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パラオと地域の関係(少しだけ) [2021年02月07日(Sun)]

パラオは駐フィジー大使館も今月末で閉鎖するようです。理由は政府支出の節約のため。すなわち費用対効果が低いという判断のようです。

そもそも、自分が現地に赴任したころ、2012〜15年時点で、ミクロネシアとマーシャルの大使館はあったものの、パラオ大使館はありませんでした。フィジーで地域関連の打ち合わせをセットしようとしたときに、パラオ大使館がなく、直接パラオの国務省の友人に連絡していた記憶があります。

パラオ側は、南側の国々と地域枠組みで協力することで、どのような実質的成果があるのかを見ていたように思います。意味のない地域の話し合いのために時間と資金と労力は使わないということでしょう。

今後の展開については、いくつか想定されることがありますが、このブログに書くことはやめます。


表の情報からだけ言えば、PIF(旧SPF)は1947年に旧宗主国が設立したSPC(太平洋共同体)から、SPCの枠組みでは米英仏の核実験に対する抗議を国際社会に訴えられないとして、当時の独立国5カ国が新たな枠組みを作ろうと相談して1971年に会議体を作り、事務局化したものです。その際、核実験を行っていない豪、NZが加わり、側面支援している関係性がありました。

その後、独立国が増え、加盟国が増えていき、2000年にPIFと名称が変わり、米国同時多発テロ、イラク戦争、地域ではソロモンの部族紛争やフィジーのクーデター(2006)を経て、2009年にケアンズコンパクトがまとめられ、豪NZの位置づけが島嶼国を側面で支えているものから、島嶼国側から見れば上から押さえつけられるように感じられるものに変化しました。

島嶼国間で言えば、英連邦系の南半球諸国の独立が早く、北半球の米国系諸国は独立が遅かったこと、南側の島嶼国から見れば、北半球の3国はコンパクトにより75%独立のようなイメージ(グアムよりも独立しているが他の島嶼国ほど独立はしていない)があり、財政面でも米国から手厚い支援を得ていることから開発課題を共有できないとか、「彼らは米国の一部になりたいのだ」と口にする人も少なくありませんでした。赤道を挟んで心理的にギャップがありました。

ミクロネシア3国間では、パラオは自立心が強く、米国と共に戦う意志の強さがある一方で、マーシャルは核実験に関わる問題から、国際社会を味方につけるために地域の支援が必要であり、感情的に米国とは非常に近いものの、課題によってはケンカをしなければならない関係性があり、ミクロネシア連邦も米国とさまざまな交渉事で意見を通すために仲間が必要という背景があるため、それぞれ米国との距離感、地域枠組みの利用価値が異なります。

ただ、2012年頃から2015年、フィジーが豪NZとのケンカを上手くやりくりし、外交関係の多様化や国際社会との直接的な繋がりを強くすることで島嶼国の自立意識を高めることに成功し、共通の課題を持つようになった太平洋島嶼国が赤道を越えて結束するようになりました。

PIFはというと、事務局の慢性的な財政問題(はっきり言って人件費が高く、出張などの旅費規定も贅沢)、議論やペーパーワーク、形は整うが、その努力に比べて、それぞれの国が得る実質的成果が少ないことなど大きな構造的問題を抱えています。その過程で、メンバーが増えることで加盟料が増えるという意味もあり、本来核実験の問題があるため距離を置かなければならない仏領の加盟を認めました。仏ポリにとっては核賠償問題、ニューカレドニアにとっては先住民の権利や独立問題について地域の支持を得られるという考えがあったものと思いますが、フランスにとっては、豪・NZに続き、旧宗主国として正式に加盟した形になる=すなわち地域の中の情報を直接取れるし、過程の議論にメンバーとして加われるメリットがありました。

以前、フィジーがPIF加盟資格を停止された一方で、島嶼国のみの枠組みとしてPIDFを設立しました。そちらは現在国連の南南協力に関する地域フォーカルポイントのような役割が確立されてきており、開発パートナーと島嶼国の各地の課題を繋ぐプラットフォームとして地道に活動を続けているようです。


これらを踏まえると、今後の可能性が見えてくるかと思います。
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