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フィジー社会経済への新型コロナの影響−UN Pacificレポート [2020年10月06日(Tue)]

来年の太平洋・島サミットを考える上で、短期視点と中長期視点の現地社会経済への影響を踏まえることが重要だと思います。

これまで、ANZ銀行、ADBなどがレポートを出していますが、先月UN Pacific(フィジーにある国連地域事務所=正式名はUN resident coordinator officeかと思います)から出された「Socio-Economic Impact Assessment of COVID-19 in Fiji(フィジーにおける新型コロナウィルス感染症の社会経済影響調査)」(リンク先からレポートのダウンロードができます)が自分の感触に近いので、自分へのメモの意味も込めて、気になるポイントを残します。

まず、ざっくりとフィジーの社会経済指標(コロナ前, 2017)は次のとおりとなります。数値は、ADBのKey Indicator Databaseを参考にしています(https://kidb.adb.org/kidb/)。
・人口約89万人
・名目GDP約5200百万米ドル(約6,000億円)
・一人当たりGDP 5900ドル
・高中所得国
・政府支出約1400百万米ドル(約1,600億円)
・政府支出の対GDP比 26%台
・民間部門:観光、建設業、農業(砂糖含む)、林業、鉱業、製造業(衣料など)、漁業、ミネラルウォーター(産業ではないですが)


今回のUN Pacific レポートで気になった点は次のとおりです。ここでは短期視点のみ書きます。

まず、コロナ前の経済。
・観光部門:GDPの38%に相当
・経済成長率:2018年3.5%(20年で2倍のペース)、2019年1.3%(災害の影響等)
・債務比率:GDP比65.6%(2019)*非常に高いが対外債務は13%と低い。

コロナ後の経済予測
・2020年GDP:21.7%減
・債務比率:GDP比83.4%(2021年7月まで)*極めて高い。

緊急経済対策(外部からの資金調達)数字はGDP比
・フィジー 8.7%
・マーシャル 3.1%
・パラオ 2.4%
・トンガ 5.3%

新型コロナの雇用に関する影響
フィジーでは求人広告数を景気動向を把握する指標の一つとしています。これが、フィジー準備銀行によれば、前年比48.8%減。大きな景気後退といえます。

貧困率(コロナ前)
フィジーは高中所得国であるので、1日あたり7.1フィジードル(約360円)を貧困線としています。

全体 24.2%(2019)(2002が39.8%、2015が28.4%と改善が続いていた)
都市部 16.76%
村落部 31.9%

貧困率(コロナ後)UN Pacificでは4つのシナリオがあり、予測幅は次のとおり。
全体 26.5% 〜 37.5%
都市部 19.3% 〜 28.8%
  村落部 33.8% 〜 46.3%


大昔、2008年頃、UNFPA地域代表がマーシャルを訪問し、マーシャルの貧困率について説明したところ、当時のマーシャル政府は、大統領、閣僚、議員、政府職員に至るまで「マーシャルには貧困は存在しない。彼らは島嶼国のことを何も知らず数字だけ見ている」と憤慨したことを思い出します。

地域コミュニティの繋がりが残っている小島嶼国では、相互扶助の文化があり、収入がなくとも助け合い生活していく文化があります。また、村落部(マーシャルの場合は主に離島部)では、現金収入よりも自家消費の経済活動が主であるので、収入の数値に反映されないというところがあります。

フィジーの場合、インド系、先住民系、都市部、村落部でやや見方が異なってきます。

都市部は観光業が壊滅的であるので民間部門は大きく縮小していると思いますが、政府機関・地域機関・国際機関関連の労働者が多いため、貧困率悪化はある程度抑えられます。

景気のいい時には、村落部から特に先住民系のフィジー人が都市部に出てきますが、景気が悪化するとこれらの人々が生活できなくなります。村落部では相互扶助で生活できますが、都市部ではお金が必要であり、故に犯罪が増え、治安が悪化する可能性があります。このコロナ禍でそれらの人々が村に戻るのか否かが気になるところです。民間部門のインド系住民の生活については、国内消費の下落幅次第だと思います。

村落部では、農業・漁業ができていれば、貧困率が低くともある程度生活は維持できるでしょう。また先住民系の村落では、伝統的な繋がりもあり、景気に関係なく、生活は維持できます。一方、村落部のインド系住民は、そのような確固としたセーフティネットが無いので、厳しくなる方々が増えるかもしれません。

今後、より実態に近い、各国の社会経済指標が出てくるでしょうから、国レベルの関係で言えば、各国の経済構造、政府財政、債務健全性悪化などを踏まえ、状況に合致する協力が求められるのではないかとい思います。
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