バヌアツ中国基地否定記事と英国 [2018年04月11日(Wed)]
現地バヌアツ・デイリーポスト紙の記事です。
「Chinese Military Base in Vanuatu "impossible"」 http://dailypost.vu/news/chinese-military-bases-in-vanuatu-impossible/article_38521ab2-1c5a-5014-849e-6bed44106285.html 観光促進政策を進めているのになあというのが正直な感想です。それよりも、埠頭を建設し、軍の艦船の寄港実績を積み上げていったり、軍事港湾ではなく、例えば民間を装って、こっそりとどこかに施設を作り、時機がくるまで備えるっつう方が、ありえそうな気もします。 バヌアツは約200億円(GDP比22%、政府財政比74%)の対中国債務がありますが(Lowy Institute, バヌアツ財務省資料、IMF4条協議報告書より)、そのほかにポートビラでは債務とは別でほぼ同時期に、それぞれ9億〜20億の範囲の贈与で、首相府、会議場、スポーツ複合施設が建設されてきました。 首都ポートビラのあるエファテ島ですが、首都ポートビラの北東部、中心地から車で20ほどの沿岸部にブロック塀で囲まれているエリアがあります。現地の一般市民に聞くと、首相府、会議場、スポーツ複合施設などの建設に合わせるように、高いレベルで話がついて、このエリアの土地の使用権が民間の中国企業に渡ったと言われているとのことでした。それまで住民が普通に行き来できたエリアが、隔離されたという表現をしていました。 ![]() (ポートビラ市近郊、2017年塩澤撮影) バヌアツも担当していた書記官でもあったので、少しは現地を見てきましたが、いつも感じていたのは住民と議会や政府との距離感です。一般市民レベルから見て、ハイレベルとか地主とかが勝手に決めて、市民に従わせるということが普通に行われてきたように思います。 中国の軍事基地云々の話も、バヌアツの場合は、一部の政治家の力でパッと決まり、住民が受け入れるということも可能性として排除できないように思います。注視していく必要があります。 中国海軍の訓練船はPeace Arkなどの病院船は、2000年代半ばから、4〜5年に1回の割合で、トンガ、フィジー、バヌアツ、サモア、タヒチ、NZ、豪州、ミクロネシア連邦、パプアニューギニアなどに寄港し、文化交流や医療支援を行ってきています。トンガでの災害時には、豪州軍、NZ軍、米軍、フランス軍、英国軍などと合同人道支援を行ったこともあります。ダークな目で見ると、着々と進出し、時機を待っている、となるのかもしれません。 今回の記事で気になるのは、英国チャールズ皇太子のバヌアツ訪問に合わせて(豪州のジュリー・ビショップ外相が同行)、豪州メディアが先に報じたというところです。 先ほど、同僚(というか大先輩)と話したときに、「英国が吹っ掛けているかもね」と言っていましたが、そんなタイミングにも見えます。 英国は2004年に最も古い地域機関である太平洋共同体(SPC)から脱退、2006年にはトンガの英国高等弁務官事務所(大使館)が、2012年にはバヌアツの英国高等弁務官事務所が閉鎖されました。地域から離れ、豪州、NZに任せるようにしたという専門家の方がいましたが、そういう時期だったのだと思います。 一方で、自分はフィジーにいた2013~14年頃、ときどき駐フィジー英国高等弁務官事務所に行き、書記官と情報交換を行っていましたが、その時には、やはりというか当然というか、担当する国々については情報量もその深さを含め、やっぱり英国だ、と感じたものです。正直、日本では及ばない何かがあるように思いました。 太平洋地域特に南側ではEUの活動が活発ですが、その同僚(というか大先輩)は「Brexitが背景にあり、太平洋地域外交にも本腰を入れるかもよ」と言っていました。 先日のTPPに英国が参加検討かという話題がありました。ポリネシア地域に人口50人ほどの英国領ピトケアンがあり、ピトケアンはいくつかの地域機関メンバーにもなっていて、英国は今でもピトケアンを介して地域課題に直接関与できる地位にあります。 英国の動きにも注目しましょう。 |