第4回労災保険制度の在り方に関する研究会 資料 [2025年03月31日(Mon)]
第4回労災保険制度の在り方に関する研究会 資料(令和7年3月12日)
議題 労災保険制度の在り方について(適用関係等) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_54195.html ◎資料1 第1回研究会における主な意見(要約版)(「適用範囲・特別加入」、「家事使用人」 及び「暫定任意適用事業」関係) 【適用範囲・特別加入】→ ○ フリーランス全般が特別加入制度の対象となり、新たなフェーズに入ったと認識。保険 料が自己負担となる特別加入は、加入が進まないとの声もあるものの、特定フリーランス の特別加入団体は、加入のハードルを下げ、積極的に取り組んでいると思う。 ○ 建設業では、かねてから労働災害防止のために発注者に安全経費(一人親方等の労災保 険の特別加入に必要な費用)の積算を求めている。こうした保険料相当額の上乗せを業界 が自主的に取り組んでいくことにより、フリーランスあるいは一人親方に、安心して仕事 をしていただけるのではないかと思われる。この点、労災保険本体の適用拡大をするとい う意見もあるかとは思うが、特別加入の促進と保険料の支援が現実的な方策である。 ○ 「今後の労働安全衛生対策について(報告)」をみると労働安全衛生法での議論について、 個人事業者の保護にこれまでより一歩踏み込んで、考えている印象。 労働安全衛生法の議論を踏まえると、フリーランスや個人事業主に対する労災保険の適 用については、中長期的に見た場合にどのような在り方が考えられるかという点に関心が ある。 ○ 労災保険は労基法との結び付きが非常に強固であり、労基法の適用対象でない者につい ては、保険料が完全自己負担であるにもかかわらず、一定の要件を課して加入を制限して いる特徴。現行法を前提とすれば、整合的な体系であり、一定の合理性のある制度だと評 価できる一方、フリーランスや個人事業主の働き方の実態、ニーズに合った制度かという ことについては改めて検討の余地がある。非常に慎重な検討が必要であるが、労基法の適 用対象ではない者についても、労災加入の必要性が高いものについては、現行の特別加入 ではなく、何らかの特別な手段を採っていく、あるいは端的に強制加入とすることが論点 となり得る。 同時に、例えば民間保険の役割であるとか、必ずしも現行制度を前提とした強制加入の 拡大に限られない様々な選択肢もあり得る。あるいは特別加入としたときには、保険料負 担が一番問題になってくるが、フリーランスなどの保険料について、その一部を業務の委 託者が負担する可能性をいかに開いていくか、諸外国の取組も参考にしつつ検討してはど うか。 ○ 労災保険制度の対象者を労基法上の労働者に限定する必要性を再検討し、働く人がその 働き方にかかわらず労災保険に強制加入して補償を受けられるようにするという、抜本的 な制度改革も長期的な視点としては考え得るのではないか。特に、労働基準法上の災害補 償と労災保険制度は別の制度であることを強調するのであれば、なおさら労災保険独自の 適用対象者というものも観念し得るのではないか。 ○ 一人親方等と特定作業従事者の間での振り分けがどのようになされているのか判然とし ない。近年の特別加入の対象拡大が、その時々にアドホックな対応であったことの表れの ように感じられる。 ○ 従来から特別加入の対象については、労働者に準じた保護を必要とする者、それについ て一定の着眼点から、その業務の危険度や、あるいは技術的な観点を含めて、業務の範囲 の明確性、特定性といった観点から、具体的な対象を省令で定めるという形で対応してき たと理解。一方、今般の特定フリーランスを特別加入の対象とする改正については、特定 フリーランスの働き方に対応して、その労災リスクも非常に多様であることから事業や作 業の特性に着目するという従来の拡大の仕方とは相当異なった面がある印象を受ける。 就労形態の変化、多様化を受けて、特別加入の対象に関しての基本的な考え方について、 今一度整理しておくことにも意義があるのではないか。 【家事使用人】 ↓ ○ 家事使用人に関して、労働基準法の適用が除外されていることについては、労働基準関 係法制研究会で取りまとめられた報告書案では、家事使用人の働き方の変化などを踏まえ、 家事使用人のみを特別視して労基法を適用除外すべき事情に乏しくなってきたとし、適用 除外を見直す方向の意見が示されている。 今後、家事使用人について、労基法の適用が除外されるのであれば、労災保険による補 償を受けられる前提で議論するべきだが、その一方で、家事使用人を雇用する私家庭の労 災への加入、保険料負担については、監督指導の在り方を含めて丁寧な議論が必要。 ○ 個人家庭に雇用される家事使用人は、事業に使用される者ではないことから、適用除外 の対象にはしないとしても、当然に労災保険の適用対象とすることも課題が大きい。労災 保険による保護を及ぼすべきだというような判断をした場合に、具体的にどのような仕組 みが必要なのかという点は重要であり、難しい課題と認識。事業に使用される者ではない ということを踏まえ、現行の特別加入の枠組みの更なる活用といった方向の議論の可能性 も残されているのではないか。 【暫定任意適用事業】↓ ○ 労災保険の暫定任意適用事業は、全面適用の方向で進めるべき。同じ労働保険である雇 用保険にも同様の問題がある。雇用保険では、農林水産の事業は事業所の把握が困難な場 合が多く、雇用関係や賃金支払関係が明確でない場合が多いため、全面適用は事務的に困 難であり、実行を期し難いなどと説明されるが、IT 社会において情報関係の整備が進む中、 全面適用する環境が整いつつある。社会・経済の動きに応じ、当然適用事業化を全面的に 推し進めるべき。 ◎資料2 労災保険法の適用範囲について(総論) ○労災保険法の適用範囲について論点案→【論点】労災保険法等の適用対象(強制適用)の範囲をどう考えるか。⇒労働基準法が適用される労働者以外の就業者で、強制適用とすべき者はいるか。また、その保険料の負担は誰 が負うべきか。 ○【論点】労災保険法の適用範囲(強制適用)について→・労災保険法は、労働基準法の適用対象たる労働者を保護の対象とし、当該労働者を使用する事業を適用事業(強制適用 の対象)としている。 ・強制適用の対象となる事業に従事しない者については、特別加入制度を設けている。 ・(参考)第2種(一人親方その他の自営業者・特定作業従事者)の対象業務→19業務あり。 ○(参考)諸外国の労災保険制度→日本・ドイツ・フランス・イギリスについての比較。 ◎資料3 特別加入について ○特別加入について→論点案⇒【論点】一人親方等の労災補償を適切に運用していくため、特別加入団体にどのような役割を担わせるべきか。 ○特別加入制度について↓ ・趣旨→・特別加入制度は以下のような趣旨で創設され第1種(中小事業主等)、第2種(一人親方その他の自営業者・特定作業従事者)及び第3種(海外派遣労働者)の3類型。・このうち、第2種特別加入は、労働政策審議会建議(令和元年12月23日第83回労災保険部会)において、「昭和40 年当時にはなかった新たな仕事(例えばIT関係など)が創設され・・・社会経済情勢の変化も踏まえ、特別加入の対象範囲や運用方法等について、適切かつ現代に合った制度運用となるよう見直しを行う必要がある。」とされたこと等を踏まえ、特別加入制度の対象を拡大し てきた。 ・近年の特別加入対象となった事業又は作業→令和3年4月1日〜令和6年11月1日までの業務⇒・芸能従事者及びアニメーション制作従事者 ・柔道整復師及び創業支援措置に基づく事業を行う高年齢者、・自転車配達員・情報処理に係る作業、・あん摩マッサージ指圧師、はり師又はきゅう師、・歯科技工士、・特定フリーランス事業 ・対象者→@第1種:中小事業主等 A第2種:(一人親方その他の自営業者:12業務)(特定作業従事者:8業務) B第3種:海外派遣者 ○(参照条文)第2種特別加入について→【労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)】 第33条。【労働者災害補償保険法施行規則(昭和30年労働省令第22号)】第46条の17 法33条第3号の厚生労働省令で定める種類の事業、第46条の18 法第33条第5号の厚生労働省令で定める種類の作業一〜八まで。 ○【論点】一人親方等の労災補償を適切に運用していくため、特別加入団体に どのような役割を担わせるべきか。↓ ・現状→・第2種特別加入は、一人親方等又は特定作業従事者の団体(以下「特別加入団体」)を事業主としてみ なして労災保険を適用している。・特別加入団体については、労災則第46条の23第2項に基づき、業務災害防止に関して講ずべき措置を定める等の義務が ある。これは、一般の労働者であれば、労働安全衛生法等に基づき、事業主が業務災害防止の措置を講ずるものとされているが、 一人親方等又は特定作業従事者は、一部の法令を除き業務災害防止の措置を義務付ける法令が存しないことから、一 般の労働者との均衡を考慮して定められたもの。・労災保険法第35条第1項の承認にあたっては、特別加入団体は下記5点の要件(ア〜オ参照)を満たす必要がある。(昭和40年11月1 日付け基発第1454号「労働者災害補償保険法の一部を改正する法律第2条の規定の施行について」) ・最近の見直し→オの要件(地域要件)については、令和3年4月より、近隣の都道府県の区域を超えるブロックにおいて、災害防止等 に関する研修会等を実施する場合には、当該ブロックにおいて事務処理を認めることとし、事務処理区域の柔軟化を行った(令和3年3月9日付け基発0309第1号「労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令及び労働者災害補償保険法施行規則及び労働保険の保険料 の徴収等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について」)。 ・また、特定フリーランス事業に係る特別加入団体については、上記の要件に加え、下記4点(@〜➃参照)も要件としている。 ○(参考)特別加入制度の状況↓ ・中小事業主等→事業主数65万640人、 家族従事者又は役員等数43万3,542人。 ・一人親方等→加入者数…63万7,287人、 団体数…3,539団体 ・特定作業従事者→加入者数…9万9,585人、 団体数…1,154団体 ・海外派遣者→加入者数…8万241人、 事業場数…9,871事業場 ○(参考)特別加入者の労災保険給付に係る新規受給状況(令和5年度実績)↓ ・中小事業主等→新規受給者数 …1万1,287人 ・一人親方等→新規受給者数 …1万4,373人 ・特定作業従事者→新規受給者数 … 2,272人 ・海外派遣者→新規受給者数 … 31人 ◎資料4 家事使用人に係る災害補償・労災保険適用について ○家事使用人に係る災害補償・労災保険適用について→論点案⇒【論点@】労働基準法における災害補償責任を家庭が負うことをどう考えるか。また、労災保険法等を適用する場合、事業主として責任を負うのは誰か。 【論点A】仮に、労災保険法等を強制適用する場合、どのようなことに留意して制度設計をすべきか。 ○「家事使用人」について ・労働基準法、労災保険法の適用が除外されている「家事使用人」→・「家事使用人」については労基法の適用除外とされており、この「家事使用人」とは、個人宅に出向き、私家庭において家事使用人を 使用する私人と直接労働契約を結び、その指示のもと家事一般に従事する者のことをいう。ただし、法人に雇われ、その役職員の家庭に おいて、その家族の指揮命令の下で家事一般に従事している者を含む。(労働基準関係法制研究会報告書(令和7年1月8日公表))。・労災保険法は、労基法の適用対象である労働者を使用する事業を適用対象。 ・労基法の適用がない家事使用人については、労災保険法の特別加入による補償を行っている。 ○家事サービスの提供形態と労働基準法・労災保険法の適用関係→家事使用人については、これまで労基法の適用除外とされてきたが、今般、労働基準関係法制研究会でとりまとめら れた報告書(令和7年1月8日公表)において、労働基準関係法制をどのように適用するかについて、履行確保の在 り方も含めた具体的な制度設計の検討に早期に取り組むべきとされた。⇒労働基準関係法制研究会報告書(令和7年1月8日公 表)の概要 参照。 ○【論点@】労災保険法等を適用する場合、事業主として責任を負うのは誰か。 【論点A】仮に、労災保険法等を強制適用する場合、どのようなことに留意して制度設計をすべきか。↓ 1.労働保険徴収法に規定する事業主の責任→◆徴収法の規定による徴収金(労働保険料、追徴金等)の納付をしない者に対して、政府は督促及び滞納処分を行う。(徴収法第27条) ◆督促による納期限の翌日からその完納又は財産差押えの前日までの期間の日数に応じ、政府は延滞金を徴収する。(徴収法第28条1項) 2.労災保険法に規定する事業主の責任→事業主からの費用徴収、 ・その他の関連する義務→使用者の報告・出頭、立入検査あり。 ◆上記の規定(その他の関連する義務)に反し、報告せず若しくは虚偽の報告等をした場合、または当該職員の質問に対して答弁せず若しくは検査の 拒否等を行った場合は、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。(労災保険法第51条) ○(参考)労働保険事務組合→労働保険事務組合制度:中小零細事業主が、事務負担を軽減するため、労働保険料の申告・納付や各種届出等の労働保険事務を厚生労働 大臣の認可を受けた事業主の団体(商工会、事業協同組合等)に委託できる制度 ○(参考)家事使用人に係る業務上災害の状況→2023年のJILPT「家事使用人の実態把握のためのアンケート 調査」によれば、 ・「はい(業務中の病気やけがなど の経験がある)」と回答した者は15.2%。 ・それらの者のうち「病気やけがなどの内容」(複数回 答)は、「骨折・ヒビ」( 「腰痛」 27.1%)、「切傷」(26.4%)、 (26.4%)、「打撲」(24.4%)が他と比べ高い割合。 ・「けがの発生時点」(複数回答)は、「掃除中」 (29.7%) が最も高く、次いで「通勤時」 (23.8%)、「調理中」(18.8%) などとなっている。 ○(参考)家事使用人に係る特別加入の状況・業務上災害の補償状況について→→<特別加入の状況>⇒・令和5年度で1,714人(令和4年度1,848人)。 ・労災保険に特別加入している割合は34.3%。 <業務上災害・通勤災害の補償状況>⇒・「介護作業従事者及び家事支援従事者」について「療養補償 給付」「休業補償給付」「障害補償一時金」「年金等給付」の給付実績が見受けられる。 ○(参考)労災保険に加入しない理由と民間保険の加入状況→2023年のJILPT「家事使用人の実態把握のためのアンケート調査」⇒・労災保険に特別加入していない理由として最も多いのは「民間保険に入っているから」(57.0%)、次いで「制度を知らなかったから」(19.3%)となっている。 ・民間保険のうち「業務中の自身のけが等の手術・入院費等の補償(傷害補償制度)」に加入しているものは 30.8%、「自身のけが等の医療費の補償(共済(医療費)助成制度)」に加入しているものは25.6%となっている。 ○(参考)家事使用人に係る保険料の負担→「家事使用人の実態把握のためのアンケート調査」によると、一般に本人が負担している特別加入の保険料 について、「職業紹介所」が負担していると認識している者は35.3%であった。・家事使用人については、職業安定法及び同施行規則により、有料職業紹介事業者が求人者(雇用する個人家庭)から特別 加入の保険料に充てるべきものを別途徴収できることとなっている。 ○これは有料職業紹介事業者に求職登録されている家事使用人については、職業紹介により個人家庭に雇用されるものであ り、労基法の適用は除外されているが、雇用主である個人家庭から特別加入の保険料に充てるべきものを徴収できるよう措 置を講じたもの。 ○(参考)家事使用人に係る保険料の負担(職業安定法等の規定)→・職業安定法(昭和22年法律第141号) (手数料) 第32条の3 ・職業安定法施行規則(昭和22年労働省令第12号) (法第32条の3に関する事項) 第20条 ・別表抜粋(第20条関係)→第2種特別加入保険料に充てるべき 手数料⇒・手数料の最高額→徴収方法:1000分の5.5 支払われた賃金額の1000分の5.5に相当する額。 徴収方法:徴収の基礎となる賃金が支払われた日以降 求人者から徴 収する 。 ◎資料5 暫定任意適用事業について ○暫定任意適用事業をめぐる論点について→論点案⇒【論点】昭和50年以降、農林水産業の一部のみが労災保険の暫定任意適用となっており、その理由は、「労働実態の把握が困難であること等」とされているところ、現代において、暫定任意適用となっている農林水産業の事業についても強制適用とすべきか。 ○暫定任意適用事業の概要→・労災保険は、原則として労働者を使用する全ての事業に適用される(国家公務員、地方公務員(現業の非常勤を除く。)は適用されない)。 ・ただし、農林水産業の一部については、暫定任意適用事業」として強制適用の例外となっている。 ⇒概要、暫定任意適用事業関係法令の主な条文構造 参照。 ○暫定任意適用事業に係る特例(整備法第18条関係)→・暫定任意適用事業の事業場においては、労災保険に係る保険関係の成立前に発生した業務上の傷病についても、 後刻、事業主の申請により、労災保険法の規定による保険給付が行うことができることとしている。ただし、労働 者が療養を経ずに死亡した場合は対象外となる。(整備法第18条第1項) (本特例により保険給付を行った場合、事業主は所定の期間、労働保険料のほかに特別保険料を納付しなければならない(整備法第19条第1 項))。 ・当該申請は、事業場で使用する労働者の過半数が希望する場合には、事業主は申請しなければならない。(整備 法第18条第3項) ○暫定任意適用事業の関係条文@➁→・労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)(抄) 第3条 労働者を使用する事業を適用事業。 ・失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律(昭和44年法律第83号)(抄) 附則(抄)(労働者災害補償保険の適用事業に関する暫定措置) 第12条 ・失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令 (昭和47年政令第47号)(抄)(労災保険暫定任意適用事業) 第17条 ・労働省告示第35号(昭和50年4月1日)(抄) 失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令 (昭和47年政令第47号)第17条の規定に基づき、労働大臣が定める事業を次のように定める。 ・失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する 法律(昭和44年法律第85号)(抄) (労災保険に係る保険関係の成立に関する経過措置) 第5条、(労災保険の保険給付の特例に関する経過措置)※ P3で詳解 第18条、第18条の3、 第19条 政府は、第 18条第1項若しくは第2項、第18条の2第1項若しくは第2項又は前条第1項若しくは第2項の規定により保険給付を行うこ ととなつた場合には、厚生労働省令で定める期間、当該事業主から、労働保険料のほか、特別保険料を徴収する。 ○暫定任意適用事業に係る改正経緯等→昭和22年〜 昭和40年・・・・・平成3年 昭和44年改正法の改正⇒・強制適用事業の範囲を拡大 (農業の事業のうち、事業主が農業について特別加入している事業も強制適用事業) (平成3年4月1日施行) ◎依然として暫定任意適用事業とされているのは、常時5人未満の労働者を使用する個人経営の農林、 水産業の事業(特別加入者が行う農業の事業を除く。)の一部のみとなり、現在に至っている。 ○暫定任意適用事業が存置されている理由@➁↓ ・「労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律の施行(第三次分)等について」(平成3年3月1日 発労徴第13号基発第123号)(抜粋) 1 改正の趣旨及び概要 (1) 改正の趣旨 イ 全面適用の困難性→この暫定任意適用事業の範囲も、昭和50年4月1日から、個人経営の労働者5人未満の農林水産業の一部にまで縮小が図られた (昭和50年政令第26号)が、農業については、適用拡大の必要性が比較的高い(注1)ものの、 その事業場における労働実態の把握 が困難であること等の理由(注2)から、その後の特段の適用拡大の措置は講じられてこなかった。 ・「今後の労災補償法制のあり方 労働基準法研究会(災害補償関係)の中間的な研究内容について」 (労働省労働基準局編 財団法人労災保険情報センター 昭和63年8月25日第1刷)(抜粋) V 参考(個別検討結果) 第11 労働基準法第8章と労災保険法との関係 2.検討の方向 (2) 暫定に適用事業の廃止について→・・・・・これらの事業が当分の間、暫定任意適用事業とされたのは、小規模の農林水 産業は、家族労働を中心とする自営業に近く、かつ、広範囲な地域に散在するなど事業の性質上実態把握が困難であること、労働者性が明確でないこと、その対象数が膨大であること(あ わせて災害が多発していないこと)等のためといわれている。 ○暫定任意適用事業のうち、保険関係を成立している事業の被災状況の調査結果→令和6年6月19日時点において、任意適用事業場として保険関係を成立している事業場(25,602事業場)を対象に、令和3年度から令和5年度までの期間に支給決定された重大事故(※1、2)の内容は以下のとおり。⇒障害(補償)等給付、遺族(補償)等給付 参照。 ◎参考資料 第3回研究会における委員ご発言の概要 1.給付基礎日額 ○労災則9条1項各号および労働基準法12条では、同条1項にいう平均賃金の特例となるのはおおむね「労働基準法の平均賃金では労働者にとって不利になる場合」が挙げられていることから、平均賃金 を用いて不利でないにもかかわらずこれを用いないときには、労災保険法8条2項にいう「適当でない」理由があるかが説得的に説明されるべき。そのような説得的理由がないときには、労働基準法12 条 1 項の原則どおり(発症時の賃金)とするのが法の趣旨に沿うのではないか。ケース1(ばく露時 よりも発症時の方が賃金が高い場合)は原則として発症時の賃金を使い、ケース 1 でもばく露時よりも今の方が賃金が低くなるケースや、ケース2(発症時に職に就いていない場合)では労働者が不利益にならないように、ばく露時等の適当な時点における賃金を用いるのが基本的な改正の在り方では ないか。 ○社会保障的性格を強調するなら、ケース1(ばく露時よりも発症時の方が賃金が高い場合)については、発症直前の生活水準を補償する趣旨で現在(発症時)の事業場の賃金をもとに給付基礎日額を算定するという方法もあり得る。退職した事業場の賃金を現在の事業場の賃金が下回るとか、現在の賃金が以前よりも下がっているという場合には、労働基準法の「災害補償責任」に戻って最終ばく露事業場の賃金に戻って最低保障をする。ケース2(発症時に職に就いていない場合)の支給については、 退職後の高齢者で年金生活に移行している者も、働ける年齢で休職している者も様々あり得、難しいが、参考にすべき直前の水準がない場合は、最終ばく露事業場の賃金で算定するしかないのではないか。 ○労災保険制度の趣旨に照らして検討をするにあたっては本来であれば、過去の給付基礎日額の例外 (556 号通知)がどのような趣旨だったかの検証が必要だと思うが、労働基準法に基づく事業主の災害補償責任の考え方が基本にあるのではないかと思う。労災保険の補償は、原因となる有害業務に従事させたことに関する事業主の補償と考えられるところ、有害業務への従事に着目すべきで、その後の働き方の違いや退職のタイミング、発症時期のタイミングなどで給付基礎日額の扱いが異なるのは、かえって公平ではない。 ○556号通達は労災の原因を作った事業主との関係を特定した上で補償内容を考える趣旨と理解。一方、 法令の規定では「疾病の発生が確定した日」とされており、疾病の発症に危険因子へのばく露から一 定の時間的ラグがあるのは法の予定した範囲であり、原則(法律の規定)に戻るのが妥当ではないか。 ケース1(ばく露時よりも発症時の方が賃金が高い場合)については、現在(発症時)の賃金水準を 元に給付基礎日額を算定することでいいのではないか。その理由・趣旨については、生活保障の役割 という社会保障的なものを重視していくべきではないか。 ○過去に働いていた事業場へのメリット制の適用については、当時(ばく露時)の賃金水準の限度にと どめるという方法も採り得る。この部分だけ基準法の災害補償責任より拡大して生活保障的な給付を 行うという考え方もあるのではないか。 賃金水準が下がってから、あるいは離職してからの発症に係る給付については、556号通達を使う場面 もあってもいいが、理論的な整理が必要。 ○ケース1、2の問題は、障害補償年金の給付内容の定型化によって生じる不合理な側面が顕在化した ものと捉えることができる。支給額について被災時の賃金をもとに給付水準を設定し、支給期間について大抵は稼得能力を喪失している老齢期にも支給を継続している。これがケース1では過小に見え、 ケース2では過剰にも思える給付となっているように見える。解決・是正方法として検討の余地があるのではないか。 ○給付基礎日額の算定方法について、若年だったらその後の昇給が期待できた、中年だったらその後、 低下が見込まれているが現在の賃金スライドを発展させ、年齢別の賃金水準を考慮したスライドを検討できないか。それができれば、若年労働者には賃金水準の上昇を考慮した給付の充実を図ることができ、高年齢の被災労働者に対しては本来であれば生じるはずであった賃金水準が反映され、過剰な 給付を抑制できる。損害の填補という制度趣旨により沿ったものになり抜本的な解決となるのではな いか。ただし、全ての労働者に妥当する年齢に応じた賃金変動というものを想定するのは難しく、年 功的要素が後退している現状においては年齢に応じてスライドをするということは齟齬があるとの反論は想定されるが、1つの可能性。 ○支給期間との関係では、老齢期になっても障害補償年金等を支給継続していることは被災労働者の保護等の観点からも妥当とは思うが、一方で稼得能力の喪失を前提としている老齢厚生年金、老齢基礎 年金との関係では検討の余地はあるのではないか引退した被災労働者については、老齢年金を支給さ れていると思うが、現行法の障害補償年金は、同一障害による障害厚生年金、障害基礎年金とののみ 調整が想定されている。したがって障害補償年金と老齢年金が出されることになるが、障害補償年金 が稼得能力の減退喪失に着目して損害の填補を図る給付であることに鑑みると、稼得能力の喪失を前 提にしている老齢厚生年金等との間で併給調整することも合理的ではないか。 ≪現時点における議論の確認≫→◎給付基礎日額について、556 通達の取扱いをケース1とケース2で一貫させていくのか、区別して対 応するのか、あるいは抜本的にいじるかという意見がある。 2.社会復帰促進等事業 【特別支給金について】→○社会復帰促進等事業特別支給金特別支給金 特別支給金は、創設当初は流動的なものだったかもしれないが、今となっては必要性や補償内容は恒常的・固定的なものとなっており、法定の保険給付化が考えられても良いのではないか。 過去の最高裁判例を踏まえると、特別支給金を保険給付にすることで社会保障的な性格が後退すると 指摘する人もいるであろうし、また、特別支給金が民事上の損害賠償の調整対象となり労働者側に不利になるかもしれないが、補償の安定の観点から、法定化して保険給付として扱うのが良いのではないか。 ○H8の最高裁判決では、特別支給金は保険給付と異なるとして損害賠償額から控除する対象とはしていないが、特別支給金は保険給付の上積みであり、実務としても一体的に行っている。事業主は社会 復帰促進等事業費も含めて保険料を払っており、保険料を負担しているにも関わらず、特別支給金が 損害額から控除されないために事業主は二重の負担を負っていると言える。労働者側からすれば、その部分については損害賠償を受け取れなくなるので一見すると不利益であるが、特別支給金については保険給付として法定化することが本来的な制度の在り方であると思う。 ○ボーナス特別支給金は、算定方法が直近1年間の特別給与をもとにしている。この金額は夏・冬のボ ーナスが中心であり不確定要素に左右される。特別支給金を保険給付とした場合、適切なボーナス特 別支給金の算定が非常に難しいのではないか。 【アフターケアについて】→○リハビリの給付化については、リハビリについては保険給付の内容に含まれており、アフターケアが 事業として扱われており、その具体的内容は保健指導など比較的柔軟な対応が必要なもので、保険給 付として定型化することが必要なものではないと認識した。現在の保険給付とアフターケアの区分は 合理的と考えている。 ○アフターケアについて、給付の要件は治癒、症状固定までとしているが、医療の進歩を鑑みると、医 療というものが治癒・症状固定にとどまることがなくなってくる。アフターケアが治癒・症状固定に 続く段階で提供されるものであり、医学的アプローチとして相応の役割が客観的に評価できるのであ れば、保険給付に位置づけることも議論の余地はあるのではないか。○ボーナス特別支給金については、算定方法や給付設計について疑義が生ずる余地があり、紛争を生じさせる可能性は相当程度あるのではないかと思われる。その点を踏まえれば、長期にわたる給付内容の事項に関して審査請求の機会を認めるのは意義のあることと思われ、特別支給金について処分性を認めることが適当。 ○審査請求のありかたについて、労働者が審査請求をしようとしても手間がかかるのは、申請を断念さ せてしまう大きな要因になるのではないかと思われる。審査請求手続は、保険給付と一本化・改善した方がいいのではないか。 ○保険給付と社会復帰促進等事業の不服申立が二つに分かれているのは国民に分かりにくく、コストも考えると一本化するのがいい。その上で、労災保険法40条で、保険給付の処分取消しの訴えについて 審査請求前置を定めている。他方で、行審法の審査になっている社会復帰促進等事業は審査請求前置 となっていないところ、労審法への移管により処分に対して直接に取消訴訟を提起できなくなるのは 留意すべきである。 ○社会復帰促進等事業の審査請求を労審法の対象とすることは、国民に分かりづらいという理由による べきと思料。総務省からの指摘を踏まえれば、変更する方向で検討するのが妥当であろう。 ○社会復帰等促進事業の処分性を広く認める契機となった最高裁判決の影響はすごいが、その上で特別 支給金に処分性を認めていない特別支給金ことは理由に乏しく、認めることが妥当。 ≪現時点における議論の確認≫ ◎社会復帰促進等事業について審査請求を保険給付と一本化することが妥当であることは総意。 ◎特別支給金の在り方については実際の機能を踏まえて法定化を検討するべき。 3.生計維持要件 ○労災保険法の生計維持要件は生計維持者と被生計維持者の依存関係を相互的なものと捉えている。遺族の労働者に対する経済的依存性というよりは両者の経済的基盤の共通性に着目するもの。従って生 計同一とその内容が類似している。これに関して、労基法施行規則42条2項で定める配偶者以外の遺 族について、生計維持に並んで生計同一も対象となっていることを踏まえても労災保険法は「生計維持」を年金各法と異なり、労働基準法施行規則と足並みを揃え生計同一の意味合いを含んだ、より広 い独自のものとしてきたと考える。労災保険法が労働基準法と異なるのは、生計維持要件というよりは年齢や障害によって制限している点であり、これらの要件によりなぜ労働基準法よりも支給対象者 が絞られるのかが検証されるべき。 ○年齢と障害の要件については男女格差が問題になるがこのことは遺族としての女性だけでなく、労働基準法上の労働者としての女性としても検討されるべき。労働基準法では女性の勤務に制限をかけてきた経緯がある。遺族補償給付の年金化時点では女性が危険労働から保護されやすかった分、女性が労災で死亡することは相当少なかったところ。男性労働者の死亡による補償が典型的な事例として想定されていたのではないか。労働基準法上の制限が撤廃され、業務上の危険の質が男女同等となった 今日では、女性労働者の死亡損害の金銭的評価をむしろ男性労働者の評価の在り方に合わせるという 道筋もあり得る。 ○昭和41年当初から、主たる生計維持者だけでなく、従たる役割を果たしていた者が死んだ場合でも被 扶養利益の喪失の補償の対象にしていたことが明らかになった。平成2年の通知改正でも、親子や配 偶者の間の生計維持の扱いは基本的には変化していない。したがって、妻を亡くした配偶者について も行政実務が念頭に置く被扶養利益の喪失は認められると思われる。提示されたデータからも、妻が パートタイムで働く共働き世帯は増えている状況であり、フルタイムだけでなく、パートタイムで働 く妻を亡くした男性についても妻の死亡による遺族補償年金の支給の必要性が認められるだろう。 ○遺族補償年金の支給目的・支給期間について、労働者を亡くした後の生活激変を一定期間支えるもの と考え、有期給付化していくとの考えについては我が国では労災補償と損害賠償の併存が認められて おり、遺族補償年金の給付が縮小することに伴って損害賠償訴訟をしなくてはならなくなり、労働者 や遺族の生活の安定が図られなくなるという点が指摘される。しかし、一方で、20代の男女間につい ては、賃金差はほぼない状況。したがって、将来の世代に向かって、夫を失った妻だけが一生の補償 を受け続けられるという、現代の仕組みを改めていくことは考え得るのでは。 ○生計維持要件の変遷については、見直し前提ではないが、既に年金化から50年も経過しており、この ままでいいのかという視点は必要ではないか。例えばS41年の通知2(2)については、婚姻直後に 配偶者が亡くなったケースを想定しているものと思料するが、今の離婚率を考えたら同じことが言えるか。以前の説明が今も可能なのかは検証をした方がいいのではないか。 ≪現時点における議論の確認≫ ◎制度創設当初から色々な意味で変化があったことを踏まえてさらに検討していく必要がある。 (以上) 次回は新たに「成育医療等分科会(第5回)」からです。 |