第205回労働政策審議会労働条件分科会(資料) [2025年12月30日(Tue)]
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第205回労働政策審議会労働条件分科会(資料)(令和7年11月18日)
議題 (1)労働基準関係法制について https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65974.html ◎資料No.2-1「労働局あっせんにおける解雇型雇用終了事案の分析」(概要) ○労働局あっせんにおける解雇型雇用終了事案の分析の目的・概要 1:目的→裁判に至っていない解雇、雇止め等の紛争について、実態(請求事項、解決内容等)を明らかにするため。 2:概要→・調査主体:独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)、 ・調査対象:2023年度に4労働局で処理が完結した個別労働紛争解決制度のあっせん事案のうち、解雇型雇用終 了事案※に該当する485件 ※「解雇型雇用終了事案」とは、労働局におけるあっせんの利用事案として、労働者が解雇である旨を主張した事案であり、普通解雇、懲戒解雇、整理解雇、雇止め、自然退職(休職期間満了)、退職勧奨、契約解除(個人請負)、シフトカット、内定取消、定年、その他が含まれる。 ・調査手法:JILPTの調査員が調査対象事案に係る記録を閲覧し、調査項目に沿って必要な情報を入力。その後、 集計したデータを分析。 分析にあたっては、過去のあっせん(2008年度、2012年度)、労働審判・裁判上の和解(2013年、 2020年/2021年)に係る調査結果とも比較。↓ 1.申請人→あっせんは労働者側申請が99.6%となっており、圧倒的多数であり、この傾向は過去のあっせんの調査結果と変わらない。 2.終了区分→ 2023年度のあっせんの終了区分のうち、合意成立は37.1%であり、被申請人の不参加が42.7%。合意成立の割合は、2012年度と比較してやや減少しているが、2008年度からみると大きな傾向としてその割合は上昇。被申請人の不参加の割合は、40%台で推移している。 3.制度利用期間→あっせんの合意成立事案における制度利用期間は、2008年度、2012年度は約6割が1-2月未満だったが、2023年度は約半分が2-3月未満となり、やや 長期化の傾向が窺える。ただし、3-6月未満が5割弱となっている労働審判や、12-18月未満が約3割と最多になっている裁判上の和解と比較すると、 依然として極めて短い。 中央値:あっせん(2008)1.41月、あっせん(2012)1.38月、あっせん(2023)2.05月、 労働審判3.12月、裁判上の和解12.63月。 ※制度利用期間:あっせん申請をした日からあっせんが合意成立により終了した日までの期間 4.性別→ 労働者の性別は、調査の年が後になるにつれて、男性の比率が下がり、女性の比率が上がってきており、2023年度には男女比率は逆転して、男性は 45.4%、女性は54.6%と女性の方が多くなった。一方で、労働審判、裁判上の和解では、男性の割合が高い。 5.雇用形態→あっせんにおける労働者の雇用形態は、調査の年が後になるにつれて、正社員の比率が顕著に下がり、直用非正規雇用労働者の比率が顕著に上昇して おり、2023年度には正社員が3分の1、非正規が3分の2と、逆転している。また、労働審判、裁判上の和解では、4分の3が正社員となっており、 制度間の利用者層の違いが表れている。 6.勤続期間→・あっせんにおける労働者の勤続期間は、2012年度には短期勤務者から長期勤務者までかなりまんべんなく分布していたが、2023年度は1年未満が3 分の2近くに及んでおり、短期勤続化の傾向が明確になっている。 ・ 勤続期間の中央値で見ると、全ての制度にわたって、2010年代に労働者の勤続期間が半減している。 7.賃金月額→・あっせんにおける労働者の賃金月額は、2012年度には10-20万円未満が約4割と最多だったが、2023年度には20ー30万円未満が約4割と最多になり、 全体として賃金月額が高い方にシフトしている。また、あっせんよりも労働審判、さらに裁判上の和解の方がやや高い方に分布している。 ・賃金月額の中央値で見ると、全ての制度にわたって、賃金月額は上昇傾向にある。 8.企業規模(従業員数)→・あっせんの企業規模は、いずれの調査においても最多は10-50人未満、2008年度には約4割だったのが、2023年度には約2割へと下がっている。逆に100人-300人未満は約1割から約2割へ、1000人以上は約4%から約17%へ増加しており、大規模化の傾向がみられる。 ・ 労働審判も10-50人未満が約3割で最多だが、中央値ではあっせんよりも小規模である。裁判上の和解では、10-50人未満と100-300人未満が約4分の 1でほぼ並んでおり、やや大規模である。 9.請求事項→労働者側申請事案について、請求事項は、金銭のみを請求しているものが83.0%となっており、最も多い。 10.請求金額→あっせんの請求金額は、2008年度及び2012年度には50万円未満が3割台で最多となっていたが、2023年度には50-100万円未満が約4分の1で最多。また、労働審判では、100万-200万円未満と300万-500万円未満が並んで約2割となっており、裁判上の和解では500-1000万未満が約3割 で最多となっている。中央値でみると、労働審判と裁判上の和解が、あっせんよりも遙かに高くなっている。 11.解決内容→あっせんにおける解決内容が復職であるものはほとんどなく、復職は2008年度には1.5%、2012年度には0.6%、2023年度には1.1%である。復職という解決が極めて少ないのは労働審判(0.8%)や裁判上の和解(1.1%)においてもほぼ同様である。 12.解決金額→あっせんにおける解決金額は、いずれの調査においても10-20万円未満が20%台で最多となっているが、それに次ぐのは2008年度には5-10万円未満である一方、2023年度では20-30万円未満とより高い方にシフトしている。ただし、100-200万円未満が最多となっている労働審判や、100-200万円未満と 300-500万円未満が最多で並んでいる裁判上の和解と比べると著しい低水準にある。 12-2.解決金額と請求金額の対応状況(あっせん)→あっせんにおける解決金額は、いずれの調査においても50万円未満が最多となっているが、2023年度には、2008年度及び2012年度に比べて請求金額 が上がっている中で、50万円以上の解決金額が増えている。あっせん、労働審判、裁判上の和解と段階が進むにつれて、請求金額が高くなり、それに 応じて解決金額も高い水準となっている。 12-2.解決金額と請求金額の対応状況(労働審判・裁判上の和解) 参照。 13.月収表示の解決金額→あっせんにおける月収表示の解決金額は、いずれの調査においても最多層は1月分未満で、それに次ぐのは1-2月分未満であり、5月分未満までで9割 を超え、それ以上の月収表示の解決金額は極めて少ない。これに対し、1-2月分未満より高い層に分布が広がっている労働審判やさらに一層高い層に分布が広がっている裁判上の和解においては、月収表示の解決金額はかなり高い水準にある。 14.勤続期間当たりの月収表示の解決金額→・あっせんにおける勤続期間当たりの月収表示の解決金額は、2012年度には0.1月分未満が51.4%と過半数であったが、2023年度には42.9%に減っている。 ・中央値でみると、あっせんは2012年度に比べて2023年度に上昇しているが、労働審判や裁判上の和解よりは低い水準となっている。 15.月収表示の解決金額とのクロス集計@➁→(1)〜(6) 参照。 ◎資料No.2-2「解雇等に関する労働者意識調査」(概要) ○労働者アンケート調査の目的・概要 1:目的 →(1)解雇等に係る紛争解決制度(訴訟、労働審判、労働局のあっせん等)の利用実態を通じて、現行制度に対する 労働者の評価やニーズを明らかにすること (2)解雇等をめぐる紛争解決やその予防のための施策(解雇無効時の金銭救済制度を含む)について、労働者の意 見を確認すること 2:概要 →(1)アンケートの手法等(調査主体:独立行政法人労働者政策研究・研修機構(JILPT))→・モニター業者によるWEBアンケートにより実施。 ・調査対象者は、@解雇等(解雇又は雇止め)経験者1万人及びA解雇等未経験者1万人(勧奨退職の経験者を含 む)の計2万人。 (2)調査項目→共通項目⇒・性別、年齢、雇用形態、業種、職種、企業規模、労働組合加入の有無、契約期間、役職、賃金形態・月額、勤務 時間、勤続年数 ・解雇等をめぐる紛争解決やその予防のための施策(解雇無効時の金銭救済制度を含む)についての意見など。 ・解雇等の経験がある者⇒・解雇等の理由、解雇等の際の復職又は更新希望の有無、紛争解決制度の利用の有無。 ・上記のうち、紛争解決制度を利用した者⇒ 訴訟、労働審判、あっせん等について当該制度を利用した理由、利用した結果、解決しなかった場合はその理由、利用した満足度、訴訟の場合は和解できなかった理由や解雇無効判決を得たが復職できなかった(又は復職後に退職した)理由 など。 1.基本属性→6項目 参照。 2.解雇等の状況(解雇等経験者)→3項目 参照。 3.紛争解決制度の利用状況→3項目 参照。 4.紛争解決制度(労働審判・訴訟を除く。)の利用状況@➁→5項目 参照。 5.労働審判の利用状況@➁→4項目 参照。 6.訴訟の利用状況→3項目 参照。 7.職場復帰後の継続就労のために重要なこと→1項目 参照。 8.紛争解決制度の利用状況 参照。 9.解雇等をめぐる紛争解決やその予防のために必要と考える方策(複数回答)@➁→3項目 参照。 10.金銭救済制度の創設の要否等について→本調査では、「解雇等をめぐる紛争解決やその予防のために必要と考える施策」として、複数の選択肢を設けた上で⇒・解雇の金銭救済制度を選択した者には、選択した理由(複数回答)を聞き、⇒ ・解雇の金銭救済制度を選択しなかった者には、当該制度の必要性について、「どちらともいえない」「あまり必要ではない」「必要ではない」のいずれかを選択して もらった上で、選択した理由(複数回答)を聞いている。 ◎資料No.2-3「諸外国における解雇の金銭救済制度に関する有識者に対する ヒアリング調査」(概要) ○諸外国における解雇の金銭救済制度に関する有識者に対するヒアリング調査の目的・概要 1:目的→ 諸外国における解雇の金銭救済制度について、各国の制度の詳細や制度導入に伴う社会的影響等を明らかにする。 2:概要→ ・調査主体:独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT) ・調査対象国 :解雇の金銭救済制度を導入しているドイツ、フランス、イギリス 調査手法 :調査対象国における有識者(労使団体、裁判官、弁護士、政府関係者等)に対して以下の事項に関するヒアリング及び文献調査を実施。 ・金銭救済制度(金額算定のルールを含む。)の制定経緯の詳細⇒・解雇訴訟提起の状況(労使当事者のニーズを含む。) ・解雇規制や紛争解決制度の利用状況 ・解雇規制や紛争解決制度の運用状況・評価 ・解雇規制や紛争解決制度が解雇紛争(労使の行動を含む。)に与えている影響 等 ○ドイツにおける解雇の金銭救済制度等に係るヒアリング結果について ◆【特色】→・ドイツにおいては、大多数が復職ではなく、金銭による解決がなされてい る。 ・他方、従来から解雇紛争の大多数は、裁判上の和解において、金銭解決を行うことにより終了している。 ・金銭解決に当たっては、勤続年数×月収×0.5という算定式を基準として用いることが、和解等における実務上の慣行として確立したものと なっている。 ◆【金銭救済制度(金額算定のルールを含む。)の制定経緯の詳細】→・裁判上の和解において解雇訴訟につき金銭解決を行う場合には、実務上、勤続年数×月収×0.5という算定式が基準として用いられている。かかる算定式の出自は必ずしも明らかではないが、0.5という係数については、和解手続の開始時点では、裁判官にとって、当該解雇の 有効性に関する心証が50:50であることに由来している。なお、この算定式は、2003年に解雇制限法1a条が立法化された際には、同条 に基づく補償金の算定式としても用いられた。 ◆【解雇訴訟提起の状況(労使当事者のニーズを含む。)】ドイツの解雇訴訟の大多数は金銭解決を内容とする和解により終了。但し、ごく稀にではあるが、復職を内容とする和解が行われることもある。 (※)2019年は178,797件、2021年は119,364件が係属している。 ◆【解雇規制や紛争解決制度の利用状況】 ・前記の通り、ドイツの解雇訴訟は従来から、その大多数が裁判上の和解において、金銭解決を行うことで終了している。 ・解消判決制度については、同制度に基づく金銭解決が認められるためには、解雇が社会的に不当であることに加え、当事者間の信頼関係 が崩壊していること(解消事由)の主張立証が必要とされる等、要件が厳格であるため、実務上はほとんど利用されていない。 ・解雇制限法1a条については、ドイツの使用者は同条を利用することは解雇の有効性に関する自身の立場の弱さを露呈することになると考 えること、また使用者が同条を利用しようとしても、同条が定める補償金額は裁判上の和解において用いられる基準算定式と同一であるため、労働者としてはより高額の補償金を得るために裁判上の和解において金銭解決を行おうと行動すること等から、ドイツでは1a条は実務 上はほとんど利用されていない。 ◆【解雇規制や紛争解決制度の運用状況・評価】→ ・裁判上の和解においては、前記の通り、和解手続の開始時点では裁判官にとって当該解雇の有効性に関する心証が50:50であることから、 0.5という係数が用いられているため、まずは個別事案における当該解雇の有効性に関する心証により、かかる係数が変動しうる。また、地 域や使用者の支払能力、紛争期間の長さ(=使用者が敗訴した場合におけるバックペイのリスク)等も、0.5という係数の変動要因となりうる。 ・解消判決制度のもとで金銭解決が行われることは、前記のとおり稀ではあるが、その場合の補償金は原則(※1)として月収の12ヶ月を上 限として、裁判官の裁量により算定されており、実務上勤続年数×月収×0.5という裁判上の和解における算定式がベースとされている。この場合には、当該解雇の社会的不当性、解消事由の内容、当該労働者の年齢、月収、勤続年数、家族関係、労働市場の状況等(※ 2)、幅広い事情が考慮されうる。なお、同制度の政策的評価については、信頼関係の崩壊という例外的局面において金銭解決を可能と する点で肯定的に評価する見解がある一方、申立権者を労働者側に限定するとともに、補償金額の上限を廃止するよう改正すべきとの見解もある。 (※1)例外として、50歳以上かつ勤続15年以上の場合は月収の15ヶ月、55歳以上かつ勤続20年以上の場合は月収の18ヶ月が上限。 (※2)年金への期待度、予想される失業期間、新たな職場における不都合等も含む。 ・解雇制限法1a条については、前記の通り、実務上はほとんど用いられておらず、同条が意図した政策目的(解雇コストの明確化、労働裁 判所の負担軽減等)は、実現されていない。そのため、同条の政策的評価としては、否定的な見解が多いが、裁判上の和解において実務 上活用されている算定式を法律に位置づけた点で有意義であると評価する見解もある。 ◆【解雇規制や紛争解決制度が解雇紛争(労使の行動を含む。)に与えている影響】 2003年に立法化された解雇制限法1a条は、前記の通り、解雇コストを予測可能なものとすることにより、使用者が経営を理由とする解雇を行いやすくすることを目的の一つとしていたが、実務上はほとんど用いられていない。また、ドイツでは、労使当事者が裁判外において合意解約により労働契約を終了させることも従来から可能であるが、1a条の立法化は、このような合意解約をめぐる労使の行動に、何ら影響を与えていない。 ○(参考)ドイツにおける解雇規制や紛争解決制度について→・ 違法・不当な解雇に対する救済は法律上、解雇を無効とし、労働契約関係の存続を強制することが原則になっているが、金銭により解決する制度として、解消判決制度(解雇制限法9条)や経営を理由とする解雇に係る補償金(同法1a条)が規定されている。なお、実際には解雇紛争の大多数が裁判上の和解により、金銭解決を行うことで終了している。 ○フランスにおける解雇の金銭救済制度等に係るヒアリング結果について ◆【特色】→・金銭補償が一般化。・具体的な算定式は法律上も実務上も存在しない。その水準については 勤続年数に応じた上限・下限基準を示した一覧表により判断される。 ・労働者と使用者が合意により労働契約を終了させる法定合意解約制度が導入。 ・不当解雇補償金及びこれに相応する和解金の支払いについては、一覧表の範囲内であれば、使用者側の社会保障負担及び労働者側の税負担が免除されるため、労働者・使用者の双方に一覧表の範囲内で和解するメリットが存在する。 ◆【金銭救済制度(金額算定のルールを含む。)の制定経緯の詳細】→ ・労働法典には復職(労使双 方の同意が必要)または復職が実現しない場合には不当解雇補償金の支払いが規定されており、不当解雇補償金の額については、賃金6ヶ月分以上という下限基準が設けられていた(上限基準なし)。 ・不当解雇補償金は、損害賠償的性格や不当解雇に対する抑止的性格を併せ持つものとして理解されている。 ・2017年改正では、労働者の勤続年数に応じて、不当解雇補償金の上限および下限基準(一覧表)が設定された。なお、従業員11人未満の小規模企業については異なる下限基準が適用される。 ・差別的解雇など(※)法律で禁止された解雇については、解雇の無効・復職および解雇期間中の未払い賃金の支払い、または、労働者 が復職を望まない場合には賃金6ヶ月分以上の補償金の支払いを求めることができる(下限基準のみで上限基準なし)。 (※)行政の許可なくなされた被保護労働者(従業員代表、組合代表等)に対する解雇等も含まれる。 ・不当解雇補償金とは別に、労働者は、解雇の過程における使用者の態様の悪質さ等を理由に、民法典上の民事責任を根拠に、損害賠 償を請求することも可能である。 ・解雇規制とは別に、労働法典は、労働者と使用者が合意により労働契約を終了させる方法として法定合意解約について規定している。同制度は、労使当事者の要望により2008年に導入された仕組みであり、法所定の手続き(事前の話合い、書面の作成、行政による認可)と解雇補償金と同額以上の補償金の支払いが義務付けられている。 ◆【解雇訴訟提起の状況(労使当事者のニーズを含む。)】→・解雇訴訟は、労働契約から生じる個別紛争を管轄する労働裁判所が管轄し、労働裁判所に申し立てられる事件の9割近くが労働契約の終了に関する事案であり、その大部分が労働者本人に起因する解雇(人的解雇)に関する事案。 ・労働裁判所における訴訟期間の長期化問題を背景に、近年は、労働裁判所への申立て手続きの複雑化ないし厳格化を内容とする法 改正が行われ、訴訟提起(特に本人訴訟)のハードルが上がった。 ・労働裁判所への申立て件数は年間10.7万件(2023)であり、 2015年比で約40%減少している。その要因ないし背景には、@上記 の労働裁判所改革による手続きの厳格化A法定合意解約の成功、B不当解雇補償金に関する一覧表の導入などが指摘される。 ◆【解雇規制や紛争解決制度の利用状況】→ ・フランスでは、不当解雇の救済として復職が選択されることは基本的になく、不当解雇補償金の支払いが一般的である。 ・解雇通知以後解雇訴訟提起までの間および訴訟提起以降も、当事者間で和解交渉は一般に行われている。 ・労働裁判所は調停前置主義を採用しているが、仮処分事件を除く本案のうち調停部で調停成立に至った割合は約19%(2024)で ある。 ・法定合意解約による労働契約の終了件数は、年間約51.4万件(2024)であり、近年は年間50万件前後を推移している。 ◆【解雇規制や紛争解決制度の運用状況・評価】→・不当解雇補償金の具体的な算定式は法律上も実務上も存在しない。不当解雇補償金の算定にあたっては、さまざまなものが考慮される。・不当解雇補償金の上限基準が導入された結果、実務では、一覧表ないし上限基準の適用を回避する動き(差別やハラスメントを理由とする解雇であるとして解雇の無効を主張するケース)や、残業代など労働契約の履行から生じる金銭支払請求が増えている。 ・実務家および専門家からは、不当解雇補償金に関する一覧表の導入前後で認容額に大きな相違は生じていないとの見解が示された。た だし、勤続年数が短い労働者については、補償金の上限が低いことから、弁護士費用の点を考慮すると、裁判所に提訴するメリットが少なく、 提訴することを諦める傾向がみられる、逆に、賃金水準や勤続年数が長い労働者による提訴が増えているとの指摘もある。 ・解雇紛争における当事者間での和解交渉ないし和解金の提示では、労働者の勤続年数が重要視される。 ◆【解雇規制や紛争解決制度が解雇紛争(労使の行動を含む。)に与えている影響】→・不当解雇補償金に関する一覧表の導入以降、裁判による認容額の上限がみえてきたことから、和解が非常に増えているとの評価がある。 もっとも、労働裁判所における訴訟期間の長期化を理由に、訴訟当事者が和解を模索するケースも指摘される。 ・不当解雇補償金およびこれに相応する和解金の支払いに対しては、一覧表の範囲内であれば、使用者側の社会保障負担および労働者 側の税負担が免除されるため、税及び社会保障費との関係で労働者使用者の双方に一覧表の範囲内で和解するメリットが存在する。 ・労使実務家の見解によれば、予告期間が再就職先を探すのに十分な長さがある、あるいは再就職を見つけられたことが、提訴するか否かに 関する意思決定には影響しない。 ・法定合意解約は、実務上、退職を希望する労働者側からの提案が多いが、使用者側が解雇前に提案することもある。 ○(参考)フランスにおける解雇規制や紛争解決制度について→・原則として全ての解雇に解雇補償金の支払いが課される。さらに解雇の手続規制に違反した場合、労働者は補償金を請求可能。また、不当解雇の場合の救済は、金銭補 償によることが一般化している(金銭補償の上下限あり)。ただし、法律で明文で禁止されている違法解雇については、労働者側が復職又は金銭補償による救済を選択可能。 ○イギリスにおける解雇の金銭救済制度等に係るヒアリング結果について ◆【特色】→・イギリスにおいては、不公正解雇(※)については、法律上原職復帰又は再雇用による救済が原則となっているが、実際には労働者の希望や使用者の受入可能性が考慮されるため、金銭補償による解決が一般的である。 (※)解雇理由が、法律上の正当な権利行使や従業員代表者としての活動、妊娠・出産等の法定列挙事由に該当する場合は、自動的に不公正な解雇であるとみなされる。 ・金銭補償の額については、基本額と補償額を合わせて算定される。基本額については勤続年数×週給×0.5〜1.5という算定式が あり、補償額については解雇による全ての経済的損失を考慮して算定されるが、多様な控除・減額の仕組みもあり、控除・減額の順 序も含めて、算定方法が複雑な側面がある。 ・雇用審判所への申立て前にACASの事前調停サービスを利用することが義務化されており、ACASの機能強化等を通じて、解雇紛争の効率的な処理の促進が図られている。 ◆【金銭救済制度(金額算定のルールを含む。)の制定経緯の詳細】→ ・1971年労使関係法において、労使審判所(現在の雇用審判所)による不公正解雇の手続・決定・救済が定められ、再雇用と併せて 補償金による救済の仕組みが設けられた。また、1974年労働組合労働関係法では、原職復帰が再雇用とは区別される救済として明記された。 ◆【解雇訴訟提起の状況(労使当事者のニーズを含む。)】→・1990年代中ごろから、多発する解雇紛争の効率的な処理を推進するために、社内紛争処理の活用、調停や仲裁の活用、雇用審判所 における審査の効率性の向上が図られてきた。2008年には雇用審判所への申立て前になされるACASの事前調停サービスが制度化され、 2013年企業規制改革法により申立前の事前調停が義務化されるとともに、和解のために行われた言動がその後の訴訟において不利な証 拠として裁判所に提出されないことを保障する仕組みが導入されている。 ◆【解雇規制や紛争解決制度の利用状況】→・1970年代の制度創設当初は、法律上原職復帰や再雇用による救済が想定されていたが、その後、実態としては補償金による救済が一 般化した。原職復帰と再雇用については、@労働者が希望しているかどうか、A原職復帰が使用者にとって実行可能かどうか、B解雇に労 働者の過失が寄与した場合、原職復帰を命じることは公正か、が考慮されなければならないとされており、実際には補償金の救済を希望する労働者が多いことに加えて、実行可能性の問題もあり、付与される救済は補償金がほとんどである(※)。 (※)雇用審判所による救済措置は、現職復帰、再雇用が一次的な救済方法とされ、それらを命じることが適切でない場合に二次的な選択として金銭による補償が命じられる。 ・補償額の上限額は、ブレア労働党政権時において、労働者に対する十分な補償がなされていないとして£12,000から£50,000に引き 上げられるとともに、物価変動にも対応して引き上げられることが定められた。しかし、保守党・自由民主党連立政権時に、補償金の額が高 すぎるとされて、年間の総給与額という新たな上限額が設けられた。上記のとおり、現在は、1年分の総給与額と£118,223の低い方の額 となっている。 ◆【解雇規制や紛争解決制度の運用状況・評価】→・不公正解雇に対する補償金のうち、補償額は、@過去の経済的損失、A将来の経済的損失、B継続勤務要件が課されている労働法 上の権利の喪失、に対する補償であり、公正かつ公平な(just and equitable)観点から決定される。 なお、Aについては、労働者の年齢、雇用可能性、健康、職業、労働市場や当該労働者の状態等を考慮の上、解雇による賃金低下が どの程度継続されるかが評価されるが、予測可能性に欠けるとの見解があった。 ・補償額による補償の目的は、経済的損失を完全に補償する点にあり、ボーナスや懲罰的な損害賠償を与えることではない。労働者の経済的損失(感情損害は含まない)を補償するためのものであるため、使用者の過失の程度は考慮から除外されており、そのため使用者の行 動がどれほど悪質であっても、原則として補償額は変わらないとされている。 ・差別的解雇の補償金は、感情的な損害を含めて、解雇によって生じた全ての損失となる。加重損害や懲罰的な賠償の支払が命じられることもある。また、差別的解雇の補償金には上限額規制がない。 ◆【解雇規制や紛争解決制度が解雇紛争(労使の行動を含む。)に与えている影響】→・法定の情報提供・協議が行われない中で、船員が大量解雇され、一部が新たな条件で再雇用された事案があったことを受けて、補償金の 上限額規制等により、法を遵守しないコストが低くなっていることが、法定の手続を遵守しない解雇を容易にしているとの批判がある。この問 題を受けて、解雇・再雇用に関する行動準則が政府において改訂され、2024年雇用権法案では、情報提供・協議義務違反の制裁が最 大90日分の賃金額から最大180日へと強化され、労働条件変更に同意しない解雇を自動的に不公正とする方向性が示されている。 ○(参考)イギリスにおける解雇規制や紛争解決制度について→ ・ 不公正解雇については、法律上原職復帰又は再雇用による救済が原則となっているが、実際には金銭補償による解決が一般的となっており、金銭補償の金額算定のルールが 規定されている。また、違法な解雇については、コモンロー上の損害賠償請求を行うことができる。なお、雇用審判所に対する訴訟提起の前に行政機関の調停等による和解を試 みることが必要とされている。 ◎参考資料No.1 各側委員からの主な意見の整理→<労働基準法における「労働者」><家事使用人><労働基準法における「事業」><労使コミュニケーションの在り方><時間外・休日労働の上限規制><労働時間等の情報開示><法定労働時間週44時間特例措置> <管理監督者><休憩><休日(連続勤務規制)><休日(休日の特定)><勤務間インターバル><つながらない権利><年次有給休暇(時季指定義務)><年次有給休暇(賃金の算定方法)><年次有給休暇(時間単位年休)><年次有給休暇(その他)><割増賃金規制><副業・兼業><裁量労働制><賃金請求権等の消滅時効><その他> 参照。 次回は新たに「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 第9回資料」からです。 |



