太平洋島嶼国の観光再開は可能か。 [2020年08月05日(Wed)]
太平洋島嶼国各国の経済を見たときに、民間部門が強く、さらに観光業の割合が大きな国々というのは、フィジー、パラオ、クック諸島の3国になります。
次いで、バヌアツ。 さらに、サモア、トンガ、ニウエ そのあとに、ソロモン諸島、ミクロネシア連邦 と続くイメージです。 マクロで見た場合はフィジーからバヌアツにおける影響が非常に大きいのですが、観光部門が開発途上の国々であっても、マクロでは規模は小さくとも、住民や観光業者の個別の数百万円から数千万円のロスというのは深刻な問題です。 そういった事情も踏まえつつ、特に観光業の活発であった国々では、如何にインバウンド観光を再開できるかが、大きな関心事項となっています。 そのような状況の中、今朝、少し早くから地域観光に関するウェビナーがあり、新型コロナウィルスに関する安全性の面で、いくつか気づかされることがありました。 まず、Safe ZoneとWith Coronaという2つの見方。 With Coronaは、現地の医療体制が十分に整っていることを前提としなければならず、太平洋島嶼国では非常に困難。したがって、可能な限り、Safe Zone=コロナフリーを維持しなければなりません。 そうすると、観光対象国は少なくともコロナの感染拡大が収まっている国だけになり、現状、観光市場としては、ニュージーランドと台湾だけになります。(これらの国々でも、海外との人の往来が再開すれば、常にコロナ感染拡大のリスクはあるものと思います。) Safe Zoneを維持する場合、新型コロナの無症状者とPCR検査の精度が問題となります。無症状者が他者にウィルスを感染させる可能性があることと、PCR検査である程度の偽陰性可能性があることが問題になります。 PCR検査というのは、何らかの症状がある人に対して、原因を確定するための手段の一つだと思います。そのPCR検査による陰性証明というのは、With Coronaであれば、マクロで見た場合の感染者数の移動をある程度抑えることができるので有効でしょうが、コロナフリーという視点では難しいかと思います。 そのため、太平洋島嶼国側が、陰性証明を持つ観光客を受け入れる場合でも、その中の数%がウィルス保持者だとの前提に立った事前対策を行わなければならないでしょう。 現地の対応としては、1つは行動範囲の限定(「汚染しても良い地域」の指定と言えるかもしれません)、1つは感染者が出た際の行動履歴の追跡、それ以前に、到着後に14日〜21日間隔離という方法も必要かもしれません。 さらに医療体制の充実も必要になるでしょう。 日本を含め、各国で、症状のある感染者が出た場合、その患者さんは数週間入院することになっています。重症化した場合には、さらに期間が長くなります。患者数は点ではなく累積になっていきます。また、感染者が出た場合には、感染拡大を防ぐために、接触者の確認と隔離、行動履歴の追跡など、根気強く対応しなければなりません。 これまで観光客が現地にウィルスを持ち込み、現地の人々を感染させる場合のことを考えていましたが、観光客が現地で発症するケースも想定しなければなりません。重症の場合は、短時間で急速に症状が悪化するケースもあるようなので、観光客が発症した場合、現地の医療体制が生存のカギになります。しかし、、太平洋島嶼国でどれだけICUがあり、人工呼吸器が使用できるのか。 今日のウェビナーの中で、豪州の方が、先月まで話題になっていたニュージーランドとの観光再開構想「Trans-Tasman Bubble」については、最近の豪州での感染再拡大を受け、国内では話題にならなくなったと話していました。 状況は常に変化していくので、我々も短期視点と中長期視点を持ちつつ、情報を常にアップデートしていかなければなりません。 |