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中国の台頭、米国と太平洋島嶼国のつながりに関する記事@ [2016年06月03日(Fri)]

先日、「US stresses 'unique' Pacific islands links, as China's regional footprint grows」というタイトルで、中国の太平洋島嶼国でのプレゼンス増加に対し、アメリカと太平洋島嶼国の特有の関係に関する記事がありました。ちょっと興味を引いたので紹介します。(長いので分けます)

http://www.abc.net.au/news/2016-06-01/us-stresses-'unique'-pacific-islands-links/7466368
(6月1日付 ABC News)

3段に分かれており、最初の段では、2018年にミクロネシア連邦のヤップ州で開催される、いわゆる地域オリンピックであるMicronesia Games(パラオ、ヤップ、チューク、ポンペイ、コスラエ、マーシャル、グアム、北マリアナが参加)への支援に関する話。

この大会では、たとえばアウトリガー・カヌーのボートレースや、綱引きがあったり、独特の面白さがあります。

この記事の最初の段では、元米国ピースコーボランティアで現地の女性と結婚しヤップに在住しているレーン氏の話が出ています。レーン氏はヤップの実施委員会を支援しているそうです。

彼は、「ヤップ・デーの祝賀会の際に、現地大使館と会合を開いた。そこで2018年のマイクロネシア・ゲームス開催のためのインフラ支援について、日本とオーストラリアの両大使は何らかの支援を約束し、中国大使は小切手帳を持ってきて『いくら必要だ?』と聞いてきた。アメリカ大使は代理も誰も姿を見せなかった」と述べています。

彼は、ヤップの歴史にとって重要なイベントとなるMicronesia Gamesを、旧宗主国であるアメリカは無視している。あまり戦略的でないと嘆いているようです。

これはいろいろな見方があり、どれが正しいか分かりません。小切手外交のような類のものは先進国は行いませんし、今そのようなことをする国に対して、どう対応しようというのか。また純粋に開発援助を考えると、スポーツや文化事業は、基本的なインフラが整った後という場合が多いと思います。

自分の若い時に経験しましたが、現地に長くいると、現地への強い気持ちが芽生えることがあり、自分の国のプレゼンス低下や、鈍く見える反応、他ドナーのスピード感のある援助、特に資金援助に対し、何とかできないものかと考えたことがあります。(のちに、自分は「我々は周囲に煽られることなく、誇りを持って我々のやり方でやるべき」と考えるようになりました。)

上記のレーン氏の立場を想像すると、ヤップでは中国の官民両面での資金投入がかなり目立っているので、米国人として忸怩たる思いがあるのでしょう。

米国はミクロネシア連邦とは、現在第2期コンパクトの関係にあります。同コンパクトでは、経済協力は、財政への直接支援ではなくプロジェクトベースの資金供与のような形になっており、優先分野は教育、医療、関連インフラであり、スポーツ設備は対象になりません。

恐らく日本国内でも、ミクロネシア連邦、パラオ、マーシャルは、米国から潤沢な資金が投入されており、経済的に余裕があるのではないか、と理解されている方々が多いと思います。実際のところ、パラオはまだ第2期コンパクトの財政支援は受けておらず(パラオ側の米国に対する要求が、ミクロネシアやマーシャルとは異なる)、コンパクト2のミクロネシア連邦とマーシャルでは、その資金使用に関し、自由度はほとんどありません。

コンパクト1の時には、ミクロネシア連邦、マーシャル、パラオの各政府の米国からの財政支援に対する自由度が高かったと聞いています。しかし、透明性や説明責任に関して問題があったようで、コンパクト2では米国連邦政府の管理と各国の自立に向けた方向性が強化されました。

例を挙げると、まずコンパクト2(2004〜2023)では、最初の5年間、教育分野と保健分野に重点的に資金を投入すること、また2023年で資金協力をやめるため、毎年資金協力額を50万ドルずつ減額していく代わりに、その減額分を信託基金に積み上げ、2024年以降は米国の資金協力はないが同信託基金の運用益による資金を利用するという形としています。

話はずれますが、詳細を調べたわけではないのですが、キリバスやツバルがそれぞれ1978年、1979年にイギリスから独立する際に、ミクロ3国のような毎年米国から財政支援を受ける自由連合国ではなく、経済援助金を一括して信託基金として受け入れ、その運用益で財政基盤を作ったといわれています。そのため、たとえばキリバスでは、長年、経済レベルがマーシャルの財政から米国の経済援助を除いたようなものという見方もある一方で、人々は受け身ではなく働いて稼ぐという考えが浸透したとも言われています(もともと勤勉な国民性とも言われている)。ちなみに、パラオ政府は、コンパクト2締結に際し、経済援助をミクロネシア連邦やマーシャルのように、自由度のない(米国政府の関与が大きい)形ではなく、15年の間に支払われる総額を一括で受け取り、250百万ドルほどの信託基金を作り、その運用益を活用する考えを米国政府に要求し、数年の議論の後に、確か2011年にコンパクト2の署名がなされ、コンパクト2に移行したとのことですが、財政援助については、米国で議会の承認が得られておらず、依然として、この信託基金には資金が投入されていないようです。

信託基金そのものについても、議論はあるかと思います。世界市場に左右され、リーマンショックのころはマイナスになっていましたが、ツバルでは現在は国の予算の3分の1にあたる規模の収入が基金の運用益から得られていたり、マーシャルでも一部ビキニやエネウェタックの信託基金の運用益が高いと高い収入が得られる状況になります。ミクロかマクロか、その見方により変わるでしょうが、住民の視点で考えるならば、労働せずとも収入が得られる(あるいは物が手に入る)という、楽して生活したいという気持ちはよくわかるものの、生産性は低くなり、社会としては少しいびつになるという見方もあるかと思います。

それで、コンパクト2の下でのミクロネシア連邦とマーシャルの米国からの財政支援ですが、両国とも国家予算に一般会計とは別のコンパクト会計が設置されています。コンパクト会計は、一般会計とは別に管理されます。次年度予算案の作成段階から、米国政府と協議します。コンパクトにもとづく資金は、基本的に予算案作成段階からその使途が決められ、ミクロネシア連邦政府とマーシャル政府は、四半期ごとにその使用状況を米国政府側に報告する義務があるそうです。過去にマーシャルであった話ですが、年度末に計画通り資金を使用できず、7,000万円ほどコンパクト会計の予算が余りました。マーシャル政府は別の分野に資金が必要でしたが、これを使うことはできず、米国に返還したということがあります。米国側としては、事前に相談されれば柔軟に対応できるということでしたが、今度はマーシャル国内の問題で、国として協議し、使途を決めるプロセスが困難であったとも聞いています。米国からの信頼を失わないとの観点もあったと聞きます。ミクロネシア連邦の方は、さらに4つの州政府に、それぞれのコンパクト予算があるため、この管理もあり大変な労力が必要になっていると思われます。

単純化すれば、米国からミクロネシア連邦とマーシャルにコンパクト2に基づく資金が投入されていますが、自由度は非常に低い、といえるかと思います。

よくJEMCOなどの固有名詞を耳にすることがありますが、自分もそれほど見てはいませんが、下記のような米国内務省のミクロネシア連邦とマーシャルとの米国コンパクトに関するウェブサイトがあります。

http://uscompact.org/

ご興味のある方は、ドキュメントを調べてみると面白いかもしれません。

なお、パラオは含まれていません。

(つづく)
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