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1/26セミナーでの話、地域機関と中国・台湾の話。 [2019年02月15日(Fri)]

当財団ウェブサイトで、1/26に都内で開催された一般財団法人平和・安全保障研究による公開セミナー「太平洋島嶼国の地域秩序の変容と日本の役割」の記事がアップされましたので紹介します。

https://www.spf.org/spfnews/information/20190214.html

上記記事は当財団の研究員として自分の発言にフォーカスが当たっていますが、当日のセミナーでは、同研究所西原正理事長、安藤俊英外務省アジア大洋州局参事官の興味深いご挨拶、太平洋諸島学会会長・大阪学院大学教授の小林泉先生の基調講演がありました。またパネルディスカッション第1部では、モデレーターを務められた近畿大学教授の畝川憲之先生、パネリストとして富山大学教授のサイモン・ピーター・バハウ先生、第2部では、モデレーターの太平洋諸島学会監事・元在ソロモン日本大使の岩撫明先生、桜美林大学教授の加藤朗先生、東海大学講師の黒崎岳大先生も多くの興味深い議論をされていました。これらの点を付け加えさせていただきます。

さて、上記セミナーでも話しましたが、自分がフィジー駐在から帰国し、当財団に入った2015年11月以降、表にはあまり出していませんが、日本でも注目されている中国の太平洋島嶼地域への進出について、その巧みさについて、情報を共有してきました。

個人的な観点になりますが、できるだけ単純化すると、中国の地域進出のターゲットは、1.台湾承認国数(現在6カ国)を削減すること、2.地域機関への影響力を拡大すること、3.地域拠点の確保(現在は経済活動や在留中国人の保護)だと考えられます。

2.の地域機関への影響力拡大については、古くは2000年代前半に、地域観光機関の南太平洋観光機構(SPTO)が、EUの支援カットに伴う財政難に見舞われ、域外国に対して加盟を進めたところ、2002年頃豪州・NZは断り、2004年に中国・台湾は加盟の意思を表明、しかし2005年10月、PNGでのPIF総会前の観光閣僚会合(議長国はPNG)において、ADS(Accredited Destination Status)という中国国内の団体観光客訪問先を左右するリストへの登録などをカードとした中国のロビー活動の結果(当時の新聞記事に基づく情報)、台湾の加盟が却下され、中国のみが域外国として唯一の加盟国となりました。独自にマーケティングできるパラオは、太平洋島嶼国で唯一SPTOに加盟していません。

現在もSPTOの理事会に加盟国中国から代表が入っており、話によると中国へのインバウンドが対象となっているようですが、地域観光政策に正式に関与しています。

例えば、自分がフィジーにいた2015年頃、フィジーの現地紙Fiji SunでSPTOによる中国観光客増大による経済的メリットのみを称賛する記事が出ていました。(下記の記事です。見つけました。)

https://fijisun.com.fj/2015/07/25/analysis-fiji-leads-pacific-with-highest-visitor-arrivals/

当時、自分はパラオ・ルートで、経済メリットは確かにあるが、社会・自然環境に悪影響が出ており、一般市民は困っているものの、パラオ国内有力者は正当な経済活動で利益を得ているため、難しい状況にあるとの情報を得ていました。

そのため、当時自分は日本政府の一等書記官でしたが、SPTOの事務局長(CEO)(当時はフィジーの方)に面会を申し込み、SPTO本部で柔らかく真意を尋ねたことがあります(自分のこの行動には、当時のフィジーと日本の関係はまだ回復途上であり、フィジーはより中国と親しかった、という背景もあります)。その際に、パラオでは、中国人観光客が増加していることで大きな経済成長をもたらしたものの、社会と自然環境にも大きな問題が発生しており、良い面だけに焦点を当てるのはおかしいのではないか、という話もした記憶があります。

このことがあり、自分はSPTOと接触を持ち、当財団に移ってからは、その後任のCEOであるトンガ人のコッカーさんと、意見交換ができる関係を構築しました。自分は決して中国人観光客による経済的メリットを否定しているわけではなく、持続可能な観光の実現と、さまざまな意味でのバランスが大事だと主張しています。


さて、地域機関の本丸である太平洋諸島フォーラム(PIF)についてですが、現在のメンバーは14太平洋島嶼国島嶼国、ニューカレドニア、仏領ポリネシア、豪州、NZの18カ国・地域。2017年にニューカレドニアと仏領ポリネシアは準加盟国から昇格しました。

現在、トケラウ(NZ)が準加盟国、米領サモア、北マリアナ、グアム、東ティモール、ウォリス・フツナ(仏)がオブザーバー国・地域です。

また日本、中国、米国、英国、フランス、カナダ、ドイツ、イタリア、スペイン、EU、トルコ、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、韓国、タイ、キューバは域外対話パートナーとして登録されています。

(ちなみに、ACP(アフリカ・カリブ・パシフィック)、ADB、コモンウェルス事務局、IOM、国連事務局、WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)、世銀がオブザーバー機関として登録されています。)

1980年代には米国に加え、日本や中国などが開発パートナーとしてPIF事務局との対話を求めるようになり、徐々に域外対話国が増え、1989年ツバル・タラワでのPIF総会で、PIF総会後の域外国対話(ポストフォーラム対話ともいう)というPIF加盟国首脳と域外国代表団による正式会合の場が、同じPIF総会の機会に設置されるようになりました。当時は日、米、英、カナダ、EC。その後、次第に域外対話国が増加し、現在は上記の18か国・地域が認められています。

台湾は、現地の主要漁業国としても経済面でも重要でもあり、1991年のPIF総会(ミクロネシア連邦パリキール)で台湾承認国首脳と台湾代表団が対話できる特別な枠組みの検討を開始、1992年ソロモン諸島ホニアラでのPIF総会で、「台湾(ROC)−フォーラム島嶼国(FICs)対話」が設置されました。

以降、台湾代表団は、PIF総会の正式な域外国対話には参加できずとも、PIF総会、域外国対話と同じ機会に、台湾承認国6カ国とは正式会合が可能になっています。

またPIF事務局が開催する開発パートナー会合(事務レベル)では、加盟国、準加盟国、オブザーバー国・地域に加え、上記オブザーバー機関、域外対話パートナー、そして台湾が参加できます。

昨日ここで紹介した中国のロビー活動については、この台湾と承認国の対話、PIF事務局による開発パートナー会合への台湾の参加も認めないものとなります。

域外対話パートナーや台湾は、PIF事務局を通じた地域への支援として、毎年拠出金を提供しています。目的は貿易投資・観光促進に関連するプログラム、女性の地位向上、気候変動、奨学金など多岐にわたりますが、中国は毎年1億〜2億円、台湾は7000万円〜1億5千万円、日本は1,300万円程拠出しています。

中国のロビー活動のカードとしては、中国市場や観光客市場、中国から地域への投資拡大、PIF事務局への拠出金増額などが考えられます。

もう一つ、PIF事務局はあくまでもPIF加盟国首脳の決定事項を実施する立場にあります。またそのPIF首脳会合、閣僚会合での決定は多数決ではなく、コンセンサスによります。しかしながら、PIF枠組みの勢力としては、現在、豪州・NZを除くPIF加盟国・地域は、台湾承認国6に対し、中国と国交のある国・地域10と、2017年以前の6対8から差が広がってしまいました。

台湾は、最近揺れている、ソロモン諸島、キリバス、パラオが台湾から中国にシフトしないようにしつつ、さらに地域機関PIFへの関与(すなわち拠出金支出)を拡大させる必要があるかもしれません。
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