう)。

自分が赴任した当初の問題は、例えば、日本側の質問に対してマーシャルからの誠実な回答がないように見えていたり、コストが想定と異なっていたり、その過程が不明確であったり。

こちらは日本のODA、すなわち国民の税金であるので、マーシャル側にポイントを説明しつつ、誠実な対応を求め、いろいろありました。敵も作りました。怖い思いもありました。どこまで書いて大丈夫だろうか。

島のODAでは土地問題が発生することが度々あります。国は良いと言っているが、地主と話がついていないとか。プロジェクトが見えてくると地主が増えるとか。それで代替案を求めたりとか、現地政治が裏で関係していたりとか。


直接の結果ではないですが、2007年末〜2008年1月に政変があり、その後、マーシャル政治は今年のデービッド・カブア政権成立まで混乱が続きました。まさにその政変の端緒から巻き込まれたところがありました。政権が変わると優先度が変わり、マジュロの話のはずが、クワジェリン環礁のイバイに移ってしまったり。

今の政権には、ケーサイ・ノート元大統領、キャステン・ネムラ元大統領がおり、ようやく主流に戻ってきたということかもしれません。

ここには書けませんが、本当にいろいろありました。当事者は何人かもう他界していますが、いろいろな場面を思い出します。

ともかく、ずっと心に引っかかっていたものが、一つクリアになりました。カブア公共事業大臣(元駐日大使)、アルフレッド財務大臣、ネムラ外務大臣なども動いたのでしょうか。

実際に生活していると、飲み水は買えますが、生活用水が不安定なのはかなりストレスです(トイレの水は海水)。家に雨水のタンクがある家であれば良いですが、無い場合もあります。隊員時代は、タンクの無い部屋に住んでいたので、雨が降るとまさに恵みの雨で、何とか水を集めようとしていました。

当時も今も、マジュロでは計画断水があるようなので、日本の支援により、住民の生活が向上することを願います。水の供給が安定すれば、じわじわと保健衛生面でも良い効果が表れていくでしょう。
フィジー社会経済への新型コロナの影響−UN Pacificレポート [2020年10月06日(Tue)]

来年の太平洋・島サミットを考える上で、短期視点と中長期視点の現地社会経済への影響を踏まえることが重要だと思います。

これまで、ANZ銀行、ADBなどがレポートを出していますが、先月UN Pacific(フィジーにある国連地域事務所=正式名はUN resident coordinator officeかと思います)から出された「Socio-Economic Impact Assessment of COVID-19 in Fiji(フィジーにおける新型コロナウィルス感染症の社会経済影響調査)」(リンク先からレポートのダウンロードができます)が自分の感触に近いので、自分へのメモの意味も込めて、気になるポイントを残します。

まず、ざっくりとフィジーの社会経済指標(コロナ前, 2017)は次のとおりとなります。数値は、ADBのKey Indicator Databaseを参考にしています(https://kidb.adb.org/kidb/)。
・人口約89万人
・名目GDP約5200百万米ドル(約6,000億円)
・一人当たりGDP 5900ドル
・高中所得国
・政府支出約1400百万米ドル(約1,600億円)
・政府支出の対GDP比 26%台
・民間部門:観光、建設業、農業(砂糖含む)、林業、鉱業、製造業(衣料など)、漁業、ミネラルウォーター(産業ではないですが)


今回のUN Pacific レポートで気になった点は次のとおりです。ここでは短期視点のみ書きます。

まず、コロナ前の経済。
・観光部門:GDPの38%に相当
・経済成長率:2018年3.5%(20年で2倍のペース)、2019年1.3%(災害の影響等)
・債務比率:GDP比65.6%(2019)*非常に高いが対外債務は13%と低い。

コロナ後の経済予測
・2020年GDP:21.7%減
・債務比率:GDP比83.4%(2021年7月まで)*極めて高い。

緊急経済対策(外部からの資金調達)数字はGDP比
・フィジー 8.7%
・マーシャル 3.1%
・パラオ 2.4%
・トンガ 5.3%

新型コロナの雇用に関する影響
フィジーでは求人広告数を景気動向を把握する指標の一つとしています。これが、フィジー準備銀行によれば、前年比48.8%減。大きな景気後退といえます。

貧困率(コロナ前)
フィジーは高中所得国であるので、1日あたり7.1フィジードル(約360円)を貧困線としています。

全体 24.2%(2019)(2002が39.8%、2015が28.4%と改善が続いていた)
都市部 16.76%
村落部 31.9%

貧困率(コロナ後)UN Pacificでは4つのシナリオがあり、予測幅は次のとおり。
全体 26.5% 〜 37.5%
都市部 19.3% 〜 28.8%
  村落部 33.8% 〜 46.3%


大昔、2008年頃、UNFPA地域代表がマーシャルを訪問し、マーシャルの貧困率について説明したところ、当時のマーシャル政府は、大統領、閣僚、議員、政府職員に至るまで「マーシャルには貧困は存在しない。彼らは島嶼国のことを何も知らず数字だけ見ている」と憤慨したことを思い出します。

地域コミュニティの繋がりが残っている小島嶼国では、相互扶助の文化があり、収入がなくとも助け合い生活していく文化があります。また、村落部(マーシャルの場合は主に離島部)では、現金収入よりも自家消費の経済活動が主であるので、収入の数値に反映されないというところがあります。

フィジーの場合、インド系、先住民系、都市部、村落部でやや見方が異なってきます。

都市部は観光業が壊滅的であるので民間部門は大きく縮小していると思いますが、政府機関・地域機関・国際機関関連の労働者が多いため、貧困率悪化はある程度抑えられます。

景気のいい時には、村落部から特に先住民系のフィジー人が都市部に出てきますが、景気が悪化するとこれらの人々が生活できなくなります。村落部では相互扶助で生活できますが、都市部ではお金が必要であり、故に犯罪が増え、治安が悪化する可能性があります。このコロナ禍でそれらの人々が村に戻るのか否かが気になるところです。民間部門のインド系住民の生活については、国内消費の下落幅次第だと思います。

村落部では、農業・漁業ができていれば、貧困率が低くともある程度生活は維持できるでしょう。また先住民系の村落では、伝統的な繋がりもあり、景気に関係なく、生活は維持できます。一方、村落部のインド系住民は、そのような確固としたセーフティネットが無いので、厳しくなる方々が増えるかもしれません。

今後、より実態に近い、各国の社会経済指標が出てくるでしょうから、国レベルの関係で言えば、各国の経済構造、政府財政、債務健全性悪化などを踏まえ、状況に合致する協力が求められるのではないかとい思います。
太平洋島嶼国首脳が国連で結束 [2020年10月06日(Tue)]

このような記事がありました。

https://www.rnz.co.nz/international/pacific-news/427172/pacific-leaders-united-on-climate-ocean-and-security-issues-at-the-unga

先日の国連総会で、太平洋島嶼国首脳が、それぞれ、気候変動、海洋、気候変動に関する文脈での安全保障に言及したようです。

太平洋島嶼国は、その独立経緯から、国連を重視しています。

例えば、先般行われたニューカレドニアの住民投票も、元をたどれば、人口4割強の先住民系カナックの人々の独立意志を背景として、1986年の国連非自治地域リストへの再掲(メラネシアン・スピアヘッドグループ設立年)があり、それにより国際社会の目の下で、フランスが住民の意思を確認する義務が生じました。

その後、フランス、ニューカレドニアの間で、1988年マティニョン合意(Matignon Agreements)、1998年ヌーメア協定(Noumea Accord)があり、後者のヌーメア協定に基づき、20年後の2018年、今年と独立を問う住民投票が行われました。2年後を目途に、3回目の投票が行われると思われます。

ニューカレドニアの話は、次のエントリーで触れたいと思います。

2012年のリオ+20、2014年の第3回小島嶼開発途上国(SIDS)会議(サモア、SAMOA Pathwayがまとめられた会議)ごろから、地域ではいろいろな摩擦はあるものの、国連の場では結束する場面が増えました。今回もその方向性は変わっていないようです。

上記の記事で1点気になるのが、ミクロネシア連邦パニュエロ大統領の声明。中国と米国による大国間の競争について唯一言及したそうです。この点は、表に出るか分かりませんが、数週間前にある原稿に書いた懸念・関心に繋がるものです。間接的に、中国・台湾・米国関係がにじみ出ています。

結束というのは、共通課題ということかと思います。各国にとって気候変動は重要な現実的リスクなので、地域ブロックがあろうがなかろうが各国首脳は気候変動に対する懸念を表明したことでしょう。
ニューカレドニア2回目の住民投票 [2020年10月06日(Tue)]

結果が報じられています。差は縮まりましたが、反独立派が勝ちました。

https://www.rnz.co.nz/national/programmes/middayreport/audio/2018766933/new-caledonia-narrowly-rejects-independence-in-2nd-referendum

前のエントリーで、ここまで書きました。

”太平洋島嶼国は、その独立経緯から、国連を重視しています。

例えば、先般行われたニューカレドニアの住民投票も、元をたどれば、人口4割強の先住民系カナックの人々の独立意志を背景として、1986年の国連非自治地域リストへの再掲(メラネシアン・スピアヘッドグループ設立年)があり、それにより国際社会の目の下で、フランスが住民の意思を確認する義務が生じました。

その後、フランス、ニューカレドニアの間で、1988年マティニョン合意(Matignon Agreements)、1998年ヌーメア協定(Noumea Accord)があり、後者のヌーメア協定に基づき、20年後の2018年、今年と独立を問う住民投票が行われました。2年後を目途に、3回目の投票が行われると思われます。”

続きになります。

ニューカレドニアでは、現在40%台の先住民系住民の人口が55%を超えるか、欧州系住民に先住民系住民の強い支持者が現れないと、独立はかなり厳しいでしょう。仮に独立できれば、ニッケル鉱と観光業(今はコロナ禍にありますが)があるので、バヌアツ以上に発展する潜在性はあると思います。数字上はそうですが、以前バヌアツの友人と話したときには、ニューカレドニアは発展しているように見えるが、先住民系住民はその繁栄を享受できていないと言っていました。それが確かならば、国としての一面の数字ではなく、人口統計学を踏まえた分析が必要だと思います。

仮に、独立した場合、まず先進国ODAや南南協力(途上国間協力)の援助対象国になります。コロナ後の社会がどうなるのか読めませんが、コロナ前の世界情勢から考えれば、他の太平洋島嶼国と同様に、中国の民間部門への資金や南南協力による援助が入ることになるでしょう。日本も、現在フランス領ということで扱いが難しかったところ、欧州部門ではなく、大洋州部門が担当し、ODAを行わなけばならなくなります。

隣国の豪州も、現状でさえ、メラネシア諸国との関係維持や調整に苦労しているところ、もう1つ国が増えてしまいます。

非常にざっくりと言えば、先進国にとっては現状維持がベター。先住民の権利という視点で言えば、独立を支持したい、という難しいところがあります。


ちなみにメラネシアン・スピアヘッドグループ(本部:バヌアツのポートビラ)ですが、僕はこのグループが結構好きでロゴ入りグッズを買ったことがあり、何度か本部に行き、話を聞いたことがあります。2014年頃、当時の事務局長の話では、設立当初は主権確保(特にニューカレドニアの先住民)のために宗主国・旧宗主国と戦うために結束することが主な目的である政治的組織でしたが、近年は経済枠組みとしての性格が中心になっているとのことでした。パプアニューギニアがあるため、地域経済・人口の9割がメラネシア地域に含まれています。PICTAという地域貿易協定に先んじて、MSGFTAが施行されています。ただ、近年はインドネシアの西パプア問題(自由独立運動、人権問題)に関して、パプア系住民を支持するバヌアツ・ソロモン・FLNKSと、インドネシアの立場を尊重するフィジー・パプアニューギニア間で意見の不一致が見られます。
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