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中国の台頭、米国と太平洋島嶼国のつながりに関する記事A [2016年06月07日(Tue)]

引き続き、下記の記事についてです。

http://www.abc.net.au/news/2016-06-01/us-stresses-'unique'-pacific-islands-links/7466368
(6月1日付 ABC News)

2段目では、記事執筆者のボーハン氏の考え方として、米国の影響が低下していると述べられています。

米国政府はリバランス政策によりアジア太平洋を重視しているというが、ミクロネシアに関して言えば、ミクロ3国はそれぞれの独立以来、米国自由連合盟約国(米国コンパクトにもとづく米国自由連合国家)であるものの、具体的なものを見つけることは難しい。

パラオについては、2011年の会計年度(10月〜9月)以来、コンパクトにもとづく財政支援が行われていない(前記事のような事情による)。

そして、アナスタシオ/パラオ下院議長の以下のコメントを紹介しています。
「米国によるパラオにおける商業投資に対する支援はたいへん限られている。一方、中国は同分野に対する支援が顕著に増加しており、事実として、パラオの現地経済に対する米国の関与をはるかに超えている。」

実際にはコンパクトにより米国人はビザなしでパラオで生活できますし(パラオ人は同様に米国でビザなしで生活可)経済活動もできるし、そのようにしている米国人もいます。一方、中国の投資活動は民間によるものですが、過剰とも感じられるもので、どんどんホテルが建てられたり、建屋が買い取られてホテルになったり、土地を現地の方と協力して利用したりと、大規模です。

このような民間経済の話と米国コンパクトの話を同列で話すのもどうかと思いますが、現地の視点としては分からなくもないでしょうか。

続いて最後の3段目ですが、ここではミクロネシア連邦における「新しいコンパクト関係を交渉する時だ」というタイトルが打たれています。

この記事はもともとヤップの話から始まっているものですが、昨年そのヤップ州が属するミクロネシア連邦であった2023年に期限が切れるコンパクトを、それよりも早く2018年に終了させるという議会の決議に関するものです。

自分は、「あれ?確か以前にも同じような話があった気がする。。。」とデジャブ感があったのですが、まさに2011年頃、今回同決議案を提出した3名の議員と、当時議員だったピーター・クリスチャン現大統領が、当時のモリ政権に対して行ったことがありました。

いろいろな背景があると思いますが、自分がマーシャルにいた時代からの話なので、もう10年以上になりますが、特にミクロネシア短大への財政援助削減に関するものが最もデリケートな要因であるように思われます。そしてその背景には、前記事で書いたように、コンパクト1からコンパクト2に変わり、財政援助に対する米国政府の関与が強くなったことがあると思います。

マーシャルでも、きっかけは異なるのですが、やはりマーシャル短大への米国政府からの資金を削減しようとか、米国西部私立大学協会(WASC)の認定を外すとかの話があり、マーシャル政府が同短大の財政基盤改善(もともとがマーシャル人学長の横領等が背景にあったため、国として酒やたばこ、炭酸飲料などにSIN TAXを導入し、同短大の財政を支援するというものなど。現地ではジョークですが、酒を飲んで短大を救おうというような話もありました。)や教育レベルの改善を図る取り組みが進められました。

ちなみにWASC認定というのは重要で、たとえばWASC認定があると認定校間で単位の融通が利くことになり、マーシャル短大卒業生や同短大在学中の学生が、米国に移住したり、留学する際に、短大の単位を持って勉強を続けることができます。

マーシャルでは、米国から新しい学長を招き、5年以上かけて、財政と教育内容の改善を進め、最終的に米国政府がそれを認め、財政援助の対象から外すことはなくなりました。(財政援助も直接のものと、学生の学費を対象としたものなどがあり、自分は詳しくは覚えていません)

一方、ミクロネシア短大では、10年ほど前にも、マーシャル人の友人から「ミクロネシア短大は厳しい」と言われていましたが、改善を進めることが難しい状況だったと記憶しています。それにより何が起こるかというと、米国から見ると、「改善する努力が薄い、援助を止めよう」、ミクロネシアの国民からは、「現地の事情を理解すべきだし、プレッシャーをかけるのはけしからん」ということになります。

これ以外にも、たとえばコスラエ州やチューク州は、一時期、財政管理不足や米国政府への報告義務を行ったとしてコンパクトにもとづく米国政府からの財政支援がストップしていたことがあると聞いたことがあります。

このようなことがあり、当時のクリスチャン議員らが、当時のモリ政権に対し、もっと米国政府としっかり交渉すべきと圧力をかける意味もあり、「コンパクト離脱」という考え方が出てきたと記憶しています(当時のパラオ、マーシャルを含む、現地関係者の話に基づく)。

もう一つ、自分が覚えているのは、2004年からのコンパクト2について米国との交渉を担当した当時のマーシャルの官房長官(キャステンの前任)との話です。

当時同官房長官は、コンパクト1からコンパクト2への改定の議論の中で、米国政府による経済援助の2023年(コンパクト2限りで)終了すること、確か2014年頃から2023年まで毎年の財政支援額を50万ドルずつ削減し(実質額でありインフレ率年3%程度を含めると額面上はあまり減らない)削減分を信託基金に積み立てること、そして経済援助の管理に米国政府が強く関与すること、簡単に言えば目に見える援助額の減額と自由度の低下について、マーシャル国内で強い批判にさらされていました。

彼が強調していたのは、「国民は目先の金にばかり目を向け、米国コンパクトを継続することで国民が得られる特権を理解していない」、「マーシャル人は、コンパクトにより、米国に自由に入国でき、勉強も仕事もできる」、「他の途上国はこのような特権はなく、どれだけ苦労しているか国民は理解していない」、「国民は、金を求めるのではなく、このような特権があるのだから、しっかり勉強し、能力を上げて、職を得て、努力して収入を得ることを知るべきなんだ」ということでした。そして彼はコンパクト2を残し、官房長官を辞任しました。

ミクロネシア連邦のこの動きについてですが、仮にコンパクトから外れた場合何が起こるのか。グアム、ハワイ、米国本土にいる同国民は市民権が無くなり、居住、就学、就業ビザが必要になります。現在いる人々が国外退去処分を受ける可能性もあるし、そうならないとしても、今後、ミクロネシア連邦から米国領に移動することが大変難しくなります。

思い出しましたが、ミクロネシア短大の問題のほかに、大きな要因として、コンパクトのビザ免除規定にぶつかる形で、米国政府が米国に入国するミクロネシア3国の国民に対し、何らかのスクリーニングをすべきだという議論への批判もありました。

今もそうでしょうか。ハワイ、グアム、アーカンソー等の米国本土などで、ミクロネシア地域からの移住者に関する各現地政府の財政負担増加が大きな問題となっていました。特にチュークやマーシャルからの移住者は、社会保障を受けることを目的としている者がおり、ハワイではマーシャル人ホームレスの問題が大きな議論となったことを覚えています(マーシャルで、マーシャルの高校生に、「マーシャルでは皆助け合うのでホームレスはいない。先進国は冷たい。」と言われたことを思い出しました)。一方、パラオ出身者はしっかり勉強し、技術を身に付け、米国内で普通に就業しているため、米国側による「ミクロネシア出身者」に一括りにされることについて、強い不満もありました。

で、結局何が言いたいかというと、ミクロネシア連邦がコンパクト廃棄という場合、経済援助以外の部分をしっかり考えているのかどうか、ということです。

そもそも、実際にミクロネシア連邦がコンパクトを廃棄するならば、大統領の一存でできるわけではなく、国民投票などを行う必要があります。

10年前に大洋州でもっとも経済的に厳しいとみられていたキリバスやPNGは、PNAによる漁業収入増加の取り組みや天然資源により大幅に改善され、インフラ改善も進んでいる一方で、ミクロネシア連邦は、4州それぞれが、1つの国のように開発ニーズがあるにも関わらず、連邦の枠組みにあることから、援助国・機関の支援が独立国よりも遅くなる状況にあります。そのため、ミクロネシア連邦内には、チューク州のように、独立の議論が今も存在しています。

今年2月にパラオで開催された第21回ミクロネシア行政首長サミットでは、ヤップ州、チューク州、ポンペイ州、コスラエ州が、グアムや北マリアナと共に、パラオ、ミクロネシア連邦、マーシャルと同レベルの資格を有するMIF(Micronesia Islands Forum, 事務局:パラオ)に発展しました(パラオ政府高官によれば、PIDFのようなもの)。

ミクロネシア連邦に限らず、だいたいコンパクトの期限が切れる5年前くらいから、米国との交渉が検討される状況になると思います。したがって、来年あたりから、現地では少しずつ米国との交渉に関する話題が出始めることになりそうです。
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