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香港国家安全維持法に対する一部太平洋島嶼国の立場 [2020年07月05日(Sun)]

言い尽くされた話ですが、日本にとって太平洋島嶼国は海洋国家として同じニュアンスを共有できる国々であることに加え、漁業資源、有事の際の代替シーレーン、国際場裏における支持者として重要です。

かつて、15年ほど前までですが、太平洋島嶼地域は米豪NZなど旧宗主国が力を持ち、敗戦国である日本は、主にODAを通じて、島嶼国各国の発展に実直に協力していました。当時は、旧宗主国と日本の間には、現在の先進国と中国の間に似た距離感があり、日本がやり過ぎて影響力を高めすぎないように警戒されている面もあったと思います。

島嶼国側から見れば、日本は太平洋島嶼国と心が通じる海洋国家でありながらも、旧宗主国に対して物を言うことができる先進国であり、島嶼国側が旧宗主国との間でうまくいかないときに、島嶼国をバックアップする、もしくは旧宗主国に対抗する際の仲間であるとの期待があったと思います。

例えば、あれは2007年だったと思います。マーシャルの故トニー・デブルム元大臣が、マーシャルが米国から独立する際に、米国との間で主権にかかわるある問題が持ち上がったとき、80年代前半のことですが、当時日本がマーシャルを支援したと話してくれたことがありました。

その基盤には、様々なレベルでの腹を割って話すことができる人間関係があったのだと思います。たとえ日本が旧宗主国と同じ側にいるとしても、その人間関係があれば、本音を共有できるし、信頼関係も醸成されるでしょう。

しかし、近年、そのような関係は次第に薄まり、むしろ旧宗主国の方が現地の人々に近くなっているのではないか、と思わされることが少なくありません。それは現地で会う人との会話とか、ニュースから得られる感触に基づいています。


最初の話にもどりますが、日本にとって太平洋島嶼国は国際場裏における大切な支持者です。かつて、日本が島嶼国に支持を求めれば、見返りなど約束事がなくとも、日本の主張を信頼し、支持してくれたものです。それは、島嶼国側に能力がなく盲目的に支持していたということではなく、「日本が言うことは間違いがない」という信頼に基づくものでした。(ここでは捕鯨問題や環境・気候変動に関するものは含みません)

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*太平洋島嶼国側が立場を決める際には、少なくとも次の要素が関係します。
・米国自由連合国:パラオ、ミクロネシア連邦、マーシャル
・英コモンウェルス:パプアニューギニア、ソロモン、バヌアツ、フィジー、トンガ、サモア、ツバル、キリバス、ナウル
・台湾承認国:パラオ、マーシャル、ナウル、ツバル
・中国と国交のある国:ミクロネシア連邦、パプアニューギニア、ソロモン、バヌアツ、フィジー、トンガ、サモア、キリバス
・課題に対する国内事情(例えば人権問題、核問題等)
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近年、自分が覚えている範囲で注目したことが2つありました。

1つは、2013年11月に中国が定めた尖閣諸島上空を含む防空識別圏問題。このとき、日本国内で報じられたかどうかわかりませんが、外交当局者は現地で相手国政府に日本の立場を説明していたと思います。

2つ目は、2016年7月の南シナ海に関する仲裁裁判所の判定。フィリピンがハーグの仲裁裁判所に申し立てたもので、中国の主張は認められないとの判断が出されたものです。この結果を受け、日本はこの裁定を支持しましたが、太平洋島嶼国ではバヌアツが中国の立場を支持しました。当時、フィジー外相が北京訪問中に中国の立場を支持したとの報道がありましたが、のちにフィジー政府はこれを否定するということもありました。

いずれの場合も、15年前であれば、日本が支持しているのであれば正しいだろうとして、島嶼国は明確に日本と同じ立場にいたものと思いますが、上記の日本と中国の立場が対立する事案について、島嶼国の立場は微妙でした。


さて、6月30日夜、中国で香港国家安全維持法が施行されましたが、これに対し、第44回国連人権理事会で参加国から発言がありました。

まず、英国代表は、日本など27カ国を代表し、懸念を表明しました。
https://www.gov.uk/government/speeches/un-human-rights-council-44-cross-regional-statement-on-hong-kong-and-xinjiang

27カ国には同理事会から離脱している米国は含まれませんが、主な先進国に加え、マーシャル諸島、パラオ、そしてベリーズ(いずれも台湾承認国)が支持国として名を連ねています。


他方、キューバ代表が53カ国を代表し、中国の立場に対する支持を表明しました。
https://www.fmprc.gov.cn/mfa_eng/zxxx_662805/t1793689.shtml

この53カ国の中に、太平洋島嶼国が1国含まれるようですが、信頼できるソースに当たらないためここには書きません(フィジー、バヌアツ、サモア、ソロモンではありません)。国内に独立問題を抱えているからなのか、大規模な援助を受けているからなのか、理由はわかりませんが、明確に中国の立場を支持しているようです。


懸念を表明した国々に、台湾承認国のナウルとツバルが含まれていないことが気になります。少なくともナウルは、これまで自由と民主主義に関する場面では先進国側の立場にいたものです。


数字上、27対53というのは大きな差です。これは中国の外交的勝利と言えるのではないでしょうか。反対に、なぜ先進国側は、もっと支持を得られなかったのか。

このようなところに、中国の外交力の強さを感じずにいられません。

何もない日常の外交関係が、このようなときに生きるのではないか。何らかの事象が発生してから慌てて動き、日本の立場を主張してもビジネスライクなやり取りで終わってしまうのではないか。


将来、また同様のことがあるかもしれません。そして、日本に直接関わる事象が発生した場合どうなるだろうかと思うと、焦りすら感じてしまいます。
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