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用政策研究会報告書の公表について [2024年10月19日(Sat)]
雇用政策研究会報告書の公表について(令和6年8月23日)
〜多様な個人が置かれた状況に関わらず包摂され、活躍できる労働市場の構築に向けて〜
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000204414_00017.html
○厚生労働省では、雇用政策研究会(座長:樋口美雄 慶應義塾大学名誉教授)において、雇用・失業情勢や働き方等に関する現状分析を行い、中長期的な観点も含めた今後の政策の具体的な方向性について報告書をとりまとめていただき、公表いたしました。
本報告書では、2040年の労働市場において、人口減少を背景とした労働供給制約が見込まれる中、⇒・多様な個人の労働参加の促進と経済成長の実現 ・人手不足の類型に応じた適切な対応 ・労働者に選ばれる職場づくり   といった観点から、
@ 多様な個人の労働参加 A 新たなテクノロジー等を活用した労働生産性の向上
B 労働市場のインフラ整備等 
  という3つの柱のもとで、必要な施策の方向性がまとめられました。本報告書を踏まえ、社会経済構造や働き方の変化に対応した雇用政策を推進してまいります。

◎資料1雇用政策研究会報告書 概要 〜多様な個人が置かれた状況に関わらず包摂され、活躍できる労働市場の構築に向けて〜
○開催趣旨
→✓ 本研究会では、5年に1度行われる将来推計人口をもとに(独)労働政策研究・研修機構が行う労働力需給推計を踏まえ、将来の労働供給制約が強 まる中、柔軟な働き方、多様なキャリア形成やウェルビーイングの向上に向けた取組み、それらを支える労働市場の在り方等、今後の雇用政策の方 向性について議論された。 ✓ 足下では、経済活動の再開に伴い、人手不足が顕在化しており、今後は、賃金上昇を伴う労働移動の支援や、更なる活躍を促す雇用政策へと転換を 図っていく必要がある。 ✓ さらに、近年、働く人の意識の変化や産業構造の変化がみられる中、働く人が自身の希望に合わせて、多様な働き方を選択でき、安定したキャリア 形成ができる労働市場の構築が求められている。 ※ 構成委員に加え、AIの雇用への影響、キャリア形成・働き方、職場における女性特有の健康課題、地域雇用や外国人雇用等について、企業関係者や 学識者に参加いただいた。

○参集者一覧→14名。
○開催実績→• 2023年6月1日 我が国の経済・雇用情勢と課題(論点提示)〜• 2024年7月23日 雇用政策研究会報告書(案)について⇒計12回開催。

○労働供給制約下で展望される今後の労働市場→✓日本の総人口は、2040年には現在の9割に減少し、65歳以上がおよそ35%を占めると推計されている。労働力人口は、1人あたりの実質経済成長や 労働参加が現状から進まないと仮定した場合には6,002万人となる一方、経済成長と労働参加が実現した場合には6,791万人となることが見込まれる。 このような労働市場を実現するには、多様な個人の労働参加の促進と経済成長を実現するための労働生産性の向上が重要。 ✓人手不足については、労働需要量に対し労働供給量が追いついていない「労働需要超過型の人手不足」、求人と求職のミスマッチによって生じる「摩擦的な人手不足」、職場環境や労働環境が個々の労働者の制約に対応していないことや、企業側が求めるスキルを有する人材の不足による「構造的な人手不足」といった類型が考えられ、処遇の改善等を通じた労働参加の促進、労働市場のインフラ整備、職場環境の改善や人材育成の強化等のそれぞれの類型に合った処方箋が必要。 ✓これまでの雇用政策では、労働者が企業に雇用されることに向けた施策の充実が図られてきた面があるが、人手不足が深刻化する中にあっては、労使の適切なコミュニケーションを通じて、企業が労働者に選ばれる環境をつくる能力を高めることが重要。

○多様な個人の労働参加 →✓多様な個人の労働参加に向け、長時間労働を是正するとともに、様々な選択肢が提示でき る雇用管理への転換が必要。 ✓ミドル・シニア世代の人材活用に向け、ワー ク・エンゲージメントを下げないような取組みや、地域に貢献し地域と繋がるような仕組みの強化が重要。 ✓家庭等の事情に関わらず希望する働き方の実現に向け、職場・家庭の役割分担の見直しへ の社会的な気運の醸成が必要。さらに、個々 の労働者の健康状態に合わせ対応できる職場 環境の整備も重要。 ✓地域の人手不足への対応として、地域間での マッチングの促進を通じ、地域の担い手を確 保することが必要。 ✓外国人労働者への対応として、選ばれる国であり続けるよう、キャリアアップが見込める等の雇用環境の整備や、日本の受入制度と送 出国のニーズ等の調和に向けた戦略的対応が重要。

○新たなテクノロジー等を活用した労働生産性の向上 →✓労働生産性の向上に向けては、新たなテクノ ロジーの活用だけでなく、従来行われてきた 省力化投資や業務改善とともに、雇用の質を高める人的資本投資が必要。 ✓生成AIによって示された結果を経験やその 他の情報から適切に評価するスキルが重要。 ✓新たなテクノロジーの活用に際しては、労使 コミュニケーションの深化とテクノロジーの進展によるタスク・スキル変化のモニタリン グを通じ、労働者が担うべきタスクの検討を進めるとともに、技術変化を踏まえたキャリア形成支援・職業訓練の充実により、労働者 がテクノロジーに代替されないスキルを深化させることが重要。 ✓さらに生成AI・AI等の活用促進にむけては、 働き方改革を同時に進めるなど一層のウェル ビーイングに配慮した対応が必要。

○労働市場のインフラ整備等→✓テクノロジーの進歩や個人の就労ニーズの多様化の中、人材育成支援(キャリア形成支援 やスキルの習得)、労働市場の見える化に向けた労働市場のインフラ整備が重要。 ✓自律的・主体的なキャリア形成が行える仕組みや、スキルの習得に取り組んだ人材が、企 業内で処遇される仕組みが重要。 ✓職業人生が長期化する中、様々な選択肢の中で、個人が活躍できる労働市場の構築に向け、 • 自律的・主体的にキャリアに関する相談 や必要なスキルの習得ができる環境 • 処遇改善に繋がるキャリアラダーが見える労働市場の構築が重要。 ✓企業内外において獲得したスキルが評価され、 賃金等に反映され、更なるステップアップに 繋がるという好循環を実現できる労働市場の 機能強化が重要。


◎資料2雇用政策研究会報告書 〜多様な個人が置かれた状況に関わらず包摂され、活躍できる労働市場の構築に向けて〜   2024年8月  雇用政策研究会
1 雇用を取り巻く状況の変化と雇用政策
→過去の雇用政策研究会のとりまとめも振り返りつつ、新型コロナウイル ス感染症が雇用情勢や雇用政策に与えた影響について整理。
(1―1 コロナ禍での雇用情勢)(1―2 コロナ禍での雇用対策)(1−3 コロナ禍を経た労働市場の姿→女性や高齢者の労働参加はコロナ前と比べて進展)

2 労働供給制約の下での新たな雇用政策の立案に向けて
(2−1 2040 年の労働市場の姿)(2−2 人手不足を契機とした労働市場の整備に向けて)(2−3 2040 年に向けた雇用政策の考え方)(2−4 不確実性の中での安定的な働き方に向けて)(2−5 労働市場の機能強化を通じた賃金を含む処遇改善に向けて)(2−6 多様な個人が置かれた状況に関わらず包摂され、活躍できる労働市場の構築に向けて)

3 多様な個人が労働参加し、意欲を持って働ける労働市場に向けて
(3−1 多様な個人の労働参加に向けて)→ <@個人に寄り添った多様で柔軟な人材活用へ><A正規・非正規の二極構造から希望する働き方を選べる職場へ><B長時間労働を前提としない職場づくり><Cより柔軟な働き方の促進>
(3−2 ミドル・シニア世代も含む人材活用)→<@シニア世代の就業に向けた制度的対応><B地域におけるマッチング強化を通じたシニア世代の活躍促進>
(3−3 家庭等の事情に関わらず男女ともに希望が十分配慮・尊重される働き方が可能 な環境整備)→ <@性別に関わらない働き方の現在地><A子育てや介護を行う人への支援メニューの更なる活用に向けて>(子育てをしながら希望する働き方が実現できる社会、介護を行っている人への支援、家事負担の偏在の解消に向けた気運の醸成)
<B職場における健康課題への対応><C性別に関わらず適切にキャリアアップできる環境整備>
(3−4 個々の事情を踏まえた労働参加に向けて)→ <@個々の事情によって職場を離れていた人への支援等>(育児によって職場を離れていた人への支援、自己実現のために職場を離れ、また戻れる職場環境・労働市場の構築に向けて) <A引き続き手厚い支援が必要な人への支援>
(3−5 地域の人手不足への対応)→<@地域における人手不足の深刻化><A地域の個性に合わせた雇用対策の実行>
(3−6 外国人労働者への対応)→<@アジア諸国の中における日本での就労ニーズ>
<A日本におけるキャリアアップ>

4 新たなテクノロジー等を活用した労働生産性の向上 →(4―1 新たなテクノロジー等を活用した労働生産性の向上に向けて)(4−2 労働生産性の向上に向けた取組み)
(4−3 新たなテクノロジーが雇用に与える影響)
→<@生成 AI を巡る動向について>
<A労働供給制約を見据えた生成 AI への期待>
(4−4 これまでの AI や自動化による雇用への影響)→<@AI 等の新たなテクノロジーが仕事に与える影響><AAI 等の新たなテクノロジーの活用による労働生産性/ウェルビーイングの向上><B新たなテクノロジーの活用による新たな労働需要の可能性><C新たなテクノロジーと雇用の共存に向けて>
(4−5 新たなテクノロジーに関する足下の動き)
(4−6 政策の方向性)
→<@新たなテクノロジーの活用に向けた労使コミュニケーションの深化><Aタスク・スキル変化のモニタリング・情報提供及びマッチング機能の向上><B技術変化を踏まえた人材育成の充実>(企業内での人材育成の充実、・労働者による自律的なキャリア形成、スキル習得、・環境の変化に応じた学び・学び直しの支援と政府による AI を含むデジタル人材 育成) <Cウェルビーイングの実現に向けた生成 AI・AI 等の活用促進><Dテクノロジーに代替されないスキルの深化>
4−7 新たなテクノロジーがもたらす期待と継続検討すべき課題)

5 労働市場におけるインフラ整備等
(5−1 多様な個人の活躍を広げる労働市場のインフラ整備に向けて)
(5−2 企業における多様な個人の活躍を促進するためのインフラ整備)
→<@キャリア選択やスキル習得を自律的・主体的に行える人材の育成の必要性><Aパーパスを踏まえた戦略的な人材育成に向けて><B企業の人材育成を支援する仕組み>
<C経済の急速な構造的変化を踏まえた企業内の人材育成の促進>(・構造変化の中に
おける能力開発の重要性の高まり、・人材育成を積極的に行う企業への支援に向けて、・社内で自律的な能力開発が行われ、企業の成長に繋がる好循環に向けて)
(5−3 多様な個人が様々な選択肢の中で活躍できる労働市場の構築に向けて)→<@多様な個人が様々な選択肢の中で活躍できる仕組み作り><A個人のキャリア形成支援機能の構築に向けて><B個人の多様な能力開発を支える環境整備>
(5−4 多様な選択肢の中で、個人の活躍を促進する労働市場の見える化)→<@労働市場の見える化によるマッチングの向上><A適職をみつけるための支援とキャリアラダーの構築><B自身にあった職場をみつけるための支援>(・職場情報の充実、・地域における労働市場のハブとしてのハローワークの機能強化) <Cその他の労働市場機能強化に向けた取組み等>(・雇用情勢の把握、・民間事業者による適切なサービス提供、・新たなマッチング手法の把握、・労働市場とセーフティネットの在り方についての継続的な検証・検討)
<D労働市場の機能強化を通じた処遇改善に向けて>⇒労働市場の見える化が進展することで、これまで必ずしも容易に比較することが出来なかった職場情報や処遇が明らかとなり、人手不足の中での人材獲得競争を 通じ、労働市場全体の処遇改善が行われることが期待される。その際、企業間の労働移動の活性化が想定されるところであり、人材の引き抜き等によって生じうる課題については、労働者側・企業側のメリット・デメリットを踏まえた議論が社会全体で行われることが望まれる。 また、高齢化の進展や更なる労働参加が進む中、社会的ニーズが高い介護や保育等の公的なサービスを安定的に提供するためには、人材確保は重要課題の一つである。 こうしたエッセンシャルワーカーの確保に向け、賃金を含む処遇の改善について、引き続き議論をしていくことが必要となる。 こうした個人レベルの能力開発等の動きや労働市場の活性化等を通じて、賃金も含む処遇の改善が労働市場全体で行われていくことが重要である。


◎資料3(参考資料@) 報告書で指摘された労働経済学等において調査・研究が期待されるトピックについて
1 管理監督者の労働時間の実態把握
→管理監督者は、時間外労働の上限規制が適用されな いこと等を背景に、労働時間の把握が困難な場合がある。今後、各種調査を通じて管理監督者を含めた 長時間労働の実態把握を進めることが求められる。(P.10)

2 職場における女性の健康課題→女性の社会進出が進む中、今後は、事業場や労働者を対象とした調査を通じ、職場における女性の健康 課題の実態把握が進むことが期待される。(P.22)

3 女性のキャリア形成阻害要因→多様な職務経験が昇進に際して重要視される中、女性に対して多様な職務経験の提供が十分されず、女性のキャリア形成の阻害となっていることも想定される。こうした職場での女性のキャリア形成の阻害 要因を洗い出すことが求められる。(P.23)

4 アルバイト従事が卒業 後の人的資本形成に与 える影響→大学学部(昼間部)でアルバイトに従事している学生の割合は令和4年度で8割を超えている。こうした学生期間のアルバイトへの従事が卒業後の人的資本形成に与える影響等について今後研究が進むこと が期待される。(P.25)

5 新たなテクノロジーを踏まえ、労働者が担うべきタスク→ 新たなテクノロジーの導入により、タスクが変化することを念頭に、生成 AI・AI 等が担うべきタスクと 労働者が担うべきタスクの整理を行うとともに、労働者が行うことで新たな付加価値を生み出すタスク の検討が求められる。(P.37)

6 能力開発費の推移→魅力的な人的資本投資を行うことは、外部からの優秀な人材の獲得にも資すると期待されている一方で、一社あたりの能力開発費は 2010 年と比較して、 低い水準で推移しており、コロナ禍を経た状況の変化も評価することが期待される。(P.45)

次回も続き「資料4(参考資料➁) 報告書作成に当たってヒアリングにご協力いただいた 企業の取組み事例集」からです。

第18回アレルギー疾患対策推進協議会資料 [2024年10月18日(Fri)]
第18回アレルギー疾患対策推進協議会資料(令和6年8月21日)
議事 3令和6年度のアレルギー疾患対策について 4 免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略の中間評価について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_42484.html
◎参考資料5 免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略
免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略 〜「見える化」による安心社会の醸成〜
1.はじめに
我が国において、乳幼児から高齢者まで国民の約2人に1人が何らかのアレルギー疾患を有して いると言われている。そうした中、平成 26 年6月に「アレルギー疾患対策基本法」(平成 26 年法律 第 98 号。以下「法」)が公布され、法に基づき、平成 29 年3月に「アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針」(平成 29 年厚生労働省告示第 76 号。以下、「基本指針」)が公布された。基本指針においては、医療の質の均てん化に向けた医療提供体制の整備に関しての取り組みに加え、アレルギー疾患に関する調査及び研究に関する事項を明記しており、今後の取り組みの方針として、基本指針第四(1)において、『諸問題の解決に向け、疫学研究、基礎研究、治療開発(橋渡し研究の活性化を含む。)及び臨床研究の長期的かつ戦略的な推進が必要である。』と示された。 そこで、今後の方向性と具体的な研究事項を明示する免疫アレルギー疾患の研究戦略の策定に向けた予備検討を行うため、平成 29 年度に厚生労働科学特別研究事業「アレルギー疾患対策 に関する研究基盤の構築」が採択され、関係する学会(日本アレルギー学会、日本小児アレルギー学会、日本皮膚科学会、日本眼科学会、日本呼吸器学会、日本耳鼻咽喉科学会、日本免疫学会) の協力を得て、平成 30 年3月に研究戦略の策定に向けた研究班報告書を取りまとめた。 平成 30 年7月より、「免疫アレルギー疾患研究戦略検討会」を開催し、この研究班報告書等を参考にして、免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略(以下、「10 か年戦略」)について 3 回にわ たり検討を重ねた。当検討会では、「免疫アレルギー疾患領域における研究の現状を正確に把握し、疫学調査、基礎病態解明、治療開発、臨床研究等を長期的かつ戦略的に推進すること」を目的として、「先制的医療等を目指す免疫アレルギーの本態解明に関する基盤研究」、「免疫アレルギー研究の効果的な推進と社会の構築に関する横断研究」、「ライフステージ等免疫アレルギー疾患の特性に注目した重点研究」の3つの戦略に整理し、検討会報告書として取りまとめた。 本検討会報告書を踏まえ、我が国全体で進める免疫アレルギー研究の今後のあるべき方向性と具体的な研究事項を明らかにし、免疫アレルギー対策の基礎となる研究の推進を一層加速させるために、10 か年戦略を策定し、これを推進することとする。

2.戦略の目指すべきビジョン→産学官民の連携と患者の参画に基づいて、免疫アレルギー疾患に対して「発症予防・重症化予防による QOL 改善」と「防ぎ得る死の根絶」のために、「疾患活動性 3)や生活満足度の見える化」 や「病態の「見える化」に基づく層別化医療及び予防的・先制的医療の実現」を通じて、ライフステ ージに応じて、安心して生活できる社会を構築する。

3.ビジョンの実現に必要とされる3つの戦略と目標
戦略1
: 本態解明 (先制的医療等を目指す免疫アレルギーの本態解明に関する基盤研究) 戦略2:社会の構築 (免疫アレルギー研究の効果的な推進と社会の構築に関する横断研究) 戦略3: 疾患特性 (ライフステージ等免疫アレルギー疾患の特性に注目した重点研究)
上記の3つの戦略を進める上で、次の目標をそれぞれ設定する。
目標1:
「革新的な医療技術に基づく層別化医療及び予防的・先制的医療」の実現に向けて、 基盤となる基礎研究・疫学研究・臨床研究を推進することで、免疫アレルギー疾患の根源的な 本態解明を目指す。
目標2: 国民一人一人の貢献を重要視し、国内外の産学官民のあらゆる力を結集して国際的な研究開発を進められる仕組み作りを行い、かつ患者を含む国民が参画する研究成果の社会へ の効果的な還元を目指す。
目標3: ライフステージ等の疾患特性に応じた医療の最適化や、一部の重症免疫アレルギー疾患における「防ぎ得る死」をゼロにするために、各疾患の特性に基づく予防法や治療法を、広く社会に普及させることを目指す。

4.3つの戦略に対しての具体的研究事項
戦略1: 本態解明
(先制的医療等を目指す免疫アレルギーの本態解明に関する基盤研究) (1) 免疫アレルギー疾患の多様性の理解と層別化に資する基盤研究
(2) 将来の予防的・先制的医療の実用化を目指す研究開発
(3) 免疫アレルギー疾患における宿主因子と外的因子の関係に着目した基盤研究
(4) 臓器連関/異分野融合に関する免疫アレルギー研究開発
戦略2: 社会の構築(免疫アレルギー研究の効果的な推進と社会の構築に関する横断研究) (1) 患者・市民参画による双方向性の免疫アレルギー研究の推進に関する研究
(2) 免疫アレルギー研究におけるアンメットメディカルニーズ等の調査研究開発
(3) 免疫アレルギー研究に係る臨床研究基盤構築に関する開発研究
(4) 免疫アレルギー研究における国際連携, 人材育成に関する基盤構築研究
戦略3: 疾患特性 (ライフステージ等免疫アレルギー疾患の特性に注目した重点研究) (1) 母子関連を含めた小児および移行期の免疫アレルギー疾患研究
(2) 高齢者を含めた成人発症免疫アレルギー疾患研究
(3) 重症・難治性・治療抵抗性の免疫アレルギー疾患研究
(4) 希少疾患と関連する免疫アレルギー疾患研究

5.研究の評価体制→今回策定した 10 か年戦略における各研究で得られた成果を臨床現場に届けるには、一定の期間が必要となる。各研究項目において、10 年という長期間の中で常に目標設定を明確に行い、その進捗状況や、国内外の免疫アレルギー研究の全体像や、患者をはじめとする国民のニーズ等を 正確に継続的に把握し、10 か年戦略の中間評価と見直しを行う。


◎参考資料6 免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略 2030〜「見える化」による安心社会の醸成〜
○免疫アレルギー疾患の未来へ向けた研究戦略
■厚生労働省における免疫アレルギー疾患対策の主な歩み↓

「アレルギー疾患対策基本法」成立(2014 年)
「免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略」(2019 年)
○研究 10 か年戦略のビジョンと位置づけ
○2030 年までに目指す3つのゴールと戦略
・戦略1 本態解明
 先制的医療等を目指す免疫アレルギーの本態解明に関する基盤研究
「革新的な医療技術に基づく層別化医療および予防的・先制的医療」の実現に向けて、
基盤となる基礎研究・疫学研究・臨床研究を推進することで、免疫アレルギー疾患 の根源的な本態解明を目指す。
・戦略2 社会の構築 免疫アレルギー研究の効果的な推進と社会の構築に関する横断研究
国民一人一人の貢献を重要視し、国内外の産学官民のあらゆる力を結集して国際的 な研究開発を進められる仕組み作りを行い、かつ患者を含む国民が参画する研究成 果の社会への効果的な還元を目指す。
・戦略3 疾患特性 ライフステージ等免疫アレルギー疾患の特性に注目した重点研究
ライフステージなどの疾患特性に応じた医療の最適化や、一部の重症免疫アレルギー 疾患における「防ぎ得る死」をゼロにするために、各疾患の特性に基づく予防法や 治療法を、広く社会に普及させることを目指す。

○免疫アレルギー疾患研究の成果を 安心して生活できる社会の構築につなげるために↓
2030 年の日本を見据えた本研究 10 か年戦略、ビジョン、そして目標は、 免疫アレルギー疾患に悩む患者さんはもちろん、すべての国民に貢献できるように策定されました。
そのためにも、国内外の産学官民が一体となって、「本態解明・社会の構築・疾患特性」を柱とする3つの戦略を有機的に結びつけ、 総合的かつ計画的に基礎研究、疫学研究、臨床研究および 治療等研究開発を推進していきます。
そしてエビデンスを有する研究成果の社会実装を目指します。
また、10 年という長期間の中で、進捗状況や、世界の免疫アレルギー疾患研究の全体像、患者さんをはじめとする国民のニーズを正確かつ継続的に把握し、中間評価と見直しを行うことで、持続性を担保していきます。


◎参考資料7 10 か年戦略前半 5 年間に採択された研究一覧
厚生労働省 健康・生活衛生局 がん・疾病対策課
◎免疫アレルギー疾患実用化研究事業 (AMED研究)↓
○P J1(医薬品プロジェクト)免疫・アレルギー疾患領域
→アレルギー疾患領域(3題名)、免疫疾患領域(3題名)あり。
○P J4(ゲノム・データ基盤プロジェクト)免疫・アレルギー疾患領域→アレルギー疾患領域(1題名)、免疫疾患領域(4題名)あり。
○P J5(疾患基礎研究プロジェクト)診療の質の向上に資する研究→アレルギー疾患領域(11題名)、免疫疾患領域(6題名)あり。期間:〜2025年度まで。
○P J5(疾患基礎研究プロジェクト)病態解明研究→アレルギー疾患領域(12題名)、免疫疾患領域(8題名)あり。期間:〜2025年度まで。
○P J5(疾患基礎研究プロジェクト)重点領域→ アレルゲン免疫療法の開発に資する研究(1題名)、 アレルゲン免疫療法の開発に資する研究(2題名)、A.免疫アレルギー疾患における宿主因子と外的因子の関係に着目した病態解明研究 B.免疫アレルギー疾患の多様性・層別化に基づいた診療の質の向上に資する研究。ライフステージ等免疫アレルギー疾患の経時的特性解明を目指す研究(診療の質の向上に資する研究/病態解明研究)。ライフステージ等免疫アレルギー疾患の経時的特性解明を目指す研究(診療の質の向上に資する研究/病態解明研究)(6題名)期間:〜2025年度まであり。若手育成研究者推進領域 免疫アレルギー疾患の克服に結びつく独創的な病態解明研究(4題名)期間:〜2025年度まであり。

◎免疫アレルギー疾患政策研究事業 (厚生労働科学研究)↓
○厚生労働科学研究 アレルギー疾患領域→採択課題数(14課題) 期間:〜2025年度まであり。
○厚生労働科学研究 リウマチ疾患領域→採択課題数(5課題) 期間:〜2025年度まであり。


◎参考資料8 花粉症対策 スギ花粉症について日常生活でできること
○すぐわかる!すぐできる!花粉症対策ダイジェスト

1 花粉症はどうしてなるの?
2 花粉はいつ多くなるの?
3 どうすれば花粉症を予防できるの?
4 花粉症の治療は?
○もっと詳しく知りたい方へ 花粉症対策↓
・花粉症はどうしてなるの?
・どうすれば花粉症を予防できるの?
・花粉症の治療は?  [ 受診のタイミング ][ 治療方法 ][ 受診にあたって ]
・花粉症についての情報はどこから?
政府の花粉症対策のウェブサイトをご参考にしてください。
https://www.gov-online.go.jp/tokusyu/kafunnsyou/


○政府の花粉症対策 3本柱(令和 5年 5月30日花粉症に関する関係閣僚会議決定)
・発生源対策 ↓ 
● スギ人工林の伐採・植替え等の加速化 
● スギ材需要の拡大
● 花粉の少ない苗木の生産拡大
● 林業の生産性向上及び労働力の確保
・飛散対策 ↓ 
● スギ花粉飛散量の予測精度向上支援 
● スギ花粉の飛散防止
・発症・曝露対策 ↓
● 花粉症の治療:治療薬増産、研究開発等
● 花粉対策に資する認証制度や製品の普及・啓発
● 花粉症予防行動の周知、企業等の取組推進


◎参考資料9「免疫アレルギー疾患研究10か年戦略」の推進に関する中間評価(案)概略
「免疫アレルギー疾患研究10か年戦略の進捗評価と課題抽出、体制強化に関する研究」
研究班 研究代表者:森田英明(国立成育医療研究センター)
○戦略の評価体制
→免疫アレルギー疾患対策に対する研究基盤及び評価基盤の構築(令和3〜5年度) 免疫アレルギー疾患研究10か年戦略の進捗評価と課題抽出、体制強化に関する研究(令和6年度〜)報告書原案の作成(有識者意見聴取)⇒「免疫アレルギー疾患研究10か年戦略」の推進に関する中間評価報告書(案)へ。

○免疫アレルギー疾患研究10か年戦略中間評価報告書概要(案)(令和6年8月)
・10年後に目指すべきビジョン: 以下の3つの戦略の実装と国内外の産学官民連携に基づく自発的な活動によって達成を目指す
・前半5年間での主な研究成果→戦略1〜戦略3
・後半5年間での課題と今後の研究戦略の方向性
→戦略1:免疫アレルギー疾患のメカニズムの解明研究については、個々の患者に最適医療が提供されることを目標に、さらに推進する必要 がある。予防的・先制医療では、その対象等を含めて具体化する研究や、環境因子に対する新たな対処法の開発研究、神経ー炎症・免疫等の 多臓器連関の分子機構の解明研究等が必要である。 戦略2:患者と研究者間での研究への患者・市民参画に対する共通認識を明確にする必要性がある。各地域の臨床研究基盤ネットワークは まだ構築されていない。社会実装をめざしたデジタル基盤を活用したアンメットメディカルニーズ解決に向けた研究、国際的若手研究者の育 成も十分ではない。国際研究体制の確立とアウトプットの関連を評価する研究等も必要である。 戦略3:近年急増している木の実類アレルギーや食物アレルギーの特殊型等疾患の実態や原因は明らかでない。成人発症型や、アナフィラ キシー等重症・難治性・治療抵抗性の免疫アレルギー疾患の本態解明も十分ではない。単一遺伝子変異が原因の希少免疫アレルギー疾患が明 らかになってきており、希少疾患領域と連携し、それらの病態解明研究を推進する必要がある。

○中間評価を踏まえ、今後推進すべき研究(案)↓
・戦略1:本態解明 「先制的医療等を目指す免疫アレルギーの本態解明に関する基盤研究」
1-1 免疫アレルギー疾患の多様性の理解と層別化に資する基盤研究
1-2 将来の予防的・先制的医療の実用化を目指す研究開発
1-3 免疫アレルギー疾患における宿主因子と外的因子の関係に着目した基盤研究
1-4 臓器連関・異分野融合に関する免疫アレルギー研究開発
・戦略2:社会構築 「免疫アレルギー研究の効果的な推進と社会の構築に関する横断研究」
2-1 患者・市民参画による双方向性の免疫アレルギー研究の推進に関する研究
2-2 免疫アレルギー研究におけるアンメットメディカルニーズ等の調査研究開発
2-3 免疫アレルギー研究に係る臨床研究基盤構築に関する開発研究
2-4 免疫アレルギー研究における国際連携、人材育成に関する基盤構築研究
・戦略3:疾患特性 「ライフステージ等免疫アレルギー疾患の特性に注目した重点研究」
3-1 母子関連を含めた小児および移行期の免疫アレルギー疾患研究
3-2 高齢者を含めた成人発症免疫アレルギー疾患研究
3-3 重症・難治性・治療抵抗性の免疫アレルギー疾患研究
3-4 希少疾患と関連する免疫アレルギー疾患研究

○戦略横断的な推進に繋がる項目
・最新の科学的手法を最大限に活用
・急増するアレルギー疾患(類縁 疾患含む)の病態解明
・レジストリーやバイオバンク、国 内外のネットワークを最大限活用
・研究成果の社会実装に向けた研 究開発インフラと積極的に連携

次回は新たに「雇用政策研究会報告書の公表について」からです。

第18回アレルギー疾患対策推進協議会資料 [2024年10月17日(Thu)]
第18回アレルギー疾患対策推進協議会資料(令和6年8月21日)
議事 3令和6年度のアレルギー疾患対策について 4 免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略の中間評価について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_42484.html
◎資料4 「免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略」の推進に関する中間評価報告書概要(案)
(令和6年8月)
○10年後に目指すべきビジョン: 以下の3つの戦略の実装と国内外の産学官民連携に基づく自発的な活動によって達成を目指す→産学官民の連携と患者の参画に基づいて、免疫アレルギー疾患に対して「発症予防・重症化予防によるQOL改善」と「防ぎ得る死の根絶」 のために、「疾患活動性や生活満足度の見える化」や「病態の『見える化』に基づく層別化医療および予防的・先制的医療の実現」を通じて、ライフステージに応じて、安心して生活できる社会を構築する。


○前半5年間での主な研究成果 ↓
・戦略1「先制的医療を目指す基盤研究」:免疫細胞のトランスクリプトーム解析とゲノム情報を統合した遺伝子多型の機能カタログの作成、JAK阻害剤外用薬及びIL-31受容体Aを阻害する抗体製剤の開発、⽪膚の常在菌に対する⾃然リンパ球と⽪脂腺の寄与。
・戦略2 「効果的推進と社会構築に関する横断研究」:都道府県拠点病院を活用したアレルギー疾患の有病率調査、電子カルテ・アプリ等 を活用したリアルワールドデータ解析研究 (アドレナリン⾃己注射製剤の処方状況)。
・戦略3 「ライフステージ等に注目した重点研究」:本邦では高齢者に多いアレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)の新診断基準を確立した。 重症・難治性・治療抵抗性アレルギー患者に対する生物学的製剤治療の特性が明らかにした。

○後半5年間での課題と今後の研究戦略の方向性 ↓
・戦略1
:免疫アレルギー疾患のメカニズムの解明研究については、個々の患者に最適医療が提供されることを目標に、さらに推進する必要 がある。予防的・先制医療では、その対象等を含めて具体化する研究や、環境因子に対する新たな対処法の開発研究、神経ー炎症・免疫等の 多臓器連関の分子機構の解明研究等が必要である。
・戦略2:患者と研究者間での研究への患者・市民参画に対する共通認識を明確にする必要性がある。各地域の臨床研究基盤ネットワークは まだ構築されていない。社会実装をめざしたデジタル基盤を活用したアンメットメディカルニーズ解決に向けた研究、国際的若手研究者の育 成も十分ではない。国際研究体制の確立とアウトプットの関連を評価する研究等も必要である。
・戦略3:近年急増している木の実類アレルギーや食物アレルギーの特殊型等疾患の実態や原因は明らかでない。成人発症型や、アナフィラキシー等重症・難治性・治療抵抗性の免疫アレルギー疾患の本態解明も十分ではない。単一遺伝子変異が原因の希少免疫アレルギー疾患が明 らかになってきており、希少疾患領域と連携し、それらの病態解明研究を推進する必要がある。

○中間評価を踏まえ、今後推進すべき研究(案)↓
戦略1:本態解明 「先制的医療等を目指す免疫アレルギー の本態解明に関する基盤研究」
1-1 免疫アレルギー疾患の多様性の理解 と層別化に資する基盤研究
1-2 将来の予防的・先制的医療の実用 化を目指す研究開発
1-3 免疫アレルギー疾患における宿主 因子と外的因子の関係に着目した基盤 研究
1-4 臓器連関・異分野融合に関する免疫 アレルギー研究開発
戦略2:社会構築 「免疫アレルギー研究の効果的な推進と社 会の構築に関する横断研究」
2-1 患者・市民参画による双方向性の免疫 アレルギー研究の推進に関する研究
2-2 免疫アレルギー研究におけるアンメッ トメディカルニーズ等の調査研究開発
2-3 免疫アレルギー研究に係る臨床研究基 盤構築に関する開発研究
2-4 免疫アレルギー研究における国際連携、 人材育成に関する基盤構築研究
戦略3:疾患特性 「ライフステージ等免疫アレルギー疾患の 特性に注目した重点研究」
3-1 母子関連を含めた小児および移行期の 免疫アレルギー疾患研究
3-2 高齢者を含めた成人発症免疫アレル ギー疾患研究
3-3 重症・難治性・治療抵抗性の免疫アレ ルギー疾患研究
3-4 希少疾患と関連する免疫アレルギー疾 患研究
・戦略横断的な推進に繋がる項目
→1. 個々の患者における病態をより詳細に理解するために、最新の科学的手法を最大限に活用して免疫アレルギー研究を行うこと。 2. レジストリーやバイオバンク、国内外のネットワークを活用し持続可能な研究基盤体制を充実させていくこと。 3. 患者数が急増するアレルギー疾患やアレルギー類縁疾患の病態解明及び適切な情報提供に向けて他疾患領域との連携をしていくこと。 4. 研究成果の社会実装に向けた研究開発インフラと積極的に連携していくこと。


◎資料5 免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略の今後の議論の進め方について(案)
大丸1 中間評価や今後5年間で推進すべき研究として、研究班の提示する中間評価報告書案に追加すべき観点はないか。
大丸1 免疫アレルギー疾患研究の進捗状況や現在の課題の把握内容について、加味すべきトピックはないか。
大丸1 最終評価や新規戦略について、令和10年度に議論を行うこととしてはどうか。


◎参考資料1 アレルギー疾患対策基本法
平成二十六年法律第九十八号 アレルギー疾患対策基本法
目次 ↓

第一章 総則(第一条―第十条)
第二章 アレルギー疾患対策基本指針等(第十一条―第十三条)
第三章 基本的施策
第一節 アレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減(第十四条・第十五条)
第二節 アレルギー疾患医療の均てん化の促進等(第十六条・第十七条)
第三節 アレルギー疾患を有する者の生活の質の維持向上(第十八条)
第四節 研究の推進等(第十九条)
第五節 地方公共団体が行う基本的施策(第二十条)
第四章 アレルギー疾患対策推進協議会(第二十一条・第二十二条)
附則

第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、アレルギー疾患を有する者が多数存在すること、アレルギー疾患には急激な症状の悪化を繰り返し生じさせるものがあること、アレルギー疾患を 有する者の生活の質が著しく損なわれる場合が多いこと等アレルギー疾患が国民 生活に多大な影響を及ぼしている現状及びアレルギー疾患が生活環境に係る多様 かつ複合的な要因によって発生し、かつ、重症化することに鑑み、アレルギー疾患対策の一層の充実を図るため、アレルギー疾患対策に関し、基本理念を定め、国、 地方公共団体、医療保険者、国民、医師その他の医療関係者及び学校等の設置者又 は管理者の責務を明らかにし、並びにアレルギー疾患対策の推進に関する指針の策 定等について定めるとともに、アレルギー疾患対策の基本となる事項を定めること により、アレルギー疾患対策を総合的に推進することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「アレルギー疾患」とは、気管支ぜん息、アトピー性皮膚 炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症、食物アレルギーその他アレ ルゲンに起因する免疫反応による人の生体に有害な局所的又は全身的反応に係る 疾患であって政令で定めるものをいう。

(基本理念)
第三条 アレルギー疾患対策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。 一 アレルギー疾患が生活環境に係る多様かつ複合的な要因によって発生し、かつ 、重
  症化することに鑑み、アレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減に資す るため、第三章に定める基本的施策その他のアレルギー疾患対策に関する施策の総合的な実施により生活環境の改善を図ること。
二 アレルギー疾患を有する者が、その居住する地域にかかわらず等しく科学的知 見に基づく適切なアレルギー疾患に係る医療(以下「アレルギー疾患医療」とい う。)を受けることができるようにすること。
三 国民が、アレルギー疾患に関し、適切な情報を入手することができるとともに 、アレルギー疾患にかかった場合には、その状態及び置かれている環境に応じ、 生活の質の維持向上のための支援を受けることができるよう体制の整備がなさ れること。
四 アレルギー疾患に関する専門的、学際的又は総合的な研究を推進するとともに 、アレルギー疾患の重症化の予防、診断、治療等に係る技術の向上その他の研究 等の成果を普及し、活用し、及び発展させること。
(国の責務)
第四条 国は、前条の基本理念(次条において「基本理念」という。)にのっとり、 アレルギー疾患対策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第五条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、アレルギー疾患対策に関し、国との 連携を図りつつ、自主的かつ主体的に、その地域の特性に応じた施策を策定し、及 び実施するよう努めなければならない。
(医療保険者の責務)
第六条 医療保険者(介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第七条第七項に規定する医療保険者をいう。)は、国及び地方公共団体が講ずるアレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減に関する啓発及び知識の普及等の施策に協力するよう努めなければならない(国民の責務)
第七条 国民は、アレルギー疾患に関する正しい知識を持ち、アレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減に必要な注意を払うよう努めるとともに、アレルギー疾患を有する者について正しい理解を深めるよう努めなければならない。
(医師等の責務)
第八条 医師その他の医療関係者は、国及び地方公共団体が講ずるアレルギー疾患対策に協力し、アレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減に寄与するよう努めるとともに、アレルギー疾患を有する者の置かれている状況を深く認識し、科学的知見に基づく良質かつ適切なアレルギー疾患医療を行うよう努めなければならない。
(学校等の設置者等の責務)
第九条 学校、児童福祉施設、老人福祉施設、障害者支援施設その他自ら十分に療養 に関し必要な行為を行うことができない児童、高齢者又は障害者が居住し又は滞在する施設(以下「学校等」という。)の設置者又は管理者は、国及び地方公共団体が講ずるアレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減に関する啓発及び知識の普及等の施策に協力するよう努めるとともに、その設置し又は管理する学校等において、アレルギー疾患を有する児童、高齢者又は障害者に対し、適切な医療的、福祉的又は教育的配慮をするよう努めなければならない。
(法制上の措置等)
第十条 政府は、アレルギー疾患対策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置 その他の措置を講じなければならない。

第二章 アレルギー疾患対策基本指針等
(アレルギー疾患対策基本指針の策定等)
第十一条 厚生労働大臣は、アレルギー疾患対策の総合的な推進を図るため、アレル ギー疾患対策の推進に関する基本的な指針(以下「アレルギー疾患対策基本指針」 という。)を策定しなければならない。
2 アレルギー疾患対策基本指針は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な事項  
二 アレルギー疾患に関する啓発及び知識の普及並びにアレルギー疾患の予防の ための
施策に関する事項
三 アレルギー疾患医療を提供する体制の確保に関する事項
四 アレルギー疾患に関する調査及び研究に関する事項 五 その他アレルギー疾患対策
の推進に関する重要事項
3 厚生労働大臣は、アレルギー疾患対策基本指針を策定しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、アレルギー疾患対策推進協議会の 意見を聴くものとする。
4 厚生労働大臣は、アレルギー疾患対策基本指針を策定したときは、遅滞なく、こ れをインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。
5 厚生労働大臣は、適時に、アレルギー疾患対策基本指針に基づくアレルギー疾患 対策の効果に関する評価を行い、その結果をインターネットの利用その他適切な方 法により公表しなければならない。
6 厚生労働大臣は、アレルギー疾患医療に関する状況、アレルギー疾患を有する者 を取り巻く生活環境その他のアレルギー疾患に関する状況の変化を勘案し、及び前 項の評価を踏まえ、少なくとも五年ごとに、アレルギー疾患対策基本指針に検討を 加え、必要があると認めるときには、これを変更しなければならない。
7 第三項及び第四項の規定は、アレルギー疾患対策基本指針の変更について準用する。 (関係行政機関への要請)
第十二条 厚生労働大臣は、必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対して 、アレルギー疾患対策基本指針の策定のための資料の提出又はアレルギー疾患対策 基本指針において定められた施策であって当該行政機関の所管に係るものの実施 について、必要な要請をすることができる。
(都道府県におけるアレルギー疾患対策の推進に関する計画)
第十三条 都道府県は、アレルギー疾患対策基本指針に即するとともに、当該都道府 県におけるアレルギー疾患を有する者に対するアレルギー疾患医療の提供の状況、 生活の質の維持向上のための支援の状況等を踏まえ、当該都道府県におけるアレル ギー疾患対策の推進に関する計画を策定することができる。

第三章 基本的施策
第一節 アレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減

(知識の普及等)
第十四条 国は、生活環境がアレルギー疾患に及ぼす影響に関する啓発及び知識の普及、学校教育及び社会教育におけるアレルギー疾患の療養に関し必要な事項その他のアレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減の適切な方法に関する教育の推進その他のアレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減に関する国民の認識を深めるために必要な施策を講ずるものとする。
(生活環境の改善)
第十五条 国は、アレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減に資するよう、大気汚染の防止、森林の適正な整備、アレルギー物質を含む食品に関する表示の充実、 建築構造等の改善の推進その他の生活環境の改善を図るための措置を講ずるものとする。

第二節 アレルギー疾患医療の均てん化の促進等
(専門的な知識及び技能を有する医師その他の医療従事者の育成)
第十六条 国は、アレルギー疾患に関する学会と連携協力し、アレルギー疾患医療に携わる専門的な知識及び技能を有する医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者の育成を図るために必要な施策を講ずるものとする。
(医療機関の整備等)
第十七条 国は、アレルギー疾患を有する者がその居住する地域にかかわらず等しく そのアレルギー疾患の状態に応じた適切なアレルギー疾患医療を受けることができるよう、専門的なアレルギー疾患医療の提供等を行う医療機関の整備を図るために必要な施策を講ずるものとする。
2 国は、アレルギー疾患を有する者に対し適切なアレルギー疾患医療が提供される よう、国立研究開発法人国立成育医療研究センター、独立行政法人国立病院機構の 設置する医療機関であって厚生労働大臣が定めるもの、前項の医療機関その他の医 療機関等の間における連携協力体制の整備を図るために必要な施策を講ずるもの とする。

第三節 アレルギー疾患を有する者の生活の質の維持向上
第十八条 国は、アレルギー疾患を有する者の生活の質の維持向上が図られるよう、 アレルギー疾患を有する者に対する医療的又は福祉的援助に関する専門的な知識 及び技能を有する保健師、助産師、管理栄養士、栄養士、調理師等の育成を図るために必要な施策を講ずるものとする。
2 国は、アレルギー疾患を有する者に対しアレルギー疾患医療を適切に提供するた めの学校等、職場等と医療機関等との連携協力体制を確保すること、学校等の教員 又は職員、事業主等に対するアレルギー疾患を有する者への医療的、福祉的又は教 育的援助に関する研修の機会を確保すること、アレルギー疾患を有する者及びその 家族に対する相談体制を整備すること、アレルギー疾患を有する者についての正し い理解を深めるための教育を推進することその他のアレルギー疾患を有する者の 生活の質の維持向上のために必要な施策を講ずるものとする。

第四節 研究の推進等
第十九条 国は、アレルギー疾患の本態解明、革新的なアレルギー疾患の予防、診断 及び治療に関する方法の開発その他のアレルギー疾患の罹患率の低下並びにアレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減に資する事項についての疫学研究、基礎 研究及び臨床研究が促進され、並びにその成果が活用されるよう必要な施策を講ずるものとする。
2 国は、アレルギー疾患医療を行う上で特に必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の早期の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)の規定による製造販売の承認に資するよう、その治験が迅速かつ確実に行われる環境の整備のために必要な施策を講ずるものとする。

第五節 地方公共団体が行う基本的施策

第二十条 地方公共団体は、国の施策と相まって、当該地域の実情に応じ、第十四条 から第十八条までに規定する施策を講ずるように努めなければならない。

第四章 アレルギー疾患対策推進協議会
第二十一条 厚生労働省に、アレルギー疾患対策基本指針に関し、第十一条第三項( 同条第七項において準用する場合を含む。)に規定する事項を処理するため、アレルギー疾患対策推進協議会(次条において「協議会」という。)を置く。
第二十二条 協議会の委員は、アレルギー疾患を有する者及びその家族を代表する者、アレルギー疾患医療に従事する者並びに学識経験のある者のうちから厚生労働大臣が任命する。
2 協議会の委員は、非常勤とする。
3 前二項に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

附 則 抄
(施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令 で定める日から施行する。ただし、附則第三条の規定は、独立行政法人通則法の一 部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律(平成二十六年法律第 六十七号)の公布の日又はこの法律の公布の日のいずれか遅い日から施行する。
附 則 (平成二六年六月一三日法律第六七号) 抄
(施行期日)
第一条 この法律は、独立行政法人通則法の一部を改正する法律(平成二十六年法律 第六十六号。以下「通則法改正法」という。)の施行の日から施行する。ただし、 次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 附則第十四条第二項、第十八条及び第三十条の規定 公布の日 (処分等の効力)
第二十八条 この法律の施行前にこの法律による改正前のそれぞれの法律(これに基 づく命令を含む。)の規定によってした又はすべき処分、手続その他の行為であっ てこの法律による改正後のそれぞれの法律(これに基づく命令を含む。以下この条 において「新法令」という。)に相当の規定があるものは、法律(これに基づく政 令を含む。)に別段の定めのあるものを除き、新法令の相当の規定によってした又 はすべき処分、手続その他の行為とみなす。
(その他の経過措置の政令等への委任)
第三十条 附則第三条から前条までに定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、政令(人事院の所掌する事項については、人事院規則)で定める。


◎参考資料2 アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針
(平成二十九年三月二十一日) (厚生労働省告示第七十六号)
改正 令和 四年 三月一四日厚生労働省告示第六五号
アレルギー疾患対策基本法(平成二十六年法律第九十八号)第十一条第一項の規定に基づ き、アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針を次のように策定したので、同条第四 項の規定により告示する。


アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針
本指針におけるアレルギー疾患とは、アレルギー疾患対策基本法(平成二十六年法律第九 十八号。以下「法」という。)に定められており、気管支ぜん息、アトピー性皮膚炎、アレ ルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症、食物アレルギーその他アレルゲンに起因する 免疫反応による人の生体に有害な局所的又は全身的反応に係る疾患であって政令で定めるものである。 医学的にアレルギー疾患とは、粘膜や皮膚の慢性炎症を起こし、多くの患者でアレルゲンに対する特異的IgE抗体を有する、多様かつ複合的要因を有する疾患のこととされている。 気管支ぜん息は、気道炎症を主な病態とし、繰り返し起こる咳嗽(がいそう)、喘鳴(ぜんめい)、呼吸困難等、可逆 性の気道狭窄(きようさく)と気道過敏性の亢進に起因する症状を呈するとされている。アトピー性皮膚炎は、皮膚バリア機能の低下による易刺激性とアレルギー炎症が主な病態であり、強い掻痒(そうよう)感を伴う湿疹を呈するとされている。アレルギー性鼻炎は、アレルゲン侵入後にくしゃみ、 鼻漏、鼻閉等を呈するとされており、アレルギー性結膜炎は、流涙、目の掻痒感と充血、 眼瞼浮腫等を呈するとされている。花粉症は、アレルギー性鼻炎のうち花粉抗原による季節性アレルギー性鼻炎を指し、アレルギー性結膜炎を高頻度に合併するとされている。特にスギ花粉症の有病率は、アレルギー疾患の中で最も高く、全年齢層において増加の一途をたどっている。食物アレルギーでは、抗原食物の摂取等により、皮膚症状・呼吸器症状・消化器 症状等が引き起こされ、時にアナフィラキシーと呼ばれる複数臓器に及ぶ全身性の重篤な過敏反応を起こすとされている。これらアレルギー疾患は、一度発症すると、複数のアレルギ ー疾患を合併し得ること、新たなアレルギー疾患を発症し得ること等の特徴(アレルギーマ ーチ)を有するため、これらの特徴を考慮し、発症予防も勘案した診療が必要になる。
我が国では、依然としてアレルギー疾患を有する者の増加が見られ、現在は乳幼児から高齢者まで国民の約二人に一人が何らかのアレルギー疾患を有していると言われている。アレルギー疾患を有する者は、しばしば発症、増悪、軽快、寛解、再燃を不定期に繰り返し、症状の悪化や治療のための通院や入院のため、休園、休学、休職等を余儀なくされ、時には成長の各段階で過ごす学校や職場等において、適切な理解、支援が得られず、長期にわたり生活の質を著しく損なうことがある。また、アレルギー疾患の中には、アナフィラキシーショックなど、突然症状が増悪することにより、致死的な転帰をたどる例もある。 近年、医療の進歩に伴い、科学的知見に基づく医療を受けることによる症状のコントロー ルがおおむね可能となってきているが、全ての患者がその恩恵を受けているわけではないという現状も指摘されており、診療・管理ガイドラインにのっとった医療のさらなる普及が望まれている。 このような状況を改善し、我が国のアレルギー疾患対策の一層の充実を図るため、平成二十六年六月に法が公布された。国、地方公共団体、アレルギー疾患を有する者やその家族及び関係者は、法に定められた基本理念や責務等にのっとり、共に連携しながらアレルギー疾患対策に主体的に参画し、突然症状が増悪することにより亡くなる等の事態を未然に防ぐとともに、アレルギー疾患を有する者の生活の質の維持向上に取り組むことが重要である。 アレルギー疾患対策は、生活の仕方や生活環境の改善、アレルギー疾患に係る医療(以下「アレルギー疾患医療」という。)の質の向上及び提供体制の整備、国民がアレルギー疾患に関し適切な情報を入手できる体制の整備、生活の質の維持向上のための支援を受けること ができる体制の整備、アレルギー疾患に係る研究の推進並びに研究等の成果を普及し、活用し、発展させることを基本理念として行われなければならない。 本指針は、この基本理念に基づき、アレルギー疾患を有する者が安心して生活できる社会 の構築を目指し、国、地方公共団体が取り組むべき方向性を示すことにより、アレルギー疾 患対策の総合的な推進を図ることを目的として法第十一条第一項の規定に基づき策定する ものである。

第一 アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な事項
(1) 基本的な考え方→ア〜エまで。
(2) 国、地方公共団体、医療保険者、国民、医師その他の医療関係者及び学校等の設置者
又は管理者の責務→ア〜カまで。
第二 アレルギー疾患に関する啓発及び知識の普及並びにアレルギー疾患の予防のための 施策に関する事項
(1) 今後の取組の方針について→国は、国民がアレルゲンの除去や回避、アレルゲン免疫療法を含めた重症化予防の方法、症状の軽減の方法等、科学的根拠に基づいたアレルギー 疾患医療に関する正しい知識を習得できるよう、国民に広く周知すること並びにアレル ギー疾患の発症及び重症化に影響する様々な生活環境を改善するための取組を進める。
(2) 今後取組が必要な事項について→ア〜ケまで。
第三 アレルギー疾患医療を提供する体制の確保に関する事項
(1) 今後の取組の方針について→アレルギー疾患医療の専門的な知識及び技能を有する医師、歯科医師、 薬剤師、看護師、臨床検査技師、管理栄養士その他の医療従事者の知識や技能の向上に 資する施策を通じ、アレルギー疾患医療に携わる医療従事者全体
   の知識の普及及び技能 の向上を図る。
(2) 今後取組が必要な事項について→ア〜ケまで。国の役割・推進。
第四 アレルギー疾患に関する調査及び研究に関する事項
(1) 今後の取組の方針について→アレルギー疾患は、最新の科学的知見に基づいた治療を行うことで、症状のコントロールがある程度可能であるが、診療科が、内科、皮膚科、耳鼻咽喉科、眼科、小児科等、 多岐にわたることや、アレルギー疾患に携わる専門的な知識及び技能を有する医師の偏在等により、その周知、普及及び実践が進んでいない。最新の科学的知見に基づくアレ ルギー疾患医療の周知、普及及び実践の程度について、適切な方法で継続的に現状を把握し、それに基づいた対策を行うことで、国民が享受するアレルギー疾患医療全体の質の向上を図る。
(2) 今後取組が必要な事項についてア〜エまで。エ 国は、「免疫アレルギー疾患研究10か年戦略」に基づき、疫学研究、基礎研究、 治療開発及び臨床研究を推進する。
第五 その他アレルギー疾患対策の推進に関する重要事項
(1) アレルギー疾患を有する者の生活の質の維持向上のための施策に関する事項→ア〜
ケまで。ケ 国は、関係学会等と連携し、アレルギー疾患を有する者を含めた国民が、アレルギー疾患を有する者への正しい理解のための適切な情報にいつでも容易にアクセスで きるようウェブサイト等の充実を行う。
(2) 地域の実情に応じたアレルギー疾患対策の推進
(3) 災害時の対応
(4) 必要な財政措置の実施と予算の効率化及び重点化
(5) アレルギー疾患対策基本指針の見直し及び定期報告→本指針は、アレルギー疾患を巡る現状を踏まえ、アレルギー疾患対策を総合的に推進 するために基本となる事項について定めたものである。国は、国及び地方公共団体等が 実施する取組について定期的に調査及び評価を行い、アレルギー疾患に関する状況変化を的確に捉えた上で、厚生労働大臣が必要であると認める場合には、策定から五年を経 過する前であっても、本指針について検討を加え、変更する。 なお、アレルギー疾患対策推進協議会については、関係府省庁を交え、引き続き定期 的に開催するものとし、本指針に定められた取組の進捗の確認等、アレルギー疾患対策 の更なる推進のための検討の場として機能させるものとする。


◎参考資料3 アレルギー疾患対策推進協議会令  
平成二十七年政令第四百一号   アレルギー疾患対策推進協議会令
内閣は、アレルギー疾患対策基本法(平成二十六年法律第九十八号)第二十二条第 三項の規定に基づき、この政令を制定する。

(組織)
第一条 アレルギー疾患対策推進協議会(以下「協議会」)は、委員二十人 以内で組織する。 (委員の任期)
第二条 協議会の委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者 の残任期間とする。 2 委員は、再任されることができる。 (会長) 第三条 協議会に、会長を置き、委員の互選により選任する。 2 会長は、会務を総理し、協議会を代表する。 3 会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する 。
(専門委員)
第四条 協議会に、専門の事項を調査させるため必要があるときは、専門委員を置く ことができる。 2 専門委員は、当該専門の事項に関し学識経験のある者のうちから、厚生労働大臣 が任命する。 3 専門委員は、その者の任命に係る当該専門の事項に関する調査が終了したときは 、解任されるものとする。 4 専門委員は、非常勤とする。
(議事)
第五条 協議会は、委員の過半数が出席しなければ、会議を開き、議決することができない。 2 協議会の議事は出席した委員の過半数で決し可否同数のときは会長の決するところによる。
(庶務)
第六条 協議会の庶務は、厚生労働省健康・生活衛生局がん・疾病対策課において処理する。 (協議会の運営)
第七条 この政令に定めるもののほか、議事の手続その他協議会の運営に関し必要な 事項は、会長が協議会に諮って定める。
附 則 この政令は、アレルギー疾患対策基本法の施行の日(平成二十七年十二月二十五日 )から施行する。
附 則 (令和五年八月三〇日政令第二六三号) 抄
施行期日) 第一条 この政令は、令和五年九月一日から施行する。


◎参考資料4 アレルギー疾患対策推進協議会運営規程
アレルギー疾患対策推進協議会運営規程
(平成28年2月3日アレルギー疾患対策推進協議会決定)
アレルギー疾患対策推進協議会令(平成 27 年政令第四○一号)第七条の規定に基づ き、この規定を制定する。

(会議)
第一条 アレルギー疾患対策推進協議会は、会長が招集する。 2 会長は協議会を招集しようとするときは、あらかじめ、期日、場所及び議題を委 員及び議事に関係のある専門委員に通知するものとする。 3 会長は議長として協議会の議事を整理する。
(会議の公開)
第二条 協議会の会議は、公開とする。ただし、会長は、公開することにより公平か つ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると認めるときその他正当な理由があると認めるときは、会議を非公開とすることができる。 2 会長は、会議における秩序の維持のため、傍聴人の退場を命ずるなど必要な措置 をとることができる
(議事録)
第三条 協議会における議事は、次の事項を含め、議事録に記載するものとする。 一 会議の日時及び場所 二 出席した委員及び専門委員の氏名 三 議事となった事項 2 議事録は、公開。ただし、会長は、公開することにより公平かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると認めるときその他正当な理由があると認めるときは、議事録の全部又は一部を非公開とすることができる。3 前項の規定により議事録の全部又は一部を非公開とする場合には、会長は非公開とした部分について議事要旨を作成しこれを公開するものとする。 (委員会の設置)
第四条 会長は、必要があると認めるときは、協議会に諮って委員会を設置すること ができる。 2 委員会に属すべき委員及び専門委員は、会長が指名する。 3 委員会に委員長を置き、当該委員会に属する委員のうちから、会長が指名する。 4 委員長は、当該委員会の事務を掌理する。 5 委員長に事故があるときは、当該委員会に属する委員のうちから委員長があらか じめ指名する者が、その職務を代理する。
(雑則)
第五条 この規定に定めるもののほか、協議会又は委員会の運営に関し必要な事項は、 それぞれ会長又は委員長が定める。

次回も続き「参考資料5 免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略」からです。

第18回アレルギー疾患対策推進協議会資料 [2024年10月16日(Wed)]
第18回アレルギー疾患対策推進協議会資料(令和6年8月21日)
議事 3令和6年度のアレルギー疾患対策について 4 免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略の中間評価について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_42484.html
◎資料3 「免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略」の推進に関する中間評価報告書(案)
令和 6 年8月 厚生労働行政推進調査事業費補助金 免疫・アレルギー疾患政策研究事業 「免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略の進捗評価と課題抽出、体制強化に関する研究」研究班

1. はじめに
→我が国において、気管支ぜん息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症、食物アレルギーなどのアレルギー疾患を有する者は増加の一途をたどっている。 アレルギー疾患はしばしば発症や増悪を繰り返し、症状の悪化や治療のために通院や入院など生活の質を著しく損なうだけでなく、時にはアナフィラキシーショックなど致死的な転帰をたどることもあることから、国民の健康と生活にとって重大な問題である。 このような背景から我が国のアレルギー疾患対策の一層の充実を図るために平成 26 年にアレルギ ー疾患対策基本法が成立・公布され、更に総合的な推進を図るために平成 29 年に「アレルギー疾患 対策の推進に関する基本的な指針」(以下、基本指針)が厚生労働大臣により策定され、令和4年に現状を踏まえた一部改正がなされた。 基本指針において、アレルギー疾患の発症や増悪にはアレルゲンの曝露などの環境的な因子が関連していることから、我が国としてのアレルギー疾患に対する環境や生活への取り組みが必要であることに加え、疾患対策としてアレルギー疾患に係る根本的治療の開発や普及、また我が国のアレルギー 疾患の現状を把握する疫学研究の継続的な推進のために患者の視点に立った研究の長期的かつ戦略的な推進が必要とされてきた。 また、リウマチ性疾患においては、平成 30 年 11 月に報告された「リウマチ等対策委員会報告書」の中で、今後のリウマチ対策の全体目標として「リウマチ患者の疾患活動性を適切な治療によりコン トロールし、長期的な QOL を最大限まで改善し、継続的に職業生活や学校生活を含む様々な社会生活への参加を可能とする」とされている。この目標を達成するために、「医療の提供等」、「情報提供・ 相談体制」、「研究開発の推進」について方向性を示し、報告書に基づいた今後の課題に対して取り組んでいるところである。 これらの諸問題の解決に向け「免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略」(以下、10 か年戦略)が平成 31 年に策定され、免疫アレルギー疾患研究を推進してきた。 10 か年戦略では「本態解明」「社会の構築」「疾患特性」の 3 つの戦略を柱に、「発症予防・重症化予防による QOL 改善」と「防ぎ得る死の根絶」のために、「疾患活動性や生活満足度の見える化」 や「病態の「見える化」に基づく層別化医療2及び予防的・先制的医療3の実現」を通じて、ライフス テージに応じて、安心して生活できる社会を構築」することを目指すこととした。 そしてその評価体制として、「各研究項目において、10 年という長期間の中で常に目標設定を明確に行い、その進捗状況や、国内外の免疫アレルギー研究の全体像や、患者をはじめとする国民のニーズ等を正確に継続的に把握し、10 か年戦略の中間評価と見直しを行う」とされていることから、本研究班では我が国の免疫アレルギー疾患研究の進捗状況や現在の課題を把握するとともに、今後重点的に取り組むべき研究について議論し、今後の方向性を示すこととした。

2. 各戦略の成果と後半期間に取り組むべき研究について
(1) 戦略1:先制的医療等を目指す免疫アレルギーの本態解明に関する基盤研究
目標:「革新的な医療技術に基づく層別化医療および予防的・先制的医療」の実現に向けて、 基盤となる基礎研究・疫学研究・臨床研究を推進することで、免疫アレルギー疾患の根源的 な本態解明を目指す。
戦略 1-1: 免疫アレルギー疾患の多様性の理解と層別化に資する基盤研究
背景:免疫アレルギー疾患は、多様かつ複合的要因を有する疾患であり、患者によって、治療 に対する反応性や副作用の発現に違いがあることが、これら疾患の診療や研究を困難にして いる。そのため、遺伝学的・分子生物学的な解析を含めた科学的、かつ詳細な病態解析に基づ いて、患者を特定のグループに分け(層別化)、それぞれのグループに最適な医療を導入する ことで、患者負担の軽減と診療の効率化を進めていく必要がある。そのためには、基盤となる基礎研究・疫学研究・臨床研究を推進することで、免疫アレルギー疾患の根源的な本態解 明を目指す必要がある。
戦略策定後の成果:免疫アレルギー疾患領域では患者遺伝学的要因(ゲノム情報)の解析に、それぞれの疾患に関連する組織や細胞での遺伝子発現情報や環境情報(皮膚の細菌叢等)を 組み合わせた病態解明が行われ、多くの成果が得られた。また、新型コロナウイルス感染症 における血管炎を誘導する仕組みや重症化を予測するマーカーも同定された。
現在の課題:一方で、多様な病態をとる免疫アレルギー疾患では、疾患の本態メカニズムの 解明は未だ十分ではない。例えば、分子標的薬等の新たな治療薬の選択肢が増えたのに対し、 どの治療が個々の患者の病態に合った最適な治療かを判断し、効果の乏しい治療を選ばずに 治療選択ができるようになるための知見が望まれる。1 細胞レベルでの解析 (シングルセル解析 ) や空間的遺伝子発現解析6等の最新技術を用いることで、病態の根本原因となる細胞等を明らかにすることが可能になりつつあるが、これらを活用した研究は未だ少ない。
今後推進すべき研究:免疫アレルギー疾患の本態解明の研究を推進し、根治療法の発展及び 新規開発を目指し、基礎と臨床が両輪となり研究を推進する。● 最新の解析技術を用い、適宜既存の動物モデル等を活用した、個々の疾患病態を詳細に理解する研究 ● 大部分を占める軽症から中等症症例に対する最適医療の推進に資する研究● 既存治療で改善しない症例についての病態解明研究 ● AI・DX を活用した診断補助ツールの開発及び研究の推進
戦略 1-2 将来の予防的・先制的医療の実用化を目指す研究開発
背景:免疫アレルギー疾患は増悪、軽快、寛解、再燃を繰り返し、長期にわたり生活の質が著 しく損なわれることがある。また、一度発症すると、複数のアレルギー疾患を次々に発症し 得る(アレルギーマーチ)等の特徴を有する。そのため、生活の質の向上や、医療経済的な観 点からも、アレルギー疾患の発症を予防する予防的・先制的医療を実現化していく必要がある。 戦略策定後の成果:乳児期における早期の治療介入が、その後のアレルギー疾患を一部予防 できる可能性が示された。
現在の課題:一方で、標準的治療、及び早期介入をもってしても、発症を予防できない患者が 一定数存在することも明らかになりつつある。これら標準的治療、及び早期介入でも発症予 防できない患者に関する科学的知見を集積し、それらに基づき、どのような患者に、どの治療を選択するか、等の予防的・先制的医療の戦略を具体化していく必要がある。遺伝子発現情報(トランスクリプトミクス)により、分子病態による層別化(エンドタイプ)が進み、 それらが疾患重症度や増悪傾向、治療応答性に関連することが明らかとなっている。個別化 医療を提供するため、トランスクリプトミクス等のオミックス解析の臨床への活用が期待さ れている。
今後推進すべき研究:免疫アレルギー疾患の発症を予防する予防的・先制的医療を実現化し ていくため、下記の研究を推進する。 ● 最新の科学的手法9を用いて先制医療の対象を明らかにする研究 ● 低侵襲に取得できる細胞/組織等を用いた研究
戦略 1-3 免疫アレルギー疾患における宿主因子と外的因子の関係に着目した基盤研究
背景:免疫アレルギー疾患では、多様かつ複合的要因が関与していると考えられている。特 に、患者の周囲の自然環境及び住居内の環境は重要であり、そこでの生活の仕方並びに周囲 の者の理解に基づく環境の管理等に大きく影響される。このように、免疫アレルギー疾患は 外的因子と宿主因子が複雑にその病態に関与していることが想定されているが、現時点にお いてその本態解明は十分ではない。
戦略策定後の成果:皮膚に常在する菌から産生される物質が皮膚の免疫応答をうまく調節していること、またアトピー性皮膚炎では黄色ブドウ球菌の割合が増加し、正常細菌叢が破綻 して皮膚炎の増悪につながることが明らかとなってきた。宿主因子と外的因子の関係に着目 した基盤研究の推進は一定の効果を得ていると考えられる。 現在の課題:一方で、新たな外的因子の同定や対処方法を検討していく必要もある。環境モ ニタリングと適切な環境整備を、免疫アレルギー疾患の予防法や治療法につなげ、普及させ るためには、食品・飲料・化粧品・住居や寝具・家電・ヘルスケア、海洋・森林・宇宙を含む 自然環境等の他領域との有機的な連携が不可欠であるが十分ではない。
今後推進すべき研究:多様かつ複合的要因の関与する免疫アレルギー疾患の病態解明におい て、下記の研究を推進する。 ● アレルギーに関わる環境の整備につながる研究及び他領域との連携研究 ● 新規外的因子の同定や対処方法の研究
戦略 1-4: 臓器連関・異分野融合に関する免疫アレルギー研究開発
背景:アレルギー疾患は全身的反応を起こしうる疾患で、内科、皮膚科、耳鼻咽喉科、眼科、 小児科など多岐にわたる診療科が関与する臓器横断的な疾患である。さらに、その発症及び 重症化には多様かつ複合的な要因を有する。このようなアレルギー疾患特有の性質に鑑み、 臓器間を連関させるメカニズムの解明や、異分野融合に関する研究開発が不可欠である。 戦略策定後の成果:前述のアトピー性皮膚炎等では異分野融合が進み、新たな病態解明のフ レームワークが進みつつある。また、新型コロナウイルス感染症のパンデミックという国家 的課題が生じた中で、免疫アレルギーの研究アプローチにより、肺病変が重症化するメカニ ズムが解明されるとともに、新たな重症化判定及び予測マーカーが同定された。これら臓器 連関・異分野融合研究の推進には一定の効果が得られている。
現在の課題:一方で、その成果は限定的であるため、推進方法の革新も望まれている。得られ た成果を迅速に社会実装11するには、意思決定プロセスが迅速で柔軟なスタートアップ12と連 携することも有用であるが、日本の免疫アレルギー領域では、民間会社のスタートアップ投 資額は、海外と比較して極めて少なく (国籍別に比較すると概ね米国:欧州:日本=20:6:1【免疫アレルギー疾患対策に関する研究基盤及び評価基盤の構築_令和 4 年度総括研究報告書】より)、ヘルスケアアプリ・疾患横断型等への投資に偏っている。また、基礎研究から社会実 装まで、異分野融合に関する研究も少ない。 今後推進すべき研究:臓器連関・異分野融合研究は引き続き有望な戦略項目であることを鑑 み、以下の研究を推進する。 ● 炎症・免疫や神経等、相互に影響する新たな分子機構の解明研究 ● 多元的データを AI 等の活用を通じて、治療標的の創出、治療の高精度化を目指す研究 ●工学、化学、環境学研究等と連携した研究●得られた成果の社会実装を目指す開発研究

(2) 戦略 2: 免疫アレルギー研究の効果的な推進と社会の構築に関する横断研究
目標
:国民一人一人の貢献を重要視し、国内外の産官学民のあらゆる力を結集して国際的な 研究開発を進められる仕組み作りを行い、かつ患者を含む国民が参画する研究成果の社会へ の効果的な還元を目指す。
戦略 2-1: 患者・市民参画による双方向性の免疫アレルギー研究の推進に関する研究
背景
:患者・市民が臨床試験等に主体的に参画する上で何が必要なのか、検討を行うとともに、疾患の経過、治療効果に関する患者の全国調査や臨床検体の収集を行い、介入を伴う臨床試験等のデザイン、実施、報告書作成に対して、患者・市民の参加を進める必要があるとされる。こうした経験を通じて、患者・市民の理解が深まり、より双方向性の研究推進が可能となる。
戦略策定後の成果:これまで、患者・市民参画によるスマートフォンアプリケーションを
用いたデータ基盤の開発、運用が、花粉症やアトピー性皮膚炎の領域で進められ、これまで見 落とされてきた実社会・実臨床におけるアンメットニーズを抽出し、課題解決を図る研究が推進されている。また、2018 及び 2022 年に日本医療研究開発機構 (AMED) が、がんおよび難治性疾患の患者団体、研究者を対象として行った臨床研究等における患者・市民参画に関する動向調査との比較検討の結果、アレルギー領域における患者・市民参画(PPI)の現状 や課題が明らかになりつつある。
現在の課題:患者側からは、研究の理解を深める取り組みのニーズが、研究者側からは、患者 会との接点作りの方法や、情報や研究についてどのような協力が行えるのか事例集等のニー ズ、及び患者と研究者間の PPI の共通認識を明確にする必要性が明らかとなってきている。 今後推進すべき研究:免疫アレルギー疾患は有症者が多いため、PPI を実践するには適した 研究領域である。また、多くの患者会が存在し、それぞれの立場でより良い医療を患者が享 受できるような貢献をしている。以下のような取り組みの継続により、患者本人及び家族が 疾患をより理解する土壌が醸成されていくと期待される。 ●患者・研究者・市民への効果的な情報発信を推進し PPI の共通認識の醸成に資する研究 ●患者(会)を含む研究協力体制の構築、事例集等の蓄積を行う研究
戦略 2-2: 免疫アレルギー研究におけるアンメットメディカルニーズ等の調査研究開発
背景
:多岐に渡る免疫アレルギー疾患について科学的な知見に基づく適切な情報を入手でき る体制を整備することや正しい知見に基づいた情報提供等を通じ、生活の質の維持向上のた めの支援が必要である。また、医療に求められるニーズだけではなく、社会に対してのニーズ等の収集・評価も行う必要があり、そのためには、国民の理解と参画に基づいて疫学研究 が実施され、遺伝学的要因・環境要因に関する情報と、患者ニーズの両者を、包括的に調査・ 評価を行い、その上で疾患活動性や生活満足度を「見える化」する等により、患者ニーズを充足するために重要な基礎研究及び臨床研究を横断的に実施する必要がある。その研究成果を 社会実装することで、患者満足度の高い医療提供を可能とし、職業生活、学校生活等を含め 安心して生活できる社会を構築していくことが必要となる。 戦略策定後の成果:リアルワールドデータ(RWD)やスマートフォンアプリケーションを 用いたデジタルコホート研究によるデータ収集によるアンメットニーズの「見える化」やア ンメットニーズ調査を踏まえつつ科学的知見に基づいた情報提供を行う等の研究が行われて きた。デジタル基盤を用いることで、これまで可視化できていなかった患者実態が明らかと なり、特に花粉症では、眼と鼻両方に症状のある患者は、より自覚症状が強く多様な特徴を 持つことが明らかとなった。
現在の課題:RWD を使用した研究の論文が出始めているものの、十分ではない。また、免疫 アレルギー疾患患者のニーズは技術の進歩や治療の変化により、時々刻々と変化するが、そ れらに対応可能なアンメットニーズ探索の(妥当性評価も含む)基盤構築が確立されていな い。調査対象となった患者のみに限らない、国民のアンメットニーズを把握し、多様性の理 解を深め、さらに AI や DX も活用し個々に最適な医療の提供を目指す必要がある。
今後推進すべき研究: ● アンメットニーズ解決に資する、デジタル基盤を活用した社会実装をめざす研究 ● 免疫アレルギー疾患におけるアンメットニーズに対する縦断かつ横断的な調査基盤の構 築を行う研究 ● NDB16や PMDA17、NHO18、ナショナルセンター等、多様なデータベースを活用したアレ ルギー診療の実態調査研究
戦略 2-3: 免疫アレルギー研究に係る臨床研究基盤構築に関する開発研究
背景
:アレルギー疾患の医療提供体制を整備するために、都道府県アレルギー疾患医療拠点 病院(以下、都道府県拠点病院)が設置され、現在 47 都道府県 78 病院が各都道府県によって選定されている。都道府県拠点病院の役割としては重症患者の診療だけではなく、人材育 成、情報提供に加え、国が長期的かつ戦略的に推進する全国的な疫学研究、臨床研究等に協 力することが求められている。また、免疫アレルギー疾患は多岐にわたるため、各疾患に関 連した学会、中心拠点病院ならびに都道府県拠点病院等が連携し、大規模な臨床研究などの構築を目指す必要がある。
戦略策定後の成果:これまでに都道府県拠点病院を活用し、本邦において初めて全年齢の各 アレルギー疾患の有病率を調査する疫学研究が実施された。今後同手法にて継続的に調査をしていくことで、本邦におけるアレルギー疾患の有病率の変化を把握することが可能となる ことが見込まれる。また、免疫アレルギー疾患に関連した学会が連携したタスクフォースを 形成し、免疫アレルギー疾患における国際連携・人材育成を目指した基盤構築を行っている。
現在の課題:拠点病院は各都道府県に指定されたが、拠点病院を中心とした各地域の臨床研究基盤ネットワークはまだ構築されていない。また、臨床研究を遂行するための CRC 等からなる支援基盤は脆弱であり、このような研究ネットワークを構築し維持するための包括的な仕組み作りが進んでいない。免疫アレルギー疾患の特徴である罹患者数の多さ・軽症から重 症まで多岐にわたる患者を包括した研究体制が確立されていない。
今後推進すべき研究: ● 全国の、研究協力可能な患者・医療機関と繋がりやすい、診療ネットワークを活用した研 究 ● 拠点病院等を活用したアレルギー疾患有病率の継続的な疫学調査 ● バイオバンク等の研究資源を効果的に活用するための臨床研究基盤構築に資する研究
戦略 2-4: 免疫アレルギー研究における国際連携、人材育成に関する基盤構築研究
背景:免疫アレルギー疾患医療の課題は、主たる診療科である内科、皮膚科、耳鼻咽喉科、眼 科、小児科だけでなく、検査や治療の過程でアナフィラキシー等のアレルギー疾患を発症す る患者に接する診療科においても存在する。さらに医師、歯科医師、薬剤師、看護師、臨床検 査技師、管理栄養士その他の多職種が免疫アレルギー疾患医療に携わることから、最新の科 学的知見に基づく適切な医療に関する情報の提供、免疫アレルギー疾患医療に関する研究及 び専門的知識と技術を有する医療従事者の育成を推進する必要がある。 戦略策定後の成果:診療科・職種横断的な遠隔研修プログラムによるアレルギー診療教育の 均てん化への有用性が示唆されている。また、海外の日本人研究者のネットワークとの連携 のもと、国際連携に向けた国外日本人研究者の優れた研究成果の収集が開始された。 AMED 等で免疫アレルギー領域の若手研究者を公募対象とした研究実績が増えてきており、今後の 発展が期待される。 現在の課題:一方で、現状では国外の研究者と連携して国際競争資金を獲得し研究を遂行し ている研究者は少ない。免疫アレルギー研究、診療を担う次世代の若手育成、ダイバーシテ ィの要素が少ない。 今後推進すべき研究:免疫アレルギー疾患に携わる医療人ならびに若手研究者の持続可能な 育成基盤の確立にむけて、学会の垣根を超えた連携体制を構築し、下記の研究を推進する。 ●国際的若手研究者の育成基盤及び研究体制の確立と、それらを活用した研究 ●継続的な横断的アレルギー診療教育・リカレント教育の有効性を実証する研究 ●免疫アレルギー疾患領域における国際共同研究の推進

(3) 戦略3: ライフステージ等免疫アレルギー疾患の特性に注目した重点研究
目標:ライフステージなどの疾患特性に応じた医療の最適化や、一部の重症免疫アレルギー疾患における「防ぎ得る死」をゼロにするために、各疾患の特性に基づく予防法や治療法を、 広く社会に普及させることを目指す。

戦略 3-1: 母子関連を含めた小児および移行期の免疫アレルギー疾患研究
背景
:アレルギー疾患は一度発症すると、新たなアレルギー疾患を発症しうる特徴を有し
ており、母子関連を含めた小児期からの発症予防が重要である。また、重症化の予防が必要で あり、研究等の成果を普及し、活用し、および発展させることが必要である。これらを踏まえてコホート研究、病態解明研究、前向き介入研究20の推進と、研究成果については教育資材等 を開発して社会全体に普及するなどの方策が必要である。
戦略策定後の成果:乳児期からアレルギー疾患への積極的な治療介入が新たなアレルギー疾患の発症予防につながる可能性が報告された。また食物アレルギーや若年性特発性関節炎の 診療においては、小児と成人の狭間となる移行期の問題も踏まえて、国民に提供される診療 の均てん化を目指した診療指針が策定された。
現在の課題:発症予防に対する一定の成果が得られているものの、母体情報を含めて遺伝学的要因及び環境要因を統合的に解析して、さらなる免疫アレルギー疾患の有症率低下を目指 した研究が求められている。また、移行期(学童期以降)に関連する病態、現在の課題についての研究は乏しい。移行期の管理・治療法が確立していない疾患については指針の策定が望まれる。更に、木の実類アレルギーや食物アレルギーの特殊型等、近年急増している疾患の実態調査や原因究明に資する研究は少ない。
今後推進すべき研究: ● 急増する疾患の実態把握及び病態解明研究 ● 母体情報、遺伝学的要因及び環境要因を統合的に解析した病態解明研究 ● 科学的根拠に基づいた情報提供と、それらが有症率に及ぼす影響に関する調査研究 ● 小児期から成人期までシームレスな診療の指針策定に資する研究
戦略 3-2: 高齢者を含めた成人発症免疫アレルギー疾患研究
背景
:我が国では、依然としてアレルギー疾患を有する者の増加が見られている。特に成人 発症の免疫アレルギー疾患は自然寛解することが稀である。また、突然症状が増悪すること により、致死的転帰をたどる例もある。そのため、これらの免疫アレルギー疾患に係る研究 の推進並びに研究等の成果を普及し、活用し、発展させることが必要である。
戦略策定後の成果:診断基準の画一化や診療ガイドラインの策定などを通じて、薬剤アレルギー、成人食物アレルギー、真菌関連アレルギー性気道疾患、関節リウマチと多岐にわたる 成人発症免疫アレルギー疾患医療の質の向上が進められている。
現在の課題:加齢や老化に関する研究は国内外で推進されているものの、成人発症アレルギー疾患を包括的に解析した検討は、国内外を問わず少なく、今なお成人発症免疫アレルギー疾患の本態解明は十分ではない。また、診療・管理ガイドラインの有効性等、未だに明らかに なっていないことが多い点も問題であり、引き続き良質なエビデンスの蓄積が必要である。 またアレルギーと病態が関連していると考えられる類縁疾患も増加傾向にあるが、その病態 解明は十分ではない。
今後推進すべき研究:免疫アレルギー疾患の加齢に伴う特性変化に応じた医療の開発および 最適化を目指して、以下の研究を推進する。 ● 免疫学的老化や加齢性の疾患特性変化のメカニズムを解明する研究 ● 年齢層毎の予防・診断・治療戦略の構築を推進する研究 ● 年齢特性に応じた医療等の実臨床への展開とその有効性を検証する研究
戦略 3-3: 重症・難治性・治療抵抗性21の免疫アレルギー疾患研究
背景
:免疫アレルギー疾患は多様かつ複合的な要因を有する疾患であり、時に全身性の重篤 な症状をきたす。重症・難治性・治療抵抗性の免疫アレルギー疾患は、患者本人や家族にとり、社会に支障をきたすこともあることから、それらの予防、診断及び治療等に係る技術の向上その他の研究等の成果を普及し、活用し、並びに発展させることが重要である。
戦略策定後の成果:食物アレルギー患者では好塩基球が全身性アナフィラキシー誘導に関与 していることが報告された。重症・難治性・治療抵抗性の病態には各種生物学的製剤が臨床 応用され、例えば、重症気管支ぜん息では生物学的製剤の有効性を予測する研究が進められ ている。疾患の発症と重症化の要因、診療・管理ガイドラインの有効性及び薬剤の長期投与の効果並びに副作用等については明らかになっていないことが多いが、動物モデルを用いた抗体製剤中止後のアレルギー再燃の原因解明をすすめる研究が行われている。
現在の課題:いまだに本態解明は十分ではなく、基礎研究の成果が臨床応用されるまでに至 っていない。生活環境に関わる多様で複合的な要因が、発症及び重症化に関わっていること がその原因の特定を困難にしている。また、重症・難治性の疾患が患者の日常生活や長期予 後に与える影響についても明らかになっていない。
今後推進すべき研究: ● 免疫学的基礎研究による重症・難治性・治療抵抗性の病態解明 ● 重症・難治性・治療抵抗性の免疫アレルギー疾患が各ライフステージに与える影響等の評 価 ● 本邦でのリアルワールドにおけるデータベース登録,継続観察研究 ● 分子標的薬がもたらす長期的な影響を明らかにする研究
戦略 3-4: 希少疾患と関連する免疫アレルギー疾患研究
背景
:免疫アレルギー疾患は国民の生活に多大な影響を及ぼしているが、現時点においても 本態解明は十分ではない。免疫アレルギー疾患に起因する死亡者数を減少させるため、本態 解明の研究を推進し根治療法の発展及び新規開発を目指す必要がある。免疫アレルギー疾患の中にも希少疾患に該当する疾患が存在することが知られており、中でも単一遺伝子変異に起因して免疫アレルギー疾患症状を呈するものを対象として、その遺伝子や病態の解析をすることによって、免疫アレルギー疾患の治療対象となる標的分子が判明する可能性がある。
戦略策定後の成果:高度な免疫不全を伴わない重症アレルギー疾患患者の一部には、単一遺 伝子変異が原因となり症状が引き起こされている可能性が明らかにされた。また、難治性の アレルギー炎症を誘導する新たな細胞群やパスウェイも明らかになりつつある。
現在の課題:一方で、これらの取り組みはアレルギー領域の研究者だけで推進するのは困難である。2015-2018 年頃には AMED を中心として、希少疾患領域との連携の取り組みが行わ れていたが、継続性が課題となっている。特に、診断が困難な患者に対する網羅的遺伝学的解析結果と、Human Phenotype Ontology (HPO) 形式に標準化されたフェノタイプ情報の 国内外でのデータシェアリングによって診断を進める未診断疾患イニシアチブ (IRUD)25や、 原因と考えられる遺伝子バリアントの機能的解析に関するリバーストランスレーショナルリサーチを進める J-RDMM といった取組を参考に取り入れていく必要がある。
今後推進すべき研究:国内の他領域での取組や、国際的なコンソーシアム26の動向を踏まえ、 下記の研究開発を推進していくことが重要となる。 ● 希少疾患領域と連携し、単一遺伝子変異を含む希少免疫アレルギー疾患研究の継続 ● 一般の免疫アレルギー疾患でも、症例が極めて少ない特定の患者群を対象とした研究 ● 希少疾患症例から得られた知見を一般の免疫アレルギー疾患の診断、治療へ応用する研究

3. おわりに→我が国の免疫アレルギー疾患対策において、発症及び重症化の要因や病態解明、免疫アレルギー疾 患の標準診療の確立等の課題解決に向けて、疫学研究、基礎研究及び臨床研究を長期的かつ戦略的に推進するため 10 か年戦略は策定された。前半の 5 年間で、免疫アレルギー疾患医療の均てん化に資するガイドラインの作成や、災害時のみならず平時からの災害準備の推進等、免疫アレルギー疾患を有する者がその居住する地域に関わらず安心して生活できる社会の構築に寄与してきた。また、基礎研究においては、IgE の発見とアレルギー発症機序、免疫グロブリンの遺伝子再構成、免疫チェックポイントシステム等、世界をリードする発見を続けてきた我が国の先達の業績を引き継ぎ、さら に推進するため、アカデミアに限らない多様性・学際性と、日本に閉じこもらない国際連携等を念頭に、複数の関連学会の協力のもと、全ての関係者がビジョンと目標の達成に向けて自発的に活動してきた。10 か年戦略では、先制的医療等を目指す本態解明に関する基盤研究、研究の効果的な推進と社 会の構築に関する横断研究、ライフステージ等特性に注目した重点研究を 3 つの戦略としている。各研究戦略に基づいて生まれた研究が、発展すると共に有機的に繋がり、研究基盤の強化やよりインパ クトの大きい成果となることが望まれる。 前半 5 年間の評価をもとに、世界の免疫アレルギー疾患研究の全体像、患者を始めとする国民ニー ズの把握を、持続可能なプラットフォームとしていくことが必要となる。今回の中間評価では、戦略 横断的に関係し、全戦略の推進に繋がる項目として、「個々の患者における病態をより詳細に理解す るために、最新の科学的手法を最大限に活用して免疫アレルギー研究を行うこと」、「レジストリー やバイオバンク、国内外のネットワークを活用し持続可能な研究基盤体制を充実させていくこと」、 「患者数が急増するアレルギー疾患やアレルギー類縁疾患の病態解明及び適切な情報提供に向けて 他疾患領域との連携していくこと」、「研究成果の社会実装に向けた研究開発インフラと積極的に連携 していくこと」が、今後の推進すべき研究として挙げられた。10 年という限りある時間の中で、免疫 アレルギー領域の研究戦略を推進することは、免疫アレルギー疾患に悩まれる患者・家族が安心して 暮らせる社会の醸成に貢献するものと期待される。

次回も続き「資料4 「免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略」の推進に関する中間評価報告書概要(案)」からです。

第18回アレルギー疾患対策推進協議会資料 [2024年10月15日(Tue)]
第18回アレルギー疾患対策推進協議会資料(令和6年8月21日)
議事 3令和6年度のアレルギー疾患対策について 4 免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略の中間評価について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_42484.html
◎資料1 令和6年度のアレルギー疾患対策について
厚生労働省 健康・生活衛生局 がん・疾病対策課
○厚生労働省におけるリウマチ・アレルギー疾患に関するこれまでの取組
→昭和47年〜令和5年まで。平成26年 ・アレルギー疾患対策基本法成立(平成27年12月施行)。
○アレルギー疾患対策基本法(平成 2 6 年法律第 9 8 号 )→気管支ぜん息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、花粉症、アレルギー性結膜炎、食物アレルギー疾患対策。⇒<主な基本的施策>、アレルギー疾患対策推進協議会 等 参照。
○アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針(平成 2 9 年厚生労働省告示第 7 6 号 令和4年3月一部改正)→アレルギー疾患対策基本指針とは、アレルギー疾患対策基本法(平成26年法律第98号、平成27年12月施行) 第11条に則り、アレルギー疾患対策の総合的な推進を図るため、厚生労働大臣が策定するもの。⇒一から五まで。 参照。
○令和6年度 リウマチ・アレルギー疾患対策予算について 令和6年度当初予算額 10億円(9.9億円)→アレルギー情報センター事業(@〜B)、アレルギー疾患医療提供体制整備事 業(@〜E)、リウマチ・アレルギー特別対策事業(@〜➃)、免疫アレルギー疾患患者に係る治療と仕事の両立支援モデル事業(@➁)、厚生労働科学研究費等補助金及び保健衛生医療調査等推進事業費補助金(@➁)。

○アレルギー情報センター事業→「アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針(平成29年3月21日厚生労働省告示第76号、令和4年3月一部改正) 」に基 づき、関係学会等と連携し、アレルギー疾患の病態、診断に必要な検査、薬剤の使用方法等に係る最新の知見に基づいた正しい情報 を提供するためのウェブサイトの整備等を通じた情報提供の充実に資すること等を目的。 <事業の概要> @ アレルギー疾患に係る最新の知見に基づいた正しい情報等を提供するためのウェブサイトの作成 A アレルギー疾患を有する者への対応が求められることが多い施設関係者に対する研修会の開催 B アレルギー疾患を有する者への対応が求められることが多い施設関係者向け研修資料の作成  等。

○アレルギー疾患医療提供体制整備事業→「アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針(平成29年3月21日厚生労働省告示第76号、令和4年3月一部改正) 」において、(国研)国立成育医療研究センター及び(独)国立病院機構相模原病院が「中心拠点病院」として指定されており、これまでの 実績やノウハウ等を活用し、基本指針に掲げられた各種個別目標の達成に資する事業を実施することを目的。
・中心拠点病院と都道府県拠点病院間 でオンライン相談会を開催(令和5年度から)

○アレルギー疾患医療提供体制の全体イメージ→平成29年3月に策定された「アレルギー疾患対策基本指針」において、国は、アレルギー疾患医療の提供体制について検討を行い、その検討結果に基づいた体制を整備すること等とされたことを受け、平成29年4月に「アレルギー疾患医療提供体制の在り方に関する検討会」を設置し、平成29年7月に報告書がまとまり、都道府県が、住民の居住する地域に関わらず適切な医療や相談を受けられる体制を整備する上で、 参考となる考え方を示し、都道府県に対して局長通知を発出した。
○都道府県アレルギー疾患医療拠点病院(令和6年3月 時点)→47都道府県 78病院参照。

○リウマチ・アレルギー特別対策事業→リウマチ・アレルギー特別対策事業については、従前より補助事業として実施してきたが、「アレルギー疾患対策の推進に関する 基本的な指針(平成29年3月21日厚生労働省告示第76号、令和4年3月一部改正)」に基づき、国は、アレルギー疾患を有する者 が居住する地域に関わらず、適切なアレルギー疾患医療や相談支援を受けられるよう体制を整備する必要がある。
(基本的な指針に係る代表的な該当部分抜粋)→・第一 アレルギー疾患対策に関する基本的な事項 イ 地方公共団体は、基本的な考え方にのっとり、アレルギー疾患対策に関し、国との連携を図りつつ、自主的かつ主体的に、その地域の特性に応じ た施策を策定及び実施するよう努めなければならない。 ・第五 その他アレルギー疾患対策の推進に関する重要事項 イ 地方公共団体は、都道府県アレルギー疾患医療連絡協議会等を通じて地域の実情を把握し、医療関係者、アレルギー疾患を有する者その他の関係 者の意見を参考に、都道府県拠点病院等を中心とした診療連携体制や情報提供等、その地域の特性に応じたアレルギー疾患対策の施策を策定し、及 び実施するよう努める。

○免疫アレルギー疾患患者に係る治療と仕事の両立支援モデル事業→厚生労働科学研究において、免疫アレルギー疾患のために、就職に不利になった方、仕事量や内容が制限された方、仕事のために 通院が制限された結果、症状が悪化した方や子どものアレルギー疾患の治療や通院等のために仕事が制限されている方が一定数いると いう問題点が明らかになっており、免疫アレルギー疾患患者又はその家族が安心して治療と仕事を両立できることを目的。⇒都道府県アレルギー疾患医療拠点病院等にお いて、両立支援コーディネーターが中心となり、 免疫アレルギー疾患患者又はその家族の個々の治療、生活、勤務状況等に応じた、治療と仕事 の両立に係る計画を立て、支援を行うモデル事 業を実施する。
○免疫アレルギー疾患患者に係る治療と仕事の両立支援モデル事業 令和6年度の採択結果について→免疫アレルギー疾患患者に係る治療と仕事の両立支援モデル事業公募要領に基づき、8か所の都道府県アレルギー疾患医療拠点病院からの応募があり、拠点病院から提出された事業計画書等について、本事業に関する審 査委員会による書面審査を行い、以下の拠点病院を採択した。⇒北海道 栃木県 東京都など8病院採択。
○免疫アレルギー疾患政策研究事業(厚生労働科学研究費等補助金)ー令和6年度 アレルギー分野ー→平成26年度に成立したアレルギー疾患対策基本法に基づき、総合的な疾患対策の推進が行われており、アレルギー疾患医療提供体制の 整備、研究の推進等に取組、平成31年に「免疫アレルギー疾患研究10か年戦略」を策定し、戦略に基づいて、免疫アレルギー疾患の総合的な推進が必要.⇒9つの研究課題名、研究期間、研究代表者名(所属)あり。 参照のこと。
○免疫アレルギー疾患実用化研究事業 (保健衛生医療調査等推進事業費補助金)→本事業では免疫アレルギー疾患の病因・病態の解明等に関する研究や、予防、診断、治療・予後QOLに関する質の高い基礎的研究に立脚した「成果やシーズ」を着実に実用化プロセスに乗せて、新規創薬、層別化に資するデータ・ゲノム基盤等の研究開発を促進する.⇒これまでの代表的成果あり。
○国立保健医療科学院におけるアレルギー疾患対策従事者研修→地方公共団体においてアレルギー疾患対策の中心的な役割を担う保健医療に関係する職種を対象とした人材育成 (短期研修)⇒地方公共団体におけるアレルギー疾患医療拠点病院と連携する等の組織横断的な調整方法の習得 が目的。  参照。

○花粉症対策の全体像→10年後には花粉発生源のスギ人工林を約2割減少させることを目指す。スギ人工林由来の花 粉が約2割減少すれば、花粉量の多かった今シーズンであっても平年並みの水準まで花粉量 を減少させる効果が期待できる。また、将来的(約30年後)には花粉発生量の半減を目指す。⇒●花粉症の治療→• 診療ガイドライン改訂や対症療法等の医療・相談体制 の整備を推進【厚生労働省】。 • アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法等)の開始時期等 について、医療機関等における適切な情報提供や集中的な広報を実施【厚生労働省】。 −学会等を通じた医療機関等への協力要請 −実施医療機関のリスト化・周知 −オンライン診療可能な医療機関の周知。 • 森林組合等への協力要請や企業への要請等に着手 ⇒舌下免疫療法の治療薬を25万人分/年→(5年以内) 100万人分/年に増産【厚生労働省】 • 治療法・治療薬の開発に資する大学や国立研究機関等 での研究開発等を支援【文部科学省・厚生労働省】。●花粉症対策製品など • 花粉対策に資する商品に関する認証制度について、関 連業界と連携し、消費者への認知拡大、認証取得製品 (網戸、衣服等)の拡大・普及の推進【経済産業省】、• スギ花粉米の実用化に向け臨床研究等を実施【農林水 産省】。 ● 予防行動→• 花粉への曝露を軽減するための花粉症予防行動について、自治体、関係学会等と連携して広く周知【環境 省・厚生労働省】。•花粉曝露を軽減する柔軟な働き方等、企業等による従業員の花粉曝露対策を推進する仕組みの整備【経済産業省】。

○花粉症対策 初期集中対応パッケージ大丸1 未だ多くの国民を悩ませ続けている花粉症問題の解決に向け、来年の花粉の飛散時期を見据えた施策のみならず、今後10年を視野に 入れた施策も含め、花粉症解決のための道筋を示す「花粉症対策の全体像」を取りまとめ(本年5月30日)。 大丸1 来年の花粉の飛散時期が近づく中、「花粉症対策の全体像」に基づき、発生源対策、飛散対策及び発症・曝露対策について、 「全体像」の想定する期間の初期の段階から集中的に実施すべき対応を本パッケージとして取りまとめ、その着実な実行に取り組む。⇒1.発生源対策 2.飛散対策 3.発症・曝露対策   参照。


◎資料2 免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略の中間評価について
○アレルギー疾患対策における研究戦略の議論の始まり
→アレルギー疾患対策基本法には、研究の推進等を定めた条文があり、これに対して基本指針においては研究の長期的 かつ戦略的な推進が必要である旨が定められている。
・アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針(平成29年厚生労働省告示第76号)→アレルギー疾患は、その有病率の高さ等により、社会全体に与える 影響も大きいが、発症並びに重症化の要因、診療・管理ガイドラインの有効性及び薬剤の長 期投与の効果並びに副作用等、未だに明らかになっていないことが多い。これら諸問題の解 決に向け、疫学研究、基礎研究、治療開発(橋渡し研究の活性化を含む。)及び臨床研究の 長期的かつ戦略的な推進が必要である。

○免疫アレルギー疾患研究戦略検討会開催から戦略発出まで→第3回検討会(平成30年9月28日)免疫アレルギー疾患研究戦略検討会報告書(案)について⇒平成31年1月23日 「免疫アレルギー疾患研究10か年戦略」について をとりまとめた。
○【参考1】免疫アレルギー疾患対策における研究10か年戦略の位置づけ
○免疫アレルギー疾患研究10か年戦略 平成3 1年1月発出
→免疫アレルギー疾患が有する特徴⇒10年後に目指すべきビジョン(「発症予防・重症化予防によるQOL改善」と「防ぎ得る死の根絶」のために、「疾患活動性や生活満足度の見える化」や「病態の「見える化」に基づく層別化医療及び予防的・先制的医療の実現」を通じて、ライフステージに応じて、安心して生活できる社会を構築する)。   ビジョンの実現に必要とされる3つの目標と戦略(戦略1〜戦略3) 参照。
○(参考)アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針(令和4年3月 1 4 日改正)第 四 アレルギー疾患に関する調査及び研究に関する事項→免疫アレルギー疾患研究10か年戦略(平成31年1月発出)を踏まえ、令和3年度のアレルギー疾患対策の推進に関する 基本的な指針(以下、基本指針)の改正により、「免疫アレルギー疾患研究10か年戦略」に基づいた研究が明記され た。⇒「免疫アレルギー疾患研究10か年戦略」に基づき、 患者の視点に立った疫学研究、基礎研究、治療開発(橋渡し研究 の活性化を含む。)及び臨床研究の長期的かつ戦略的 な推進が必要である。

○免疫アレルギー疾患研究 1 0 か年戦略と免疫アレルギー疾患の研究事業との関わり↓
・免疫アレルギー疾患政策研究事業(厚生労働科学研究)→10 か年戦略のうち、当事業では特に戦略2「社会の構築」において、免疫アレルギー疾患領域における研究 の現状を正確に把握し、研究者間の密接な連携体制を構築しながら、疫学研究、臨床研究等を長期的かつ戦略的に推進する。
・免疫アレルギー疾患実用化研究事業(AMED研究)→本事業は、厚生労働科学研究と連携しながら、10か年戦略の中で特に戦略1「本態解明」と戦略3「疾患特性」において必要な研究開 発を推進する。具体的には、免疫アレルギー疾患の病因・病態の解明等に関する研究や予防、診断及び治療法に関する質の高い基礎的 研究に立脚した「成果やシーズ」を着実に実用化プロセスに移行して、創薬、医療技術、医療機器等の研究開発等を促進する。
○1 0か年戦略の観点から免疫アレルギー研究を評価する研究班↓
・10か年戦略には中間評価と見直しについて記載があり、そのための免疫アレルギー疾患研究の進捗状況を評価する研 究班により検討が進められた。⇒「免疫アレルギー疾患研究10か年戦略」の中間評価に係る記載(5.研究の評価体制→10 年という長期間の中で常に目標設定を明確に行い、その進捗状況や、国内外の免疫アレルギー研究の全体像や、患者をはじめとする国民のニーズ等を正確に継続的に把握し、10 か年戦略の中間評価と見直しを行う。)。
・10か年戦略のモニタリング及び中間評価を行ってきた研究班(免疫アレルギー疾患政策研究事業指定研究班)⇒時期、研究課題名(3)、研究代表者 あり。  参照。

次回も続き「資料3 「免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略」の推進に関する中間評価報告書(案)」からです。

労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会第6回資料 [2024年10月12日(Sat)]
労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会第6回資料(令和6年8月21日)
議事 (1)女性の健康に関する事項について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_42704.html
◎資料1 一般定期健康診断における女性の健康に関する健診項目について
厚生労働省 労働基準局 安全衛生部 労働衛生課
○女性特有の健康課題に関する質問案に係る第5回検討会での主なご意見@➁
・第5回検討会にて提示した案 ↓
質問32:女性に関連する健康問題(※)で職場において困っていることがありますか。
@はい、Aいいえ、Bどちらとも言えない
質問33:(質問32に「はい」と回答された方)職場において相談したいこと(配慮してほしいこと)がありますか。   @はい、Aいいえ、Bどちらとも言えない
※「女性に関連する健康問題」とは、月経困難症、更年期障害などを指します。

・ 第5回検討会での主なご意見→5意見。大丸1 質問32・33を設定する目的が労働者の気づきを促すことであるならば、事業主に結果が渡るということが分かってしまう と、本人がこの問診を素直に回答するかどうか、非常にハードルが高いのではないか。
大丸1 質問32について→5意見。• 注釈ではなく、「月経困難症、PMS等などで職場において困っていることがありますか」とストレートに聞いてはどうか。
大丸1 質問33について→5意見。• 女性労働者本人が希望する場合には、問診に質問33を設定することにより、職場において配慮してほしいことを、会社の産業医、産 業保健スタッフなどに情報を伝達することで具体的な解消につなげるほうが良い。 • 「更年期症状で職場において困っていることはありますか」と質問することで、男女区別せずに回答する形が良いのではないか。

○「一般健康診断問診票」改訂案について@〜A
1 第5回検討会までの意見等を踏まえ、「一般健康診断問診票」における女性特有の健康課題に関する 質問の目的、具体的プロセスについて、どのように考えるか
(以下に事務局案を提示)。↓
(1) 目的(案)
→ア 労働者:月経困難症、月経前症候群、更年期障害等への気づきと、必要に応じての早期受診を促す。 イ 事業者:女性特有の健康課題を抱える職場環境整備への気づきを促す。
(2) 具体的プロセス(案)↓
@健診機関(健診担当医・健診を実施する産業医を含む。)は、委託契約等に基づき健診を実施。→事業者が健診の実施・委託の決定を行う際に、事業者は、どのような女性特有の健康課題に関する質問を入れるのか、どのような結果を健診機関から提供を受けることとするのかを含めて決定する。
A健診機関は、上記@に基づき、労働者に問診票を配布する。→厚生労働省は、健診担当医による円滑な問診の実施を促すため、法定外(任意)である「一般健康診断問診票」を改訂し、第5回検討会で提示した質問32のように、女性特有の健康課題に関する質問を示すこととする。 なお、上記(1)の目的(案)を満たし、労働者に理解しやすい質問とする。
B労働者は、配布された問診票に回答し、その回答結果を健診機関に提出する。
C健診担当医は、必要に応じて、労働者個人に女性特有の健康課題に関する情報提供、婦人科等の医師の受診勧奨等 を行う。→健診担当医は、問診票に沿って、労働者個人に女性特有の健康課題に関する確認を行うほか、必要に応じて、 適宜、追加質問を行い、労働者個人への情報提供、受診勧奨の要否等を判断する。 厚生労働省は、健診機関への情報提供、健診機関が活用できるツール(リーフレット等)を作成する。
D労働者は、健診担当医からの受診勧奨等を踏まえ、婦人科等の医師を受診する。
E婦人科等の医師は、上記Dにより受診した労働者に対して、診断の結果、就業上の助言等を行う。
F健診機関は、上記@に基づき、事業者に女性特有の健康課題に関する質問の結果を提供する。⇒ 以下の論点に ついて、議論が必要ではないか。
G事業者は、必要に応じて、産業医等(産業保健総合支援センターの活用を含む)に相談
する。→事業者は、女性特有の健康課題に関する質問の結果を踏まえ、女性特有の健康課題に対応するために、職場 環境整備に向けた取組みについて検討。事業者が女性特有の健康課題のために行うことが望ましい対応について、厚生労働省はガイドラインや指針 等を作成することとする。 ※事業者は、産業保健の枠組みを活用し、医師等による健康相談等を行うほか、労働者からの申出への対応等を行う。

<論点>(上記Fに係る論点)→上記(1)の目的(案)を達成するため、健診担当医(健診を実施する産業医を含む)から事業者に情報提供さ れる内容(集計結果、労働者個人の情報・要望、情報なし等)、方法(事業者が決定、労働者が決定、両者で協議 して事業者ごとの決定等)について、どのようにあるべきなのか。加えて、この情報提供が行われる場合には、労働者個人のプライバシーの保護や健診担当医の負担増の可能性について、どのように配慮すべきであるのか。
2.その他
<論点>男性更年期障害については、医学的知見や産業保健の課題等を踏まえ、どのように考えるのか。

○女性特有の健康課題に関する問診流れ図(案)→@〜Gまでの流れ図。 参照。


◎参考資料1労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会開催要綱
1 目的
→ 労働安全衛生法に基づく一般健康診断については、平成 28 年に、「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」において各診断項目等の妥当性等について検討されたが、近年及び今後の労働者の健康を巡る情勢としては、急速に進む高齢化の中、職業生活が長期化してきているとともに、女性の就業率の増加に伴って、女性の健康課題への対応の重要性が一層高まっている。また、前回の検討以降、 健康診断についての医学的知見が集積されてきている。 こうした中、政府の規制改革実施計画(令和5年6月 16 日閣議決定)では、定期健康診断について、最新の医学的知見や社会情勢の変化等を踏まえ、医学的知見等に基づく検討の場を設け、検査項目(検査頻度を含む。)及び検査手法について所要の検討を行い、令和6年度に結論を得ることとされた。 また、「女性活躍・男女共同参画の重点方針 2023(女性版骨太の方針 2023)」(令和5年6月 13 日すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推進本部決定)では、「事業主健診(労働安全衛生法に基づく一般定期健康診断)に係る問診に、月経困難症、更年期症状等の女性の健康に関連する項目を追加する」とされ、「経済財政運営と改革の基本方針 2023(骨太の方針 2023)」(令和5年6月 16 日閣議決定)では、 「女性版骨太の方針 2023 に基づき、(中略)事業主健診の充実(中略)等により女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会を実現する」とされた。 こうした状況を踏まえて、労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等につい て、検討することとする。

2 検討内容→(1)最新の医学的エビデンスに基づく現行の一般健康診断の検査項目等の妥当性について (2)労働者の健康課題の変化を踏まえた一般健康診断の検査項目等について (3)その他関連する事項について
3 構成 (1)本検討会は、厚生労働省労働基準局安全衛生部長が、別紙の構成員の参集を求めて開催。 (2)本検討会には座長を置き、議事を整理する。 (3)座長は、座長代理を指名することができる。 (4)本検討会には、必要に応じて別紙に掲げる構成員以外の関係者の出席を求めること ができる。
4 検討会の運営 (1)〜(3)この要綱に定めるもののほか、本検討会の運営に関し必要な事項は、会議において 定める。

○別紙 労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会
・構成員名簿→20名。


◎参考資料2 第5回労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会議事録 ↓
○大野中央労働衛生専門官:第 5 回「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の項目等に関する検討会」を開催。
○田座長:、本日の議題は「女性の健康に関する事項について」。お手元に資料1、2 があります が、事務局から資料 1、続けて資料 2 の説明をお願いいたします。
○大村産業保健支援室長:スライド説明。
・健診の機会を活用し、労働者本人への気付きを促し、必要な場合の早期受診のほか、女性の健康課題に対する配慮を申し出やすい職場づくりにもつながるよう、一般健康診断問診票に女性の健康に関する質問を追加してはいかがか。
・「女性版骨太の方針 2024」、働く女性の月経、妊娠・出産、更年期等、女性のライフステージごとの健康課題に起因する望まない離職等を防ぎ、女性が活躍し、また、健やかで充実した毎日を送ることができるよう、プライバシーに十分配慮。・健診の実施に関する課題。・・・・・・・以下資料1に関する構成員とのやり取り。・啓発や研修については事業場が行うこと。
・資料2の説明はこの資料1の通り。構成員との質問・意見等あり。特に以下の部分↓
○森構成員:私自身も全体像が逆に見えなくなって、今、混乱しています。恐らく 1 度、フロー図を作って、ここはつながらない、さすがにこれをやって健診機関は無理だなどわかるものを前提に、共通理解のもとに議論がと ても苦しいなという感じがしています。そのお願いだけです。
○田座長 恐らくそうしないと、話がまとまらないと思いますので、ここは事務局と検 討させていただいて、また改めて分かりやすい資料提示をさせていただきたいと思います。
(終了)


◎参考資料3 一般健康診断問診票(第1回検討会参考資料3抜粋)
○一般健康診断問診票→質問項目1〜31まで。回答項目もあり。
○健康診断等に関する法令等について
1. 労働安全衛生法(抄)
→(健康診断)(健康診断の結果についての医師等からの意見聴取)(健康診断実施後の措置)(健康診断の結果の通知)(保健指導等)(健康診査等指針との調和) 参照こと。
2. 労働安全衛生規則(抄) →(雇入時の健康診断)(定期健康診断)(特定業務従事者の健康診断)(海外派遣労働者の健康診断)(給食従業員の検便)(歯科医師による健康診断)(健康診断の結果の通知) 参照こと。
3. 厚生労働省告示
  労働安全衛生規則第四十四条第二項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準

4. 健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針
1 趣旨
→産業構造の変化、働き方の多様化を背景とした労働時間分布の長短二極化、高齢
化の進展等労働者を取り巻く環境は大きく変化してきている。その中で、脳・心臓疾患に
つながる所見を始めとして何らかの異常の所見があると認められる労働者が年々増加し、
5割を超えている。さらに、労働者が業務上の事由によって 脳・心臓疾患を発症し突然死
等の重大な事態に至る「過労死」等の事案が多発し、 社会的にも大きな問題となっている。
このような状況の中で、労働者が職業生活の全期間を通して健康で働くことができるよ
うにするためには、事業者が労働者の健康状態を的確に把握し、その結果に基づき、医
学的知見を踏まえて、労働者の健康管理を適切に講ずることが不可欠である。そのため
には、事業者は、健康診断(労働安全衛生法(昭和 47 年法 律第 57 号)第 66 条の2
の規定に基づく深夜業に従事する労働者が自ら受けた健康診断(以下「自発的健診」と
いう。)及び労働者災害補償保険法(昭和 22 年法 律第 50 号)第 26 条第2項第1号
の規定に基づく二次健康診断(以下「二次健康 診断」という。)を含む。)の結果、異常
の所見があると診断された労働者について、当該労働者の健康を保持するために必要な
措置について聴取した医師又は歯科医師の意見を十分勘案し、必要があると認めるとき
は、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深
夜業の回数の減少、昼間勤務への転換等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施
設又は設備の設置又は整備、当該医師等の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会
(以下「衛生委員会等」という。)又は労働時間等設定改善委員 会(労働時間等の設定
の改善に関する特別措置法(平成4年法律第 90 号)第7条 第1項に規定する労働時間
等設定改善委員会をいう。以下同じ。)への報告その他の適切な措置を講ずる必要があ
る(以下、事業者が講ずる必要があるこれらの措 置を「就業上の措置」という。)。 ま
た、個人情報の保護に関する法律(平成 15 年法律第 57 号)の趣旨を踏まえ、 健康診
断の結果等の個々の労働者の健康に関する個人情報(以下「健康情報」と いう。)につ
いては、特にその適正な取扱いの確保を図る必要がある。
この指針は、健康診断の結果に基づく就業上の措置が、適切かつ有効に実施さ れるため就
業上の措置の決定・実施の手順に従って、健康診断の実施、健康診 断の結果についての医
師等からの意見の聴取、就業上の措置の決定、健康情報の 適正な取扱い等についての留意
事項を定めたもの
である。
2 就業上の措置の決定・実施の手順と留意事項  (1)健康診断の実施 (2)二次健康診断の受診勧奨等 (3)健康診断の結果についての医師等からの意見の聴取 (4)就業上の措置の決定等 (5)その他の留意事項
3 派遣労働者に対する健康診断に係る留意事項 (1)健康診断の実施 (2)医師に対する情報の提供 (3)就業上の措置の決定等 (4)不利益な取扱いの禁止 (5)特殊健康診断の結果の保存及び通知 (6)健康情報の保護

5. 労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき 措置に関する指針
改正 令和4年3月31日 労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱い指針公示第2号
1 趣旨・総論
→事業者が、労働安全衛生法(昭和 47 年法律第 57 号)に基づき実施する健康診断等の健康を確保するための措置(以下「健康確保措置」)や任意に行う労働者の健康管理活動を通じて得た労働者の心身の状態に関する情報(以下「心身の状態の情報」)については、そのほとんどが個人情報の保護に関する法律(平成 15 年法律第 57 号)第2条第3項に規定する「要配慮個人情報」に 該当する機微な情報である。そのため、事業場において、労働者が雇用管理において自身にとって不利益な取扱いを受けるという不安を抱くことなく、安心して 産業医等による健康相談等を受けられるようにするとともに、事業者が必要な心身の状態の情報を収集して、労働者の健康確保措置を十全に行えるようにするためには、関係法令に則った上で、心身の状態の情報が適切に取り扱われることが 必要であることから、事業者が、当該事業場における心身の状態の情報の適正な取扱いのための規程(以下「取扱規程」)を策定することによる当該取扱いの明確化が必要である。こうした背景の下、労働安全衛生法第 104 条第3項 及びじん肺法(昭和 35 年法律第 30 号)第 35 条の3第3項に基づき公表する本指針は、心身の状態の情報の取扱いに関する原則を明らかにしつつ、事業者が策定すべき取扱規程の内容、策定の方法、運用等について定めたもの。 その上で、取扱規程については、健康確保措置に必要な心身の状態の情報の範 囲が労働者の業務内容等によって異なり、また、事業場の状況に応じて適切に運用されることが重要であることから、本指針に示す原則を踏まえて、事業場ごとに衛生委員会又は安全衛生委員会(以下「衛生委員会等」)を活用して 労使関与の下で、その内容を検討して定め、その運用を図る必要がある。 なお、本指針に示す内容は、事業場における心身の状態の情報の取扱いに関する原則である。このため、事業者は、当該事業場の状況に応じて、心身の状態の情報が適切に取り扱われるようその趣旨を踏まえつつ、本指針に示す内容とは異なる取扱いを行うことも可能である。しかしながら、その場合は、労働者に、当該事業場における心身の状態の情報を取り扱う方法及び当該取扱いを採用する理由を説明した上で行う必要がある。

2 心身の状態の情報の取扱いに関する原則
(1)心身の状態の情報を取り扱う目的→民事上の安全配慮義務の履行、そのために必要な心身の状態の情報を適正に収集し、活用する必要がある。 一方、労働者の個人情報を保護する観点から、現行制度においては、事業者が心身の状態の情報を取り扱えるのは、労働安全衛生法令及びその他の法令に基づく場合や本人が同意している場合のほか、労働者の生命、身体の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき等とされているので、上記の目的に即して、適正に取り扱われる必要がある
(2)取扱規程を定める目的
(3)取扱規程に定めるべき事項
(4)取扱規程の策定の方法
(5)心身の状態の情報の適正な取扱いのための体制の整備
(6)心身の状態の情報の収集に際しての本人同意の取得
(7)取扱規程の運用
(8)労働者に対する不利益な取扱いの防止
(9)心身の状態の情報の取扱いの原則(情報の性質による分類)
(10)小規模事業場における取扱い
3 心身の状態の情報の適正管理
(1)心身の状態の情報の適正管理のための規程
(2)心身の状態の情報の開示等
(3)小規模事業場における留意事項
4 定義(用語の意味)→@〜Fまで。

6. 健康増進事業実施者に対する健康診査の実施等に関する指針
平成 16 年6月 14 日 厚生労働省告示第 242 号
健康増進法(平成十四年法律第百三号)第九条第一項の規定に基づき、健康増進事 業実施者
に対する健康診査の実施等に関する指針を次のように定めたので、同法第 九条第三項の規
定に基づき公表する。
健康増進事業実施者に対する健康診査の実施等に関する指針
第一 基本的な考え方

健康診査は、疾病を早期に発見し、早期治療につなげること、健康診査の結果 を踏まえた
栄養指導その他の保健指導(運動指導等生活習慣の改善のための指導 を含む。以下同じ。)
等を行うことにより、疾病の発症及び重症化の予防並びに生 涯にわたる健康の増進に向け
た自主的な努力を促進する観点から実施するもので ある。 なお、健康診査は、大きく「健
診」と「検診」に分けられる。健診は、必ずし も特定の疾患自体を確認するものではない
が、健康づくりの観点から経時的に値を把握することが望ましい検査群であり、健診の結
果、異常がないとしても行動 変容につなげる狙いがある。検診は、主に特定の疾患自体を
確認するための検査群であり、検診の結果、異常がなければ次の検診まで経過観察を行う
ことが多い。 現在、健康診査、その結果を踏まえた栄養指導その他の保健指導等は、健康
増 進法第六条に掲げる各法律に基づいた制度において各健康増進事業実施者により 行わ
れているが、次のような現状にある。↓
1 制度間で健康診査における検査項目、検査方法等が異なる場合がある。 2 精度管理が
適切に行われていないため、検査結果の比較が困難である。 3 健康診査の結果が、受診
者に対する栄養指導その他の保健指導、必要な者 に対する再検査、精密検査及び治療のた
めの受診並びに健康の自己管理に必ずしもつながっていない。 4 健康診査の結果を踏ま
えた集団に対する健康課題の明確化及びそれに基づ く栄養指導その他の保健指導が十分
でない。 5 健康診査の結果等(栄養指導その他の保健指導の内容を含む。以下同じ。) が
各健康増進事業実施者間で継続されず、有効に活用されていない。 6 健康診査の結果等
に関する個人情報の保護について必ずしも十分でない。 また、このような状況の中、平成
十七年四月に、メタボリックシンドロームの 我が国における定義及び診断基準が日本動脈
硬化学会、日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本肥満学会、日本循環器学会、日本腎臓
病学会、日本血栓止血学会 及び日本内科学会から構成されるメタボリックシンドローム診
断基準検討委員会において策定された。この定義及び診断基準においては、内臓脂肪の蓄
積に着目し、健康診査の結果を踏まえた効果的な栄養指導その他の保健指導を行うことに
より、過栄養により生じる複数の病態を効率良く予防し、心血管疾患等の発症予 防につな
げることが大きな目標とされた。
平成二十年四月からは、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)
により、保険者に対して内臓脂 肪の蓄積に起因した生活習慣病に関する特定健康診査及
び特定健康診査の結果による健康の保持に努める必要がある者に対する保健指導の実施
が義務付けられた ところである。 また、健康診査の項目や保指導対象者の基準等につ
いては、科学的根拠を踏 まえて、定期的な見直しが必要である。 その他、健康診査
の結果等を含む医療情報に関しては、医療分野の研究開発に 資するための匿名加工医療
情報に関する法律(平成二十九年法律第二十八号。以下 「次世代医療基盤法」という。)
が平成三十年五月から施行されている。
以上を踏まえ、この指針においては、各健康増進事業実施者により適切な健康 増進事
業が実施されるよう、健康診査の実施、健康診査の結果の通知、その結果を踏まえた栄養指導その他の保健指導の実施等、健康手帳等による健康診査の結果等に関する情報の継続の在り方及び個人情報の取扱いについて、各制度に共通する基本的な事項を定めること
とする。 各健康増進事業実施者は、健康診査の実施等に当たり、個人情報の保護等につ いて最大限に配慮するとともに、以下に定める事項を基本的な方向として、国民 の健康増進に向けた自主的な取組を進めるよう努めるものとする。 なお、この指針は、必要に応じ、適宜見直すものとする。

第二 健康診査の実施に関する事項  一 健康診査の在り方 二 健康診査の精度管理
第三 健康診査の結果の通知及び結果を踏まえた栄養指導その他の保健指導に関す る事項
第四 健康診査の結果等に関する情報の継続の在り方に関する事項
第五 健康診査の結果等に関する個人情報の取扱いに関する事項

1 健康増進事業実施者は、健康診査の結果等に関する個人情報について適正 な取扱いの厳格な実施を確保することが必要であることを認識し、個人情報 保護法令を遵守すること。
第六 施行期日 この指針は、健康増進法第九条の施行の日から施行するものとする。
(施行の日=平成一六年八月一日) 改正文 (平成一九年一〇月二九日厚生労働省告示第三四九号) 抄 平成二十年四月一日から適用する。 改正文 (令和四年三月二五日厚生労働省告示第九二号) 抄 令和四年四月一日から適用する。


7. 雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項について (通知)   別添3
第1 趣旨

この留意事項は、雇用管理分野における労働安全衛生法(昭和 47 年法律第 57 号。以下
「安衛法」という。)等に基づき実施した健康診断の結果等の健康情報の 取扱いについて、
「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則 編)」(平成 28 年個人情報
保護委員会告示第6号。以下「ガイドライン」という。) に定める措置の実施に当たって、
事業者において適切に取り扱われるよう、特に 留意すべき事項を定めるものである。 な
お、事業者は、この留意事項に記載のない事項等については、ガイドライン、 「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(外国にある第三者への 提供編)」(平成 28
年個人情報保護委員会告示第7号)、「個人情報の保護に関する 法律についてのガイドライ
ン(第三者提供時の確認・記録義務編)」(平成 28 年個 人情報保護委員会告示第8号)、「個
人情報の保護に関する法律についてのガイド ライン(仮名加工情報・匿名加工情報編)」(平
成 28 年個人情報保護委員会告示第 9号)及び「個人情報の保護に関する法律についての
ガイドライン(認定個人情報保護団体編)」(令和3年個人情報保護委員会告示第7号)を
それぞれ参照され たい。


第2 健康情報の定義(1)〜(18)まで。
例えば、次のような場合には、健康情報の取得及び第三者提供に際して、 本人の同意は必要ない。
(a)事業者が、法令に基づき、労働者の健康診断の結果を取得し、又は第三者に 提供する場合(法第 20 条第2項第1号、第 27 条第1項第1号)。(b)法第 27 条第5項第1号から第3号までに掲げる第三者に該当しない場合(例 :事業者が医療保険者と共同で健康診断を実施する場合において、健康情報が共 同して利用する者に提供される場合等)
第3 健康情報の取扱いについて事業者が留意すべき事項→1〜10項目あり。
1 事業者が健康情報を取り扱うに当たっての基本的な考え方
・要配慮個人情報に準じて取り扱うこと。本人の同意必要。


8. 「定期健康診断等及び特定健康診査等の実施に係る事業者と保険者の連携・協力事項について」の一部改正について(通知)
令和5年7月31日  (別記)事業者団体及び関係団体の長 殿
厚生労働省労働基準局長  厚生労働省保険局長
(別紙) 定期健康診断等及び特定健康診査等の実施に係る事業者と保険者の連携・協力事項に ついて
1.定期健康診断等の結果の情報提供等の事業者と保険者の連携の基本的な考え方

保険者は、糖尿病をはじめとする生活習慣病の発症・重症化を予防し、医療費を 適正化するため、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和 57 年法律第 80 号。以下 「高確法」という。)に基づく法定義務の保健事業として、特定健康診査及び特定 保健指導を行っている。事業者は健康保険料の一部を負担し、保険者の運営に関わ っている。保険者が特定健康診査及び特定保健指導等の保健事業を的確に実施し、 医療費適正化に取り組むとともに、制度間の健診の重複を避けるためには、事業者 と保険者が緊密に連携し、定期健康診断等の結果を事業者から保険者に迅速かつ確 実に情報提供する必要がある。 このため、高確法では、労働者が労働安全衛生法(昭和 47 年法律第 57 号。以下 「安衛法」という。)その他の法令に基づき行われる特定健康診査に相当する健康 診断を受診した場合は、特定健康診査の全部又は一部を行ったものとし、保険者か ら特定健康診査及び特定保健指導の適切かつ有効な実施のために健康診断に関する 記録の写しの提供を求められた事業者は、その記録の写しを提供しなければならな いこととされている。
令和4年1月からは、健康保険法(大正 11 年法律第 70 号。以下「健保 法」という。)等において、保険者から保健事業の実施のために健康診断に関する 記録の写しの提供を求められた事業者は、その記録の写しを提供しなければならな いこととされている。これにより、保険者は、特定健康診査の対象年齢(40〜74歳)の労働者に加え、40 歳未満の労働者の定期健康診断等の結果についても情報を 取得することができ、それに基づく保健指導等を行うことが可能となっている。 これらを着実に進めていくためには、事業者において定期健康診断等を適切に実施するとともに、事業者から保険者に定期健康診断等の結果を迅速かつ確実に情報 提供することが必須であり、事業者と保険者が一体となって取組を進めていく必要 がある。

2.定期健康診断等及び特定健康診査の実施と保険者への情報提供の方法等
(1)定期健康診断等及び特定健康診査の一体的な実施
(2)定期健康診断等の結果の保険者への情報提供の方法等
@電子的な標準記録様式による提出について
A定期健康診断等の結果の情報提供に関する必要な取決め等
(3)個人情報保護についての配慮
3.特定保健指導等の円滑な実施の確保
(1)就業時間中における特定保健指導等の実施等
(2)事業者が実施する保健指導と併せて特定保健指導を実施する場合の費用負担
4.被保険者及び被扶養者の住所情報の保険者への情報提供

(別表) 労働安全衛生法に基づく定期健康診断の項目と高齢者の医療の確保に関する法律に基づき保険者が事業者等に対して提供を求めることができる項目との関係
(別添1) 一般健康診断問診票→1〜31の質問項目。労働安全衛生法に基づく定期健康診断等と高齢者の医療の確保に関する法律に基づく特定健康診査の項目を 同時に実施する場合の、標準的な問診票。
(別添1の2) 一般健康診断問診票→特に「27・28」飲酒に関する委細増加。
(別添2) 健康診断等委託契約書
(別紙) 本件業務の内容及び料金表
(別添3) 健康診断結果提供依頼書


9.「職域におけるがん検診に関するマニュアル」の策定について(通知)
平成30年3月29日  都道府県知事・各政令市市長・特別区区長 殿
厚生労働省 健 康 局 長
がんの死亡者を減少させていくためには、
科学的根拠に基づくがん検診を、適切な精度管理の下で実施することが重要・・・・・・・・・・(略)・・・・・・・・・・・・↓
今般、別添のとおり、職域におけるがん検診に関するワ ーキンググループにおいて、科学的見地より検討を進め、職域におけるがん検 診をより効果的に行うことのできるよう、その技術的な側面の参考として、「職 域におけるがん検診に関するマニュアル」を策定しました。この内容について ご理解をいただいた上で、貴管下の関係団体及び関係者に対する周知等を図っ ていただきますよう、よろしくお願いいたします
(別添) 職域におけるがん検診に関するマニュアル↓
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka /0000204422.pdf


次回は新たに「第18回アレルギー疾患対策推進協議会資料」からです。

第3回地域共生社会の在り方検討会議 [2024年10月11日(Fri)]
第3回地域共生社会の在り方検討会議 資料(令和6年8月21日)
議事(1)成年後見制度の見直しに向けた司法と福祉との連携強化等の総合的な権利擁護支援策 の充実について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_42688.html
【構成員提出資料】 田中構成員提出資料
◎生駒市における権利擁護支援の 地域連携ネットワークの機能の検討(案) 〜意思決定支援を中心に〜 生駒市
○意思決定支援 生駒市認知症支え隊の活動からの発展(例)↓

・認知症支え隊養成講座を受講し、サロンや受診同行、買い物サポートなど、日々の暮らしを支えるボランティア活動を通して、認知症の方の想いを受け止め、対応できる人を増やしていく。
・少しずつ、活動になじめるように専門職が時折サポートし、認知症当事者ミーティング等にも参加してもらいながら、認知症の理解を深めていってもらう。
・支え隊の活動+αしていきたいと思える人に、次のステップとして次ページの活動を紹介する。
・障がい者の支援は、別途、親亡きあとではなく、親が健在の頃からサポートしてくれる人とつなぎ、サービス事業所以外の人に馴染む関係を構築しながら、自宅での様子や趣味・嗜好などを知っていくことで、対象の方の特性を理解でき、意思決定支援が第3者でも行いやすくなる。

○生駒市における権利擁護支援の地域連携ネットワークの機能の検討 意思決定支援を中心に(案)↓
・生活に寄り添った権利擁護支援(意思決定支援等)の担い手として、「認知症支え隊」(※)や「あいサポーター」に着目 (※)養成講座の受講後、地域包括支援センターに登録し、軽度認知症の方の見守りや買い物・受診同行を行う市民(交通費等実費のみ補助)。
・これらの活動に慣れ、関心のある方に日常生活自立支援の研修(希望者には市民後見人養成研修)を案内し、受講促進
・研修受講者は、まずは日常生活自立支援事業に関する生活支援員として活動 この際、始めは社協が伴走する他、中核機関や法人後見実施機関が研修を行う等、支援員が不安を抱えないようサポート
・本人の判断能力の低下に応じて、権利擁護支援チームや中核機関等と連携・協議し、後見申立てを適切な時期に円滑に実施
・申立後も、市民後見人養成研修受講者であれば、法人後見支援員として引き続き関与しうる(実務研修等も実施)
・成年後見制度の利用を終了し、日常生活自立支援事業等に移行した方を引き継いで支援する担い手の役割もなしえる。


【構成員提出資料】中野構成員提出資料
≪成年後見制度の見直しに向けた司法と福祉の連携強化等の総合的な権利擁護支援策の充実について 〜成年後見の現場から〜≫
(公社)成年後見センター・リーガルサポート 常任理事 中野篤子
○お伝えしたいこと↓
1.専門職団体からみた現状と課題

第3 運用・法改正で改善するべきと考える事項
成年後見制度利用促進専門家会議→ 第2回運用改善等WG(令和3年9月15日)より

2.本人にとって必要な支援とは 〜事例から検討できること
・権利擁護支援チームの存在
・中核機関・権利擁護支援の地域連携ネットワークの存在
・成年後見制度の必要性の判断について
3.必要な人に必要な制度がつながる連続した権利擁護支援の充実に向けて
〜法制化に向けた検討


1.専門職団体からみた現状と課題 〜成年後見制度利用促進専門家会議 第2回運用改善等WG(令和3年9月15日)より
○第3 運用・法改正で改善するべきと考える事項
1本人にとっての必要性や支援の状況に合わせた補佐・補助の活用 
事例1→80代女性。現在の状況、支援の体制、ある日のこと・・・参照のこと。

2.本人にとって必要な支援とは 〜事例から検討できること ↓
○遺産分割協議の判断を自ら行うことが困難→「この部分は」後見人等の関与が必要。↓
・遺産分割協議終了後は 後見人等の存在は必須なのか? ※現行法では、継続せざるを得ない →必要である場合でも利用を躊躇する 一因となってしまっている。 ↓
・従前の家族による支援 ・意思決定支援や福祉サービス利用を援助する仕組み +
・今後想定される本人やその取り巻く状況の変化にどのように対応するか?
・必要な支援体制とは?
○権利擁護支援チームの存在↓
・家族等の支援があり権利擁護支援チームが機能している場合 法的課題が解決すれば成年後見制度利用の終了を検討できる。
・家族等による支援が期待できないなど後見人等の支援が必要な場合 成年後見制度の利用を継続するが、市民後見人等へのリレーも検討
・法的課題がなく十分な支援がある場合 日常生活自立支援事業、 意思決定支援をサポートする権利擁護支援策等が 充実していれば権利擁護支援チームに後見人等は必須ではない (法的課題が解決した後の後見人等の退任も検討できる) →権利擁護支援チームが十分な機能を果たすこと + その時の本人の状態・状況に合った支援に柔軟に変更できる体制 チームをバックアップする中核機関の存在 後見人の選任・交代・終了時の家庭裁判所との情報共有・連携
○中核機関・権利擁護支援の地域連携ネットワークの存在
・本人の状態、取り巻く状況の変化により必要な支援は変化する (合わせてチームの構成員も変化する)
・権利擁護支援チームの自立後もケースに応じて 中核機関との情報共有や連携が必要
○成年後見制度利用の必要性の判断について
・本人の状態・取り巻く状況の変化に伴いチームにおける本人支援の中で 後見人等の「必要性」「役割」も変化する
・成年後見制度が必要とされる状況を把握しスムーズにつなぐ仕組みが求められる。
(中核機関が状況把握、家庭裁判所との連携)必要なときにいつでも利用できる。(安心して終了できる)

2.必要な人に必要な制度がつながる連続した権利擁護支援の充実に向けて
・権利擁護支援チームの形成の中で本人に必要な権利擁護支援策を検討(成年後見制度利用が必要か?)
・成年後見申し立て時の受任者調整(選任後の後見人の役割や交代などの方向性も検討・ 家庭裁判所とのイメージの共有) ※選任時に役割や方向性が整理されていると後見人は的確に必要な本人支援が行える→本人にとってメリット大
・後見人等が「チーム」にいない権利擁護支援チーム→地域における継続した支援体制(必要とされる場合は、適切な時期に成年後見の申立て)
・成年後見制度利用後における必要性の見直し
・取消審判の後の家庭裁判所との情報共有
→法制化の必要性
・中核機関と家庭裁判所との円滑な情報の共有と連携のための法的裏付けが必要
・総合的な権利擁護支援策の事業の充実(社会福祉法第二種事業として位置づける等)


【構成員提出資料】永田構成員提出資料
≪第 3 回 地域共生社会の在り方検討会議 意見書≫   同志社大学 永田 祐
第1回の意見書でも述べた通り、成年後見制度は、「適切な時機に、必要な限り」で利用される制度へと改革の議論が進められている
。そうであるなら、地域で判断能力が不十分な人を支える福祉側の総合的な権利擁護支援策の充実が喫緊の課題となる。同時に、従来、福祉(例えば、日常生活自立支援事業)から、成年後見制度への適切な移行が利用促進として重視されてきたが、成年後見制度から福祉への移行も重要になってくる。こうした 双方向の司法と福祉の連携の中核となる機関(機能)を明確にすることが重要なこともすでに指摘した通り。 以下、この2点と権利擁護への市民の参加について意見を述べる。

1.総合的な権利擁護支援策の充実の方向性
日常生活自立支援事業は、判断能力が不十分な人の法的能力を制限しない、意思決定支援の事業として高く評価されるべきものだが、現行の体制では、成年後見制度の改革の先に見える新しい地域における支援体制に、 質量ともに応えられない。
量的な観点では、実利用者は約 56,000 人でほぼ横ばいで推移しており、実施体制に限界があることを示唆している。質的な観点からみると、例えば、@法律上の「福祉サービス利用援助事業」に厳格になりすぎてしまうと、日常的な金銭管理といった現場で求められる本人の生活ニーズに十分に応えられないおそれがあること、A生活支援員は専門員の指揮下で業務をする立場であるため、意思決定支援が十分に確保されるか疑問が残ること、B後見終了時に本人が契約できない場合には本事業での対応が困難であること、といった課題が指摘できる。一方、第二期成年後見制度利用促進基本計画のもとでは、「総合的な権利擁護支援策の充実」の一つとして、「新たな連携・協力体制の構築による生活支援・意思決定支援の検討」が掲げられ、「簡易な金銭管理等を通じ、地域生活における意思決定を支援する取組」のモデル事業が各地で実施され、一定の成果や課題が報告されている。 モデル事業の成果や課題を踏まえた日常生活自立支援事業の拡充・見直し及び総合的な権利擁護支援策の具体化には、大きく分けて、@日常生活自立支援事業の拡充、Aモデル事業の事業化、B(事実上の@+Aとして)モデル事業の成果を取り入れつつ日常生活自立支援事業を大幅にリニューアルして拡充、Cモデル事業 における各機能(日常的な金銭管理(赤)、監督・支援(緑)、意思決定支援(青))をそれぞれ事業化、といった方向性(@〜Cの部分的な組み合わせを含む)が考えられる。 引き続き検討を要するものの、現時点では、「モデル事業で得られた成果や課題を踏まえつつ、日常生活自立 支援事業を大幅にリニューアルして事業規模の拡充を図るとともに、モデル事業において重視された各要素についてそれぞれ個別に事業化を目指す」ことが妥当かつ現実的な対応ではないか(B+C)と考える。即ち、現行の日常生活自立支援事業が、モデル事業でいう日常的な金銭管理(赤)と意思決定支援(青)の2要素を持つ事業(赤+青)であることに着目し、この事業について、十分な予算・人員の確保を図った上で、総合的な権利擁護事業として社会福祉法上の事業に位置付け、全国の各地域における権利擁護支援の基軸事業とすることが考えられる。なお、社会福祉事業であれば、都道府県による監督にも服することとなり一定の監督(緑)作用は期待できるものの、日常的な金銭管理(赤)と意思決定支援(青)について相互の牽制機能が働くよう、事業の実施主体 内における内部牽制体制の確立(部署を分けた上で監査機能を拡充する等)に留意すべきである(B)。 また、前述の総合的な権利擁護事業(日常生活自立支援事業のリニューアル版)を基軸としつつ、各地域にお ける本人に対する支援策の上乗せを図る観点から、モデル事業の各要素について個別に事業化を行い、各地域において選択的に実施できるような環境を整えることができれば、地域の実情に応じた権利擁護支援体制を展 開できるのではないか。例えば、意思決定支援サポーターの養成事業を立ち上げ、養成者が中核機関等に登録して、後見終了時に本人と意思決定支援サポーターをマッチングすることもできるようになると考えられる(C)。 なお、これらの提案は、成年後見制度の見直しに係る民法改正の施行が数年以内に迫っていることに鑑みたものであり、厚生労働省においては、これまで成年後見制度利用促進専門家会議において検討を重ねてきたモデル事業の各要素(赤・青・緑)を十分に踏まえた制度設計に努めるべきと考える。また、身寄りのない高齢者等を支援する枠組みとも大きく重なってくることから、今後の議論において、両者の検討が縦割りにならないよう包括的な検討を行っていくことが肝要である。

2.司法と福祉の連携の核となる機能の明確化
中核機関整備済み自治体は、令和5年4月1日時点で 1,070 市町村(61.5%)
となっており、量的にも十分にその整備が進んでいるとは言い難い。さらに、質的には「小さく生んで大きく育てる」をキーワードに、広報・啓発や 相談機能から体制整備が進められてきたため、その機能や取り組みには格差があるのが実態である。特に、家庭裁判所との連携が重要になる「受任者調整の仕組みづくり」は整備済み自治体の半数程度でしか取り組まれておらず、成年後見制度の見直しに向けて期待される「後見人等の選任後のチームの自立支援」については、1/4 の 中核機関では実施されていない。開始に当たっての適切な後見人の選任や終了に当たっての家庭裁判所との情報共有については、現状の実施状況のままでは、非常に不十分な状況であると言わざるを得ない。一足飛びにあらゆる機能を実現できないとしても、少なくとも司法(家庭裁判所)と開始及び終了に当たって情報を相互に 共有し、適切な支援が行えるような機能を何らかの形で法制化すべきであると考える。同時に、このような機関のあり方は、包括的な支援体制の構築と一体的に検討すべきであり、新たな機能の追加が屋上屋とならないように 留意すべきである。

3.市民の参加という観点
不足している機能が大きすぎるため、総合的な権利擁護支援策にしても、身寄り問題にしてもややもすると具体的な事業のあり方ばかりに目が行きがちである。しかしながら、専門的な支援(成年後見制度)や日常的な金銭管理を含む生活支援の基盤には、本人が地域社会に参加するための意思決定を後押ししたり、その人に人格的に関わる市民の存在が不可欠である。市民後見人は、後見人として法的な権限を持ちながらも、相対的にそのような役割を果たしてきたし、生活支援員、介護サービス相談員なども本来、市民によるインフォーマルなアドボケイトの役割が期待されてきたと考えられる。身寄りのない人への支援とも共通することだが、これまで各種制度で育んできた権利擁護人材を鳥瞰した整理を行い、新たな成年後見制度や総合的な権利擁護支援の中での市民の活 躍のあり方や位置づけを検討していくことも重要だと考える。

【参考資料】 構成員名簿→17名。

次回は新たに「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会第6回資料」からです。

第3回地域共生社会の在り方検討会議 [2024年10月10日(Thu)]
第3回地域共生社会の在り方検討会議 資料(令和6年8月21日)
議事(1)成年後見制度の見直しに向けた司法と福祉との連携強化等の総合的な権利擁護支援策 の充実について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_42688.html
◎資料3 石山参考人(福岡県大川市)提出資料
≪大川市における 持続可能な権利擁護支援モデル事業の取組≫
大川市福祉事務所 次長兼地域福祉係長 石山裕子
○大川市の概要(R6.4.1)→人口 31,450人、高齢化率 36.9%。その他あり。
○大川市の取組み〜持続可能な権利擁護支援モデル事業化のプロセス〜
・令和3年度 成年後見制度利用促進計画策定
・令和4年度 成年後見センター(中核機関)設置
大川市権利擁護ネットワーク会議設置(地域連携ネットワーク)
・令和5年度 組織改編 ※成年後見制度の事務を福祉事務所に新設の地域福祉係に統合
■ポイント→・既存事業を見直し、重複する組織や事務を統合 ・地域ケア会議の機能を活用し課題を明確化、関係機関と認識共有


○大川市の取組内容→【事業の目的】(参照)に沿って「市、社協、成年後見センターで作戦会議」⇒KAERUカードの仕組みを活用してDX、ICT活用取り組み。
○KAERUカードとは→特徴1〜3のプリペイドカード。「予算管理」「パートナー設定」あり。
○【大川市持続可能な権利擁護支援モデル事業イメージ】※事業開始当初→【協議の場】 医療機関や社会福祉法人も参加し、身寄りのない人等の入院や入所、金銭管理支援の円滑化を検討。 事業イメージ図 参照。
○大川市の取組み〜身寄りのない人の入院等〜→【規範的統合】私たちの取組内容⇒ @身寄りのない人の入院・入所対応マニュアルの作成。 R6.2月完成「大川市身寄りがない人の入院や入所に関する支援 マニュアル。 A身寄りのない人等の日常的金銭管理支援の仕組みづくり R6.2開始「大川市おひとりさま支援事業」
○大川市の取組み〜簡易な金銭管理・意思決定支援〜→大川市おひとりさま支援事業における各主体の役割等  参照。
○大川市おひとりさま支援事業の利用フロー1/2→啓発:終活セミナー エンディングノート→本人:利用の意思・相談⇒@〜➄を経て「活動・支援開始]
○大川市おひとりさま支援事業の利用フロー2/2↓
・活動・支援開始→本人:意思の表出・形成・実現→大川市実績確認→活動報告(年2回)→大川市権利擁護ネット ワーク会議へ。日常的金銭管理サービス、意思決定支援も参照。
大川市おひとりさま支援事業 入院時フロー↓
・本人:意思の表出・形成・実現→医療機関で利用者証を提示(・本人が希望する場合、治療に関する説明に意思決定サポーターが同席 ・事前に貸金庫に預かったエンディングノートを活用)→日常的金銭管理サービス 大川市社会福祉協議会(金融機関)→支払いは意思決定支援者に届く。
○意思決定サポーターの状況(令和6年6月末現在)→登録者数:4名。属性:社会福祉法人職員3名、元職員1名。
○おひとりさま支援事業利用状況(令和6年6月末現在)→利用者数:2名。属性:Aさん 30代 女性 知的障がい(グループホーム入所中)。Bさん 80代 男性 高齢者(脳梗塞 入院中)
○利用開始までの流れ(Aさんの場合)→「利用前の暮らし」から「おひとりさま支援事業を取り入れた暮らし」へ。サポーターと共にした暮らしへ。

○大川市の取組み〜効果と課題、今後の展開〜↓
【効果】:市、市社協、後見センターだけでなく、三士会、金融機関、医療機関、福祉施 設等と現状の認識及び連携した取り組みの必要性に関する規範的統合ができた。 2名の方へ支援開始し、意思決定支援と生活費の管理、入院費支払いができた。 事業の利用により、利用者のやってみたいことが広がった。
【課題】
・身寄りのない人の入院入所
→ @入所者の病院受診時の付添などの事実行為を誰が担うのか右矢印1国の制度的対応が必要 Aマニュアルの普及 右矢印1多職種連携研修でマニュアルを使用した事例検討など実施 B市民の終末期に関する事前自己決定 右矢印1終活セミナーや医療機関でのACP推進。
・簡易な金銭管理サービスと意思決定支援→ @費用負担 右矢印1継続実施のためには財源措置
が必要 A意思決定サポーターの人材確保 右矢印1市民への周知啓発、定期的な研修 B金融機関の参入拡大 右矢印1金融機関の理解促進。


◎資料4 住田参考人(特定非営利活動法人尾張東部権利擁護支援センター長)提出資料
≪成年後見制度の見直しに向けた司法と福祉の連携強化等の総合的な権利擁護支援策の充実について≫
特定非営利活動法人尾張東部権利擁護支援センター センター長 住田敦子
○特定非営利活動法人 尾張東部権利擁護支援センター
設置主体(5市1町)平成23年10月開設→中核機関受託(平成31年4月〜)(広報啓発・相談・市民後見推進(累計40件)。候補者調整・後見人支援・協議会の事務局)。    独自事業 法人後見 (累計135件)。

○愛知県の中核機関体制整備状況
・愛知県の特徴→広域行政によるセンター設置4か所 愛知県内の広域市町設置率(45%)。
※尾張東部権利擁護支援センターにおいては 2つの協議会を開催(年間8回以上、行政は
課長職)。その他、日常生活自立支援事業担当者ミーティング(5年目)、意思決定支援プ
ロジェクト・権利擁護支援プロジェクト 身寄りのない人の支援プロジェクトの取組を行っ
ている

○本日の報告↓
【T】中核機関における地域連携ネットワークのコーディネートの取組の現状や課題について
○第2期成年後見制度利用促進基本計画における 中核機関の役割
○センター運営の組織体制

○法人後見からコーディネート中心の事業展開の経過→※尾張東部圏域における成年後見制度利用促進計画(6市町の共通計画)参照。
○地域連携ネットワークのコーディネートの取組→中核機関としてのコーディネート@➁B参照。尾張東部圏域における成年後見制度利用促進計画進行管理推進委員会(協議会) 計画の進捗・評価・PTの発足(家庭裁判所・愛知県・県社協 オブザーバー参加)。
○センター機能と中核機関、法人後見の関連→権利擁護支援センターの中身、その他関係。
○中核機関の受託以降のセンター業務の変化(第2期計画策定での業務量分析結果)→中核機関におけるコーディネート業務割合の増加。
○広報・相談(相談支援機能)→中核機関が主催する 様々な研修・講演会など 参照。
○尾張東部圏域の首長申立ての推移→11年間で約90倍の増加
○6市町の日常生活自立支援事業担当者 生活困窮者自立支援事業担当者ミーティングの定例開催→ミーティングにおけるPT(プロジェクトチーム)による活動⇒そろそろPT:そろそろシート作成・試行的実施(連携ツールの開発)へ。
○法律専門職とのネットワーク構築の工夫→法律専門職との連携ツールの仕組み作り @利用支援事業整備A名簿の整備。「成年後見制度利用支援事業要綱」の5市1町共通整備→専門職後見人の報酬担保の独自の連携システムを構築⇒専門職協力者名簿登録制度(H26〜)となる。
○担い手の育成支援 市民後見推進事業10年間の取組み→●市民後見推進事業により市民の参加による 地域連携ネットワークの構築。 ●専門職、各市町社会福祉協議会、家庭裁判所との連携推進。
○相談・苦情の対応分類→(中核機関による支援 19人/支援回数142回 R4年度)

【U】福祉と司法の更なる連携強化に向けて中核機関が果たすべき役割や位置づけに対する見解について
○成年後見制度利用の入り口支援
→@〜➄⇒家庭裁判所との連携へ。
※家庭裁判所との更なる連携強化の視点→中核機関における支援方針、候補者調整の認識共有(見解が異なる場合の対応/連携) 申立時における支援の見立て方針の共有(後見人交代のタイミング) 市民後見人への理解と中核機関、市町村、都道府県との連携。

○成年後見制度利用中の支援→@〜Bまで。
※家庭裁判所との更なる連携強化の視点→・適切な後見人等への交代の妥当性とタイミングの認識共有 ・後見人等に対する苦情に関する報告・連携 ・身上保護、意思決定支援に関する裁判所の理解促進

○成年後見制度終了の支援(出口支援)→課題解決後の成年後見制度終了の検討@〜B
※家庭裁判所との更なる連携強化の視点→取消審判申立て時における家庭裁判所との情報共有(終了後の支援方針)⇒ 例 C日常生活自立支援事業への移行 ※日常生活自立支援事業の見直し・強化が重要。 例 D持続可能な権利擁護支援モデル事業等(より制限の少ない方法)への移行 ※モデル事業の普及には時間を要する。
課題:本人が支援を望まない、CDの解約の場合、課題再発の可能性あり。


◎資料5 向井参考人(最高裁判所事務総局家庭局第二課長)提出資料
≪福祉と司法の連携に関する取組の 現状と課題について≫
令和6年8月21日(水) 最高裁判所事務総局家庭局
1 福祉・行政等と家庭裁判所の機能・役割
→福祉・行政等と家庭裁判所は機関としての本
来的な機能や役割が 異なるため、「支援」機能と「運用・監督」機能という異なる機 能と
して整理された。 
地域連携ネットワークの充実を図るためには、 福祉・行政等と家庭裁判所とが、噛み合
たかたちで、それぞれの機能を担っていくことが必要。

2 家庭裁判所の機能・役割と相互理解→中立性・公平性の維持を求められる司法機関として、 できることと、できないことがある。
地域連携ネットワークの充実を図るためには、 福祉・行政等と家庭裁判所とが、噛み合った かたちで、それぞれの機能を担っていくこと が必要。

3 権利擁護支援を行う三つの場面における機能→三つの場面に「福祉・行政・法律専門職などの多様な主体による「支援」機能」「家庭裁判所による成年後見制度の「運用・監督」機能」についての説明あり。

4 福祉・行政等による申立前の調整→福祉・行政等による支援⇒ 受任者調整会議等あり。

5 成年後見制度の利用開始までの場面→福祉・行政等による支援⇒ 受任者調整会議等で十分に考慮後→家庭 裁判所による後見人等の選任へ。

6 福祉・行政等と家庭裁判所の連携と中核機関の法制化→中核機関の法制化により、 中核機関が主催する受任者調整会議に法的な根拠が与えられれば、福祉・行政等による支援・ 調整と家庭裁判所による判断とが適切に噛み合うこと が期待される。

7 個人情報の共有と中核機関の法制化→地域連携ネットワークにおける連携と取組を更に推し進めるためには、中核機関が 法制化され、関係機関間において円滑に情報共有できるようになることが重要。⇒受任者調整会議の充実、中核機関による取組の充実につながり、「切れ目のない本人支援」へ。

8 地域連携上の課題と中核機関の法制化→将来的に市民後見人への交代を行う想定をしていた事案について、交代を検討すべき時期が来た場合や、 地域連携ネットワークの関係者が後見人等の不正を把握した場合などにおいて、家庭裁判所と中核機関が 適時・適切に連絡できるしくみを整える。(第二期計画41頁)⇒「適時・適切な連絡」に当たっては、一方通行ではなく相互に情報が流通することが必要。
中核機関が法制化され、中核機関の役割が明確になることにより、改めて福祉・行政全体にお ける役割分担も整理され、相談窓口の明確化やその周知が図られ、家庭裁判所との連携もより 深まるのではないかと考えられる。

次回も続き「【構成員提出資料】(3人)」からです。

地域社会福祉と民事法制との一体的な改革という要請 [2024年10月09日(Wed)]
◎資料2−1、2−2 山野目参考人(早稲田大学大学院法務研究科教授)提出資料
地域社会福祉と民事法制との一体的な改革という要請≫ 早稲田大学教授 山野目 章夫
1 序――ふたつのキーワードをめぐる論点の整理 →権利を実現して、人々は、暮らしを立てる。 身分でなく権利の体系として成りたつ近代は、文明の発展の一つの到達点で あったにちがいない。到達点は同時に困難な道のりの始まりであった。市民革命 から今日までの時代は、産業革命が始まって高度工業社会を迎え、さらにその後 へという動きが併行し、効率を追い求める経済社会をもたらしたことが、忘れら れてはならない。情報や交渉力における現実の格差があり、それらにおいて優位 にある者らの権利が実現される半面において、格差の歪みが作り出す大きな社 会的な障壁が立ちはだかり、貧しさに苦しむ人々、ひとりで子を育てる親たち、 年少の者ら、加齢や心身の故障により難しい状況にある人々らがある。 近代という物語は、これらの人たちの権利実現の実質的な保障が図られなけ ればならないという必然の要請を伴う。
ここに、福祉における権利の実現(役所が用いてきた表現に近づけて述べるならば、権利擁護)という課題が立ち現れる。
効率が重んじられる大勢にある社会にあって、さまざまな困難に苦しむ人々 は、相対的に少数である。その人たちの権利の実現を素朴に代表民主制(議会と その信任に拠る行政府)に依存することは、相当でない。司法が成年後見や児童福祉に関わる仕組みは、運用において諸種の課題があるとしても、大宗において根拠がある。 このことを確かめたうえで、権利の実現の最終的な担い手となる司法が、裁判所(日本の実際の制度に即して述べるならば家庭裁判所)とその外郭をなす専門 職能(同じく弁護士や司法書士)からなる姿を想起しつつ、福祉と司法との間の 良い役割分担が考究されなければならない。 本人の日日 にちにち の暮らしを見守り、これに伴走する人々と共に権利を実現していく局面が当然のことながら存在する。何よりも、生計に要する標準的な費用に充 てられる金銭の管理およびそれに係る預貯金の取引などは、そうである(☞次述 2(2)・後述 4〈事業〉)。
半面において、日日というものを越える事項は、その権利の実現に携わる専門 職能を用いて本人の権利が実現されなければならない(☞次述(1) a))。 このような思考整理を経て、そこに大きな 2 つの課題が立ち現れる。第一に 福祉に求められる権利実現の役割とは何か、を明らかにすることであり、第二に、 福祉から司法への架橋の良い仕組みを見出すことである。

2 福祉に求められるもの
(1) 成年後見制度改革の動向→成年後見制度は、法律家による専門的な支 援が要ると認められる課題が現に存する場合において、これを本人が用い、また、 その課題が解決した場合において、これを本人が用いることを止める(後見を開 始する審判を取り消す)とする方向で見直される可能性がある。
a) 適切な時機に必要な限りで――という要請
→政府は、2022 年 3 月、成年後見制度利用促進基本計画(第二期)を決定した。そこにあっては、成年後見制度の見直しの問題提起をして、「成年後見制度については、他の支援による対応の可能性も踏まえて本人にとって適切な 時機に必要な範囲・期間で利用できるようにすべき(必要性・補充性の考慮)、三類型を一元化すべき、終身ではなく有期(更新)の制度として見直しの機会を付与すべき、本人が必 要とする身上保護や意思決定支援の内容やその変化に応じ後見人等を円滑に交代できるよ うにすべきといった制度改正の方向性に関する指摘、障害者の権利に関する条約に基づく 審査の状況を踏まえて見直すべきとの指摘、現状よりも公的な関与を強めて後見等を開始 できるようにすべきとの指摘などがされている」
と述べられる。これを受け、法制審議会民法(成年後見等関係)部会の部会資料 2 においては、つぎの問題提起がされた。
「法定後見制度(特に、後見の制度及び保佐の制度)については、制度利用の動機となった課題が解決したと考えられる場合でも、判断能力が回復しない限り制度の利用が継続することや、本人の判断能力の程度を基準として保護者に付与された法定の権限(代理権や取消権、同意権)が本人にとって実際に必要となる範囲を超えている場合があることが問題であるとの指摘がされており、これらを理由として、制度が硬直的で使いにくいといわれている。そして、このような問題意識を踏まえ、本人が適切な時機に必要な範囲及び期間で制度を利用することができるようにするために、法定後見の開始に当たり、法定後見による保護が必要であることを個別に考慮するものとすることを求める意見がある」。
ここに「制度利用の動機となった課題」とは、自宅やその他の不動産の売却、 親族について開始した相続に係る遺産の分割の協議などの手続への参画や、施設に入所する契約の締結およびそれに関連する金銭の給付の事務などが想定される。

b) とりわけ後見の終了に際し→とはいえ、毎日毎日、不動産を売却する必要に迫られる高齢者、障害者があるとは想像しにくい。たびたび親族の遺産の分割を話し合う席に臨まなければならない者も珍しい。 適切な時機に必要な限りにおいて、という要請が果たされず、いったん本人に対し始まった後見が(円滑な後見人の交代がないまま)続くという事態は、本人とその家族に対する負荷が大きく、そして、その負荷には意義が乏しい。家族の 声に耳を傾けよう。
「今までの現状から言いますと……一度使うとやめられないというのが一つあるのです ね、家族の誰かがお亡くなりになって、財産分与のときに後見人を使った、だけれどもその後、後見人が力量を発揮していただけるようなことは余りないのだけれども、ずっと後見人が傍らにおられて、何か私たち、こういう言い方をすると大変失礼ですけれども、親や本人からすると、毎月 2 万円取られるみたいな言い方をするわけですよね。何のお仕事をしていただく必要もないのに 2 万円取られてしまうという言い方を家族の中でする人はとても多いわけなのです。というのは、やはり、特に親が心配していますのは、親がいるうちはまだ金銭的にも応援ができる、だけれども、どっちみち親が先に逝きますから、第三者に託さなければならないときが来るわけですよね、そこを親は心配をしています。それで、本人が 親亡き後も暮らしていくには、障害のある人たちの収入というのは障害基礎年金が中心ですよね。多少福祉的就労とかをして、お仕事というか工賃があっても、1 万円前後ぐらいのことが多いわけです。それにも全然届かない方もたくさんおられます。その中で、大体基礎年金というのは 6 万円から 8 万円ちょっとぐらいの範囲で、1 級年金から 2 級年金までは 8 万円から 6 万円ですけれども、その中でお家賃 5 万円ぐらいが普通、全国平均 5 万円ぐらいです。東京だと 10 万円というところもありますけれども。それと食費を払い、光熱水費を払い、ということをするわけです。そうすると、御本人の手元にほぼ残らないような状態なのです。少し残ったものでお医者さんに掛かったり、散髪に行ったりというような感じですので、そこで後見人にお金が払えない。大事な制度だと分かっていても、払えないから使わないというのが一つあります」(久保厚子委員・発言・同部会第 1 回会議、2024 年 4 月 9 日)。
こうした問題提起を受け、後見を終了させる要件について論議の状況を整理 する同部会の部会資料 3 を踏まえて行なわれた同部会の調査審議は、もとより未だ成案に達していないものの、当面、つぎのような方向に集約される。
「本日段階で一つ確かめておきたいことは、必要性の検討は難しい問題で、引き続き検討しなければいけません、ということは、そうであるとして、少なくとも現行法の発想は改め るということについて、委員、幹事の間には、そこを踏まえて今後の議論を進めようというお考えでいらっしゃるであろうというふうに、これまでの議論は受け止めていますけれども、確かめさせていただいてよろしいですか。すなわち、どなたも専門家でいらっしゃいますから、よく御存じのことを申し上げることになりますが、現在の民法の規定では、後見を例にしますと、事理弁識能力が回復したときは後見開始審判を取り消すと定められています。限り、という言葉は用いられていませんが、伝えようとしている規律の内容は、事理弁識能力が回復したときに限り後見開始審判を取り消すというものが現行法の規律です。… …従来の、医学的な判断に専ら依拠して後見の終了を決める、その結果ほとんどの場合において終わらない後見になっているという実状を睨み、終わらない後見を終わらせるという課題のための検討にこれからチャレンジしていくという方向で、次回以降の部会資料を今日の御議論も踏まえて作成した上で議論の継続をお願いするという議事に恐らくなるであ ろうと受け止めますけれども、このように進めていくこと自体については御異論がありませんか。 それでは、必要性の中味が難しいということを確認し、しかしその議論に挑戦するというところまで今日御議論いただいたという取扱いにして、部会資料 3 の 1 のところについて の議論を中締めにいたします」(部会長・発言〔発言の要旨、追って議事録が確定され公表される予定〕・同部会第 3 回会議、2024 年 6 月 11 日)。

(2) 新しい社会福祉事業の構想→ 日常的な金銭管理や社会生活上の意思 決定支援における本人への意思決定支援の仕組みを充実していかなければならない。充実ということの意義内容として、公的な補助、支援、助成のような給付行政の展開にとどまることは、不十分である。後見が終了した後、本人が、制度上の根拠をもち、かつ運用上の実績を備える地域福祉の営みに委ねられる見通 しが得られなければならない。 精神上の理由により日常生活を営むのに支障がある人々のために、無料または低額な料金で、生計に要する標準的な費用に充てられる金銭の管理およびそれに係る預貯金の取引、そのための印鑑や証書などの書類の保管などに加え、これに関連する諸事務、たとえば公共料金の支払の代行などの事務、また、介護保険サービスなどに係る各種の公的機関における手続の代行をすることが、明瞭に第二種社会福祉事業が提供する福祉サービスとして位置を与えられるべきである。日常生活自立支援事業の装いを新しくして、拡充するものとみてもよい(☞後述 4〈事業〉)。 この事業を営もうとする社会福祉法人などは、社会福祉法 68 条の 2・69 条の例に倣って都道府県知事への届出をしなければならないものとし、同法 70 条・ 71 条・72 条の例に倣い監督行政に服させるほか、都道府県社会福祉協議会に置かれる運営適正化委員会の助言や勧告を受けるものとすることが考えられる (同法 83 条参照)。

3 福祉から司法への架橋
(1) どのように伝えるか
→本人が現実に置かれた個別の状況を具体的に踏まえて後見を始めたり終わらせたりする仕組みへと民事法制の基本的な考え方が転換されようとしている情勢を睨みながら、裁判所が判断に際し用いる資料の充実が望まれる。医学的な知見の収集のみに言及する家事事件手続法 119 条・120 条の改正が課題とならざるをえない。 この見地から、本人の心身の状態や生活の状況など全般にわたる諸事情を伝える公的な資料を裁判所が活用することができる態勢が要請される。現在の運用において試みられている工夫を参考とし、裁判所が用いる公的な資料の法制上の位置づけが明瞭にされるとよい(☞次述 4〈情報〉)。その際は、資料を作成することができる機関や資格者の規律、また、虚偽の記載がされる場合の罰則の整備などが課題となる。かなりの部分は、家事事件手続法の上記各規定の改正問題であるが、機関や資格に関する法制上の細目や、関連する個人情報の扱いなどは、社会福祉法制と共管的に法制整備がされることが望ましい。

(2) だれが伝えるか→後見の開始およびその終了を判断する際、法定された機関を通じ、地域福祉の支援態勢を確認し、十分な支援が見込まれるかどうかを検討しなければならない。現行の家事事件手続法 119 条 1 項が後見の開始を決めるにあたり専ら医師の意見を聴くものとするところは、いわゆる医学モデルを象徴する。このような規律を改め、具体の本人の心身の状態および生活の状況、とりわけ、本人が後見を用いる現実の需要を明らかにしたうえで、後見の開 始を決めることができる態勢を調えるために要請される法制上の措置は、同項を改正して済むものではない。求意見の対象機関として地域の社会福祉の機関が想定され、それは、法制上の存在でなければならない(☞次述 4〈架橋〉)。 社会福祉法制の見直しにおいては、家事事件手続法の改正と併せて、いわゆる 中核機関の一部の機能が、社会福祉法の法文において読み取ることができる存在として法制化されることが不可欠である。中核機関は、地域連携ネットワークのコーディネートを担う中核的な機関や体制をいう。中核機関が、本人や関係者から権利擁護支援や成年後見制度に関する相談を受け、必要に応じて専門的な助言などをし、権利の実現のため本人のためにする事務の内容を検討し、支援を適切に実施するため連絡調整をするものとされるべきである。

4 結――令和 2 年法律第 52 号の附則 2 条に基づく法制への期待→ 大切であることとして、これらの地域社会福祉と民事の法律制度の改革は、バラバラにされてはならない。地域社会福祉、そして民事の法律制度は、地域社会 福祉と民事の法律制度との一体的改革がされることが強く要請される。その要目は、つぎのとおりである。
〈事業〉 日常的な金銭管理や社会生活上の意思決定支援を主題として実践さ れてきた持続可能な権利擁護支援モデル事業を明瞭に制度上の事業とする(☞ 前述 2(2))。
〈情報〉 地域社会福祉と家庭裁判所との連携を強化し、後見の開始時、そして終了時における本人および地域における支援策の有無に関する情報提供の在り方を調える(☞前述 3(1))。
〈架橋〉 成年後見制度と地域社会福祉を架橋する役割を果たす中核機関の存在を法制上明確なものする(☞前述 3(2))。
ここまでに話題にした政策課題は、その汎用性において、必ずしも高齢者、あるいは障害者に限ったものでない。成年後見制度の改革と連動する地域社会福祉の大きな変革のうねりは、そこからひとまずの成果が試験的にせよ得られるならば、高齢者や障害者のほかにも、人生の辛苦と向き合っている様々な人々のために、容易に応用ができる。たとえば子どもたち。さまざまな事情から、母、 そして父の双方または一方と共にする暮らしがかなわない子どもらがある。東日本大震災は、父母を津波で流され、その時から親の財産を相続し、あるいは交付される災害弔慰金を管理しなければならない少年たちを生じさせた。 さしあたりは後見のなかでも成年後見が主題とされるが、あわせて未成年後見にも目配りし、民法の規定を読みやすいものにするなどの法制の整備も考えなければならない。
成年後見制度を含む地域社会福祉の包括的な改革は、ただ高齢者や障害者に 福利をもたらすところにとどまらず、ヤング・ケアラーやシングル・マザーのように、日日を懸命に生き続ける人たちのためにも応用可能なヒントを提供してくれるにちがいない。これらの人々も、ひとしく私たちと同じ空を仰ぐ同時代の仲間である。 だれでも人は脆い(vulnérable な)状況に陥る場面がありうる。その場面はさまざまであるが、そうであるからこそ、人の多様な脆弱な状況を支え、助ける気概こそ、社会に求められる博愛の精神に依拠して要請されなければならない。 それはけっして慈善でも救貧でもなく、近代が産み出した構造問題を解決しようとする福祉の現代的な展開である。 重層的支援体制整備事業に緒を与えて社会福祉法を改正した令和 2 年法律第 52 号が附則 2 条において要請する法制の措置が、豊かな内包を擁するものであって欲しいと願う。


◎≪地域社会福祉と民事法制との一体的な改革という要請 ≫
地域共生社会の在り方検討会議  2024年8月21日 早稲田大学教授 山野目 章夫
1 序/ふたつのキーワード
→ 福祉 そして司法⇒本人の権利の実現
2 福祉に求められるもの
(1) 成年後見制度改革の動向
・ 閣議で決めた文書→成年後見制度利用促進基本計画(第二期)
・改革のはじまり→法務大臣による法制審議会ヘの諮問 (2024年2月15日、諮問126号)
・審議会資料を読む→ 法制審議会 民法(成年後見等関係)部会 部会資料2 ⇒「制度利用の動機となった課題が解決したと考えられる場合でも、判断能力が回復しない限り制度の利用が継続することや、本人の判断能力の程度を基準として保護者に付与された法定の権 限・・・・・・が本人にとって実際に必要となる範囲を超えている場合があることが問題であるとの指摘がされており・・・・・・本人が適切 な時機に必要な範囲及び期間で制度を利用することができるよう にするために、法定後見の開始に当たり、法定後見による保護が 必要であることを個別に考慮するものとすることを求める意見が ある」。
・事実上の終身性→「仮に素晴らしい後見人と巡り会えたとしても、専門職による後見はどうしても報酬の問題が付いて回ります。障害基礎年金 2 級は 7 万円そこそこですが、 そこから最低でも 2 万円程度の報酬を支払わなければならない。そしてグループホームで暮らすとなると、 もう払えないよねというような状態になっています」。
 成年後見制度の在り方に関する研究会 第1回会議 2023年6月7日より
・審議会の現在の議論→ 部会第3回会議 2024年6月11日 部会長発言要旨⇒「現在の民法の規定では……事理弁識能力が回復したときは後見 開始審判を取り消すと定められています。限り、という言葉は用いられていませんが、伝えようとしている規律の内容は、事理弁 識能力が回復したときに限り後見開始審判を取り消すというもの が現行法の規律です。……医学的な判断に専ら依拠して後見の終了を決める、その結果ほとんどの場合において終わらない後見になっているという実状を睨み、終わらない後見を終わらせるとい う課題のための検討にこれからチャレンジしていくという方向で ……進めていくこと自体については御異論がありませんか」。

(2) 新しい社会福祉事業の構想 →“第3の社会福祉事業”⇒日常的な金銭管理など日日の暮らし における権利の実現。 社会生活上の意思決定支援。

3 福祉から司法への架橋
(1) どのように伝えるか→ 医学モデルの克服(社会的モデルへ)
(2) だれが伝えるか→ 中核機関の法制化という論点⇒中核機関とは地域連携ネットワークのコーディネートを担う中核的な機関や体制。 本人や関係者から権利擁護支援や成年後 見制度に関する相談を受け、必要に応じて 専門的な助言などをし、権利の実現のため 本人のためにする事務の内容を検討し、支 援を適切に実施するため連絡調整をする。

○まとめ
地域社会福祉と民事法制との一体的な改革という要請→・〈事業〉権利擁護の事業 ・〈情報〉心身の状態 生活の状況 ・〈架橋〉中核機関の法制化

次回も続き「資料3 石山参考人(福岡県大川市)提出資料」からです。

第3回地域共生社会の在り方検討会議 [2024年10月08日(Tue)]
第3回地域共生社会の在り方検討会議 資料(令和6年8月21日)
議事(1)成年後見制度の見直しに向けた司法と福祉との連携強化等の総合的な権利擁護支援策 の充実について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_42688.html
◎資料1 成年後見制度の見直しに向けた司法と福祉との連携強化等の総合的な権利擁護支援策の充実について ↓
○第二期成年後見制度利用促進基本計画の概要 〜 尊厳のある本人らしい生活の継続と地域社会への参加を図る権利擁護支援の推進 〜(令和4年3月に「第二期成年後見制度利用促進基本計画」(計画期間は令和4〜8年度の5年間)を閣議決定)
T 成年後見制度の利用促進に当たっての基本的な考え方

◆ 地域共生社会の実現に向けた権利擁護支援の推進→地域連携ネットワークにおける権利擁護支援策の 一層の充実
◆ 尊厳のある本人らしい生活を継続できるようにするための成年後見制度の運用改善等→本人の自己決定権を尊重など@〜➄参照。
◆ 司法による権利擁護支援などを身近なものにするしくみづくり→地域連携ネットワークを通じた福祉と司法の連携強化により、必要な人が必要な時に司法による 権利擁護支援などを適切に受けられるようにしていく。
U 成年後見制度の利用促進に向けて総合的かつ計画的に講ずべき施策↓
1 成年後見制度等の見直しに向けた検討と総合的な権利擁護支援策の充実
(1)成年後見制度等の見直しに向けた検討
(2)総合的な権利擁護支援策の充実→新たな連携による生活支援・意思決定支援の検

3 権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり

○第二期成年後見制度利用促進基本計画(抄)↓
(総合的な権利擁護支援策の充実、権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり)
1 成年後見制度の見直しに向けた検討と総合的な権利擁護支援策の充実
(2) 総合的な権利擁護支援策の充実
→A新たな連携・協力体制の構築による生活支援・意思決定支援の検討⇒国は、公的な機関、民間事業者や当事者団体等の多様な主体による生活支援等のサービス(簡易な金銭管理、入院・入所手続支援等 各種の生活支援サービス)が、本人の権利擁護支援として 展開されるよう、意思決定支援等を確保しながら取組を拡げるため の方策を検討する。
3 権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり
(1) 権利擁護支援の地域連携ネットワークの基本的な考え方
@ 地域連携ネットワークの必要性と趣旨
→ ア 地域連携ネットワークの必要性⇒地域や福祉、行政などに司法を加えた多様な分野・主体が連携するしくみをつくっていく必要。
A 地域連携ネットワークのしくみ→ ウ 中核機関⇒ 中核機関とは、地域連携ネットワークのコーディネートを担う中核的な機関や体制であり、以下のような役割を担う。
・ 本人や関係者等からの権利擁護支援や成年後見制度に関する相談を 受け、必要に応じて専門的助言等を確保しつつ、権利擁護支援の内容 の検討や支援を適切に実施するためのコーディネートを担う役割
・ 専門職団体・関係機関の協力・連携強化を図るために関係者のコー ディネートを行う役割(協議会の運営等) 中核機関の運営は、地域の実情に応じ、市町村により直営または市町村からの委託などにより行う。市町村が委託する場合等の運営主体については、業務の中立性・公正性の確保に留意しつつ、専門的業務に継続 的に対応する能力を有する法人(例えば、社会福祉協議会、NPO法人、 公益法人等)を適切に選定するものとする。 なお、国は1(1)に記載した成年後見制度等の見直しの検討と併せ て、中核機関の位置付け及びその役割にふさわしい適切な名称を検討する。

○持続可能な権利擁護支援モデル事業〜簡易な金銭管理等を通じ、地域生活における意思決定を支援する取組〜 →・ 市町村の関与の下で、市民後見人養成研修修了者等による意思決定支援によって、適切な生活支援等のサービス(簡易な金銭 管理、入院・入所手続支援等)が確保される方策等を検討する取組。 ・ 意思決定支援の場面において、権利侵害や法的課題を発見した場合、専門職が必要な支援を助言・実施する、市町村の関与を求め るなど、司法による権利擁護支援を身近なものとする方策についても検討する。 ・ このことにより、身寄りのない人も含め誰もが安心して生活支援等のサービスを利用することができるようにすることを目指す。↓
<モデル事業を実施する上で課題となった事項の例> 参照。

○(検討事項)成年後見制度の見直しに向けた司法と福祉との連携強化等の総合的な権利擁護支援策の充実の方向性について
<新たな連携・協力体制の構築による生活支援や意思決定支援の在り方について>→今後、成年後見制度が「他の支援による対応の可能性も踏まえて本人にとって適切な時期に必要な範囲・期間で利用できる」制度に見直されるとした場合、判断能力が不十分な人(本人)の地域生活を支えるためには、地域福祉において、どのような連携・協力体制を構築すべきか。 ↓

・ 少なくとも、本人に対する生活支援等のサービス(簡易な金銭管理、入院・入所手続支援等各種の生活支援サービス)を提 供する取組が必要と考えられ、その実施主体及び方法等について、どのように考えるか。【イメージ@】
・ 生活支援等のサービス提供に当たっては、本人の希望に応じ、本人の意思決定を支援することが重要と考えられ、 本人に対する意思決定支援の範囲及び実施主体等について、どのように考えるか。【イメージA】
※ これらの点を検討する際、支援の持続可能性、既存の取組・地域資源の活用等を考慮するほか、判断能力が不十分な人が「配慮を要する消費者」とされていることに留意する必要がある。
<「中核機関」(※)に求められる新たな役割及びその位置付けについて> ※権利擁護支援の地域連携ネットワークのコーディネートを担う中核的な機関・体制 →成年後見制度の見直しに伴い、司法と福祉との連携強化等を図る観点から、中核機関は、今後、どのような役割を果たすことが必要になると考えられるか。【イメージ@】 ※ その際、新たな役割に応じた中核機関の位置付けやその名称等についても検討する必要がある。なお、検討に当たっては、中核機関の整備状況及び経緯等について考慮する必要がある。

○本人を地域で支えるための支援の実施体制及び方法、中核機関の役割・位置付けについて(イメージ@)→現在、地域には、本人を支える支援の輪(後見人を含む。)が多様に存在しているが、今後、成年後見制度が見直された場合、後見人以外の支援を得 て後見人が退任となる場合や、途中交代となる場合、重大な法律行為の発生により一時的に後見人を選任する場合等の発生が想定される。 ㋐今後、成年後見制度が見直された場合、地域福祉における本人に対する支援体制として、どのような主体が、どのような方法により実施することが適当かについて検討する必要がある。 ㋑また、成年後見制度の見直しも見据え、家庭裁判所との関係において、中核機関の果たすべき役割やその位置付けについて検討する必要がある。⇒ 権利擁護支援の地域連携ネットワーク 参照。

○地域福祉関係機関による意思決定支援の範囲及び実施主体について(イメージA)→今後、成年後見制度が見直されることによって、地域において、判断能力が不十分な人の意思決定を後見人以外の人が支援する場面が増えることも想定される。以下に例示した、本人に生じ得る意思決定のうち、地域福祉関係機関(組織・チームレベル)において、対応が必要、 かつ、支援が可能な意思決定支援の範囲及び実施主体について検討する必要がある。⇒必要となる判断能力の程度の高低によって、組織・チームレベル(日自事業、権利擁護支援チーム 等)による支援が必要な意思決定となる。

≪参考資料≫↓
@成年後見制度関係 (制度の見直しに向けた検討を含む。)↓

○成年後見制度とは?→民法の改正等により平成12年に誕生した制度。財産管理(不動産や預貯金などの管理、遺産分割などの相続手続など)や身上保護(介護・福祉サービスの利用契約や施設入所・入院の契約締結履行状況の確認など)などの法律行為を支える制度。「法定後見制度」は、判断能力が低下した際、裁判所により後見人等を選任する仕組み。「任意 後見制度」は、判断能力があるうちに、本人が任意後見人をあらかじめ選任しておく仕組み。
○成年後見制度の概要→ 精神上の障害により判断能力が不十分であるため法律行為における意思決定が困難な方々について、本人の 権利を守るために選任された援助者(成年後見人等)により、本人を法律的に支援する制度⇒法定後見制度・任意後見制度 参照。
○法定後見制度の概要→後 見・保 佐・補 助の説明。
○成年後見制度の利用状況等→利用者数はいずれも増加傾向。
○成年後見人等と本人との関係別件数(令和5年)→成年後見人等と本人の関係については、親族(配偶者、親、子、兄弟姉妹及びその他親族)が成年後見人等に選任されたものが 7,381件(全体の約18.1%)、親族以外の第三者が選任されたものが33,348件(全体の約81.9%)となっている。
○市民後見人について→市民後見人とは、弁護士や司法書士などの資格をもたない、親族以外の市民による成年後見人等であり、市町村等 の支援をうけて後見業務を適正に担う。 主な業務は、ひとりで決めることに不安のある方の金銭管理、介護・福祉サービスの利用援助の支援など。 市町村等の研修を修了し必要な知識・技術、社会規範、倫理性を身につけ、登録後、家庭裁判所からの選任を受けてから成年後見人等としての活動が開始される。
○法人後見について→法人後見とは、社会福祉法人や社団法人、NPO法人などの法人が成年後見人等になり、親族等が個人で成年後見人等に就任した場合と同様に、判断能力が不十分な人の保護・支援を行うもの。  法人後見では、法人の職員が成年後見制度に基づく後見事務を担当して行う。担当職員が何らかの理由でその事務 を行なえなくなっても、担当者を変更することにより、後見事務を継続して行うことができるという利点がある。

A権利擁護支援の地域連携ネットワーク関係(中核機関の整備状況・役割を含む。)↓
○「権利擁護支援の地域連携ネットワークの機能」 〜福祉・行政等の多様な主体の連携による個別支援と、家庭裁判所による制度の運用・監督〜
→地域連携ネットワークが担う機能には、権利擁護支援を行う3つの場面に対応した形で、福祉・行政・法律専門職など多様な主体の連携による「支援」機能と、家庭裁判所による「制度の運用・監督」機能がある。⇒「権利擁護支援を行う3つの場面」対応の「「権利擁護支援の地域連携ネットワーク」の機能」 参照。

○「権利擁護支援の地域連携ネットワークの機能」を強化するための取組 〜地域連携ネットワークの関係者における機能強化に向けた取組〜→権利擁護支援を行う3つの場面に応じ、福祉・行政・法律専門職など多様な主体の連携による「支援」機能と、家庭裁判所に よる「制度の運用・監督」の機能を適切に果たすため、地域・福祉・行政・法律専門職・家庭裁判所等の地域連携ネットワーク の関係者が、以下の3つの視点(ア〜ウ)を持って、自発的に協力して取り組むことが必要。(なお、市町村単位では取り組みにくい内容については、都道府県が市町村と連携しながら取り組んでいくことが重要。)↓
ア:異なる立場の関係者が、各々の役割を理解し、認識や方向性を共有するための「共通理解の促進」の視点。 イ:様々な立場の関係者が新たに権利擁護支援に参画し、取組を拡げていくための「多様な主体の参画・活躍」の視点。 ウ:多くの関係者が円滑かつ効果的に連携・協力して活動するための「機能強化のためのしくみづくり」の視点。⇒「権利擁護支援の地域連携ネットワークの機能」を強化するための取組(全国各地で共通して実施することが望ましいもの)

○(参考)「権利擁護支援の地域連携ネットワークの機能」を強化するための取組イメージ→権利擁護支援の地域連携ネットワークとは、「各地域において、現に権利擁護支援を必要としている人も含めた地域に暮らす全ての 人が、尊厳のある本人らしい生活を継続し、地域社会に参加できるようにするため、地域や福祉、行政などに司法を加えた多様な分野・主体が連携するしくみ」。
○「地域連携ネットワークの支援機能」と「地域の体制づくりに関する取組」の実施状況→地域連携ネットワークの支援機能と地域の体制づくりに関する取組の実施状況は以下のとおり。割合の分母は中核機関整備自治体の1,070。⇒「実施していない」:利用前1%。後見人の選任まで16.8%。選任後25%。

○「中核機関(※)」の整備状況(令和5年4月1日時点)※権利擁護支援の地域連携ネットワークのコーディネートを担う中核的な機関・体制→【成年後見制度利用促進施策に係る取組状況調査結果】⇒中核機関の整備状況 <整備済(R5.4時点):1,070市町村(61.5%)⇒ 整備済+整備見込あり:1,293市町村(74.3%)>【令和6年度末KPI:1,741市町村】

○「中核機関」の役割 :権利擁護支援の検討に関する場面(成年後見制度の利用前)→本人を取り巻く関係者が、権利擁護支援に関するニーズに気づき、必要な支援につなぐ場面。 この場面では、成年後見制度につなぐ場合や、同制度以外の権利擁護支援(権利擁護支援チームによる見守りや意思決定の支援、 日常生活自立支援事業の利用、虐待やセルフネグレクトの対応、消費生活センターの相談対応など) につなぐ場合がある。
○「中核機関」の役割 :成年後見制度の利用の開始までの場面(申立ての準備から後見人等の選任まで)→成年後見制度の申立ての必要性、その方法、制度利用後に必要となる支援、適切な後見人等候補者などを検討・調整し、家 庭裁判所に申し立て、後見人等が選任されるまでの場面。 この場面では、制度利用後の支援方針を検討。その中で、適切な権利擁護支援チームの体制も検討する。
○「中核機関」の役割 :成年後見制度の利用開始後に関する場面(後見人等の選任後)→家庭裁判所の審判により、後見人等が選任され、後見活動が開始されてからの場面。 この場面では、権利擁護支援チームに後見人等が参加し、チームの関係者間で、あらかじめ想定していた支援方針等を共有し、本人に対して、チームによる適切な支援が開始される。


B日常生活自立支援事業関係↓
○日常生活自立支援事業の概要
→認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等のうち判断能力が不十分な者に対して、福祉サービスの利用に関する援助等を行うことによ り、地域において自立した生活が送れるよう支援する事業。 第二期計画では、「専門員が作成した支援計画の下で、地域住民が生活支援員として本人に寄り添い、見守り、意思決定支援を行いながら適切 な金銭管理等を支援することで、尊厳のある本人らしい生活の安定を図る互助のしくみであり、これにより地域福祉が推進されている」と評価。⇒1.実施主体 2.利用対象者 2.利用対象者 4.実利用者数の推移    各項目参照のこと。
○日常生活自立支援事業の仕組み→都道府県・指定都市社協  参照。

C意思決定支援関係
○意思決定支援とは?(出典:「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」から一部引用)
→「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」(令和2年10月30日意思決定支援ワーキング・グループ)では、「意思決定支援 とは、特定の行為に関し本人の判断能力に課題のある局面において、本人に必要な情報を提供し、本人の意思や考えを引き出すなど、 後見人等を含めた本人に関わる支援者らによって行われる、本人が自らの価値観や選好に基づく意思決定をするための活動をいう」と されている。⇒意思決定支援のプロセス  参照。

D総合的な権利擁護支援策に関する御指摘等
○第1回検討会議(6/29)における主な構成員意見(総合的な権利擁護支援策関係)
→・ 民法改正と歩調を合わせて網羅的な権利擁護の仕組を整備する必要がある。支援の穴を開けないがキーワード。日常的金銭管理等に民間事 業者の参入を認める場合には、利用者の経済的搾取を防ぐため、悪質な事業者を排除する体制を整えることが肝要。高齢者等終身サポート 事業を含めて単なるガイドライン規制にとどめず、より強力な規制行政の側面を充実させていくべき。 ・ 裁判所が法定後見の開始・終了を適切に判断するためには、地域における後見以外の支援策の実情について、法定された機関から裁判所が 情報を得ることができる体制を整備することが必要。民法改正後の法定後見制度の適正な運用を担保する司法と行政の連携強化の観点から、社会福祉法改正によって、中核機関を段階的に法制化していくことがよいのではないか。 ・ 第二期基本計画やモデル事業の成果を踏まえ、司法と福祉の連携による福祉側の司令塔の役割、即ち中核機関の位置付けの検討、モデル事 業の成果を踏まえた日常生活自立支援事業の拡充と、社会福祉法の規定の見直し、もしくは新たな総合的な権利擁護支援策の事業化を検討していくべき。 ・ 日常生活自立支援事業の導入後、体制強化がされてきていない。成年後見制度の見直しに伴う総合的な権利擁護支援策の充実に向けた議論 は、日常生活自立支援事業の見直しとも一体的に行い、権利擁護支援策としてどうあるべきかということをしっかり議論できればと思う。 ・ 成年後見制度の大幅な見直しが見込まれる中、福祉制度でどのようにカバーするかは重要な課題。これまで法整備が十分なされてこなかった分野であり、今回はその端緒として制度づくりを行う。段階的に法整備を進めていくことを視野に入れて良いと思う。 ・ 社会福祉法は、元々、社会福祉事業法としてスタートしており、基本的に特定の福祉事業を行うものに対する事業法の立て付けとなってい て、一定の活動を行う広く民間全体を含めた事業者に対する規制法の立て付けとはなっていない。このため、例えば、悪質な民間業者に対 する規制など、社会福祉法の中だけで行うのは困難を伴う面がある。日常的な金銭管理や本人の意思決定支援を通じて、どのように福祉の 分野で本人をサポートしていくかを検討していくことになる。

○第16回成年後見制度利用促進専門家会議(8/2)における主な委員意見要旨
(その1)〜(その4)まで↓
<総合的な権利擁護支援の充実関係>
→13意見あり。・ 持続可能な権利擁護支援モデル事業の簡易な金銭管理は、日常生活自立支援事業における日常的金銭管理サービスと共通する。金銭管理と いうサービス、または体制構築が必要。いずれにせよ、意思決定支援を中心に日常生活自立支援事業も組替えが必要。【当事者団体意見】
・ 意思決定支援は大変重要であるが、障害者の特性とか福祉の仕組みとか、本人の日々の暮らしも理解しなければ、本当の意味で本人の意思 を支援するということにはつながらない。福祉職の方や当事者団体とともに、きちんとした検証システムとその実施体制は必要だと思って おり、本人が安心して地域で暮らし続けられるような、そんな制度を整えていただきたい。【当事者団体意見】

<権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり関係>→4意見あり。・ 地域共生社会に通じるのかもしれないが、権利擁護支援の地域連携ネットワークを考える際には、地域包括支援センターとか基幹相談支 援センターとか、こどもの支援センターとかの既存の相談支援体制をどうするかというところも含めて考えないといけないのではないか。 全体を見渡した上で、相談支援体制そのもの、包括的な相談支援体制を見直す必要があるのではないか。【当事者団体意見】

次回も続き「資料2−1、2−2 山野目参考人(早稲田大学大学院法務研究科教授)提出資料」からです。