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太平洋島嶼国の外的変化について−補足(パラオの米国コンパクト) [2016年11月27日(Sun)]

ここまで米国コンパクトの改定(2004年のミクロネシア連邦、マーシャル、2010年のパラオ)と原油価格の高騰(2005年〜2008年、2009年〜2014年)について書きました。

パラオのコンパクトについては、ミクロネシア連邦とマーシャルとは異なるので、前回記事の訂正も含め、改めてここに書いてみます。ちなみにコンパクトはCompact of Free Associationのことで、現地や米国では略してCOFAやUS Compactと言ったりし、日本では米国自由連合盟約、米国コンパクト、コンパクト協定(これは厳密には正しくない)と言われます。このコンパクトは、戦後のミクロネシア3国の独立の過程(米国信託統治領、自国憲法制定および自治政府樹立、独立)の独立の部分に当たります。

独立のレベルというのがあるのかわかりませんが、米国との関係のイメージとしては、ハワイ州→グアム→北マリアナ→米国自由連合盟約国(ミクロネシア連邦、マーシャル、パラオ)→日本ではないかなと思います。

自由連合盟約国では国民が準米国市民扱い、安全保障は米国、郵便、気象、航空、保健医療(特に感染症対策)、教育に関しても米国の関係が強く、通貨も米国通貨(中央銀行がなく金融政策もない)、外交については米国にとり非常に重要な部分については米国に同調するなどあるため、人によって自由連合盟約国は米国の一部であり真の独立国家ではないという方もいるようです。

現在の自由連合盟約国は、米国の核心式部分以外については独自外交を行っており、次の段階として経済の自立と安全保障の自立があるのかもしれません。

ともかくこのように独立の過程の中に米国コンパクトがあると考えてよいかと思います。

(余談としてですが、これらの米国自由連合盟約国側には、単純に援助を受けているという考えは無いように思われます。例えば「米国に領空や領海に自由にアクセスできる権利を認めているのだから、その引き換えに援助を受けるのは当然のことだ」という考えをそれぞれの国の政府高官から聞いたことが何度かあります。)

しかし、まだまだ分かりにくい部分があるので、パラオのコンパクトについて少し調べなおしました。

パラオでのコンパクト改定合意(2010年9月)を議会に報告し承認を求める2011年6月の米国側の資料(書簡)によると米国(コンパクト改定交渉担当)側の視点がわかりますが、特に以下の点が興味深いところです。
・パラオは1981年に自国憲法を成立、1994年10月1日に米国コンパクトに合意し独立。
・パラオと米国のコンパクトには終了年はなく、1994年の発効後、15年(2009年)、30年(2024年)、40年(2044年)に見直しを行う。
・米国にとり太平洋地域における米国の優位を確保する意味で重要。安全保障は米国が担うが、それによりパラオの領空や領海に自由にアクセスできる。
・パラオは米国市民と同等の権利を有するが、人口14,000人弱にも関わらず、200人以上が米軍に参加し米国の安全保障に貢献している。これらには伝統的権威の親族、政府高官の親族も多数含まれる。
・2024年9月末まで、14年で総額215.75百万米ドルの経済援助を承認してほしい。
(しかしながら、いまだ米国議会の承認は得られていない模様)

ついで2014年のIMF資料から。
・信託基金については後述。
・パラオは米国コンパクトTにより、1994年から2009年の間に米国から総額580百万米ドルの援助を受けた。
・パラオは米国コンパクトUにより、2010年から2024年までの14年で総額229百万米ドルの援助を得ることになった。
・コンパクトUによる米国からパラオへの経済援助内訳は以下のとおり(いずれも2010年の時価で、実際の金額はインフレ調整により変わる)。
−パラオ政府財政への直接援助 計122百万米ドル
−インフラ整備 計40百万米ドル
−コンパクトロードなど米国の援助で整備されたインフラのメンテナンス費 計27百万米ドル
−政府財政調整のための基金 計10百万米ドル
−コンパクト信託基金 計30百万米ドル

米国議会がコンパクトUの経済援助について承認していないということですが、現在まで上記直接援助部分からパラオ政府に年13百万米ドルが支払われており、またコンパクトロードの修理費用(15百万米ドル程度)もすでに出されていると思います。

コンパクト信託基金について。これはミクロネシア連邦とマーシャルとパラオのコンパクトの大きな違いではないかと思います。

前者はコンパクトU(2004年以降)で信託基金を設置しましたが、パラオは1994年のコンパクトTの時点で既に信託基金が設置されていました。

上記IMF資料では、1994年に66百万米ドル、1997年に4百万米ドルが米国政府から投入され設置されたもので、パラオ政府は毎年GDPの5%を同基金に投入することとなっているとのこと。

また、パラオ政府は、これまで年5百万米ドルを引き出すことができており、米国議会がコンパクトUを承認すればこれを徐々に引き上げ、2023年までに年13百万米ドル、2024年〜2044年は年15百万米ドルを引き出すことができるとのこと(現時点では、コンパクトUに基づく年13百万米ドルの直接財政支援と信託基金から5百万米ドルをパラオ政府は得ているとのこと)。

ADB資料によればパラオの名目GDPと政府歳入は2014年がそれぞれ250.9百万米ドル、108.6百万米ドル、2015年が287.4 百万米ドル、116.4百万米ドル。

これを見ると、米国からの直接財政支援13百万米ドルは政府歳入の10数%であり、マーシャルやミクロネシア連邦における同割合60%前後とは大きく状況が異なることがわかります。

信託基金の活用(パラオ政府が求める2024年以降の15百万米ドルの引き出し)は、コンパクトU終了後の米国からの直接財政支援停止後の不足分を賄う額でもあり、経済的自立に向けた考えであることが推測されます。

後日書きますが、一方で、自国で対応が難しい穀物や原油などの市場価格の変動や、信託基金の運用益に関わる世界経済の動向により、国家財政が左右される脆弱性が残るといえるかと思います。

米国コンパクトというとミクロネシア連邦、マーシャル、パラオが同じ状況にあるように思われがちなのですが、今日は補足として、パラオのコンパクトの違いについて書いてみました(今後訂正する点やアップデートする部分もあると思います)。
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