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昨日のテイラー事務局長の声明に関連して思い出したこと [2021年04月15日(Thu)]

日本国内の新型コロナの感染拡大が新しい段階に移ったような雰囲気です。変異株が中心となるとすれば、これまで人の動きで増減の制御がある程度できていたものとは異なり、素人ですが、今回が本当の第2波なのではないかと思えてきます。改めて気を引き締めなおす必要がありそうです。

これでは対面の島サミットは無理なのは当然ですし(ワクチン接種が進んでいる島嶼国から見れば、日本はワクチン接種が進まず、変異株で感染拡大も続いているとみられる)、今後、現地への渡航も、ワクチン接種が必須になるのかもしれません(アフリカに行く際の、イエローカードのような。現地での感染予防ですが。)。

今日のタイトルの件ですが、昨日、汚染処理水の海洋放出について、下記のリンク先にあるテイラー事務局長の声明を紹介しました。

https://www.forumsec.org/2021/04/13/statement-by-dame-meg-taylor-secretary-general-of-the-pacific-islands-forum-regarding-the-japan-decision-to-release-alps-treated-water-into-the-pacific-ocean/

Radio New Zealandでは、「toxic waste」を「dump」ことを「re-thinkj」するよう求めたと報じていました。テイラー事務局長は汚染処理水、海洋放出、協議して安全性を納得できるまで延期するよう求めるといった、もっと冷静な声明を出していたので、この報道は煽っているように感じました。(ニュアンスは一緒だろ、と言われれば、うーん、そうかと思いますが)


ここで今日思い出したのは、PIF事務局と加盟国の関係です。

PIF事務局は、PIF加盟国首脳の意思の上には立てないので、テイラー事務局長のPIF事務局長としての発言は、本来であれば、各加盟国首脳の意見を集約したもののはずです。しかし、果たして、PIF事務局はこの短時間で調整できたのかどうか。現状、ミクロネシア3国も来年2月まで加盟国の立場にあるので、これら3国とも調整したのかどうか。

日本政府は、恐らく、事前に、二国間ベースで、科学的根拠を持って、各国に外交ルートで説明しているはずです。その上で、各首脳が一致して、日本に更なる協議が必要と言っているのかどうか。

仮に、PIF事務局長が、全ての加盟国に確認せず、日本から各国政府に行ったであろう説明を知らずに、一部の国の影響を受けて発言しているとすれば、これはPIF事務局位置づけや役割に関して大きな問題だと思います。なぜなら、各国の外交権を越えて、各国首脳の意思を代表する形で発言した形になるからです。現在発効している2000年PIF事務局設立協定にも、発効待ちの2005年協定にも、加盟することが各国の国際関係の権利をPIFに渡すこととはされていません。

テイラー事務局長の声明は、RNZの報道よりも冷静ですが、仮に、PIF事務局として日本への態度が悪化するのであれば(事実関係を知ったうえでそれでも納得できないということであれば理解できるが)、日本としては加盟国各国に個別にポジションを確認すればよいと思います。仮に1国でも意見が異なるのであれば、PIF事務局の発言が、首脳の立場を越えたものであったという証拠となります。

地域機関として重大な発言をする場合には、PIF事務局長は議長国と緊密に協議しなければならず、議長国は加盟国と十分に調整しなければなりません。

PIF事務局長個人の意見であるという場合は、PIF事務局としては、その発信方法が間違っているかもしれません。

過去に自分がPIF事務局と関わった際には、事務レベルでも、加盟国の意思を越えるような考え方を示す人もいたので、いろいろ戦った経験があり、それを少し思い出しました。

テイラー事務局長の声明自体は、冷静で抑制されており、当然そう考えるだろうなという内容でした。ただ、RNZのような記事があったり、今後、国際的に日本を非難する国が表れ、日本に不利になる動きが作られる可能性もあるので、注意が必要だろうと、そういったところです。
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