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太平洋島嶼国と中国の話など [2020年05月30日(Sat)]

太平洋島嶼国に関して、何か書こうとするときに悩むのは、引用できる文献が少ないということと、文献の元となる事実(もしくは絶対文献にはでないような事実)を、実務者が現場で体験していることにあるのではないかと思います。そのような人は、日本人に何人もいますが、表に出せる立場ではない人が多いと思います。

自分も実務者の一人として、国であったり民間であったり、さまざまな立場で経験してきました。例えば、首脳クラス、閣僚クラス、現地高官、有識者などから実務上さまざまなやり取りをする中で、非常に多くの話を直接受けてきました。しかし、これらの話に客観性を持たせようとしても、幸運な場合には新聞記事として表に似たような話題が残っており、それを引用できますが、ほとんどの話はどこにも出ておらず、自分発の話となってしまいます。非常にまれに、学者や研究者が、自分から聞き取りを行い、少しだけ記事や論文に書いてくれる場合には、それを引ける場合もあります。

自分たち実務に関わっている人間は、現地で今まさに何が起こっているのかを分かっているけれども、一般に共有できるような客観性のある文献を作ることが難しい状況にあります。


太平洋島嶼国における中国の動向については、自分の直接の経験では、2006年頃から目立つようになりました。ただ、日本で中国が太平洋にというと軍事的アプローチが先に立ってしまうのですが、現地の視点ではそのようなことは感じられず、非常に巧みにプレゼンスを上げているという感覚でした。

2000年代半ばから2010年代前半など、むしろ日本などは飢餓にあえぐでもない太平洋島嶼国への支援を手厚くする必要はないのではないかという見解が主流だったのではないかと思います。

例えば、自分がマーシャルにいた2003〜2009年は、如何に日本政府の目をマーシャルに向けさせるかに苦心しました。フィジーにいた2012年末〜2015年のうち、特に最初の2年は、如何にフィジーが地域で重要な位置を占めているのかを日本にいる方々に知ってもらうかに苦心しました。

そのようなときに、自分でも中国カードを使いました。中国がどのように影響力を高めているのかなど。

ただ、特に2013年〜からは、日本から届く中国の影響に対する見立ては、現地の実際の動向を知らないもので、極端というか、「中国が金を見せつけて強引に関係を作っている」とか、軍が前面に出るといったものでした。中国が「悪」という前提でした。

実際には、当時、中国の外交官は非常に丁寧にマメに現地で外交を繰り広げており、直接の経験をふまえれば少なくとも2015年までは、現地のニーズを吸い上げて、開発協力として島嶼国を支援していました。先進国側から見ても、先進国がやりにくい分野への支援だったりするので、島嶼国の発展にプラスになるし、経済面の現地へのメリットもあるので、一つの選択肢となっているので、開発パートナーの一つという位置づけだったと思います。

その先に何があるのかどうかというのは、当時の状況では単なる深読みで、陰謀論になってしまう。それにそのような考え方は島嶼国側とは共有できないし、中国を悪く言おうものなら、日本人は「レーシスト」かとバックラッシュを食らいかねない状況でもありました。現在もそうかもしれません。AIIBとか一帯一路(BRI)は、日本から見るとそうなんですが、現地からみると、援助を引き出せる仕組みという感じでした。債務の罠についても、現地も良く知っているし、決して受け身ではなかったので、上手くコントロールしている状況でした(トンガ除く)。今は、ソロモンとキリバスがちょっとダメですが。。

少なくとも2015年までは、中国は堂々と支援を続けていれば、いつのまにか現地の状況は中国の立場は上がるという大変安定した状況だったと思います。それが、2年くらい前から、何故か強引さが目立ち始め、あちこちで不具合が見えるようになりました。はたから見ると焦る必要はないのに何が起こっているのだと疑問でした。


ちょうど米国でトランプ政権が誕生するといったころから、2016年末頃から、ようやくそのような見立て(巧みに現地でのプレゼンスを高め、既にかなり浸透しているとか)に関心を持つ方々が現れ(日本よりも海外の方の方が関心が高かった)、現地での体験を踏まえた話を共有する機会が何度かできました。

自分が話した内容は全く関係ないのですが、その後、2018年2月に豪州で、クライブ・ハミルトン氏のサイレント・インベージョンという本が発売されました。この本は刺激的過ぎるので、影響されないようにと斜に構えて読んでいましたが、オーストラリアで起こっているという話の中に、自分の太平洋島嶼国での実体験に非常に近い話があり、「だろ?」という気持ちが湧き、妙に納得したことを覚えています。

このように振り返ると、2010年代に、2〜3回の転機となるポイントがあり、現在に繋がっているように思います。

前にも書きましたが、現地で活動していると、国連の枠組みや日本は敗戦国なのだということを意識せずにいられなかったし、ガラガラポンのチャンスはないのかとか、常に頭の片隅にあったものです。


今難しいのは、変化が続いている中で、コロナ後の世界がまだ見えにくいため、今後の太平洋島嶼国との関係について、迂闊に言えないことです。経済面でも、国際的枠組みの面でも、大きく変わるかもしれないし、変わらないかもしれない。

3年前はPALM8に向けて、民間経済(貿易投資観光含む)の活性化にも注目しましたが、それはあくまでも平時の安定した土台があったから言えたものであり、今、何を言っても現地のプライオリティとずれてしまえば、相手にされません。

また、現状、近い変化を見据えながら、前線の当事者の方々は対応しているはずで、外部の人間だとしても、無責任なことを言って迷惑をかけるわけにはいきません。もう少しすると、短中期の方向性が見えてくるでしょうから、そこからですね。
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