クック諸島については、1年以上かけてPIF事務局と日本とで進めていたプロジェクトがNZの影響でひっくり返されたことがあり、個人的にはあまりいい印象がありません。
あ、でも、6年くらい前に、太平洋島嶼国の若手外交官と一緒に都内(大門あたり?)でカラオケに行ったとき、サモア、マーシャル、ナウル、ツバル、キリバス、トンガ、そしてクックの人がついてきて、その時はクックの人は、女性でしたが、スッと洗練されている雰囲気がありつつワイルドな面があり、一人でビール10本くらい飲んでいるような感じで、楽しい人でした。サモアの人とクックの人が、ブリュッセルでの笑い話をしていたのを思い出します(確かクックがNZパスポートを使っていることが関係していたような)。
クック諸島はポリネシアにある人口1万数千人の環礁島の国で、NZとの自由連合国。日本は2011年に国家承認しました。地理的には北と南の環礁島グループがあり広大な海域を有すると記憶してますが、2010年以来プナ政権が続いており、たとえば(まだ完全に回復していませんが)フィジーと豪・NZとの関係が非常に悪い時期に、フィジーの地域機関への関与を積極的に支持していました。
確か、中国の経済協力も活発で、たとえば中国のローンによるインフラ・プロジェクトというのは、通常中国業者と中国人労働者により実施されていますが、クックではNZと中国が協調する珍しい手法で進められているプロジェクトもあるそうです(豪ロウィ研究所の資料による)。
そのクックで、今週政治的な動きがありました。以下、パックニュース記事から。
「Cook Islands Opposition toppled Henry Puna Government」
http://www.pina.com.fj/index.php?p=pacnews&m=read&o=10283997635768c15f103aa9bb4210(6月20日付)
6月20日の議会で、野党連合がプナ内閣不信任決議を成立させ、ローズ・ブラウン副議長を新首相に指名したとのこと。野党側13ということは、全議席数24の過半数にはなっているんですね。
しかし、その後、たくさん追報がありました。
「Cook Islands opposition Coalition action labelled as bordering on treason」
http://www.pina.com.fj/index.php?p=pacnews&m=read&o=13075634265769b20e8087e1b6ff3a(6月21日付)
与党側は、野党連合の動きは、国家反逆罪に近いものだと批判しているというもの。
クックにはプナ首相率いる与党 Cook Islands Party とDemocratic Partyを中心とした野党連合があるようです。
全体の動きをみると、6月20日の議会は与党側の出席者が少ない状態であったこと、議長も不在で、ローズ・ブラウン副議長が議長を務めたこと、そして野党連合が与党Cook Islands Party の副議長を「首相の座」を餌に取り込み、プナ首相不信任決議を成立させたということのようです。そして、記事中に、エリザベス二世女王の名代トム・マースターズ (Tom Marsters)の名前が現れます。この女王名代がカギを握りそうです。
「Cook Islands Parliament closed amidst disarray」
http://www.pina.com.fj/index.php?p=pacnews&m=read&o=13060260275769ea3e276b857f1ea6(6月21日付)
混乱の中で閉会となった。与党は野党による不意打ちとローズ・ブラウン副議長の裏切りに翻弄されているように見えます。全24議席ある中で、ローズ・ブラウン副議長が野党連合側に回ったことで野党連合側が13、与党側が11となっている状況であり、与党側はローズ・ブラウンを責めることはせず、与党に帰ることを歓迎するとしています。
「Vote of No Confidence null and void」
http://www.pina.com.fj/index.php?p=pacnews&m=read&o=1007926566576a18c1f9318e149a88(6月21日付)
女王名代トム・マースターズが動きました。議会は6月17日に休会となっており、正式な手続きを踏まずに開かれた6月20日の議会は無効。したがって、不信任決議も無効というものです。
野党連合側の形勢が危うくなってきました。
「Cook Islands Clerk of Parliament could be in for challenge」
http://www.pina.com.fj/index.php?p=pacnews&m=read&o=2118593550576b0c8cc75570279e64(6月22日付)
野党連合は、国会事務局長が役務を果たさなかったとして非難し始めたようです。国会事務局長は、野党連合の動きは悪意に満ちており、「悪魔の所業」であるとみなしているようです。
一方、冷静に考えてみれば、6月20日の議会が無効となったとしても、ローズ・ブラウン副議長が野党側に寝返った事実が変わらなければ、与党11、野党13という状況に変わりはありません。
そして、与党CIP(Cook Islands Party )は、
「CIP to Rose Brown: “You’re forgiven’」
http://www.pina.com.fj/index.php?p=pacnews&m=read&o=1557270841576b0d06f6550cee1322(6月22日付)
CIPはローズ・ブラウン副議長に戻ってきてもらわないと過半数を維持できないので、赦すしかないですよね。
クック政権交代の鍵を握るのはローズ・ブラウン副議長。ローズ・ブラウン副議長が首相になると、クック初の女性首相ということになりますね。
この一連の動きの背景に何があるのか、外部からの影響があるのか、興味深いところです。