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クラスター感染の予防 [2020年03月01日(Sun)]

3月に予定していたパラオ出張は、国内外の専門家の先生6名、パラオ政府や地方政府や多くの友人が関わり、半年前から準備していたものでした。
先週木曜にこの出張を中止する決断をするため、これだけ変わってきた方々が皆納得できるような証拠と根拠を示す必要がありました。感傷的な理由では難しいところです。

またおそらく自分の性質や職場のある場所のせいで、危機感が少し強かったかもしれません。パラオのみんなと何度もやりとりをし、日本での報道内容や政府から出される要請等共有しリスクについても説明しました。国内外の専門家の先生にも根拠を示し、理解していただきました。

その数時間後というか翌日、都内の空気感が一気に非常時モードに変わりました。そのため、最終的には同じ空気感をみんなで共有できたものと思います。

しかしやはりその中止と言う決断をこれだけ関わっている人に説明するのには、強い責任感を感じました。そしてその決断をするための信頼できる根拠が必要だったと言うところです。

日本でも確実に感染者が増えており、自分が勤めている都内の周辺でも感染者が電車を使っていた、わかっているし、パラオに行くメンバーがウィルスを持ってしまう可能性を排除できないこと、そしてパラオに行く前に確実に自分がウィルスを持っていないと言う確証を持つ術がないこと。

そして、「大丈夫だよ」と根拠のない楽観主義によって行動し、仮にウィルスをお年寄りや糖尿病などを持つ人々の多いコミュニティーに持ち込んでしまった場合、どのような結果がもたらされるのか。これらのことが最も強い根拠で、パラオの協力者も国内外の専門家の先生方も同じ考えを共有していただけました。


先週金曜には、パラオの友人からは「日本はまだ非常事態宣言を出してないの?」と連絡があり、自分は政治経済の専門性はなく間違ってるかもしれませんが、「日本は大統領制ではないので、大統領令はないし、国民に協力をお願いすると言うことなのだと思う」と答えましたが、現地では日本はそういう危機的状況だと心配している様子でした。


今日の安倍総理の記者会見を見ましたが、よほど何か強い根拠があるのだと感じました。その点、もう少し聞いてみてもらえばよかったのになぁと思います。

耳に残ったのは、クラスター感染発生、すなわち集団感染発生、そのリスクをできるだけ抑制すると言うことでした。

感染症の専門家ではありませんが、映画を見ていても、ドクター役の人がクラスターを感染症拡大のポイントとして確認していたし、マクロ的に全体を見るとかなり重要なのだと思います。

また、おそらく政府には、いろいろなシミュレーションがあると思うので、それを聞いてみればよかったのになと思います。最も楽観的なものと最も悲観的なものと中位のものがあるのでしょう。(先日大臣がグラフで示していたものと同じかもしれませんが。)

強い危機感が共有できれば、責任感の強い人が多いので、多くの人が協力するんだろうなと思います。すでに言外ににじみ出る、そのような強い危機感を感じとっている人も多いのではないかと思います。


自分はよくも悪くも独り身なので、責任は自分にしかかかりません。もし自分に家族がいたら、押しつぶされそうなプレッシャーを感じてしまうでしょう。


そういえば、今日テレビを見ていたら、避難場所を知っておくために散歩がてら外を歩きましょうというACジャパンのスポットが耳に残りました。


さて、今日は、パプアニューギニアのコーヒー。深みと酸味のバランスが良い。

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中国民間の対ソロモン諸島超大規模融資話 [2020年03月03日(Tue)]

ここのところ、民間部門の話になりますが、中国からソロモン諸島に1000億米ドル(11兆円?)規模の秘密の融資話があり、それにソロモン財務省が絡んでいるとか、年利11%だとか、話題となっています。

https://www.solomonstarnews.com/index.php/news/national/item/22882-suidani-queries-grants-from-china

反中国、新台湾のマライタ島のスイダニ首長が政府を追及しています。同首長は、別記事ではマライタ選出議員9名に対し、現在のDCGA政府(The Democratic Coalition Government for Advancement )から離脱せよとも発言しているようです。


ADBのKey Indicatorsを見ると、ソロモン諸島のGDPは約8.6億米ドル(2016年、約900億円)(*2019年も恐らく9億米ドル程度とみられる)、政府歳入は約4.9億米ドル(2018年、約500億円)。GDPに民間部門が占める割合が400億円未満という経済構造。

このような経済状況で、民間とはいえ、1000億米ドルの借金、年利11%とは、利子だけで年に11億米ドル(GDPを超える)を超えるもので、通貨単位を間違っているのかと思っていました。


しかし、先日パプアニューギニアのマラペ首相がソロモンを訪問したことで、もしや?と思いました。

パプアニューギニアは資源経済で高度な経済成長を実現し、2018年のGDPは約242億米ドル(約2.6兆円)、政府歳入は約41億米ドル(約4500億円)。GDPの官民比率が概ね1対5と民間経済が強い形となっています。


もし、パプアニューギニアからの助言があるとすれば、鉱物資源の開発で、一気に経済を変えることができるとソロモン政府側が考えているかもしれません。

過去に洪水などの災害をもたらしたという話を耳にしたことがありますが、環境懸念もあるといわれるGold Ridge鉱山があり、他にも未開発のニッケル鉱もあるという話も聞いたことがあります。

鉱山開発を考えているということであれば、1兆円を超える融資の意味も現実的な数字として考えられます。鉱山開発があれば、地域への電力、通信、道路、港湾開発もセットとなるでしょう。


新型コロナの影響で中国経済が大きく減退したとしても、中国が安全保障上の要所として選択と集中を考える場合、さらに純粋に利益を期待できる投資である場合、積極性は変わらないのではないか。

ソロモン諸島国内情勢と共に、注意深く追う必要がありそうです。
太平洋島嶼国の主権とか、ガバナンスとか。 [2020年03月03日(Tue)]

先日、海洋白書2020の原稿を書かせていただく機会があり、自分の役割として、地域ガバナンスの基盤について歴史的に振り返る内容にも触れました。(まだ出版前です)

そこではカットしましたが、現状を作る要素としては、第1次世界大戦まで遡ることができます。日本は第1次世界大戦に参戦し、太平洋のドイツ領に入っていったわけですが、戦後、ベルサイユ条約の下、赤道以北のドイツ領を国際連盟の枠組みの委任統治領として、統治することになりました。

ここに赤道を挟んだ北と南の線引きができています。

その後、第2次世界大戦後、日本が統治していた旧ドイツ領(北半球の現在のパラオ、ミクロネシア連邦、マーシャル、北マリアナ)を米国が国際連合の下で、信託統治することとなりました。

戦後の太平洋島嶼地域は国連の枠組みでの信託統治領、米豪NZ英仏などの戦前からの保護領や海外領土で構成されていましたが、1960年12月の国連植民地独立付与宣言(植民地と人民に独立を付与する宣言、Declaration on the Granting of Independence to Colonial Countries and Peoples)」)以降、これらの信託統治領、保護領、海外領土が主権を確保していくかという流れができたものと思います。最初に独立したのは、1962年のサモア(当時は西サモア)。(自分が若い時に赴任していたアフリカのザンビアは1964年に独立)。

宗主国側から見れば、どのように統治領に主権を付与するか、特に国の安全保障上重要な地域に関しては、より慎重な対応が必要になります。統治領側からすれば、人も金もなく、軍隊も持てないが、良い条件で主権を確保したい。このような小地域を支える方法に国連の非自治地域リスト掲載があります。これに掲載されれば、国連の枠組みで、統治領における自治権の獲得状況が監視されることになります。

そこで、結果から見た形になりますが、宗主国−統治領間の関係として、米国でいえば、州、北マリアナのようなコモンウェルス、安全保障は米国に頼る自由連合国、完全な独立があるようです。

英連邦系では、まとまった基金を設置して、さっと手を引いたという印象です。実際に複数の国の友人らはそう言っていました。それにより住民の自立意識が高くなる一方で、米国系の依存心の強さとの差ができていると。

独立国であれば、本来自ら自国の安全保障の責務と権限を担うべきなのですが、島嶼国の多くは、人口が少なく、経済規模(国のGDPのボリュームとして)が小さいため、正直無理です。平和な時代であればそれでよかったものの、軍事的視点だけでなく、自然災害などの安全保障上の危機が増加している現在、何とかしなければならない状況となっています。

現在独立している14の太平洋島嶼国において、軍隊があるのはパプアニューギニア、フィジー、トンガ(現在は、基本的に防衛というよりも、国内の安定とか国際貢献が主な対象になっているようです)。

米国自由連合国(パラオ、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島)については、コンパクトに基づいて米国が責務と権限を有しており、各国に防衛上の脅威が生じた場合には米軍が防衛・安全保障を担います。これには、米国の安全保障に関わるものという大きな前提があります。

詳細を調べていないのと、軍事上の脅威が目に見えていないので、間違っているかもしれませんが、クック諸島とニウエはNZ自由連合国となっているので、おそらく両国の安全保障上の問題についてはNZが担うのだろうと思います。


前置きが長くなりましたが、先日、日系キリバス人で、一般社団法人日本キリバス協会代表理事のオノ・ケンタロさんが、興味深い話をSNSで少し触れていたので、ちょっと検索してみたところ、下記のような記事がありました(RNZI 2020/2/24付)。

https://www.rnz.co.nz/international/pacific-news/410228/call-for-closer-ties-between-australia-and-small-pacific-states

オーストラリア国立大学のJohn Blaxland教授が、中国の影響、気候変動、ガバナンス課題を鑑みて、キリバス、トンガ、ツバル、ナウルと、NZとクック諸島・ニウエとの関係のような、自由連合のようなより緊密な関係の構築を求めているという内容です。

現在の世界情勢下の太平洋島嶼地域は、戦後の各国・地域の自立から、アップグレードして、あらためて先進国との枠組みを作るという流れ(一見、戦後の動きから逆行するような流れ)になりつつあるように見えます。

仮に、上記の教授の話が現実味を帯びてくる場合には、やはり重要なのは各国の主権、経済や外交上の自由の確保だと思います。過去2年のオーストラリアの太平洋諸島フォーラム総会前後の状況を見ると、明らかに島嶼国を見下すところが言葉の端々から伝わり、豪州が「自由連合」というと島嶼国側には再植民地化のような印象を与えかねないと恐れます。

他方、仮に豪州との自由連合が、米国自由連合のように各国のパスポートを持ちつつも、教育・就労を含め、ビザフリーで準市民的権利を得られるのであれば、島嶼国側にもメリットがありそうです。(クック諸島とニウエについてはNZパスポートなので、NZビザが必要ない)

上記は学術界からの話ですが、今後動きが具体的な動きに繋がるのか、消えていくのか。頭のどこかにいれておきましょう。
握手しながら蹴りあう。 [2020年03月03日(Tue)]

自分は太平洋島嶼国関連の枠組みの一要素として安全保障を見ていますが、ハードな防衛・安全保障の専門家ではないので、以下は素人の落書き程度のものです。

もう9年も前になりますが、東日本大震災のとき、表面的には友好的に支援の話がありつつ、安全保障面では、そのような非常時にどれだけ対応できるのかを試すように、中国やロシアの空軍機が日本周辺を飛ぶ回っているというニュースがあったかと思います。

自然災害とは異なり、じわじわと広がる現在の状況を考えてみた場合、コアな安全保障面では何か動きがあったりするものなのだろうかと思ってぼんやりとニュースを見ています。

シリアがトルコに爆撃を加えたとか、先日は米軍機が中国人民解放軍にレーザーを放射“された”などのニュースがありました。(“放射した”と書いていましたが、書き間違いです。すいません)
https://www.voanews.com/east-asia-pacific/chinese-navy-fires-laser-us-aircraft

この記事の写真には、"A Chinese warship fired ~ 、グアムの西、フィリピン海で"とありました。(今年の2月27日の話です)


このようなニュースもありました。
https://www.47news.jp/4563502.html

ズムウォルト級駆逐艦というのは、何年か前に、その形から本当に作られるのか?と思っていたものですが(豪州が太平洋島嶼国に供与を始めている警備艇もそれっぽい形をしていますが)、いろいろ記事をみると、米国内では高額な無駄遣いとして批判されてきている船のようでした。ただ、ざっと読んで、Stars and Stripesの方の記事も読んでみましたが、電気が大きな意味を持っているようですね。

握手しながら蹴り合っているような感じがします。
パラオで、新型コロナの疑い。 [2020年03月03日(Tue)]

現地保健省によると、3/3、パラオで初めての新型コロナウィルス感染の疑いがある人が見つかったそうです。
その人物は、73歳の米国オレゴン州から訪問した女性で、現在14日間の隔離とのことです。

政府は台湾に支援を求めており、検体を送ったようです。

市民には、落ち着いて対応するよう呼びかけています。
3/2 ナウルが入国制限開始 [2020年03月04日(Wed)]

3/2、ナウル政府は、WHOによるPHEIC (Public Health Emergency of International Concern: 国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態)宣言を受け、ナウルへの入国制限を始めました。

対象国・地域は、中国本土、香港、マカオ、韓国、イタリアで、国籍を問わず、過去21日間に、これらの国・地域からもしくは経由したナウルへの空路・海路の渡航は認めないというものです。


この情報から気づくのは、1つは、ナウルに限らず、多くの国々でWHOの情報というのは非常に重要だということ。さまざまな情報があふれる中で、最終的な決断をする根拠になるというところ。もう1つは、14日間(2週間)ではなく、21日間(3週間)としているところです。

ナウルと外部への空路の繋がりは、豪州ブリスベン(ソロモン経由もあり)、フィジーのナンディ、北向きにキリバス(タラワ)〜マーシャル(マジュロ)〜ミクロネシア連邦(ポンペイ)があります。




ミクロネシア連邦チューク州独立に関する住民投票延期(1) [2020年03月04日(Wed)]

Radio New Zealandやロイターが報じています。

https://www.rnz.co.nz/international/pacific-news/410655/chuuk-independence-referendum-postponed-until-2022

https://www.reuters.com/article/us-pacific-micronesia-idUSKCN20L09G

今月(2020年3月)に予定されていた、チューク州のミクロネシア連邦からの独立の是非を問う住民投票を、2022年まで延期することが決まったそうです(現コンパクトが切れるのが2023年9月)。

国連非自治地域リストに掲載されているニューカレドニアや、パプアニューギニアのブーゲンビル州独立運動の話とは異なる空気感があると思うので、周囲が注目しすぎて煽ることなく、冷静にみてみたいと思います。

なぜ注目されるのかというと、チュークが独立すれば、中国と緊密な関係を構築し、米国自由連合の鉄壁の砦を崩すことになる可能性があると見ているからです。

報道は報道として、中国云々に関わらず、冷静に見てみましょう。

戦後、現在のパラオ共和国、ヤップ州、チューク州、ポンペイ州(コスラエ州はポンペイの一部として扱われた)、マーシャル諸島共和国、そして北マリアナ自治連邦区の6地域が国連の下での米国信託統治領となりました。*グアムは1898年の米西戦争の結果、米国領となったため、これらの地域とは立場が異なります。

その後、米国はこれら6地域に主権付与を行わなければならなくなり、当初、6地域を1つの国であるミクロネシア連邦として独立させようとしていたそうです。パラオにあるエピソンミュージアムには、現在の4つ星のミクロネシア連邦の旗が、6つ星になっている旗が展示されています。

ここからは、10年以上前になりますが、ウエキ駐日パラオ大使(当時)、カブア駐日マーシャル大使(当時、現公共事業大臣)、トニー・デブルム外相(当時、故人)から個別に聞いた話が基になります。

1970年代に、米国としては、上記のように1つの国として地域を独立させようとしていたそうですが、各地の住民の考えとしては、それぞれに民族も言葉も違い、潜在的経済力も異なることから、さまざまな動きが出てきました。

まず、北マリアナが米国に留まることを決断し、1975年にコモンウェルス盟約を米国と締結、1978年に米国領の北マリアナ自治連邦区(コモンウェルス)となりました。

次に、マーシャル諸島が特に核実験賠償に係る問題などの要因からミクロネシア連邦の枠組みから離脱を表明、パラオはその地理的利点(アジア諸国に近い)やパラオ人としての誇りがあり離脱、枠組みに残った地域が、コスラエが州としてポンペイから分離され、4州となるミクロネシア連邦が形作られたそうです。

マーシャル諸島は1979年5月1日に自主憲法を施行し自治政府を樹立、1986年に米国と自由連合盟約(コンパクト)を結び、10月21日に独立しました(この過程で日本がマーシャル側の権利を守るために助けたことがあるという話を故デブルム大臣から聞いたことがあります)。

ミクロネシア連邦は1979年に自主憲法を施行し自治政府を樹立、1986年に米国と自由連合盟約を結び11月3日に独立しました。

パラオは、1981年に自主憲法を施行し自治政府を樹立、1982年に米国とコンパクト案に合意したものの、同憲法の非核条項とコンパクトが合致しないために、憲法改正の住民投票が7回にわたり繰り返され、コンパクトについてのみ非核条項を凍結するということが承認され、8回目の住民投票でコンパクト案が承認されたとのことです。そして、コンパクトを締結し、1994年10月1日に自由連合国として独立しました。


ちなみに、太平洋島嶼地域には、PIF(太平洋諸島フォーラム)の枠組みで1985年8月6日に署名され、1986年12月11日に効力が発生したラロトンガ条約(南太平洋非核地帯条約)があります。これは、核兵器(実験、配備)だけでなく、核物質の廃棄、核施設の建設、核物質の利用を認めないとするものです。豪州、NZは署名していますが、当時、まだ独立していないパラオ、独立間もないミクロネシア連邦、マーシャル諸島はPIFに加盟していなかったため、これに署名していません。

長くなったので、一旦切ります。
ミクロネシア連邦チューク州独立に関する住民投票延期(2) [2020年03月04日(Wed)]

前の記事で、ミクロネシア連邦と旧米国信託統治領の主権確保について、簡単に振り返りました。
私見になりますが、ここからもう少し、状況を深堀したいと思います。

現在のパラオ、ミクロネシア連邦、マーシャル、北マリアナで構築されていた米国信託統治領は、北マリアナが米国領に留まり、マーシャル、パラオ、ミクロネシア連邦が、それぞれ米国とコンパクトを締結し、主権を確保しました。

現在のミクロネシア連邦は、西からヤップ州、チューク州、ポンペイ州、コスラエ州で構成され、人口はそれぞれ約11,000人、約50,000人、約36,000人、約7,000人で、母語が異なります。

だいぶ前、2008年頃、現地の教育上大きな問題となっていた英語力について、当時のマーシャルのトメイン大統領は、米国信託統治領時代の方がマーシャル人の英語力は高かったと話していました。共通語として英語を使う機会が多かったためとのことでしたが、マーシャル語を使うことについて強い誇りを示していました。

対ミクロネシア連邦支援に関わったことがある方は皆ご存知ですが、よくミクロネシア連邦と仕事をするときには、5つの政府を相手にしなければならないといわれます。

ミクロネシア連邦政府は対外的な窓口の政府としての役割が強い一方で、内政に関しては、各州政府が担うという役割があるといえるでしょう。

米国とのコンパクトというのは、あくまでもミクロネシア連邦という国の基盤を構成する、国と国の条約であり、州と米国の関係ではありません。

そのコンパクトは、経済支援ばかりがクローズアップされますが、実際には統治、経済関係、安全保障・防衛、一般規定の4つの編からなり、単純なものではありません。現地の人々が自然に権利を享受している一方で、その特別な地位が認識されにくいのが、ビザに関わるものです。統治の編に記載されています。

パラオ、マーシャルと同様に、ミクロネシア連邦のパスポートを持つミクロネシア連邦国民は、米国内でビザなしで教育も労働もでき、米国の社会福祉や連邦プログラムを受けられるなど、米国民と同等の権利を有するとされています。ただし、これは市民権ではないということが明確に記されており、例えば、ミクロネシア連邦パスポートと米国パスポートは同じではなく(当然ですが)、米国パスポートに簡単に切り替えられるものでもありません。その場合は、他の外国人と同様に市民権取得の手続きが必要です。

脱線しますが、かつて第1次コンパクトの時には、同様にマーシャルのパスポートが持つ特典を目的として、フィリピン人や中国人がマーシャルで生活し、(現地では5年ほど居住すると申請できるはずですが)マーシャルのパスポートを取得し、米国に移住するということが可能でした。しかし、2003年10月に始まった現在の改定コンパクト(第2次コンパクト)では元の出身がマーシャルではない場合は、米国ビザを取得しなければならなくなりました。

ミクロネシア連邦に戻りますが、コンパクトというのは経済援助が注目されますが、本来重要なのは、このビザフリーの権利です。仮にこの権利がなくなれば、グアム、ハワイ、米国本土など米領でミクロネシア連邦パスポートで居住している人々は、ビザを取得しなければならなくなり、かなり多くの人々がビザを取得できずに国外退去となるでしょう。


経済援助については、米国はミクロネシア連邦の米国依存を軽減するため、2008年頃から、1年目50万ドル、2年目に100万ドルというような形で2023年まで信託基金に資金を積み立てています。積み立てに使われた資金は、真水の援助部分からは差し引かれ、表面上は米国の援助が減っていくように見えます。

また、第1次コンパクトの時代には、米国はミクロネシア連邦政府に資金の使用に対する自由度を持たせていましたが、第2次コンパクトでは、腐敗防止・ガバナンス強化のため、予算建て・執行・決算に関し、米国政府が承認する形となっています。四半期ごとにレポートを出す形となっているはずです。

コンパクトの資金は、連邦政府から州政府にももたらされますが、その精査の過程でいろいろな条件が出されることがあり、資金が停止されることもあります。かつて、コスラエ州とチューク州では報告書が米国側に提出されなかったために、資金が停止されたことがありました。ミクロネシア連邦短大に関しても、現地からみるといろいろと難癖をつけられるという見方がなされていました。

これにより、第2次コンパクト(2003〜2023)のもとでは、現地では「米国が意地悪で、我々をいじめている」という米国に対する反感が強まっていきました。

連邦議会でも、クリスチャン前大統領が議員であったとき、モリ政権のとき、2011年頃でしたか、このような米国の意地悪な姿勢に不満を持ち、コンパクト破棄の決議をしたことがありました。

(つづく)
ミクロネシア連邦チューク州独立に関する住民投票延期(3) [2020年03月04日(Wed)]

つづきになります。

現在の第2次コンパクト(2003.10~2023.9)についてですが、破棄条項というものがあります。

原典に返る時間がないので、記憶に頼ることになりますが、例えばミクロネシア連邦が破棄したい場合、連邦議会ではなく、住民投票を経て、住民の意思を確認し(これはそもそも国連の下での信託統治領から、住民投票を経て独立した経緯があるため)、議会で決議し、米国政府に通達する。それを受けて米国が判断する形となっています。

また、仮にコンパクトが破棄された場合、400億円以上積み立てられている信託基金の米国投入分については、米国が管理する形になっていると思います。ミクロネシア連邦パスポート所持者は、破棄された時点で、米国ビザが必要となり、米国内にいる何万人ものミクロネシア連邦住民は帰国しなければならなくなります。恐らくこれだけの人々を食べさせていけるだけの経済力はないでしょう。


長くなりましたが、ここで仮にチューク州がミクロネシア連邦から独立するという場合、どのようなことが考えられるでしょうか。

まずミクロネシア連邦から離脱ということで、現在のコンパクトは無効になります。チューク州出身者はチュークのパスポートが必要になり、チュークのパスポートではビザフリー特典が与えられないため、米国領内にいるチューク人数万人が強制退去となるでしょう。当然フードスタンプなども得られなくなります。多くの米国居住チューク人も当然ながら親類が本国にいるわけで、若者の将来にも大きく関わる問題となります。

現在の州政府財政は100億円規模だと思いますが、多くが米国からの援助を原資としているので、これもなくなることになり、経済危機が訪れるでしょう。

中国が代わりに援助協定やコンパクトのような条約を結ぶ場合、準米国市民として英語圏で生活しているチューク人が、中国領内で生活を送ることを望むかどうか。


本当にチューク住民が独立を望む場合、国としての自主憲法を施行し、州政府を自治政府に切り替え、独立以前に、ミクロネシア連邦と自由連合盟約などの条約を結ぶか、米国と新たなチューク共和国−米国自由連合盟約(コンパクト)を結ぶことが必要な過程となるでしょう。

このミクロネシア連邦や米国の役割を中国が担うというのが、いろいろの報道で見る懸念ですが、米国に親類がいたり、親米の住民との間で大きな対立が発生することになるでしょう。

おそらく、議論の過程で、米国内でビザなしで生活できる権利の強さが再認識されるのではないかと思います。


前の記事で書いた2011年頃のクリスチャン前大統領ら主導による連邦議会のコンパクト破棄決議では、2018年にコンパクトを破棄するとしていました。ただ住民投票が行われるわけでもない。

現在の第2次コンパクトは2023年9月までなので、2018年頃から改定交渉が始まると考えられていたため、これに合わせて米国との交渉を本気で行うための意思表示だったのかもしれません。(クリスチャン前大統領は、ポンペイ州の人です)

米国側を見ると、民主党オバマ政権時代よりも現在の共和党トランプ政権の方が、ミクロネシア連邦の安全保障上の重要性を再認識し、現地側の声を尊重する姿勢が見えます。その点で言えば、上記決議は意味があったのではないでしょうか。

チュークに話を戻すと、2022年に住民投票ということですが、その年には、おそらく第3次コンパクト案がミクロネシア連邦と米国との間で合意されているものと思います。本気で独立する可能性を持つためには、次期改定コンパクトに、ミクロネシア連邦から離脱する際の新政府(旧州政府)と住民の地位の保障に関する条項を加える必要があるでしょう。ただ記載してしまえば、独立への道を開くことになるので、現実的ではないでしょう。

世界情勢は変化し、現在は平時と有事の間にある状況に見えます。チュークの独立を平和的に話せる時期ではない。
新型コロナウィルスによるパラオ観光部門への影響 [2020年03月05日(Thu)]

3/2付パラオ大統領府フェースブックから。

概要は「新型コロナウィルスの影響で、12月の訪問者数が前年同期比43%減。観光部門からの政府収入が減少することから、大統領は全閣僚に対し、注意深く支出を管理するよう求めた。」

ここからは私見になります。

パラオは1月27日に国家緊急事態委員会を開き、当時こちらのイベントで招聘中だったウェイミン国家緊急事態管理局長も日本からオンラインで参加しました。そこで、まず中国本土、香港、マカオからの入国を制限し、香港、マカオからの直行便を停止しました。

パラオのGDPは、規模として約300億円、官民比率が1:2、GDPの7割が観光部門に関係しています(ADB資料より)。

パラオの人口は約21,000人、内訳はパラオ人約13,000人、フィリピン人約5,000人、バングラデシュ人約2,000人、その他(日本人、欧米人、台湾人、中国人含む)となります。パラオ人以外の方々は主に民間部門に従事しています。

ちょっと古くなりますが、2014年のパラオ統計局の世帯収支報告書によれば、パラオ人労働力は約8,000人、その8割程度が政府部門とのことです。政府部門には中央政府や州政府が含まれます。

簡略化すれば、GDPの政府部門が100億円、それにパラオ人家計の8割が関係していることになります。

民間部門200億円を見ると、そのほとんどが観光関連になります。昨年のパラオ政府観光局(PVA)資料に基づく訪問者数(100人台以下切り捨て)は(左から、FY2008、FY2015、FY2018, FY2019| パラオの会計年度は10月から9月)以下のとおりです。*国の順番はパラオ政府のママ。

   FY2008 FY2012 FY2014 FY2015 FY2018 FY2019
日本 29,000人  38,000人、 38,000人、 31,000人、 24,000人、19,000人
韓国 14,000人  18,000人、 15,000人、 12,000人、 12,000人、11,000人
台湾 22,000人、 40,000人、 31,000人、 15,000人、 11,000人、14,000人
中国 634人、 3,715人、 21,000人、 91,000人、 50,000人、28,000人
   (香港、マカオ含む)
欧米 11,000人、 13,000人、 14,000人、 13,000人、 12,000人、11,000人

全体 83,000人、118,000人、125,000人、168,000人、115,000人、89,000人


2012年までは、シェアは日本、台湾がトップを争い、韓国と欧米が安定して12,000人前後というところでしたが、さらに観光部門を発展させるために官民が中国市場を開拓したことで、2012年以降、中国が増え、2015年からトップシェアを占める形となりました。中国がトップシェアを取る一方で、台湾が大きく減り、日本も減少気味になり、現在に至るというところです。

新型コロナウィルスにより、パラオ政府が中国からの渡航を制限したことで、一時的だとは思いますが、まず中国の部分が大減少し、他の国々も渡航者数は減ります。昨年2月は春節も関わっていたので前年比減少率は大きくなるのは当然でもあります。

先ごろ、韓国からの渡航も制限がかかっているため、頼りは台湾、米国、日本。ただ日本がいつまで制限なしで渡航できるのかは今後の日本国内の状況次第となるでしょう。米国が強い対応を示せば、少なからず影響があるものと思います。

民間部門は、かなり厳しい状況に直面することになり、特に中国、韓国の観光客に依存している業者は体力勝負となるでしょう。

パラオ政府・コロール州政府は観光に関わる税収・入域料が減少することになり、さらにPPEFという環境フィーが大きく減収となることで、州政府としては入漁料の代替財源・保護区ネットワーク登録保護区維持管理財源が厳しくなりそうです。

マリンサンクチュアリについては、EEZをクローズしたことで、7億円前後の入漁料収入が減っており、これをPPEFでカバーするという体制の維持が厳しくなる可能性があります。

世界的に新型コロナウィルスの流行がいつ収束するのか、あるいは予防ワクチンや治療薬が開発されるのかによるでしょうが、開発パートナー側には現地経済・現地政府財政に注目し、必要な支援を求められるようになるかもしれません。

パラオに限らず、今後、太平洋島嶼国各国では政府財政・国内経済(政府部門が強い国が多い)が危うくなる国が出てくると思います。しかし、開発パートナー側も経済インパクトがどこまで行くのか不明なところもあり、対外支出は、より戦略的なものにならざるを得ないでしょう(台湾は昨年2国減ってより集中できるので良かったかもしれないですね)。

そのため、今後、先進国側(米国、豪州、NZ、日本、台湾)が水面下で戦略を練り、中国の出方に注意しながら、手分けして先進国側の影響力を強化する必要が出てくると思われます。
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