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ようこそ信州まちづくり研究会へ
私たちは、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンに行きエコヴィレッジとその要素であるコウハウジング、そして循環形社会のモデルを勉強しました。アメリカ、カナダでは,”サステイナブル・コミュニティ”の理念で創られた町と住宅地とデュレ夫妻が北欧から学び帰った”コウハウジング”を視察しました。そして今里山の資源活用研究と、「田舎暮らしコミュニティ」創りの推進を始めました。
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「スマート・テロワール」の根幹[2015年10月24日(Sat)]

これは「スマート・テロワール」(農村消滅論からの大転換)の著者松尾雅彦氏がまとめた概念です。

365日の需要に対応するスマート・テロワールの根幹

穀物生産と畜産が連携すると通年の仕事が確保できるようになる!

農村の貧しさは労働機会(時間)の短さに原因
果菜類の6次産業化などでは操業期間は2か月程度右矢印1労働者は期間工
食産業は住民がいる限り永続する産業右矢印1米国に譲ってなるものか!
製造業が開発した品質管理(TQC)を農産業に導入する
忙しくなって、品質向上を求める時「TQCは伝家の宝刀」となる
高い稼働率・高品質=ローコストが常識になる右矢印1農業が革新される
行政ニーズは、1/3程度削減される
住民の貧しさやジレンマが行政ニーズを倍加させる右矢印1豊かさの報酬は節税にイタリアの美しい村に老人問題はない!これ、本当!スマート・テロワールは農村限定 所得倍増論 !
「長野県人口定着・確かな暮らし実現総合戦略」知事への提言[2015年10月24日(Sat)]

この文章は、長野県が募集している「長野県人口定着・確かな暮らし実現総合戦略」への提言書です。県がどのように対応して下さるかは未定です。
但し9/29日号に掲載しました農村自給圏構想(スマート・テロワール)に対しては、既に担当の県職を任命して下さいました。「長野県人口定着・確かな暮らし実現総合戦略」と9/29日号のURLを添付致します。

文責 安江高亮




平成27年10月15日


 長野県知事 阿部守一様

特定非営利活動法人信州まちづくり研究会
理事長 齋藤兵治



「長野県人口定着・確かな暮らし実現総合戦略」のW基本目標のB「地域の資源・人材を活かした産業構造を構築することにより仕事と収入を確保します。」について施策を提言致します。

地域の資源の大部分を占めるのが農地と山林です。それしか無いと言ってもいいと思います。その貴重な資源の現状は、水田の約40%は余り、畑地は放棄地が拡大を続け、森林は管理が行き届かず荒廃しており活用されているとは言えません。
また、人材の多くは、生き甲斐を見出せるような産業と職場が少ないため、遠隔地に職を求め不本意な生活を強いられ、地域の将来に希望を見いだせないでいるのが現状です。

これらの問題を解決し、活かされていない地域の資源と人材を活かすにはどうしたら良いのか、が課題だと思います。私達はこの課題を解く仮説が書かれた2つの著書を知りました。一つは昨秋発刊された「スマート・テロワール」(松尾雅彦著、註1)で、他の一つはその30年前に発行された「発展する地域 衰退する地域」(ジェイン・ジェイコブズ著:註2)です。

長野県が人口減少という「衰退する社会」から脱却するためには、女性の職場である食品加工場を振興することなどが有効であり、その実現の仮説を説くのが「スマート・テロワール」です。食品加工場は女性の雇用を生み付加価値を増やします。長野県は眠っている地域資源を呼び起こし農産加工業を興し、地域社会の期待に応えることなくしては、「発展する地域」になることは出来ないと考えます。

註1 スマート・テロワールとは:スマート:賢い、利口な、ムダのない、洗練されたという意味。テロワールとはその地域独自の風土・品種・栽培法などが育む「特徴ある地域」を意味しその土地の特徴を生かした賢い地域創生を意味する。
註2 置換がキーワード: 自給圏外から購入している物を自給圏内の物に置換えること。

この考え方に基づき、5つの施策を提言致します。

(1) 農業関係の大学または試験場で耕畜連携・農工連携の「実証展示圃」を開設すること

これは農産業関係者に、農産業がやりようによっては、発展可能で有望な産業であることを示すためです。新しいやり方は知識と理論だけでは誰も納得できないからです。米国はTPPを推進して日本の農産物市場を狙っていますが、米国の農業が強くなったのは、地域の大学が先導して農産業プラットフォーム(後述)をつくり「耕畜連携」と「農工連携」の実例を導き出して、地域の農家と商工業者にモデルを開発して提示したからです。「スマート・テロワール」の著者は、米国の2つの州立大学で、馬鈴薯に関する農工連携と耕畜連携の実務を習得し、米国が循環型の社会システムに辿り着いていることを知りました。農工連携は農家と工場間の契約栽培、つまり「互酬の経済」であり、耕畜連携は、畑作物の規格外品や加工残渣が無料で畜産に供給され、見返りに堆肥が農家に循環する。これも「互酬の経済」であることを知りました。

現状の日本の農家は、コメと果菜類の栽培が主で、それは市場経由で個人戦です。しかし加工工場への納品では、規格の統一が必要となり栽培法が標準化されることによって、多くの人が容易に団体戦に参加できます。種子・栽培法・品質規格の統一のために地域で標準化することが「実証展示圃」の目的の一つです。

大企業は、それを自前でします。農家と地域の加工食品のチャレンジャーのために、大学か試験場がその役割を果たさなければなりません。これによって農工・耕畜連携の「互酬の経済」が構築されます。アイダホ州でできていることが長野県でできない筈はありません。「実証展示圃」は、難しそうな構造に見えますが、欧米の農産業には普通の仕組みで、9世紀に3圃式農法(冬穀、夏穀、牧草地のローテーション農法)が標準化して以来の社会システムです。

日本は水田稲作文化であり、明治初年まで畜産が無かったため、豊かになって欧風の食文化が拡大しても供給力がないので、原料は輸入に依存し自給率の急降下をもたらしました。循環型農産業システムの構築がこれを解決します。しかし、社会システムですから、初めは大学か試験場でシステムを実証し紹介しなければ、誰もできないのです。

大学や農業試験場が地域の商工業者の協力を得て「実証展示圃」を開設して、農工連携と耕畜連携を実証して頂くことを提言致します。

[行うべきこと]

(ア)実証すべき仮説
  1 高品質原料生産=高収量の実現
     輪作体系の確立と土壌改良

  2 高品質原料
     加工食品の高品質=ローコスト→地消地産につながる

  3 契約栽培で非市場経済
     過剰は畜産飼料→飼料原価の低減→堆肥で還元

  4 作物の余剰・飼料作物・食品工場の残渣
     畜産飼料→飼料原価の低減→地消地産 


(イ)非市場経済:契約栽培(互酬)の実務

(ウ)検証プロジェクト・チームの編成
  1 農家:畑作地帯の耕地…1作あたり10a〜30a☓4枚
  2 作物:大豆・子実トウモロコシ
   (畜肉手作り加工品向け)馬鈴薯・そば・小麦
  3 工場:大豆製品(味噌・豆腐)じゃがいも加工場
   (実証試験時には青果か飼料)製粉場
  4 畜産:豚・羊(牛はお勧めしない)と畜産加工場
  5 食品小売店・外食サービス店と消費者チーム

(エ)実証事項
  1 各作物の品種選定:
    加工品につて消費者の選好の判断品種選択の優先順位
    消費者の選好>加工特性>栽培特性

  2 各作物の品質規格と標準的な反収量の実現
    輪作が1巡する5年目までに大豆
    350s/反 じゃがいも3t トウモロコシ1t 小麦:600s

  3 「互酬」の交換システムによる価格設定
    作物の規格と契約量・価格の体系農家の
    収入:大豆・馬鈴薯は標準収量で10万円/反±品質報奨 

  4 加工場の成果
    品質・量/歩留…最適経営規模
    新規投資をしないで、既存の施設で生産し供給すること

  5 輪作における土壌の変化
    土壌分析(物理的特性 化学的特性 生物的特性)
    土壌の団粒化 

  6 畜産飼料の調達
    子実トウモロコシ・作物の規格外品・加工場の残滓子実
    トウモロコシ栽培:畑作農家と畜産農家の「手間の交換」
   (飼料原価ゼロを目ざす。空いてる手間をいかせば原価はゼロ)

  7 加工品の市場価格
    手作りハム・ソーセージ・ベーコンの価格は
    ナショナルブランドと等価。
    その他の地元産売り場はナショナルブランド対比30%オフ

  8 穀物生産と農工・耕畜連携がもたらす雇用と付加価値の
    増大に及ぼす影響
   (穀物は保存が効くので加工場の通年雇用が可能
 耕畜連携により畜産品のコストが下がる)

  9 その他の気づき事項

(オ)インプロビゼーション
   高品質原料を得られれば、住民が臨機応変に創意を働かせて
   共生的な関係を創り出してゆき、地域は活性化する
  (発展する地域への条件)



(2) 大学や農業試験場が中心となり、農産業プラットフォームをつくること


上記の「実証展示圃」を推進する為には、農業生産、加工及び流通に係る細切れでない一連のノウハウと研究開発が必要です。そのために大学や農業試験場が中心となり農業者、農業研究者、食品加工・流通業者も加わり、農産業に関する地域の問題解決・研究を行う必要があります。それが農産業プラットフォームです。

聞くところによると農業改良助長法によって、大学の農業研究と農業政策の間には交流を阻む壁があるようですが、県政の主導で、縦割りの弊害を排して、農産業関係者が自由に出入りできるプラットフォームを形成することを提言致します。


(3) 農地の適正なゾーニングを行い、良好な畑地・牧草地に転換すること

長野県の総耕地面積は111,000haに対し、総産出額は2,268億円。内水田の耕地面積は55,000haで、産出額は490億円。内畑地は56,000haで1,415億円です(農林水産省のデータより)。課題は約20,000ha以上あると推測される過剰な水田です。これを県民のために活用し、競争力をつくって大都市部の需要に供することができればその農産物出荷額は約3,000億円になろうと想定します。この数値は、カルビー株式会社の契約栽培面積7,000haから1,200億円のポテトスナックを販売している数値から類推したものです。この過剰・余剰の農地の活用方法を提言致します。

効率の良い農業生産と4年輪作を行うためには、耕地の整備が不可欠です。現在、中山間の狭小管理費高の田圃は採算に合わないとして、借り手もなくて放棄地が増えています。そのような場所を中心に余剰田圃をゾーニングして大きな畑に造り変えます。更に、田圃と里山の間には、ほとんどが放棄さている細切れの畑地帯がありますが、これも整備して大きな畑と牧草地に転換します。これらの畑で、「実証展示圃」で実証された農工連携、耕畜連携に則り、適切な作物を4年輪作で作ります。余剰の田圃は畑に、余剰な畑は牧草地に転換して活用することを提言致します。

圃場整備が済んでいる場所の転換工事は、一番金のかかる道路と水路と確定測量が済んでいるので、かつての県営圃場整備事業に比べれば、工事費は格段に安価になると思います。農産業構造転換の基盤を造る第二次県営圃場整備事業を行うことを提言致します。

参考事例:5年前まで国家公務員だった青年が、妻と小学生の子供と共に佐久市の高原野菜地域に移住し、2年間有機栽培農業を研修してから独立し、当初良い畑がなくて苦労していましたが、今では自分達2人を含めて通年雇用4人、臨時雇用6名という体制で営農しており、最近お聞きすると「経営計画通り進んでいます」と自信を持って話してくれました。「ゾーニングして1枚で2〜3haある畑地を整備したら使いますか?仲間は集まりますか?」と聞きましたら、「もちろんです、喜んで。地代も払います。仲間も集まると思います」との返事でした。昔からの兼業農家は「農業はダメ」とすっかり諦めていますが、彼らはただの農家であり農業を知らないからです。


(4) 「スマート・テロワール」構想と「置換」の考え方を広める活動を支援すること


当NPOは、「東信スマート・テロワール研究会」(仮称)という農村自給圏構想の考え方を住民の皆さんに知ってもらい、実現に向かっての活動を推進するための組織を立ち上げようと計画しております。、東信地域各地で説明会を繰り返し、賛同者を募り、志ある人々の組織とします。会員は各地域のリーダーになり、実行に当ることを目指しています。

ここで提言している諸施策は、実行に当るのはひとり一人の住民であり、県民です。ひとり一人の住民の理解と賛同なしにはことは進みません。一方では、「実証展示圃」で目にものを見せながら、東信スマート・テロワール研究会では、説明と宣伝と参加を呼びかけます。

最終的に目指すのは東信地区を対象とした自給圏形成ですから、一市町村だけでは完結しません。40万人を越える二つの広域連合(上小、佐久)4市12町村の基礎自治体が連携して、住民の主導で推進しなければなりませんので、このような活動は重要だと考えます。

県としては、東信地区をモデルにして、自給圏構築構想を全県に広めて頂ければと思います。そこで、当NPOに限らず、このような活動を行う団体を支援して頂くことを提言致します。支援の内容は、長野県との共催、或いは後援として頂くことや、県の諸広報誌でもアピールして頂くことが考えられます。


(5)県民の食の消費実態調査をすること

これまで提言してきたことの目的は、農村自給圏(スマート・テロワール)構想を実現するためです。具体的には、食とエネルギーの自給率を上げること。自給率を上げるということは、増え続けてきた食糧とエネルギーの輸入(移入を含む:註3)を地域内自己生産・加工品で「置換」することです。別な表現をすれば、自給圏の貿易赤字を解消することです。結果として、基本目標のB「地域の資源・人材を活かした産業構造を構築することにより、仕事と収入を確保します。」が、農業分野では達成されることになります。

このための最初の仕事は現状把握、つまり置換すべき品目と数値を明らかにすることです。主要な素材別(米・小麦・畜肉・油脂・野菜・果実・大豆・そばなど)の輸入量と輸出(移出を含む)量を掴み、その差額を目標値とします。

下記データをモデルにした長野県版(広域版)を作成することを提言致します。

 農林水産省資料:「平成25年度食料自給率をめぐる事情P2」
 
註3 移入、移出:国内で物を移動すること


以上


お問い合せは:
NPO法人信州まちづくり研究会 副理事長・事務局 安江高亮
       〒384-2305 長野県北佐久郡立科町芦田2076-1
0267-56-1033  090-3148-0217
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