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DNS/ Debt-for-Nature Swaps [2012年07月12日(Thu)]

7月11日(水)

9日のエントリーで触れた"debt swap initiative"についてですが、ミクロネシア海洋保護区事業でお世話になりましたコンサベーション・インターナショナル・ジャパン代表理事の日比さんに教えていただくことができました。

http://www.conservation.org/global/japan/Pages/partnerlanding.aspx

DNS: Debt-for-Nature Swapは、簡単に言えば、途上国の債務をNGOが肩代わりする代わりに、途上国が自国の環境NGOに資金を供与し環境保護をすすめる仕組み、あるいは途上国の債務をドナーが放棄する代わりに、途上国が自国の環境NGOに資金を供与し環境保護を進める仕組みです。

開発途上国の多くは、ドナー国から借金(ローン)をして、インフラ整備などを行っています(円借款など)。しかし、その返済ができるほど経済的に発展できていない場合もあり、その場合、その債務がその途上国の開発の障害となることがあります。また、途上国側がローンの返済をするためには、自国の資源を利用しなければならない場合があります。森林を持つ国であれば森林を伐採して木材を輸出する量が増加したり、生物資源の輸出を増加したりすることで収入を増やし、ローンの返済をすることも考えられます。あるいは、ドナー国(円借款であれば日本)が債権を放棄することとなります。

資金を提供しているドナー国を債権国、借金をしている途上国を債務国として単純化すれば、大規模なインフラ整備により、債務国の住民の生活の質が向上するが、
・債権国は、将来の債権放棄リスクがある。
・債務国は、ローン返済による国家予算への負担、資源の乱獲リスクがある。
となるでしょうか。

このような状況の中、コンサベーション・インターナショナルが、1987年にボリビアで、民間銀行と組んで、DNS: Debt-for-Nature Swapを世界で初めて実施しました。

DNSは、すなわち途上国が持つ借金と自然を交換する仕組み(そのままですが)ですが、いただいた資料では、米国やコンサベーション・インターナショナル(CI)、ザ・ネイチャー・コンサーバンシー(TNC)、WWFなどのNGOによる熱帯雨林資源を保護する2種類のスキームが紹介されておりました。

1.Three-Party Swaps(三者交換)
この場合、債権国または銀行(ドナー)、債務国(途上国)、NGOの三者が関わります。例として、ドナーが途上国に100万ドルの借款をしている場合で仕組みを紹介します(実際の割引率は当事者間の交渉で決定されます)。

現状で、途上国は100万ドルのローンに対する金利を含めた毎年の返済に苦労しています。その返済に充てる収入を得るため、森林を伐採し木材を輸出しようとします。インフラは整備され、ローンは返済されるが、自然は破壊されます。

そこで、NGOが仲介役となり、次の取り組みを行います。
・ステップ1:NGOが100万ドルの債権を債権国(ドナー)から20万ドルで買い取る。
・ステップ2:NGOと債務国(途上国)の間で、NGOが100万ドルの債権を放棄する代わりに、債務国(途上国)が30万ドルを同国内の環境NGOに資金供与する協定を結ぶ。
・ステップ3:債務国(途上国)は30万ドルを同国内の環境NGOに提供する。

これにより、次のちょっとWin-Win-Win-Win-Winの関係が出来上がります。
・債権国(ドナー):不良債権となり回収0の状況から、融資の2割を回収できる。
・債務国(途上国):支払いが70%割り引かれ、負担が軽減される。また、元金の3割の支払いは国内NGOに流れることとなり、国内の環境保護および経済に寄与することとなる。
・NGO:20万ドルの資金供与で、30万ドルの環境保護支援ができる。
・現地NGO:新たな資金源が得られることで活動が活発化される。
・現地環境:守られる。


2.Bilateral and Multilateral Debt-for-Nature Initiatives(2者交換)
この場合、NGOなどが仲介することはあっても、当事者はドナー(債権国や銀行)と債務国(途上国)の間のやり取りとなります。

例として、途上国はドナーから100万ドル融資を得、金利3%、10年で返済する状況にあるとします。また、現状で、途上国側は金利も含めた返済ができておらず、自国の資源を切り売りする必要性に迫られているとします。

そこで、ドナーと途上国間で次の取り組みが行われます。
・ステップ1:ドナーと債務国(途上国)間で交渉を行い、ドナーは100万ドルの債権を放棄し新たな協定を結ぶ。
・ステップ2:新協定は、債務国(途上国)が100万ドルの返済を免除される代わりに、元金100万ドルの返済で本来支払うべきであった金利分を10年に渡り、新たに設立する自国(途上国)の環境基金に投入する。
・ステップ3:環境基金の運用益を債務国(途上国)の環境保護団体・NGOに供与する。

実際には、ドナーが100%債権放棄をするのか、75%放棄するのかは、交渉によります。

これにより、ちょっとWin-Win-Win-Winの関係ができます。
・債権国(ドナー):債権は回収できないが、少なくとも債務国(途上国)の環境保護に役立つことができる。
・債務国(途上国):負債が軽減され、金利の支払い程度で済むため、支出しやすい。また、その金利分は国内の環境保護団体に流れるため、国内の環境保護および経済に寄与することとなる。
・現地NGO:新たな資金源が得られることで活動が活発化される。
・現地環境:守られる。


ただし、これを実現するためには、特に債務国(途上国)が法律を制定し、しっかりと新たな取り決めを履行できるかにかかっていると思います。

上記例では、主に熱帯雨林を守るための取り組みとなっていますが、カリブ海諸国(8か国)では、海洋生物資源を保護対象とした取り組みが進められているようです。

そのカリブ海の取り組みを参考に、アジア開発銀行から数千万ドルの借金があるマーシャルが、「Blue Economy」実現の1つの形として、この「Debt-for-Nature Swaps」イニシアティブを提示しました。

マーシャルが上記の仕組みを利用して、Micronesia Conservation Trustに設置したミクロネシア・チャレンジ国別基金に資金を投入することができれば、マーシャルにおける持続的な沿岸海洋資源保護と陸域資源保護が可能となるでしょう。

今後の動きに注目したいと思います。


いずれにしても、この取り組みは面白いと思いますし、米国、環境NGOの強さを感じました。

日本も先日、対ミャンマーの3000億円の債権放棄という報道がありましたが、ただ放棄するのではなく、間接的に環境保護に寄与するこの種の取り組みができないものでしょうか。
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