マーシャル総選挙では、24の地方自治体の単位に毎に選挙区が設置されており、全33議席あります。今後、選挙結果がおそらく12月上旬に確定し、その後、1月(第2火曜か木曜だったと思いますが)、最初の国会(ニティジェラといいます)で、国会議長、副議長、大統領が議員による互選で選出されることとなります。大統領はその後(10日ほどの期限があると思いますが)組閣を行い、新しい政権がスタートします。
このような日程となっているため、マーシャル諸島では選挙結果確定から1月上旬までの約1カ月間、ロビー活動があちこちで行われることとなります。
AKA対UDPの時代(1999年と2003年の選挙のとき)は、誰が大統領になるかが選挙結果確定後にすぐにわかり、誰が議長や閣僚になるのかが注目されていました。しかし、2007年の選挙以降、政治の対立軸が伝統的酋長系と平民系に、ノート大統領阻止という軸(自分はその根底にマーシャル人としてのアイデンティティ・主権・主張の確保があると思っています。米国に対してハッキリと物を言うとか。単純化すれば伝統保守。)が加わり、さらにさまざまな利権が混ざったことで、政党の枠組みがあまり意味を持たなくなってしまいました。
対立軸が曖昧となった結果、政党は結束の弱い政治グループとなっていき、無所属議員も増えたことで、選挙後には多数派工作が行われ、その過程で誰を大統領とし、誰を入閣させるか、誰を議長・副議長をするかの議論が行われることになりました。
このようにマーシャルでは、選挙結果確定後、12月から1月が最も熱い時期になります。台湾や米国も情報収集が活発化するものと思います。
ここで改めて、2019年10月時点での現職議員を見てみます(名簿の原典はマーシャル米国大使館ウェブサイト、かっこ内は自分の見立て)。
*便宜上、キャステンやアルフレッドJrらを新1、新1と同時期の新人だが色が異なる人たちを新2、その前の新人無所属系および無所属を無所属、トメイン大統領系をUPP、ノート大統領系をノート派UDP、UPP後に残ったUDPのうち反ノート派を反ノート派UDP(多くがKEAとされる)、大酋長系(イマタ派)をAKA、チューレラン政権で超党派的に結束した人をKEA、ハイネ・ファミリー系をハイネ派とします。
2019.10現在(総選挙前情勢)
アイリンラップラップ(2議席)
クリストファー・ロヤック(大酋長、穏健なAKA)元大統領(2012-2016)
アルフレッド・アルフレッド・ジュニア(新1)前資源開発大臣(更迭)
アイルック
メイナード・アルフレッド(反ノート派UDP)(ノート政権閣僚)
アルノ(2議席)
ジェチワリック・アントン(新2、KEA)
マイク・ハルフェリー(新2、無所属)元法務大臣(更迭)
アウル
ヒルダ・ハイネ(ハイネ派、AKA系無所属、女性)大統領(2016〜)
エボン
ジョン・シルク(反ノート派UDP)外務大臣(ノート政権閣僚)
エネウェタック
ジャック・アディング(中道系AKA)法務大臣、トメイン政権時から入閣
ジャボット
ケーサイ・ノート(ノート派UDP)元大統領(2000-2008)
ジャルート
キャステン・ネムラ(新1、ノート元大統領に恩義)元大統領(2016)、住民中心
デイジー・モモタロウ(AKA系無所属、ハイネ派、女性)
キリ(ビキニ、エジット)
エルドン・ノート(ノート派UDP)
クワジェリン(3議席)
マイケル・カブア(AKA、大酋長)
デービッド・ポール(新1)大統領補佐大臣・環境大臣
アルビン・ジャクリック(反ノート派UDP)元議長(ノート政権閣僚)
ラエ
トーマス・ハイネ(ハイネ派、AKA)運輸通信大臣
リブ
ジェラコシ・ベジャン(AKA)
リキエップ
レアンダー・レアンダー・ジュニア(新2、AKA?)係争中、2019.8辞職
マジュロ(5議席)
カラニ・カネコ(新1)保健大臣
デービッド・クレマー(UPP系無所属、KEA、大財閥一族)新1世代
アントニー・(トニー)・ムラー(新1)公共事業大臣
シャーウッド・ティボン(新1)
ブレンソン・ワセ(反ノート派UDP)財務大臣(ノート政権閣僚)
マロエラップ
ブルース・ビリモン(新1、AKA系?)
メジット
デニス・モモタロウ(穏健派AKA)資源開発大臣
ミリ
ウィルバー・ハイネ(ハイネ派、AKA系)教育大臣
ナムリック
ワイズリー・ザカラス(新2、反ノートUDP系?)
ナモ
トニー・アイセア(AKA)
ロンゲラップ
ケネス・ケリー(中道無所属)トメイン政権時から国会議長、新1世代、国民中心
ウジャエ
アトビ・リクロン(AKA)
ウトリック
アメンタ・マシュー(UPP系無所属)内務大臣(リトクワ政権時に初当選・初入閣)人格者
ウォット
デービッド・カブア(AKA)
ウォッジェ
リトクワ・トメイン(UPP)元大統領(2008-2009)、大酋長、ノート政権時議長
次に、選挙前の内閣の顔ぶれです。
ヒルダ・ハイネ大統領(アウル:ハイネ派、AKA系無所属、女性)
ジョン・シルク外務大臣(エボン:反ノート派UDP、ノート政権閣僚)
ジャック・アディング法務大臣(エネウェタック:中道系AKA)
デービッド・ポール大統領補佐大臣・環境大臣(クワジェリン:新1)
トーマス・ハイネ運輸通信大臣(ラエ:ハイネ派
、AKA)
カラニ・カネコ保健大臣(マジュロ:新1)
アントニー・(トニー)・ムラー公共事業大臣(マジュロ:新1)
ブレンソン・ワセ財務大臣(マジュロ:反ノート派UDP、ノート政権閣僚)
デニス・モモタロウ資源開発大臣(メジット:穏健派AKA)
ウィルバー・ハイネ教育大臣(ミリ:ハイネ派、AKA系)
アメンタ・マシュー内務大臣(ウトリック:UPP系無所属)人格者
これを見ればわかるように、もともと一枚岩ではなく、国の混乱を避けるという意思が働き、ハイネ派政権を支えてきた感があります(ノート政権否定、AKA系の古い政治からの脱却、利権排除などの緩やかなイメージで消去した中での集まり)。実際のところ、現職閣僚の中でもその手法やアイデアに問題がありそうな人たちも数名います。
(つづく)