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第64回国際捕鯨委員会2日目・3日目の内容 [2012年07月06日(Fri)]

7月6日(金)

昨日に続き、IWC64の情報です。
http://iwcoffice.org/meetings/meeting2012.htm

↑白くなっている"DAY1", "DAY2", "DAY3"をクリックすると、プレスリリースを読むことができます。


昨日の記事で「先住民による自家消費捕鯨数規制」と直訳しましたが、今後「原住民生存捕鯨枠」とさせていただきます。内容は、商業目的ではない原住民の伝統的自家消費捕鯨を一定の漁獲数の規制のもとで管理するものです。

2011年にジャージー島(Jersey)で開催された第63回国際捕鯨委員会では、この原住民生存捕鯨枠が次の通り確認されています。

1) アラスカ(米国)およびチュコトカ(ロシア)の原住民による、ベーリング・チュクチ・ボーフォート海域のホッキョククジラ猟
→2008年から2012年までの5年間で計280頭、年67頭以内
2) チュコトカ(ロシア)およびワシントン州(米国)の原住民による、北東太平洋海域のコククジラ猟
→2008年から2012年までの5年間で計620頭、年140頭以内
3) グリーンランド(デンマーク)住民による東グリーンランドのミンククジラ猟
→2008年から2012年まで、年12 頭以内
4) グリーンランド(デンマーク)住民による西グリーンランドのホッキョククジラ猟
→2008年から2012年まで、年2 頭以内
5) グリーンランド(デンマーク)住民による西グリーンランドのナガスクジラ猟
→2010年から2012年まで、年16頭以内(しかしデンマーク政府とグリーンランド自治政府の合意で、2010〜2012は自主的に年10頭とした)
6) グリーンランド(デンマーク)住民による西グリーンランドのミンククジラ猟
→2010年から2012年まで、年178 頭以内
7) グリーンランド(デンマーク)住民による西グリーンランドのザトウクジラ猟
→2010年から2012年まで、年9 頭以内
8) セントビンセント・グレナディーン住民によるザトウクジラ猟
→2008年から2012年までの5年間で計20頭



一昨日、現地時間7月3日の年次会合で採決が行われたのは、次の2つです。

1.ロシア、セントビンセント・グレナディーン、米国が共同提出した原住民生存捕鯨枠の維持について(昨日の記事に書いたものです)

提案内容は、以下の通り、上記の1)、2)、8)について、2013年から2018年まで捕鯨枠の継続を求めるもので、賛成48、反対10、欠席2、棄権1で可決されました。

・アラスカ(米国)およびチュコトカ(ロシア)の原住民による、ベーリング・チュクチ・ボーフォート海域のホッキョククジラ猟
→2013年から2018年までの6年間で計336頭、年67頭以内
・チュコトカ(ロシア)およびワシントン州(米国)の原住民による、北東太平洋海域のコククジラ猟
→2013年から2018年までの6年間で計744頭、年140頭以内
・セントビンセント・グレナディーン住民によるザトウクジラ猟
→2013年から2018年までの6年間で計24頭

繰り返しになりますが、採決結果は以下のとおりです。

賛成48
アンティグア・バーブーダ、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ベニン、カンボジア、中国、キプロス、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ガーナ、グレナダ、アイスランド、アイルランド、イスラエル、イタリア、日本、キリバス、韓国、ラオス、ルクセンブルグ、メキシコ、モンゴル、モロッコ、ナウル、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、パラオ、パナマ、ポーランド、ロシア、セントキッツ・ネイビス、セントルシア、セントビンセント・グレナディーン、スロベニア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、スイス、タンザニア、トーゴ、ツバル、イギリス、アメリカ

反対10
アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、コスタリカ、ドミニカ共和国、エクアドル、ガボン、ペルー、ウルグアイ

欠席2
インド、モナコ

棄権1
チェコ


2.デンマークが提出したグリーンランドの捕鯨枠改定について

提案内容は、以下の通り、上記の3), 4), 6) については2013年〜2018年まで捕獲枠の継続、5), 8)については2013年〜2018年まで捕獲枠の拡大を求めるもので、賛成25、反対34、欠席3で否決されました。

・グリーンランド(デンマーク)住民による東グリーンランドのミンククジラ猟
→2013年から2018年まで、年12 頭以内(現状維持)
・グリーンランド(デンマーク)住民による西グリーンランドのホッキョククジラ猟
→2013年から2018年まで、年2 頭以内(現状維持)
・グリーンランド(デンマーク)住民による西グリーンランドのナガスクジラ猟
→2013年から2018年まで、年19頭以内(年3頭増)
・ グリーンランド(デンマーク)住民による西グリーンランドのミンククジラ猟
→2013年から2018年まで、年178 頭以内(現状維持)
・グリーンランド(デンマーク)住民による西グリーンランドのザトウクジラ猟
→2013年から2018年まで、年10 頭以内

賛成25
アンティグア・バーブーダ、ベニン、カンボジア、中国、デンマーク、ガーナ、グレナダ、アイスランド、日本、キリバス、韓国、ラオス、モンゴル、モロッコ、ナウル、ノルウェー、パラオ、ロシア、セントキッツ・ネイビス、セントルシア、セントビンセント・グレナディーン、タンザニア、トーゴ、ツバル、米国


反対34
アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブラジル、チリ、コロンビア、コスタリカ、キプロス、チェコ、ドミニカ共和国、エクアドル、エストニア、フィンランド、フランス、ガボン、ドイツ、インド、アイルランド、イスラエル、イタリア、ルクセンブルグ、メキシコ、モナコ、オランダ、ニュージーランド、パナマ、ペルー、ポーランド、スロベニア、スペイン、スウェーデン、イギリス、ウルグアイ


欠席3
オマーン、南アフリカ、スイス


この結果をみると、ロシア、アメリカ、セントビンセント・グレナディーンの現状維持の提案は賛成多数で可決されましたが、少しでも「捕鯨枠拡大」を求めるとEU諸国などがほとんど反対に回ったことがわかります。このことは、現状維持までは妥協するが、新たに枠を超えるものは、一切認めないという意思の表れだと思います。

しかし反捕鯨国のうち、原住民生存捕鯨枠を持つロシア、アメリカが賛成に回ったことは、この点について妥協の余地があるのかもしれません。


これを踏まえたうえで、さらに第3日目のプレスリリースにいくつか気になる点がありましたので紹介します。

1) 社会経済に関連した小規模捕鯨
日本はこれまで、商業捕鯨禁止(モラトリアム)実施以来、困難な状況にある日本国内の4つの地域捕鯨を行う地域への懸念を、繰り返し述べてきています。そこで小型捕鯨船によるオホーツク海と西太平洋におけるミンククジラ猟の許可のための日程変更の提案の概要が示されましたが、意見交換のみで合意は得られませんでした。

日本としては、原住民生存捕鯨枠とこの小規模捕鯨の間での妥協点を見出したいところではないでしょうか。ただし、この場合は社会経済に関係しているため、大規模ではないが地域経済に関わる自家消費よりは地域レベルの商業捕鯨というニュアンスになるのだと思います。

先ほどの採決結果で、グリーンランドのケースで、わずかな捕鯨枠の増加でさえ、否決されてしまいましたので、まだ、採決にかけられる状況には至っていないのだと思います。


2) 韓国の調査捕鯨
IWC加盟国の中で、現在日本だけが北西太平洋と南極海で調査捕鯨(special permit whaling)を行っていますが、新たに韓国が近海での調査捕鯨を求めて、今年末までに科学委員会に提案をする意思があると表明しています。

3) IWC非加盟国の捕鯨
カナダからは捕獲数に関するレポートが提出されましたが、インドネシアからは情報がないということです。


IWCの現状は、南米諸国、EU諸国、豪州、NZの反捕鯨国優勢の状況であり、現実的な漁業国が何とか隙間を見つけて妥協点を探る状況になっているように思われます。
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