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PIFの中台関係 [2024年08月31日(Sat)]

8/28にTaiwan Plusというメディアの取材で答えましたが、PIFの枠組みでは、島嶼国・地域には、フルメンバー、準メンバー、オブザーバーの地位があり、域外のパートナーには域外対話国の地位があります。
域外対話国の数は現在20を超えており、今回のサミットでは戦略的パートナーと開発パートナーに分けるという話になったようです。

台湾は1990年代から中国の主張を受け、域外対話国にはなっておらず、PIFの伝統的なパートナーとして、PIFサミットの期間に別途台湾承認国とサミットを開くことができる特別な地位が認められています(1992年のコミュニケ)。

実際の扱いは、台湾は、議長国が台湾承認国であれば、議長の権限で、域外対話国と同レベルで会議に参加できたり、中国の強い支援を得ている場合は会議から排除されたりしてきました。

PIF事務局には年間の拠出金があり、中国は年間1-2億、台湾はその7割程度を90年代から毎年払っています(日本は中国の1割程度)。中国も台湾も、PIFを通じて国交のない国をプロジェクトに加えられる利点があります。

今回、トンガでは会場にどでかいCHINA AIDのサインがあったり、会場内で中国の外交官が運営に関わっているような様子がありました。おそらく10億円単位で支援したのだと思います(あるトンガ人は質や維持管理の懸念を述べていた)。我々が皇太子殿下や首相、バヌアツ外交官に挨拶しようとした際に、(勘違いして?)ブロックしようとする動きも見えました。

そういった状況なので、台湾排除は今回優先度の高い話だったのでしょう。

過去にも、台湾承認国にもかかわらず、中国の抗議で会場で台湾の国旗が隠されたり、PIFのパートナー会議(サミットではない)で、議事録にTaiwan/Republic of Chinaと記載するのをやめさせたりしていました。常にあるもので、正直島嶼国側は両者の争いに辟易しています。

今回、最初に公開されたコミュニケの第66パラには、首脳が1992年の台湾をパートナーとして確認したものを再確認したことが記載されていましたが、その後、中国の抗議で消されました。

これは、ソロモン諸島と中国が、今回の首脳間の合意事項に介入したことになり、特に台湾承認国に喧嘩を打ったことになります。2019年ー2022年のミクロネシア諸国(特にパラオ)のPIF脱退の動きの原因がPIF事務局長による中国重視・台湾軽視発言であることを踏まえれば、地域の結束を壊す動きと見られかねません。

中国側から見れば、表記がTaiwan/Republic of Chinaというのは到底受け入れられず、台湾承認国からみれば当然の表記なので記載すべきとなるのでしょうが、現在の台湾承認国3カ国では声が弱い。そもそもPIFメンバーの豪州、NZも中国の抗議を受け入れた形なので、現地ではさまざまな駆け引きがあったものと思われます。

来年のPIFサミットは9月にソロモン諸島となるので、台湾が外交団として入国することも難しくなるかもしれません。

ちなみにフィジーとPNGは台湾を開発パートナーとして認識し、協力関係を有しており、台湾ICDFを通じて農業や保健医療などの協力を受けています。
第53回太平洋諸島フォーラム首脳会議inトンガ2 [2024年08月29日(Thu)]

昨日28日、今日29日もいろいろありました。ここでは、ただ会ったという報告。
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パラオのウィップス大統領と

どうしても繋がってしまうパラオ
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親戚に会ったような安心感。シード国連大使とアイタロー大臣。

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ツバルのパナパ外務大臣

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トンガの教育次官と去年日本に来ていただいたローラさん

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クリス・コッカーSPTO事務局長

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我々のリエゾン、保健省のリニちゃん。すごい安心感。

他にも、座ってボーっとしてると(ボーっとしてるわけではない)、いろいろ知ってる人が声をかけてくれて、例えば、トンガ人事院のメレちゃん、ニウエ首相府(だったような)ロアさん、トンガ災害リスク管理局のマヌさん。

駐フィジーフランス大使は日本に好意を持っているようで何度も日本語で話しかけられました。ニューカレドニア、仏領ポリネシア、ウォリス・フツナの地位の違い。仏領2地域がPIFメンバーなのに、なぜフランス本国が域外対話国なのか尋ねたところ、ニューカレドニア、仏領ポリネシアについては南太平洋の枠組みにおいては独立国と同等の地位にあり、独立国のように外交ができるとのことで、勉強になりました。

さらに高村外務大臣政務官、道井駐フィジー大使・PIF大使、稲垣駐トンガ大使とも挨拶させていただき、他にも先日日本に招聘したPACNEWSのピタさん、2年ほど取材されたり意見交換している日経シドニー支局の今橋さんと初めて対面で会ったり、台湾ICDFと台湾外務省の事務官と台湾で昨年4月会って以来、久しぶりに会ったりと盛りだくさんでした。

それで今回思ったのは、日本のPALMプロセスがどれだけ価値があるのかということ。

PIFサミットは毎年開催され、メンバーでない国々は域外対話国としてや特別ゲストなどとして、PIF首脳に対し持ち時間3〜5分の発言のためにはるばる駆けつけます。

その点、日本は3年に1回ですが、首脳が日本に集まり、日本主催のPIFサミットのような会議を開き、じっくりと首脳と対話します。また、日本は何十年にも渡る技術協力、人の交流、人材育成、インフラ開発といった確かな協力で深い信頼感があります。

PIFサミットの規模と価値が高まるほど、PALMの価値が高まるように思います。

日本は先人が残してくれた基盤があり、その時代時代の人が実直に役割を果たしてきているその歴史を認識し、自信をもって堂々としていれば良い。

時に喧嘩しながら、堂々とやって行きましょう。
第53回太平洋諸島フォーラム首脳会議inトンガ [2024年08月27日(Tue)]

トンガのフアカバメリク首相にご招待いただき、日本財団の本多特任部長と第53回太平洋諸島フォーラム首脳会議(PIFLM53)の視察のため、トンガに来ています。

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フアカバメイリク首相と。

この期間中さまざまな会議で議長を務めておられおり、その声や取り仕切りから、首相のリーダーシップが強く感じられます。

現地ではさまざまな会議が開かれているのですが、これまでのところ、首脳や他の参加者の間で前向きで建設的な雰囲気が感じられます。生産的な議論が数多く行われています。

5月にアンティグア・バーブーダで開催されたSIDS4と、おそらく今年7月に東京で開催されたPALM10が、首脳間の機運を高めるのに役立っています。

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例えば、これはPIFリーダーズと国連事務総長との対話会議ですが、国連加盟国ではないクック諸島とニウエ、仏領ポリネシアやニューカレドニア、そしてまだ準メンバーになっていない(*PIFでは島嶼国・地域の地位として、オブザーバー→準メンバー→メンバーがある)グアムと米領サモアが国連事務総長との対話に参加していました。

ちなみにグアムと米領サモアは、米国コモンウェルスとなった北マリアナ諸島とは違い、まだ国連の非自治地域リストに載っています。米国海外領土であり、米国の憲法(確か第2条?)で国際機関への加盟ができないことになっており、当然勝手に米国から離れて独自の外交活動を行うことができません。そういった背景もあり、これまで米国として両地域のPIFの地位向上を認めない(仏領2地域加盟の前までは、準メンバーというのは独立して正式メンバーになるための準備期間というニュアンスがあった)空気があったが、今回それが和らいでいるそうで、今回PIF首脳がこの地位向上を承認するか注目されます。

今回、個人的にも、嬉しい出会いがたくさんあります。

トンガの皇太子殿下および皇太子妃殿下にご挨拶させていただいた他、パラオのアイタロー国務大臣、ピーター・トムソン国連海洋特使、スージー・イーストウェストセンター総長、フォーラム漁業機関事務局長のマヌ・トゥポウ=ルーセン博士、クリス・コッカーSPTO事務局長、PNG外務省のサムソン・ヤボン元駐日PNG臨時代理大使、久しぶりのトゥポウ前駐日大使、7年ぶりのイボン・バジル・バヌアツ外務省次官(タイトル違うかも)と10年ぶりのリチャード、今、コモンウェルス事務局で活躍しているカイツウ・フナキ博士、など古い友人から新しい友人まで多くの人に会っています。

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スージーと

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知っている人は大興奮間違いなし。マヌFFA事務長、トゥポウ前駐日大使、ヤボンさんと。

ほかにも、先日の太平洋島嶼国ウィークスに招聘した人が何人もいて、自分も再会を喜びましたが、彼らもお互いに再会してとても喜んでいました。一度建設的で良い時間を共有すると、それが一生物の宝になるように思います。

人の繋がりの大切さを改めて認識させられます。
国と地域機関の違い [2024年05月02日(Thu)]

今日はツバルからフィジーに移動し、太平洋諸島フォーラム事務局を訪問しました。
久しぶりに受付に行くと思ったよりも雰囲気が良く、少し安心。

人を待っていると、何と表現すれば良いのか、アリシア・キースのような女性が降りてきて、PIF事務局も変わったなと思っていると、いきなり名前を呼ばれました。

10年前に良く仕事をしていた相手で、何年か前にポストにチャレンジするということで推薦状を書いたことがあった人でした。元気そうで何より。

面会相手は別の人でした。ここでいろいろ思い出しました。

太平洋島嶼国を回って、国の人と話すとやりやすいのですが、PIF事務局は疲れる。SPTOやPIDPなどの地域機関はとても良い雰囲気でやりやすいのですが、PIF事務局は政治的すぎるのかもしれません。

実際は違いますが、まるで加盟国の上位にあるような圧も感じます。国との対話に介入しようとする雰囲気があります。

日本の外務省は、島サミットを控え、太平洋島嶼国各国とPIF事務局が相手というのは、大変だと思います。いろいろ思い出しました。

最近はPIFの中心性が重視される状況にあり、地域の方向性をまとめるプラットフォームとしてのPIFの重要性はわかりますが、PIF事務局やPIF事務局の人が加盟国の立場の上位にいるわけではなく、ましてや加盟国の外交権を超える立場にはいません。日本と太平洋島嶼国との外交関係に介入する立場でもない。加盟国首脳が合意した指示に基づいて動くのがPIF事務局の役割。

それを知らないとおかしなことになります。弁が立ち、主張が強かろうが、基本を押さえておかないと間違ってしまいます。

例えば、ある加盟国に行き、PIF事務局でこういった話しをして合意が得られたと伝えたとしても、それは国との関係では通用しない。PIF事務局のレンズから太平洋島嶼国を見てしまうと、間違ってしまう。

一方で、PIF首脳会議の合意は重要です。

PIF事務局長の任期は3年で、今のプナ事務局長は5月までとなりますが、ワンガ元ナウル大統領がいつ就任するのかはまだ決まっていないようです。昨年11月に首脳が合意したものの、スムーズには行かない雰囲気です。ちなみにワンガさんは両親ともナウル人ではなくフィジー人だという話を聞きました。

事務局長が代わると事務局の雰囲気も変わります。

スレードさんの時は事務局は堅物で、メグ・テイラーさんの時は事務局はいきいきとなり、今はその中間のようなところでしょうか。いろいろ議論がありますが、本当にワンガさんが就任するのであれば、首脳の対話の場のPIFがあり、首脳の合意に基づいて活動するPIF事務局があるという本来の形に戻してほしい。

今日は、久しぶりにPIF事務局に来て、すっかり忘れていたPIF事務局とのやり取りの大変さを思い出し、自分は民間で逃げられるので良かったという1日でした。
第50回PIF総会合意できず、とありますが…。 [2019年08月16日(Fri)]

今回のツバルでの第50回PIF総会では、首脳宣言を含むコミュニケの議論が12時間続き、最終的に合意に至らなかったとの報道がありました。

まだコミュニケと宣言を読んでいない段階の話ですが、豪州のモリソン首相が槍玉に上がっているようです。

しかし、自分は国民への説明責任があるとして豪州の立場を守ったモリソン首相は、誠実な政治家だと思います。

一方、自分のダークサイドからの見方では、島嶼国の主張を100%受け入れて良いとは思いません。非常にダークな視点から見れば、いろいろ見えてきます(誤解を招く恐れがあるので、ここには書きません)。

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第50回PIF総会ニュース・SNSなどから [2019年08月15日(Thu)]

今日は、スバ市内の関係先や、関心のある機関等を訪問しました。
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サンドラさんと茶野さんを中心にするはずが、ビジェイ教授が自分の隣に来てしまいました。

よく考えると、PIF総会真っ只中で、関係機関は大抵相手にしてくれません(というか人が出払っています)。

PIFは、安全保障や経済を中心とする、首脳クラスの地域政策枠組みで、極めて政治的です。正直トラック2の我々が直接口出しをできるわけでもなく、本気で何かを地域政策に反映させるという考えがあるならば、いろいろな知恵が必要となります。

というわけで、民間の気楽さで、状況を見ていますが、それでも、現地の熱というものを肌で感じることができます。

今回、異なるテーマや目的を持つ組織や専門家に会いましたが、耳に残っているのは次の言葉。

・気候変動
・薬物問題
・女性のエンパワーメント

+そのベースにSDGs。


さて、ツバルで開催されていたPIF総会では、コミュニケに加え、首脳宣言が出されるものと思います。

ツバルで開催されたことで、気候変動が現実的な脅威であることを国際社会に発信することとなり、太平洋島嶼国の中でも、より小さな国々Smaller Island States に光をあてる動きになったようです。

昨年9月の総会では、地域安全保障に関する地域協力のためのボイ宣言がまとめられ、豪州の反対を押し切り、気候変動を最大の脅威と位置づけました。

今年はボイ宣言とブルーパシフィック・アイデンティティを基盤に、具体的に最大で唯一の脅威である気候変動の影響を軽減させるための具体的行動に関心が向いています。バイニマラマ首相が復帰したことは、島嶼国首脳の議論を現実的でかつ即応性を求めるものに変えているように見えます。

具体的には、豪州の石炭が脅威の対象として取り上げられており、豪州のモリソン首相が守勢に回っています。ガーディアン紙の記事では、豪州が5億豪ドルの支援を表明し、気候変動危機から気候変動の現実に変えることに成功したなどとありました。

一方、ツバルのソポアンガ首相は、そのような支援によって、我々の主張が変わることはない、という発言もあったようです。

NZのアーダーン首相は完全に島嶼国側ですが、先進国として、豪州と島嶼国の間で、重要な役割を担っているように見えます。

5年前頃までは、日本が太平洋島嶼国と豪州・NZの仲介役になることを期待していましたが、NZが太平洋島嶼国のニュアンスを理解していることから、そのポジションを確保したと言えそうです。

もし、北半球と南半球でギャップがあるのであれば、日本が北と南を繋ぐ役割もありそうですが、今後の地域の動向を見守りましょう。

そうそう、現地でいろいろな人と話していると、例えばPIF総会は単なる地域会議の1つと見られそうですが、島嶼国首脳も事務方も、地域の内向きの議論ではなく、常に国連、国際社会へ繋げることやSDGsを意識して議論していることが分かります。
第50回PIF総会 [2019年08月11日(Sun)]

今週13日から16日、ツバルで第50回PIF総会が開催されます。
PIFの創設は1971年(第1回総会)ですが、確か初年度のあたりで2回総会が開催されたことがあるため、今年は49回ではなく50回目となります。

注目点は何かといえば、ついにフィジーのバイニマラマ首相が参加することでしょう。2006年のクーデターを機に、フィジーは10年以上、PIFの枠組みに首脳レベルでは参加していませんでした。

フィジーは2009年から2014年の民政復帰までPIFの加盟資格が停止され(創設国にもかかわらず)、その期間、フィジーは地力をつけてPIFの枠組み無しに、国際社会での発言力を高めていきました。

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フィジーは反対に、2013年ごろから、豪州とNZが加盟国ではなく、開発パートナーの位置付けにならない限り、首脳レベルでPIFに復帰することはないとしていました。

さらにこれが太平洋島嶼国間の分裂に繋がり、特にサモアのトゥイラエパ首相とフィジーのバイニマラマ首相の感情的とも思える対立は、長く長く地域の結束に影を落としていました。

昨年5月、日本で太平洋・島サミットがあり、8月末ごろにサモアのトゥイラエパ首相がフィジーを訪問し、バイニマラマ首相と首脳会談を行い、和解が成立しました。

そして共通の脅威である気候変動や、経済発展について協力する機運が高まった、という経緯があります。

南太平洋でフィジー、サモア、そしてトンガの関係が強まれば、やや行き詰まりつつあるフィジー経済にとっても、これから成長する機運が醸成されつつあるサモアにとってもプラスとなるでしょう。

人、物、さまざまなものが円滑に動き出すことが期待されます。

先進国や開発パートナーとの関係も変化していくかもしれません。

さてPIF総会でバイニマラマ首相やトゥイラエパ首相、NZ代表、豪州代表、議長であるツバルのソポアンガ首相、ナウルのワンガ大統領など、どのような発言をされるか、どのようなコミュニケがまとめられるのか。

楽しみです。
ナウルPIF総会の隠れた成果 [2018年09月28日(Fri)]

今月初旬にナウルで開催されたPIF総会では、新たな地域安全保障協力宣言、中国代表団の態度、ナウルの庇護希求者センターが注目されていました。
しかし、地域枠組みの動向を考える上で、重要な決定がなされていました。それは今回のコミュニケの別添2にあります。PIF事務局の予算の負担割合に関するものです。

昨年、仏領ポリネシアとニューカレドニアの加盟について、自分はPIF事務局の財政強化が背景の1つにあるとしていましたが、上記資料を見ると、それほど外れてはいない気がします。

ところが、そこには実はそれ以上に重要な意味がありました。

豪州、NZの負担割合ですが、確か現在は、それぞれ35%を超えていると思いますが、新しい決定では、来年がそれぞれ32%弱、2021年には25%弱となります。すなわち、2021年には豪州、NZの負担割合が合わせて50%を切るということ。

昨年の総会でも提案がありましたが、負担の増える(各国20万米ドル程度)ことに対し島嶼国側が難色を示していましたが、おそらく仏領加盟がこれに対して良い方向に作用したとも言えるかもしれません。

ともかく、このことが意味するのは、島嶼国のPIF事務局のオーナーシップが高まるということと、PIFの枠組みが作られ、首脳の決定を実行に移すために設立されたPIF事務局の、設立当初の目的に回帰するということ。

PIFが島嶼国が共通の課題に対応する地域政策決定枠組みであり、PIF事務局がその実施調整を担い、PIF事務局を含むCROP機関(SPC、SPREP、USP、SPTOなど8つの地域機関評議会機関)がそれを実行するという本来の姿に戻ることを意味すると思います。

これを推進している要素には、サモアとフィジーの関係改善による島嶼国間の結束強化、NZの変化があると考えられます。

日本はマルチの関係も重視するならばこれを踏まえて、スマートに動く必要があるでしょう。
準メンバーだとか、小さな間違いだとか [2018年09月08日(Sat)]

ナウルの宿を出てから33時間。帰宅。シドニーは1時間と少しの遅延で済みました。帰りの飛行機で5時間程度眠れたので、パラオからの深夜便乗り換え帰国よりも体は楽です。
さっそく米を炊き始め、1回目の洗濯も始めました。

シドニーからの帰りは日本の航空便でしたが、CAさんがまだ慣れていないのか、若いのか、萎縮しているのか、対応が何か変な感じがしました。猫背だし。ハッタリでも良いので、堂々と、こうキリッとしてほしいです。

ナウル航空もフィジー航空もNZもヴァージン・オーストラリアも、CAさんは威張っているわけではなく、堂々とキリッとしていて、安心感がありました。


さて、今回のPIF会合のコミュニケが正式に発表されましたが、大きく見れば、地域政策機関として、PIFの枠組みの重要性が高まったと言えると思います。今回、仏領のウォリス・フツナが準メンバーとして認められたのは大きなニュースだと思います。これでNZ領のトケラウとウォリス・フツナが準メンバー。将来的に米領がどうなるかって話にもつながるでしょう。

例えば、米領サモアもグアムも北マリアナも、米領ではあるけれども、住民が抱える小島嶼地域ゆえの課題は他の独立国と同じものがあります。

PIFではありませんが、サブリージョナルグループのポリネシア・リーダーズグループでは、ハワイも米領サモアも南米チリのラパヌイ(イースター島)もメンバーになっています。

独立していない地域については、いかに住民に自治権や政策決定権があるのかが、このような枠組みに入るための条件になっているようです。

PIFに話を戻すと、フィジーとPIFの関係は、おそらくバイニマラマ首相が頑固なので、まだ首脳レベルの参加は難しいですが、双方が融和的になってきた気がします。もしかすると、ここに日本の役割があるかも。

開発パートナーとの対話では、日本は堂々と自由で開かれたインド太平洋戦略の文脈で、考え方を説明していました。

ただ1点、残念な点がありました。南太平洋大学との協力について述べる部分。同大学は、現地ではUSPと呼ばれるように、The University of the South Pacificが正式名であるところ、配布された声明文にはSouth Pacific Universityとありました。この場合、”of” には、南太平洋を代表するニュアンスがあると英語の先生に聞いたことがありますが、このような小さなところで、相手側の気持ちが白けてしまいます。小さな間違いに見えますが、このようなところで空気が変わってしまいます。事務方は確認していなかったのでしょうか。

以前、2014年ごろ、まだ日本とフィジーの関係が困難な時、現地で開発協力に関する政策協議がありました。日本からは事務レベル幹部クラス、現地では財務次官を筆頭に幹部数名が参加する正式な会議です。その冒頭、あれだけ事前に確認していたのに、日本側の幹部がフィジーのバイニマラマ首相の名前を、バイニラマラなどと言い間違えをしました(結局会議中、最後までしっかり言えなかった)。

この間違いによって、明らかにフィジー側の空気が白けてしまいました。相手側の記録にも残るし、外交上、まあよくないでしょう。

自分も時々、日本人に「シオザキ」と言われることがありますが、あまり良い気はしません。
地域安全保障協力に関するボイ宣言(1) [2018年09月06日(Thu)]

2000年のビケタワ宣言に続く18年ぶりの地域安全保障協力に関する宣言(ビケタワ・プラス)が、昨日署名会場のあるナウルのボイ(BOE)地区の地名をとり、ボイ宣言(BOE Declaration)としてまとまりました。
終了予定時刻を4時間大幅にオーバーしてまとめられた同宣言は、おそらく今日のPIF会合閉会式で正式に公表されると思います。

それに先んじて出ている報道や首脳の発言を踏まえると、豪州など主導で伝統的安全保障を念頭とした協力宣言という一方で、島嶼国側は、伝統的パートナーと新規パートナーの関心の拡大、地域の地政学的重要性拡大を認識した上で、いかに、太平洋島嶼国と住民が直接的に受けている安全保障上の脅威を同宣言に組み込むかが課題だったようです。

そのため、今回の宣言には、「気候変動」が明確に組み込まれたようです。気候変動については、豪州も米国も、島嶼国とは距離感があるため、かなりの駆け引きがあったのではないかと推測できます。


さて、昨日首脳会議後、BOEの通称サンセット地区で、BOE宣言を記念する首脳の手形プレート型どり式典が行われました。(午後3:30の予定が7:30になりました。)

ちなみにPNG代表は会議不参加。ミクロネシア連邦大統領は会議には参加したものの、プレート型どり式典は不参加でした。


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キリバスのマーマウ大統領とナウルのワンガ大統領

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サモアのトゥイラエパ首相が手形を整えているところ。粘土いじりをしているようでお茶目。

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マーシャルのヒルダ・ハイネ大統領とクックのプナ首相。ヒルダさんキュート。

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NZのアーダーン首相とソロモンのホウエニップウェラ首相。アーダーン首相は大洋州の新しいスターと大人気でした。

アーダーン首相はニウエ大使を務めていたこともあり、太平洋島嶼国の人々と近い感じがします。


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トンガのポヒバ首相とNZのアーダーン首相。


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ソロモンのホウエニップウェラ首相とパラオのマルッグ国務大臣(外相)。


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フィジーのコヤ産業貿易観光大臣兼国土鉱物資源大臣。ハリソン・フォードみたいでカッコいい。

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あ!指が4本しかない!とおどけているところ。(隣のナヤシさんが驚いて数えていました)(某ネズミキャラクターの手に見えてくる…。)


首脳会議は予定を大幅にオーバーしましたが、参加者それぞれが納得するまで続けるところに大きな意味があると思います。パシフィック・ウェイとも言えるでしょう。充実感が漂っていました。


島嶼国首脳が日本の太平洋・島サミット(PALM)に求めているのもこれです。各国首脳が日程を調整し、長い時間をかけてわざわざ日本に集まるのだから、日本を含む首脳同士がとことんまで率直に話し合いを行うことが重要で、それにより、初めて、日本と島嶼国の新しいパートナーシップが作られると思います。事務方がまとめたものをシャンシャンで終わらせるというものではない、ということでしょう。

ホストのナウル政府は、よくこれだけのイベントをオーガナイズしたものと思います。凄い。
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