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バヌアツの中国無償資金協力の記事から [2019年02月12日(Tue)]

今日もパラオで会議シリーズ。今回はこの会議のために、50キロを越える荷物を持って来ました。
7割良かったものの、最後に、別件で、相手側の勘違いと現地の関係者間の話し合い不足が原因の問題について、突き上げられた形になりました。
根拠となる数字を一つ一つあげながら、全部で5段階だったかな、ここではこう、ここではこう、ここで数字が違っている、原因はこうじゃない?などと説明し、ある程度理解したようで、一旦持ち帰ってもらいました。彼らの間の問題なのですが、第三者が丁寧に説明しなければならない場面だったのだと思います。ちょっと心が折れそう。

先ほどネットでニュースを検索していたら、バヌアツの話がありました。朝日新聞デジタルの記事です。


中国が無償資金協力で国際会議場を作ってくれたが、電気代も払えない、という内容のようです。

自分は、2013年、14年と現地に入ることが多く、この会議場が計画されていた時期に、事務レベルでその中心にいた人物とも何度か話し合ったことがあります。別件でしたが。

会議場建設予定地は国会脇の草地。ポートビラの中心地にあり、各省庁にも近い。当時から、その必要性、広い草地がなくなること、維持管理コストなどについて国内で真剣な議論があり、2015年ぐらいには止まる話かと思っていましたが、結局作られました。

自分の感覚で、踏み込むのは危険なラインを感じることがあるのですが、これもそのような絡みもあるので、気になるところだけぼんやりと書いてみます。(中国の肩を持つわけではありません)

・バヌアツは「作ってもらった」などと、恵んでもらったような感覚ではない。
ー>「金を出させて、作らせた。」という感じだと思います。
ー>「金を出させるために、何があったのか」というところを調べると良いかもしれません。
ー>表に出ているものとしては、例えば

南シナ海に関する中国とフィリピンの仲裁裁判所の裁定について、バヌアツは中国の立場を明確に支持しました。2016年5月末から検索すると記事が見つかります。

ー>中国を国際社会で支持すれば、無償で施設ができる?などと単純な考えはなかったと思いますが。。果たして。

・バヌアツ内政の問題。自分は当時キルマン首相に会いましたが、1年持たずに不信任案が通り、首相交代というのが2回ほどありました。(キルマン〜カロシル〜ナトゥマン)
   バヌアツでは政党政治が成熟しておらず、各出身島を中心に据えるなどするミニ政党の集まりだったりします。そのため離合集散が激しく、内政が不安定でした。
   キルマン内閣の時にも、ある閣僚には危険な噂があったし、カロシル首相は大規模な国会議員の贈収賄事件に関与したことが明らかとなり、多くの議員とともに、有罪判決を受け、刑務所に入りました。
   2016年から現政権。

外務省の基礎データが詳しいです。


・バヌアツでは、この会議場だけでなく、首相府、スポーツ複合施設など、全体で40億円を超える無償資金協力が中国から、この短期間に行われています。
(*もともとこのようなハコモノは、先進国の援助ではほとんど作られることはありません。会議場については台湾も承認国各国に作っていたりします。)
ー>なぜローンではないのか。ここも深掘りできる方がいれば深掘りしていただくと、いわゆる「Debt Trap(債務の罠)」の先にある話のようなものが見つかるかもしれません。
ー>深掘りしなくとも、お互いに直接関連していないような、民間を含む事象を、テーブルに並べて見れば、何かが見えてくるかもしれません。


キルマン首相時代に、何人もの閣僚に会い、確か教育大臣だったと思いますが、今のサルワイ首相にも会い、話を聞いたり、当時の自分の立場から、自分の当時のボスの下で、外交関連の話もしていたかと思います。

その時の印象からも、彼らは決してナイーブではないし、国を背負っている方々。その中に、危険な匂いがする閣僚がいたし、まあそんな感じです。

最後に、自分が感じたバヌアツに関する驚きは、2017年までの感触ですが、住民と国の為政者の間に大きなギャップがあるということでした。なんというか、例えば酋長だとか国のトップの人がどこかと話を決めると、急に住民が別の土地に移転したり、上から受け入れさせる傾向があることでした。
  多くの太平洋島嶼国では、ボトムアップだとか包摂性が重視され、住民も問題があれば声を上げるものだと思っていましたが、バヌアツでは住民への情報が限られているのか、自分の生活と国は直接繋がらないのか、そのような空気を感じていました。今は分かりません。

先日のルーガンビルでの中国の基地云々という話がありましたが、バヌアツの国内がそのような感じで、トップがパッと住民に計らずに決めてしまう可能性が十分にあり、しかし主権国家の内政に干渉するわけにもいかない時、どうすればいいか。

どこかが外側で危険性を大きく叫ぶ一方で、地域として、透明性などのグッドガバナンスのキャンペーン的な流れを作り、主権国家の誇りを試すというのも一つの方法ではないかと思います。理想主義すぎるかもしれませんが。
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