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マーシャル、ミクロネシア連邦、パラオからのアメリカ移住者に関する話 [2011年09月02日(Fri)]

9月2日(金)

いつ以来でしょうか。久しぶりに更新します。

書きたい話題がたくさんあるのですが、書ききれないので、今日はハワイやアメリカ本土に移住しているミクロネシア地域(マーシャル、ミクロネシア連邦、パラオ)出身者にまつわる話を書きます。


記憶では、マーシャルでは、2004年ごろからハワイに移住したマーシャル人がホームレスになっていて、現地で問題となっているという話を耳にするようになりました。また2007年くらいから、ハワイや米国本土への感染症(TBとか)の持ち込みに対する懸念が出てきていました。

今年、これはパラオのコンパクト改定交渉によるのか、たまたまタイミングなのか。

マーシャル、ミクロネシア連邦(いずれもコンパクトU)、パラオ(今年10月から、コンパクトUになる見込み。米国連邦議会で予算が通るのを待つ段階)はいずれも戦後の米国信託統治領の地位から独立する際に、それぞれ米国との自由連合盟約協定(Compact of Free Association。通称コンパクト。安全保障、入管、通信、財政支援など様々な取極めを一括して結んだ国際条約)を結びました。その中の、入管に関する部分で、問題が提起されています。

ちなみにマーシャルとミクロネシア連邦は1986年〜2003年(15年+延長2年)が第1次コンパクト、2004年〜2023年(20年)が第2次コンパクト(Compact of Free Association, As Amended。改定コンパクト)で、パラオは1994年〜2009年(15年)が第1次コンパクトで2011年からの第2次コンパクトへ向けて、現在交渉のための第1次コンパクト延長期間2年目になっています。

アメリカやオーストラリアなどは、これら3つの国々をFreely Associated States(FAS)という言い方をすることがありますが、日本人の自分がこれを使うのは違和感があるので使いません(現地に友人もいるし...)。ハワイ州のNeilAbercrombie知事は、Compact of Free Association Nations(COFA諸国)という言い方をしていて、こちらの方がFASより良い感じがしますが...。

ミクロネシアと一言でいえば、これら3つの国々と北マリアナ、グアム、(ここまでが米系)、キリバス、ナウル(英連邦系)まで含みます。ベルサイユ条約によって、この米系(グアムを除き第1次大戦〜太平洋戦争まで日系)と英連邦系に分かれたのですが、かと言って、ミクロ3国という言い方は、日本委任統治領時代を引きずる感じがするし。。。

戦後、アメリカは、北マリアナを含む現在のマーシャル、ミクロネシア連邦、パラオ(すなわち北マリアナ、パラオ、ヤップ、チューク、ポンペイ、マーシャルの6つ。コスラエはポンペイに含まれる)で6星のミクロネシア連邦として独立させる戦略でしたが、北マリアナはコモンウェルスという立場で自治を獲得し、パラオとマーシャルは連邦からの離脱を勝ち取ったようです(この際、パラオのトリビオン大統領が当時弁護士であり、マーシャルのカブア大酋長を含め、尽力されたそうです)。そのため、現在のミクロネシア連邦は4つ星(コスラエが州に昇格)です。

というような経緯を考えると、ミクロ3国という言い方も失礼な気がするので、ここでは「これら3か国」と言った場合、マーシャル、ミクロネシア連邦、パラオと思ってください。


本題に入りますが、このコンパクトによりこれら3か国の国民は、これら3か国と米国領内をビザなしで自由に移動ができ、就労も教育も受けられ、さらに米国内では米国市民と同等の権利を有することになっています。

今回、問題となっているのは、これら3か国から米国に移住した人々が多いハワイ州、アラスカ州、グアム、(アーカンソーとテキサス?)が、これらの移民に対する社会福祉の経費が膨大で、州の財政を圧迫していることです。

米国連邦政府とこれら3か国の取極めに基づくのに、州財政が多大な負担を被るのは厳しいので、何とかしてくれと各州知事やあの有名なハワイ州選出のダニエル・イノウエ上院議員などが米国連邦政府に要望を出し、米国連邦政府が検討を開始しました。7月末にポンペイ州で開催されたミクロネシア大統領サミットでも議論されていました。

具体的には、これら3か国から米国に移住する人々の健康状態、学力、財政状況をスクリーニングすることが米国連邦側からこれら3か国に提案されましたが、これら3か国は事実上のビザ(査証)で、コンパクトに定められた取極めに反すると、反発しています。

ハワイ州の例が、8月26日付マーシャル・アイランズ・ジャーナル紙に掲載されていましたので、その記事から引用します。

ハワイ州では、これら3か国からの移民に対する経費が、2002年に3200万ドルであったところ、2010年には11,490万ドルに上昇したそうです。多岐にわたりますが、財政支援や医療支援、ホームレス支援、医療、教育、犯罪者取締経費等が目立つ項目となっています。

↓この数字は、これら3か国から移住した人の逮捕者数と有罪件数です(8月16日付マーシャルアイランズ・ジャーナル紙第23面。ソースはハワイ州Criminal Justice Data Center)。


明らかにパラオの数字が低くなっています。

そういえば今年の5月頃には、マーシャルの法務大臣と警察長官が、アメリカで犯罪を犯したマーシャル人の身柄を引き取りに行ったという話があったような。。。


ハワイのハローワーク(?)でも、年間554人がこれら3か国から就業機会を求めていて、うち419人がミクロネシア連邦、111人がマーシャルだったそうです。しかも低収入の就業先を紹介したとのこと。

今回の件について、パラオ政府が「一緒にしないでほしい」との気持ちを持っていることが理解できる数字です。


ミクロネシア関係の話題取り上げている掲示板では、ハワイ州市民から、彼らがこれら3か国の人たちを「Micros」と呼び(出身地は区別できていない模様)、なぜ我々が我々の税金で怠惰な移民を養わなければいけないのかという強い意見が出ていたりします。

また掲示板に書き込んでいる、あるハワイ居住者が挙げる「MIcros」の嫌な点として、
・公共の公園(バーベキューができる場所も含む)を占拠している。
・何もせず寝そべっていて、州政府から発給される食券をただ待っている。
・公園で子供を管理せず、走り回らせている。子供を世話していない。
・ビールを飲み、酔っ払い、悪態をつく。時に暴力をふるう。
・唾を吐く。
・臭う。

(こ、これは、なじみ深い風景のような。。。。マーシャルでの。。。ということはこの「Micros」はマーシャル人?少なくともパラオ人ではないと思う。)

これに対して、ミクロネシア地域の若者たちや出身者が書き込んでいます。
・Racismはやめてくれ。
・ミクロネシア(連邦)にはホームレスがいない。俺たちは困っている人を助ける。家が無ければ住む場所を提供するし、食べ物が無ければ、食べ物を分け与える。
・ミクロネシアからの移民は、アメリカへの最後の移民だ。ハワイの人たちだって、何世代も前にハワイに移った人たちの子孫だろう。なぜ我々に冷たくするんだ。
・アメリカは核実験で我々の地域を利用したのだから(マーシャルで)、当然だろう。

ハワイ居住者ばかりでなく、アメリカ本土の人たちからは、
・あなたたちがホームレスを我々に押し付けるから、そちらにいないのだろう?それならこちらにいる人たちを引き取ってくれ。
・確かに先祖は移り住んでいるし、フィリピンや、日本や、中国や、韓国からも移住している人たちはいる。しかし、我々の先祖もこれらの人たちも、身を立てようとして努力している。ただ移り住んで何もしないというのではない。
・核実験はその通りだが。。。

と議論が続いて行っています。


僕の知っている範囲では、マーシャルからハワイを含む米国本土に移住する人たちは、4割程度が教育目的、4割が家庭の事情(家で養えないなど)、小さなコミュニティで生活していけない事情(道徳上悪いことをしたとか、男女関係のもつれとか)などで米国内に住んでいる親類に預ける。または教会関係とか。残りが職を求めてというところでしょうか(アーカンソーのTysonチキン加工工場とか)。

一方、マーシャルの例を挙げて、パラオの友人たちに話を聞くと、パラオでも似たようなもので、家庭の事情とか、コミュニティのタブーを破って生活できないなどの理由で移住する人もいるとは言っていました。もちろん教育目的も多いし、身を立てるためにアメリカに渡る人たちもいる。中には、1回きりの人生だから、好きなように生きたい(すなわち、がっぽり稼いで、ガッツリ遊んでを繰り返す)ので、危険な場所での塗装業やアラスカでの危険な漁業などに従事してる例もあるとのこと。

また、マーシャルの場合は地域にマーシャル人コミュニティを作っているようですが、パラオの人は、どちらかというと現地に溶け込んでいるように思えます。英語力もパラオの人たちの方があるような気もします。マーシャルの人たちは甘えん坊なところがある(だから後ろ髪をひかれる)一方、パラオの人たちには男気があり、自発的にやるのだという気概があるように思います。米軍に従軍している数も、パラオ出身者の方が多いし、亡くなった方も多いと聞きます。

毎年、マーシャルからは1000人規模でアメリカに移住していますが、問題があるのはほんの一部だと思います。僕のマーシャル高校時代の教え子たちで、現在、シアトルとかアラスカとかサクラメントなどに移住し、結婚し、仕事をして、普通の社会生活を営んでいる人たちもいて、普通になじんでいるみたいです。現地のマーシャル人コミュニティ、特に親族の繋がりによって、助け合いながら現地に根付いているように思います。

あ、どこかの地域でメキシコ出身者グループとマーシャル出身者グループの間で対立があったという話もありましたね。

まあ、景気が良ければ問題なくケアできた部分が、経済悪化で余裕がなくなってしまったという点と、累積移住者が増えて、そのうちの一部の好ましくない移住者の数が目立つようになってしまったということでしょうか。

米国自由連合盟約というのは、グアム、北マリアナに準ずる米国との関係を保証するものですから、他の地域からの移民の問題とは異なるという点は押さえておいた方が良いでしょうね。

広い視点から見れば、これら3か国をEEZを含めて、アメリカが強く関与できる状況にあることは、太平洋の安全保障の面でも重要であり、これら3か国からすれば、これらの権利を提供しているのだから、ある程度の財政負担(軍事費に比べたら僅かだろうという話もある)は当然だろうという見方もあります。

そのため、ハワイ州知事は、これら3か国からの移住者を非難するわけではなく、連邦政府に応分の負担を求めているというところですね。


ちなみに、ダニエル・イノウエ上院議員に関連して、戦前戦後の日系人についての情報を読みました。その中で、日系人は「勤勉」「清潔好き」「礼儀正しい」「約束をきちんと守る」と評されていたとの記述がありました。

恥ずかしくないように、自分もしっかりしなくては。
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