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第205回労働政策審議会労働条件分科会(資料) [2025年12月30日(Tue)]
第205回労働政策審議会労働条件分科会(資料)(令和7年11月18日)
議題 (1)労働基準関係法制について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65974.html
◎資料No.2-1「労働局あっせんにおける解雇型雇用終了事案の分析」(概要)
○労働局あっせんにおける解雇型雇用終了事案の分析の目的・概要
1:目的
→裁判に至っていない解雇、雇止め等の紛争について、実態(請求事項、解決内容等)を明らかにするため。
2:概要→・調査主体:独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)、 ・調査対象:2023年度に4労働局で処理が完結した個別労働紛争解決制度のあっせん事案のうち、解雇型雇用終 了事案※に該当する485件 ※「解雇型雇用終了事案」とは、労働局におけるあっせんの利用事案として、労働者が解雇である旨を主張した事案であり、普通解雇、懲戒解雇、整理解雇、雇止め、自然退職(休職期間満了)、退職勧奨、契約解除(個人請負)、シフトカット、内定取消、定年、その他が含まれる。 ・調査手法:JILPTの調査員が調査対象事案に係る記録を閲覧し、調査項目に沿って必要な情報を入力。その後、 集計したデータを分析。 分析にあたっては、過去のあっせん(2008年度、2012年度)、労働審判・裁判上の和解(2013年、 2020年/2021年)に係る調査結果とも比較。↓

1.申請人→あっせんは労働者側申請が99.6%となっており、圧倒的多数であり、この傾向は過去のあっせんの調査結果と変わらない。
2.終了区分→ 2023年度のあっせんの終了区分のうち、合意成立は37.1%であり、被申請人の不参加が42.7%。合意成立の割合は、2012年度と比較してやや減少しているが、2008年度からみると大きな傾向としてその割合は上昇。被申請人の不参加の割合は、40%台で推移している。
3.制度利用期間→あっせんの合意成立事案における制度利用期間は、2008年度、2012年度は約6割が1-2月未満だったが、2023年度は約半分が2-3月未満となり、やや 長期化の傾向が窺える。ただし、3-6月未満が5割弱となっている労働審判や、12-18月未満が約3割と最多になっている裁判上の和解と比較すると、 依然として極めて短い。 中央値:あっせん(2008)1.41月、あっせん(2012)1.38月、あっせん(2023)2.05月、 労働審判3.12月、裁判上の和解12.63月。
※制度利用期間:あっせん申請をした日からあっせんが合意成立により終了した日までの期間
4.性別→ 労働者の性別は、調査の年が後になるにつれて、男性の比率が下がり、女性の比率が上がってきており、2023年度には男女比率は逆転して、男性は 45.4%、女性は54.6%と女性の方が多くなった。一方で、労働審判、裁判上の和解では、男性の割合が高い。
5.雇用形態→あっせんにおける労働者の雇用形態は、調査の年が後になるにつれて、正社員の比率が顕著に下がり、直用非正規雇用労働者の比率が顕著に上昇して おり、2023年度には正社員が3分の1、非正規が3分の2と、逆転している。また、労働審判、裁判上の和解では、4分の3が正社員となっており、 制度間の利用者層の違いが表れている。
6.勤続期間→・あっせんにおける労働者の勤続期間は、2012年度には短期勤務者から長期勤務者までかなりまんべんなく分布していたが、2023年度は1年未満が3 分の2近くに及んでおり、短期勤続化の傾向が明確になっている。 ・ 勤続期間の中央値で見ると、全ての制度にわたって、2010年代に労働者の勤続期間が半減している。
7.賃金月額→・あっせんにおける労働者の賃金月額は、2012年度には10-20万円未満が約4割と最多だったが、2023年度には20ー30万円未満が約4割と最多になり、 全体として賃金月額が高い方にシフトしている。また、あっせんよりも労働審判、さらに裁判上の和解の方がやや高い方に分布している。 ・賃金月額の中央値で見ると、全ての制度にわたって、賃金月額は上昇傾向にある。
8.企業規模(従業員数)→・あっせんの企業規模は、いずれの調査においても最多は10-50人未満、2008年度には約4割だったのが、2023年度には約2割へと下がっている。逆に100人-300人未満は約1割から約2割へ、1000人以上は約4%から約17%へ増加しており、大規模化の傾向がみられる。 ・ 労働審判も10-50人未満が約3割で最多だが、中央値ではあっせんよりも小規模である。裁判上の和解では、10-50人未満と100-300人未満が約4分の 1でほぼ並んでおり、やや大規模である。
9.請求事項→労働者側申請事案について、請求事項は、金銭のみを請求しているものが83.0%となっており、最も多い。
10.請求金額→あっせんの請求金額は、2008年度及び2012年度には50万円未満が3割台で最多となっていたが、2023年度には50-100万円未満が約4分の1で最多。また、労働審判では、100万-200万円未満と300万-500万円未満が並んで約2割となっており、裁判上の和解では500-1000万未満が約3割 で最多となっている。中央値でみると、労働審判と裁判上の和解が、あっせんよりも遙かに高くなっている。
11.解決内容→あっせんにおける解決内容が復職であるものはほとんどなく、復職は2008年度には1.5%、2012年度には0.6%、2023年度には1.1%である。復職という解決が極めて少ないのは労働審判(0.8%)や裁判上の和解(1.1%)においてもほぼ同様である。
12.解決金額→あっせんにおける解決金額は、いずれの調査においても10-20万円未満が20%台で最多となっているが、それに次ぐのは2008年度には5-10万円未満である一方、2023年度では20-30万円未満とより高い方にシフトしている。ただし、100-200万円未満が最多となっている労働審判や、100-200万円未満と 300-500万円未満が最多で並んでいる裁判上の和解と比べると著しい低水準にある。
12-2.解決金額と請求金額の対応状況(あっせん)→あっせんにおける解決金額は、いずれの調査においても50万円未満が最多となっているが、2023年度には、2008年度及び2012年度に比べて請求金額 が上がっている中で、50万円以上の解決金額が増えている。あっせん、労働審判、裁判上の和解と段階が進むにつれて、請求金額が高くなり、それに 応じて解決金額も高い水準となっている。
12-2.解決金額と請求金額の対応状況(労働審判・裁判上の和解) 参照。
13.月収表示の解決金額→あっせんにおける月収表示の解決金額は、いずれの調査においても最多層は1月分未満で、それに次ぐのは1-2月分未満であり、5月分未満までで9割 を超え、それ以上の月収表示の解決金額は極めて少ない。これに対し、1-2月分未満より高い層に分布が広がっている労働審判やさらに一層高い層に分布が広がっている裁判上の和解においては、月収表示の解決金額はかなり高い水準にある。
14.勤続期間当たりの月収表示の解決金額→・あっせんにおける勤続期間当たりの月収表示の解決金額は、2012年度には0.1月分未満が51.4%と過半数であったが、2023年度には42.9%に減っている。 ・中央値でみると、あっせんは2012年度に比べて2023年度に上昇しているが、労働審判や裁判上の和解よりは低い水準となっている。
15.月収表示の解決金額とのクロス集計@➁→(1)〜(6) 参照。


◎資料No.2-2「解雇等に関する労働者意識調査」(概要)
○労働者アンケート調査の目的・概要
1:目的
→(1)解雇等に係る紛争解決制度(訴訟、労働審判、労働局のあっせん等)の利用実態を通じて、現行制度に対する 労働者の評価やニーズを明らかにすること (2)解雇等をめぐる紛争解決やその予防のための施策(解雇無効時の金銭救済制度を含む)について、労働者の意 見を確認すること
2:概要 →(1)アンケートの手法等(調査主体:独立行政法人労働者政策研究・研修機構(JILPT))→・モニター業者によるWEBアンケートにより実施。 ・調査対象者は、@解雇等(解雇又は雇止め)経験者1万人及びA解雇等未経験者1万人(勧奨退職の経験者を含 む)の計2万人。 (2)調査項目→共通項目⇒・性別、年齢、雇用形態、業種、職種、企業規模、労働組合加入の有無、契約期間、役職、賃金形態・月額、勤務 時間、勤続年数 ・解雇等をめぐる紛争解決やその予防のための施策(解雇無効時の金銭救済制度を含む)についての意見など。 ・解雇等の経験がある者⇒・解雇等の理由、解雇等の際の復職又は更新希望の有無、紛争解決制度の利用の有無。 ・上記のうち、紛争解決制度を利用した者⇒ 訴訟、労働審判、あっせん等について当該制度を利用した理由、利用した結果、解決しなかった場合はその理由、利用した満足度、訴訟の場合は和解できなかった理由や解雇無効判決を得たが復職できなかった(又は復職後に退職した)理由 など。
1.基本属性→6項目  参照。
2.解雇等の状況(解雇等経験者)→3項目  参照。
3.紛争解決制度の利用状況→3項目  参照。
4.紛争解決制度(労働審判・訴訟を除く。)の利用状況@➁→5項目  参照。
5.労働審判の利用状況@➁→4項目  参照。
6.訴訟の利用状況→3項目  参照。
7.職場復帰後の継続就労のために重要なこと→1項目  参照。
8.紛争解決制度の利用状況  参照。
9.解雇等をめぐる紛争解決やその予防のために必要と考える方策(複数回答)@➁→3項目  参照。
10.金銭救済制度の創設の要否等について→本調査では、「解雇等をめぐる紛争解決やその予防のために必要と考える施策」として、複数の選択肢を設けた上で⇒・解雇の金銭救済制度を選択した者には、選択した理由(複数回答)を聞き、⇒ ・解雇の金銭救済制度を選択しなかった者には、当該制度の必要性について、「どちらともいえない」「あまり必要ではない」「必要ではない」のいずれかを選択して もらった上で、選択した理由(複数回答)を聞いている。


◎資料No.2-3「諸外国における解雇の金銭救済制度に関する有識者に対する ヒアリング調査」(概要)
○諸外国における解雇の金銭救済制度に関する有識者に対するヒアリング調査の目的・概要
1:目的
→ 諸外国における解雇の金銭救済制度について、各国の制度の詳細や制度導入に伴う社会的影響等を明らかにする。
2:概要→ ・調査主体:独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)  ・調査対象国 :解雇の金銭救済制度を導入しているドイツ、フランス、イギリス 調査手法 :調査対象国における有識者(労使団体、裁判官、弁護士、政府関係者等)に対して以下の事項に関するヒアリング及び文献調査を実施。 ・金銭救済制度(金額算定のルールを含む。)の制定経緯の詳細⇒・解雇訴訟提起の状況(労使当事者のニーズを含む。) ・解雇規制や紛争解決制度の利用状況 ・解雇規制や紛争解決制度の運用状況・評価 ・解雇規制や紛争解決制度が解雇紛争(労使の行動を含む。)に与えている影響 等

○ドイツにおける解雇の金銭救済制度等に係るヒアリング結果について
◆【特色】
→・ドイツにおいては、大多数が復職ではなく、金銭による解決がなされてい る。 ・他方、従来から解雇紛争の大多数は、裁判上の和解において、金銭解決を行うことにより終了している。 ・金銭解決に当たっては、勤続年数×月収×0.5という算定式を基準として用いることが、和解等における実務上の慣行として確立したものと なっている。
◆【金銭救済制度(金額算定のルールを含む。)の制定経緯の詳細】→・裁判上の和解において解雇訴訟につき金銭解決を行う場合には、実務上、勤続年数×月収×0.5という算定式が基準として用いられている。かかる算定式の出自は必ずしも明らかではないが、0.5という係数については、和解手続の開始時点では、裁判官にとって、当該解雇の 有効性に関する心証が50:50であることに由来している。なお、この算定式は、2003年に解雇制限法1a条が立法化された際には、同条 に基づく補償金の算定式としても用いられた。
◆【解雇訴訟提起の状況(労使当事者のニーズを含む。)】ドイツの解雇訴訟の大多数は金銭解決を内容とする和解により終了。但し、ごく稀にではあるが、復職を内容とする和解が行われることもある。 (※)2019年は178,797件、2021年は119,364件が係属している。 ◆【解雇規制や紛争解決制度の利用状況】 ・前記の通り、ドイツの解雇訴訟は従来から、その大多数が裁判上の和解において、金銭解決を行うことで終了している。 ・解消判決制度については、同制度に基づく金銭解決が認められるためには、解雇が社会的に不当であることに加え、当事者間の信頼関係 が崩壊していること(解消事由)の主張立証が必要とされる等、要件が厳格であるため、実務上はほとんど利用されていない。 ・解雇制限法1a条については、ドイツの使用者は同条を利用することは解雇の有効性に関する自身の立場の弱さを露呈することになると考 えること、また使用者が同条を利用しようとしても、同条が定める補償金額は裁判上の和解において用いられる基準算定式と同一であるため、労働者としてはより高額の補償金を得るために裁判上の和解において金銭解決を行おうと行動すること等から、ドイツでは1a条は実務 上はほとんど利用されていない。
◆【解雇規制や紛争解決制度の運用状況・評価】→ ・裁判上の和解においては、前記の通り、和解手続の開始時点では裁判官にとって当該解雇の有効性に関する心証が50:50であることから、 0.5という係数が用いられているため、まずは個別事案における当該解雇の有効性に関する心証により、かかる係数が変動しうる。また、地 域や使用者の支払能力、紛争期間の長さ(=使用者が敗訴した場合におけるバックペイのリスク)等も、0.5という係数の変動要因となりうる。 ・解消判決制度のもとで金銭解決が行われることは、前記のとおり稀ではあるが、その場合の補償金は原則(※1)として月収の12ヶ月を上 限として、裁判官の裁量により算定されており、実務上勤続年数×月収×0.5という裁判上の和解における算定式がベースとされている。この場合には、当該解雇の社会的不当性、解消事由の内容、当該労働者の年齢、月収、勤続年数、家族関係、労働市場の状況等(※ 2)、幅広い事情が考慮されうる。なお、同制度の政策的評価については、信頼関係の崩壊という例外的局面において金銭解決を可能と する点で肯定的に評価する見解がある一方、申立権者を労働者側に限定するとともに、補償金額の上限を廃止するよう改正すべきとの見解もある。 (※1)例外として、50歳以上かつ勤続15年以上の場合は月収の15ヶ月、55歳以上かつ勤続20年以上の場合は月収の18ヶ月が上限。 (※2)年金への期待度、予想される失業期間、新たな職場における不都合等も含む。 ・解雇制限法1a条については、前記の通り、実務上はほとんど用いられておらず、同条が意図した政策目的(解雇コストの明確化、労働裁 判所の負担軽減等)は、実現されていない。そのため、同条の政策的評価としては、否定的な見解が多いが、裁判上の和解において実務 上活用されている算定式を法律に位置づけた点で有意義であると評価する見解もある。
◆【解雇規制や紛争解決制度が解雇紛争(労使の行動を含む。)に与えている影響】 2003年に立法化された解雇制限法1a条は、前記の通り、解雇コストを予測可能なものとすることにより、使用者が経営を理由とする解雇を行いやすくすることを目的の一つとしていたが、実務上はほとんど用いられていない。また、ドイツでは、労使当事者が裁判外において合意解約により労働契約を終了させることも従来から可能であるが、1a条の立法化は、このような合意解約をめぐる労使の行動に、何ら影響を与えていない。
○(参考)ドイツにおける解雇規制や紛争解決制度について→・ 違法・不当な解雇に対する救済は法律上、解雇を無効とし、労働契約関係の存続を強制することが原則になっているが、金銭により解決する制度として、解消判決制度(解雇制限法9条)や経営を理由とする解雇に係る補償金(同法1a条)が規定されている。なお、実際には解雇紛争の大多数が裁判上の和解により、金銭解決を行うことで終了している。

○フランスにおける解雇の金銭救済制度等に係るヒアリング結果について
◆【特色】
→・金銭補償が一般化。・具体的な算定式は法律上も実務上も存在しない。その水準については 勤続年数に応じた上限・下限基準を示した一覧表により判断される。
・労働者と使用者が合意により労働契約を終了させる法定合意解約制度が導入。 ・不当解雇補償金及びこれに相応する和解金の支払いについては、一覧表の範囲内であれば、使用者側の社会保障負担及び労働者側の税負担が免除されるため、労働者・使用者の双方に一覧表の範囲内で和解するメリットが存在する。
◆【金銭救済制度(金額算定のルールを含む。)の制定経緯の詳細】→ ・労働法典には復職(労使双 方の同意が必要)または復職が実現しない場合には不当解雇補償金の支払いが規定されており、不当解雇補償金の額については、賃金6ヶ月分以上という下限基準が設けられていた(上限基準なし)。 ・不当解雇補償金は、損害賠償的性格や不当解雇に対する抑止的性格を併せ持つものとして理解されている。 ・2017年改正では、労働者の勤続年数に応じて、不当解雇補償金の上限および下限基準(一覧表)が設定された。なお、従業員11人未満の小規模企業については異なる下限基準が適用される。 ・差別的解雇など(※)法律で禁止された解雇については、解雇の無効・復職および解雇期間中の未払い賃金の支払い、または、労働者 が復職を望まない場合には賃金6ヶ月分以上の補償金の支払いを求めることができる(下限基準のみで上限基準なし)。 (※)行政の許可なくなされた被保護労働者(従業員代表、組合代表等)に対する解雇等も含まれる。 ・不当解雇補償金とは別に、労働者は、解雇の過程における使用者の態様の悪質さ等を理由に、民法典上の民事責任を根拠に、損害賠 償を請求することも可能である。 ・解雇規制とは別に、労働法典は、労働者と使用者が合意により労働契約を終了させる方法として法定合意解約について規定している。同制度は、労使当事者の要望により2008年に導入された仕組みであり、法所定の手続き(事前の話合い、書面の作成、行政による認可)と解雇補償金と同額以上の補償金の支払いが義務付けられている。
◆【解雇訴訟提起の状況(労使当事者のニーズを含む。)】→・解雇訴訟は、労働契約から生じる個別紛争を管轄する労働裁判所が管轄し、労働裁判所に申し立てられる事件の9割近くが労働契約の終了に関する事案であり、その大部分が労働者本人に起因する解雇(人的解雇)に関する事案。 ・労働裁判所における訴訟期間の長期化問題を背景に、近年は、労働裁判所への申立て手続きの複雑化ないし厳格化を内容とする法 改正が行われ、訴訟提起(特に本人訴訟)のハードルが上がった。 ・労働裁判所への申立て件数は年間10.7万件(2023)であり、 2015年比で約40%減少している。その要因ないし背景には、@上記 の労働裁判所改革による手続きの厳格化A法定合意解約の成功、B不当解雇補償金に関する一覧表の導入などが指摘される。
◆【解雇規制や紛争解決制度の利用状況】→ ・フランスでは、不当解雇の救済として復職が選択されることは基本的になく、不当解雇補償金の支払いが一般的である。 ・解雇通知以後解雇訴訟提起までの間および訴訟提起以降も、当事者間で和解交渉は一般に行われている。 ・労働裁判所は調停前置主義を採用しているが、仮処分事件を除く本案のうち調停部で調停成立に至った割合は約19%(2024)で ある。 ・法定合意解約による労働契約の終了件数は、年間約51.4万件(2024)であり、近年は年間50万件前後を推移している。
◆【解雇規制や紛争解決制度の運用状況・評価】→・不当解雇補償金の具体的な算定式は法律上も実務上も存在しない。不当解雇補償金の算定にあたっては、さまざまなものが考慮される。・不当解雇補償金の上限基準が導入された結果、実務では、一覧表ないし上限基準の適用を回避する動き(差別やハラスメントを理由とする解雇であるとして解雇の無効を主張するケース)や、残業代など労働契約の履行から生じる金銭支払請求が増えている。 ・実務家および専門家からは、不当解雇補償金に関する一覧表の導入前後で認容額に大きな相違は生じていないとの見解が示された。た だし、勤続年数が短い労働者については、補償金の上限が低いことから、弁護士費用の点を考慮すると、裁判所に提訴するメリットが少なく、 提訴することを諦める傾向がみられる、逆に、賃金水準や勤続年数が長い労働者による提訴が増えているとの指摘もある。 ・解雇紛争における当事者間での和解交渉ないし和解金の提示では、労働者の勤続年数が重要視される。
◆【解雇規制や紛争解決制度が解雇紛争(労使の行動を含む。)に与えている影響】→・不当解雇補償金に関する一覧表の導入以降、裁判による認容額の上限がみえてきたことから、和解が非常に増えているとの評価がある。 もっとも、労働裁判所における訴訟期間の長期化を理由に、訴訟当事者が和解を模索するケースも指摘される。 ・不当解雇補償金およびこれに相応する和解金の支払いに対しては、一覧表の範囲内であれば、使用者側の社会保障負担および労働者 側の税負担が免除されるため、税及び社会保障費との関係で労働者使用者の双方に一覧表の範囲内で和解するメリットが存在する。 ・労使実務家の見解によれば、予告期間が再就職先を探すのに十分な長さがある、あるいは再就職を見つけられたことが、提訴するか否かに 関する意思決定には影響しない。 ・法定合意解約は、実務上、退職を希望する労働者側からの提案が多いが、使用者側が解雇前に提案することもある。
○(参考)フランスにおける解雇規制や紛争解決制度について→・原則として全ての解雇に解雇補償金の支払いが課される。さらに解雇の手続規制に違反した場合、労働者は補償金を請求可能。また、不当解雇の場合の救済は、金銭補 償によることが一般化している(金銭補償の上下限あり)。ただし、法律で明文で禁止されている違法解雇については、労働者側が復職又は金銭補償による救済を選択可能。

○イギリスにおける解雇の金銭救済制度等に係るヒアリング結果について
◆【特色】
→・イギリスにおいては、不公正解雇(※)については、法律上原職復帰又は再雇用による救済が原則となっているが、実際には労働者の希望や使用者の受入可能性が考慮されるため、金銭補償による解決が一般的である。 (※)解雇理由が、法律上の正当な権利行使や従業員代表者としての活動、妊娠・出産等の法定列挙事由に該当する場合は、自動的に不公正な解雇であるとみなされる。 ・金銭補償の額については、基本額と補償額を合わせて算定される。基本額については勤続年数×週給×0.5〜1.5という算定式が あり、補償額については解雇による全ての経済的損失を考慮して算定されるが、多様な控除・減額の仕組みもあり、控除・減額の順 序も含めて、算定方法が複雑な側面がある。 ・雇用審判所への申立て前にACASの事前調停サービスを利用することが義務化されており、ACASの機能強化等を通じて、解雇紛争の効率的な処理の促進が図られている。
◆【金銭救済制度(金額算定のルールを含む。)の制定経緯の詳細】→ ・1971年労使関係法において、労使審判所(現在の雇用審判所)による不公正解雇の手続・決定・救済が定められ、再雇用と併せて 補償金による救済の仕組みが設けられた。また、1974年労働組合労働関係法では、原職復帰が再雇用とは区別される救済として明記された。
◆【解雇訴訟提起の状況(労使当事者のニーズを含む。)】→・1990年代中ごろから、多発する解雇紛争の効率的な処理を推進するために、社内紛争処理の活用、調停や仲裁の活用、雇用審判所 における審査の効率性の向上が図られてきた。2008年には雇用審判所への申立て前になされるACASの事前調停サービスが制度化され、 2013年企業規制改革法により申立前の事前調停が義務化されるとともに、和解のために行われた言動がその後の訴訟において不利な証 拠として裁判所に提出されないことを保障する仕組みが導入されている。
◆【解雇規制や紛争解決制度の利用状況】→・1970年代の制度創設当初は、法律上原職復帰や再雇用による救済が想定されていたが、その後、実態としては補償金による救済が一 般化した。原職復帰と再雇用については、@労働者が希望しているかどうか、A原職復帰が使用者にとって実行可能かどうか、B解雇に労 働者の過失が寄与した場合、原職復帰を命じることは公正か、が考慮されなければならないとされており、実際には補償金の救済を希望する労働者が多いことに加えて、実行可能性の問題もあり、付与される救済は補償金がほとんどである(※)。 (※)雇用審判所による救済措置は、現職復帰、再雇用が一次的な救済方法とされ、それらを命じることが適切でない場合に二次的な選択として金銭による補償が命じられる。 ・補償額の上限額は、ブレア労働党政権時において、労働者に対する十分な補償がなされていないとして£12,000から£50,000に引き 上げられるとともに、物価変動にも対応して引き上げられることが定められた。しかし、保守党・自由民主党連立政権時に、補償金の額が高 すぎるとされて、年間の総給与額という新たな上限額が設けられた。上記のとおり、現在は、1年分の総給与額と£118,223の低い方の額 となっている。
◆【解雇規制や紛争解決制度の運用状況・評価】→・不公正解雇に対する補償金のうち、補償額は、@過去の経済的損失、A将来の経済的損失、B継続勤務要件が課されている労働法 上の権利の喪失、に対する補償であり、公正かつ公平な(just and equitable)観点から決定される。 なお、Aについては、労働者の年齢、雇用可能性、健康、職業、労働市場や当該労働者の状態等を考慮の上、解雇による賃金低下が どの程度継続されるかが評価されるが、予測可能性に欠けるとの見解があった。 ・補償額による補償の目的は、経済的損失を完全に補償する点にあり、ボーナスや懲罰的な損害賠償を与えることではない。労働者の経済的損失(感情損害は含まない)を補償するためのものであるため、使用者の過失の程度は考慮から除外されており、そのため使用者の行 動がどれほど悪質であっても、原則として補償額は変わらないとされている。 ・差別的解雇の補償金は、感情的な損害を含めて、解雇によって生じた全ての損失となる。加重損害や懲罰的な賠償の支払が命じられることもある。また、差別的解雇の補償金には上限額規制がない。
◆【解雇規制や紛争解決制度が解雇紛争(労使の行動を含む。)に与えている影響】→・法定の情報提供・協議が行われない中で、船員が大量解雇され、一部が新たな条件で再雇用された事案があったことを受けて、補償金の 上限額規制等により、法を遵守しないコストが低くなっていることが、法定の手続を遵守しない解雇を容易にしているとの批判がある。この問 題を受けて、解雇・再雇用に関する行動準則が政府において改訂され、2024年雇用権法案では、情報提供・協議義務違反の制裁が最 大90日分の賃金額から最大180日へと強化され、労働条件変更に同意しない解雇を自動的に不公正とする方向性が示されている。
○(参考)イギリスにおける解雇規制や紛争解決制度について→ ・ 不公正解雇については、法律上原職復帰又は再雇用による救済が原則となっているが、実際には金銭補償による解決が一般的となっており、金銭補償の金額算定のルールが 規定されている。また、違法な解雇については、コモンロー上の損害賠償請求を行うことができる。なお、雇用審判所に対する訴訟提起の前に行政機関の調停等による和解を試 みることが必要とされている。


◎参考資料No.1 各側委員からの主な意見の整理→<労働基準法における「労働者」><家事使用人><労働基準法における「事業」><労使コミュニケーションの在り方><時間外・休日労働の上限規制><労働時間等の情報開示><法定労働時間週44時間特例措置>
<管理監督者><休憩><休日(連続勤務規制)><休日(休日の特定)><勤務間インターバル><つながらない権利><年次有給休暇(時季指定義務)><年次有給休暇(賃金の算定方法)><年次有給休暇(時間単位年休)><年次有給休暇(その他)><割増賃金規制><副業・兼業><裁量労働制><賃金請求権等の消滅時効><その他>  参照。

次回は新たに「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 第9回資料」からです。

第205回労働政策審議会労働条件分科会(資料) [2025年12月29日(Mon)]
第205回労働政策審議会労働条件分科会(資料)(令和7年11月18日)
議題 (1)労働基準関係法制について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65974.html
◎資料No.1-1 労働時間法制の具体的課題に関する検討の論点について
○テレワーク等の柔軟な働き方→・現行のフレックスタイム制は、全ての労働日の始業・終業時刻を労働者本人の決定に委ねることが導入の要件。フレックスタイム制により始業・終業時刻を労働者が決定する日と使用者が決定する日の混在について、どう考えるか。 ・始業・終業時刻を労働者が決定する日と使用者が決定する日の混在を認める場合、どの程度混在することを認めるべきか。また、それぞれの労働時間管理をどう考えるか。
○副業・兼業→・労働者が副業・兼業を行う場合に割増賃金の支払いに係る労働時間を通算することとされている。副業・兼業を行う労働者の割増賃金の支払に係る労働時間の通算の在り方についてどう考えるか。 ・副業・兼業を行う労働者の健康確保についてどう考えるか。
○管理監督者→本来は管理監督者等に当たらない労働者が管理監督者等と扱われている場合があることや、 管理監督者等に特別な健康・福祉確保措置は設けられていないことを踏まえ、管理監督者等の要件や健康確保について、どう考えるか。
○労働時間の情報開示→企業内部における労使協定等の手続きにおいて重要である一方で、企業外部への情報開示について、⾧時間労働の是正の観点から、正確な情報が開示されていることが望ましいと考えられるが、事業場の実態は様々である中で、どう考える か。


◎資料No.1-2 労働時間法制の具体的課題について
1.テレワーク等の柔軟な働き方

○フレックスタイム制度がある企業の割合→・企業の割合は7.2%(令和6年度)、適用を受ける労働者の割合は11.5%(令和6 年)。 ・新型コロナ感染症対策として企業のテレワークの導入率は増加。
○フレックスタイム制→・労働者が日々の始業・終業の時刻、労働 時間を自ら決めることのできる制度。時間外労働となるのは、清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間数 ※ (時間外労働を行わせるには、36協定の締結が必要)
○フレックスタイム制に関する現行の規定(法律・省令)→◎労働基準法(昭和22年法律第49号)(抄)◎労働基準法施行規則(昭和22年労働省令第23号)(抄)  参照。
○フレックスタイム制に関する現行の規定(解釈通達)→・始業時 刻又は終業時刻の一方についてのみ労働者の決定にゆだねるのでは足りないものであること。・フレキシブルタイムが極端に短い場合、コアタイムの開始から終了までの時間と標準となる一日の労 働時間がほぼ一致している場合等については、基本的には始業及び終業の時刻を労働者の決定にゆだねたこととはならず、フレッ クスタイム制の趣旨に合致しないものであること。
○テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(抜粋)@→ 6 様々な労働時間制度の活用  参照のこと。
○テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(抜粋)A → 6 様々な労働時間制度の活用 ウ事業場外みなし労働時間制  参照。
○(事業所)テレワークを行う労働者に適用している労働時間制度 参照。
○(個人)テレワークを行う頻度
○(個人)テレワーク
○フレックスタイム制と通常勤務日を組み合わせる制度→ バツ1フレックスタイム制と通常勤務日を組み合わせる制度は必要だと思うかについて、「必要である、ある方がよい」が23.7%、「不 要である、ない方がよい」が18.1%、「どちらでもよい、わからない」が55.7%となっている。一般 (企業)労働時間制度等に関するアンケート調査(令和5年)
○労働基準関係法制研究会報告書 概要 →1 最⾧労働時間規制 (3)テレワーク等の柔軟な働き方 【フレックスタイム制の改善について】【テレワーク時のみなし労働時間制について】  参照。

2. 副業・兼業
○労働時間の通算に関する現行の規定・解釈@➁B→労働基準法(昭和22年法律第49号)(抄)、通達:昭和23年5月14日基発769号(抄)、通達:昭和23年10月14日基収2117号(抄)、通達:令和2年9月1日基発0901第3号(抄)、通達:令和2年9月1日基発0901第3号(抄)(続き)、   参照。
○副業・兼業に関するこれまでの主な取組について→・・・・・【令和5年3月】 「規制改革実施計画」(令和4年6月7日)、「規制改革推進に関する中間答申」(令和4年12月22日)にお いて、企業における副業・兼業の好事例や、管理モデルの取組事例を収集・周知することとされたことを受けて、 経済団体の協力を得ながら、副業・兼業に取り組む企業11社に対してヒアリングを実施し、その結果を事例集として公表した。
○副業・兼業の促進に関するガイドラインについて(概要)@ (平成30年1月策定、令和2年9月改定、令和4年7月改定)→3企業の対応(2)労働時間管理(3)健康管理
4労働者の対応⇒・労働者は、副業・兼業による過労によって健康を害したり、業務に支障を来したりすることがないよう、自ら業務量や進捗状況、時間や健康状態を管理する必要がある。 ・使用者が提供する健康相談等の機会の活用や、勤務時間や健康診断の結果等の管理が容易になるようなツールを用 いることが望ましい。始業・終業時刻、休憩時間、勤務時間、健康診断等の記録をつけていくような民間等のツール を活用して、自己の就業時間や健康の管理に努めることが考えられる。
○副業・兼業の場合の労働時間通算と割増賃金支払いについて ※「副業・兼業における労働時間の通算について(労働時間通算の原則的な方法)」(厚生労働省 HP掲載資料)より抜粋→労働時間通算の原則的な方法、管理モデル  参照。
○割増賃金規制の趣旨等について→時間外労働、休日労働、深夜労働の割増賃金 参照。
○副業者の属性→・有職者に占める副業者の割合は6.0%。副業者の割合を男女別にみると、男性が5.1%に対して女性が7.4%で、女性の方が高い割合。年齢による違いはそれほどみられない。 ・本業の勤務先の従業員規模をみると、副業者は「29 人以下」(25.1%)の割合がもっとも高く、本業のみの人よりも約9ポイント高い。 ・副業者の本業の就業形態をみると、「正社員」の割合がもっとも高く38.1%、本業のみの人よりも約25ポイント低い。一 方で「パート・アルバイト」などは副業者の方が高い割合。 ※本調査における「本業」は回答者自らが主たる仕事と考える仕事を指す。
○副業者の本業での働き方→・本業の仕事の1カ月あたりの実労働日数は、「20日以上25日未満」が57.2%で最も高く、本業のみの人と比べると、「25日以上」が約7 ポイント高い。 ・本業の仕事の1週間あたりの実労働時間は、「40時間以上50時間未満」が30.3%で最も高く、本業のみの人と比べると、副業者の方が40 時間以上の割合が低くなっている。 ・本業の仕事での残業の頻度は、「ほとんどしていない」が55.0%で最も高く、本業のみの人と比べると、副業者の方が本業での残業を している割合が若干低い。 ・本業の仕事での月収について尋ねたところ、「10万円以上20万円未満」が26.6%、「20万円以上30万円未満」が23.2%などとなっており、本業のみの人と比べると、副業者の方が20万円未満と50万円以上の割合が高い。
○副業する理由→・副業する理由を尋ねたところ(複数回答)、「収入を増やしたいから」(54.5%)、「1つの仕事だけでは収入が少なくて、生活自体 ができないから」(38.2%)、「自分が活躍できる場を広げたいから」(18.7%)、「時間のゆとりがあるから」(15.8%)、 「様々な分野の人とつながりができるから」(13.2%)などの順。本業の就業形態でみると、「非正社員」で「1つの仕 事だけでは収入が少なくて、生活自体ができないから」と回答した割合が43.9%と高い。 ・副業する理由(複数回答)を本人の年収(本業と副業の合計)別にみると、おおむね年収が高い人ほど回答割合が高い傾向にあるのは 「自分が活躍できる場を広げたいから」「様々な分野の人とつながりができるから」「仕事で必要な能力を活用・向上させるため」などとなっている。
○副業者の副業での働き方(就業形態)→就業形態を「正社員」「非正社員」「非雇用者」の 3つに区分したうえで、本業の就業形態と副業の就業形態の組み合わせ別の割合を みると、「本業・非正社員+副業・非正社員」(32.9%)、「本業・正社員+副業・非正社員」(19.5%)、「本業・非雇用者+副 業・非雇用者」(12.9%)、「本業・正社員+副業・非雇用者」(12.2%)などの順となっている。
○副業者の副業での働き方(労働時間)→本業の労働時間も加えた1週間あたりの実労働時間の総計をみると、「40時間以上50時間未満」(21.5%)、「50時間以上60時間未 満」(18.1%)などの順となっており、平均値は47.7時間である。
○副業者の副業での働き方(収入)→・すべての副業を合わせた1カ月あたりの収入は、「5万円以上10万円未満」の割合が 30.0%でもっとも高い。 ・本業の月収を加えた1カ月あたりの収入の総計をみると、「20万円以上30万円未満」(24.3%)、「10 万円以上20万円未満」(21.6%)など の順となっており、平均値は35.6万円である。
○副業者の本業の月収・世帯年収→・本業の仕事での月収をみると、「10 万円以上 20 万円未満」(26.6%)、「20万円以上30万円未満」(23.2%)などの順、 本業のみの人と比べると、副業者の方が 20万円未満と50万円以上の割合が高い。・副業者の世帯年収をみると、「300 万円以上 500 万円未満」(22.6%)、「500 万円以上 700 万円未満」(18.3%)などの順、本業のみの人と比べると、副業者の方が 300万円未満と1,100 万円以上の割合が高い。
○副業をしている旨の本業の勤め先への通知状況→レジスタードマーク本業の勤め先に副業していることを知らせているかどうかについて、本業の勤め先での副業の禁止状況別にみると、副業が「禁止されている」場合は「知らせていない」の割合が高く、「禁止されていない」場合は「知らせている」割合が高い。 ・本業の勤め先に副業を知られることをどう思うかについて、本業の勤め先での副業の禁止状況別にみると、副業が「禁止されている」 場合は「できれば知られたくない」の割合が高く、「禁止されていない」場合は「知られても、問題ない」割合が高い。 ・本業の勤め先に副業を知らせていない人に対して、知らせない理由を尋ねたところ「個人的なことで言いたくないから」(37.8%)がもっとも高い。
○副業の労働時間の報告→・副業していることを本業の勤め先に「知らせている」とする人に対して、勤め先から労働時間の報告を求められているかを尋ねたところ、「報告を求められていないし、報告していない」の割合が67.0%と最も高く、正社員では、「報告を求められているし、実際に報告している」の割合も25.2%。 ・副業の労働時間について、本業の勤め先に何らかの報告をしている人に対して、どのように報告しているかを尋ねたところ、「あらかじめ定めた労働時間を届け出て、変更があった場合に修正・報告している(厚生労働省の副業・兼業のガイドラインが示す管理モデ ル)」(53.6%)が過半数を占めた。
○健康確保のための措置の実施状況→・本業の勤め先で、報告した労働時間に応じて、時間外・休日労働の免除や抑制など労働者の健康に配慮した措置が講じられたことがあるかを尋ねたところ、「自身の健康について使用者と話し合ったことも、措置が講じられたこともない」(48.8%)が半分近くを占め、 次いで「自身の健康について使用者と話し合った結果、措置が講じられたことがある」(20.7%)となっている。
○副業・兼業の促進に関するガイドライン等の認知状況→・副業を行っており、本業の就業形態が雇用者の人に対し、厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を知っているか尋ねたところ、「知らない」が71.7%となっている。・副業を行っており、本業の就業形態が雇用者の人に対し、副業を行った場合、それぞれの事業場における労働時間を通算することについて知っているか尋ねたところ、「知らない」が 58.4%となっている。
○副業・兼業に関する企業の対応 令和5年 労働時間制度等に関するアンケート調査→・副業・兼業のルール及び実態について、「副業・兼業を認めており、実際に副業・兼業を行っている労働者がいる」が 26.6%、「副業・兼業を認めているが、副業・兼業を行っている労働者がいることは認識していない」が32.9%であった。 ・ 「副業・兼業を認めており、実際に副業・兼業を行っている労働者がいる」企業が行っている労働者の健康管理については、 「副業・兼業先における労働時間を、労働者の自己申告により把握している」が36.7%と最も多い。 ・「副業・兼業を認めていない理由」は、「本業(貴社)での労務提供に支障が生じる懸念があるから」が79.6%と最も多い。
○副業・兼業に関する労使の意識→2023年は60.9%、2025年は64.3%と増えている。 また、副業者(他社で雇用されている人材)の受け入れ状況は、受け入れありは2023年は24.4%、2025年は29.1%と増えている。
○副業・兼業の状況(令和4年就業構造基本調査より)→副業者の所得階級別内訳をみると、299万円以下が64.5%。また、本業の所得階層別にみた副業者の割合については、99 万円未満(8.7%)、100~149万円(7.3%)、150~199万円(6.6%)、1000万円以上(6.5%)などの順になっている。
○(事業所)副業・兼業の取扱い 参照。
○(事業所)副業・兼業の場合における割増賃金の支払状況  参照。
○(個人)副業・兼業  参照。
○(個人)副業・兼業の有無・副業先  参照。
○(個人)副業・兼業の有無×所定労働時間 副業・兼業の有無×残業時間  参照。
○(個人) 副業・兼業の従事時間×平均残業時間  参照。
○労働基準関係法制研究会報告書概要→割増賃金の趣旨・目的等、副業・兼業の場合の割増賃金⇒いずれも今後の検討。
○新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版 (令和7年6月13日閣議決定)(抜粋)→副 業・兼業における割増賃金の支払に係る労働時間の通算管理の在り方について、労働 政策審議会において検討し、結論を得る。
○規制改革実施計画(令和7年6月13日閣議決定)(抜粋)→a,b:令和7年度検討・結論、結論を得次第速やかに措置

3. 管理監督者
○管理監督者の概要→・「管理監督者」は、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいい、労働基準法で定められた労働時間、休憩及び 休日に関する規定の適用が除外される。 ・「管理監督者」に当てはまるかどうかは、役職名ではなく、その労働者の勤務態様、職務内容・責任・権限、待遇を踏まえて実態により判断される。
○管理監督者をめぐる裁判例 ※いずれも時間外割増賃金等の支払義務の存否が争点となったものであり、いずれも「管理監督者に当てはまらない」とされた。
○管理職の月間残業時間数→全体では、「0時間」 (24.7%)の占める割合が最も高く、次いで「40 時間以上」(17.5%)、「20 時間以上 30 時間未満」(17.1%)の順と なっている。残業時間数は、19.5 時間であった。 (令和2年9月の状況)※ 本調査において、「管理職」とは、監督または管理の地位にあり、時間外労働や休日労働に対する割増賃金の対象とされてい ない者を指す。
○裁量労働制・高度プロフェッショナル制度・管理監督者等の適用要件→実労働時間規制のほか、特別規制(みなし労働時間制)として裁量労働制や高度プロフェッショナル制度、適用除外として 管理監督者等の規定が設けられ、それぞれ適用要件が定められている。
○労働者の種別に応じた健康・福祉確保措置等  参照。
○高度プロフェッショナル制度の健康・福祉確保措置  参照。
○管理職に対する健康・福祉確保措置の実施状況  参照。
○労働基準関係法制研究会報告書 概要→1 最⾧労働時間規制 (5)実労働時間規制が適用されない労働者に対する措置⇒検討して明確化する。

4. 労働時間の情報開示
○職場情報に関する法定開示項目  参照。
○職場情報に関する法定開示項目(各法で開示を求められる内容の詳細) 参照。
○労働基準関係法制研究会報告書 概要→1 最⾧労働時間規制 (2)企業による労働時間の情報開示⇒内部・外部への情報開示必要。

次回も続き「資料No.2-1「労働局あっせんにおける解雇型雇用終了事案の分析」(概要)」からです。

第12回経済財政諮問会議 [2025年12月26日(Fri)]
第12回経済財政諮問会議(令和7年11月12日)
議 事 (1) 経済対策 (2) マクロ経済運営(金融政策、物価等に関する集中審議)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2025/1112agenda.html
◎資料1 総合経済対策の策定について(内閣総理大臣指示)(令和7年10月21日(火))○総合経済対策の策定について(内閣総理大臣指示) (令和7年10月21日
一 日本は今、少子化、物価高、国際情勢の緊迫、そして地方の衰退などの大きな岐路に立っています。日本経済は 緩やかに回復していますが、潜在成長力は伸び悩み、米国関税措置に関する日米協議は合意に至ったものの世界経 済には不透明感があります。こうした中、食料品を中心とした物価高が当面の景気下押しリスクとなっています。 「未来への不安を希望に変える」ため、まずは、今の国民の暮らしを守る物価高対策を早急に講じるとともに、日 本経済の強さを取り戻すための経済政策を作り上げていきます。
二 こうした基本的な考え方のもと、物価高から暮らしと職場を守ること、大胆な危機管理投資と成長投資で暮らし の安全・安心の確保と強い経済を実現すること、そして防衛力と外交力の強化で日本の平和を守ること、といった 重要課題に速やかに対応することを目的として、「総合経済対策」を策定します。
三 経済対策の柱は、第一に、生活の安全保障・物価高への対応です。→ @ 足元の物価高に対しては、重点支援地方交付金により、地域のニーズにきめ細かく対応します。厳冬期の電気・ ガス代を支援します。国・自治体と民間の請負契約単価を物価上昇等を踏まえて適切に見直します。当分の間税 率の廃止に向けた政党間協議を進め、制度実施までは燃料油激変緩和補助金の基金残高を活用します。給付付き 税額控除の検討に着手します。 A 地方の伸び代を活かし、地方の暮らしの安定を図ります。医療・介護等について、職員の方々の処遇を改善するとともに、経営改善支援を行います。地域交通、小売りをはじめとする地域の基幹産業の活性化を図ります。 地方発の世界をリードする技術・ビジネスの創出を進めます。国民一人一人が生きがいや役割を持つ包括的な地 域共生社会を実現します。外国人問題への対応、治安対策、公教育再生や政党間合意を踏まえた教育無償化への 対応も進めます。 B 中小企業・小規模事業者をはじめとする賃上げ環境の整備も進めます。三の@に記載の重点支援地方交付金を 活用します。価格転嫁対策の徹底、中小企業等の稼ぐ力の強化や省力化投資の支援を行います。
四 第二の柱は、危機管理投資・成長投資による強い経済の実現です。官民が連携した積極的な投資により、我が国の課題を解決し、先端産業を開花させていくことで、日本経済の強い成長の実現を目指します。
@ 経済安全保障の強化のため、AI、半導体、造船、量子、バイオ、航空・宇宙など、戦略分野の官民連携投資 と重要物資のサプライチェーンの強化を進めます。サイバーセキュリティ対策を強化します。 A 食料安全保障の確立に向けて、農林水産業の構造転換を図るとともに、農林水産物・食品の輸出拡大を図ります。 B エネルギー・資源安全保障の強化のため、原子力については、安全性の確認を前提とした原子炉の再稼働を進めるとともに、原子力防災等にも取り組みます。資源開発、省エネ・再エネ、GXも進めます。 C 事前防災や道路関連インフラの保全をはじめ、防災・減災・国土強靱化にも取り組みます。 D 先端科学技術、スタートアップ・コンテンツ、健康医療、人への投資など、未来に向けた投資を拡大させていきます。
五 第三の柱は、防衛力と外交力の強化です
@ 外交・安全保障環境の変化に対応するため、防衛力整備に引き続き取り組みます。自衛隊員の処遇改善、多角 的な経済外交の展開などにも取り組みます。 A 米国関税措置への対応として、合意内容を誠実かつ速やかに実行していくため、日米戦略的投資イニシアティ ブに必要な措置を講じます。事業者の状況やニーズに応じた多様な支援を行えるよう、中小企業向けの資金繰り支援等により、国内経済・産業への影響緩和に万全を期します。
六 以上三つの柱に沿って、経済財政政策担当大臣を中心に、与党と十分連携して具体的な検討を行い、党派を超えた議論も踏まえて、経済対策を取りまとめてください。経済対策を決定した上で、補正予算を提出いたします。取りまとめに当たっては、課題の性質に応じて、規制・制度改革や財政投融資の手法なども積極的に活用してください。財政措置を伴うものについては、財務大臣と十分に内容を協議してください。
七 閣僚各位におかれましては、国民の皆様の声を聞き、施策の具体化に取り組んでいただくよう、よろしくお願い申し上げます。



◎資料2 総合経済対策に盛り込むべき重点施策(日本成長戦略会議)
○総合経済対策に盛り込むべき重点施策→ 政府においては、現在、内閣総理大臣からの指示に基づき、第一に、生活の安全保障・物 価高への対応、第二に、危機管理投資・成長投資による強い経済の実現、第三に、防衛力と 外交力の強化という三つの重要課題に速やかに対応することを目的として、総合経済対策の 策定作業を進めている。 こうした中、本会議において今後検討を進める、危機管理投資・成長投資や中小企業・小規 模事業者をはじめとする賃上げ環境の整備とともに、米国関税措置への対応を含め、成長戦 略に関連する施策として総合経済対策に盛り込み、直ちに着手すべき重点施策について、以 下のとおり取りまとめる。
1.戦略分野の総合対策等の策定に向けた基本方針→取りまとめに当たっては、以下の諸点を踏まえることが必要。↓
(1) 複数年度にわたる予算措置のコミットメントや税制など、投資の予見可能性向上に繋がる供給力強化策を検討すること。 措置の具体化に当たっては、研究開発、事業化、事業拡大、販路開拓・海外展開といった事業フェーズに応じ、次のような多角的な観点からの支援策とともに、それらを実現 するために必要な既存の制度の見直し等も積極的に盛り込むこと。→@ 大学、国研等の研究開発予算の戦略的配分 A スタートアップからの新たな技術提案を取り込むための踏み込んだ措置 B 防衛調達をはじめとする官公庁による調達や規制・規格の導入など、新たな需要 創出・拡大策 C 日本発の優れた技術の国際展開の土台として機能する国際標準化戦略 D 海外市場開拓支援
(2) 予見性向上の措置を踏まえた、投資内容・時期・目標額等を含めた官民投資ロードマップ を盛り込むこと。
(3) 戦略的投資により、成長率など国富拡大に与えるインパクトについても定量的な見込みを 示すこと。
また、技術、人材育成、スタートアップ、金融など、分野横断的な課題についても、各担当大 臣は、それぞれ解消策を策定する。 こうした検討作業の成果を、来夏の成長戦略としてとりまとめる。

2.総合経済対策について→本会議では、17の戦略分野の危機管理投資・成長投資に関して、@政府による供給力強化 策、A官民投資ロードマップ、B国富拡大に与えるインパクトの定量的見込み、更には横断的 課題の解決策を来夏の成長戦略のとりまとめに向けた検討に着手したところであるが、今般の 総合経済対策には、それらの結果を待たず直ちに実行すべき以下の重点施策を盛り込むべきである。
(1)「危機管理投資・成長投資」による力強い経済成長の実現
(1―1)戦略分野→ @ AI・半導体 A 造船 B 量子 C 合成生物学・バイオ D 航空・宇宙 E デジタル・サイバーセキュリティ F コンテンツ G フードテック H 資源・エネルギー安全保障・GX I 防災・国土強靱化 J 創薬・先端医療 K フュージョンエネルギー L マテリアル(重要鉱物・部素材) M 港湾ロジスティクス N 防衛産業 O 情報通信 P 海洋
(1―2)分野横断的課題→@ 新技術立国・競争力強化 A 人材育成 B スタートアップ C 金融を通じた潜在力の解放 D 労働市場改革 E 介護・育児等の外部化など負担軽減 F賃上げ環境整備 Gサイバーセキュリティ
(2)他の本部と連携して進める課題→6つの課題あり。   各項目参照のこと。


◎資料3 植田議員提出資料
○経済・物価の見通し ↓

◆展望レポート(2025年10月)→経済の見通し⇒・各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、成長ペースは伸び悩むと考えられる。その 後は、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる。  物価の見通し⇒・消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、米などの食料品価格上昇の影響が減衰していくもとで、 来年度前半にかけて、2%を下回る水準までプラス幅を縮小していくと考えられる。・ 消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペースの影響などを受けて伸び悩むことが見込まれる。 ・ その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、両者はともに徐々に高まっていき、見通し 期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。
◆政策委員見通しの中央値あり。  参照のこと。
○先行きの金融政策運営方針
◆展望レポート(2025年10月)→• 金融政策運営については、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、以上のような経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている。 • そのうえで、こうした見通しが実現していくかについては、各国の通商政策等の影響を巡る不確実性がなお高い状況が続いていることを踏 まえ、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要と考えている。 • 日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。
○(参考1)企業収益・労働需給
○(参考2)賃金・物価

◎資料4 筒井議員提出資料
今後の経済財政運営の課題    2025 年11月12日 筒井 義信
1.経済対策について
→高市内閣の掲げる「強い経済」の実現に向けた重要な第一歩、物価高対応を最優先にしつつ、「強い経済」の実現、好循環を確固たるものとするため、官民連携による戦略分野への積極的な投資にも着手 →高付加価値を生み出す経済・産業構造への変革に取り組む
2.来年度予算編成に向けて
(1)官民連携によるダイナミックな経済財政運営→・政府 予算の単年度主義の弊害を是正し、本予算で重点分野での中長期の計画に基づいた戦略的かつ効果的な投資を実行、民間企業の予見可能性を高め、官民連携による国内での成長投資を拡大  たとえば、科研費倍増等による科学技術・イノベーション力の抜本強化 グリーントランスフォーメーション(GX)の推進 ・民間 経営者自らのマインドセットを変え、 国内での設備投資・研究開発投資・人的投資を拡充する必要
(2)社会保障制度改革の着実な実行→ 公正・公平で持続可能な全世代型社会保障を構築 現役世代の保険料負担増の抑制を図りながら、応能負担の徹底  効率的で質の高い医療・介護の提供体制の実現 たとえば、医療・介護保険制度改革、医療・介護分野でのDX推進 次期診療報酬改定でのメリハリづけ 3.責任ある積極財政に向けて 今後、成長投資を行う中で、財政の持続可能性の確保、市場の信認を維持し 続けることが最も重要 債務残高対GDP比を安定的に引き下げ、成長投資の実行に即した複数年度 でのバランスの確保を主としつつ、複眼的な視点を持ち、中長期的な財政健全化をめざす また、PDCAに基づくワイズスペンディングの徹底も必要   以 上


◎資料5 永濱議員提出資料
令和7年第12回「経済財政諮問会議」提出資料   永濱利廣
1. マクロ経済政策運営について

〇検討を深めていくべきテーマ:財政健全化目標の再検討 →・既存のPB目標は、デフレ局面でも債務残高対GDP比を下げるための中間目標。 ・インフレ下で「名目経済成長率>長期金利」となる局面では、PB黒字化せずとも債 務残高対GDP比は低下。 ・むしろ、その局面でPB黒字化を固持すると、将来必要な財政支出が不足する恐れ。 インフレ局面に応じた財政健全化目標への変更が重要。そうでないと「責任ある積極財政」形骸化の恐れ。
〇重点とすべきポイント:インフレ局面に応じた国際基準の視点→・一般的には、経済規模の拡大が反映される債務残高対GDP比の安定的低下が標準。 ・ただ、会計的には金融資産も反映した純債務残高対GDP比が適当との見方も。 ・また、純債務残高も政府部門や金融資産の範囲の違いで複数のデータが存在。 ・純債務残高対GDP比を目標とするなら、中長期試算で政府資産の試算も必要。 ・米国財務省では 、( 純)利払い費対GDPも財政指標として注目。 ・海外主流派経済学者や日本国債格付け担当者に対するヒアリングの必要性。 近年の海外における財政規律柔軟化を確認し、新たな財政健全化目標制定が必要。 名目経済成長率と長期金利の関係に基づき、財政運営を機動的に変更する仕組みも。

2. 経済対策について留意すべきポイント
〇国民生活への直接効果を重視(GDP押上効果では実感が湧かない)→ ・それぞれの政策がどのパスを通じて実質賃金の押し上げに貢献するかを明示  (例) 実質賃金= 実質労働生産性(危機管理・成長投資、防衛力強化) ×労働分配率(中小企業賃上げ補助金) ×交易条件(電気・ガス代支援、ガソリンつなぎ補助、地方交付金拡充) ×労働時間(年収の壁引き上げ、労働時間規制緩和)
〇規模の正当化→ ・7−9月期GDP大幅マイナス、10月景気動向指数の基調判断「悪化」の可能性。 ・一般会計歳出額(昨年13.9兆円、一昨年13.2兆円)が前年上回らないと積極財政 期待低下の可能性。 ・一方で、国債発行額(昨年6.7兆円、一昨年8.9兆円)を政府(純)債務残高対 GDP 比の低下が維持される範囲内に抑制できれば「責任ある積極財政」担保。 ・その意味では、税収上振れ額や税外収入、社会保障や利払い費等の歳出不用額、前 年度剰余金、等の金額に加え、インフレに及ぼす影響試算も重要。 ・内閣府中長期試算(25年8月)における「国・地方のPBの変化要因」の中の「基調的な税収増の想定」(今年度1.6兆円、来年度1.6兆円)も恒久財源として使えるのでは


◎資料6 南場議員提出資料
令和7年第12回「経済財政諮問会議」提出資料
1.経済対策について 南場智子
→・過去30年間、日本経済が世界の中で競争力を失いつつあるのはイノベーショ ンが起きていないから。人口減少が避けられない日本が競争力を維持・強化 するためには、イノベーションが持続的に起こり続ける土壌を日本に作らなければならない。土壌がないと重点分野に資金を投入しても1周回って終わりになる。 ・ イノベーションが持続的に起こり続ける土壌とは、ヒト・カネ・事業の激し い流動が前提。すなわち、企業の参入と退出、雇用の創出と破壊によるダイナミズムが不可欠である。個人に対するセーフティーネットは提供しつつ、守り過ぎないという視点も必要。 ・ そういったダイナミズムが日本は得意ではなかったが、国内でもスタートアップはヒト・カネ・事業の激しい流動を実現し絶え間ない変化への挑戦が行われている。ただ、経済全体に影響を及ぼすほどの規模になっていない(GDP に占めるスタートアップの企業価値の割合:日本1.7%、米国14.1%、英国13. 8%)。日本に世界有数のスタートアップエコシステムを形成することが急務。そのためには、「スタートアップ育成5か年計画」の進捗を総点検し、モメンタムを再度強化する必要がある。具体的には; ↓
○ 米国QSBS、英国SEIS水準のスタートアップ投資に対する税制優遇→ ■ 2025年上半期のスタートアップの資金調達総額:日本 0.3兆 円、米国 24.4兆円→ ■ シリーズ別の資金調達額(2024年の中央値)
○ 海外資金の呼び込み  ○ 大企業によるスタートアップからの調達、M&A、事業やシーズのスピンアウトなどの促進 ○ 政府調達の拡大→■ 2023年度 1.4%(政府目標 3%)○ 一層の規制緩和、デジタル・AI時代に適した規制・制度の立案プロセスの見直し ○ 研究発スタートアップの創出・成長に向けた環境整備(経団連提言「Science to Startup」参照)、など
● とりわけ、スタートアップ政策を単独の取り組みとするのではなく、経済政 策全てに横断的にスタートアップエコシステムの拡大という視点を取り入れ るべき。戦略17分野への資金がほぼ全て大企業に吸い込まれることのないように。
● 人材を流動させることは賃上げにもつながる。賃金は最低賃金の引き上げと いう官製賃上げでは限界がある。人材が移動しやすい環境を整備し、生産性 の高い企業や産業に人材が流動することで賃金が上がっていくことが望まし い。
● 国境を超えて活躍できる人材の育成が急務。イノベーションを起こしグロー バル規模での大成功を実現するためにも、課題先進国である日本の国内の困 難な問題を解決するためにも、さまざまな文化的背景の人々を率いてことを なせる人材が必要だが、日本はこの層が薄い。以下に早急に取り組む; ○ 長期留学を桁違いに拡大→■ 米国における日本人留学生のシェア 3位4.6万人(2000年-2001 年) → 8位1.6万人(2022年-2023年) ○ 世界の優秀層(経済、ビジネス、研究のリーダー層)を日本に呼び込 み、日本人のリーダー層との協働環境の構築

2.マクロ経済政策運営について
● 経済政策全般を貫く思想として、張りきった人が報われる社会を目指してほしい。現状維持ではなく、変化に挑む企業や人が報われる形に軸足を移すべく、中小企業含めた産業政策、社会保障制度など各種制度をトータルで見直 すべき。
● 社会保障制度の見直しにあたっては、過去30年の延長でなく、イノベーショ ンの視点含め成長社会・経済にふさわしい制度への再設計が必要であり、 「社会保障改革元年」として取り組むべき。


◎資料7若田部議員提出資料
1.マクロ経済政策運営について
○当⾯どのようなテーマで検討を深めていくべきか 新しい時代にふさわしい新しい経済財政政策基本戦略の構築 若田部昌澄
1.基本⽅針:⾼圧経済
→ ・現状:インフレは復活したが半分以上はコスト・プッシュ、実質GDPは停滞 ・アベノミクスの成果と教訓・反省を踏まえた上で、時代状況に合わせた進化を⽬指す ・総需要をマクロ経済政策で適切に⽀えることが総供給の強化につながる 2.経済政策の基本戦略→・内外の経済理論・政策論の動向に学ぶ ・政策の統合運⽤:マクロ政策、成⻑政策、貿易政策、再分配政策の統⼀的運⽤ 財政政策、⾦融政策の緊密な連携:⽇銀法第4条の精神 ・政策策定のインフラ強化:予算、⼈員の増強を! 経済統計:例 賃上げを⽬標→より正確な賃⾦統計!リアルタイム歳⼊・歳出、GDP統計公表の先進国並み早期公表 モデル・試算 例 内閣府中⻑期試算の再検討(成⻑率、税収弾性値等) ・政策の正しいコミュニケーション 例 ⽇本の財政状況は(フローでもストックでも)改善している 3.財政政策の基本戦略:新しい時代状況に合わせた財政思想の転換、進化が必要 @物価が上がる世界を前提とした予算編成 インフレ対応型の歳⼊・歳出、⼀⽅で使命を終えた補助⾦の整理・⾒直し APB⿊字化⽬標はデフレ時代の歴史的産物、歴史的使命を終えた 過去:名⽬成⻑率<⻑期⾦利→PB⿊字化が必要 現在(2013年以降):名⽬成⻑率>⻑期⾦利→税収増加、⼀定の財政⾚字の許容可能 B財政単年度主義からの脱却:投資としての政府⽀出:危機管理(国防等)、成⻑投資 C債務残⾼対GDP⽐への着⽬:総債務か純債務か Cf. 「(財務省は)債務残⾼もいろいろある、という物の考え⽅をするようになった。科学的、冷静、客観 的、360度の⽬線がなければならず、⾮常にいい傾向だ」(11⽉4⽇⽚⼭さつき財務⼤⾂記者会⾒) D補正よりも本予算の充実(戦略性、予⾒可能性、持続可能性)→来年度予算編成へ
4.成⻑戦略(会議)との連携:成⻑戦略と枠組みを議論すべし ・成⻑の要は⺠間企業の活⼒:伝統的企業vsスタートアップではなくどちらも! ・財政政策との連携:必要なところには国がお⾦をつける ・危機管理・成⻑への中⻑期投資の枠組み(投資促進税制、社会的割引率⾒直し、基⾦) ・成功確率を上げる⼯夫・努⼒:対象の明確化、期限・出⼝と評価、市場による規律等

2.経済対策について
○留意すべきポイントは何か
@現状:短期的(7−9⽉期)⼤幅マイナス成⻑予想、コスト・プッシュ要因インフレ剥落 A内容:3つの柱建て(物価⾼対策、危機管理・成⻑投資、防衛⼒・外交⼒強化) B規模:昨年(13.9兆円)を上回る規模*需給ギャップ、インフレへの影響試算は必須 C政策コミュニケーション:対策の必要性、財政状況への配慮  以上

次回は新たに「第205回労働政策審議会労働条件分科会(資料)」からです。

第6回福祉人材確保専門委員会 資料 [2025年12月25日(Thu)]
第6回福祉人材確保専門委員会 資料(令和7年11月10日)
議事(1)福祉人材確保専門委員会における議論の整理(案)について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65751.html
◎参考資料2 介護人材確保の現状について  厚生労働省社会・援護局
1 介護人材を取り巻く状況

○日本の人口の推移→2070年には総人口が9,000万人を割り込み、高齢化率は39%の水準。
○2040年の人口構成→減少。
○第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について
○介護職員数の推移→他産業との就業者数等の伸びの比較、約20年間で約4倍。
○介護サービス事業所における従業員の過不足の状況→訪問介護の人手不足感が特に強い。

2 介護人材確保策(総論)2021年4月1日
○総合的な介護人材確保対策(主な取組)→@〜➄ 参照。
○地域医療介護総合確保基金(介護従事者確保分) ※メニュー事業の全体→「参入促進」・「資質の向上」・「労働環境・処遇の改善」等に資する事業を支援。2事業の概要・実施主体等  参照。
○介護保険事業(支援)計画について→保険給付の円滑な実施のため、3年間を1期とする介護保険事業(支援)計画を策定している。
○第9期介護保険事業計画の作成プロセスと支援ツールイメージ 《作成プロセス》等参照。
○介護人材需給推計における推計フロー 参照。
○「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会 とりまとめ(概要) 参照。

3 地域差を踏まえた各地域における人材確保の取組
○介護分野における人材確保の状況と労働市場の動向 〜有効求人倍率と失業率の動向〜 →依然として高い水準にあり、全職業より高い水準で推移している。
○都道府県別有効求人倍率(令和7年9月)と地域別の高齢化の状況
○介護関係職種の職業紹介状況(新規求人数・新規求職者数・新規求人倍率の推移)【月次】→新規求人倍率が上昇傾向
○入職経路(新卒以外)全産業と福祉分野の比較(2024年)→ •「縁故」、「広告」、「ハローワーク」の割合が多く占める。 • また、福祉分野は、全産業と比較し、「ハローワーク」、「民間職業紹介所」の割合が高い。
○(参考)入職経路(新卒以外)全産業と福祉分野の比較(2013年)
○介護人材の確保について(採用に効果があったもの)→・事業所側に「採用に効果があったもの」を尋ねたところ、最も多いのは「賃金水準の向上」(22.5%)。 ・ 次いで、「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」の19.2%、「人間関係が良好な職場づくり」12.5%、 「本人の希望や人間関係などに配慮した配置・異動」の8.6%、「仕事と育児や介護の両立支援」の8.4%の順となった。
○法人規模別にみた従業員の採用活動における取組状況→従業員の採用活動を行っていない割合が高い。
○プラットフォームについて(介護人材確保の例)→• 地域の関係者のネットワークで「プラットフォーム」を構築し、関係者間で地域の現状の共有を図るとともに、各地域や事業所 における課題を認識し、協働して課題解決に取り組む。※介護人材だけでなく、広く福祉人材の確保の観点から捉えることも必要
○各地の協議会等の取組例→5府県あり。
○きょうと介護・福祉ジョブネットの取組→ R7京都府における介護・福祉人材確保・定着に向けた取組(検討体制)  参照。
○富山県福祉人材確保対策・介護現場革新会議の取組→ 富山県福祉人材確保対策・介護現場革新会議 参照。
○広島県福祉・介護人材確保等総合支援協議会の取組→ 広島県福祉・介護人材確保等総合支援協議会  参照。
○介護の理解促進等に係る連携の例 広島県福祉・介護人材確保等 総合支援協議会 参照。
○静岡県社会福祉人材センター→ハローワーク・介護労働安定センターとの連携  参照。
○静岡県社会福祉人材センター 人材確保に係る地域のネットワーク組織
○茨城県福祉人材センター「ちいすけ」イバラキ 〜茨城県介護助手等普及推進事業〜
○学福連携プロジェクト〜近隣社会福祉法人・養成施設間の連携〜→•埼玉県内地域の7つの社会福祉法人と1つの介護福祉士養成施設が連携し、地域貢献事業として奨学金を設立。
○専門学校が複数自治体と包括連携協定を締結し、学生確保と地域での介護人材 の発掘・確保に取り組む(栗山町立北海道介護福祉学校) 参照。
○介護テクノロジー等の相談支援と雇用管理改善の連携の例(介護労働安定センター)参照。
○福祉人材センターについて→社会福祉法に基づき、中央福祉人材センター及び都道府県福祉人材センターを設置し、福祉分野への就労を希望する者への職業紹介や就職説明会等を実施することにより、社会福祉事業従事者の確保を推進するもの。
○都道府県福祉人材センターにおける地域の実情を踏まえた 効果的な事業の実施等の促進に向けた対応について(概要) (令和6年4月4日付け厚生労働省社会・援護局福祉基盤課長通知)→各センターがその事業実績や強みを発揮できるよう、各センターと連携した対策を推進するよう都道府県に依頼。 参照。
○介護職員初任者研修等の受講支援に資する 主な地域医療介護総合確保基金事業(介護従事者確保分)→@〜➁  参照。
○実務者研修受講に当たっての支援→1受講者に対する受講費用の支援 2地域医療介護総合確保基金における支援(国負担2/3)  参照。

4 若者・高齢者・未経験者などの多様な人材の確保
○介護職員の現状→介護職員(施設等)は30〜59歳、訪問介護員は40〜59歳が 主流。 ・男女別に見ると、介護職員(施設等)、訪問介護員いずれも女性の比率が高く、男性は30〜49歳 が主流であるが、女性については40歳以上の割合が高くなっている。
○介護職員の現状A勤続年数→・訪問介護職員、介護職員ともに5年以上10年未満の割合が最も多い。 ・介護福祉士の過半数は、5年以上同一の事業所で勤務している。
○離職率・採用率の状況→介護職員の離職率は低下傾向にある。
○離職率階級別にみた事業所規模別の状況→事業所別に見るとバラツキが見られ、10%未満の事業所が約5割、離職率が30%以上と著しく高い事業所も約1割存在する。
○介護人材の確保について(介護職員の主な離職の要因及び主な離職防止対策)→・「職場の人間関係に問題があったため」が一番多くなっている。 ・早期離職防止・定着促進について、事業所側に「効果があった」施策を尋ねたところ、「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」、「人間関係が良好な職場づくり」の順となっている。
○介護のしごと魅力発信等事業→・介護人材の確保にあたっては、人材の裾野の拡大を進めて多様な人材の参入促進を図ることから、平成30年度以降、 介護の仕事のイメージや社会的評価の向上、理解の促進を図るため、介護の仕事の魅力発信に関する取組を実施してきた。 ・厚労省においては、発信力がある事業者による全国的なイベントやマスメディア、ネット広告などの企画・発信を行いつつ、最前線で ある現場の視点から、介護職など自らが主体となり、自らの声で仕事の魅力・やりがい・誇りを発信するコンテンツの企画・制作等を行い、発信力のある事業者と連携して広く発信することで、事業効果の最大化を図る。 ・ 都道府県においては、地域医療介護総合確保基金を活用し、地域の社会資源や人口構成等の実情に応じた介護の仕事の魅力発信や、求職者に対する支援施策等の周知を行うことにより、多様な人材の参入促進・定着を図る。⇒2 事業スキーム・実施主体等 参照。
○介護のしごと魅力発信ポータルサイト(介護のしごと魅力発信等事業)→介護のしごと魅力発信ポータルサイト 「知る。わかる。介護のしごと」 https://kaigonoshigoto.jp/
○介護現場における生産性向上(業務改善)の捉え方と生産性向上ガイドライン→介護現場における生産性向上とは、介護ロボット等のテクノロジーを活用し、業務の改善や効率化等を進めることにより、職員の業務負担の軽減を図るとともに、業務の改善や効率化により生み出した時間を直接的な介護ケアの業務に充て、利用者と 職員が接する時間を増やすなど、介護サービスの質の向上にも繋げていくこと
○より良い職場・サービスのために今日からできること(業務改善の手引き) (介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン)→@職場環境の整備A業務の明確化と役割分担 (1)業務全体の流れを再構築A業務の明確化と役割分担 (2)テクノロジーの活用B手順書の作成・・・・F理念・行動指針の徹底  参照。
○介護分野におけるテクノロジーの活用例 参照。
○「介護助手」等の普及を通じた介護現場での多様な就労の促進→都道府県福祉人材センターに「介護助手等普及推進員」を配置し、市町村社会福祉協議会等を巡回して周知活動を行い、 介護助手等希望者の掘り起こしを行う。 併せて、介護事業所に対し、介護職の業務の機能分化や介護助手等のステップアップの手法を助言するとともに、介護 助手にかかる求人提出の働きかけを行うことにより、介護の周辺業務を担う人材の確保を促す。
○介護助手の配置による業務の変化(特別養護老人ホーム)→業務の量・負担感は、72.8%の施設が「減少した」と回答した。 介護サービスの質は、「変わらない」が52.5%である一方で、「向上した」と 回答した施設も37.1%を占めた。
○入門的研修の概要→介護に関心を持つ介護未経験者に対して、 介護の業務に携わる上での不安を払拭するため、基本的な知識を研修することにより 介護分野への参入を促進する。
○入門的研修と各種研修等との関係→資格者、無資格者との関係あり。 参照。
○(参考)介護に関する入門的研修の実施等からマッチングまでの 一体的支援研究事業
○富山県福祉人材センター 介護福祉士養成学校との連携による地域を基盤とした介護助手普及促進→目的、取り組み内容の参照。
○介護の入門的研修から入職までの一体的支援の取組 〜介護事業者と協働した駒ヶ根市(長野県)の事例〜→1概要 2一体的支援各ステップの特徴 参照。
○【○介護人材の確保、育成及び定着に向けた取組支援】 施策名:介護未経験者マッチング機能強化モデル事業→@〜➄ 参照。
○(参考)地方自治体と民間事業者が連携した介護人材確保の取組の事例(埼玉県川口市) →川口市におけるスケッターを活用した多様な人材層の参入促進を図る実証事業
○(参考)介護現場特化のスキルシェアサービスで介護関係人口を増やす取組
○介護現場における多様な働き方導入モデル事業 (地域医療介護総合確保基金の事業メニュー)  参照。

5 中核的介護人材の確保
○介護人材確保の目指す姿〜「まんじゅう型」から「富士山型」へ〜 平成27年2月25日社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会報告書  参照。
○「介護福祉士のキャリアアップにおける職場環境等の影響に関する調査研究事業」 (令和5年度老人保健健康増進等事業)報告書(概要)→<山脈型キャリアモデルについて>
○「介護福祉士のキャリアアップにおける職場環境等の影響に関する調査研究事業」(令和5年度老人保健健康増進等事業)報告書(概要)→<山脈型キャリアモデルに対応する役割・研修体系例>→山脈型キャリアモデルに示した介護職のキャリア⓪〜Eについて、それぞれに対応する役割と研修体系例を整理。
○【○介護人材の確保、育成及び定着に向けた取組支援】 施策名:山脈型キャリアモデル普及促進モデル事業→@〜➄ 参照。
○【参考】多様なキャリアパスを明確化し、職員のキャリアアップを支援する仕組みを 整備した事例 〜社会福祉法人 杏樹会〜→・法人内で歩める多様なキャリアパス(教育志向、熟練志向、マネジメント志向、職種転換志向)のイメージを視覚化し、各キャリアに求められる仕事を職務記述書で明確化。 ・ 個々の職員の意向に沿ったキャリアパスビジョンシート(キャリアアップ計画)を作成し、その目標に沿って育成を実施。 ・ 客観的で根拠のある評価を行うため、OJTチェック表等を活用し、定期面談で日々の成長を双方で確認。・各キャリアと給与等級を紐づけ、それぞれの職員が多様な経験を重ね、将来のキャリアイメージを描きながら業務に従事で きる仕組みを構築。
○介護人材の届出システムの概要→社会福祉法第95条の3により、社会福祉事業等に従事している介護福祉士等が離職した場合などにおいて、住所、氏名などの情報を 都道府県福祉人材センターへ届け出ることが努力義務となっている。 ※介護職員初任者研修、介護職員実務者研修、(旧)介護職員基礎研修、(旧)ホームヘルパー養成研修1級・2級課程の修了者も届け出ることが可能となっている。⇒1〜5までの参照。
○介護福祉士等届出者数の推移→・令和7年9月末時点の介護福祉士等有資格者の届出数は55,702人で、インターネット届出は全体の3分の2以上を占めている。
○福祉人材センターによる介護人材の復職支援の強化→・都道府県福祉人材センターによる介護人材の復職支援を強化するため、離職者情報の把握や効果的な 復職支援を行うための届出システムを構築。 ・ 復職に関する情報提供など「求職者」になる前の段階から総合的な支援、就職あっせんと復職研修な ど、ニーズに応じたきめ細かな対応を実施。・ 地方公共団体やハローワーク等との連携強化による復職支援体制を強化。
○社会福祉士養成課程と精神保健福祉士養成課程との共通科目化について(令和3年度から順次実施)→・共通科目=同じ名称で教育内容も同じ科目(13科目)
○介護福祉士養成施設の教育内容及び時間数について→第1号養成施設〜第1号養成施設
○実務者研修の科目及び時間数について→・介護業務の実務経験3年以上に加えて、実務者研修を修了し、介護福祉士国家試験に合格することで資格を取得。・実務者研修は、都道府県知事等による指定を受けた機関等(介護福祉士実務者養成施設等)において実施。 ・修業年限は、6ヶ月以上(ただし、他の一定の研修を修了、実務者研修の科目について一部読み替えがされる場合は1ヶ月以上)。
○(参考)学校教育法の一部を改正する法律の概要(文部科学省作成資料)→リスキリング・リカレント教育を含めた職業教育の重要性が高まっていること等を踏まえ、専修学校における教育の充実を図るため、専門課程の入学資格を厳格化するとともに、専修学校における専攻科の設置に係る規定の創設、一定の要件を満たす専門課程の修了者への称号の付与、専門課程を置く専修学校への自己点検評価の義務付け等の措置を講ずる。⇒概要(@〜➄まで)、施行日:令和8年4月1日
○学校教育法の改正を受けた主な制度改正事項(案)※今後、学校教育法施行令、学校教育法施行規則、専修学校設置基準等を改正予定。→専門課程、専攻科についての改正後あり。
○介護福祉士の資格の概要  参照。
○介護福祉士養成施設の卒業生の国家試験義務付けに関する経過措置について→令和8年度までの卒業生には、以下の経過措置が設けられている。 @卒業後5年間:国家試験を受験・合格しなくても介護福祉士の資格を取得可能。 A卒業後6年目以降:卒業後5年間、介護等の業務に継続的に従事していれば、引き続き資格を取得可能。
○介護福祉士資格取得方法の一元化の経緯
○地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律の概要 <介護福祉士養成施設卒業者への国家試験義務付けに係る経過措置延長部分>
○地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議第201回国会 (令和2年5月22日衆議院厚生労働委員会)
○地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議第201回国会 (令和2年6月4日参議院厚生労働委員会)
○介護福祉士養成施設の定員充足状況の推移
○介護福祉士国家試験受験者数の推移(全体) 参照。
○介護福祉士国家試験受験者数等の推移(実務経験ルート)
○介護福祉士国家試験受験者数等の推移(養成施設ルート)
○介護福祉士国家試験合格率の状況(養成施設ルート)→・養成施設ルートの試験合格率は、日本人は9割を超えるが、留学生は4割弱。 ・留学生の合格率は、新卒者は5割程度である一方、既卒者は直近の試験では1割程度。
○令和6年度第37回介護福祉士国家試験合格率の状況(養成施設ルート)
○養成施設の合格率分布(留学生)→・第37回(令和6年度実施)介護福祉士国家試験の養成施設ごとの留学生合格率の割合を比べたもの。 ・新卒者の合格率でみた場合、およそ4割の養成施設が合格率75%以上であるが、 既卒者の合格率でみた場合、合格率25%未満の養成施設が全体のおよそ8割を占めている。
○入学者数に対する介護福祉士国家試験受験者の割合→養成施設全体の入学者数、卒業者数、介護福祉士国家試験の受験者数の関係をみると、入学者のうち、卒業時 国家試験を受験するのは8割程度となっている。
○養成施設令和6年度介護福祉士国家試験受験率及び合格率→【養成施設ルート】 参照。
○【経過措置施行以降全体】介護福祉士国家資格取得者の資格取得ルート等について 参照。
○【卒業から既に5年経過をしている者】介護福祉士国家資格取得者の資格取得ルート等について(H29年9月〜R2年3月卒業者)→・平成28年の法改正で経過措置(@卒業後5年間:国家試験を受験しなくても介護福祉士の資格を取得可能。 A卒業後6年目以降:卒業後5年間、介護等の業務に継続的に従事していれば、引き続き資格を取得可能)を導入し、平成29年度に施行したところ。 ・ 国家試験合格ではなく、経過措置に基づき介護福祉士資格を登録した者について、既に@の期間が経過した登録者の状況等(令和7年4 月15日時点)を整理すると以下のとおりとなる。 参照のこと。
○介護福祉士養成における教育の向上/留学生指導についてのガイドライン→令和2年度から令和4年度にかけて介護福祉士養成における教育の向上や留学生指導について調査・分析を行いガイドラインを作成した。 留学生への指導を強化する観点から、@留学生指導についてのガイドライン、A留学生指導についての指導のポイント、B留学生のための学習ハ ンドブックを作成し、介護福祉士養成施設などで活用している。
○【○介護人材の確保、育成及び定着に向けた取組支援】 施策名:介護福祉士修学資金等貸付事業→@〜➄ 参照。
○介護福祉士修学資金等貸付事業概要  参照。
○外国人留学生への奨学金の給付等に係る支援事業 ※地域医療介護総合確保基金(介護従事者確保分)のメニュー(外国人留学生及び1号特定技能外国人の受入環境整備事業)
○養成施設から特定技能1号への移行→ 養成施設の留学生が国家試験に不合格だった場合、特定技能1号に移行することができる。 この際、養成課程での学修を評価し、特定技能評価試験は免除される。 ※ 現在は、経過措置により、養成施設の留学生が国家試験に不合格だった場合でも、介護福祉士の国家資格を取得できるため、在留資格 「介護」での在留が可能となることから、実質的には機能していない。
○【概要】「介護福祉士国家試験パート合格の導入に関する検討会」報告書→1〜6の参照。
○パート合格(合格パートの受験免除)の導入について(イメージ) 参照。

6 外国人介護人材の確保・定着
○外国人介護人材受入れの仕組み→EPA(経済連携協定)(インドネシア・フィリピン・ベトナム)在留者数 2,670人(うち資格取得者522人)(令和7年10月1日時点)。 在留資格「介護」(H29.9/1〜)12,227人(令和6年12月末時点)。 技能実習(H29.11/1〜) 20,065人(令和6年12月末時点)。 特定技能1号(H31.4/1〜)54,916人(令和7年6月末時点)。 4部門の参照のこと。
○介護分野の特定技能外国人在留者数の推移→・受入を開始した2019年以降、継続して増加。 ・直近の2025年6月末の在留者数は約5万5千人であり、過去最多となっている。
○特定技能「介護技能評価試験」「介護日本語評価試験」の実施状況→・2025年8月時点で日本国内(47都道府県)及び海外13カ国において試験実施済み。 ・これまで介護技能評価試験に計151,143名、介護日本語評価試験に計139,507名が合格(2019年4月〜2025年8月試験の実績)。
○外国人介護人材受入・定着支援等事業→1事業の目的2事業の概要・スキーム 参照。
○海外に向けた日本の介護についてのPR→ 海外向けのオンライン/現地説明会の開催
○外国人介護人材受入施設等環境整備事業 ※地域医療介護総合確保基金(介護従事者確保分)のメニュー→介護施設等において外国人介護人材を受け入れるための環境整備等にかかる費用の一部を助成する。
○介護の日本語学習支援等事業→1〜4あり。参照。
○外国人介護人材のための国家資格取得支援講座→2事業の概要 参照のこと。
○日本語能力試験のレベル別国家試験の合否(外国人介護人材)→日本語能力試験のレベル別国家試験(筆記試験)の合否 「日本語能力試験(JLPT)」のレベルが高いほど、国家試験の合格率が高い。
○在留資格別・日本語能力試験のレベル別 国家試験の合否(外国人介護人材)→N2以上での国家試験合格者の割合は、特定活動と留学は約8割、技能実習と特定技能は5割強。
○介護福祉士国家試験を受けた理由(外国人介護人材)→日本で長く働き続けるため、住み続けるために国家試験を受けた人が多い。
○職場やアルバイト先、監理団体、登録支援機関から受けた支援(外国人介護人材)→支援内容として、施設や法人の職員が勉強を教える例が多い。
○(参考)外国人介護人材が初任者研修を受講等によりキャリアアップを目指す事例 〜有限会社ウエハラ:年次ごとにカリキュラムを組み立て、 介護福祉士国家試験までの学習をサポート〜
○地域医療介護総合確保基金を活用した自治体の取組(滋賀県〜事業者団体と県の共同による外国人介護人材のマッチングから定着等の一貫支援の実施〜)→滋賀県では、外国人介護人材の確保〜定着支援を行うため、関係機関と連携して「滋賀県国際介護・福祉人材センター」を設置し、基金を活用してマッチング支援や人材育成・定着支援等に取り組んでいる。
滋賀県国際介護・福祉人材センターホームページ(https://shiga-kokusaijinzai.jp/
○大分県の取組事例(外国人介護人材確保に向けた連携協定)→◆インドネシア共和国介護人材養成機関・県社協・県との3者協定を締結。
○【○介護人材の確保、育成及び定着に向けた取組支援】 施策名:外国人介護人材獲得強化事業→@〜➄の参照。
○【○介護人材の確保、育成及び定着に向けた取組支援】施策名:外国人介護人材定着促進事業→@〜➄の参照。
○外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について→検討経過・改正の概要等⇒受入事業所は、利用者・家族へ事前に説明を行うとともに、以下の事項を遵守→@ 外国人介護人材に対し、訪問介護等の業務の基本事項等に関する研修を行うこと A 外国人介護人材が訪問介護等の業務に従事する際、一定期間、責任者等が同行する等により必要な訓練 を行うこと B 外国人介護人材に対し、訪問介護等における業務の内容等について丁寧に説明を行いその意向等を確認 しつつ、キャリアアップ計画を作成すること C ハラスメント防止のために相談窓口の設置等の必要な措置を講ずること D 外国人介護人材が訪問介護等の業務に従事する現場において不測の事態が発生した場合等に適切な対応 を行うことができるよう、情報通信技術の活用を含めた必要な環境整備を行うこと 令和7年4月施行。
○「准介護福祉士」について
○准介護福祉士の経緯
○(参考)法改正時の福祉部会(平成19年3月9日開催)での議論
○(参考)EPAにおける就学コースについて
○日比EPAに基づく看護師・介護福祉士候補者の受入れについて 第16回看護師・介護福祉士に関する特別小委員会(2022年(令和4年)11月22日)概要抜粋→ 委員会終了後、議事録(ROD)について日比双方による確認・署名が行われ、准介 護福祉士の廃止についてはフィリピン政府からの意見無く終了している。


◎委員提出資料 「介護福祉士が実践している中核的役割と機能」について
○アンケート調査(@〜10)の実施結果として↓

・各施設・事業所で、これらの役割・機能について、「業務として位置づけられているか」を確認した ところ、約3分の1の施設・事業所では、業務としての位置づけがない、又は、位置づけがあるか 分からない、との回答だった。
・「 業務 としての位置づけ」がある施設・事業所では、これらの役割・機能を担っているのは、ほとんどが、介護福祉士有資格者であることが確認された。
・ここで取り上げた役割・機能については精査・整理が必要ではあるが、施設・事業所の介護職チームにおいて、これらの役割・機能は重要なものであり、業務として位置づけられていない現状は改善が必要である。
・介護職チームの中核的な役割を担う介護福祉士が、これらの 役割・機能を十分に担っていける環境が整備されることが 望ましい。

次回は新たに「第12回経済財政諮問会議」からです。

第6回福祉人材確保専門委員会 資料 [2025年12月25日(Thu)]
第6回福祉人材確保専門委員会 資料(令和7年11月10日)
議事(1)福祉人材確保専門委員会における議論の整理(案)について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65751.html
◎資料2 福祉人材確保専門委員会における議論の整理(案)(概要)
○福祉人材確保専門委員会における議論の整理(案)(ポイント)令和7年11月10日
◆基本的な考え方
→・2040年には、65歳以上の高齢者数がピークを迎えるとともに、介護と医療の複合ニーズを抱える85歳以上人口が増加するなど、 介護ニーズは多様化・複雑化。現役世代である生産年齢人口の減少も見込まれる中、将来にわたって必要な介護サービスを安心 して受けられるよう、その担い手を確保することは喫緊の課題。 ・今後の人口減少のスピードが地域によって異なる中で、地域のサービス提供体制を確保するため、地域ごとに抱える課題の共有 と必要な対応の実行、外国人を含む多様な人材の確保、介護現場で中核的な役割を担う介護福祉士等の確保・養成など、福祉部 会等で更に議論を深めた上で、介護人材確保策をより一層進めていくことが重要。
◆地域差を踏まえた各地域における人材確保の取組(プラットフォーム機能の充実)→・都道府県が設置主体となって、人材確保に関する地域の関 係者が地域の実情等の情報を収集・共有・分析、課題を認識し、協働して実践的に課題解決に取り組むためのプラッ トフォームの制度化。 ・都道府県単位の情報共有の場に加え、「人材確保・定着」 「職場環境の改善、生産性向上・経営支援」「介護のイ メージ改善・理解促進」などの地域ごとの個別の課題に応じたプロジェクトチームの設置による重層的な構造
◆若者・高齢者・未経験者などの多様な人材の確保・育成・定着→・テクノロジーの導入・社会的課題への対応等の側面からの情報発信。 ・テクノロジーの活用による介護の質の向上と業務負担軽減、働きやすい環境づくりの整備、業務の整理・切り出しを進めいわゆる介護助手を活用することで、タスクシフト/ シェアを進めることによる業務改善・生産性向上
◆中核的介護人材の確保・育成→・中核的介護人材が担うべき役割・機能や必要な資質・能力 の整理、研修体系の整備、山脈型キャリアモデルの深化。 ・潜在介護福祉士に係る届出制度の現任者への拡充。 ・幅広い専門性や視点を有する人材の確保・育成のため、複 数資格の取得に係る方策として実務者研修の科目免除・単 位制の導入等。 ・令和8年度卒業者までの介護福祉士養成施設卒業者に対する国家試験義務付けの経過措置について、終了・延長両方 の意見や、今後の養成施設の役割も踏まえた適切な対応。 ・介護福祉士養成施設の今後の在り方(国家資格の取得に向 けた取組の強化、地域の担い手に対する研修、ICT教育、 介護職員・他分野で働く人材へのリカレント教育等)
◆外国人介護人材の確保・定着→・小規模法人における外国人介護人材の確保・定着のため、 海外現地での働きかけ、日本語教育や文化の違いへの対応、 生活環境整備など地域ごとに必要な支援策の検討(プラットフォーム機能の活用)。 ・准介護福祉士制度について、廃止すべきとの意見を踏まえ、 フィリピン政府との関係等も考慮した適切な対応
◆介護人材を取り巻く状況→・2040年には、65歳以上の高齢者数がピークを迎え、介護ニーズは多様化・複雑化していく。・将来にわたって必要な介護サービスを安心して受けられるよう、 その担い手を確保することは喫緊の課題。・これまでの取組(※)に加え、より一層、人材確保策を強力に進めていくことで、介護サービスの提供体制を確保し ていく必要がある。 ※介護職員の処遇改善、多様な人材の確保・育成、離職防止・定着支援・生産性向上、介護職の魅力向上、外国人材の受入環境整備
◆地域差を踏まえた各地域における人材確保の取組(プラットフォーム機能の充実)→・都道府県が設置主体となって、介護人材確保に関するプラットフォームを構築する必要がある。 ・介護人材確保に関する地域の関係者が地域の実情等の情報を収集・共有・分析することで課題を認識、それぞれの役割・機能(例:公的機関の役割として、事業者の抱える課題に対する支援を実施)を果たしながら、 ネットワークの中で協働して実践的に課題解決に取り組むことが必要。 ・都道府県単位の情報共有の場に加え、より狭い圏域で「人材確保・定着」、「職場環境の改善、生産性向上・経営支援」、「介護のイメージ改善・理解促進」などの地域ごとの個別の課題に応じたプロジェクトチームを設置するといった重層的な構造を取ることで、情報の収集・共有・分析、課題の発見、課題に応じた取組の実施、取組の効果の 検証、改善して次の取組につなげていくPDCAサイクルを回すこととする。 ・福祉人材センターがコーディネーター的な中核的役割を担い、関係者の取組を連携させることが考えられる。・地域における既存の協議会等との一体的な運営など適切な連携・役割分担を図ることや、広く福祉分野全体の人材確 保の観点から活用することの検討も必要である。
◆若者・高齢者・未経験者などの多様な人材の確保・育成・定着→(情報発信・広報戦略)⇒・テクノロジー導入・社会的課題への対応等の最新の介護に関する情報発信、プラットフォームも活用した地域の実情 を踏まえた広報戦略の検討、職場体験・インターンシップ等による地域の関係者の福祉現場の理解促進が重要。 (テクノロジーの活用による業務負担軽減、介護助手の活用による業務改善等)⇒定着支援の観点から、テクノロジーの活用による介護の質の向上と業務負担軽減、加えてテクノロジーを活用できる 人材の育成が必要である。また、働きやすい環境づくりのための雇用管理についても、プラットフォームの中でも議 論をしながら、取組を進めていく必要がある。加えて、業務の整理・切り出しにより介護の直接業務とその他業務を 明確化し、介護現場における周辺業務を担ういわゆる介護助手を活用することで、タスクシフト/シェアを進めること による業務改善・生産性向上が推進される。
◆中核的介護人材の確保・育成→(中核的介護人材の役割等)⇒多様な人材の確保にあたって、介護職チームを適切に機能させるために必要な中核的な役割を担う人材の確保が必 要になるため、中核的介護人材が担うべき具体的役割・機能や必要な資質・能力の整理、これを身につけるための 研修体系の整備の検討が必要である。あわせて、山脈型キャリアモデル(※)をより深化させる検討も必要である。 ※サービスや経営のマネジメントを行う役割に加え、認知症ケア・看取りケア等の特定のスキルを極めることや、現場に加え地域全体の 介護力向上を進めることなど、介護人材が目指す複数のキャリアパス
(介護福祉士の届出制度)⇒介護福祉士が離職した場合の届出制度について、現行の潜在介護福祉士への復職支援に加え、現任の介護福祉士に も届出の努力義務を課すことで、地域の介護人材の実態把握や必要なキャリア支援を行うための仕組みに発展させることが必要。その際、届出情報の有効活用や、届出の具体的なメリット(研修情報提供等)が必要である。 (複数資格の取得に係る方策)⇒地域の多様なニーズに対応する観点から、ある特定の分野にとどまらない幅広い専門性や視点を有する人材の確 保・育成のため、資格の役割や専門性にも配慮しながら、他の国家資格の養成課程を修了している場合等の実務者 研修
(※)の科目免除、養成施設における単位制の導入等が必要である。 ※実務経験者が介護福祉士国家試験の受験資格を得るために必要な研修。
(介護福祉士養成施設卒業者の国家試験義務付けの経過措置)⇒令和8年度卒業者までの介護福祉士養成施設卒業者に対する国家試験義務付けの経過措置については、これまでの経 緯・取組を踏まえつつ、資格の質の担保、専門性の向上等の観点から終了すべきといった意見、介護福祉士養成施設 の入学者、介護人材確保等の観点から延長すべきといった意見、人材の質・量の両面での検討が必要であり本経過措 置を延長するか否かという二者択一の議論だけでは不十分であるといった意見など、本専門委員会での意見を踏まえ つつ、介護福祉士養成施設の役割も勘案しながら、必要な対応を講じられたい。
(介護福祉士養成施設の役割)⇒介護福祉士養成施設の今後の方向性として、国家資格の取得に向けた取組の強化(好事例の分析・収集・展開、日本 語教育の充実等)に加え、地域において期待される役割(地域の担い手に対する研修、ICT教育の実施、介護職員・ 他分野で働く人材へのリカレント教育、既卒者への国家試験対策講座等)を果たしていくことについてもあわせて検 討が必要である。
◆外国人介護人材の確保・定着→・小規模法人における外国人介護人材の確保・定着のため、プラットフォーム機能を活用することにより、海外現地で の働きかけなどの確保策、日本語教育や文化の違いへの対応、生活環境整備などの定着策といった地域ごとに必要な 対策を検討することが必要。 ・准介護福祉士については、資格に対する社会的評価・資質の担保や、介護福祉士の専門職としての地位の向上・確立 の観点から廃止すべきとの意見があったことを踏まえ、フィリピン国政府との関係等も考慮しながら適切に対応すべきである。
◆今後の方向性について→今後の人口減少のスピードが地域によって異なる中で、地域のサービス提供体制を確保するため、人材確保は最重要課 題である。地域ごとに抱える課題の共有と必要な対応の実行、外国人を含む多様な人材の確保、介護現場で中核的な役 割を担う介護福祉士等の確保・養成など、介護人材確保策を検討する上で勘案すべき要素は多岐に渡る。福祉部会に報告して更に議論を深めるとともに、介護保険部会等においても必要な議論を進め、多面的な観点で今後の介護人材確保 策をより一層進めていくことが重要。


◎参考資料1 介護保険部会における介護人材確保に関する主なご意見
○介護保険部会における介護人材確保に関する主なご意見 (第127回社会保障審議会介護保険部会(令和7年10月27日))
◆介護人材確保について
→・都道府県が設置主体になって、事務局機能を人材センターが担うという御提案については反対するものではない。 また、スキマバイトなど民間のいろいろな募集方法が広がってきており、それらに迅速に対応するとともに人材定着を目指す募集を考えてほしい。 ・ 国・都道府県、市町村、地域の関係者がそれぞれの役割を明確化した上で一体的に進めていくことを、介護保険事業支援 計画等に位置付けていくことは重要。その際、関係者間の連携が実効性のあるような取組となるよう、国が責任を持って主 導あるいは支援策を講じてほしい。 ・ これまで取り組んできた介護人材確保対策について、国として総括した上で政策の評価をしてPDCAを回すことが必要。社会保障分野に飛び込んでくる若者の数は労働人口の減少よりもっと減っている。エッセンシャルワーカーの学校定員と入学者数の乖離はどんどん大きくなっている。具体的でドラスチックな対策を取っていかないと先行きがない。 ・ 実際に機能する仕組みにすることが重要。また、職能団体を含む関係団体と人材センターの関係が強化されることを期待。 ・ 今後、人口減少地域について、特に市町村や圏域を越えた連携が必要であり、都道府県が設置主体となり、地域の実情に 応じて第2層を市町村など狭い単位に設置しながら、関係者との連携の枠組みを構築していくことにはおおむね賛成する。 また、外国人の養成は必要ではあるが、言語や日本文化の理解なども併せた技能の習得と介護の質の担保を図る必要がある。現場の職員の中には、人材不足により研修を受ける時間が取れないという話も聞く。一定の介護の質が担保されることを基本として取り組んでほしい。 ・ 直近の介護職員数が減少に転じている要因が、他産業が大幅に賃金改善を進める中で、介護従事者の処遇改善が十分ではないことで、賃金の格差が拡大、他産業への人材流出が起きていることは容易に想像できる。介護従事者の処遇改善について、あるべき水準を明確にするとともに、その実現に向けて早急に議論を進めてほしい。
・プラットフォームは有用であるが、そもそも人材センターやハローワークを訪れる人が少ない。そのため、人材センターの人手不足もあるが、マッチングする相手が少ないことが問題。 養成施設等だけでなく、人材センターやハローワーク等でも研修等を受講可能にするなど工夫し、介護職員数を増やすことが必要。 ・介護業界はハローワークからのつなぎが非常に他の産業と比べて低いという実態があるため、マッチング機能の強化を行いながら、ハローワークの機能強化につなげていくことが必要。 ・介護人材確保は急務であって、都道府県にある現行の各種会議や介護生産性向上総合相談センター、人材センター等の役割を明確にした枠組みを発展させることが重要。枠組みを検討する中で、潜在的な有資格者等の把握とともに、活躍の場を広げ、より多様な視点で専門学校や職能団体等、関係機関との連携ネットワークの構築に期待。 民間の人材紹介会社等は、転職も含め、個人の特性・要望に即した利用しやすい実態があると考えられる。ハローワーク や人材センターにもそのような機能が必要。

次回も続き「参考資料2 介護人材確保の現状について」からです。

第6回福祉人材確保専門委員会 資料 [2025年12月24日(Wed)]
第6回福祉人材確保専門委員会 資料(令和7年11月10日)
議事(1)福祉人材確保専門委員会における議論の整理(案)について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65751.html
◎資料1 福祉人材確保専門委員会における議論の整理(案)
令和7年11月10日 社会保障審議会福祉部会 福祉人材確保専門委員会
T.はじめに
(基本的な考え方) 1.介護人材を取り巻く状況
(介護人材を取り巻く状況)
→2040年には、65歳以上の高齢者数がピークを迎えるとともに、介護と医療の複合ニーズを抱える 85 歳以上人口が増加する。このような一層の高齢 化の進展とともに、認知症高齢者の増加や独居の高齢者等の増加も見込まれるなど、介護ニーズは多様化・複雑化していく。 一方で、現役世代である生産年齢人口の減少も見込まれる中、将来にわたって必要な介護サービスを安心して受けられるよう、その担い手を確保することは喫緊の課題である。
(介護職員の必要数・推移)→・こうした中、現在の第9期介護保険事業計画の介護サービス見込み量等に基づき、都道府県が推計した介護職員の必要数を集計すると、⇒・ 2026年度には約240万人(+約25万人) ・ 2040年度には約272万人(+約57万人) の介護職員数が必要とされている。 ※ 括弧内は2022年の介護職員数215.4万人と比較して新たに確保が必要な介護職員の数。 ・ 介護保険制度が創設された 2000 年時点には、要介護・要支援認定者数は 約244万人であったところ、2023年には約705万人と、3倍近く増加して いる状況。利用者に対して介護サービスの提供を行う介護職員数についても、同様に増加しており、2000年時点では約54.9万人であったところ、 2023 年の介護職員数は212.6万人と、4倍近く増加している(※)。一方で、 2022 年からは約2.9万人の減少と、初めて減少に転じた。 ※「労働力調査」によると、全産業の労働者数は2000年時点では約6,446万人であったところ、2023 年時点では約 6,747 万人と約1.05 倍の増加であり、他産業と比較して、これまで介護職員の確保が行われてきたことが伺える。
(介護人材確保に係るこれまでの取組)→・ 介護人材確保のため、国においては介護職員の処遇改善、多様な人材の確保・育成、離職防止・定着支援・生産性向上、介護職の魅力向上、外国人材の受入環境整備に取り組むとともに、地域医療介護総合確保基金においても、 都道府県における地域の実情に応じた介護従事者確保のために、参入促進、 資質の向上、労働環境・処遇の改善の観点から様々なメニューを設けるなど、総合的な対策を講じている。 ※ このうち、処遇改善については、経済財政運営と改革の基本方針 2025(令和7年 6月 13 日閣議決定)において、「2025 年春季労使交渉における力強い賃上げの実現 や昨今の物価上昇による影響等について、経営の安定や現場で働く幅広い職種の方々 の賃上げに確実につながるよう、的確な対応を行う。」「 介護・障害福祉分野の職員の 他職種と遜色のない処遇改善や業務負担軽減等の実現に取り組む」とされている。

2.議論の経緯 (「 2040 年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会について)→ 2040年に向けて、人口減少のスピードが地域によって異なる中、 ・ 予防・健康づくり、人材確保・定着、デジタル活用等を通じて、地域包括ケアを維持した上で、地域別のサービス提供モデルや支援体制を構築する必要があること、 ・ 地域の状況によっては、事業者間の連携等を通じ、人材確保を図りなが ら将来の状況を見越した経営を行うことにより、サービス提供を維持して いく必要があること を踏まえ、2040 年に向けたサービス提供体制等のあり方について、高齢者等に係る施策や、他の福祉サービスも含めた共通の課題等の検討を行うため、 厚生労働省において「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討 会が開催された。
(本専門委員会について)→・ 同検討会においても介護人材確保は重要な課題として議論されたことを踏まえ、介護人材の確保・定着に向けてより一層取組を強化していく必要があることから、社会保障審議会福祉部会において、関係者による専門的観点から検討を進めるため、「福祉人材確保専門委員会」を設置した。 ・ 本専門委員会においては、同検討会の議論を踏まえ、以下の4つの論点を 示しながら、計6回にわたって議論を行った。なお、第2回及び第3回においては、本専門委員会の委員のほか、介護人材確保に関する有識者にも参考 人として出席いただき、ヒアリングを実施した。 ・ 高齢化や人口減少のスピードに地域によって差がある中、各地域における人材確保の取組をどのように進めていくべきか。具体的には、地域の状況を踏まえた課題の発見・分析・共有をどのように行っていくべきか。その際、都道府県をはじめとした地方公共団体の役割、ハローワーク・福祉 人材センターなどの公的機関の役割、介護福祉士養成施設の役割、地域の職能団体や事業者などの役割、それぞれの主体の連携について、どのように考えるか。 ・ 若者・高齢者・未経験者などの多様な人材をどのように確保していくか。 多様な人材とのマッチングを図るための介護事業所の業務の整理・切り出し等について、どのように進めていくか。 ・ 介護福祉士をはじめとして、介護現場において中核的な役割を担う中核的介護人材について、どのように確保していくべきか。具体的には、介護福祉士養成施設における教育の在り方、介護福祉士の資格取得の在り方、 山脈型をはじめとする介護人材のキャリアアップの在り方についてどのように考えるか。また、潜在介護福祉士の活用についてどのように考えるか。 ・ 外国人介護人材の確保・定着に向けてどのような対策をとっていくべきか。具体的には、小規模な法人等でも受入を可能とするための都道府県をはじめとした地方公共団体の役割、日本語支援の在り方をどのように考えるか。 ・ 本報告書は、上記の4つの論点を踏まえ、これまでの本専門委員会における議論を整理し、とりまとめたものである。

U.地域差を踏まえた各地域における人材確保の取組 →1.各地域・各事業所における人材確保に係る課題
(有効求人倍率の状況)
→・介護関係職種の有効求人倍率は、令和7年9月時点で 4.02 倍と全職業の有効求人倍率(同月時点で 1.10 倍)と比較しても高い水準である。また、有効求人倍率を都道府県別に見ると、全都道府県で2倍を超えておりどの地域でも人材確保が厳しい状況が見て取れるが、都道府県によっては2倍台から8倍台まで、人材確保の厳しさに一定の地域差があることも見て取れる。
(介護職員の入職経路)→・また、介護職員の入職経路は様々であるが、「令和6年雇用動向調査」によれば、福祉分野におけるハローワークからの入職の割合が全産業と比較して高い状況にある。 一方で、入職経路の観点からは、民間の有料職業紹介について、紹介料が 経営的な圧迫要因となっていることから、ハローワークや福祉人材センター等の公的機関について、より細やかで迅速な対応ができるよう機能強化が必要であるとの意見があった。本年4月から個々の職業紹介事業者の紹介手数料の徴収実績の公開義務付けや、募集情報を提供する事業者について労働者等へのお祝い金等の提供の原則禁止といった、安心・納得して雇用仲介業を利用するための対応を行っており、こういった取組を引き続き進めていくとともに、後述するプラットフォーム機能の充実を行っていくことにより、公的機関の機能・連携の強化による個別事業者への支援を図っていくことが重要。 ※ 入職経路(新卒以外)について、全産業と福祉分野の比較を行うと、 ・ 全産業:ハローワーク17.5%、民営職業紹介所8.1% ・ 福祉分野(社会保険・社会福祉・介護事業):ハローワーク 26.9%、民営職業紹 介所12.2% (出典:令和6年雇用動向調査)
(採用活動の実施状況)→また、採用活動における取組としても、ハローワークや福祉人材センター への相談や、職員を通じて友人や知人の紹介を受けている事業所が多い。一 方で、小規模な法人においては採用活動を行っていない割合も高い。 ※ 介護事業者における、採用活動の取組として、以下の2点が多い状況。 ・ ハローワークや福祉人材センターの担当者に相談:66.9% ・ 職員に対して友人・知人などの紹介を依頼:65.6% また、小規模法人(19 人以下)では、「採用活動を特に行っていない」と回答した法人が24.4%。 (出典:令和6年度介護労働実態調査)

2.プラットフォーム機能の充実の必要性
(プラットフォーム機能の充実の必要性)
→・人材の確保にあたっては、高齢化や人口減少の状況、地域における人材の供給量など、地域差や地域固有の問題が存在することから、処遇改善や生産性向上に必要な予算・財源の確保、外国人の受入に係る必要な制度整備など、 国で全国共通で行うべき人材確保策を進めることに加え、地域の実情に応じた人材確保策に取り組んでいくことが必要。 ・どの地域・法人等でも共通する介護人材確保という課題は、関係者の参画 意欲・意識が高まりやすいテーマであるところ、こうした課題に対し、地域軸・時間軸も踏まえながら対応していくためには、関係機関間での情報共有や地域の関係者のネットワーク化を図ることなどにより、地域における連携・協働を強化していく必要がある。特に介護分野では、入職経路や採用活 動の取組の状況から、公的機関の役割や地域内における人と人との繋がりが特に重要であることが見て取れ、こういった取組を推進していくことが必要。 ・ 一部の地域においては、介護福祉士養成施設と福祉人材センターが連携して介護に関する入門的研修の実施からマッチングまでを一体的に実施する例や、事業所の採用担当者と介護福祉士養成施設がネットワークを立ち上げ現場目線で人材確保策を協議する例などがあるが、全国的に行われている状況にはないことから、こうした取組を全国的に広げ、定着させるための制度的な仕組みとして構築することが必要。 ※ 上記で例示した取組においては、実際に介護現場への就労につながっているものがあるほか、事業所と養成施設の関係性が構築されることでお互いの課題についての情報連 携を継続し実習の協力関係が構築されているなどの効果が表れている。
(プラットフォームの仕組み)→・このための仕組みとして、地域の状況を分析するデータを保有し需給推計を行い、かつ、地域医療介護総合確保基金を用いて人材確保に係る事業を実施している都道府県が設置主体となって、介護人材確保に関するプラットフ ォームを構築し、介護人材確保に関する地域の関係者(市町村・ハローワー ク・福祉人材センター・介護労働安定センター・介護事業者・介護福祉士養成施設・職能団体等)が地域の実情等の情報を収集・共有・分析することで 課題を認識するとともに、それぞれの役割・機能を果たしながら、ネットワ ークの中で協働して実践的に課題解決に取り組むための機能が必要。 加えて、事業者等が抱える個別の課題については、プラットフォームで構築されたネットワークを活用し、公的機関による必要な支援につなげていくことが期待される。その際、課題解決に向けた具体的な取組が進むよう、各 関係機関の主体的・積極的なプラットフォームへの参画と、その旨の国からの方針の周知徹底などによる連携体制の構築が重要である。 ・ このような取組に当たっては、単に地域の介護人材の状況に関する情報を収集・共有・分析するだけでなく、ネットワークの中で課題解決に取り組むことや、その取組について検証・改善し、取組を継続的なものとしていく仕組みが必要。 その点で、都道府県単位の情報を共有する協議の場に加えて、市町村単位や複数市町村の圏域単位など都道府県単位より狭い圏域で、地域の実情に応 じた個別課題に対する実践的な取組を創出していくため、例えば「人材確 保・定着」「職場環境の改善、生産性向上・経営支援」「介護のイメージ改善・理解促進」などの地域ごとの個別の課題に応じたプロジェクトチームを 設置し、プロジェクトチームごとに意欲のある関係者を中心に取組を推進し ていくことが必要であり、特に地域性を踏まえた人材確保の観点からは、市町村の協力が重要である。 こうした重層的な構造を取ることによって、情報の収集・共有・分析、課 題の発見を行い、それに応じた取組を実施し、取組の効果を検証し、改善して次の取組につなげていくPDCAサイクルを回すことが可能となる。 ・ このプラットフォームの機能を充実させていくためには、単に関係者が集まるだけでなく、関係者の個別の活動・取組を連携させていくためのコーディネーター的役割が必要。この点、地域の実情も踏まえつつ、社会福 祉事業等従事者の確保を図ることを目的として設置されている福祉人材センターがプラットフォームの事務局機能などの中核的な役割を担うことが考えられる。 また、プラットフォームについては、地域ごとの実情に応じて、地域における既存の協議会等と一体的に運営するなど、適切な連携・役割分担を図ることが必要。  ・こうしたプラットフォーム機能については、介護人材だけでなく、広く福祉人材の確保の観点から捉えることも必要であり、そういった観点でプラッ トフォームにおける構成員を検討することも重要。その際、福祉分野の中でも各分野における課題が異なる場合もあることから、地域の実情も踏 まえた会議体とすることが必要であるとの意見があった。 なお、必ずしも現場で従事する人材の確保・育成という観点だけではなく、 地域における福祉に関係する人口を増やしていくという観点から、地域の介護力向上等の地域ごとの課題や、地域における好事例なども踏まえながら、プラットフォームにどのような関係者がどのような役割で参画すべきか地域ごとに柔軟に考えることも必要との意見があった。 また、国においても、福祉分野ごとに必要な財政措置の検討を行うとともに、柔軟に活用できるメニューの整備などの工夫が必要であるとの意見があった。・ いずれにせよ、このプラットフォーム機能については、地域の実情に応じた課題に実践的に取り組むための仕組みであり、実効性を伴う必要があることから、必要な制度化を行うとともに、取り扱う内容・構成員・会議体の構 造等については、地域ごとに柔軟に設定する仕組みとすることが必要である。

V.若者・高齢者・未経験者などの多様な人材の確保・育成・定着
1. 多様な人材の確保・育成・定着の必要性
(多様な人材の確保・育成の状況)
→・現在の第9期介護保険事業計画の介護サービス見込み量等に基づき、都道府県が推計した介護職員の必要数を集計すると、2040年度には約272万人の介護職員数が必要とされている。 生産年齢人口が減少していく中で、介護分野で働く人材を増やすためには、 これまで以上に、介護に知見のある者だけでなく、若者・高齢者・未経験者 などの多様な人材を確保し、働きやすい職場づくりを推進することが必要で ある。 ・ 介護職員の年齢構成について、施設等の介護職員と訪問介護員で多少の差異はあるものの、いずれも40~49歳・50~59歳がボリュームゾーンとなっている。また、65 歳以上の職員は施設等では 7.6%、訪問介護では 14.5% 。 性別で見ると、女性が施設等では 70%以上、訪問介護では 80%以上を占めている。 また、就業形態としては、施設等では 25.7%、訪問介護では 30.8%が有 期雇用となっている。 ・ さらに、介護福祉士養成施設の状況を見ると、令和7年4月1日時点の定 員13,628 人に対し、入学者が 7,970 人と、定員充足率は 58.5%と。また、そのうち留学生が4,532人と、半数以上を占めている現状。

2. 多様な人材の確保・育成・定着のための取組
(介護に関する情報発信・魅力発信)
→・このような状況の中、多様な人材に介護分野で働いてもらうためには、介護に関する情報発信・魅力発信が必要である。また若者との関係では、教員 や保護者などが魅力的な就職先として介護分野を認識していないことなどが 考えられ、情報発信の方法について工夫が必要である。 ・ これまでも、魅力発信に関するポータルサイトを作成するとともに、現役の介護職員により仕事の魅力・やりがい・誇りなどを発信してきた、更にこういった取組の中で、介護現場ではテクノロジーの導入が進んできていることや、社会的課題に対応していることなど、介護現場における最新かつ的確な情報発信を、確保したい人材の属性を踏まえて推進することが必要。 テクノロジーを例にすると、生産性向上によって、介護職員の負担を軽減し、利用者と関わる時間を確保して、利用者・職員の双方の笑顔を生み出し、 笑顔で働き続けられる環境づくりにつながっているという意見があった。こういった、職員の負担軽減と介護の質の向上を両立させる最新の介護の取組 を積極的に情報発信していくことが必要。 また、他産業と比較した介護分野の魅力は、地域の産業体系などによっても異なるところであることから、介護に関する情報発信・魅力発信といった 広報戦略については、国・地方公共団体・関係団体が協働し、加えて前述したプラットフォームの中でも議論をしながら、地域の実情も踏まえて検討していくことが必要。 ・ また、実際に介護現場を体験してもらうことも、人材確保の観点からは重要。職場体験やインターンシップなどによって、実際に高齢者とのコ ミュニケーションをとること、ICT 機器の活用状況の見学・体験などを通じ、 地域の関係者に福祉の現場を理解してもらうことが重要である。
(介護職員の定着支援)→・また、人材の確保だけでなく、その定着についても取り組むべき重要な課題。介護職員の離職率は、令和6年度で 12.4%(※)と低下傾向、一定程度定着策の効果が見て取れるが、離職理由や早期離職防止・定着 促進に効果のある方策を見ると、人間関係や職場の働きやすさが定着のため に必要な取組である。 ※ 産業計の離職率は令和6年度で14.2%であり、介護職員の離職率は他産業よりも低い状況にある。 そのためには、国が示す生産性向上ガイドラインも踏まえ、テクノロジー の活用による介護の質の向上と業務負担軽減が重要。その際、テクノロジー導入によって安易に人員配置基準を緩和することは逆に利用者や働く人にしわ寄せが及ぶ可能性があることを懸念する意見があった。また、現場 でテクノロジーを活用できる人材の育成の取組も必要。 加えて、賃金体系・キャリアパス制度・人材育成の仕組みなどの雇用管理 の状況は事業所間に差があることから、前述したプラットフォームの中でも 議論をしながら、働きやすい環境づくりの取組を進めていく必要。適性のある貴重な人材が介護職を担っていることから、そのような人材が他産 業に流出することのないよう定着策も含めた人材確保策を図っていくこと。 (介護助手の活用)→・また、業務負担の軽減やサービスの質の維持・向上の観点からは、介護現 場における周辺業務を担ういわゆる介護助手の活用も1つの手法である。テ クノロジーの導入とタスクシフト/シェアをあわせて進めていくことにより、 業務改善や生産性の向上が推進される。高齢者や未経験者の活用の観点から も、介護助手の一層の活用を検討すべきである。 その際、介護助手の導入には、介護職チームにおける介護助手との連携の 在り方の整理を前提としたうえで、業務の整理・切り出しによる介護の直接 業務とその他業務の区分が必要になるが、これは人手不足解決だけを目的とする取組ではなく、サービスの質の向上にも不可欠な取組であり、介護の専 門性の明確化に繋がるものであることに留意が必要である。

W.中核的介護人材の確保・育成  1.中核的介護人材の役割
(これまでの議論の経緯)
→・介護人材については、従前、「将来展望・キャリアパスが見えづらい」「専門性が不明確」「役割が混在」などの課題を抱えていた、若年者人口の減少、介護ニーズの高度化・多様化等の課題を踏まえ、本専門委員会において平成 27 年2月に報告書をとりまとめ、従前の「まんじゅう型」から、目指すべき姿として「富士山型」を示し、以下のような方向性を示している。⇒ @「すそ野を拡げる」〜人材のすそ野の拡大を進め、多様な人材の参入促進を図る〜 A「道を作る」〜本人の能力や役割分担に応じたキャリアパスを構築する〜 B「長く歩み続ける」〜いったん介護の仕事についた者の定着促進を図る〜 C「山を高くする」〜専門性の明確化・高度化で、継続的な質の向上を促す〜 D「標高を定める」〜限られた人材を有効活用するため、機能分化を進める〜。・ 一方で、介護人材の目指すキャリアパスについて、全員がマネジメントを到達点とするのではなく、自らの選択でキャリアアップを目指すことが必要から、厚生労働省において令和5年度に「山脈型キャリアモデル」 の絵姿が示された。山脈型キャリアモデルの中では、サービスや経営のマネ ジメントを行う役割に加え、認知症ケア・看取りケア等の特定のスキルを極めることや、現場に加え地域全体の介護力向上を進めることなど、介護人材が目指すキャリアパスとして複数の道筋が示されている。 この山脈型キャリアモデルについては、それぞれのキャリアパスに対応した研修体系もあわせて整理されているところである。
(中核的介護人材の確保・育成)→・介護現場における中核的介護人材としては、国家資格である介護福祉士が中心となることが考えられる、多様な介護人材の指導・育成、介護職チームによるケアのコーディネートとチームメンバーの人材マネジメントなど、担うべき役割は多様かつ重要。また、新規の人材だけでは介護現 場でうまく機能しないことから、多様な人材の確保を目指すにあたっては、 介護職チームを適切に機能させるために必要な中核的な役割を担う人材の確保・育成が必要。 前述した山脈型キャリアモデルも参考にしながら、中核的介護人材が担うべき具体的役割・機能、そのために必要な資質・能力の整理をめるとともに、これを身につけるための研修体系の整備に向けた検討をより一層進めていくことが必要。 その際、中核的介護人材の育成にあたっては、専門性の向上とともに、マ ネジメント、リーダーシップ、コミュニケーションに関するスキル、教育・ 育成のノウハウ、生産性向上への対応(デジタルリテラシーを含む)といった多様な視点での研修の整備が必要、あわせて山脈型キャリ アモデルのキャリアの姿を増やしていくなど、より深化させていくことも検討していく必要がある。こうした中核的介護人材の育成にあたっては、前述のプラットフォーム機能も活用しながら、地域ごとの課題に応じた必要な研修やリカレント教育を実施していくことが重要。 なお、介護現場における中核的介護人材については、介護現場での配置を制度上明確に位置づけることや、福祉・介護分野における処遇改善を進めていくほか、平成 19 年法改正時の附帯決議に端緒のある認定介護福祉士の仕組みの制度的な位置づけ等についての検討を進めるべきとの意見があった。 また、キャリアモデルを検討するにあたっては、その基盤となる国家資格である介護福祉士の資格取得の在り方についてもあわせて検討が必要であり、 その内容については4で述べることとする。

2.潜在介護福祉士に係る届出制度の在り方について
(現在の届出制度の状況)
→・介護福祉士が離職等した場合には、社会福祉法(昭和26年法律第45号) に基づき、都道府県福祉人材センターに必要な事項を届け出ることが努力義 務となっているが、この届出制度を活用している潜在介護福祉士等が令和7年9月末時点で約 56,000 人と、十分に機能しているとは言えない状況。 また、地域の実情に応じた必要な人材確保策を講じていくためには、介護現場で中核的役割を担う介護福祉士が各地域にどの程度存在しており、どの程度従事しているのかを把握することは、貴重な人材の活用策を検討する上でも重要である。
(届出制度の拡充)→・そのため、現行の届出制度について、離職等した潜在介護福祉士の復職支援の観点から実施するだけでなく、現任の介護福祉士についても届出の努力義務を課すことで、地域における介護人材の実態把握や山脈型キャリアモデルを見据えた必要なキャリア支援を行うための仕組みとして、発展させていくことが必要。 なお、発災時を含め、地域での福祉ニーズに対応できる専門性を有する人材の登録も重要であること等を踏まえれば、対象となる資格についても社会福祉士等に拡充することを検討すべきとの意見があった。 ・ その際、届け出られた情報の有効活用や、届け出た者に具体的なメリット を提供することが必要。 現行の制度においては、潜在介護福祉士等に対し、求人情報の提供や、就職フェア・カムバック研修の情報提供などを行ってきた、こうした取組を引き続き進めていくとともに、情報発信の手法についても、より若い世代に届きやすくするための工夫が必要である。届け出られた情報を用いて、 潜在化した要因分析を進め、復帰策を検討していくことが必要。 また、新たに対象となる現任の介護福祉士に対しては、キャリア支援を充実させていく観点から、各介護福祉士が未受講であり、例えばDWAT養成研修の情報など、興味・関心を持っている分野の研修情報を、プッシュ型で提供していくことが必要である。その際、都道府県福祉人材センターが提供できる研修情報を充実させていく観点から、前述したプラットフォームで構築されたネットワークを活用することも考えられる。 こういった届出制度のメリットを見据えながら、届出の負担をできるだけ軽減しつつ、各介護福祉士の研修の受講履歴などを含め、届出事項を検討することが必要。また、届出情報の有効活用という点では、対象者の属性に応じて就業意欲の向上等につなげるため、発信する情報の内容や情報発信のタイミングなどを効果的なものとする観点から、届出事項を検討する必 要があるとの意見があった。
(届出に係る事業所の支援)→・また、介護福祉士が届け出るに当たっては、この届出制度の周知徹底が必要になる。国による制度周知に加え、介護事業者や介護福祉士養成施設・福 祉系高校などにおいては、現行制度においても届出に係る支援の努力義務がかかっているが、定期的な届出の促進を従業員・学生に行うほか、職能団体の協力を得るなど、届出制度の周知徹底を行うことが必要である。 こうした取組による届出数の増加・届出内容の正確性の確保を図ることにより、この届出制度のメリットがより大きくなるものと考えられる。

3. 国家試験の受験資格に関する仕組みについて
(複数資格の取得に係る方策の検討の必要性)
→・介護ニーズが増大していく状況にあっては、現在介護分野で働いていない者を介護分野に呼び込み、介護人材を増やしていくことも必要であるが、生産年齢人口が減少していく中では、単に人数を増やす方策だけではなく、1 人で複合的役割を担う人材を育成することの必要性も指摘されており、特定の人材に負荷が偏ることのないよう配慮をしつつ、こういった観点から、国家試験の受験資格に関する仕組みについて工夫するなど、複数資格の取得に係る方策の検討が必要。 特に、「2040 年に向けたサービス提供体制等のあり方に関するとりまとめ」 において、協働化や分野を超えた連携が求められている中で、地域の多様な ニーズに対応する観点から、特定の分野にとどまらない幅広い専門性や視点を有する人材の確保・育成は不可欠である。
(これまでの取組)→・こういった取組については、国においてもこれまで必要な制度改正を行ってきた。 例えば、本専門委員会で平成30年3月にとりまとめられた「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等について」を踏まえ、社会福祉士養成課程の教育内容等の見直しが令和3年度から施行されているが、 その改正内容の1つとして、ソーシャルワーク専門職である社会福祉士と精神保健福祉士の養成課程において、相互に資格を取得することを希望する者の負担の軽減を図るため、それぞれの専門性に留意しつつ、共通となる科目数・時間数を拡充している。 また、保育士に関しても、他の福祉系国家資格(社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士)を保有している場合における保育士試験の一部試験科 目の免除や、介護福祉士養成施設の卒業者が指定保育士養成施設で学ぶ場合の一部科目の履修免除が行われている。
(実務者研修に係る科目等の免除)→・この点、介護分野の人材育成の観点からも取組を行っており、具体的には、 現在の介護福祉士養成課程において、原則の修業年限2年以上・時間数 1,850 時間以上から、保育士養成課程の修了者については修業年限1年以上・時間数1,205時間以上まで、社会福祉士養成課程の修了者については修業年限1年以上・時間数1,220時間以上まで、時間数の短縮が認められている。 こういった仕組みも参考にして、実務経験ルートにおいて介護福祉士国家試験の受験資格を得るために必要な実務者研修(修業年限6月以上・時間数 450 時間以上)について、他の国家資格の養成課程を修了している場合等に おいて、可能な範囲で科目等の免除を行うことが必要である。
(単位制の導入)→・また、現行の社会福祉士・介護福祉士の養成課程では時間制による教育内容を示しており、例えば介護福祉士養成課程であれば1,850時間以上の履修 が必要とされている。一方で、令和6年通常国会で成立した学校教育法の一部を改正する法律(令和6年法律第 50 号)等において、専修学校の専門課程について単位制による修了認定を導入することとしており、また、他の国 家資格の養成課程においては既に単位制が導入されていることを踏まえると、 教育の質の担保等の観点も踏まえつつ、社会福祉士・介護福祉士の養成課程についても、単位制の導入が必要。その際、単位制の導入によっても、 これまでの養成課程において求められている必要な時間数の学習が担保され、 修得する内容に差が生じないようにすることが必要である。なお、時間制・ 単位制のいずれであっても最終的に身につけるべき資質・能力が担保されることが重要であるとの意見があった。
(検討における留意点)→・これらを含む複数資格の取得に係る方策の検討に当たっては、それぞれの 資格が有する役割や専門性、教育内容の文脈・目的の違い等にも配慮しなが ら、より具体的な仕組みの検討を行っていくことが必要である。 加えて、単に複数資格を取得しやすくするために検討を行うのではなく、 共通の科目の履修の重複を避け、既に身につけている能力を読み替えることにより資格保有者の負担を軽減するといった、効果的な学習による複数資格の取得という観点からの検討が必要。 あわせて、現行のカリキュラムについて、教育現場等での実情を踏まえ、 真に必要な時間数であるかや、前回の見直し以降の状況を受けた教育内容になっているかについても検討が必要である。 ・ そのほか、専門人材の機能強化・最大活用の観点からは、対人支援を行う 専門資格に共通の基礎課程創設についても、対人支援職種に共通して求めら れるコンピテンシーやモデルカリキュラムの検討状況を踏まえつつ、地域共生社会の実現に資する人材の育成に向け、質的な側面からも対応を行う必要 があるとの意見があった。

4. 介護福祉士養成施設卒業者の国家試験義務付けの経過措置の取扱いについて
(本経過措置に係るこれまでの経緯)
→・介護福祉士養成施設の卒業者については、従前、国家試験を受験せずとも 介護福祉士の国家資格が取得可能であったところ、介護福祉士の資質の担保・向上を図るため、介護福祉士養成施設の卒業者も国家試験の合格を介護福祉士の資格取得の要件とするよう、平成 19 年に社会福祉士及び介護福祉士法(昭和62年法律第30号)を改正した。 ・上記改正については、数度の施行延期を経て平成 29 年度に施行されたが、 その際、国家試験の義務付けの漸進的な導入を図る観点から、円滑な制度施 行に向け、以下の経過措置を設けている。⇒ @ 卒業後5年間は、国家試験を受験・合格しなくても介護福祉士の資格を取得可能 A 6年目以降、卒業後5年間、介護等の業務に継続的に従事していれば、 引き続き介護福祉士の資格を取得可能。 この経過措置については、令和3年度の卒業者までの措置として創設されたが、令和2年の法改正にあたっては、福祉部会における種々の議論・意見を踏まえつつ、介護の人材不足の深刻化、養成施設数・入学者数の減少、外国人留学生が急増した中で留学生の合格率が低調となっていることを受け、 介護サービスの提供に支障が生じないよう、令和8年度の卒業者まで、経過 措置を延長している。 ・ 上記の令和2年の法改正による経過措置の延長に際しては、衆議院・参議院ともに法律案に附帯決議が付され、その中では、以下の点について適切な 措置を講ずることが求められている。⇒ ・ 経過措置の終了に向けて速やかに検討を行うこと ・ 養成施設ごとの国家試験の合格率など介護福祉士養成施設の養成実態を 調査・把握の上、公表し、必要な対策を講ずること ・ 介護福祉士資格の取得を目指す日本人学生及び留学生に対する支援を充実すること。 ・ 国においては、この間、上記の附帯決議も踏まえ、以下のような取組を実施。 ⇒・ 令和2年度より養成施設ごとの合格率の公表 ・ 介護福祉士養成における教育の向上や留学生指導についてのガイドライ ン等を作成し、介護福祉士養成施設などで活用 ・ 介護福祉士修学資金貸付事業において、介護等の業務に一定期間従事し た場合には返済を免除する学費等の貸付を行うための原資の確保 ・ 地域医療介護総合確保基金において、外国人留学生の資格取得支援やコ ミュニケーション支援を行う事業者への補助や、介護福祉士養成施設の教 員の質の向上に資する研修等の経費を補助 ・ 介護福祉士国家試験のための多言語による学習教材の作成や国家試験対策講座の開催
(本経過措置に係る本専門委員会における議論)→・こういった状況を踏まえ、本専門委員会においても、経過措置の取扱いに ついて多くの意見が出されている。 ・ 具体的には、以下の観点から、現在の規定どおり、本経過措置は令和8年 度卒業者までで終了すべきといった意見があった。⇒ ・ 暫定的な措置である経過措置の終了による国家試験の一元化によって、 資格の質の担保が図られること ・ 経過措置の延長によって人手不足が解消したわけではない中で、経過措 置の延長は資格に対する信頼性を失いかねず、経過措置の終了により資格 の専門性・信頼性・イメージの向上が進み、日本の介護を学ぶために留学 生が日本に来るという循環を作ることができると考えられること ・ 令和2年法改正時の附帯決議において、経過措置の終了に向けてできる 限り速やかに検討を行っていくこととされており、それに向けた介護福祉士養成施設や国の対策も行われてきたこと ・ 国家試験の合格が必須である福祉系高校の卒業者との整合性をとることが必要である中で、国家試験義務付けの趣旨を踏まえた制度運用が必要であること ・ 国家資格は専門職の質の担保を図るものであり、利用者が安心してサービスを受けられるようにするためにも、試験に合格し一定の基準に到達した者とそうでない者については区別する必要があり、同列に扱うべきではないこと ・ 介護福祉士養成施設の留学生は国家試験に不合格であった場合も、特定 技能評価試験を受けずに、特定技能に移行できること ・ 令和7年度(令和8年1月実施予定)の国家試験から複数の科目を1つ のパートとして合否判定するパート合格(合格パートの受験免除)の仕組 みが導入されるなど、働きながら受験しやすい環境整備が進んでいること ・ 今後、留学生への支援等の対策は丁寧に検討するにしても、経過措置に ついては一度区切りをつけるべきであること。 ・ 一方で、以下の観点から、本経過措置を延長すべきといった意見があった。⇒ ・ 仮に経過措置を終了した場合には、留学生が確実に在留資格を取得でき、 修学資金の返済免除を受けられる保証がないため、留学先として日本を選 ばず、または留学生が在留資格の取得が不確実な介護分野を選ばなくなり、 介護福祉士養成施設の入学者が減少することで、介護福祉士養成施設が減 少し、日本人の学生を含めた介護の教育の機会が喪失するおそれがあること ・ 留学生の減少、介護福祉士養成施設の閉科・閉校、日本の学生が介護を学ぶ場が失われることは、世間への介護分野のネガティブイメージにつながりかねないこと ・ 留学生の受入状況には地域差があり、今後受入を進めていく地域・学校 にとっては経過措置の延長が必要であること ・ 介護人材の不足状況・地域福祉の教育基盤の維持・介護福祉士養成施設の厳しい運営状況等を考慮すれば、介護福祉士養成施設への一定の配慮が引き続き必要であること ・ 留学生の合格率を上げるための教育の質の向上等の環境整備のためには時間が必要であり、パート合格の仕組みの効果検証も必要であること ・ 特定技能制度やパート合格の仕組み等の環境整備といった出口ではなく、 入学者の確保という入口の観点から考える必要があること。 ・ 加えて、人材確保に当たっては、人材の質・量の両面での検討が必要であることから、本経過措置を延長するか否かという二者択一の議論だけでは不十分であるといった意見や、本経過措置は人材確保・介護福祉士養成施設の入学者確保・介護福祉士の質の担保の3点をいかに両立させていくのかが議論の本質となるといった意見があった。 また、国家試験における取組としては、令和7年度の国家試験からパート 合格の仕組みを導入することとされており、この仕組みは一人ひとりの状況に応じた学習の選択肢を拡大するものであることから、この仕組みをしっかり周知していくことが必要との意見があった。 加えて、現在の本経過措置では、国家試験を受験しなくとも資格を取得できる仕組みであることから、仮に延長する場合であっても受験を必須にする とが必要であるとの意見があった。  ・ 厚生労働省においては、資格の質の担保・専門性の向上等の観点から終了すべきといった意見や、介護福祉士養成施設の入学者・介護人材確保等の観点から延長すべきといった意見、人材の質・量の両面での検討が必要であり 本経過措置を延長するか否かという二者択一の議論だけでは不十分であるといった意見など、上記の意見を含めた本専門委員会における種々の意見を十 分に踏まえつつ、次に述べる介護福祉士養成施設の役割も勘案しながら、経過措置の在り方について必要な対応を講じられたい。

5. 介護福祉士養成施設の今後の在り方について
(介護福祉士養成施設の役割の再整理)
→・今後、学生となる若者の減少が進行していくことを踏まえれば、介護福祉士養成施設卒業者の国家試験義務付けの経過措置の取扱いの結果の帰趨にかかわらず、介護福祉士養成施設の地域での役割の再整理・これからの方向性 を示していくことが必要であるとの意見があった。 この点について、本専門委員会で出た意見を踏まえると、これからの方向性については、主に以下の2つの観点での検討が必要。 ⇒@国家資格の取得に向けた取組の強化 A学生に対する授業を中心とした教育以外の地域において期待される役割
(国家資格の取得に向けた取組の方向性)→・最近の国家試験の結果を見ると、日本人学生は90%以上の合格率である一 方、留学生の合格率は30%台であることを踏まえ、以下のような対応が必要であるとの意見があった。⇒ ・ 留学生でも合格率が 100%に近い状況の介護福祉士養成施設もあれば、そうでない介護福祉士養成施設もあることを踏まえた、好事例の分析・収集・展開 ・ 日本語能力が高いほど国家試験の合格率も高いことを踏まえた、日本語教育の充実 ・ 留学生等が介護福祉士養成施設を選ぶ材料を提供する観点から、介護福 祉士養成施設ごとの合格率の多言語による公表
(介護福祉士養成施設の地域において期待される役割)→・また、各介護福祉士養成施設においては、養成施設の地域において期待される役割として、事業所や職能団体等とのより一層の連携・協働により、以下のようなことに取り組んでいくことが必要であるとの意見があった。⇒・ 地域ごとに異なる社会環境や支援ニーズを踏まえて地域ごとの課題を解決し、地域共生社会を実現していくための能力を有する人材を育成する教育に取り組むとともに、地域における福祉に関わる人口を増やしていく観点から、前述のプラットフォームも活用しながら、地域の担い手に対する 入門的研修・初任者研修等の各種研修の実施 ・ ICT やデジタルリテラシーに関する教育の実施など教育の質の向上を図りつつ、現任・潜在それぞれの介護福祉士のキャリアアップを図る観点や、1人で複合的役割を担う人材を育成する観点から、養成施設の資源を活用した、介護職員や他分野で働く人材への実務者研修をはじめとするリカレント教育の実施 ・ 留学生の既卒者の国家試験合格率が特に低いことを踏まえた、既卒者へ の国家試験対策講座等の実施。 ・ 前述した介護福祉士養成施設卒業者の国家試験義務付けの経過措置の取扱いの検討と並行して、こうした今後の介護福祉士養成施設が主体的に担う役 割の検討も必要である。

X.外国人介護人材の確保・定着 1.外国人介護人材の必要性とその確保・定着策
(外国人介護人材の現状)
→・高齢者が増加し介護ニーズが増大する一方で、日本人の生産年齢人口が減 少していく状況にあっては、外国人介護人材を活用することが必要不可欠。 ・介護分野においては、外国人介護人材の受入れの仕組みとして、EPA(経済連携協定)・介護・技能実習・特定技能の4つの在留資格(※)を設けている。介護事業者においては、それぞれの制度趣旨に沿って外国人を受け入れている、特に人手不足への対応として、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れるための在留資格である特定技能については、 平成31年4月の制度創設から、令和7年6月末時点において54,916人まで 増加している。(※)EPA(経済連携協定)の在留資格は「特定活動」。 ・ 介護現場で外国人介護人材が働いていることについては、一定程度浸透してきており、今後もより活用していく観点から、外国人介護人材の確保・定着のための対策が必要。なお、外国人介護人材の受入れに関して、現状は介護保険施設等に限定されているが、福祉施設全般への拡大を検討することが必要との意見があった。
(小規模法人における受入支援等)→・この点について、外国人介護人材の確保・定着のためには、海外現地での働きかけなどの確保策や、日本語教育や文化の違いへの対応、生活環境整備 などの定着策が必要であることから、特に小規模な法人では受入れが厳しい状況にあるとの意見があった。 一部の都道府県では、県が事業者団体との共同事業として、マッチング支援や技能実習の監理団体として活動するセンターを立ち上げている事例もあり、外国人介護人材を受け入れるにあたって、教育体制を含む受入体制の構築・整備のために地方公共団体の協力が必要である。 その際、前述のプラットフォーム機能を活用することで、外国人介護人材についても、地域ごとに必要な確保・定着策を検討することが必要である。 (外国人介護人材の訪問系サービスの従事)→・また、従来、外国人介護人材については、訪問介護等の訪問系サービスの従事について、介護福祉士の国家資格を有する者に限られていたが、訪問介護員等の人材不足の状況などを踏まえ、令和7年4月より、一定の要件を付した上で、技能実習生と特定技能外国人についても従事することが可能になった。 この点については、緊急時の対応やトラブルの未然防止に向けたリスク管理が重要であり、外国人介護人材が利用者の居宅に入って介護サービスを提 供することについての利用者・家族からの同意や、利用者・家族からのハラ スメント対策としてのマニュアル整備等の対応が重要であるとの意見があった。加えて、相談窓口の拡充・雇用管理の徹底・適正な受入につなげるため の監督体制の強化等も重要であるとの意見があった。

2.准介護福祉士について
(准介護福祉士に係るこれまでの経緯)
→・准介護福祉士は、介護福祉士養成施設卒業者のうち、国家試験に合格しなかった者に付与される資格であり、准介護福祉士の名称を用いて、介護福祉士の技術的援助及び助言を受けて、専門的知識及び技術をもって、介護等 (喀痰吸引等を除く。)を業とする者をいう(※)。 これは、フィリピンとの EPA(経済連携協定)の締結当時、フィリピンの 「就学コース」介護福祉士候補者について、養成施設を卒業すれば国家試験を経ることなく資格を取得することができるという前提で交渉し合意に至っ た中で、平成19年法改正時に介護福祉士養成施設卒業者への国家試験の義務付けをしつつ合意も維持するという経緯から創設したものである。 なお、現状において、准介護福祉士には在留資格は付与されていない。 (※)令和7年9月末時点で有資格者は1名。 ・ 一方で、フィリピンからの就学コースの送り出しは平成 22 年を最後に行われておらず、フィリピン国政府との協議においても准介護福祉士の廃止については明示的な反対意見がなかったところである。
(准介護福祉士に係る本専門委員会における議論)→・平成19 年法改正時の附帯決議に加え、令和2年法改正時の附帯決議にお いても、フィリピン国政府との協議を早急に進め、当該協議の状況を勘案し、 准介護福祉士の在り方について、介護福祉士への統一化も含めた検討を開始することとされている。 また、本専門委員会においても、准介護福祉士は国家試験に合格していないことを証する信頼性に欠ける仕組みであり、フィリピンへの影響の懸念が 払拭されるのであれば、資格に対する社会的評価・資質の担保や、介護福祉士の専門職としての地位の向上・確立の観点から、廃止すべきとの意見があった。 ・ 上記を踏まえ、准介護福祉士については、フィリピン国政府との関係等も考慮しながら適切に対応すべきである。

Y.おわりに→・本専門委員会においては、これまで国が行ってきた総合的な介護人材確保 対策や、地域医療介護総合確保基金等を活用して都道府県が行ってきた人材確保策に加え、より地域軸・時間軸を意識して議論を行ってきた。 今後の人口減少のスピードが地域によって異なる中で、地域のサービス提供体制を確保するために、その人材の確保は最重要課題であり、地域ごとに抱える課題の共有とそれに応じた必要な対応の実行の在り方、外国人を含む 多様な人材の確保の在り方、介護現場で中核的な役割を担う介護福祉士等の確保・養成の在り方など、介護人材確保策を検討する上で勘案すべき要素は多岐に渡るもの。加えて、地域共生社会の実現の観点からは、支える側・支えられる側を固定化することなく、地域の生活の中でケアを行い合う文化を培うことも重要である。 ・ また、本専門委員会では介護人材の確保策を中心に議論をしてきたが、介 護事業者の協働化や大規模化の議論が進められており、また地域の福祉ニーズも多様化・複合化している状況の中で、介護人材の確保に絞った議論だけではなく、ソーシャルワークの面も含めて、分野横断的・総合的な人材確保、 多様な職種・専門性の人材確保について議論が必要。 ・ 加えて、人材確保の観点からは、福祉・介護分野の処遇改善や、専門性を評価することが重要であるとの意見があった。処遇改善なしに人材確保はなしえず、全産業で賃上げが進んでいる中で、福祉・介護分野の処遇改善が進まない限り、また、専門性が適切に評価されない限り、福祉・介護業界から の人材流出につながることに対する懸念が多くの委員から示された。 ・ 本専門委員会で示された意見は、社会保障審議会福祉部会に報告しさらに議論を深めるとともに、必要な点については介護保険部会その他関係審議会等においても議論を進めていくことにより、多面的な観点で今後の介護人材確保策をより一層進めていくことが重要である。

○社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会 委員名簿 令和7年11月10日現在
→13名。 <第2回出席参考人>→2名。<第3回出席参考人>→3名。

次回も続き「資料2 福祉人材確保専門委員会における議論の整理(案)(概要)」からです。

第10回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(資料) [2025年12月22日(Mon)]
第10回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(資料)(令和7年11月10日)
資料 1.障害者雇用の質について 2.その他
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65777.html
◎資料1:事務局説明資料 障害者雇用の質について
 令和7年11月11日 厚生労働省職業安定局

○これまでの制度・議論の経緯| 平成30年7月30日今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会 報 告書(抄)↓

V 多様な働き方のニーズ等に対応した障害者の雇用の質の向上に向けた取組の推進
1.障害者の雇用の質について→・就労を希望する障害者の障害特性等が多様化している 中、その希望や特性等に応じた働き方を実現していくためには、雇用の質に着目した取組が必要であるとの意見が 多く示されたところである。
(処遇・待遇の改善等)→・この点、雇用の質をどう捉えるかについては 、障害者本人や家族等の視点からも、雇用形態や賃金等の処遇・待遇の改善について様々な言及が見られたように 、雇用されている障害者の処遇・待遇の改善については、重要な論点であると言える 。 ・ 雇用されている障害者の処遇等について見ていくと、まず、雇用されている身体障害者の約6割が正社員(勤め先 での正社員又は正職員等の呼称)となっているのに対して、知的障害者の場合は約2割、精神障害者の場合は約4割 となっている。また、いずれの障害種別においても、30歳代の決まって支給する給与の平均は、正社員、正社員以外の無期雇用、正社員以外の有期雇用の順に高く、身体障害者や知的障害者の場合には正社員の賃金は雇用継続期間に応じて改善していく様子が見られる。また、比較のために、例えば40歳代における状況を見てみると、身体障害者の場合には、正社員の者が多く、その多くが長期雇用継続されている者であり、知的障害者の場合には、正社員の場合には比較的長期にわたって雇用継続されている者が多い一方で、有期契約のまま長期間雇用継続されている者も一定割合にのぼっている。なお、精神障害者の場合には、全体として雇用継続期間が短く、データの十分な 分析が困難であった(「平成25年度障害者雇用実態調査」(厚生労働省)を用いて集計。)。 ・このように、例えば、正社員であることと、雇用継続期間や処遇改善等の間に一定の関係性が見られることも踏まえると、いずれが原因であり、結果であるのかの把握は困難なものの、障害者本人が希望する場合に、障害者雇用安定助成金による正規雇用転換等を支援する取組については、継続していくことが求められていると言える。
(安心して、安定的に働き続けられる環境の整備)→・他方、障害者本人や家族等の視点に限っても、障害特性や障害者が置かれた状況等により、雇用の質に対する具体的な受け止めが異なることも改めて明らかとなった。障害特性により、体力面での制約等が生ずるケースも多く見られる中で、時には、労働条件そのものよりも、仕事にやり甲斐があること、自らの仕事に対して顧客や事業主、 周囲の労働者等から評価を得られること、社会に参加し貢献すること等、自らの周囲や社会との繋がりができることが重要であるとの声が多く聞かれた。疲れやすさや、体力面での課題等を抱える中で、むしろ無理のない働き方や、現在の体力等に合った勤務形態等を求めるケース等も多く見られること等を踏まえると、全体に 共通するものとしては「希望や特性に応じて、安心して、安定的に働き続けることができる環境が整っていること」が挙げられるのではないだろうか。 (中略) ・こうした環境を整えていくため、まずは、平成28年4月から障害者雇用促進法において事業主に義務化された、障害者への差別禁止や合理的配慮の提供を徹底していくことが重要である。 今後、雇用の質の向上を図っていくため、 障害者の能力や希望が適正に評価され、過重な負担とならない範囲で、障害の特性に配慮した措置を講じることにより、その能力を有効に発揮できる環境の整備等が求められており、障害者それぞれの希望や特性等が異なることを、事業主や同じ職場で働く者が適切に理解し、事業主と障害者との相互理解を深めることも必要。 また、 引き続き、ハローワークや地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター等において、障害者本人の希望や特性等を踏まえた就労支援を推進するとともに、障害特性に配慮した雇用環境の整備等を着実に進めていく必要がある。

○これまでの制度・議論の経緯| 令和4年6月17日 労働政策審議会障害者雇用分科会意見書(抄)→第2雇用の質の向上に向けた事業主の責務の明確化→・障害者雇用については、例えば、民間企業の実雇用率は10年連続で、実雇用者数は18年連続で過去最高を更新するなど、着実に進展しているが、他方で、障害者が能力を発揮して活躍することよりも、雇用率の達成に向け障害者雇用の数の確保を優先するような動きもみられる。今後は 、障害者雇用の数に加えて、障害者が個々に持てる能力を発揮して活き活きと活躍し 、その雇用の安定に繋がるよう、障害者本人、事業主、関係機関が協力して障害者雇用の質を向上させることが求められる 。 ・障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号。以下「法」という。)において、事業主は 雇用する障害者に対して、その有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場の提供や適正な雇用管理に努めなければならない とされている。 ・ 法に掲げられたこうした責務を事業主が真摯に果たしていくためには、事業主に対して 十分に発揮できる雇用の場を提供するとともに 、障害者が持てる能力を、雇用後もその活躍を促進するため、キャリア形成の支援を含めて 、適正な雇用管理をより一層積極的に行うことを求めることが適当である。 ・ キャリア形成の支援に際しては 、事業主が中途障害者を含め、資格取得の促進や職業訓練、研修機会を設ける等 障害者の能力開発を行うことが重要であり、こうした取組は障害者が働き続ける上でモチベーションやエンゲージメントの向上に資するという意見があった。あわせて、事業主は合理的配慮の提供はもとより発揮できるよう障害特性に応じた業務の選定や再構築を行う、持てる能力をとともに、これについて採用時のみならず、雇用継続期間中を通じて適宜見直すことが望ましいという意見があった。 ・ また、行政による、事業主に対する支援として、ハローワークにおいてはアセスメントやマッチング支援を強化 することが適当である。 ・ 加えて、障害者雇用の質を高める観点からは 、障害者の定着支援を図ることが重要であり、助成金による支援の充実を含め、職場適応援助者(以下「ジョブコーチ」)の活用を促進することが適当。この点、障害種別に対応できるジョブコーチの育成が重要という意見があった。 ・ なお、雇用の質の向上を図っていくに当たっては、将来的にはこれに向けた事業主の取組を評価する手法を検討することが考えられるという意見があった。

○これまでの制度・議論の経緯│ 関係者ヒアリング及び構成員からのご意見(雇用の質の評価の必要性・既存施策等の運用の改善による質の向上)
◆関係者ヒアリング (雇用の質の評価の必要性)
→ • 「もにす認定」制度等を参考に、大企業も含め、「雇用の質」を評価する指標・仕組みが必要。 • 指標としては、定着率や雇用環境、雇用の安定、職域拡大、職業能力開発、処遇改善、管理職への登用等、キャリア形成を促進する措置の評価が好ましい。 • 「雇用の質」に関する評価で優れた評価が得られた企業については実雇用率への加算、公的に表彰、認定をすることや、好事例集の作 成等が考えられる。 • 「雇用の質」の問題は、雇用率制度の推進により生じたものであり、「雇用の質」を向上させることのメリットを雇用率制度の中に作ってしまうと、問題が繰り返される懸念がある。
(既存施策等の運用の改善による質の向上)→ • 「雇用の質」の指標として長期継続雇用の実現があるため、長期就労に一定以上の実績を示す企業に対し、実雇用率への加算又は助成金等の支援を検討すべき。 • 「もにす認定」の認知度が不十分。経済産業省等との連携強化や商工会議所等の協力を得た促進が必要。 • 雇用相談援助事業について、当該事業の進捗を含めた実態把握と制度拡充に向けた課題整理が必要。また、積極的な周知が必要。 • 聴覚障害者についての研修等における環境(通訳配置等)の改善や、発達障害者を適切に配慮できる専門支援機関の体制整備や合理的配慮を適切に提供できる人材・ジョブコーチの育成が必要。
◆構成員からのご意見 (雇用の質の評価の必要性)→ • 雇用の質を図る客観的指標が必要。例えば障害者活躍推進計画の進捗を図る満足度調査のような調査を民間部門でも定期的に行い、質の向上の客観的指標とすることや「もにす認定」を援用すること、定着率を向上させていくために必要なこと、働いている障害者が感じる質の内容を指標とすることも一案。 • 質の向上は雇用の定着とも密接に関係。ハローワークでは就職後の定着を図る観点からも伴走型の支援を行っており、一定の経験を蓄積しているため、質向上の指標の検討にあたり、ハローワークでの取組みが参考になる。
(既存施策等の運用の改善による質の向上)→• 短時間雇用の精神障害者の雇用を週20時間未満から週30時間以上に就労時間を延ばすことができた場合に、より事業主の雇用管理を評価すること等も一案。 • 雇用の量と質を同じ指標の中で評価することは難しい。雇用率制度はあくまで量の評価とした上で、質は認定制度などが望ましいので はないか。 • 雇用の質の向上には、適切な職業訓練の受講を可能とすることが重要。また、職業能力開発の体制及び内容の見直しや、労働者の能力が正当に評価され、処遇に反映される仕組みが重要。

○これまでの制度・議論の経緯| 関係者ヒアリング及び構成員からのご意見(いわゆる障害者雇用ビジネス)→◆関係者ヒアリング(雇用の質の評価の必要性)⇒ • 地域によっては貴重な雇用機会創出の場であり、障害者、家族等からは好意的受止めもあるが、障害者雇用本来の理念に反するという 疑いが拭えない。雇用の質の評価指標の開発、インクルージョンの考え方を踏まえた留意点を示すガイドラインが必要。 • 障害者ビジネスを利用する企業等と提供する労働の場との人事ローテーションや“企業と福祉のマッチング”を進めることが必要。 • 障害者ビジネスでの雇用は、違法ではないが、障害者雇用促進法の理念に照らし、好ましくないことを強く発信すべき。雇用率ビジネ スの見せかけだけの雇用より、むしろ福祉的就労の現場の障害者の働き方の方がディーセントワークに近い。福祉施設で障害者が働く 環境を提供するなどしている場合、例えば施設外就労や発注などの連携を一定評価すべき。 ◆構成員からのご意見⇒• 障害者雇用ビジネスが今後さらに増加することを危惧。例えば法に則った質の高い雇用をしている事業主に対する雇用率制度上の優遇 措置や、その他何らか歯止めになる措置が必要。対象者が増加し、対応が遅れることがないようにすべき。 • 障害者雇用ビジネス利用企業に対し、好ましくないことを伝えていくことが必要。また当該ビジネスの形態への規制ができないことに対し、障壁となっているものを整理すべき。例えば差別禁止に当たらないか懸念。 • 実態把握によって、障害者雇用ビジネスで就労している障害者の経緯や傾向の現状・課題を整理し、ビジネス事業者及び利用企業に対 するガイドラインの作成や、規制の要否の検討が必要。

○これまでの制度・議論の経緯| 障害者雇用促進法の理念→障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)(抄)⇒(目的) 第1条・・もつて障害者の職業の安定を図ることを目的。 (基本的理念)第3条 障害者である労働者は、経済社会を構成する労働者の一員、職業生活においてその能力を発揮する機会 与えられる。(事業主の責務) 第5条 全て事業主は、障害者の雇用に関し、社会連帯の理念に基づき、障害者である労働者が有為な職業人として 自立しようとする努力に対して協力する責務を有するものであつて、その有する能力を正当に評価し、 適当な雇用 の場 を与えるとともに適正な雇用管理 並びに職業能力の開発及び向上 に関する措置を行うことによりその 雇用の安 定を図る ように努めなければならない。 (国及び地方公共団体の責務) 第6条  参照。
○障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)→キャリア形成の支援を含め適正な雇用管理を より一層積極的に行うことを求める⇒【令和4年法改正後】 第5条。
○障害者雇用の質の向上に資する取組| 国及び地方公共団体における障害者活躍推進計画について→・国及び地方公共団体の機関において、障害者である職員の職業生活における活躍の推進に関する取組に関する計画 (障害者活躍推進計画)を作成し、遅滞なく公表。 ・国及び地方公共団体の機関が適切に計画を作成・実施することができるよう、厚生労働大臣は、障害者雇用対策基本方針に基づき、障害者活躍推進計画作成指針(令和元年厚生労働省告示第198号)を告示(令和5年3月31日改正)。 ・当該指針を具体的に解説した「障害者活躍推進計画の作成手引き」や「障害者活躍推進計画の作成手引きに係るQA集」を周知。⇒障害者活躍推進計画の概要  参照。
○障害者雇用の質の向上に資する取組| 障害者活躍推進計画作成指針における取組の内容に関する具体的な事項→障害者活躍推進計画作成指針の「第五計画における取組の内容に関する具体的な事項」においては、計画における取組の内容に係る具体的な事項として、体制整備をはじめとする様々な取組を示している。⇒大項目(3)、小項目、規定されている取組の概要あり。  参照。
○障害者雇用の質の向上に資する取組|(参考)職場等の満足度に関するアンケート調査の実施→令和2年に実施した「国の行政機関の障害者の採用・定着状況等特別調査」において職場等の満足度について、 各省庁の職員にアンケートを行い、下記項目について調査を行った。⇒調査項目満足度 やや不満・不満を選んだ場合の具体的理由割合  参照。
○障害者雇用の質の向上に資する取組| もにす認定制度創設にあたっての経緯→・今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会報告書(平成30年7月30日)(抄) ・労働政策審議会障害者雇用分科会意見書(平成31年2月13日)(抄)  参照。
○障害者雇用の質の向上に資する取組| 障害者雇用に関する優良な中小事業主の認定制度(もにす認定制度)→企業と障害者が明るい未来や社会に向けて進んでいくことを期待し、「ともにすすむ」という想いを込めて、愛称が「もにす」と名付けられた。 実績:認定事業主数 545事業主(うち特例子会社131事業主)(令和7年6月末時点)⇒<認定基準の項目>などの参照。
○障害者雇用の質の向上に資する取組| もにす認定制度の具体的な認定基準→以下の項目毎に加点し、20点(特例子会社は35点)以上を得れば認定される。(取組関係で5点以上、成果関係で6点以上、情報開示関係で2点以上を得る こと。)
○障害者雇用の質の向上に資する取組| 各評価基準における評価要素(例)→各評価基準における評価要素(取組関係@)  参照。
○中小企業への支援制度・環境│ 障害者雇用相談援助事業の内容と実績→ 全体的な事業の流れ@〜B、支給額等(1)(2)、障害者雇用相談援助事業の実績(令和6年4月~令和7年3月) 参照。
○障害者雇用の質の向上に資する取組| 障害者雇用相談援助事業者の認定基準(障害者雇用相談援助事業者認定申請マニュ アル(令和5年12月障害者雇用対策課長内かん(令和6年9月改定))(抄))→第2 障害者雇用相談援助事業者の認定基準(抄) 1 法人に関する要件、その他あり  参照。
○障害者雇用の質の向上に向けた取組| 障害者の平均勤続年数・年齢階級別割合→平均勤続年数や年齢階級別の割合は障害により一定の差異がある。(なお、新規採用者が増加すると、他労働者 の退職動向に関わらず平均勤続年数が下がる効果が生じるため評価に留意が必要。)⇒身体障害者、知的障害者、精神障害者あり。  参照。
○障害者雇用の定着率等について| 障害種別定着率→定着率について、障害種別毎に比較すると、精神障害者が最も定着率が低くなっている。
○障害者雇用の質の向上に向けた取組| 昇進の経験→障害者の多くは障害者手帳の交付・障害や疾病の診断を受けて以降、昇進を経験しておらず、特に精神・発達障 害者は昇進経験のない者の割合が高い。
○障害者雇用の質の向上に向けた取組| 雇用形態別雇用者数の割合→・雇用形態別雇用者数の割合は「正社員・無期の契約」は38.5%、「正社員・有期の契約」は4.7%、「正社員以 外・無期の契約」は23.4%、「正社員以外・有期の契約」は32.3%となっている。 ・正社員割合は4割程度、正社員以外の割合は5割程度と正社員以外の雇用形態で雇用される割合が高い。
○雇用の質に関する調査研究結果│ JEED調査研究(概要)→研究主体:(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構障害者職業総合センター 企業における障害者雇用の質の向上に向けた取組の現状と課題に関する調査研究⇒ 1.目的 企業における障害者雇用の質の向上に関する措置の現状及び必要な支援の内容について明らかにするとともに、優れた実践を 行っている企業の取組事例を紹介するもの。 2.方法 3.実施期間  参照。
○雇用の質に関する調査研究結果@(企業アンケート調査)│ 企業規模・障害者雇用の経験年数→・ 調査した企業規模については、一般企業では、「100人以上300人未満」が46.4%と最も多く、次いで「40人以上100人未満」が 30.0%であった。特例子会社では、「40人未満」が37.4%と最も多く、次いで「40人以上100人未満」が33.3%であり、企業規模 100人未満の企業が約7割であった。 ・ 障害者雇用の経験年数については、「10〜20年未満」が一般企業(30.6%)、特例子会社(38.5%)ともに最も多く、次いで「5 〜10年未満」が一般企業20.7%、特例子会社23.6%であった。
○雇用の質に関する調査研究結果@(企業アンケート調査)│ 雇用障害者数・雇用障害種別→・ 身体障害者、知的障害者、精神障害者の雇用人数については、一般企業では雇用人数1名の企業が24.3%、雇用人数3名以下の企 業が全体の約6割、雇用人数10名以下の企業が約9割であった。特例子会社では雇用人数11名以上の企業が約9割であり、雇用人数 100名以上の企業も14.4%見られた。 ・ 雇用障害種別については、一般企業では「身体のみ」(身体障害者のみを雇用している企業)が33.2%と最も多く、次いで「身体・ 知的・精神」(三障害全てを雇用している企業)が18.3%であった。特例子会社では「身体・知的・精神」が69.2%と最も多かった。
○雇用の質に関する調査研究結果@(企業アンケート調査)│ 障害者の配置場所→・一般企業では「一般社員と共に既存の部署内に配置(混合配置)」の回答が96.8%であった。特例子会社においても「一般社員と共 に既存の部署内に配置(混合配置)」が63.1%と最も多く、次いで「自社内の主に障害者で構成される部署に配置(集合配置)してお り、一般社員と事業所・フロア等が同じである」が42.1%であった。
○雇用の質に関する調査研究結果@(企業アンケート調査)│ 障害者の担当業務→障害者の担当業務は、「事務、事務補助」が一般企業42.3%、特例子会社76.4%と最も多かった。次いで一般企業では「製造、もの づくり」が24.9%、「清掃、衛生管理」が24.3%、「医療、福祉、介護」が19.2%であった。特例子会社では「清掃、衛生管理」が 69.2%、「郵便、社内便」が45.6%、「印刷、製本」が37.9%であった。
○雇用の質に関する調査研究結果@(企業アンケート調査)│ 障害者雇用において重視している事項→・「重視している」の回答割合は「法定雇用率の充足を目指している」が一般企業57.0%、特例子会社82.1%と最も高かった。次いで一般企 業では「障害者を隔離せず一般社員と同じ部署に配置することを目指している」が48.1%であった。特例子会社では「障害者雇用を社会貢献 の一つとして位置づけている」が76.9%であった。 ・一方で、一般企業と特例子会社を比較すると、「障害者雇用を経営戦略の一つとして位置づけている」、「障害者の戦力化を目指している」、「障害者が社内のより中心的な業務(コア業務)に貢献できることを目指している」、「障害者の新たな職域や新規事業の開拓を目指 している」の各項目は、一般企業において「重視している」を選択した企業は10%前後にとどまった一方、特例子会社では4割弱〜6割弱の 企業が「重視している」を選択していた。
○雇用の質に関する調査研究結果@(企業アンケート調査)│ 能力開発、評価・処遇等の取組(取組実施数)@ →・障害者雇用において、「能力開発、評価・処遇等の取組」を実施した実績について、「業務とのマッチング」、「教育訓練(OJT)」、 「教育訓練(Off-JT)」、「評価・処遇」及び「中長期的なキャリア形成」に係る25項目の取組から実施した実績のある取組の回答により、 取組実施数を算出した。 ・取組実施数の結果については、以下のとおりとなった。⇒業務とのマッチング、教育訓練(OJT)、教育訓練(Off-JT)  参照。
○雇用の質に関する調査研究結果@(企業アンケート調査)│ 能力開発、評価・処遇等の取組(取組実施数)A→・障害者雇用において、「能力開発、評価・処遇等の取組」を実施した実績について、「業務とのマッチング」、「教育訓練(OJT)」、 「教育訓練(Off-JT)」、「評価・処遇」及び「中長期的なキャリア形成」に係る25項目の取組から実施した実績のある取組の回答により、 取組実施数を算出した。 ・取組実施数の結果については、以下のとおりとなった。 参照。
○雇用の質に関する調査研究結果@(企業アンケート調査)│ 能力開発、評価・処遇等の取組(業務とのマッチング)→・障害者の能力発揮を促していくためには、多様な障害特性と業務とのマッチングは大変重要であるが、いずれの取組みについても、一般企 業に比べ、特例子会社において取組みが進展している。 ・特に、「入社前の実習やインターンシップ」によりマッチングを高めることや、「個々の障害者の能力や特性に合った職務の創出又は再構 成」や「障害者の能力や特性と業務とのマッチングの定期的な状況確認」を通じ、採用した障害者の障害特性を踏まえながら、その能力発揮 を最大化していくための取組みが必ずしも十分でない傾向がある。
○雇用の質に関する調査研究結果@(企業アンケート調査)│ 能力開発、評価・処遇等の取組(教育訓練(OJT))→・障害者の能力発揮と成長を促していくためには、日々のOJTが大変重要であるが、いずれの取組みについても、一般企業に比べ、特例子 会社において取組みが進展している。 ・特に、ステップアップの前提となる「多様な業務への取組機会」や「指導役やチームリーダー役を経験する機会」の提供は必ずしも十分ではない傾向がある。
○雇用の質に関する調査研究結果@(企業アンケート調査)│ 雇用の質の向上に取り組む上での課題→・障害者雇用の質の向上に取り組む上での課題については、一般企業では、「職場において必要な環境整備を行うノウハウの不足」が 31.9%と最も高く、次いで「障害者の能力に関する社内の理解の不足」が31.4%であった。特例子会社では、「障害者のモチベーショ ンの維持・向上のためのノウハウの不足」が50.8%と最も高く、次いで「障害者の能力開発や能力発揮に有用な業務の安定的な供給の不足」が48.2%であった。 ・全体的に、障害者の持てる能力の十分な発揮に向けたノウハウ不足の問題意識が大きく、また、能力発揮先として相応しい業務の安定確保が問題となっている。
○雇用の質に関する調査研究結果@(企業アンケート調査)│ 雇用の質の向上に取り組む上でより実施が必要と感じている制度や支援→障害者雇用の質の向上に取り組む上で企業がより実施が必要と感じる制度や支援については、一般企業では、「配属部署や管理職への研修の実施」が34.7%と最も高く、次いで「より実施が必要と感じている制度や支援はない」が28.0%であった。特例子会社では、 「在職障害者が自身の将来のキャリアについて考えるための支援」が51.8%と最も高く、次いで「障害者の健康管理に関する助言」が 35.9%であった。
○雇用の質に関する調査研究結果A(事例調査)│ 事例における一般企業・特例子会社別、障害種別の障害者の役職→・一般企業は「一般職」が88.4%、「管理職」が7.0%であり、特例子会社は「一般職」が91.6%、「管理職」が6.0%であった。 ・いずれの障害種別も「一般職」が8割を超えるものの、身体障害者は「管理職」の事例も16.4%含まれており、知的障害者は「管理 職」の事例は含まれていなかった。
○雇用の質に関する調査研究結果A(事例調査)│ 障害者自身の働くことやキャリアに関する希望(一般企業・特例子会社)→・障害者の働くことやキャリアに関する希望については、一般企業は、「同じ会社でできるだけ長く働き続けたい」が84.3%と最も多 く、次いで「体調管理や私生活とのバランスを取りながら働きたい」が43.9%、「安定した収入を得たい・より高い収入を得たい」が 30.8%であった。 ・特例子会社は、「同じ会社でできるだけ長く働き続けたい」が83.1%と最も多く、次いで「周囲の人や社会の役に立ちたい」が 48.8%、「安定した収入を得たい・より高い収入を得たい」が47.0%であった。 ・障害者自身も、安定的な雇用とともに、自らの能力向上や、能力発揮に対する評価・処遇、会社・社会への貢献を求めている。
○雇用の質に関する調査研究結果A(事例調査)│ 障害者自身の働くことやキャリアに関する希望(障害種別)→障害種別の当該障害者の働くことやキャリアに関する希望については、全ての障害種別で「同じ会社でできるだけ長く働き続けたい」(身体障害者80.6%、知的障害者84.3%、精神障害者85.7%)が最も多かった。次いで、身体障害者及び精神障害者では「体調管理や私生活との バランスを取りながら働きたい」(身体障害者48.5%、精神障害者51.4%)が多かった。次いで、知的障害者では、「周囲の人や社会の役に立ちたい」(36.3%)が多かった。
○雇用の質に関する調査研究結果A(事例調査)│ 雇用の質の向上に役立った取組(一般企業・特例子会社)→・障害者の雇用の質の向上に役立った取組については、一般企業は、「配置部署における相談・コミュニケーション」が51.8%と最も多く、 次いで「業務とのマッチング(入社前の実習やインターンシップ、障害者の能力や希望に沿った業務の選定等)」が47.2%であった。特例子 会社は、「業務とのマッチング(入社前の実習やインターンシップ、障害者の能力や希望に沿った業務の選定等)」が64.5%と最も多く、次 いで「配置部署における相談・コミュニケーション」が60.8%であった。 ・一般企業と特例子会社を比較すると、「人事評価・処遇(昇進・昇給等)」(一般企業23.9%、特例子会社44.6%)、「業務に関する指導 (上司等による指導、業務マニュアルの作成、振り返り等)」(一般企業32.4%、特例子会社59.0%)、「職務上の役割を増やす(多様な業 務への取組機会の提供、担当職務の幅(種類・量・難易度)の段階的な拡大、裁量の付与等)」(一般企業31.3%、特例子会社59.0%)、 「社外の支援機関の相談・連携」(一般企業15.9%、特例子会社39.8%)等、多くの項目について、一般企業が特例子会社より回答割合が低 かった。
○雇用の質に関する調査研究結果A(事例調査)│ 雇用の質の向上に役立った取組(障害種別)
→・障害種別の当該障害者の雇用の質の向上に役立った取組については、「配置部署における相談・コミュニケーション」(身体障害者46.6%、 知的障害者57.7%、精神障害者56.6%)については障害種別を問わず、一定の割合の回答があった。 ・「業務とのマッチング(入社前の実習やインターンシップ、障害者の能力や希望に沿った業務の選定等)」(身体障害者32.4%、知的障害 者61.7%、精神障害者61.1%)、「業務に関する指導(上司等による指導、業務マニュアルの作成、振り返り等)」(身体障害者25.3%、知的障害者45.2%、精神障害者45.7%)、「社外の支援機関の相談・連携」(身体障害者4.0%、知的障害者28.2%、精神障害者33.7%)につ いては、知的障害者と精神障害者の回答割合の差は大きくなかったが、身体障害者は回答割合が低かった。 ・「雇用管理(柔軟な勤務形態、在宅勤務制度、休暇制度等)」(身体障害者24.4%、知的障害者14.5%、精神障害者34.9%)、「日々の健康状態(体調、気分、睡眠、服薬状態等)の確認」(身体障害者29.0%、知的障害者37.9%、精神障害者49.1%)については、精神障害者の回答割合が高く、また、障害種別により回答割合に差があった。
○いわゆる障害者雇用ビジネス(※) に係る実態把握の取組について→・実態把握の概要 ・把握状況(令和6年11月末時点)  参照。
○障害者雇用ビジネスの状況│ いわゆる障害者雇用ビジネス(※) に係る実態把握(これまでの推移)労働政策審議会障害者雇用分科会において状況を初めて報告した令和5年4月以降、ビジネス事業者、就業場所、利用企業及び就業障害者の数は、いずれも一貫して増加傾向にある。
○障害者雇用ビジネスの状況│(参考)障害者雇用に関するビジネスモデルの例→ サービス提供事業者⇒ 屋外型農園・屋内型農園・サテライトオフィス  参照。
○障害者雇用ビジネスの状況│ 障害者雇用ビジネスに係る取組→実態把握において把握した事例等を踏まえ、障害者が活躍できる職場環境の整備や適正な雇用管理のため 事業主が行うことが望ましい取組のポイントについて令和5年6月にリーフレットを作成し周知を図っている。
○日本障害者雇用促進事業者協会団体概要→障害者雇用促進を担う民間事業者が衆知を結集し、社会との積極的な対話を通じて、業界全 体の信頼性向上と障害者雇用の健全な発展に貢献すること⇒【事業内容】@〜B   参照。
○障害者雇用支援サービス適格事業者認定制度→障害者雇用支援サービス事業者が、障害者雇用に関わる法律や事業主の責務について、幅広い知識と深 い理解を持ち、それを事業運営の隅々に行き届かせ、事業の健全な運営と発展を図ることを目的とし、 創設された制度⇒ 【認定までの流れ】  参照。
○研修制度JEAP認定障害者雇用支援アドバイザー→本講座を通じて習得した専門的な知識及び技能に基づき、会員事業者の事業所における、障害者の雇用 促進、労働条件、合理的配慮、職場定着、能力開発、キャリア形成、施設管理等に関する適切な支援業 務を行うことができる者であることを証すること ⇒【認定までの流れ】  参照。
○特例子会社制度→・障害者雇用率制度においては、障害者の雇用機会の確保(法定雇用率=2.5%)は個々の事業主(企業)ごとに義務づけられている。 ・一方、@障害者の雇用の促進及び安定を図るため、事業主が障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たす場合には、特例としてその子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなして、実雇用率を算定できることとしている。また、 A特例子会社を持つ親会社については、関係する子会社も含め、企業グループによる実雇用率算定を可能としている。 ・これにより、事業主にとっては障害の特性に配慮した仕事の確保・職場環境の整備が容易となり、障害者の能力を十分に引き出すことができること等や、障害者本人にとっては障害者に配慮された職場環境の中で、個々人の能力を発揮する機会が確保されること等のメリットがある。
○事業協同組合等算定特例@→中小企業が事業協同組合等を活用して共同事業を行い、一定の要件を満たすものとして厚生労働大臣の認定を受けたものについて、その事業協同組合等とその組合員である中小企業(特定事業主)における実雇用率を通算することができる。
○事業協同組合等算定特例ALLPについて→ 令和5年度から、「有限責任事業組合(LLP)」が事業協同組合等算定特例制度の認定対象に加わった。

○論点@→ ◎ 障害者雇用の「質」として、重視されるべき要素は何か。また、「質」を高めるために取るべき政策的対応は何か。
<障害者雇用促進制度における基本的理念等>→(第3条)(第5条)あり。  参照。
○論点A→◎ 障害者雇用の「質」として、重視されるべき要素は何か。また、「質」を高めるために取るべき政策的対応は何か。 <障害者雇用の現状(実態)>  参照。
○論点B→ ◎ 障害者雇用の「質」として、重視されるべき要素は何か。また、「質」を高めるために取るべき政策的対応は何か。 <「質」として重視されるべき要素>→障害者雇用促進制度の基本的理念等や、前述のような現状(実態)も踏まえると、 障害者雇用の「質」として重視されるべき要素としては、以下が特に中心的な要素と考えられるのではないか 。
⇒1)能力発揮の十分な促進 (@職務の選定・創出と障害特性等との適切なマッチング、A成長を促す OJTや教育訓練機会の確保等)
2)能力発揮の成果の事業活動への十分な活用
3)適正な雇用管理 (@採用・配置・育成等の計画的な実施 、A障害特性に配慮した働きやすさを高める措置等)
4)発揮した能力に対する正当な評価とその反映 (@評価結果に相応しい配置(職務内容)、A処遇(昇進・昇格))
5)能力発揮に相応しい雇用の安定 (安定的な雇用契約期間等)
・こうした「質」として重視すべき中心的な要素については、法令において明示する方向で検討してはどうか。
○論点C→◎ 障害者雇用の「質」として、重視されるべき要素は何か。また、「質」を高めるために取るべき政策的対応は何か。
<「質」を高めるために取るべき政策的対応>→・現行制度においては、300人以下の中小企業を対象とする「もにす認定制度」(強みとする取組みの総合加点方式)があり、 雇用の「量」に加え、「質」に関わる取組状況を評価しているが、企業規模にかかわらず「質」を高める取組みを促進していく観点か ら、大企業を新たに認定制度の対象とした上で、認定基準等について改めて見直しを行うこととしてはどうか 。 その際は、障害者自身による雇用の「質」に対する満足度やワーク・エンゲージメント についても、勘案する方向で検討してはどう か 。 また、「質」として重視されるべき中心的な要素については、達成必須とすることや、取組み姿勢や内容だけでなく、データ等の指標(例:評価結果の適切な処遇への反映等)を組み合わせる等を併せて検討していく必要があるのではないか。 ・ 「質」を高めるために、一定の負担(例:教育訓練機会の提供や障害特性に配慮した働きやすさを高める措置等)が生じることも想定されることから、当該負担に関して、障害者雇用に伴う経済的負担の調整を図るものである調整金(報奨金)や、助成金などにおいて、認定事業主に対する一定の配慮 を検討してはどうか。
(「質」の評価結果について、雇用率の算定において反映すべきという意見もあるが、『「質」が高い分「量」を減らす』ことは、雇用率 が、事業主が社会連帯の理念に基づき共同の責務として提供が義務づけられる雇用の「量」の概念であることに照らし、適当ではないのではないか。)
○論点D→◎ 障害者雇用の「質」を高めていく観点から、いわゆる「障害者雇用ビジネス」に対し、どう向き合うべきか。 <いわゆる「障害者雇用ビジネス」について> ○ いわゆる「障害者雇用ビジネス」を利用した障害者雇用は、収集可能な範囲での実態把握を開始し、労働政策審議会障害者 雇用分科会において状況を公表した令和5年4月以降、短期間で大きく増加傾向 にある。 この背景には、「ビジネスと人権」等の国際的な要請やコンプライアンス意識の高まりの一方で、 法定雇用率を達成するために求められる現実的なハードル(職務の選定・開拓、採用、合理的配慮の実施、育成等)を乗り越えることが容易でないと感じられる ことによって、利用企業にとってのニーズが増大 していることによると考えられる。調査研究結果のデータを見ても、 障害特性を十分 に踏まえた上で、障害者の持てる能力を十分に発揮していくための ノウハウの不足の課題が、多くの企業に見られており、 この傾向 は 中長期的に継続すると想定される。
・一方で、「障害者雇用ビジネス」については、本研究会においても様々な課題が指摘されているとともに、 業界団体において業界の適正化を目指す動きも生まれているところであり、こうした動きも踏まえつつ、次回の研究会において、議論を深めることとしてはどうか。

◎参考資料1:今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会参集者→14名。

次回は新たに「第6回福祉人材確保専門委員会 資料」からです。

社会保障審議会障害者部会(第152回)の資料について [2025年12月19日(Fri)]
社会保障審議会障害者部会(第152回)の資料について(令和7年11月10日)
議事 (1)障害福祉計画及び障害児福祉計画に係る基本指針の見直しについて
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65750.html
◎岡田委員提出資料
2024年度精神障害者と家族の生活実態と意識調査〜全国家族ニーズ調査〜
4.本調査の結果からみえてきたもの ↓
本調査の結果からは、多くの家族が本人との同居に伴う日常生活上のケアだけでな く、精神科医療を継続するための協力や経済的な負担も担っていることが明らかになっている。家族が本人のケアを担うことにより、家族の健康状態や就労状況等、家族自身の生活にも大きな影響を与えている。 約8割の家族が身体面での不調を感じ、3割以上の家族が精神科の受診や服薬等の精神的な不調を抱えていることが明らかになった。また、就労している群のうち、約4割の家族が本人の病気や体調のため、労働時間を短縮したと回答しており、4人に1人が仕事を退職していた。さらには、少なくない家族が本人の病状悪化により近隣 とのトラブルや転居を余儀なくされる等、住み慣れた地域で暮らしていくことにまで影響が及んでいた。調査結果の背景にある家族の苦悩は計り知れず、早期支援や危機的状況に対するアプローチは、本人だけでなく、家族一人ひとりのメンタルヘルスといった観点からも重要であるといえる。
本調査では家族会未入会者の回答が得られたことで、若年層の回答が増加しているが、全体として家族の生活実態に大きな差異は見られなかった。障害のある本人だけでなく、家族自身も様々な困難を抱えていることは、第1回家族福祉ニーズ調査 (1985)以来、長年指摘されているにもかかわらず、問題は見過ごされ、家族が孤軍奮闘し続けている実態が明らかになった。この間、障害者総合支援法や保護者制度の廃止を含む精神保健福祉法の改正等、精神障害者と家族を取り巻く大きな法改正がありながらも、家族の抱える困難や負担感には変化がないとも言える。 このことから、家族が必要とする支援と既存の社会資源がマッチしていない可能性を指摘したい。本人の社会資源の利用状況をみると、精神科医療機関(定期受診等)と経済面を支える制度(自立支援医療、障害年金、精神障害者保健福祉手帳)を除くと、精神科訪問看護の利用が最も多いことが明らかになった。最新の630調査 (2024)では、精神科訪問看護の利用者数は249,398人と過去最大となっており、 10年前と比較すると約5倍増加し、実施施設数も1,504か所から8,335か所と急増している。精神科訪問看護は、「個別」かつ「住み慣れた自宅等」で提供されることに その特徴がある。支援内容には本人の療養生活のサポートだけでなく、再発の兆候を家族と共有することや療養生活について家族に助言すること等が含まれており、特に本人が家族と同居している場合、家族をも視野に入れた支援が求められる。また、自立支援医療の対象であることから、経済的にも家族を支えていることが推察される。 10 年間で精神科訪問看護の利用者数が急増している実態から、精神障害のある本人が社会資源につながりにくい状況は、個人の精神疾患や家族の対応が原因ではなく、社会資源が本人の障害特性にマッチしていないことが考えられる。既存の医療福祉サービ スは「通所」で提供されるものが多く、デイケアや就労支援等のリハビリテーションも「集団」で提供されることが多い。精神障害の特性として、「環境変化への不安が強い」「慣れるまで時間がかかる」「対人関係が苦手」があると言われるが、その特性に合った社会資源が少ない結果が本人や家族の社会的孤立につながっているとも言える。本調査では、もっと充実してほしい支援として「本人の希望にそった個別支援体制の確立」 が挙げられている。家族によるケアから社会的ケアに移行するためには、既存の社会資源の数が増えるだけでなく、精神障害の特性に配慮した資源開発が求められるだろう。 みんなねっとでは「わたしたち家族の7つの提言」(2009,2017)や「精神保健医療福祉への提言」(2023)の中で、「24時間・365日の相談支援体制の実現」や「本人・ 家族のもとに届けられる訪問型の支援・治療サービスの充実」を求めている。本調査に おいても、特に発症間もない時期や病状悪化時の家族の困難が明らかになっており、早 期支援や危機介入アプローチに関する家族のニーズは高い。訪問型の支援・治療サービスは長年家族会が望んできたものであるが、精神科訪問看護については未受診や医療中断すると利用できないこと、また急速な広がりによる質の低下も懸念されている。今後 は、行政による訪問型支援の強化や家族をも視野に入れた支援スキルの開発など質の確保を求めていく必要がある。 また、本調査の特徴は家族会未入会者の回答が得られたことである。前述したように、回答者の平均年齢と家族会入会の有無をみると、家族会入会群の回答者の平均年齢は69.5歳、家族会未入会群の回答者の平均年齢は54.6歳であり、若年層の回答が増加している。家族会入会・未入会群を比較すると、全体として家族の生活実態に大きな差異は見られなかったが、いくつかの項目で統計的な有意差が認められた。 まず、初診までの家族の経験については、[受診先を探すことに苦労した]では、未入会群の62.9%が経験ありと回答しており、入会群の53.2%よりも約10ポイント高く、[家族に精神疾患についての知識がなかった]でも、未入会群の50.2%が経験ありと回答し、入会群の43.6%を上回っていた。みんなねっとの精神保健医療福祉への提言(2023)では、早期支援・重度化予防のための啓発教育の普及を求めている。 「あのとき知識があれば、何か対応できたのではないか」という家族の自責感は本人 のケアを抱える要因になりやすい。8050問題の予防のためにも、精神疾患に対する 普及啓発や早期介入・早期支援の充実が望まれる。 危機的状況の[自傷・自殺等のリスクを考え、本人から目が離せないことがあった]では、未入会群の66.5%が経験ありと、入会群(58.4%)を大きく上回っており、統計的にも有意な差が認められた。未入会群の方が回答者(家族)及び本人の平均年齢が若いことから、本人の症状の不安定さが家族の生活にも強く影響していると 考えられる。 これまでの調査では、家族は危機的状況に対して最大限の努力をしながら対応していることが明らかになっている。こうした対応が積み重なった結果、本人と家族が分かちがたい関係に陥っていることも少なくない。長年の本人や家族に対する支援の乏しさが社会的孤立や8050問題をつくり出してきたともいえるだろう。8050問題を 解消するためには、早期支援や危機介入アプローチの開発と共に、分かちがたい関係 に陥っている家族が本人のケアを社会的ケアに委ねるために必要な支援も併せて整備 される必要がある。 就労状況については、家族会入会群の平均年齢は69.5歳であり、多くの世帯が年 金生活者であることが推察される。就労状況の変化について、家族会入会群と未入会群を比較すると、未入会群の53.9%が勤務時間の減少や転職を経験しており、入会群の46.8%より有意に高く、[身体の不調を感じた][精神状態に不調が生じ受診した][余暇活動を行う余裕がなくなった]などの他の項目においても、未入会群の方が有意に高い割合で経験していることが明らかになった。 英国では、家族が果たしているケアの社会的コストを換算し、科学的根拠をベース に家族支援の必要性を打ち出し、家族自身が支援の対象者として包括的に支援される システムが構築されている。本調査においても、労働生産性の低下による年間損失額 が約1.4兆円から約2.3兆円に上ることが示唆された。本結果はパフォーマンスの低下による直接的な経済的損失に過ぎず、家族の精神的・身体的負担といった間接的な コストを含めると社会全体の負担はさらに甚大となると考えられる。また、精神障害者家族の年収についても40歳から69歳までのすべての年齢階層において、一般就労者の平均年収に比較して有意に低いことが示された。なお、本調査では男性の回答者数が少ないため、40〜69歳の女性に限定して解析している。また、地域別の収入差や企業規模、就労業界等は考慮されておらず、今回の結果が賃金構造基本統計調査 (2024)と同様な地域分布をしているかは不明である。このため、サンプリングバイアス(データの偏り)が生じている可能性がある。今後、家族によるケアの社会的コストの詳細を明らかにすることで、政策提言にもつなげていきたい。 家族会に期待する活動については、多い順から[お互いの悩みや苦労をわかちあう]93.5%、[本人への接し方を学ぶ]92.5%、[精神疾患や治療についての知識を学 ぶ]89.7%、[行政や関係機関に働きかける]86.5%といずれも8割を超えており、 [お互いの悩みや苦労をわかちあう]が家族会入会群と未入会群のいずれにおいても 最も期待の高い項目となっている。「わかちあい」は家族会の原点であり、「わかちあい」は世代や立場を超えても変わらず、家族を支え続けていることが示唆されている。[本人への接し方を学ぶ][精神疾患や治療についての知識を学ぶ]という「学びあい」に関する項目への期待も高い。「学びあい」は、社会の中で自分たちが置かれて いる現状を知る機会でもあり、「わかちあい」「学びあい」を通して、「運動」の重要性を認識する家族も少なくない。実際に、家族会は統合失調症の病名変更をはじめ、医療の改善を要求したり、作業所やグループホームづくり等、地域の社会資源の開発にも力を注いできた。このような「運動」は今も活発に行われており、医療費助成や公共交通機関の運賃割引等、家族会の働きかけにより実現した制度やサービスも多い。 近年は三障害一元化の方針もあり、他の障害者や家族と共に自治体の会議に参加して、意見を述べる機会も増えている。家族会がより積極的に発言できる団体に成長することが社会からも求められている。本調査では、PPI(患者・市民参画)の認知不足が明らかになっているが、「精神障害者にも対応した地域包括ケアシステム(通称: にも包括)」等の政策を実現していくためにも、当事者・家族が参画できるような仕組みが必要であり、その足掛かりとして家族会の果たす役割は大きい。 前述したように、本調査の特徴は家族会未入会者の回答が得られたことである。家族会入会・未入会群を比較すると、未入会群では若い年齢層の親やきょうだい、配偶者(パートナー)、そして子どもの立場が増加している。また、本人の病名についても 未入会群では「気分障害(うつ病、躁病、双極性障害)」と「発達障害」が増加している。これまでの家族会は「統合失調症の親(特に母親)」がその中心となっていたが、 今後はそれ以外の立場にある家族をどのように巻き込んでいくかが鍵となるのではないだろうか。 自由記述の分析からは、政策課題として@薬に依存しない治療アプローチの推進、 A親なきあとや8050問題への包括的対応と成年後見制度の改善、B参画可能性を担 保する生活基盤整備(経済的支援・医療負担軽減)、C情報格差・地域格差是正のためのプッシュ型支援と全国標準化、D精神疾患に関するスティグマ・偏見解消に向けた 社会的啓発が示されており、これらはみんなねっとの精神保健医療福祉への提言 (2023)と重複するものが多い。 障害者権利条約の前文には、障害者だけでなく、家族自身が「社会及び国家による保護を受ける権利を有する」と明記されている。精神障害者本人に主体的に生きる権利があるように、家族一人ひとりにも地域で暮らす生活者としての姿があり、その権利がある。また、8050問題をはじめとする「親なきあと」を憂える状況は、精神障害者本人の側からみても家族がケアを担えない状況になったとき、これまでの生活を維持していくことが困難になるということでもある。精神障害のある本人が安心して 精神科医療や地域生活を続けていくためにも、家族に依存しない施策や仕組みを早急に検討していくことが求められるだろう。 “Nothing About Us Without Us”(私たちのことを私たち抜きに決めないで)は、 障害者権利条約の批准において盛んに使われてきた言葉である。既存の社会資源に足りないものは多くある。しかしながら、既存の社会資源はこれまで精神障害者家族会をはじめとする当事者団体が声をあげてきたからこそ、少しずつ変化してきたものでもある。本報告書が精神障害者および家族に対する有効な支援を検討するための材料になれば幸甚である。

5.本調査への家族の意見 ↓
1)精神障害者への構造的ネグレクト
→ 調査結果を見てまず思ったことは、2017年8月発行の東京大学医学部付属病院の論文「精神疾患をもつ人の平均余命は一般人口に比べて20年以上短い〜精神障害者の健康格差〜“です。この論文の中で、“日本では、精神障害者への構造的ネグレクト(無視する、放置する等)がある”と指摘しています。今回の調査結果は、東京大学が指摘する“構造的ネグレクト”の表れでもあると思います。そして、構造的ネグレクトの要因は、精神障害者に対する政策の遅れにあると実感しています。 政策の遅れとは、障害者権利条約で精神保健、人権及び法制度に関連し国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)とWHOが求めている“生物学的アプローチから支援パラダイム”(※1)への転換が遅れていることです。転換に関連し、現在、厚生労働省は、“精神障害者にも対応した包括ケアシステムの構築”(通称:にも包括)を推進しています。しかしたとえば、これに関連する予算(地域包包括ケアシステム構築支援事業)は2024 年度8.5 億円にしかすぎません。よって“にも包括”が十分に機能していないこともあり、例えば以下の事態が生じています。 @ 近隣とのトラブル発生により転居を余儀なくされた家族7.6%。 A 警察に通報せざるを得ない状況になった家族は42.8%。 B 約8割の家族が、身体面での不調を感じ、精神状態に不調が生じ精神科を受診した 家族は、32.8%。
@ 暴言・暴力等により、身の危険を感じることがあった。ややあったをあわせると 57.7% たとえ“にも包括”が機能したとしても、支援パラダイムが実現するとは思えません。 例えば、当事者の状態が悪くなり緊急事態となっても適切な支援体制が無いことに変わりはありません。日本では、1965年の精神衛生法の改正当時から、入院中心の医療から地域精神保健へ移行させる必要性が認識されていたと聞いています。しかし、60年 たった現在も有効な地域精神保健の政策がとられていません。改革のためには、強力な 政治的リーダーシップが必要です。

2)精神障害者への構造的ネグレクトの背景→ ここで、精神障害者に対する構造的ネグレクトについて、もう少し説明します。 @優生思想の残り→ 戦後の福祉行政に「劣った者は、隔離・管理すべき」という思想が残っており、精神障害者への支援もこの枠組みの中で設計されたのではないでしょうか。そのため、1950 年代より精神科病院への隔離がすすみ、1960年代より更に加速されました。現在、退院促進(地域移行)が言われていますが、退院後の地域保健福祉に関する有効な政策が、とられていないと感じています。その為、例えば、医療保護入院の比率は年々UPしています。 A国際的批判と改善の遅れ→ 国連(国連人権高等弁務官事務所)や国際法律家委員会(ICJ:国際NGO)及び WHOより勧告を受けて改善は勧められましたが、精神保健福祉の根本的な構造改革 至っていません(勧告:生物学的アプローチから支援パラダイムへの転換等)。 Bスティグマ(偏見と烙印)→ 精神障害者に対する根強い偏見があります。 一般市民の間でも「理解できない=怖い」、「予測できない=危険」という認知的不安が強く、精神障害者に対する「距離化、排除、施設化の容認」につながります。 C同調圧力・均質性志向→ 日本社会は「みんな同じ」が重要視される傾向があり、異質とみなされる精神障害者は、排除・無視される傾向が強くなっています。 D専門家中心主義→ 医療や福祉の現場では、「専門家が決めるべきという」文化が根強く、当事者や家族 の声を政策に反映させることが難しくなっています。(※2)E制度設計の後まわし→身体障害に比べ精神障害者に対する施策は医療モデルに偏り、福祉・社会参加の視点が後まわしにされてきたのではないでしょうか。 医療モデル:@ケアの主な焦点は、診断、投薬、病状の軽減 A施設中心のケアや 隔離、強制的な治療等(長期入院、拘束、多剤・大量投薬等)。 F不確実性への不耐性(耐性力が無い)がもたらす構造的影響→ 制度設計における「予測可能性」重視 精神障害者の行動や状態は、他障害に比べ予測困難性が高いとされます。行政や医療制度は「管理可能性」「リスク回避」を優先し、柔軟性よりも画一的な対応を選びがちではないでしょうか。その結果、長期入院や隔離処遇が「安全策」として制度化されています。 支援者側の心理的バイアス 支援者(医療、福祉、行政職員)が、曖昧さや変化に対する耐性が低い場合、対話的支援よりも「診断⇒処理⇒管理」の直線的モデルを好む傾向が強くなっています。オープンダイアローグのような多声的・非決定的(※3)アプローチが敬遠されています。

3)精神障害者に対する構造的ネグレクトの具体例→ 各種制度を他障害者と比較した場合は、以下の通りです。 @ 交通運賃割引制度(国鉄、JR)の導入→身体障害者:1952年、知的障害者:1991年、精神障害者:2025年に導入されており、精神障害者は、身体障害者より73年遅れています。 A 医療費助成制度(富山県の場合)の導入→ 身体障害者:1972年、知的障害者:1972年、精神障害者:2020年に導入されており、精神障害者は、身体障害者より48年遅れています。 B 障害者雇用促進法(法定雇用率を制定した年)→身体障害者:1976年、知的障害者:1998年、精神障害者:2018年に制定されて おり、精神障害者は、身体障害者より42年遅れています。

4)家族支援の重要性について→ みんなねっとが過去に行った調査(複数)でも指摘されている家族支援の重要性が改めて確認されたのではないでしょうか。 本人との同居62.8%は、家族が本人を支えており、更にその他(入院中など)は 8.3%ですが、入院中で高齢者(65歳以上)の場合、親の死亡等により支援が受けられなくなり、病院で一生を終える本人が多くいることを示唆しています。これは、極めて残念なことです。危機的状況では、ほとんどの自治体で現状、警察の介入しか方法がありません。本人、本人の関係者(友人、職場の同僚など)、家族、支援者を交えた支援が無く家族だけで、本人のケアを担っていると様々な問題が発生します。 支援があっても、その支援者は、本格的な教育・訓練を受けていないと実感していま す。そのため、訪問支援を受けると状態が悪化する等の事例も報告されています。一方、 訪問支援が無いため、家族は自由な外出ができません。家族会に加入していても、家族会の活動に参加できない家族の方も多くいます。第3者の介入がなく、家族が不適切な対応(批判する言動・表情、過剰な心配等)をしていると再発率が高くなります。 家族支援とアメリカ大リーグ選手との比較(MLB:野球)すると、米国大リーグの日本人選手O・Sは、打撃、盗塁、ピッチング及び日々の活動で監督、コーチ、通訳、 トレーナ及び分析スタッフ等より様々なサポートを受けています。これに比べ、精神に問題がある本人を家族だけでサポートすることは、問題があります。 @家族に負担がかかる。 就労状況が変化した(勤務時間を減らす、転職する、退職する等):49.0% ・家計の収入が減り、経済的困難が生じた:38.5% ・身体の不調を感じる:77.8% ・精神状態に不調が生じて精神科を受診した:32.8% ・向精神薬(抗うつ剤など)や睡眠薬を服薬した:32.2% A本人の病状悪化に伴う、家族の危機的状況の経験→ ・近隣とトラブル発生:27.1% ・トラブル発生し、場合により転居を余儀なくされた:7.7%・家族の身の危険(暴言、暴力):57.7% ・警察に通報せざるを得ない状況:42.8% B本人にも家族以外の適切な相談相手・対話する相手が必要→本人とその家族への支援コストに関する試算について、退院を促進し、本人とその家族に対する支援や職場や社会生活での支援強化などによりインクルーシブ社会を実現した場合、その医療コスト、社会的コストはどのようになるのかシミュレーションを求めます。欧米先進国の事例により、ある程度シミュレーションは、できると思っています。恐らく、医療コストだけでも削減できるのではと思っています。先進のモデルはあ るので是非試算し、日本の現状と比較していただきたい。例えば、イギリスでは家族支 援の導入等によりその医療コストや社会的コストはどのようになっているのか知りたいところです。
5)患者・市民参画(PPI)の活動について→ PPI について、知らないと回答した人は75.2%です。私も知りませんでした。活動をしたいかについて、とても思うが26.3%、少し思うと回答は42.3%で合わせると、 68.6%で意外と高い数値であると思います。自治体の各種会議(委員会等)に参加して思うことは、開催は1回/年、多くても3回程度/年で、人数は15〜30名程度、時間は90分〜120分程度です。仮に20名参加の会議で、家族が10分程度意見を述べたところで、その意見を取り上げる意思を感じることはあまりありません。つまり、本人、家族の意見を聞いたというアリバイに使われているという印象です。施策について、 共同で研究し、検討・立案・評価する意思は感じられません。 繰り返しになりますが、共同で研究、検討・立案・評価は、少人数(10名以内)で、 少なくても 5 回以上開催し、対等な立場で意思決定に関与することが基本であると思っています。

あとがき ↓
・この30年と今後の方向性
→ 1992年、私事ながら、「みんなねっと」の前身である「ぜんかれん:全家連」(全国精神障害者家族会連合会)の事務局に入職した。33年前になる。とはいえ、お世話 になったのは、3年間にとどまり、その後は、教員として精神保健福祉に関する講義 を担当。そのため、第一線の現場から離れたのだが、いわば傍観者として、 精神保健福祉の動向には、常々関心を持ち、今回も含めて、機会があれば家族会調査 にも参加させていただいてきた。 今、あらためて考えると、ご家族のおかれている社会的な状況は、あきらかに30 年前とは異なっていると感じる。今回、この調査に携わる機会を与えていただき、その結果を拝見しながら、ここでは、これまでを振り返り、行く末に思いをはせてみたい。調査報告とは直接に関係がない雑感にとどまるのだが、ご容赦ください。 「ぜんかれん」の事務局員としては、当初、作業所や住居および就労の提供をはじめとした福祉的活動、家族会活動、当事者運動などおいて、先端的な活動を展開している方々を全国から東京へお招きして、活動内容を報告していただくようなイベントを年に1回開催することがメインの仕事であった。メールもインターネットも携帯電話さえもなかった時代である。今でいう対面で直接会って話し合っていただき、報告書を作成して、少しでも多くの方々に知っていただくしかなかった。 そんな時代だったから、とにかく情報を手に入れるのが、今では想像を絶するほど困難であった。たとえば、自分の子どもに診断が下されても、医師から説明されるわけでもなければ、書店で本を見つけても家族だと思われるのではないかと、手にする勇気も持てず、たとえ、図書館でひっそり見たとしても専門家向けの内容をすんなり 理解するのは容易ではなかった。そもそもこの病気が何なのかも、これからどうなっていくのかも、一体どうすればいいのかも、すべては闇の中であって、途方に暮れるしかなかった。ありあまる情報が手に入る現在とは、全く事情が異なっていた。 そのため、ご家族にも十分に理解できる情報を提供するために、ハンドブックの作成が急務であり、相談室スタッフを中心に、医師をはじめ、看護士や保健師、ソーシャルワーカーなど、家族支援に携わる専門職に集まっていただき、議論を重ねてメッ セージを絞り込んだ小冊子を作成した。 さらに、それでも読んでもらうだけでは、理解しづらいであろうからと、ハンドブックをテキストとする家族教室をプログラム化し、それを実際に行ってくれる専門職の育成を目指して、全国各地で研修会を実施した。 おそるおそる家族教室に集まったご家族たちが、講義を聞いた後に、まさに初めて、小グループでわが子の様子や自分のつらい思いについて、堰を切ったように話し合うのを目の当たりにしたときの感動は、今でも忘れることができない。人が集まる 場の力を実感した。
あれから30年になる。もちろん社会は、日々刻刻と変化し続けている。そんな中、印象に残っていることについて、3点に絞って記しておきたい。 ↓
一つめは、1993年に障害者基本法が制定されたことである。これによって、精神障害が身体障害や知的障害と並んで、福祉の対象であると明記された。いわば、三障害が同列に位置づけられたのであった。それによって、その後、手帳制度を定めた精神保健福祉法が制定され、精神保健福祉士が国家資格となる。ただし、このときの変化は、これまで福祉業界で隅に追いやられていた支援者にとっての意義あることで、 ご家族には直接関係がなかったともいえる。
二つめは、2002年に「精神分裂病」という病名が「統合失調症」に変更されたことである。個人的には、このことがここ30年の中で最も画期的な変化であった。今となっては、統合失調症があたりまえになっているので、この変化に立ち会っていなければ、その衝撃は理解しづらいであろうが、この病名変更は、まさに、「ぜんかれん」から、つまり、家族という立場から出された要望に対して、医学会が対応した結果なのである。いわば、ご家族の要望が医学会を変えたという、世界でも稀な例であるといえる。 そのことは、精神科医の学会である「日本精神神経学会」のHPで、「見解・提言/ 声明/資料」にある「統合失調症について−精神分裂病と何が変わったのか−」の 「はじめに:呼称変更の経緯」にも明記されており、そこに家族会からの要望は、先の障害者基本法制定と同じく1993年に行われたと記されている。 それによって、1995年、学会内に小委員会が設置され、1996から2000年にかけて、学会員、評議員、当事者へのアンケート調査が実施されて、公開シンポジウム やワークショップが開催された。そして、三つに絞られた新病名候補に関する一般からの意見公募が新聞紙上で行われ、最終的には、理事会、評議員会を踏まえて、2002 年8月の総会で議決がなされ、病名が変更されるという、非常に慎重かつ丁寧な手続きが踏まれたのであった。 さらに決定的だったのは、この病名変更が直ちに政府によって採用されたことである。かなり周到に準備が進められていたのであろうが、総会決議を待っていたかのように、同年8月、厚生労働省は各都道府県や政令都市に対し、「統合失調症」を精神保健福祉法に関連するすべての公文書や、診療報酬明細書の病名として使用するよう通知したのであった。これによって、新病名は、メディアや出版業界への浸透をも加速させたといえる。ご家族の要望が、医学会だけでなく、政府をも変え、さらには社会全体にも影響をもたらしたのであった。 ただ名称が変わっただけで、病気そのものは何も変わってないではないかと思われるかもしれないのだが、「精神分裂病」と言われれば、人格の中核を形成している「精 神」が、「分裂」してバラバラになってしまった不治の「病」というイメージしか持つことができず、「心が壊れてしまった」と思い込んだご家族がどれほどの絶望に追い込 まれていったかは、想像にかたくない。 それに対して「統合失調症」であれば、まとまり(統合)が崩れた(失調)状態(症状)ということになり、いわば、一時的にバランスを崩しているので、治療によってバランスを取り戻し、回復をめざそうということになって、わずかながらに希望をもつことができるようになる。 また、この病名変更によって、医師による患者さんへの病名告知率が、3割台から 7割近くに上昇したという調査結果も出され、医師にとっても患者さんやご家族とのコミュニケーションが格段に容易になったとされている。
三つめは、再びであるが、2011年に障害者基本法が改正され、「社会的障壁」に対して、その除去に「合理的配慮」を行うことが求められるようになったことである。 「社会的障壁」とは、「日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のもの」と定義されているのだが、いずれにせよ、社会の責任で障壁を除去しなければならないと規定されたのであった。いわば、 これまでのように、一方的に障害者に変わってもらおうとするのではなく、誰もが生活しやすくなるように、社会の側に変わることが求められるようになってきたということになる。 これら三つの変化から読み取れることで、今後目指すべき方向性についても三つ挙 げておく。 ↓
一つめは、総合化である。三障害は同列になったのだが、今後は、そうした障害だけでなく、誰かが困っていることに対して社会が責任をもって対応するように向かっていくことが必要になる。すなわち、高齢、児童、障害、生活困窮などといった理由や種別を問わず、誰かが困っていること、立ち行かないことに対しては、一切の縦割りをなくして、制度の狭間を取り除き、あらゆることにことごとく対応する方向を目指していくことが求められる。実際、厚労省もこの方向に向けていくつかの事業を展開し始めているのだが、その延長線上で、いわば総合福祉法の制定に向けた土台を作っていく作業が始められなければならない。
二つめは、家族会の要望によって病名変更が実現できたように、声を上げ続けることである。もちろん声を上げれば、必ず聞き取ってもらえるわけではない。しかし、 やはり、声をあげなければ誰も気づかないのも確かであり、今回のアンケートを含めて、今後も、声を上げることができ、それが集約されていく機会を定期的に作ること は不可欠であるといえる。 そして、三つめは、「社会的障壁」を少しでも取り除いていくことができるように、 社会全体が変わっていくことである。これについては、障害者差別解消法で、「合理的配慮」が、役所等の公的機関だけでなく、民間企業にも法的に義務化されるようになったのは、ようやく昨年2024年4月1日であったため、まだまだ社会全体に浸透しているとはいえないのだが、「統合失調症」という病名が20年を経てあたりまえになってきたように、少しずつ、「合理的配慮」に何らの違和感も覚えることのない社会になっていくことを先導していくことが必要である。 ただし、そうはいっても、ご本人やご家族が抱えている苦しみやつらさは、いかなるときも、いささかも変わってはいない。今回の調査でも、悲痛なコメントをこれほどまでにというほどいただいている。「なぜうちの子が」「どうしてこんなことに」といった誰にも答えることのできない問いの残酷さは、時代を超えても全く変わることがない。 しかし、私たちを取り巻く社会は、この30年で確かに変わってきた。だからこそ、たとえ、今がいかにつらい状況であったとしても、「どうせ」などと投げやりにな ることなく、社会は変わっていくものだという希望だけは、どうか捨てないでほしいと願うばかりである。

○執筆分担
3.本調査の結果・・・・・・・・・・・・伊藤千尋、鈴木秀
4.本調査結果からみえてきたもの・・・・伊藤千尋、鈴木秀
5.本調査への家族の意見・・・・・・・・中村喜久男
あとがき・・・・・・・・・・・・・・・・稲沢公一

次回は新たに「第10回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(資料)」からです。

社会保障審議会障害者部会(第152回)の資料について [2025年12月18日(Thu)]
社会保障審議会障害者部会(第152回)の資料について(令和7年11月10日)
議事 (1)障害福祉計画及び障害児福祉計画に係る基本指針の見直しについて
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65750.html
◎参考資料4 障害者自立支援法違憲訴訟団定期協議要請書
要 請 書 (第16回定期協議において回答を求める事項等)
厚生労働大臣 殿
内閣府特命担当大臣(こども政策 少子化対策 若者活躍男女共同参画) 殿
2025年11月10日 障害者自立支援法違憲訴訟団
本要請書は社会保障審議会障害者部会に資料として必ずご提供ください。
○目次 のみ↓

第一 基本合意15周年フォーラムご協力への謝辞
第二 基本合意・骨格提言の尊重
第三 国連総括所見の尊重について
第四 2024年7月3日「旧優生保護法違憲訴訟」最高裁大法廷判決に伴う障害者政策の点検と見直し
第五 報酬支払い方式(日払い制度を骨格提言の採用する方式に)と職員不足問題について 第六 障害児福祉における利用者負担の撤廃を
第七 重度訪問介護を子どもも対象としてください
第八 介護保険優先原則について
第九 就労時のヘルパー(同行援護含む)利用について
第一〇 重度訪問介護等の支給決定の在り方について
第一一 入通院時ヘルパー利用について
第一二 支給決定における「理由付記」の徹底を
第一三 食事提供加算と送迎加算について
第一四 自立支援医療の利用者負担の低所得者無償化
第一五 「恵」問題の示唆する日本の障害福祉行政の課題
○上記目次を参照だけでなく、内容となる社会モデルの意味を考えてみたら・・?


◎岡田委員提出資料
2024年度精神障害者と家族の生活実態と意識調査〜全国家族ニーズ調査〜
公 益 社 団 法 人 全 精 神 保 健 福 祉 会 連 合
○はじめに
→ この度、公益社団法人全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)では、精 神障害者本人および家族が安心して社会の中で生活することができるために 「2024年度精神障害者と家族の生活実態と意識調査〜全国家族ニーズ調査 〜」を実施いたしました。本調査は、当会が2009(平成21)年度に実施した全 国調査をとりまとめた「7つの提言」に続き、2022年に全国の家族会員のみ なさまから意見を募り作り上げた「精神保健医療福祉への提言」(通称、みん なねっと提言)の実現に向け、政策提言を行うことを目的としています。 精神障害者の家族はいまだにケアラーとしての役割を強いられ、家族を含めた家庭全体を支援する(=家族支援)施策は皆無だといえます。家族依存という形で精神障害者のケアの多くを家族に任せている日本の現状に、社会は甘えている実態があります。このような現状を変えていくためには改めて家族支援 の必要性を共有し、働きかけの機運を高めたいと考えます。 精神障害者の多くは障害福祉サービスにつながらずに家族が医療、日常生 活、経済等といったさまざまな負担を背負う中で生活せざるを得ない状況で す。このような家族依存の現状を変え、本人も家族も社会の支えを得ながら、 それぞれに自立した生活を送れる仕組みを構築していく必要があります。その ためには、本人を支えながらも懸命に暮らす家族全体(家庭)の生活実態を明 らかにし、必要な施策の構築に結びつけることが現状を変えることにつながり ます。全国の家族の「声」を集め社会を動かす力にしたいと考えております。 2023年度より当会では各都道府県家族会連合会(以下、各連合会)を訪問 し、各連合会の役員や会員の方々から精神障害者本人や家族のおかれている困 難な実態や今後への不安、必要な支援等について直接生の声をお聴きしてきました。加えて行政等への要望等を行う上で根拠となる全国的な状況のわかる材 料が必要だという声も多く聞かれました。このような声に応える意味でも、本 調査の意義があると感じております。 また、これまでの国連の障害者権利条約日本審査(勧告)や精神保健福祉法 の改正、障害者総合支援法見直し等のさまざまな社会情勢を踏まえ、精神障害 者本人と家族の今後「未来」に向けた望むべき姿を描くために本調査結果を通 して提言していきたいと考えております。 最後に、本調査にご協力いただきました多くのみなさまに、深く感謝申し上 げます。
2025年6月 公益社団法人 全国精神保健福祉会連合会 理事長 岡田久実子
1.目的
→ @精神障害者とその家族がおかれた状況の継続的変化を調査し、現行の制度や障害福 祉サービス等についての周知や利用状況、課題等について明らかにしていきます A本調査結果を分析することで、障害者権利条約日本審査(勧告)も踏まえた、今後のよりよい精神保健福祉および医療等に関する施策推進に向け、具体的な提言を発信します

2.調査概要→ 1)事業名 2024年度精神障害者と家族の生活実態と意識調査〜全国家族ニーズ調査〜 2)調査対象 みんなねっとサロン(精神疾患・障がいがある方の家族向けコミュニティサイト)の 会員18,217名 都道府県精神障害者家族会連合会に所属する家族会会員 3)調査期間 2024年12月2日〜2025年2月28日 4)調査方法 みんなねっとサロンの会員と都道府県精神障害者家族会連合会に所属する家族会会員 を対象にWeb調査(インターネットを使ったアンケート調査)を実施した。 Web調査での回答が困難な方には、都道府県精神障害者家族会連合会を通して自記式 による質問紙調査を配布し、郵送で回収した。 5)調査体制 調査委員/伊藤千尋(淑徳大学) 稲沢公一(委員長・東洋大学) 鈴木秀(日本医療政策機構) 中村喜久男(富山県精神保健福祉家族連合会) オブザーバー/ 林晋吾(株式会社ベータトリップ)  事務局/小幡恭弘、村裕子 6)調査の倫理審査について (50音順) 本調査は東洋大学の倫理審査委員会にて審査いただき、承認された調査になります。 (承認番号:F2024-017S)

3.本調査の結果→ 1)本調査の特徴 これまで精神障害者家族を対象とした全国規模の家族ニーズ調査が6回行われている。いずれも精神障害者家族会の全国組織である全国精神障害者家族会連合会(2007 年に解散)とその後発足した全国精神保健福祉会連合会(以下、みんなねっと)が47 都道府県の精神障害者家族会連合会に協力を依頼して実施したものである。⇒ 表3−1)−1 精神障害者家族を対象とした全国調査 参照。
本調査は、みんなねっとでは初めてとなるWeb調査(インターネット使ったアンケ ート調査)方式で実施した。初めての試みであるため、高齢の家族やWebに慣れていない方でも回答できるように、希望者には都道府県精神障害者家族会を通して質問紙での回答もできるように配慮した。本調査の有効回答数は、Web回答1,067名 質問 紙回答552名の合計1,619名。 これまでの全国調査から回答者の特徴をみると、@本人との続柄は「親」が多く、 特に母親の占める割合が多い、A本人の病名は「統合失調症」が多い、B本人と同居 している家族が多いことが挙げられる。 本調査においても同様の傾向がみられるが、これまでの調査と比較すると、本人との続柄は「親」が67.1%(2017年調査では85%)、「きょうだい」11.1%(2017 年調査では8.5%)、「配偶者(パートナー)」8.5%(2017年調査では4.2%)、「子ども」8%(2017年調査では1.6%)となっており、親以外の回答が増加している。 本人の病名については、「統合失調症」が70.8%(2017年調査では80.3%)とな っており、これまでの調査と比較すると「気分障害(うつ病、躁病、双極性障害)」 13.8%(2017年調査では7.9%)と「発達障害」6.1%(2017年調査では3.7%) が増加。 また、本人と家族の同居については、「同居している」が62.8%(2017年調査で は75.6%)。これまでの調査と比較すると、同居の割合が減少している が、第8回世帯動向調査(2019)では18歳以上の子どもで親が65歳以上の同居率 は43.7%、一般世帯と比較すると同居の割合が高いことがわかる。
これまでの調査と大きく異なるのは、家族会未入会者の回答が得られたこと。本調査は、主にみんなねっとサロン※の会員を対象として実施したため、家族会に「入会している」65.9%(990名)、「入会していない」34.1%(513名)と、これまで調査対象とすることが難しかった家族会未入会者の回答を得ることができた。 本調査では、回答者(家族)の平均年齢が64.4歳(2017年調査では69.3歳)と なっており、若年層の回答が増加。回答者の平均年齢と家族会入会の有無をみると、家族会に入会している群(以下、入会群)の回答者の平均年齢は69.5歳、 家族会に入会していない群(以下、未入会群)の回答者の平均年齢は54.6歳。 家族会入会・未入会群と回答者(家族)及び本人の年齢の分布について、図3 1)−1から3つの層(親子/きょうだい、配偶者/子どもと親)に分かれていることがわかる。入会群では、全体の平均年齢は69.5歳、本人との続柄は「親」が 77.7%であり、高齢の親の立場が多い。未入会群は「親」が46.7%であり、比較的 若い年齢層の親や親以外の続柄(きょうだい、配偶者、子ども)が増加、全体の平均年齢が54.6歳と若年化している。 ※みんなねっとサロン 2020年より開設。精神疾患・障がいがある方の家族向けコミュニティサイト。登録者21,898名。(2025年3月末現在)https://minnanet-salon.net/service⇒ 図3−1)−1 回答者(家族)及び本人の年齢と家族会入会の有無の分布  参照。

2)調査結果@:分析と考察→ 本調査の結果をもとに、@精神科医療への協力、A危機的状況への対応、B本人の 状況、C生活状況の変化、D就労状況の変化、E家族会への期待の6つの側面から精 神障害者家族の生活実態を概観する。↓

@精神科医療への協力
→ 本人の精神科医療機関の利用状況については、「家族が付き添い通院中」34.9%、 「本人の代わりに通院中」3.5%と合わせて38.4%が本人の通院を継続するために家族が協力していることが明らかになった。また、「医療中断(3か月以上)」4%、「未受診」1.9%を合わせると、5.9%が受療に関する支援を必要としていることが示唆さ れている。⇒図3−2)−1 本人の精神科医療機関の利用状況  参照。
本人が初めて精神科を受診するまでの家族の経験については、[本人に病識がないた め、精神科の受診を嫌がった]は「あった」「ややあった」を合わせると50.1%、[本 人に精神科に対する拒否感があり、精神科の受診を嫌がった]は「あった」「ややあっ た」を合わせると48.6%と約半数の家族が受診につなげるための困難を経験している ことが明らかになった。家族会入会群と未入会群を比較すると、[受診先を探すことに 苦労した]では、家族会未入会群の62.9%が経験ありと回答しており、入会群の 53.2%よりも約10ポイント高く、統計的にも有意な差が認められた。[家族に精神疾 患についての知識がなかった]でも、未入会群の50.2%が経験ありと回答し、入会群 の43.6%を上回っている。いずれも本人の精神科医療を継続するために、家族が多くの負担を担っていることが推察される。

A危機的状況への対応→ 本人の症状悪化に伴う危機的状況に関する家族の経験については、[暴言・暴力等により、身の危険を感じることがあった]は「あった」「ややあった」を合わせると 57.7%と半数以上の家族が本人からの暴力・暴言を経験していた。[自傷・自殺等の リスクを考え、本人から目が離せないことがあった]は「あった」「ややあった」を合 わせると60.9%と6割以上の家族が経験していた。本人の病状悪化時には、本人だけでなく、家族も張りつめた状況の中で生活していることが推察される。 また、[警察に通報せざるを得ない状況になった]についても「あった」「ややあっ た」を合わせると42.8%の家族が経験していた。自分の家族を警察に通報せざるを得ない状況は、家族の心身面に大きな負担を与え、本人との関係にも大きな影響を及ぼすことが推察される。 [近隣とのトラブル等が生じた]についても「あった」「ややあった」を合わせると 27.1%が近隣とのトラブルを経験、さらに[近隣とのトラブル等が生じ、転居を余儀なくされた]と回答した家族が7.6%存在することも明らかになった。 危機的状況に関する家族の経験については、「なかった」以外の回答を含めると、実際にはもっと多くの家族が危機的状況を経験していることが推察される。危機的状況への対応は、家族自身の健康状態や就労状況だけでなく、家族が住み慣れた地域で暮らしていくことにも影響を与えていることが明らかになった。 また、危機的状況の家族の経験について、家族会入会群と未入会群を比較すると、 [自傷・自殺等のリスクを考え、本人から目が離せないことがあった]では、未入会 群の66.5%が経験ありと、入会群(58.4%)を大きく上回っており、統計的にも有意な差が認められた。未入会群の方が回答者(家族)及び本人の平均年齢が若いこと が影響していると考えられる。⇒ 図3−2)−4 危機的な状況の家族の経験、図3−2)−5 危機的な状況の家族の経験×家族会入会の有無、  参照。

B本人の状況→ 前項でも述べたように、本人の病名については「統合失調症」が70.8%となっており、これまでの調査と比較すると「気分障害(うつ病、躁病、双極性障害)」と「発達 障害」が増加。家族会入会の有無を比較すると、入会群は統合失調症が 80.7%に対し、未入会群は51.1%となっており、未入会群では統合失調症以外の疾患の割合が増加。 また、本人と家族の同居については、「同居している」が62.8%となっており、これまでの調査と比較すると、同居の割合が減少しているが、第8回世帯動向調査 (2019)では18歳以上の子どもで親が65歳以上の同居率は43.7%となっており、一般世帯と比較すると同居の割合が高いことがわかる。家族会入会の有無を比較すると、入会群は64.6%が同居しており、未入会群よりも同居の割合が高い。 本人の社会資源の利用状況は、多い順に[精神科医療機関(定期受診、入院等)]91.1%、[自立支援医療]80.3%、[精神障害者保健福祉手帳]73.7%、[障害年金]72.8%、[訪問看護]34.9%、[就労支援施設]34%と続いている。これまでの調査では、日中活動の場として障害者総合支援法の福祉サービスを選択肢として いるものが多く、医療サービスとしては、デイケア・ナイトケア以外は含んでいなかった。今回訪問看護が34.9%となっており、生活面を支えるサービスの中で最も多く利用されていることが明らかになった。 本人の社会資源の利用状況と本人の病歴(3年未満/3-10年未満/10年以上) について比較すると、自立支援医療や障害年金、精神障害者保健福祉手帳などの経済面を支える制度は、病歴が長いほど利用率が高くなる傾向が顕著であり、10年以上の群では約8〜9割が利用していることが明らかになった。精神科訪問看護やデイケア、就労支援施設など生活面を支えるサービスも、病歴が長くなるほど利用率が段階的に上昇し、病歴3年未満の利用率は低いことがわかる。 本人の精神障害者保健福祉手帳の等級と家族会入会の有無を比較すると、入会群は 83%が手帳を取得し、1級と2級を合わせると76%となるのに対し、未入会群は 44%であり、統計的にも有意な差が認められた。入会群の方が本人の障害程度が重いことが推察される。⇒ 図3−2)−6 本人の病名×家族会入会の有無、図3−2)−7 同居の有無×家族会入会の有無、図3−2)−8 本人が利用している社会資源、図3−2)−9 本人が利用している社会資源×本人の病歴、図3−2)−10 精神障害者保健福祉手帳の等級×家族会入会の有無   参照。

C生活状況の変化→ 本人発症後の家族自身の生活状況の変化については、「あった」「ややあった」を合わせると、多い順から[十分に睡眠がとれない、食欲がないなど、身体の不調を感じることがあった]77.8%、[趣味や旅行など、余暇活動を行う余裕がなくなった] 69.7%、[家族間のコミュニケーションが難しくなった]69.4%、[ご本人のための支出が増え、経済的な困難に直面した]52.4%、[仕事の勤務時間を減らす、転職する、退職するなど就労状況が変化した]49%、[家計の収入が減り、経済的な困難に直面した]38.5%、[精神状態に不調が生じて精神科を受診した]32.8%、[向精神薬 (抗うつ剤など)や睡眠薬を服薬した]32.2%となっている。 約8割の家族が身体面での不調を感じ、3割以上の家族が自身も精神的な不調で精神科を受診したり、向精神薬や睡眠薬を服用していることが明らかになった。 また、約7割の家族が余暇活動を行う余裕がない、家族間のコミュニケーションが困難になったと回答。本人の発症が家族の日常生活にも大きな影響を与えており、本人だけでなく家族全体を視野に入れた支援の必要性が示唆されている。⇒ 図3−2)−11 家族の生活状況の変化、図3−2)−12 家族の生活状況の変化×家族会入会の有無、 参照。

D就労状況の変化→ 経済的な負担については、「あった」「ややあった」を合わせると、[ご本人のための 支出が増え、経済的な困難に直面した]52.4%、[仕事の勤務時間を減らす、転職す る、退職するなど就労状況が変化した]49%と約半数の家族が本人のための支出が増 えたり、家族自身の就労状況が変化していることが明らかになった。家族の平均年齢 をみると、多くの世帯が年金収入の中から本人のための支出を捻出していることが推 察される。 現在の就労状況について、家族会入会群と未入会群を比較すると、入会群は44%が 就労しているのに対し、未入会群では73%が就労しており、統計的にも有意な差が認 められた。就労状況の変化について、家族会入会群と未入会群を比較すると、家族会 未入会群(若い年齢層)の53.9%が勤務時間の減少や転職を経験しており、入会群の 46.8%より有意に高く、身体的な不調や精神科受診などの他の項目においても、未入 会群の方が有意に高い割合で経験していることが明らかになった。 家族の現在の就労状況(会社員、非正規雇用、自営業等含む)については、「就労し ている」が55.0%、「就労していない」が45.0%となっており、就労している群のう ち、本人の病気や体調のため、労働時間を短縮したと回答した家族が39.8%と約4割 の家族が就労状況に変化があったと回答している。 さらに、891名の回答者のうち、4人に1人(25.8%)が本人の病気が原因で仕事 を退職していた。仕事を継続している場合でも、通常時と比べて約半分(平均値ベー スで49.6%)のパフォーマンス(生産性)にとどまっていることが明らかになった。 家族の就労状況が変化し、収入が減ることで経済的な負担を抱えやすいことが推察される。 また、危機的状況(暴言・暴力や自傷・自殺リスク、警察通報)を経験した家庭で は、危機度が高いほど仕事のパフォーマンス点数が低い傾向が見られ、特に[自傷・ 自殺等のリスクを考え、本人から目が離せないことがあった]では相関係数が他項目 より高く、家族の就労状況に大きな影響を与えていることが明らかになった。 本調査では経済的負担に関する項目として、就労状況や経済状況に関する項目を追 加している。結果の詳細については次項を参照されたい。⇒
図3−2)−13 現在の就労状況×家族会入会の有無、図3−2)−14 危機的な状況×仕事のパフォーマンスの相関  参照。

E家族会への期待→ 家族会に期待する活動は、「あった」「ややあった」を合わせると、多い順から[お互いの悩みや苦労をわかちあう]93.5%、[本人への接し方を学ぶ] 92.5%、[精神疾患や治療についての知識を学ぶ]89.7%、[行政や関係機関に働きかける]86.5%、[一般市民への啓発活動]78.1%、[親睦活動(茶話会や旅行など)] 72.3%、[精神保健福祉サービスの事業所を運営する]60.1%と全ての項目で6割を超えている。家族会入会群と未入会群のいずれも[お互いの悩みや苦労をわかちあう]が最も期待が高い項目となっている。「わかちあい」は家族会の原点であり、「わかちあい」は世代や立場を超えても変わらず、家族を支え続けていることが示唆され ている。⇒図3−2)−15 家族会に期待する活動×家族会入会の有無、

3)調査結果A:家族のケアによる経済的損失→本調査では経済的負担に関する項目として、就労状況や経済状況に関する項目を追加。国への提言を行っていく上で重要な項目であるが、給与などの個人情報 を含むため、全体の回答率が下がらないように継続の意思を確認できた方のみを回答対象としている。以下では、@家族の労働生産性の低下による年間損失額、A家族の年収低下の分析結果を示す。

@家族の労働生産性の低下による年間損失額→今回の調査で は、就労率は55%であった。また、精神障害を有する方の家族に関する統計情報はこれまで存在していないが、2022年就業構造基本調査(総務省)では、介護をしている者に占める有業者の割合が58%であることが示されている。精神障害を有する本人 が65歳未満の場合でも、回答者は65歳以上のケースが想定されるため、家族のうち 50%が就労していると仮定した。これにより、推計対象となる就労家族の総数は約 191.4 万人となる。(なお、精神障害を有する方1名につき主要な同居就労家族は1人と仮定する) 上記の前提に基づき、全国の65歳未満の精神障害者の家族における年間労働生産 性損失額は、以下の通りに推計された。 ●中央値ベース:約1兆3,716億円 (= 191.4 万人 × 71.6万円 = 13,716億円) ●平均値ベース:約2兆2,878億円 (= 191.4 万人 × 119.5万円 = 22,878億円) 本推計により、精神障害者の家族が直面する労働生産性の年間損失額が、約1.4兆 円から約2.3兆円に上ることが示唆された。これは、家族1名分に対する算出であり、就労家族が複数いる場合には、さらに上振れすることが想定される。 また、本推計はパフォーマンスの低下による直接的な経済的損失に過ぎず、家族の 精神的・身体的負担といった間接的なコストを含めると、社会全体の負担はさらに甚大となると考えられる。

A家族の年収低下→分析の結果、40歳から69歳までのすべての年齢階層において、精神障害を有する 家族をケアする就労家族平均年収は、一般就労者の平均年収に比較し、有意に低いことが示された。 この結果は、精神障害のある家族をケアする就労者が、ケアの負担や関連するライフイベント等によって、キャリア形成や収入増加の機会を阻害されている可能性を統計的に裏づけるもの。なお、本調査では、地域別の収入差や企業規模、就労業界等は考慮されておらず、今回のサンプルが賃金構造基本統計調査と同様な地域分布 をしているか不明である。このため、サンプリングバイアスが生じている可能性がある点には留意されたい。 ⇒表3−3)−1 各年齢層の分析結果(補足)  参照。

4)調査結果B:全体集計データと要約↓
問1.回答者(家族)の性別 「女性」が77.9%(1176名)、「男性」が21.7%(328名)
問2.回答者(家族)の年齢 回答者(家族)の平均年齢は64.4歳、年代別にみると、「70才以上」が40.3% (606名)、「60代」が24.6%(370名)、「50代」が22.2%(334名)
問3.回答者(家族)の都道府県
問4.本人との続柄 「母親」55.0%(825名)、「父親」12.1%(181名)、「きょうだい」が11.9% (179名)
問5.本人との同居 「同居している」が62.8%(944名)、「同居していない」が28.8%(433名)、「その他(入院中等)」が8.3%(125名)
問6.家族会入会の有無 「入会している」が65.9%(990名)、「入会していない」が34.1%(513名)
問7.本人の性別 「男性」が55.5%(821名)、「女性」が44.0%(651名)
問8.本人の年齢 本人の平均年齢は43.8歳であり、年代別にみると、「40代」が27.5%(404名)、 「50代」が21.5%(316名)、「30代」が19.7%(289名)
問9.本人の病名 「統合失調症」が70.8%(1044名)、「双極性障害(躁うつ病)」が8.1%(119名)、 「発達障害」が6.1%(90名)
問10.本人の精神科医療機関の利用状況 「【通院中】本人のみ通院中」が41.1%(595名)、「【通院中】本人に家族が付き添い 通院中」が34.9%(506名)、「入院中」が10.8%
問13_1.初診までの体験[本人に病識がないため、精神科の受診を嫌がった] 「あった」とする回答は50.1%(697 名)、「なかった」とする回答は49.9%(693 名)
問13_2.初診までの体験[本人に精神科に対する拒否感があり、精神科の受診を嫌がった] 「あった」とする回答は48.6%(675名)、「なかった」とする回答は51.4%(713 名)
問13_3.初診までの体験[受診先を探すことに苦労した] 「あった」とする回答は56.5%(785 名)、「なかった」とする回答は43.5%(604 名)
問13_4.初診までの体験[家族の中で、精神科受診に対する考えが一致しなかった] 「あった」とする回答は31.4%(435 名)、「なかった」とする回答は68.6%(949 名)
問13_5.初診までの体験[家族に精神疾患についての知識がなかった] 「あった」とする回答は45.8%(647 名)、「なかった」とする回答は54.2%(767 名)
問13「初診までの体験」に関する統合比較表(再掲)
問14_1.危機的状況[暴言・暴力等により、身の危険を感じることがあった] 「あった」とする回答は57.7%(809名)、「なかった」とする回答は42.3%(594 名)
問14_2.危機的状況[自傷・自殺等のリスクを考え、本人から目が離せないことがあった] 「あった」とする回答は60.9%(860 名)、「なかった」とする回答は39.1%(552名)
問14_3.危機的状況[警察に通報せざるを得ない状況になった] 「あった」とする回答は42.8%(604 名)、「なかった」とする回答は57.2%(807 名)
問14_4.危機的状況[近隣とのトラブル等が生じた] 「あった」とする回答は27.1%(381名)、「なかった」とする回答は72.9%(1025 名)
問14_5.危機的状況[近隣とのトラブル等が生じ、転居を余儀なくされた] 「あった」とする回答は7.6%(107名)、「なかった」とする回答は92.4%(1293 名)
問14「危機的状況」に関する統合比較表(再掲)
問15.本人が現在利用している精神保健医療福祉制度・サービス(利用率) 制度名 本人が現在利用している精神保健医療福祉制度・サービスの利用率については、「精神 科医療機関(定期受診、入院等)」が91.1%、「自立支援医療」が80.3%、「精神障害 者保健福祉手帳」が73.7%となっている。
問15.本人が現在利用している精神保健医療福祉制度・サービスの満足度
問16.精神障害者保健福祉手帳の等級 「2級」が54.7%(768名)、「手帳を取得していない」が19.1%(268名)、「3級」 が10.7%(150名)
問17.相談したことのある専門家等(利用率) 相談したことのある専門家等の利用率については、「医療機関の主治医」が 92.5%、「医 療機関の看護師」が69.8%、「行政の職員(保健師、障害福祉担当者など)」が65.4%
問17.相談したことのある専門家等の満足度
問18_1.家族の生活状況の変化[仕事の勤務時間を減らす、転職する、退職するなど就労状況が変化した]「あった」とする回答は49.0%(671名)、「なかった」は51.0%(697名)
問18_2.家族の生活状況の変化[家計の収入が減り、経済的な困難に直面した] 「あった」とする回答は38.5%(533名)、「なかった」は61.5%(851名)であった。
問18_3.家族の生活状況の変化[ご本人のための支出が増え、経済的な困難に直面した] 「あった」とする回答は52.4%(729名)、「なかった」は47.6%(661名)
問18_4.家族の生活状況の変化[十分に睡眠がとれない、食欲がないなど、身体の不調を感じることがあった]「あった」とする回答77.8%(1087名)、「なかった」22.2%(310名)
問18_5.家族の生活状況の変化[精神状態に不調が生じて精神科を受診した] 「あった」とする回答は32.8%(454名)、「なかった」は67.2%(930名)
問18_6.家族の生活状況の変化[向精神薬(抗うつ剤など)や睡眠薬を服薬した] 「あった」とする回答は32.2%(446名)、「なかった」は67.8%(937名)であった。
問18_7.家族の生活状況の変化[趣味や旅行など、余暇活動を行う余裕がなくなった] 「あった」とする回答は69.7%(971名)、「なかった」は30.3%(422名)であった。
問18_8.家族の生活状況の変化[家族間のコミュニケーションが難しくなった] 「あった」とする回答は69.4%(970名)、「なかった」は30.6%(427名)であった
問18「家族の生活状況の変化」統合比較表(再掲)
問19.もっと充実してほしい支援(最大3つ) 「本人の希望にそった個別支援体制の確立」が56.9%(792名)、「本人・家族に対して適切な情報提供がされること」が41.9%(584名)、「本人・家族のもとに届けられる訪問型の支援・治療サービスの実現」が40.3%(562名)となっている。
問20_1.家族会に期待する活動[精神疾患や治療など、医療についての知識を学ぶ] 「期待する」とする回答は89.6%(1209名)、「期待しない」は10.4%(140名)
問20_2.家族会に期待する活動[本人への接し方を学ぶ] 「期待する」とする回答は92.5%(1250名)、「期待しない」は7.5%(101名)
問20_3.家族会に期待する活動[お互いの悩みや苦労をわかちあう] 「期待する」とする回答は93.6%(1278名)、「期待しない」は6.4%(88名)であ った。
問20_4.家族会に期待する活動[精神保健福祉サービスを行う事業所を運営する] 「期待する」とする回答は60.1%(791名)、「期待しない」は39.9%(526名)
問20_5.家族会に期待する活動[地域をよくするために行政や関係機関に働きかける] 「期待する」とする回答は86.5%(1158名)、「期待しない」は13.5%(180名)
問20_6.家族会に期待する活動[一般市民への啓発に関する活動] 「期待する」とする回答は78.2%(1049名)、「期待しない」は21.8%(293名)
問20_7.家族会に期待する活動[会員同士の親睦を深めるための活動(茶話会や旅行など)] 「期待する」とする回答は72.3%(983名)、「期待しない」は27.7%(377名)。
問20 家族会に期待する活動(期待度) 家族会に期待する活動の期待度については、「お互いの悩みや苦労をわかちあう」が 93.5%、「本人への接し方を学ぶ」が 92.5%、「精神疾患や治療についての知識を学ぶ」 が89.7%となっている。
問20家族会に期待する活動統合表
問21.「患者・市民参画」を知っているか 「知らない」が75.2%(1019名)、「言葉だけ知っている」が16.1%(218名)、「意 味も含めて知っている」が4.6%(63名)。
問22.「患者・市民参画」の活動をしたいか 「少しそう思う」が42.3%(564名)、「とても思う」が26.3%(351名)、「あまり そう思わない」が22.0%(293名)。
問23_1.「患者・市民参画」のための支援[参画機会の情報を簡単に得られる] 「そう思う」とする回答は79.9%(1040 名)、「そう思わない」とする回答は7.1% (93名)、「わからない」とする回答は12.9%(168名)であった。
問23_2.「患者・市民参画」のための支援[参画の場に応じた知識やスキルが学べる] 「そう思う」とする回答は77.9%(1013 名)、「そう思わない」とする回答は8.7% (113名)、「わからない」とする回答は13.5%(175名)であった。
問23_3.「患者・市民参画」のための支援[参画時の困りごとを相談できる場がある] 「そう思う」とする回答は80.4%(1047 名)、「そう思わない」とする回答は7.5%(97名)、「わからない」とする回答は12.1%(158名)であった。
問23_4.「患者・市民参画」のための支援[参画時の金銭的な支援(謝礼金、交通費など)] 「そう思う」とする回答は58.8%(757名)、「そう思わない」とする回答は25.8%(332 名)、「わからない」とする回答は15.5%(199名)であった。
問23_5.「患者・市民参画」のための支援[参画時の物理的な支援(参画時のご本人の サポートなど)] 「そう思う」とする回答は67.8%(868名)、「そう思わない」とする回答は16.9%(216 名)、「わからない」とする回答は15.3%(196名)であった。
問23「患者・市民参画のための支援」 統合比較表(再掲)
問24 自由記述(次項の「5)自由記述の分析」を参照) 問25.現在、就労しているか(会社員、非正規雇用、自営業等含む) 「はい」が55.0%(553名)、「いいえ」が45.0%(453名)となっている。
問27.本人の病気や体調のため、労働時間を短縮したか 「いいえ」が60.2%(353名)、「はい」が39.8%(233名)となっている。
問29.現在の仕事のパフォーマンス(生産性)への影響 ※0(生産性が低い)〜10(いつも通りの生産性) 本人の病気が現在の回答者の仕事の生産性に与えた影響について、自己評価の平均スコ アは10点満点中6.58(中央値 7.00)であった。これは通常時と比べて約3割(平均 値ベースで34.2%)の生産性低下があったことを示しており、本人の病気が家族の業務 遂行能力への一定の影響が認識されていることがうかがえる。「10(いつも通り)」を選んだ回答者は1人もおらず、すべての回答が何らかの生産性低下を示していた。 「9」が40.8%(205名)、「7」が 14.1%(71名)、「6」が 9.1%(46名)となっている。
問30.本人発症後の仕事のパフォーマンス(生産性)の変化 ※0(生産性が低い)〜10(いつも通りの生産性) 本人の発症後における回答者の仕事の生産性について、自己評価の平均スコアは10点 満点中5.04(中央値 5.00)であった。これは通常時と比べて約半分(平均値ベースで 49.6%)の生産性にとどまったことを示しており、発症後の業務遂行能力に顕著な影 響が認識されていることがうかがえる。「10(いつも通り)」を選んだ回答者は1人も おらず、すべての回答が何らかの生産性低下を示していた。 「9」が17.5%(98名)、「4」が13.4%(75名)、「6」が 12.5%(70名)となって いる。
問31.本人の病気が原因で仕事を辞めたか 「いいえ」が74.2%(661名)、「はい」が25.8%(230名)となっている。
問33.本人発症後の年収の減少 「変化なし」が42.4%(375 名)、「わからない」が17.4%(154 名)、「50 万円未 満」が10.4%(92名)となっている。

5)自由記述の分析→ 本報告書では、調査結果を量的データに基づいて分析・提示してきた。しかし、数 字のみでは捉えきれない当事者・家族の切実な声が存在することもまた事実である。 そこで、本項では自由記述欄に寄せられた回答を整理し、量的データを補完する形で 示すこととした。 自由記述は個別の体験や主観に基づくものであり、統計的な代表性を担保するもの ではない。他方で、制度の隙間に置かれた人々の実感や、数字には表れない「制度の 機能不全の兆候」を映し出す重要な素材である。例えば、誤診や薬物治療への不信、 PPI(患者・市民参画)の認知不足、親なき後の不安、支援制度の複雑さとアクセス 困難など、多岐にわたる課題が繰り返し語られている。 本項では、自由記述の声と分析的整理(中立的な観点と政策的示唆)を分けて提示 する。これにより、個々の声の切実さを伝えつつ、制度設計や政策立案に資する客観 的な含意を抽出することを目的とする。
@PPI(患者・市民参画) 【自由記述の声】 「PPIという言葉自体を知らない」 「理念や具体的な活動について啓発してほしい」 「多剤処方の副作用で参画に動く気力すら奪われている」 【分析・考察】 PPI は国際的にも重視される概念であるが、本調査ではその認知度が極めて低いことが浮かび上がった。また、参画したくても生活基盤や医療上の制約によって困難な現状がある。 【政策的示唆】 ・PPI普及には「啓発」と「参画可能性の前提条件整備」を同時に進める必要がある。 ・医療現場におけるPPI周知・教育の強化と、当事者・家族が実際に参画できるような負担軽減型の仕組み(代替的ケア・交通支援・時間的配慮)が求められる。
A診断と治療 【自由記述の声】 「誤診による服薬は心身を壊す。診断名は速やかに変更されるべきだ」 「薬や電気けいれん療法で却って状態が悪化している」 「母が措置入院し、医療過誤で亡くなるまで支援がなかった」 【分析・考察】 診断や治療に関する記述は、柔軟性の不足、治療方針の透明性・合意形成の欠如を 示している。薬物中心主義や入院処遇の人権問題も根強く、治療がむしろ症状の複雑 化を招くケースが散見される。
【政策的示唆】・精神科医療における診断名に基づく治療構造を柔軟化し、誤診リスクを低減する仕 組みを制度化する。 ・薬物治療に偏らない心理社会的アプローチの導入を診療報酬で後押しする。 ・入院処遇における人権保護を強化し、隔離・身体拘束の削減目標を政策に明示する。
B家族支援 【自由記述の声】 「親なき後、一人で生きていけるのかが課題だ」 「後見制度に従うしかなく、本人も家族も不安が大きい」 「暴力や浪費で逃げたいとしか思えない家族がいるのも現実だ」 【分析・考察】 家族支援では「親なきあと」問題が圧倒的に多く、既存の後見制度や福祉制度の不 備が露呈している。また、家族は「支えたい」と「距離を取りたい」という両義的立場を抱えており、現行制度はこうした多様性を十分に想定していない。 【政策的示唆】 ・親なきあと問題に対応するため、地域レベルでの包括的な生活支援・金銭管理支援 を制度化する。 ・ケアラー支援法制の中で、きょうだいや配偶者など多様な立場を対象化する。
C支援制度 【自由記述の声】 「どこに行けば情報が得られるか分からない」 「支援は自ら動かないと届かない。プッシュ型の仕組みが欲「ケアマネのような支援 者を付けてほしい」 【分析・考察】 支援制度は複雑でアクセス困難との指摘が多い。申請主義に依存するため、困難を 抱えた本人や家族ほど支援からこぼれやすい構造がある。また、就労支援では「障害 者として扱われることへの抵抗感」が見られ、制度と本人の尊厳との間に齟齬がある。 【政策的示唆】 ・プッシュ型情報提供や伴走支援者の配置を制度化する。 ・就労支援においては、障害者枠以外も含めた柔軟な雇用支援を整備し、本人の尊厳に沿う働き方を実現する。 ・障害福祉サービスを利用するにあたり、セルフプランニングで対応している当事者 も多いため、相談支援事業所による支援を強化する。
Dその他・アクセス/情報 【自由記述の声】「地域活動支援センターが閉鎖され、家の外に居場所がなくなった」 「偏見が怖くて活動に参加できない」 【分析・考察】 制度が存在しても、地域によって利用可能性に大きな差があり、情報へのアクセスが著しく制限されている。さらに、偏見やスティグマによって活動参加が阻害される 現実がある。 【政策的示唆】・地域間格差を是正するために、人口規模の少ない地域等を含めて体制を整備する必要がある。 ・精神保健福祉分野におけるスティグマ解消のための教育・啓発政策を強化する。 ・「居場所」の閉鎖を防ぐため、利用率だけに依存しない事業評価制度や収益元を設け るべきである。
E横断的テーマ(全カテゴリ共通) 自由記述を横断的に分析すると、以下の政策課題が複数カテゴリにまたがって確認された。→ 1. 薬に依存しない治療アプローチの推進 2. 親なきあとや8050問題への包括的対応と成年後見制度の改善 3. 参画可能性を担保する生活基盤整備(経済的支援・医療負担軽減) 4. 情報格差・地域格差是正のためのプッシュ型支援と全国標準化 5. 精神疾患に関するスティグマ・偏見解消に向けた社会的啓発

次回も続き「4.本調査の結果からみえてきたもの」からです。

◎参考資料3−1 匿名障害福祉等関連情報・匿名障害児福祉等関連情報データベース(障害 福祉DB)の利用に関するガイドライン(案) [2025年12月17日(Wed)]
社会保障審議会障害者部会(第152回)の資料について(令和7年11月10日)
議事 (1)障害福祉計画及び障害児福祉計画に係る基本指針の見直しについて
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65750.html
◎参考資料3−1 匿名障害福祉等関連情報・匿名障害児福祉等関連情報データベース(障害 福祉DB)の利用に関するガイドライン(案)
○目次のみ↓
第1 ガイドラインの目的
第2 用語の定義

1 障害福祉DB、障害福祉DBデータ
2 他の公的データ等
3 障害福祉・他の公的データ等の利用に関する関係法令
4 障害者及び障害児
5 提供者
6 専門委員会
7 提供申出者、利用者
8 取扱者、手続担当者、代理人
9 提供申出書
10 特別抽出、特別抽出データ
11 集計表
12 サンプリングデータセット
13 定型データセット
14 生成物、最終生成物、中間生成物、副生成物、障害福祉DBデータ等
15 成果物
16 利用場所、保管場所、取扱区域
17 障害福祉サービス事業所
第3 障害福祉DBデータの提供申出手続
1 あらかじめ確認すべき事項
2 提供申出書と提供データの取扱単位
(1)提供申出書の作成単位
(2)提供する障害福祉DBデータの取扱い単位
(3)提供する障害福祉DBデータの複製1回の原則(複数回複製の禁止)
3 提供申出者の範囲
4 代理人による提供申出書の提出
5 提供申出書の記載事項
(1)ガイドライン等の了承の有無
(2)手続担当者、代理人
(3)提供申出者の情報
(4)研究計画
(5)取扱者
(6)抽出データ
(7)成果の公表予定
(8)提供方法、手数料免除、過去の措置
(9)その他必要な事項
6 提供申出書とともに提出する書類
(1)障害福祉DBデータの管理方法・安全管理対策等に関する書類
(2)倫理審査に係る書類
7 提供申出書等の受付及び提出方法
第4 提供申出に対する審査
1 審査主体
2 障害福祉DBデータの提供の可否の決定
3 審査基準
4 審査結果の通知
第5 提供申出/変更申出が承諾された後の手続
1 依頼書の提出
2 誓約書の提出
3 手数料の納付等
(1)手数料の積算
(2)手数料の免除
(3)手数料の納付
4 障害福祉DBデータの受領
5 提供申出書の記載事項等に変更が生じた場合
(1)専門委員会の審査を要しない変更
(2)専門委員会の審査を要する変更
6 提供申出の辞退
第6 障害福祉DBデータ利用上の安全管理措置等
1 他の情報との照合禁止
2 安全管理措置
(1)組織的な安全管理対策
(2)人的な安全管理対策
(3)物理的な安全管理措置
(4)技術的な安全管理措置
(5)情報及び情報機器の持ち出し
(6)その他の安全管理措置
3 提供申出者及び取扱者の義務
第7 研究成果等の公表
1 研究成果の公表
2 公表物の満たすべき基準
(1)最小集計単位の原則
(2)年齢区分
(3)地域区分
(4)特定の社会属性をもつ層に対する差別・偏見の配慮
3 利用実績報告書の提出
(1)利用実績報告書の提出
(2)利用実績の公表
(3)管理状況報告書の提出
4 研究成果が公表できない場合の取扱
5 研究の成果の利用制限
6 障害福祉DBデータの利用終了後の研究成果の公表
第8 障害福祉DBデータの利用後の措置等
1 障害福祉DBデータの利用の終了
2 利用終了後の再検証
第9 障害福祉DBデータの不適切利用への対応
1 法における罰則
2 契約違反と措置内容
第10 提供者による実地監査
第11 その他
第12 ガイドラインの施行期日



◎参考資料3−2 第1回匿名障害福祉及び障害児福祉情報等の提供に関する専門委員会の開催について(第142回障害者部会 資料1)
社会・援護局障害保健福祉部企画課 こども家庭庁支援局障害児支援課
○第1回匿名障害福祉及び障害児福祉情報等の提供に関する専門委員会の開催について
→・障害福祉サービスデータベース(以下「障害福祉DB」)の第三者提供については、第三者へのデータ 提供にあたってのガイドラインを定める必要があり、匿名医療保険等関連情報データベース(以下「NDB」) 及び匿名介護保険等関連情報データベース(以下「介護DB」)等の整備が先行している公的データベース については、現に、定められたガイドラインに基づき、第三者提供が行われている。 ・ 第三者提供の際には、改正後の障害者総合支援法第89条の2の3第3項(障害者データ)及び児童福祉法第33条の23の3第3項(障害児データ)の規定に基づき、社会保障審議会又はこども家庭審議会の意見を 聴かなければならないとされている。 ・ 第三者提供の可否を議論する場では、提供するデータを用いた研究に対する計画書等について議論され、議論 内容が極めて専門的となることから、社会保障審議会障害者部会及びこども家庭審議会障害児支援部会の下に、「匿名障害福祉及び障害児福祉情報等の提供に関する専門委員会」を設置することが両部会により承諾され、令和6年9月18日に第1回の専門委員会を開催した。 ・ 第1回の専門委員会では、主に「匿名障害福祉及び障害児福祉情報等の提供に関するガイドライン(案)」 において定めている審査基準や提供に係る事務処理基準の内容について検討を行った。 ○ 障害福祉DBのガイドラインの検討においては、基本的にNDBや介護DB等のガイドラインを踏襲しつつ、他の公的データベースと比べ件数が少ないこと等も踏まえ、提供申出に対する審査時や成果物の公表前審査時において、個人特定の可能性の回避に特に配慮すること及び差別・偏見につながらないよう特に配慮することを、他の公的データベースのガイドラインに加え、明記するべきこととされた。
○匿名障害福祉及び障害児福祉情報等の提供に関する専門委員会委員名簿→8名。
○障害福祉DBにおける第三者提供・連結解析のスケジュール(案)について→・今後の専門委員会において、ガイドライン等の内容を更に検討いただき、提供申出に関する模擬審査等を経て、ガイドライン(案)を取りまとめ。 その上で、障害者部会及び障害児支援部会で議論していただき、ガイドラインを策定する予定。→(参考)第三者提供・連結解析に関するスケジュール(案)  参照。

○【参考】匿名障害福祉及び障害児福祉情報等の提供に関する専門委員会 設置要綱→・障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第104号)により、公布の日 (令和4年12月16日)から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)及び児童福祉法(昭和22年法律第164号)において、厚生労働大臣及び内閣総理大臣は匿名 障害福祉等関連情報(以下「匿名障害福祉データ」)を第三者に提供することができる法的根拠が設けられるとともに、匿名障害福祉 データの第三者提供に当たっては、あらかじめ、社会保障審議会又はこども家庭審議会の意見を聴くこととされている。 これを踏まえ、匿名障害福祉データの第三者への提供に係る事務処理及び標準化並びに審査基準等について専門的観点から検討を行うため、 社会保障審議会障害者部会及びこども家庭審議会障害児支援部会(以下「両部会」)に「匿名障害福祉及び障害児福祉情報等の提供に関する専門委員会」(以下「専門委員会」)を設置する。
○【参考】障害福祉サービスデータベースの概要→・障害福祉サービスデータベース(以下、「障害福祉DB」)は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下、「障害者総合支援法」)第89条の2の2第2項(障害者 データ)及び児童福祉法第33条の23の2第2項(障害児データ)の規定に基づき、障害福祉サービス等給付費明細書データ、障害支援区分認定データ等について、個人情報を匿名化した上で、市区町村から データ提供されたものである。 ・令和2年度から4年度までにかけて障害福祉DBの構築が進められ、令和5年度から運用を開始している。⇒■データの流れ  参照。
○【参考】根拠法令等(抜粋)→・市町村からの障害福祉DBへのデータ提供(公布日は令和4年12月16日、施行日は令和5年4月1日) ・ 障害福祉DBの第三者提供(公布日は令和4年12月16日、施行日は公布日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日)  ・専門委員会の設置    参照。

次回も続き「参考資料4 障害者自立支援法違憲訴訟団定期協議要請書」からです。

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