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SWIFT、ABA、ルーティングナンバー [2022年03月03日(Thu)]

SWIFTコードが話題になっているところ、いくつかの太平洋島嶼国への送金について確認することがありました。
すると、ある島嶼国にある米国系銀行の現地支店にはSWIFTコードがありませんでした。

その銀行のウェブサイト調べると、「海外から送金される場合はSWIFTコードが必要」「SWIFTコードがない?」「心配しないで。方法があります。」と書いてありました。(スティーブ・ハーベイ風に)

海外送金元から見た場合、まず米国の銀行に送金する。米国の銀行なのでSWIFTでなくABAの場合もある。その後、その米国系銀行から現地(太平洋島嶼国)の米国系銀行への送金される。この手続きは国内銀行間の送金なので、ルーティングナンバーだけで良いとのこと。

手続きは煩雑になり処理量がパンクするかもしれませんが、国内に1つでもSWIFTコードを持つ銀行があれば、そこを介して現地国内へ海外から送金を受けることはできるということなのでしょう。
原油価格が気になる。 [2021年06月07日(Mon)]

昨年末ごろまで、WTI原油価格は1バレル30ドル前後でしたが、今年に入る頃から上昇し、最近は70ドル近くとなっています。


2007年ごろに起こった急騰では、20ドル台から100ドルを超えるまでになり、マーシャル諸島ではガソリン小売価格が1ガロン2.75ドル程度から6.75ドル程度まで上がりました。これに穀物価格の高騰(背景にはコーンをバイオエタノールの原料化があったような)が重なり、米の価格が3〜4倍になり、海外からの輸送も滞りがちになりました。

当時、コスラエでは、米がないとか、ガソリンのストックがないなど日々の生活に影響が出ました。

マーシャル諸島では電力をディーゼル発電に頼っており、週1回、計画停電を行っていました。計画停電の理由はメンテナンスでしたが、実際は燃料のセーブでした。当時、ネムラ官房長官(現外務大臣)といろいろな協議をしていましたが、ディーゼル発電の燃料費が政府の一般会計支出の2割から3割になる計算で、お金を燃やすようだと言っていたのを思い出します。

一方で、これをきっかけに再エネが注目され、さらに気候変動緩和という要素が加わり、ディーゼル発電依存を軽減する動きができました。

一方で、この6〜7年原油価格が低く推移していたことで、太平洋島嶼国では小休止であり、油断せず、ディーゼル依存を軽減し、価格高騰への耐性を高めようという話もありました。そういったSPCのレポートが出ていると思います。


ここにきて、2007年ごろほどではありませんが、昨年の2倍になったということは、今後多くの太平洋島嶼国で物価高となるでしょう。

コロナ禍が長引く中で、経済財政問題がより厳しくなる中、さらに輸入物品(生活物資が多い)の価格が上昇する可能性があります。時間があればCPIの推移を確認したいと思います。

原油価格の変動は、多くの太平洋島嶼国の生活への影響が大きいので、今後の動きに注意したいと思います。

過去の例を踏まえると、太平洋島嶼国の中でも、より土地が少なく、より離島部にある国ほど物価変動が大きくなります。マーシャル、ツバル、キリバス、ナウルなど。
将来の太平洋島嶼国の観光を考えてみる [2021年02月14日(Sun)]

現在、地域枠組みの中で、持続可能な観光を大テーマとして、今後の太平洋島嶼国・地域の議論が行われています(パラオ除く)。
自分自身は、ウィズコロナ社会の日本にいる立場から言いたいことは言っていますが、基本的にはオブザーバーとして参加しています。

これまでのところ気になる点を挙げると
・コロナが広がる社会を経験している国(日本など)と経験していない国(多くの島嶼国)では感覚が違う。
・コロナフリーを維持するのか、ある程度のコロナ侵入を許容できるのか、この2つには大きな違いがあるが、その方向性が定まっていない(もしくは少なくともこの2つの立場でシナリオ作りが必要だが、そこまでいっていない)
・コロナが無力化することを前提としているかもしれない。
・住民全員にワクチン接種が行われ、渡航者が全員ワクチン接種済みなら、コロナの危険性がなくなると思われている可能性がある。ーこの場合、ある程度のコロナ侵入を許容できるのであれば、あり、の考え方ですが、「コロナフリー」を維持するということであれば、ワクチンによりリスクは減るでしょうが、油断できない。

コロナをある程度許容しつつ、観光を復興させるということであれば、ある程度のマスツーリズムの回復が期待できるでしょう。しかし、その場合、感染者が出た場合の対応能力が整っていなければなりません。またその感染が、訪問者だけで収まるのか、現地住民も対象になるのかで、その対応準備も異なるでしょう。

観光客の到着後14日間はある限られたエリアで観光を楽しめるようにし、そのエリアには現地住民は接触しないようにするとか。その期間に感染者が出た場合には、その国が対応しなければならず、観光客にとっては重症化した際の死のリスクがあることを理解した上で訪問するということになるのではないか。

ワクチンについては、現在のものは生ワクチンでマイナス70度で保管する必要があり、米系の国や地域(グアム、北マリアナ、パラオ、マーシャル、ミクロネシア連邦、米領サモア)で接種が進んでいるようです。

一方、最近のニュースでは、日本の企業が不活化ワクチンを開発中との事なので、日本は数カ月から1〜2年ウィズコロナで粘りつつ、完成を待つということかなあと思います。

ワクチンはワクチンで接種が広がることで感染率が下がるとして、やはり期待したいのは治療法の確立や治療薬の完成です。そうなれば、COVID-19はデング熱よりもリスクの低い感染症になり、コロナフリーにこだわらずに、観光産業の復興に向かうことができるのではないかと思います。


そして、もう一つ。

日本は不思議と厳しいロックダウンや行動制限もなく感染者数をコントロールできていますが、東京に暮らしていて、自分自身に無意識に心理的に制約を課しているように思います。すでにコロナ前の社会の常識が分からなくなりました。

例えば、20年ほど前までは、電車でも飛行機でもタバコを吸うことができ、何も疑問を持ちませんでした。しかし、今、当時を考えると「何て非常識なのだと」信じられない事です。

同じような心理的変化がすでに起こっているものと思います。

それは例えば、ヒューマンタッチとかハグや握手だとかそういった人と人の距離感や繋がりの変化。極端な話、人がヴァーチャルになりホログラムでもアバターでもロボットでも何でもコミュニケーションをとれるようになり、一方でリアルなコミュニケーションが減少した(あるいは多くの場合、不要となった)と言えるかもしれません。

また例えば、自然との繋がりも心理的な行動制限により、変化しているかもしれません。

そこで太平洋島嶼国。PNGを除き、コロナフリーを維持しているか、水際対策により感染拡大を防いでいます。コロナのない社会と自然がそこに残っています。きっとそのような土地で時間を過ごすことができれば、コロナ以前の感覚を経験できるかもしれません。

そういった意味で、太平洋島嶼国の観光(どちらかというと長期滞在型、ワーケーション)は非常に価値の高いものになるかもしれません。

もしかすると、日本国内でも、コロナフリーを宣言できるエリアを作ることが出来れば、訪問者は到着後14日間は隔離されるとしても、長期滞在型の観光スポット(ワーケーション先)として、(フリーの意味が違うが)コロナがない社会・環境を思い出させる、再び経験できる観光スポットとして、売ることができるのではないか、などと思ったりします。


ただ、島嶼国の場合は、観光産業をマスツーリズムを前提としたマクロ経済の視点ではなく、地域住民の生活を反映するミクロ経済の視点で捉えることが大切かもしれません。
ADB Pacific Economic Monitorの表記(続き) [2020年09月10日(Thu)]

先日、ADBのPacific Economic Monitor上の表記に関して、Taiwanではなく、Taipei, Chinaと記載されているとの内容を書きました。https://blog.canpan.info/sec/blog/article/edit/input?id=1564078

過去の同レポートを2012まで遡りましたが、いずれもTaipei, Chinaでしたので、ADBはメンバー国の立ち位置を尊重し、以前から標記を統一されているようです。反対に、これをTaiwanに変えることはいらぬ論争を招くことになるでしょう。

2013年頃にある台湾承認国の財務省高官とフィジーで会った時、このPac Monitorに対し、「数字がおかしい。現地を知らないのではないか。」と不満を持っていたことがあったのですが、この件も薄く関係していたのかもしれないなと、今になって思います。

話をずらしますが、台湾承認国も加盟している太平洋諸島フォーラム(PIF)では、さまざまな会合のコミュニケや報告書では、中台関係ではなく、各国の経済や開発援助の観点から台湾についても記載されています。

台湾は80年代においては漁業関係で島嶼国と関わりがあり、92年のフォーラムでは台湾と台湾承認国間の対話(日本、中国、米国など開発パートナーとの域外対話とは別)の重要性が述べられているなど、PIFと台湾の関係はおよそ30年あります。

そのPIFが出す公式文書では、ROC(Republic of China)やTaiwanと書かれており、時に中国外交団がこれに気づけば、標記を変えるように申し入れることは当然で、落としどころが必要になります。

中国側としてはTaipeiとしたい、特にROCは認められないということになりますが、PIFは太平洋島嶼国首脳の会合であり、太平洋島嶼国に台湾承認国がある限りは変更は慎重になるだろうと思います。多数決ではないので。確かに、事務局は本来の議論すべき内容ではないところで論争が始まるので、苦慮していたといったことがありましたね。。。

ADBにおいては、Taipei, Chinaとの表記が標準であり、近年変えたということではありません。
ADB Pacific Economic Monitor内の表記 [2020年08月31日(Mon)]

太平洋島嶼国の経済情勢を確認するために、主に次の情報を活用しています。
1. IMF4条協議レポート
2. ADB Pacific Economic Monitor
3. 太平洋島嶼国各国の財務省資料(特に年次予算関連レポート、消費者物価指数など)

3. を読み出すと時間がかかるので、2.、1.をまずざっと確認する場合が多いです。

先ほど、2. を読んでいると、何か引っかかる感じがしました。

小さいことかもしれませんが、いつから変わったのか、Taiwanという表記が、Taipei, Chinaになっています。Hong Kong, Chinaとも書いてあるので、同列扱いということでしょう。

記憶違いかもしれませんが、以前はTaiwanと書かれていたはずです。

いつのまにか、しれっと意図的に、小さいですが、大きな意味を持つ変更が加えられていました。


これは他人事ではなく、例えば、別の機関のレポートや地図などで、竹島が独島、日本海が東海などと、しれっと書き換えられていたり、併記されることがあるので、細かいですが注意が必要です。
太平洋島嶼国の観光再開は可能か。 [2020年08月05日(Wed)]

太平洋島嶼国各国の経済を見たときに、民間部門が強く、さらに観光業の割合が大きな国々というのは、フィジー、パラオ、クック諸島の3国になります。

次いで、バヌアツ。
さらに、サモア、トンガ、ニウエ
そのあとに、ソロモン諸島、ミクロネシア連邦
と続くイメージです。

マクロで見た場合はフィジーからバヌアツにおける影響が非常に大きいのですが、観光部門が開発途上の国々であっても、マクロでは規模は小さくとも、住民や観光業者の個別の数百万円から数千万円のロスというのは深刻な問題です。

そういった事情も踏まえつつ、特に観光業の活発であった国々では、如何にインバウンド観光を再開できるかが、大きな関心事項となっています。


そのような状況の中、今朝、少し早くから地域観光に関するウェビナーがあり、新型コロナウィルスに関する安全性の面で、いくつか気づかされることがありました。

まず、Safe ZoneとWith Coronaという2つの見方。

With Coronaは、現地の医療体制が十分に整っていることを前提としなければならず、太平洋島嶼国では非常に困難。したがって、可能な限り、Safe Zone=コロナフリーを維持しなければなりません。

そうすると、観光対象国は少なくともコロナの感染拡大が収まっている国だけになり、現状、観光市場としては、ニュージーランドと台湾だけになります。(これらの国々でも、海外との人の往来が再開すれば、常にコロナ感染拡大のリスクはあるものと思います。)

Safe Zoneを維持する場合、新型コロナの無症状者とPCR検査の精度が問題となります。無症状者が他者にウィルスを感染させる可能性があることと、PCR検査である程度の偽陰性可能性があることが問題になります。

PCR検査というのは、何らかの症状がある人に対して、原因を確定するための手段の一つだと思います。そのPCR検査による陰性証明というのは、With Coronaであれば、マクロで見た場合の感染者数の移動をある程度抑えることができるので有効でしょうが、コロナフリーという視点では難しいかと思います。

そのため、太平洋島嶼国側が、陰性証明を持つ観光客を受け入れる場合でも、その中の数%がウィルス保持者だとの前提に立った事前対策を行わなければならないでしょう。

現地の対応としては、1つは行動範囲の限定(「汚染しても良い地域」の指定と言えるかもしれません)、1つは感染者が出た際の行動履歴の追跡、それ以前に、到着後に14日〜21日間隔離という方法も必要かもしれません。

さらに医療体制の充実も必要になるでしょう。

日本を含め、各国で、症状のある感染者が出た場合、その患者さんは数週間入院することになっています。重症化した場合には、さらに期間が長くなります。患者数は点ではなく累積になっていきます。また、感染者が出た場合には、感染拡大を防ぐために、接触者の確認と隔離、行動履歴の追跡など、根気強く対応しなければなりません。

これまで観光客が現地にウィルスを持ち込み、現地の人々を感染させる場合のことを考えていましたが、観光客が現地で発症するケースも想定しなければなりません。重症の場合は、短時間で急速に症状が悪化するケースもあるようなので、観光客が発症した場合、現地の医療体制が生存のカギになります。しかし、、太平洋島嶼国でどれだけICUがあり、人工呼吸器が使用できるのか。


今日のウェビナーの中で、豪州の方が、先月まで話題になっていたニュージーランドとの観光再開構想「Trans-Tasman Bubble」については、最近の豪州での感染再拡大を受け、国内では話題にならなくなったと話していました。

状況は常に変化していくので、我々も短期視点と中長期視点を持ちつつ、情報を常にアップデートしていかなければなりません。
中国企業によるDigicel買収の動きに関する報道(5/15) [2020年05月18日(Mon)]

5/15付フィジー・サン紙が「Digicel Fijiが、Australian Financial Review紙によるChina MobileがDigicelの太平洋部門を買収するとのレポートを否定した」と報じました。

https://fijisun.com.fj/2020/05/15/digicel-fiji-denies-china-mobile-takeover/

ぱっと見たとき、Digicel FijiにChina Mobileからの買収オファーがあり、それを拒否したのかと思いましたが、Australian Financial Review紙によるレポートを否定したというものでした。

Australian Financial Review紙は5/14付けで、下記のレポートを出しています。

https://www.afr.com/companies/telecommunications/concern-as-china-targets-pacific-mobile-networks-20200513-p54sls

https://www.afr.com/companies/telecommunications/china-mobile-running-the-slide-rule-over-pacific-telco-20200514-p54t08

https://www.afr.com/policy/foreign-affairs/fears-over-a-chinese-digital-footprint-on-our-doorstep-20200513-p54snd


民間部門の動きのため、国対国の関係、開発協力という視点からは外れますが、今後、報道されないレベルも含めて、さまざまなところにこのような動きは起こる(もしくは既に起こっている)ものと思います。

今回の新型コロナにより、ほぼ中国でのみ感染者が急増し、経済状況が悪化したように見えた1月〜2月の時期には、(1)太平洋島嶼国において中国の投資引き上げや計画中止となるか、(2)集中と選択で戦略的に資金を充当するか、の2つの可能性があると考えていました。しかし、今日の時点において、既に世界各国の経済が悪化し、報道では中国では一旦収まり1〜2月に危機的状況からは脱しているようであり、(2)よりもさらに一歩進んだ、経済的に困窮する企業を積極的に買収するという選択肢があるようです。

太平洋島嶼国を見ていると、新型コロナの影響で、やりくりに苦労している企業が増えており、資金調達に苦慮しているところもあるのではないかと思います。国レベルでもそのようになりかねない状況になりつつあるかもしれません。

太平洋島嶼地域における民間部門は、一部の鉱物資源、漁業資源を除けば、規模が小さく、利益の面からも、魅力的な投資先は見つけにくいのが実情だと思います。言い換えれば、利益とは異なる目的が無ければ、積極的に投資しにくい。そこに、先進国の民間部門と、中国の民間部門の違いがあると思います。


太平洋島嶼国の情報通信を含む基本インフラ、民間部門を先進国はどのように守ることができるでしょうか。守れなければ、新型コロナによる混乱の中、資金のある勢力が影響力を増していくことになるでしょう。
パラオの地域密着型エコツーリズムとフィジー [2019年02月20日(Wed)]

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友達の猫。ティンカーベルじゃなくて、何かそんな感じの名前だったのだけれど、、、結局触らせてくれなかった。

昨日、フィジー外務省の事務官に挨拶に行った際、話の流れでパラオで行っている地域密着型エコツーリズムの話をしたところ、何かピンと来た様子でした。

昨夕、その事務官から、明日(今日)の9時に、産業貿易観光省の観光課長(Director Tourism)と会合をセットしたとの連絡がありました。

地域密着型ツーリズムがエコツーリズムの1つの形態ということは知っているのですが、一般的にエコツーリズムは自然環境に関わるもので、地域密着型は地域の文化に関わるようなイメージがある中で、自分のプロジェクトは「地域住民がイニシアチブを持ち、自然と文化と伝承などを活用するエコツーリズムなのだ」と主張するために、あえて「地域密着型エコツーリズム」と呼んでいます。頭痛が痛いと似たような感じかもしれませんが。

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それで、今朝9時から先方2人を相手に、当財団の紹介に続き、昨年12月にパラオでのビジネスミッションの際に作成したパワポを使って、パラオでの取り組みをダーっと説明したところ、「合わせたい人がいる。午後3時にまた来てくれないか?」と頼まれ、午後にまた顔を出しました。午前の会議は45分程度。

予定をやりくりして同省に戻ると、人が増えていました。遺跡担当課長やコミュニティ担当課長らが集結していました。

そこで、もう一度パラオでの取り組みをパワポファイルを使って、特に下記にポイントを置いて説明してみました。

・自然環境、文化、遺跡などの適切な観光利用は、住民によるそれらの持続可能な保全につながる。(熊野古道で学んだこと)
・ローインパクト、ハイバリュー。
・コミュニティにお金が流れるように設計する。

4段階のステップ
1. 概念の理解(上記など)
2. 日常生活から観光資源の発掘、フェノロジーカレンダーとその作成過程の活用
3. ツアープラニングとローカルガイド育成
4. ローカルレベルの運営能力強化、プロモーション

さらに聞いてるみんなの様子を見て、特に2で多くの点となる観光資源を発見し、3でそれらをどのように、テーマや住民が伝えたいことを骨として、つなげ、点を線にするか、という話を強調してみました。

すると彼らの間で議論が始まります。

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彼らが懸念している町があるのですが、パラオでも経験しましたが、すでに彼らはその町について海外から支援を受けて、遺跡のマッピングやフェノロジーカレンダー作成などは終えたものの、そこで支援者がプロジェクトの目的を達成したとして帰ってしまい、地域住民の間でニッチもサッチも行かない状況で、スタックしているとのことでした。

つまり、ステップ2と3の間にあり、どのように次に進めればいいのか、さらにどのように住民を巻き込むかというところで、悩んでいたと言います。

そこで自分の経験をもとに、失敗談も含めて伝えたところ、何かピンと来た様子で、彼らだけで議論がまた始まります。

そして質問や議論が始まり、自分からは、ヒントになるかと思い、いろいろな話を共有してみました。

例えば、州と国のデリケートな関係。

例えば、こちらのプロジェクトでは対象となるのは10の州で、最初は公平に各知事あてに国の大臣レターとうちらのレターを届けて、8州が参加。しかし2州が抜け、昨年は4州にまで減り、後半6州になった。自分は残っている州をサバイバーと呼んでいて、1つでも2つでも生き残ってツアーを実現できれば、それがモデルとなり、他の州が参加するようになると期待している。フィジーでは州ではなく、村(コロ)とかコミュニティ(マタンガリ)とかになるかもしれない。

例えば、我々は学術論文を作成しようとしているのではなく、シビアな民間ビジネス部門でのリアルな経済活動につなげようとしていること。


この午後の会議は2時間を超えました。

我々のパラオでの取り組みが、何かヒントになったようで、現在の彼らの行き詰まりの状況を改善させるため、早速コミュニティとの取り組みを始めるとのことでした。

パラオのような小さい国の話とフィジーのような地域では大きい国の話は、今一つ繋がらないと思っていましたが、もしかすると有効なのかも。
持続可能な観光の最前線にいるパラオ [2018年10月02日(Tue)]

時差+5時間は、もう何というか、寝ているのかナッピングなのかわからなくなります。
夕方6時に仕事が終わった頃に、日本はランチ前後で、寝ていると夜中の1時に起こされるし(これはパラオの友人からの連絡、現地は夜8時)。

フィジーに駐在していたとき、現地政府や機関との仕事を午前から午後2時までに集中して行い、東京が開く現地午後2時ごろから夜8時〜9時ごろまでが日本との仕事中心でしたが(特に日本は夕方頃から仕事面で盛り上がる傾向があり、現地の早朝に対応ということもある)、+5時間だと、サモア駐在の方は大変だろうなあと思います。

10時間前後だと割り切れますが、3〜5時間だと、リアルタイムで仕事してしまいます。

さて、昨日の会議に出て感じたのは、パラオは持続可能な観光実現について、最前線で取り組んでいるということです。

より小さな国で、観光産業が発達していて、世界遺産があり、世界遺産登録による正と負のはっきりとした影響を受けている国は、太平洋島嶼地域にはパラオ以外にありません。

我々笹川平和財団のパラオ政府や州政府との取り組みは、実際に発生している問題への対応が基盤にあり、しっかりとした理論付けがありつつ実践的なものとなっています。

パラオ自身、ドナーに頼るよりも自らプランを立てて内外に協力者を探す取り組みをしており、住民の問題意識も含め、具体性があるかどうかという点で、やはり1つ、2つ先の段階にあると思います。

「持続可能な観光」と言った場合に、現実的視点で理解できるのは今のところパラオで、他の国々で観光産業が発展していくことがあれば、パラオのこの2000年代から2020年頃までの取り組みは、発生した問題も含めて、それらの国々にとって良き事例になるでしょう。(観光部門が発達しているフィジーやバヌアツは、島嶼国の中では大きい方なのでパラオよりも許容量があります)

サモアや他の国が、持続可能な観光に関して、今後2年とか3年とかかけて考えていこうというときに(しかもまだ影響を感じるほどの観光開発が進んでいない時に)、パラオでは特に2013年以降に現実的問題が発生し、さまざまな取り組みを続け、国として持続可能な観光政策枠組を作りあげました。

仮に、観光開発と環境・文化のバランスの問題に直面する国や地域コミュニティが出てくるならば、国や地方行政と住民の関係も含め、パラオから学ぶことが多いと思います。

(アピア空港)
ユネスコ 持続可能な観光 地域会議(2) [2018年10月01日(Mon)]

そういえば、今回、6〜7年前に、確かこのブログで自分がパラオのバベルダオブ島の遺跡の話を書いたのを見て、自分にメールを送ってくれていたユネスコの高橋さんに、ようやくお会いすることができました。
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それこそ、サモアのユネスコ地域事務所を基盤に、地域16カ国・地域を飛び回っているそうです。地域文化に対する造詣の深さに圧倒されました。


さて我々の出番は第2セッションの2部、世界遺産の観光利用に関するラウンドテーブル。パラオのロックアイランド南ラグーン地域とバヌアツの大酋長ロイマタの領域が対象で、自分はパラオにからんで地域密着型エコツーリズムの実践例の紹介という立場でした。

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ジョリーンさん。今年、コロール州知事が交代したことで、知事室に配属された若い方ですが、かなり優秀な人物だと思います。話が具体的でわかりやすく、プレゼンもうまい。天然資源環境観光省のグウェンさんのキレに似ています。

パラオは人口が少ないですが、人材は豊富です。


今回、自分はブラシャツか普通のシャツかで直前まで悩みましたが、パラオの方々は、普段ブラシャツやアロハを着ていないし、日本から来たトウキョーボーイ(生まれも育ちも茨城県日立市)だし、ということで、ネクタイをしめて普通の仕事着にしました。

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ジョリーンさんには何度も「パラオにオフィスがあって、住んでるんでしょ?」と言われましたが、準居住者みたいな感じでしょうか。会場からパラオの取り組み、例えばマリンサンクチュアリの話が出たときに、コロール州政府職員としてジョリーンさんが話せないところ、外部の観察者として、経済的不利益と観光でそれを補える仕組みについて、自分が回答しました。特に損失部分と観光客数で補える部分を数字で示したことが有効だった気がします。


今回の会合は、いかに持続可能な観光を太平洋島嶼国・地域で実現していくかがテーマでしたが、ジョリーンさんと自分は、今、まさにそのための実践を行っているところであり、その点で違いがあった気がします。

持続可能な観光を進めるには、太平洋島嶼国・地域に観光促進による経済成長を求める意思があることが前提になります。その点、パラオはまさにこの数年で持続可能な観光の必要性に直面し、昨年、国として持続可能な観光政策枠組みを制定するなど実際の取り組みを進めているので、先進事例として地域に役に立っていくようになると思います。


今回、自分のプレゼンの中で、パラオで住民参加型ワークショップを行う際に最初にする質問を紹介しました。(各州の人口は100〜500、世帯当たりの支出は月500米ドル程度と説明しています)

Q: 1週間に5000米ドルを稼ぐために、どちらが好ましいですか?

選択肢A:客単価5ドルの観光客を1週間に1000人集める。

選択肢B:客単価250ドルの観光客を1週間に20人集める。

実際にパラオの7つの州でこの質問をしたところ選択肢Aが多い州が3つ、Bが多い州が4つでした。

Aを否定しませんが、我々は「観光による経済成長」と「文化と自然の保全と保護」のバランス化を目標としているので、我々の事業での選択肢はBと説明しました。

さて客単価を上げるには、そのニッチな観光客が満足できる内容の観光を構築する必要があります。しかし、それは大規模な投資を必要とするものではなく、今そこにある日常生活を改めて見直すことで、地域密着型観光を実現するのだと、知恵を使って観光客の好奇心をくすぐるのだと説明しました。

例えばフェノロジーカレンダーで、さまざまな特徴やピーク(例えばアイゴという魚が最も美味しい季節)を点として見つけ出し、点ではなく、伝説や神話、歴史、自然科学的視点など、テーマやストーリーによってその点を繋げて線にし、ローカルガイドと体験していくツアーを作るのが我々のやり方だと。

観光資源を見つけて、それを売りにして、観光客を呼び込むことは経済的にも重要ですが、観光の多様化という視点で、我々の取り組みはおもしろいと思います。

自分たちの前のセッションで、「持続可能な観光とは何だ?数字がないとわからない」という質問が出ていましたが、上記の単純な話が、理解を進める1つの要素になるかもしれません。
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