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PNAの取り組みについて [2012年07月17日(Tue)]

7月17日(火)


PNAが何たるかは、こちらをご覧いただくのが一番早いと思います。英語ですが。





PNA (Parties to the Nauru Agreement)=ナウル協定締約国グループは、1982年にナウル協定を結んだ8か国、パラオ、ミクロネシア連邦、マーシャル、キリバス、ナウル、ツバル、ソロモン、パプアニューギニアからなります(いくつかの国はのちに合流)。地図で見ると、これらの国々が、2つの公海ポケットをドーナツ状に取り囲んでいることが分かります(下図のオレンジ色の塗りつぶし部分)。


↓PNA国(キリバスのフェニックス諸島とライン諸島は省略)
PNA-mini.jpg



PNAの資料によれば、PNAが有する海域面積は1430平方キロメートル、このエリアのマグロ類の水揚げは約120万トン(2008年)で世界の需要の30%程、金額で20億米ドルとなります(PNAが本格的な活動を始めた2009年まで、これらの国々は、この金額の3%ほどしか収入を得られなかった)。

PNA国はこの海洋生物資源を、産油国の原油と同様に、資源国側がその漁獲と市場価格のコントロールに関与し、資源国が正当な利益を得ることを目指しています。また資源の持続的利用のため、資源管理を目的として、マグロ類(カツオ、キハダ、メバチ)を対象とした巻き網漁の管理を行う仕組みVessel Day Scheme(VDS)を導入しています。ちなみに、これらのマグロ類の多くは、ツナ缶に加工されます。


1.VDSについて
VDSは、船舶数と操業日数単位で漁業権を販売するもので、PNA国間でも日数の取引を行うことができます(今年5月に、トケラウもVDSを導入することとなりました)。たとえば、6月25日に10隻の漁船が操業すれば、10 Vessel Daysとなります。

毎年、国によって好漁・不漁があります。たとえばソロモン海域で好漁が続く場合、年間割り当て日数がその年の途中で完売となります。一方で、不漁が続くマーシャルでは割り当て日数の販売がうまくいきません。そこでPNAの取り決めにより、ソロモンがマーシャルから日数を買い取り、漁業者に販売することが可能となります。これにより、ソロモンは好漁による経済的見返りを得ることができる一方、マーシャルでは不漁ではあっても、十分な経済的見返りを得ることができます。しかもマーシャルでは資源を守ることができます。

VDSの操業日数の限界については、毎年地域の資源量などの情報により設定され、海域面積によって各国に日数が割り当てられるようです。

2012年3月にグアムで開催された中西部太平洋漁業委員会(WCPFC: Western and Central Pacific Fisheries Commission)で以下の通り報告されています。

1)2011年:国、操業日数/割り当て日数

  ミクロネシア 5,041/5,522
  キリバス   4,376/5,450
  マーシャル  2,236/2,234
  ナウル    1,697/1,653
  パラオ     514/543 
  パプア    11,613/10,073
  ソロモン   1,898/2,146
  ツバル     941/877

  地域合計  28,345日/28,469日

上記日数で割り当て日数より操業日数が多い国(パプア)などでは、他の国から日数を購入してまかなったということです。トータルでは、消化率99.6%となっています。


2)2010年:国、操業日数/割り当て日数

  ミクロネシア 5,648/6,556
  キリバス   4,528/6,470
  マーシャル   566/2,652
  ナウル    2,096/1,962
  パラオ      32/610 
  パプア    16,503/11,959
  ソロモン   2,568/2,548
  ツバル     973/1,041

  地域合計  32,913日/33,798日

2010年は導入初年であり、手探りの状況だったようですが、地域としての消化率は97.4%となっています。

なお、これらの日数にはUS Treatyの操業日数は含まれていません(2011年 7,696日、2010年 8,920日)。

また、PNA国側は、操業日数の最低販売価格を1日あたり5,000ドルとしています。


2.PNAの目的について
冒頭の映像ですが、そこでは5つの目的が提示されています。

1)公海における操業の禁止
PNA国周辺の公海はこの2地点だけではありません。そこで、PNAとしては、北緯10度から南緯20度、東経170度から西経150度の範囲の公海での操業を禁止しています。

実際のところ、公海における操業を禁止する法律はありません。しかしPNA国では、PNAのEEZ内で操業する権利を販売する際に、公海での操業を行わないという契約条項を明記することで管理しようとしています。

PNA国で操業する漁船は、FFA(フォーラム漁業機関)のルールに基づいて、VMS(Vessel Monitoring System:船舶監視システム)のための船舶位置情報通報機器を設置し、衛星を通じて常に位置情報をFFAに伝達できるようにしておかなければならず、FFA本部やFFA加盟国ではその情報をリアルタイムでモニタリングできるようになっています。

また、これまでVMSのデータは、FFA本部と漁業権を販売した資源国のみがその漁船をモニタリングできましたが、PNA国は協定を結び、PNA国の海域で操業する漁船のVMSデータを共有し、モニタリングができるようになっています。

漁船は魚群の動きに合わせて操業するため、その動きにはある傾向が見られます。モニタリングする画面上には、各漁船固有の識別記号があり、どのような経路で操業しているかが一目瞭然であり、不審な動きがあれば、すぐに気づくことができます。

もしこれに違反した場合、50万ドルから100万ドルの罰金が科され、操業権も停止されます。


2)すべての漁獲物(マグロ類)の船上保持
持続可能な資源管理のため、45cm未満の小さなマグロ類であっても海洋投棄を禁止するというものです。

巻き網漁では、小さく若いマグロ類も揚げられますが、それらには商品価値がないため、これまで船上から海洋に捨てられていました。

2年前、マーシャルのランウィ警察長官やアルフレッド・ジュニア財務次官に話を聞いた時には、「マジュロのラグーン内で小さなマグロ類が捨てられている。あんな若いものを捕まえて捨てるというのは許せない。」と怒りを表していました。また、彼らがトローリングをしても、明らかに漁獲量が減ったし、サイズも小さくなっていると話していました。

この取り組みでは、小さなマグロ類の混獲は防げないが、漁業資源を管理するために必要なデータを取ることが目的だと思われます。


3)ジンベイザメの保護
ジンベイザメは、その個体数が減少傾向にあり、IUCNのレッドリストではVulnerableとされています。そのため、巻き網にジンベイザメが入ってしまった場合には、逃がすことを求めています。映像では、ジンベイザメはパンダやトラと同様に貴重な動物であると伝えています。


4)FADs(Fish Aggregating Devices)の7月1日〜9月30日の使用禁止
FADsは、魚群収集装置とも人工浮き漁礁ともパヤオとも呼ばれるもので、魚類の性質を利用して効率的に漁獲を得るための器具です。大きな浮きを設置すると、その下には隠れ家を求めて小型の魚が集まります。小型の魚が集まれば、それを餌とする魚も集まります。そして浮漁礁に周りに巻き網を設置し、魚を獲ります。

ここでは、7月1日から9月30日の期間、小型のマグロ類を守るため、FADsを使用することを禁止しています。また、FADsの周囲1海里内での巻き網漁を禁止しています。

これらを破った場合、漁業権を取り上げ、罰金が科されるそうです。

冒頭のPNAの資料のついでに、たまたまグリーンピースのFADs反対キャンペーン映像を見ることになました。そこでは、この仕組みでは、マグロ類ばかりではなく、サメ、カメ、その他の魚類など、混獲が多いことを理由として設置反対活動を行っています(非難される対象として米国のツナ缶製造販売会社が挙げられています)。はえ縄も海鳥やウミガメやその他の混獲があるためその操業手法を批判しています。そして、価格は高くなりますが、混獲を防ぐもっともよい方法として一本釣りを推奨しています。

僕自身は、漁業者の友人もいるし、漁業者のおかげで魚を食べることができていますし、一方で、環境保護、生態系保護の重要性についても勉強させていただいています。持続可能な資源利用を目的として、漁業、消費、生態系の保護の間でうまくバランスをとれないものかと思います。


5)PNAオブザーバーへの支援
PNAでは各国の操業船に対し、PNAオブザーバーの乗船を求めています。PNAオブザーバーには取り締まり権限がありません。監視者でなく、データを収集し、PNA本部に情報を提出することを役割としています。そのため漁船に対し、PNAの活動への協力を求めています。



先日のUS Treatyの話もそうですが、PNAでも、PNA国側と漁業権の交渉を行う国や機関に対して、PNA国現地への投資や能力向上への支援を求めています。たとえば魚加工業者を国と合弁で設立することや、密漁取り締まり能力向上への支援などです。

資源国側は、経済的な自立を先進国から求められながらドナー国から支援を受けています。島嶼国にとって、自立のための限られた資源は、この海洋生物資源や海底鉱物資源などです。

日本の漁業者にとっては、操業しにくい状況になっていますが、島嶼国側が限られた資源を有効利用し、経済的自立を目指した取り組みであると考えれば、PNAを支持したいと思います。

資源国も漁業者も生活がかかっています。個人的には、消費者のレベルで、安価で大量ではなく、適正価格で適正量を消費するという方向がいいのだろうなと思います。
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