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社会保障審議会障害者部会(第131回) [2022年06月30日(Thu)]
社会保障審議会障害者部会(第131回)(令和4年6月2日)
《議事》(1)報告書(案) (2)その他
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000195428_00058.html
◎資料 障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しについて
〜社会保障審議会 障害者部会 報告書〜(案)
V 各論点について
5.障害福祉サービス等の質の確保・向上について
(1) 現状・課題
→社会福祉法に基づく福祉サービス第三者評価⇒障害福祉分野での受 審実績は限られている。 障害福祉サービス等情報公表制度⇒全ての事業者の情報公表には至っておらず、その記載内容 にばらつきが見られる。

(2) 今後の取組
(障害福祉サービス等の質の評価)
<基本的な考え方>
→利用者本人の希望やニーズに十分対応したサービスが提供されているか、 閉鎖的にならず、外部に開かれた透明性の高い事業運営が行われているか、 専門的な知見も踏まえたより質の高い支援や、地域ニーズを踏まえた支援・取組が行われているか、といった視点が重要。社会福祉法に基づく福祉サービス第三者評価 の仕組みといった現行制度についても、引き続き活用を促していくことが必要。
<事業運営の透明性を高めるための評価の仕組み> →居住や生活の場であり、運営が閉鎖的になるおそれのあるサービス類型⇒地域の関係者を含む外部の目を定期的に入れることが、事業運営の透明性を高め、一定の質の確保につながるものと考えられ、介護分野の運営推進会議を参考とした仕組 みを導入することが有効と考えられる。 このため、⇒関係者や関係機関が参画する評価の場(地域連携運営会議(仮称))を定期的に開 催し、サービスの提供状況等を報告して会議による評価を受け、必要な助言等を聴く 機会を設けること、当該会議の内容について記録を作成し、公表すること、 を義務付ける方向で、その具体的な評価の実施方法や評価基準等の詳細について調査 研究を進めることが必要。
<事業所間の学び合いにより地域全体として支援の質を底上げする仕組み>→ 専門的な知見も踏まえたより質の高い支援や、地域ニーズを踏まえた支援が行われ ているかという観点から、それぞれのサービス内容に通じた専門的な知見を有する者 が参画する仕組みが馴染むサービス類型もあると考えられる。特に、通所系・訪問系 サービスにおいては、地域の事業所が協働して、中核となる事業所等が中心となって、 それぞれの事業所の強み・弱みを分析し、互いの効果的な取組を学び合いながら、地 域全体として支援の質の底上げを図る仕組みを検討することが必要。具体的には、障害児通所支援⇒今通常国会に提出された児童福祉法改正 法案において、児童発達支援センターは地域の障害児支援に関する中核的な役割を担 うこととされている。こうした枠組みを活用し、児童発達支援センターにおいて、各 事業所における自己評価・保護者評価の結果を集約し、各事業所とともに、それぞれ の事業所の強み・弱みを分析し、互いの効果的な取組を学び合いながら、より良い支援の提供につなげていくことを検討することが必要。また、計画相談支援及び障害児相談支援⇒サービス等利用計画案及び障 害児支援利用計画案の作成等を通じて利用するサービスの種類や量の決定に関与するなど、障害者の生活全般に影響を及ぼすこと等から、すでに地域で協働して(基幹相談支援センター等が中心となって)業務やプランの点検(プロセス評価)等に取り組みつつあり、引き続きこうした取組を推進していくことが必要。
<利用者・地域のニーズに応じたサービス提供であるかという観点からの評価の仕組み> →利用者本人の希望やニーズに応じたサービス提供を行うことは、全ての障害福祉サービス等における支援の基本であり、児童発達支援及び放課後等デイサービス⇒すでに事業者の自己評価及び利用者(保護者)評価を指定基準上義務付けており、実施しなかった場合の報酬減算によるペナルティも設けるとともに、評価ガイド ラインも示している。このような利用者評価⇒全ての障害福祉サービス等 において重要なものと考えられ、将来的には、指定基準において実施を求めていくこ とが望ましい。 ただし、利用者評価についても、評価の参考とするための評価基準をサービス類型 ごとに示すことが必要であり、サービスごとに順次検討し、対象を拡大していくこと。その際、まずは上記のとおり、グループホームや障害者支援施設につ いて検討する「地域連携運営会議(仮称)」方式の一環として、利用者からの評価についても当該会議の議題として取り上げることを想定し、検討していくことが必要。 また、就労系障害福祉サービスの事業所の中には、地域の人口や働き手が減少する 中で、地域の農林水産業と連携した取組が行われ、地域住民の食事の場や集い の場となっている事業所もある。このような取組に関しては、農福アワードという形で表彰も行われており、また、障害福祉サービス等報酬により地域と協働した取組を 評価する加算も一部で設けられている。障害福祉サービスの事業所が地域・地域住民 のニーズに合わせ、応えるように日々の取組を行うことは、人口減少の中で地域共生 社会を構築し、また、障害に関する理解と関心を広める上で重要であるだけでなく、 地域の活性化にも資することから、このような取組をさらに推進することについて検討することが必要。 (障害福祉サービス等報酬によるサービスの質に係る評価)→サービスの質の評価については、医療・介護分野(診療報酬・介護報酬)において は、ストラクチャー(構造)、プロセス(過程)、アウトカム(結果)の3つの視点からアプローチ。 こうした視点に基づき、改めて、障害福祉サービス等報酬について整理すると、⇒ストラクチャー指標は、ほぼ全てのサービスに専門職も含めた人員の配 置による加算等を設定。プロセス指標は、いくつかのサービスに特定の個別支援、就労、医療な どの関係機関との連携、農福連携などの地域との協働等を実施した場合の加算等を設定。 アウトカム指標は、就労系サービスなど一部のサービスに就労定着率など実績に応じた基本報酬の評価や加算の設定 が行われている。プロセス指標やアウトカム指標は、利用者に対するサービス内容そのものを一層評 価することに資すると考えられる。このため、今後の障害福祉サービス等報酬改定の 検討等に当たっては、 データの十分な蓄積及び分析を図りながら、ストラクチャー、 プロセス、アウトカムの3つの視点を持って、障害福祉サービス等の目的・特性や上 記1の方向性も踏まえ、プロセスの視点に基づく報酬の評価をより充実させつつ、アウトカムの視点に基づく報酬の評価についてもその手法が適切なサービスについて は導入について研究・検討していくことが必要である。その際、障害福祉は医療や介 護と異なる面もあるため、定量的評価のみに偏らないよう留意することが必要である。(※)
(障害福祉サービス等情報公表制度)↓
<公表率向上のための対応>→利用者の良質なサービスの選択に資 すること等を目的として創設。 利用者への情報公表と災害発生時の迅速な情報共有を図るため、事業所情報の都 道府県知事等への報告・公表をさらに促進する観点から、報告をしない事業者に対す る指導監査を徹底するとともに、指定の更新の際に指定権者が公表の有無を確実に確 認し、都道府県知事等への報告・公表ができない理由が認められない場合を除き、指 定更新の条件とするなどの方法について検討する必要がある。(※)
<利用者にとってわかりやすい公表のための対応>→利用者にとってわかりやすく、良質な事業者の選択に資するようにするため、公表 システムの記載内容を検証し、わかりやすい記載内容を抽出した上で、自由記述欄を 中心に記入例や実際の記入内容を例示として示すなど、記載内容のばらつきの是正を 図るような取組を進める必要がある。
(障害福祉分野におけるデータ基盤の整備)→ 収集したデータを、疫学的な視点と行政や支援の現場の視点で分析すること ができるよう、大学等の研究機関で研究に活用できるようにすることが重要であるこ とから、匿名化された情報を提供する仕組み(第三者提供)を設けるべきである。 なお、第三者提供においては、医療や介護の情報等と連結させた分析を行えるよう にすることにより、障害福祉分野の情報だけではわからない実態に関する分析を行う ことが可能となると考えられることから、障害福祉分野においても、医療や介護を含 む保健医療福祉分野の公的データベースの情報と連結解析が行えるような仕組みを 設けるべきである。
(実地指導・監査の強化)
→その他の質の向上に係る取組と合わせて強化する ため、不適切な事業所が多いサービス等の実地指導・監査を重点実施するとともに、 都道府県等監査担当職員と専門家の連携など各都道府県等の実地指導・監査の取組の 好事例や指導監査マニュアルの作成等の実施の検討を 引き続き進める必要がある。

6.制度の持続可能性の確保について
(1) 現状・課題
(障害福祉サービス等事業者の指定の在り方)
→都道府県は、事業者の指定に当たっては、入所施設、生活介護、放課後等デイサ ービス等に限り、その指定を拒否することができる総量規制の仕組みが設けられている。 政令市、中核市以外の一般市町村は、障害福祉計画等において必要なサービ ス見込み量等を定めることとされているにも関わらず、事業者の指定においては基本 的に一般市町村は関与できない仕組みとなっており、利用者の障害特性等のニーズに 応じた事業所の適切な整備がなされていない可能性があるとの指摘や、市町村が知ら ない間に新規事業者の指定が行われるケースがあるとの指摘がある。
(障害福祉分野におけるICT活用等の推進)→成長戦略フォローアップ(令和3年6月 18 日閣議決定)⇒「障害福祉分野にお ける介護ロボットやICTの導入についても、介護分野での状況を踏まえて取組を進 める。」とされている。また、各種記録や計画の作成、職員間の迅速な情報共有・相談 助言、移乗介護等の介護業務、相談支援、自立生活援助等の地域生活を支援する業務等について、ICT活用やロボット導入により、業務効率化や職員の業務負担軽減を より一層推進することができると考えられる。
(障害福祉サービス等における人材確保と育成)→障害福祉サービス等を安定的に提供するためには障害福祉人材の確保が重要。障害福祉人材の処遇改善⇒本年2月から福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金による引き上 げの措置が講じられ、10 月以降は臨時の報酬改定により同様の措置が継続されることとなっている。 また、障害福祉人材が不足している要因⇒職員の処遇のみならず、キャ リアアップや職場環境、利用者や家族からの職員に対するハラスメント等も関係して いる可能性があると考えられる。

(2) 今後の取組
(障害福祉サービス等事業者の指定の在り方)
<基本的な考え方>
→市町村は、障害福祉サービス等の支給決定を行うとともに、障害福祉計画及び障害児福祉計画を定め、その中で障害福祉サービス等の提供体制の確保に係る目標、各年 度における障害福祉サービス等の種類ごとの必要な量の見込み等を設定しており、地域における障害福祉サービス等のニーズや地域の実情を最もよく把握できる主体と 考えられる。 このため、地域ごとの障害福祉サービス等のニーズや地域の実情を適切に踏まえた 事業所の整備が進むようにするためには、事業者の指定に障害福祉計画等を策定する 市町村が関与することが重要と考えられる。
<障害福祉計画等におけるサービス等の提供体制の確保に係る目標等の充実>→障害者・障害児や家族のニーズに応じて必要なサービスを提供するためには、障害 福祉計画等に基づく計画的なサービス提供体制の確保が重要、現状では、 市町村がサービス種別ごとの見込み量を市町村計画に記載した上で、都道府県計画では、より広域な障害福祉圏域を標準として見込み量を定めることとされている。このため、よりきめ細かい単位での地域のニーズを計画に記載してサービス提供体制の確 保を推進するなど、地域ニーズに応じたサービス提供に向けた計画策定の在り方⇒検討を深めることが必要。また、市町村が障害福祉計画等を策定する際⇒都道府県の意見を聴かなければならないこととされており、今後とも、計画の策定に当たって市町村と都道府県との間で密接な連携を図ることも重要である。 <地域ごとの障害福祉サービス等のニーズに応じた事業者指定の仕組み>→都道府県知事が行う事業者指定に対し、市町村が障害(児)福祉計画との調整を図 る見地からの意見を申し出ることを可能とし、都道府県知事は当該意見を勘案して事 業者指定に際し必要と認める条件を付すことができるようにする仕組み等により、地 域ごとの障害福祉サービス等のニーズや地域の実情を適切に踏まえた事業所の整備 を進めるべき。 ○ この仕組みの実施に当たっては、⇒この仕組みの目的は、地域における障害福祉サービス等のニーズを踏まえた必要なサ ービス提供体制の確保であること。市町村の意見や都道府県が付する条件の内容は、市町村や都道府県が、障害当事者をはじめ、事業者、雇用、保健、介護、児童福祉、教育、医療等の幅広い関係者の意見 を反映して策定する障害(児)福祉計画等に記載されたニーズ等に基づき検討される べきこと。
(障害福祉分野におけるICT活用等の推進)→令和4年度の調査研究事業においては、IT関係の専門家、リハビ リテーション専門職、福祉工学等の専門家などの専門的知見に基づき、各ICT機器 やロボットの導入に係る効果の定量的評価(業務量や業務時間の短縮など)について 科学的、実証的な測定・検証を行うこととしており、この調査研究を含め実証データ の収集・分析を進めながら、ICT活用やロボット導入の推進の方策について具体的 な検討を行っていくことが必要。 障害福祉分野における施設・事業所に対するICT活用やロボット導入の経費等の 支援については、以上のような検討を踏まえつつ、より効果的な手法を推進すること が必要である。
(障害福祉サービス等における人材確保と育成)→福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金と本年 10 月からの臨時の報酬改定による 処遇改善に着実に取り組むとともに、公的価格評価検討委員会の検討を踏まえ、障害 福祉職員の処遇改善や職場環境の状況について調査・分析し、現場のニーズや政策目 的に照らして、より効果的で簡素な仕組みとなる方策について更に検討する。今後、令和3年度の調査研究事業において作成したハラスメント対策マニュアルの 周知を進めるとともに、事業所における職員研修のための手引き等を作成することで、 利用者、家族等によるハラスメント対策を推進する必要がある。障害福祉サービス従事者の確保が困難となっている状況を踏まえ、人材確保におい て課題となっている要因等に職員の声や職場のハラスメントの状況等も含め て把握を図るとともに、障害福祉サービス等事業所における人材の確保・定着方策の好事例の共有を図ることを検討。

7.居住地特例について
(1) 現状・課題
→障害福祉サービス等の支給決定⇒原則として、障害者又は障害児の保護者の居住 地の市町村が行うこと、その支給決定は施設入所前にその者が居住していた市町村が実施することとする居住地特例が設けられている。

(2) 今後の取組→介護保険施設等を居住地特例の対象に追加する必要がある。

8.高齢の障害者に対する支援について
(1) 現状・課題
→我が国の社会保障制度の体系は、あるサービスが公費負担制度でも社会保 険制度でも提供されているときは、保険料を支払って国民が互いに支え合う社会保険 制度によるサービスをまず利用するという「保険優先の考え方」が原則。 障害福祉制度と介護保険制度の関係についても、この原則に基づき、障害福祉制度 と同様のサービスを介護保険サービスにより利用できる場合には、まずは介護保険制度を利用する制度となっている。 ただし、その運用に当たっては、一律に介護保険サービスが優先されるものではな く、申請者ごとの個別の状況を丁寧に勘案し、介護保険サービスだけでなく障害福祉 サービスの利用も含めて、その方が必要とされている支援が受けられることが重要で あるが、市町村によって運用状況に差異があるとの指摘がある。 共生型サービスは、障害者が介護保険サービスを利用する場合も、それまでその障 害者を支援し続けてきた障害福祉サービス事業所が引き続き支援を行うために活用 できるものであるが、当該サービスの指定事業所の数は未だ多くなく、十分に普及し ているとは言えない【令和3年 11 月審査分:共生型介護保険サービスの指定を受け た障害福祉サービス等事業所 148、共生型障害福祉サービス等の指定を受けた介護保 険サービス事業所 903】。
また、長年障害福祉サービスを利用してきた方の介護保険サービス利用への移行に 伴う利用者負担の軽減を図るために創設された新高額障害福祉サービス等給付費⇒対象となり得る利用者への個別周知をしている自治体は約3割となってお り、積極的な周知を特段行っていない自治体や支給実績のない自治体もある。

(2) 今後の取組
(高齢の障害者に対する障害福祉サービスの支給決定に係る運用の明確化)
→介護保険優先原則の運用に係る考え方は、一律に当該介護保険サービスを優先 的に利用するものとはしない」という考え方を示している。 しかしながら、市町村によって運用に差異があるとの指摘があることから、基本的 な優先原則の考え方は維持しつつも、65 歳を超えた障害者が必要な支援を受けることができるよう、市町村ごとの運用状況の差異をできる限りなくし、より適切な運用が なされるよう、まずは留意すべき具体例を示すことが必要。 具体的に示す内容⇒障害者部会での議論や地方自治体の運用状況等も踏 まえつつ、事務連絡の発出や関係会議での説明などの周知を推進していくことが必要。その際、地方自治体における具体的な運用事例なども含め、現場の実態を踏 まえて対応することが必要である。また、具体例を示すことで、かえって、例示され ていない場合には障害福祉サービスの利用が一律に認められない、といった不適切な 運用に繋がらないよう、地方自治体への周知に当たって注意することが必要。
(共生型サービスや新高額障害福祉サービス等給付費に係る周知の推進)→共生型サービスは、高齢者・障害児者とも利用できる事業所の選択肢が増えること、介護や障害といった枠組みにとらわれず、多様化・複雑化している福祉ニ ーズに臨機応変に対応することができること、人口減少の中で地域の実情に応じたサ ービス提供体制整備や人材確保を行うことができることなどの点が期待される。また、 障害者の高齢化が進む中で、必要な福祉サービスを提供するためにも、共生型サービ スは重要な選択肢の1つであり、様々な機会で周知していくことが必要。 共生型サービスは、介護保険サービス事業所が障害福祉サービス事業所の指定を、 又は障害福祉サービス事業所が介護保険サービス事業所の指定を受けようとする際 に、新たに指定を受ける事業についてその基準を満たしていない場合でも、これまで 提供してきたサービスと同様の基準により2つのサービスの運営が可能となるよう 特例を設けたもの。このため、2つのサービスについての指定基準を満たした 上で、本来の指定を受けることも可能であり、共生型サービスは事業者にとっての選 択肢の1つであることにも留意しつつ、周知を行うこと。 新高額障害福祉サービス等給付費⇒対象者等に対する制度概要の丁寧な説明を行うこと、対象となりうる者へ個別に勧奨通知等を送付すること、対象者要件を満たす者の把握については、必要に応じて介護保険担当部局と連携 すること。

9.障害者虐待の防止について
(1) 現状・課題→
令和3年 12 月、事実確認調査は基幹相談支援センターに委託できること、 立入調査は市町村が自ら設置する基幹相談支援センターの市町村職員の身分を有す る者に限り可能であることが自治体に周知された。

(2) 今後の取組
(自治体間のばらつきの是正)
(障害福祉サービス事業所等における虐待防止の取組の推進)
→令和4年度から、障害福祉サービス事業所等に係る指定基準において、虐待防止委 員会の設置や従業員への虐待の防止のための研修の実施、虐待防止責任者の設置を義 務化した。虐待防止委員会については利用者や家族、外部の第三者等を 加えることが望ましい。
(死亡事例等の重篤事案を踏まえた再発防止の取り組み)
(学校、保育所、医療機関における障害者を含めた虐待防止の取組の推進)
→精神科医療機関については、前述「4.精神障害者等に対する支援につい て」の「4−8 虐待の防止に係る取組」のとおり虐待防止の取組を進めていく必要 がある。

10.地域生活支援事業について
(1) 現状・課題
(2) 今後の取組→
地方自治体に対し必要な補助が行われるよう、引き続き予算の確保に取り組 むとともに、各事業の実施の有無及び課題の把握や、好事例の共有を図ること等によ り、地方自治体の取組を促していく。 さらに、地域共生社会や障害者の健康を支援する観点からも重要であるとの認識から、社会参加支援に関する取組を進める必要がある。

11.意思疎通支援について
(1) 現状・課題
→手話通訳や要約筆記等の方法により、障害者等とその他の者との意思疎通を支援する者の派遣やこれを担う人 材の養成等の事業(意思疎通支援事業等)が行われている。第 208 回通常国会において障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策 推進法が成立し、令和4年5月 25 日に施行された。

(2) 今後の取組→(ICTの利活用の促進等)(意思疎通支援事業に従事する担い手の確保)
(代筆・代読支援の普及に向けた取組)
(障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の施行)
→障害者による情報の取得利用・意思疎通に係る施策を総合的に推進することを目的 とする障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の趣旨を踏まえ意思疎通支援者の養成や、障害者からの相談の対応、事業者が行う取組への支援等、意思疎通支援の促進を図る必要。

12.療育手帳の在り方について
(1) 現状・課題
→療育手帳は、現時点で法的な位置づけはなく、各自治体が自治事務として運用、自治体ごとに検査方法等の判定方法や、IQの上限値や発達障害の取扱い等の 認定基準にばらつきあり、手帳所持者が他の自治体に転居した際に判定に変更が生じる可能性や、正確な疫学統計が作成できない状況等が指摘されている。

(2) 今後の取組→令和4年度から実施予定の調査研究を着実に進める等、幅広く調査 研究を続けるべき。
療育手帳制度に自治体や当事者等が幅広く関係していることを踏まえ、これらの関係者に調査研究や検討のスケジュールを示しながら進めるべきである。

13.医療と福祉の連携について
(1) 現状・課題
→(医療的ケアが必要な障害児者(医療的ケア児者)の医療と福祉の連携について)(医療と計画相談をはじめとする相談支援等の連携について)(入院中の医療と重度訪問介護について)
(2) 今後の取組
(医療的ケアが必要な障害児者(医療的ケア児者)の医療と福祉の連携について)
→医療的ケアが必要となる成人とは人工呼吸器や経管栄養 等の他者による日常的な医療的ケアを必要とする割合が高い等の点でその状態像が異 なることから、令和3年度障害福祉サービス等報酬改定において、医療的ケアの新た な判定スコアを用いた医療的ケア児を直接評価する基本報酬の新設を行った、その実施状況を踏まえて、保健、医療、障害福祉、保育、教育等の関係機関等 が連携を図るための協議の場の設置、医療的ケア児に対する関連分野の支援を調整するコーディネーターの配置、 家族への支援等の観点も含め検討する必要がある。 また、医療的ケアが必要な障害者⇒各サービスの加算の充実を図ってきたが、医療的ケア児の成人期への移行を見据えつつ、成人期の生活に対応した障害福 祉サービスにおける医療的ケアの評価の在り方について引き続き検討する必要がある。
医療と計画相談をはじめとする相談支援等の連携について)→ 相談支援事業者は、計画相談支援において医療を含む関係機関との連携に努めることとされているが、改めてその主要な連携先として医療機関や難病関係機関を明示し、その連携の重要性や具体的に求められる連携内容について周知徹底を図る等により、効果的な連携の取組を更に促進するとともに、連携の緊密化を図ることが必要。また、精神障害者や強度行動障害のある者、高次脳機能障害のある者等の医療 との関わりが特に深いことが想定される者⇒医療と福祉の関係者が個々の利 用者の支援における各々の役割を明確化しつつマネジメントを行い、かつ相互理解に 基づく連携促進を図ることが重要。そのためには、双方の開催するカンファレンスに関係者が参加することや医療や福祉双方の分野における研修をはじめとする資 質向上の取組等が求められる。 他に、個々の利用者の医療と福祉のマネジメントに関する責任を負う者を明確化すべきとの意見、日常生活を営むに当たってはより幅広い視点をもったマネジメントが 必要ではないかとの意見、本人中心の支援を実現する観点から、利用者とマネジメン トを行う者の関係性に主眼を置いた議論が行われるべきなどの意見等があり、引き続 き議論が必要な課題である。
医療機関と計画相談支援の連携⇒すでに診療報酬及び障害福祉サービス 等報酬において加算等により一定の取組を評価しているが、日常的に医療を必要とし ている者をはじめとして連携を更に促進する方策等について検討すべき。(※) また、支給決定に際して市町村に提出された、かかりつけ医等が作成した医師意見 書をサービス等利用計画案作成に際しても活用することの促進も必要。以上に 加えて、サービス等利用計画作成やモニタリングの際に医師意見書や指示書を求め、 医療の観点からの意見を反映させることやその後の経過等を医師に報告する義務を相談支援専門員に課すことを求める意見があった一方、障害福祉サービス利用の可否等 を判断する際やサービス等利用計画作成等のケアマネジメントに従来以上に医師が関 わることについて慎重であるべきとの意見や適切な関与の在り方について十分検討す べきとの意見、医師の意見を求める方法や対象者の選定等について丁寧に議論した上 で現場に混乱を招くことがないような仕組みを検討すべきとの意見があった。また、 医師意見書の作成に当たって当事者やその家族が参画することの重要性や、市町村と 医師会等の連携促進の必要性等を指摘する意見もあり、引き続き議論が必要な課題。 入院時に計画相談支援事業所等が本人の症状や特性等の医療機関の求める情報を医療機関に提供した場合や、退院時に医療機関から情報収集・計画作成した際には報酬 が算定可能である。こうした場合に、医療機関と相談支援事業所等の関係者間で情報 を共有するためのフォーマットを作成し、より円滑な連携に向けて活用するなどの方 策を検討する必要がある。その際、ICTを活用する視点が重要である。
・また、当事者やその家族にとって、障害児者が受診しやすい医療機関がどこかがわ かるようにすることも有益と考えられる。医療と福祉の連携による医療機関情報の収集・集約化・共有することが必要であり、そのために(自立支援)協議会の活用や医 師会等の協力を得ながら、障害児者が受診しやすい医療機関情報を地域単位でリスト 化し、共有を図ること等の検討も必要である。なお、医療と福祉の連携を進めるに際 しては、強度行動障害がある者等の支援における連携等の課題についても検討する必 要がある。 障害者支援施設等の入所者の高齢化・重度化が進む中、施設での看取りを希望する 障害者に対する支援について、本人の意思決定に関する取組状況等を把握する必要が ある。
(入院中の医療と重度訪問介護について)→入院中の重度訪問介護利用の対象となる障害支援区分⇒入院中の重度障 害者のコミュニケーション支援等に関する調査研究の結果を分析しつつ、支援が必要 な状態像や支援ニーズの整理を行いながら、拡充を検討すべきである。(※)
入院中の重度障害者のコミュニケーション支援等が行われる場合には、医療機関と 支援者は当該入院に係る治療や療養生活の方針等の情報を共有するなど十分に連携す ることが必要であるため、利用者の普段の状態像・支援ニーズや入院中の個々 の利用者の症状に応じたコミュニケーション支援の方針・方法等について、関係者間 で情報を共有するためのフォーマットの作成など、より円滑な連携に向けての検討が 必要である。その際、ICTを活用する視点が重要。 また、入院時に重度訪問介護を利用する者にとって地域の医療機関における重度障害者の受入等に関する情報があれば有用であるため、医療と福祉の関係者が連携して、地域の医療機関情報をリスト化し、共有を図ること等の検討も必要。この他、重度訪問介護利用者以外の入院中のコミュニケーション支援についても、 保険医療機関の役割や合理的配慮等の関係も考慮しつつ、ニーズや実情を把握しながら、引き続き検討する必要がある。

次回も続き「参考資料1」からです。

社会保障審議会障害者部会(第131回) [2022年06月29日(Wed)]
社会保障審議会障害者部会(第131回)(令和4年6月2日)
《議事》(1)報告書(案) (2)その他
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000195428_00058.html
◎資料 障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しについて
〜社会保障審議会 障害者部会 報告書〜(案)
V 各論点について
4.精神障害者等に対する支援について(→今後変更があり得るもの?)
4―1 基本的な考え方 ↓
(精神疾患の現状)
→近年、増加傾向、平成 29 年には約 420 万人。令和2年9月調査⇒約6割の方が様々な不安を感じており、メンタルヘルスの不調 や精神疾患は、誰もが経験しうる身近な疾患となっている。 自殺者数⇒平成 22 年以降は 10 年連続で減少していたが、令和2年には 11 年ぶ りに増加に転じている。
(「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築)→令和3年3月「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に 係る検討会」報告書がとりまとめられた。 精神保健医療福祉上のニーズを有する方が地域で希望する生活を実現し、継続するこ とができるよう、国は、保健、医療、福祉、居住、就労等、経済的な基盤の確保 にも資する包括的な支援を進めることはもとより、そうした基盤の充実を図っていくこ とが求められる。
(患者の権利擁護)→措置入院、医療保護入院等を規定する精神保健福祉法等の撤廃のために講じた措置 ・ 隔離・身体的拘束等を廃止するためにとった法律上・実践上の措置。
(地域の精神科医療機関の役割)→自治体が実施する精神保健相談の協力、協議の場への参画、多様な精神疾患 に対する医療の実現、精神科以外の診療科との連携等、・・。
(医療機関や福祉サービス事業者等の優れた実践的な取組の普及定着)→質の高いサービスを提供している医療機関や福祉サービス事業者等の優れた実 践的な取組を法令上の仕組みとして位置付け、普及定着を図ること、誰もが安心して自分らしく暮らせるようにするための基盤の整備を図っていく観点から。
(地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会)→令和3年 10 月に「地域で安心して暮らせる精 神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」が設置。

4−2 精神保健に関する市町村等における相談支援体制について↓
(1) 現状・課題→
市町村⇒福祉分野に加え、精神保健も含めた相談支援に取り組むこと。8割以上の市町村が、自殺対策、虐待(児童、高齢者、障害者)、生活困窮者支援・生活保護、母子保健・子育て支援、高齢・ 介護、認知症対策、配偶者等からの暴力(DV)等の地域住民の身近な相談窓口として、精神障害者に限らず広く分野を超えて精神保健上の課題を抱えた住民を対象に精神保健に関する相談に対応している状況。まずは国⇒以下の措置を講じることにより、市町村の実施体制の整備を進めていくべき。
(2) 今後の取組↓
@ 法制度に関し検討すべき事項 精神保健福祉法に関し、以下の措置を講じることが必要。
→(@) 都道府県及び市町村が実施する精神保健に関する相談支援について、精神保健福 祉法に基づく相談支援を受けている精神障害者に加え、精神保健に関する課題を抱える者(注1・2)に対しても、相談支援を行うことができる旨を法令上規定するべ き。(注1・2)→P38に。(A)「国及び都道府県の責務」⇒(@)の市町村による相談支援の体制の整備が 適正かつ円滑に行われるよう、必要な助言、情報の提供その他の援助を行わなければ ならないこととするべき。 (B) 障害者総合支援法に基づき地方公共団体が単独又は共同して設置する、関係機関、関係団体、当事者その他の関係者により構成される協議会を活用し、精神保健に関する課題を抱える者を含めた地域の支援のあり方について協議を進めるべき(注 1・2→P39参照。)。 また、協議関係者の守秘義務を前提に、関係機関等に対し情報提供等を求めること ができることについても検討を進めるべき。(C) これらの取組には、担い手の確保・資質向上が不可欠となるため、現在「配置が 任意」とされている精神保健福祉相談員について、その配置状況を把握し、課題を分 析した上で、配置を促進する方策を検討するべきである。

A @以外に検討すべき市町村の体制整備に関する事項→ (@) 下位法令等の改正等(下位法令等を改正し、市町村が実施する精神保健に関する相談支援の位置付けを 明確にするべき。市町村保健センター等の保健師増員等、必要な体制整備のための対応を検討するべき)。 (A) 精神科の医師・他科の医師との連携(地域の精神科医療機関は、多職種チームを持ち、患者一人一人のケースマネジメントを行うノウハウ・人材を有することから、例えば、市町村から精神保健に関する相談業務の一部を公的な地域保健活動の一環として、こうした精神科医療機関に 委託し、協働して業務を行うことが考えられる。また、市町村が、地域の精神科医療機関の精神科医等の協力を得て、自宅等への 訪問支援を行う専門職、当事者、ピアサポーター等から構成されるチームを編成し訪問支援の充実に取り組むとともに、「包括的支援マネジメント」の基盤構築を図っ ていくことも重要。さらに、「かかりつけ医うつ病対応力向上研修」の活用等を通じ他科の医師と精 神科の医師との連携を強化するべき。令和4年度診療報酬改定⇒他科の 医師と精神科の医師等が連携して診療を行った場合の評価として「こころの連携指導料」が新設されており、他科の医師と精神科の医師が連携するともに、自治体とも協力して精神保健医療福祉上のニーズに対応することが求められる。自殺で亡くなった方⇒精神疾患を経験している場合が多く、特に自殺未 遂者は再企図のリスクも高いことから、精神科医療や生活支援を適切に受けられる よう支援体制の整備を図ることが必要。) (B) 市町村への単なる好事例の周知に留まらないノウハウの共有 ・ 精神保健の相談支援に関し、市町村が利用可能な国の事業について、制度横断で分かりやすく周知していくべき。
B 市町村のバックアップ体制の充実に向けて検討すべき事項
(保健所・精神保健福祉センター等の業務の明確化、診療報酬改定)
→令和4年度診療報酬改定⇒行政機関等の保健師等による家庭訪問の対象であって精神疾患の未治療者、医療中断者等に対する訪問診療・精神科訪問看護を実施した 場合の評価の仕組みを創設。今後、こうした取組による知見を踏まえつつ、 令和6年度の診療報酬改定での評価を含め、さらに検討を進めるべきである。
C 普及啓発の充実
(メンタルヘルス・ファーストエイドの考え方の活用)→「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会」報告書(令和 3年3月)⇒精神保健医療福祉上のニーズを有する方が必要な保健医療サービス 及び福祉サービスの提供を受け、その疾患について周囲の理解を得ながら地域の一員として安心して生活することができるよう、精神疾患や精神障害に関する普及啓発を 推進することは、最も重要な要素の一つ、メンタルヘルス・ファーストエイド の考え方を活用する等、普及啓発の方法を見直し、態度や行動の変動までつながるこ とを意識した普及啓発の設計が必要。 こうした観点から、令和3年度より、心のサポーター(精神疾患への正しい知識と 理解を持ち、メンタルヘルスの問題を抱える家族や同僚等に対する傾聴を中心とした 支援者)の養成に向けた研修を開始している。 (学校教育等における普及啓発の充実)→検討会では、支援提供者側や制度・政策決定側の立場からの考察だけではなく、受 け手である立場からの思いや知見もきちんと反映されたものという趣旨で、入院制度 等について適切な在り方を形成していくためには、広く国民や当事者自身が精神保健 医療福祉などに関連する総論的知見を高められる機会の充実が、地域での実際の支えの充実とともに両輪で必要との意見があった。学校教育における普及啓発⇒学習指導要領の改訂により、本年4月から は、高等学校の保健体育の「現代社会と健康」に、新たに「精神疾患の予防と回復」 の項目が追加されており、効果的に普及啓発を推進するためには、教職員に対する普 及啓発が重要となる。その際には、すでに実践されているメンタルヘルス・ファーストエイドの考え方を用いた取組についても参考とすることが望ましい。 こうした観点からは⇒上述の心のサポーターの養成に向けた研修について、教職員に対して情報共有を行 う等の取組を関係省庁と連携して検討すること。 特に養護教諭については、「現在の生徒児童は、肥満・痩身、生活習慣の乱れ、メンタルへルスの問題等、多様・複雑化する課題を抱えており、養護教諭には健康診断、 保健指導、救急処置などの従来の職務に加えて、専門性を生かしつつこれらの課題に 対し中心的な役割を果たすことが期待されている」(文部科学省「現代的健康課題を 抱える子供たちへの支援〜養護教諭の役割を中心として〜」(平成 29 年3月))こと を踏まえ、子供達を支援していくことが重要。
(精神障害、精神疾患の理解促進に向けて)→地域で医療・福祉等の必要なサービスを受け、地域の一員として安心して生活するこ とができる体制の整備を進めるためには、精神障害、精神疾患についての理解を促進し、 スティグマを解消するための取組を充実させることが必要、例えば、当事者、ピアサポーター、家族等と協働し、地域住民との交流の場を設置する取組を促進すること。また、精神疾患が身近な疾患となる中、地域の精神科医療機関の役割についても、理解を深められるようにすることが重要。 市町村における協議の場は、自立支援協議会を活用していることが多く、精神科病院協会や医師会等の関係団体、精神科医療機関、保健関係者の参加が少ないとの指摘もある。精神科医療機関の役割⇒地域において理解が深められるよう、市町村は、積極的にこうした関係団体等の参加を求め、地域の精神保健福祉行政を支える 行政、福祉・介護サービス事業者、当事者、ピアサポーター、家族等との間で信頼関係の醸成を図るとともに、国においても、市町村における好事例の収集や横展開等を通じ た後押しを図ることが求められる。

4―3 精神科病院に入院する患者への訪問相談について↓
(1) 現状・課題
→入院中の患者について、第三者がその権利を擁護する仕組みの構築に向けてモデル事業や調査研究等を通じて、支援のノウハウの蓄積が進められてきた経緯⇒ 現在、厚生労働科学研究において、課題の整理・検討が進められている。
(2) 今後の取組 ↓
【基本的な考え方】
→精神科医療の日々の臨床では、患者のこころに関わる中で、患者の話を丁寧に聴き、 患者との共感を試みる診療が実践されている。また、精神科病院では、退院後生活環境 相談員による支援、退院支援委員会の開催等、法令の規定に基づき、患者の権利擁護を 図る取組が行われている。 他方で、精神疾患により、本人の意思によらず入院が必要とされる場合、こうした非自発的入院による患者は、閉鎖処遇に置かれており、外部との面会交流が 難しくなる。家族との音信がない市町村長同意による医療保護入院者⇒医療 機関外の者との面会交流が、特に途絶えやすくなる。 このため、医療機関から入院に関する十分な説明や支援が行われた場合であっても、 患者本人の孤独感や、これによる自尊心の低下が顕著な場合がある。 外部との面会交流を実質的に遮断する状況は、本人の意思によらず入院を強制される者 への処遇として、人権擁護の観点からも望ましくない。 したがって、市町村長同意による医療保護入院者を対象に、精神科病院の理解のもと、 精神科病院に入院する患者を訪問し、相談に応じることで、医療機関外の者との面会交 流を確保することが必要となる。  
【支援の内容】↓
@ 実施主体・枠組み
→精神科病院を訪問し、患者からの相談に応じる点を踏まえ、精神科病院を所掌し、かつ、精神科病院から患者の入院届等を受理する都道府県等 とすることが考えられる。 こうした支援に取り組む都道府県等は、現時点、必ずしも一般的とまではいえない。 そこで、都道府県等が行う任意の事業として位置付けた上で、全国の都道府県等での事 業実施を目指し、課題の整理を進めることが必要。 A 支援者→実施主体である都道府県等が、経歴等を踏まえて選任することが適当。 更に、国で標準化された研修の内容を示した上、都道府県等が実施する研修の受講を必須とするべき。 研修は、精神保健医療福祉に関する制度や現状、精神科医療における障害者の権利擁 護に関する内容、傾聴を中心とする支援の趣旨を含むものとするとともに、研修内容・ 期間等の検討⇒入院の初期段階は、患者・医師双方にとって信頼関係を構 築する重要な時期である点を考慮することが必要。 B 支援内容→支援者が精神科病院を訪問し、入院患者との面会交流を行う。 生活に関する一般的な相談に応じ、患者の体験や気持ちを丁寧に聴くとともに、必要な情報提供を行うことを基本とする。 こうした支援の導入を図るに当たり、支援の対象者は精神科病院に入院する市町村 長同意による医療保護入院者を中心とする。 C その他 →支援者には守秘義務を求める。 制度の対象となる患者→医療機関の管理者から入院時に書面等で案内するとともに、例えば、患者の立場に立った説明文を添付する、支援の申込先や相談先等を病院内に掲示する等、患者にとって分かりや すい方法で周知するべきである。特に、指定医には、患者に分かりやすい方法で説明する役割があるものと考えられる。 都道府県等→支援者の支援のあり方や課題について、関係者が意見交換を行う場を 設けることが望ましい。 事業を円滑に実施できるよう、面会を行う精神科病院の理解を得ながら進めること が必要である。 今後の検討課題→こうした支援を望む入院患者に支援がより広く普及するよう、調査研究等を活用し、実施体制の構築を進めていくことが必要である。
・ 研究班の報告→支援者は、以下の点に留意することが適切であるとされている。⇒独立性:当事者への意思決定機関やサービス提供機関から独立していて利害関係を 持たない。 エンパワメント:自身や自尊心を取り戻す過程でもある。 当事者主義:本人の希望や意思に基づいて行動。 秘密を守る(守秘):プライバシーの尊重、当事者から聞いたことを他人に伝えない、信頼関係の前提。 平等:すべての当事者が平等にアクセスできること。 当事者参画:常に当事者の参画を得て進める。

4−4 医療保護入院 ↓
4−4−1 医療保護入院の見直しについて
(1) 現状・課題
→平成 25 年の精神保健福祉法改正⇒保護者制度の廃止、医療保護入院における入院手続等の見直し、精神科病院の管理者に対する退院促進措置の義務付けが行われ、現在の医療保護入院制度が整備された。 精神科医療機関⇒医療保護入院者の退院に向けた相談支援等の業務を行う「退院 後生活環境相談員」の選任、退院後に利用可能な障害福祉サービス等の利用に向けた相 談等を行う「地域援助事業者」の紹介、医療従事者や患者、家族等が出席し患者の退院 に向けた取組等を審議する「医療保護入院者退院支援委員会」の設置等、法令の規定に 基づき、患者の権利擁護を図りながら、入院医療が提供されている。 医療保護入院制度の必要性⇒「これからの精神保健医療福祉のあり方に関 する検討会」報告書(平成 29 年2月)→精神障害者に対する医療の提供については、できる限り入院治療に頼らない治療的 な介入を行うことが原則であり、その上で、入院治療が必要な場合についても、できる限り本人の意思を尊重する形で任意入院を行うことが極めて重要である。ただし、病気の自覚を持てない場合があり、症状の悪化により判断能力そのものが 低下するという特性を持つ精神疾患については、本人が病気を受け止めきれないこと もある中で、自傷他害のおそれがある場合以外にも、入院治療へのアクセスを確保する仕組みが必要と考えられる。 その上で、医療保護入院は、指定医の判断により入院治療が必要とされる場合であって、任意入院につなげるよう最大限努力をしても本人の同意が得られない場合に選 択される手段であるということを再度明確にするべきである。 今夏目途で障害者の人権及び基本的自由の享有を確保すること等を目的とする障害者 権利条約に基づく初回の対日審査が予定されており、障害者権利委員会からは、医療保 護入院等の強制入院の撤廃等に関する事項について、事前の情報提供が求められている。 患者の権利を確保するための取組をより一層推進させていくことが重要。 諸外国においても、患者の同意を得ずに入院を行う制度は存在しており、権利擁護の仕組みとともに運用されている。 こうした点を踏まえ、医療保護入院→誰もが安心して信頼できる入院医療 が実現されるよう、課題の整理に取り組み、具体的かつ実効的な方策を検討することが 必要。検討に当たっては、(1)医療その他福祉等のサービスを患者本人の病状に応じ、地域で切れ目なく受けられるようにするためのアクセス確保の観点から、患者の症状によっては、その同意によらない入院を行えないとすると、患者の不利益につながることがある という視点、(2)患者の権利擁護の視点の両面について、十分に勘案することが必要。具体的な検討に当たっては、以下の3つの視点を基本とすべき。⇒視点1:入院医療を必要最小限にするための予防的取組の充実。視点2:医療保護入院から任意入院への移行、退院促進に向けた制度・支援の充実 。 視点3:より一層の権利擁護策の充実。

(2) 今後の取組
@ 入院医療を必要最小限にするための予防的取組の充実(視点1)
(基本的な考え方)
→医療、障害福祉・介護、住まい、就労等の社会参加、地域の助け合い、教育・普及啓発が包括的に確保された「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築を推進し医療その他福祉等の各サービスを地域の関係機関・関係者の協働・連携のもと、切れ目なく受けられるようにすること、これにより、「支える側」・「支えられる側」 という従来の関係を超えて、相互に助け合いながら暮らせる地域づくりを目指すこと が必要である。
(具体的な方策)→ (@) 患者本人のニーズの実現に向けた「包括的支援マネジメント」の推進(訪問診療・ 訪問看護の充実、外来患者に対する相談体制の充実、医療・福祉等の地域の多職種・ 多機関連携の推進等)。 精神障害の特性として、疾病と障害とが併存しており、その時々の病状が障害の程 度に大きく影響するため、医療、障害福祉、介護その他のサービスを切れ目なく受け られる体制を整備する必要がある。「包括的支援マネジメント」とは、こうした観点から、本人を中心として、医療・ 精神保健・障害福祉等の多職種・多機関が相互に連携することにより、訪問診療や訪問看護、障害福祉サービス等のサービスを継続的かつ包括的に受けることができる 体制の整備を進めるもの。 以下の方策等を通じ、こうした「包括的支援マネジメント」の推進をより一層図っ ていく必要。⇒現在、モデル事業として、精神科医療機関と地域生活支援拠点等に配置され、両者の連携を支援するコーディネーターを中心に、医療・福祉分野の多職種・多機関 の関係者が連携し、精神障害者の地域生活の実現に向けた支援内容を明確にする ための事業を進めている。また、令和4年度診療報酬改定→行政機関等の保健師等による家庭訪問の対 象であって精神疾患の未治療者、医療中断者等に対する訪問診療・精神科訪問看護 を実施した場合の評価の仕組みを創設するとともに、医療機関の精神科外来に通 院する重点的な支援を要する患者に対し、多職種による包括的支援マネジメント に基づいた相談・支援等を実施した場合の診療報酬上の評価の仕組みを創設している。今後、こうした取組による知見を踏まえつつ、令和6年度の診療報酬・障害報酬 の同時改定での評価を含めて検討を進めるべき。
(A) 患者の緊急のニーズに対する受診前相談及び入院外医療等の充実→精神症状の急性増悪、精神疾患の急性発症等、患者の緊急のニーズに対する精神科 救急医療体制は、精神保健医療福祉上のニーズを有する方の地域生活を支える重要 な基盤であり、重層的な支援体制のもとでの平時の対応並びに受診前相談及び入院 外医療(夜間・休日診療、電話対応、往診、訪問看護等)の体制整備とあわせ、入院 治療(急性期)へのアクセスを 24 時間 365 日確保することが必要となる。 受診前相談⇒精神医療相談窓口や精神科救急情報センターの体制整備 に向けた支援が進められており、地域の実情を把握しながら、より一層の充実を図ることが重要。 昼夜を問わず、患者の緊急のニーズに対応できるよう、今後、地域の実情に応じた 受診前相談の体制整備、時間外診療への対応や入院の要否に関する判断の診察、往診、 訪問看護等の入院外医療の更なる充実について、診療報酬等の評価を含めて検討を 進めるべきである。

A 医療保護入院から任意入院への移行、退院促進に向けた制度・支援の充実(視点2)
(具体的な方策)↓
(@) 入院期間について
→精神科病院においては、退院支援委員会や定期病状報告の仕組みを通じ、入院中の 患者の任意入院への移行や退院促進に向けた支援のほか、急性期のチーム医療では、クリニカルパス(院内標準診療計画書)を活用した早期退院の取組等が進められている。 他方で、現行の精神保健福祉法⇒入院時に任意入院が行われるよう努める旨の規定が置かれている(第20条)が、入院中の患者について、任意入院への移行を求 める明文規定は設けられていない。 入院治療を含めた精神科医療は、本人の意思を尊重する形で行われることが重要 あり、患者の同意を得ることが困難な状況で入院を開始することを要した場合にも、その後の症状等の変化に応じて対応する必要があることから、医療保護入院中の患者についても、その症状に照らし本人が同意できる状態になった場合は、速やかに 本人の意思を確認し、任意入院への移行や入院治療以外の精神科医療を行うことが 必要である。 こうした確認は、入院中に日々行われるものであるが、制度上もこうした確認が確 実に行われることを一定の頻度で担保できるよう、医療保護入院の入院期間(注)を 定め、精神科病院の管理者は、この期間ごとに医療保護入院の要件を満たすか否かの 確認を行うこととするべき。 注 具体的な期間⇒医療保護入院者における当初の入院計画での予測入院月数は、6割 以上の入院者が「3ヶ月以上6ヶ月未満」とされていることを踏まえ、「3ヶ月ごと(入院から6ヶ月経過後は6ヶ月)」とすることが考えられる。一方、検討会では、入院期間の短縮を図る 観点から「1ヶ月ごと(入院から6ヶ月経過後は3ヶ月)」とする意見もあった。 また、検討会では、具体的な検討を進めるに当たっては、現行の退院支援委員会、 定期病状報告等の制度との整合性に留意する必要があるとの意見や、本人の意思に 反して入院させる心理的な負担を家族に繰り返し求める点に配慮が必要との意見が あった。さらに、入院期間を定める場合には、入院届の審査を担う精神医療審査会の 事務が増加することも考えられることから、適切な人員上の手当を含む対応について検討が必要との意見があった。 こうした制度上の枠組みのほか、入院期間の短縮化に向けては、入院が長期に及ぶ 背景について、調査研究等を活用して実態に即した検討を長期的な視野で進めるべき。 具体の制度及び実際の運用の在り方の検討を進めるに当たっては、こうした意見 についても考慮していくことが必要である。

(A) 退院促進措置の実態を踏まえた拡充策→退院促進措置の実態に関する調査(注)⇒平成 25 年改正の退院促進措置の導入により、新規入院患者の退院促進に向けた 院内連携は着実に進展。長期入院者の退院に向けては、地域援助事業者等との地域・院外での連携等、地域により課題が見られ医療保護入院以外の入院者に対する退院措置のあり方にも課題が見られる。 こうした現状に照らし、担当者調査では、医療保護入院者の早期退院に必要と感 じている取組として、家族への適切な支援のほか、行政・基幹相談支援センター・ 市町村障害者相談支援事業・地域支援者・ピアサポーター・弁護士等司法関係者の 関わり、診療報酬の見直しが挙げられる とされている。 注 令和3年度障害者総合福祉推進事業「退院後生活環境相談員の業務と退院支援委員会の開催 等の実態に関する全国調査」(公益社団法人日本精神保健福祉士協会)。 こうした結果を踏まえ、⇒医療保護入院以外の入院者についても退院促進措置の対象とすべき。 こうした対象者の拡大や、地域援助事業者等との更なる連携を実現しつつ、支援 の質を担保していく観点からは、専門職の活用が重要となるため、必要な人員等が 確保できるよう、診療報酬における適切な評価を含めた検討を行う必要がある。
(B) 長期在院者への支援→長期在院者の支援に向けては、実際に訪問し、一人の顔の見える患者、自治体の住 民の一人として支援を進めていく取組が重要と考えられ、そうした観点から、市町村 が地域生活支援事業として実施する障害者相談支援事業実施要領においては、権利 擁護のために必要な援助の例として「精神科病院を訪問し、入院患者の退院に向けた 意思決定支援や退院請求などの権利行使の援助を行うよう努めること」とされてい る。 慣れない環境での入院治療はそれだけで孤独や不安を伴うなか、病院の中で、十分 に自分の気持ちや状況について話を聞いてもらえない、説明が得られない、伝えては みたが上手く伝わらない等の体験が重なることで、当初抱えていた孤独や不安が増大 し、これにより、次第に退院を諦めざるを得なくなり、長期在院につながっていくこ とが考えられる。 こうした観点から、市町村の長期在院者への支援→当事者、ピアサポー ターとの協働のもと、長期在院者自身の視点から行われることが望ましい。そのため、 市町村において都道府県等と連携しながら、当事者、ピアサポーターと協働できる体 制の構築を進めていくことができるよう、国においても十分な基盤の整備を検討する ことが重要。 ○ 地域生活の実現に向けては、利用者と同じ立場に立って相談・助言等を行うことが、 本人の不安の解消や、自分は一人ではないという安心やエンパワメントにつながっ ていくという観点を踏まえ、令和3年度の障害福祉サービス等報酬改定において、ピアサポートの専門性について新たに評価が行われている。 国においても、長期在院者支援に積極的な自治体の取組を支援するとともに、先進 的な自治体の取組が全国の市町村で実施できるように共有を図るなど、市町村のバ ックアップを進めるべき。 また、退院促進措置に係る連携先として、地域援助事業者に加え、地域生活支援事 業において障害者相談支援事業を実施する市町村を追加すべきである。

B より一層の権利擁護策の充実(視点3) ↓
(具体的な方策)
→病院管理者が医療保護入院を行った場合に医療保護入院者に対して書面で行う告 知の内容について、現行の精神保健福祉法では、入院措置を採る旨、退院請求・処遇 改善請求に関すること、入院中の行動制限に関することが定められている。 こうした入院措置がどのような理由から行われたのか、患者が医師から説明を受ける機会を保障するとともに、入院措置を行う精神科病院の管理者について慎重な判断を促し、患者の権利擁護を図るため、告知を行う事項として、新たに入院を行う理由 を追加すべきで、都道府県知事等が行う措置入院についても、同様の対応を行うべき。医療保護入院の同意を行う家族等は、退院請求権や処遇改善請求権を有する ことから、告知を行うことが求められる旨を明文で規定すべきである。

C 今後の検討課題について→誰もが安心して信頼できる入院医療が実現されるよう、今後、患者の同意が得られ ない場合の入院医療のあり方などに関し、課題の整理を進め、将来的な見直しについて検討していくことが必要。
(患者の同意が得られない場合の入院医療のあり方に関する基本的な考え方)→医療へのアクセス確保の観点から、患者の状況・症状によっては、その同意によらない入院を行えないとすると、患者の不利益につながることがあるのではないか。患者本人の同意がない場合の入院手続について、精神科と他科とで対応を区別 する合理性があるか。 他方で、精神科の入院患者⇒その特性を踏まえた入院手続とともに、 退院等に向けた支援や入院中の処遇の改善、入院から退院までの患者の権利擁護 に向けた支援の内容・担い手等、他科の場合よりも充実した権利擁護の仕組みが必要ではないか。 また、検討会において、平成 24 年6月の「入院制度に関する議論の整理」で示 された考え方に対しては、患者の同意が得られない場合の入院医療の必要性が、直 ちに現行通りの医療保護入院の必要性を意味するものではないため、両者を区別 して検討すべきとの意見があった。こうした意見を踏まえた上で、今後、患者の同 意が得られない場合の入院医療のあり方について、さらに検討を行うことが必要 ではないか。
(患者のニーズに応じた医療の提供等)→統合失調症の急性期の状態等にあり患者が明確に同意を拒否している場合がある一方、認知症等により病状は安定しているものの患者自身が有効な同意の意思表 示を行えない場合が増えている現状も踏まえ、精神疾患の特性により、様々な場合 があり得ることを念頭に置く必要があるのではないか。 認知症等の入院患者が増えている現状のもと、患者の状態に応じた適切なサービ スを提供し、生活の質(QOL)を向上させる観点からは、今後精神病床のダウンサイジング(縮小のこと)と並行して患者のニーズに応じた医療・居住の場の整備を進めていくため の方策の在り方について、既存の制度の枠組みに限ることなく検討していくことも 重要ではないか。
(関係者の負担等)→さらに、患者が医療にアクセスすることが阻害されないようにしつつ、医療機関 や患者、現行法では同意を行うことが求められている家族等、特定の者に過度の負 担を求める仕組みとならないように留意することも必要ではないか。
(海外の制度との対比等)→精神疾患を有する患者は、どのような体系で入院医療を受けることができるのか、 海外の制度と対比しながら、患者の同意が得られない場合の入院医療のあり方につ いて、総合的な検討を進めることが必要ではないか。

4−4−2.医療保護入院の同意者について
(1) 現状・課題
→ 「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」報告書(平成 29 年2月)では、現在の家族等同意の機能について、入院することを本人に代わって同意することではなく、@医師の判断の合理性(説明に対する納得性)、A入院治療が本人の利益に資するかについて、本人の利益を勘案できる者の視点で判断する点にあると整理できる。 その上で、@については、現在の家族等同意では、家族等に医学的な専門知識まで必ず しも求めてはおらず、医師が家族等に対し、理解しやすいよう丁寧に病状や入院治療の 必要性等を説明した上で、家族等が医師の説明に納得して判断できれば足りると考えら れる、Aについては、家族等には、本人についての情報をより多く把握していることが期 待されていると考えられる、とされている。 検討会では、家族等同意については、同意したことで家族の精神的負担や本人との関 係性の悪化につながるため、廃止してほしい、また、市町村長同意については、医療機 関の判断を追認する形で手続が行われているのではないか、との意見があった。

(2) 今後の取組
(同意者についての議論)
→医療保護入院の同意者に関する検討会での意見を整理。⇒P52表、「前提の考え方」「理由」「課題」について「(現行)家族等」「(現行)市町村長」「指定医のみ」「代理人」「病院外の精神保健福祉士」「司法」のそれぞれの意見説明。
(医療保護入院の同意者について)→現状では、家族等、市町村長以外の同意者を想定す ることは現実的には容易でないため、家族等同意及び市町村長同意⇒現行の 仕組みを維持することになるものと考えられる。 ただし、家族等同意についての家族等の負担、市町村長同意についての医療機関の判 断の追認に係る意見⇒検討会での議論も踏まえ、適切な対応を検討すべき(注)。 その上で、引き続き、今後の医療保護入院患者数の推移等を踏まえながら、適切な制度のあり方を検討していくことが必要。 注 具体的に考えられる方策の具体例 →家族等同意:入院医療を必要最小限にするための予防的取組の充実、緊急時における受診前相談及び入院外医療の充実、精神疾患や精神障害に関する普及啓発(特に学校教育における普及啓発)、予算事業を活用した家族同士の交流の場の提供。 市町村長同意:現行の「市町村同意事務処理要領」に基づく事務処理の要請。

4−4−3.本人と家族が疎遠な場合等の同意者について
(1) 現状・課題
→家族等同意の機能は、本人について多くの情報を把握し、「本人の利益を勘案できる者 の視点で判断する点にある」と整理されているが、本人と家族が疎遠な場合等は、こうした機能を期待することは困難な場合がある。 他方で、市町村長同意は、現行の精神保健福祉法において「家族等がない場合又はその家族等の全員がその意思を表示することができない場合」とされているため、疎遠であっても家族がいる場合等は、当該家族の意向を確認する必要がある。
(2) 今後の取組→長期間の音信不通等により家族が同意・不同意の意思表示を拒否する場合、家族がどうしても同意・不同意の判断を下せない場合等、当該家族の意向を確認することができない場合は、市町村長が同意の可否を判断できるようにすべき。 また、例えば、患者本人と家族等との間でDV、虐待等が疑われるケースの場合は、 DV防止法や虐待防止法等の規定による一時保護等の措置の対象となっているかにつ いて、配偶者暴力相談支援センター、児童相談所、市町村等の公的機関への確認を通じ、 客観的に判断することもあり得ると考えられる。したがって、こうしたケース⇒DV、虐待等の関係にある家族に代わり、市町村長が同意の可否を判断できるよう にすることについて、実務的な課題の整理を行いながら、検討することが適当。さらに、検討会において、医療保護入院の同意については、家族等ではなく、基本的 に市町村長が行うこととしてはどうか、との意見もあった。今後、医療保護入院の縮減 を図っていく中で、本人の利益を勘案できる者の視点で判断するという家族等同意の意 義、市町村の体制整備のあり方と事務負担への影響についても勘案しながら、さらに検 討を進めていくことが必要である。

4−4−4.精神医療審査会について↓
(1) 現状・課題
→「精神医療審査会に関するアンケート調査」調査報告書(令和4年3月 公益社団法人 日本精神保健福祉士協会)⇒委員の確保が困難、委員の日程調整が難航する等の理由で審査期間が長期化してい る現状。精神医療審査会の事務局が、必ずしも処遇改善請求までには至らない、医療機関に 訪問し、患者の話の傾聴や情報提供を行うといった業務についても、患者の権利擁護 の観点から担っている現状 が把握された。 精神医療審査会⇒行政機関との関係性が必ずしも明確ではない中で、委員の確保や委員間の日程調整が整わず、退院等請求の審査期間が長期化する等、専門的機関としての機能が十分に果たせていないとの指摘がある。
(2) 今後の取組→精神医療審査会の機能向上に向けては、全国精神医療審査会連絡協議会との意見交換 を行うなど、審査会の実態を把握した上で、引き続き、実効的な方策を検討する必要。研究事業による分析を深め、精神医療審査会運営マニュアルの改正を目指すべき。 他方、措置入院者⇒現在、定期病状報告の際に精神医療審査会の審査の対 象としているが、国際人権B規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規 約))9条4項の趣旨を踏まえ、精神保健福祉法において、措置入院を行った時点で速や かに精神医療審査会の審査を実施できるようにすることが望ましい。 また、精神医療審査会運営マニュアルでは、合議体を構成する医療委員、法律家委員 及び保健福祉委員について、審査に係る患者と一定の関係性がある場合等に議事に加わ ることができないと定められているが、保健福祉委員について、具体的にどのような者 が想定されるかは示されていない。そうした点を踏まえ、保健福祉委員について、具体 的には、精神保健福祉士、保健師、看護師、公認心理師等が想定されるが、都道府県知事等の判断により、例えば、当事者や家族も含めることができることを示すべきである。

4−5 患者の意思に基づいた退院後支援
(1) 現状・課題
→国会での審議を踏まえ、「地方公共団体による精神障害者の退院後支援 に関するガイドライン」(平成 30 年3月厚生労働省障害保健福祉部長通知)が示されている。まず、退院後支援のガイドラインについて見直しを行い、退院後支援⇒津久井やまゆり園事件の再発防止策を契機とした取組ではないことを明文で規定するこ とが必要。その上で、入院形態を問わず、退院後支援を行うものとされるガイド ラインとの乖離がなくなるよう、退院後支援の推進に向けた方策を整理していくことが 求められている。
(2) 今後の取組 ↓
(ガイドラインに基づく退院後支援の推進に向けた施策)
→患者の意思に基づいた退院後支援は、入院早期から支援体制を構築し、病院と連携しながら、多職種・多機関の協働を図るものであり、「包括的支援マネジメント」の一環と しての位置付けを有する。 より一層充実した退院後支援を実現していくためには、広く患者の入院形態を問うこ となく支援が行われるよう、より一層の推進策の検討が必要。 そうした観点のもと、引き続き、退院後支援の効果等を見極めつつ、診療報酬における 適切な評価を含めた検討を行う必要。 (警察の会議への参加)→警察の関与を心配に思う当事者がいる一方、警察の支援を希望する当事者がいること を踏まえ、警察の会議への参加の可否について検討することが必要である。 退院後支援のガイドラインでは、「会議には防犯の観点から警察が参加することは認め られず、警察は参加しない」と明記されている。例外的に警察が支援関係者として、「警 察が支援関係者として本人の支援を目的に参加することは考えられるが、この場合は、 本人及び家族その他の支援者から意見を聴いた上で、警察以外の支援関係者間で警察の 参加についての合意を得ることが必要。この際、本人が警察の参加を拒否した場 合には、警察を参加させてはならない」と規定されている。これは、単に本人の同意の下 で参加するという規定では、強引に同意を求めていく状況も考えられるためである。 ガイドラインは、警察の会議への参加について慎重な手続が求められているが、こうした手続を設けてもなお警察の関与を不安に思う当事者がいるとの意見を踏 まえ、関係省庁から各都道府県警察に対して、法令の規定に基づく適切な個人情報の取扱いを求める通知を発出し、地域によって対応にばらつきが生じないよう依頼する 等の対応を検討すべきである。

4−6 不適切な隔離・身体的拘束をゼロとする取組 ↓
(1) 現状・課題
→隔離・身体的拘束は、精神保健福祉法上、精神科実務経験を有し法律等に関する研修を修了した指定医の専門的知見に基づき、代替方法によることは困難であり、医療・保護を図る上でやむを得ないと判断された場合に、必要最小限の範囲で行われる。 このように、精神科医療機関における隔離・身体的拘束は、法律の規定により、患者 の権利擁護に十分配慮することとされている。 精神科病院の医療は患者のために行われるものであり、患者の尊厳が確保されること が何より重要。誰もがいざというとき、安心して信頼できる入院医療を実現するには、患者の権利擁護に関する取組がより一層推進されるよう、実際の医療現場において、精神保健福祉法の規定に基づく適正な運用が確保されることが必要である。 諸外国においても、やむを得ない場合に患者の隔離・身体的拘束を行う制度は存在し ており、人権擁護の仕組みとともに運用されている。 ○ そうした観点から、不適切な隔離・身体的拘束をゼロとすることを含め、隔離・身体的拘束の最小化に、管理者のリーダーシップのもと、組織全体で取り組み、行動制限最小化を組織のスタンダードにしていくことが求められている。
(2) 今後の取組 ↓
(処遇基準告示(注)の見直し等)
注 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第 37 条第1項の規定に基づき厚生労働大臣が定める 基準(昭和 63 年厚生省告示第 130 号)→ @ 現在「基本的な考え方」で示されている切迫性・非代替性・一時性の考え方について、処遇基準告示上で要件として明確に規定するべき。 A 単に「多動又は不穏が顕著である場合」に身体的拘束が容易に行われることのな いよう、「多動又は不穏が顕著である場合」という身体的拘束の要件は、多動又は不 穏が顕著であって、かつ、患者に対する治療が困難であり、そのまま放置すれば患者の生命にまで危険が 及ぶおそれが切迫している場合や 常時の臨床的観察を行っても患者の生命にまで危険が及ぶおそれが切迫している場合に限定し、身体的拘束の対象の明確化を図るべきである。 その上でBCのプロセスにより、組織全体で@の3要件を満たすか否か、Aの定義に 当たるかどうかを判断できる体制を構築するべきである。 この点に関し、検討会では、「多動又は不穏が顕著である場合」は拡大解釈のおそれ があるため要件から削除すべきとの意見、身体拘束を原則廃止すべきとの意見があった 一方、治療の必要性の観点も考慮されるべきとの意見があった。他方で、治療の必要性 の要件については、身体的拘束について新たな対象を生み出すおそれがあるのではない かとの意見、点滴等生命維持のために必要な医療行為を行うための身体固定について、 短時間の場合であっても一定のルールのもと行うこととすべきではないかとの意見があ った。 今後、「多動又は不穏が顕著である場合」という要件を見直すに当たり、非代替性の 要件の判断手法(注)や行動制限最小化委員会の在り方に関する課題を含め、調査研究 等により、告示の見直し内容とあわせ、実際の運用について、具体的な現場の指標とな るよう、検討を深めていくことが必要。 注 非代替性の要件の適正な判断に資するよう、国や医療関係者等が、身体的拘束に至らないため の代替手段について、精力的な検討を行う必要がある。

B 隔離・身体的拘束の最小化について、管理者のリーダーシップのもと、組織全体 で取り組む。隔離・身体的拘束の可否は、指定医(注)が判断するとともに、院内 の関係者が幅広く参加したカンファレンス等において、病院全体で妥当性や代替手 段の検討を行う旨を明示するべきである。 注 指定医については、患者の人権を守るため、管理者とともに行動制限最小化に組織全体で取 り組み、行動制限の最小化を組織のスタンダードにできるようにしていくことが期待されてい る。 国としても、指定医の資質を担保した上で、安定的な確保に向けた方策を検討するととも に、指定医研修のシラバスを定期的に見直し、研修の機会を通じて、指定医に直接に訴えてい くことが必要である。

C Bと同様、行動制限の最小化を管理者の責任のもと組織のスタンダードにしてい く観点から、⇒行動制限最小化委員会の定期的な開催。隔離・身体的拘束の最小化のための指針の整備。従業者に対し、隔離・身体的拘束の最小化のための研修を定期的に実施。

D さらに、隔離・身体的拘束を行うに当っては、現在、患者にその理由を「知らせ るよう努める」とされている、法律に基づく適正な運用を担保すべく、これ を「説明する」と義務化するべきである。 その際、当該説明については、単に形式的に行われるのではなく、入院中の処遇に 関するものとして患者がその内容を十分に把握できるようにすることが重要。このため、処遇改善請求等の権利内容についても説明するとともに、患者がその内容 を把握できない状態にある場合は、再度説明を行う必要がある旨を明らかにするべき。

E こうしたプロセスを確保し、隔離・身体的拘束を最小化するための診療報酬上の 取扱いを含む実効的な方策を検討するべきである。
F 検討会では、上記の他、重度訪問介護を利用している障害支援区分6の入院中の 患者は、24 時間見守り、意思決定支援、コミュニケーション支援を内容とする重度 訪問介護の活用が可能となっている。さらに入院中の利用者の状態像や支援ニーズ 等に関するデータ等の収集を行い、入院中の重度訪問介護の利用によるコミュニケ ーション支援等の必要性を判断する基準や指標等を検討する必要があるとの意見が あった。

4−7 精神病床における人員配置の充実について
(1)歴史的経緯
→わが国の精神医療行政⇒精神病院法(大正8年制定)により、公的精神病 院を設置する考え方が初めて明らかにされたが、公立精神病院の設置が進んでいない状 況もあり、民間の代用精神病院制度が設けられた(注1・2)。 注1 代用病院制度:精神病院法では、⑴内務大臣は道府県に精神病院の設置を命じることができ、道府県が設置した精神病院は地方長官の具申によって当該命令により設置したものとみな すことができる、⑵内務大臣は⑴の精神病院に代用するため私立精神病院を指定することがで きる(代用精神病院)とされた。 注2 昭和6年には、患者総数7万余人に対し、収容人員は 1.5 万人程度(うち公立精神病院:0.2 万人程度、私立精神病院:1万人程度)とされている。
戦後、精神衛生法(昭和 25 年制定)により、精神病院の設置が都道府県に義務付け られたものの、昭和 29 年7月の全国精神障害者実態調査によって、精神障害者の全国 推定数は 130 万人、うち要入院は 35 万人で、病床はその 10 分の1であった。 このため、同年、精神衛生法が改正され、民間精神病院の設置・運営に要する経費の 国庫補助の規定が設けられ、民間病院を中心とした病院・病床の整備が進められた。5 年後の昭和 35 年には約 8.5 万床に達する等、精神障害者に対する医療保護の充実が図られた。 医療従事者の確保・養成が課題となる中、昭和 33 年には厚生事務次官通知(注1) が発出され、いわゆる「精神科特例」として、精神科病院における配置標準(注2)⇒医師は他の病床の3分の1、看護師は他の病床の3分の2と規定された。 注1 厚生事務次官通知に関して、昭和 33 年各都道府県知事宛厚生省医務局長通知において、医師 の確保が困難な特別な事由があると認められるときは、暫定的にこれを考慮した運用も止むを得 ないことが示された。 注2 医療法上、人員配置標準を満たさない場合であっても、直ちに業務停止とは連動されておら ず、最低基準ではなく「標準」とされている。
こうした歴史的な経緯もあり、民間精神科病院⇒必ずしも十分とはいえな い基盤のもと、地域における過大なニーズに対応する役割を担ってきたとの指摘もあ る。


(2) 今後の取組
(人員配置の充実について)
→いわゆる「精神科特例」については、昭和 33 年の厚生事務次官通知により定められ ていたが、平成 13 年の医療法改正に伴い、当該通知は廃止。 医療法上、精神病床⇒一般病床・療養病床と異なり、病床種別上、機能が 細分化されていないという違いがある。 こうした中で、精神病床における人員配置標準⇒療養病床と同等の基準が 設けられているほか、診療報酬上、急性期の精神病床⇒一般病床と同程度の 医師・看護師の配置を求め、早期に退院できるよう促している。 「精神科医療の機能分化と質の向上等に関する検討会」における平成 24 年の意見の整理でも、今後の方向性として、病床の機能に応じ、看護職員に加え、精神保健福祉士、作業療法士、理学療法士等の多職種の従事者による人員配置とする旨が示されている。 入院患者数の減少に応じて、精神病床について医療計画に基づき適正化を図っていくとともに、入院患者に対してより手厚い人員配置のもとで良質な精神科医療を提供できるよう、個々の病院の規模や機能に応じ、医師・看護職員の適正配置や精神保健福祉士、作業療法士、公認心理師等を含む適切な職員配置を実現していくことが求められ る。

4−8 虐待の防止に係る取組
(1) 現状・課題
→医療機関の従事者による身体的虐待、性的虐待、精神的虐待、放棄・放置、経済的虐 待といった虐待行為はあってはならないものであるが、医療機関従事者による虐待事案 が現に発生している状況にある。こうした悪質な行為は潜在化させてはならず、精神科 医療機関⇒都道府県等を通じ、虐待行為の発生防止に加え、早期発見、再発 防止に向けた対応を行っている。 また、令和2年3月に報道された精神科病院における虐待事案を受け、 @ 精神科医療機関に対し、虐待事案の発生防止や早期発見の取組強化、事案が発生し た場合の都道府県等への速やかな報告を要請するとともに A 都道府県等が行う実地指導において虐待が疑われる事案の把握を強化し、虐待が強 く疑われる場合は、事前の予告期間なしに実地指導を実施できることとする等、指導 監督の徹底を図っている。

(2) 今後の取組↓
(障害者虐待防止法に基づく虐待防止措置の徹底)
→管理者のリーダーシップのもと、虐待行為の発生防止、早期発見、再発防止に向けた 取組を組織全体で推進し、より良質な精神科医療を提供することができるよう、虐待を 起こさないことを組織風土、組織のスタンダードとして醸成していくための不断の取組が重要。 こうした観点から、国においても、医療機関及び都道府県等に対して、障害者虐待防 止法第 31 条の虐待防止措置の取組例について周知を進め、虐待行為の発生防止、早期発 見、再発防止の徹底を図っている。 ○ 精神科医療機関の中には、病棟単位での倫理カンファレンスの実施、患者や家族の声 の傾聴等を通じて、虐待が起きないようにするための組織風土を醸成することにより、 虐待行為の潜在化防止を図る取組も見られることから、医療従事者による積極的な取組を行う現場づくりを実現していくことも重要。
虐待行為の潜在化を防ぐための仕組み)→他方で、医療機関は、障害者虐待防止法に基づく通報義務の対象とされておらず、通報者保護の仕組みが設けられていない。虐待の疑いを発見した精神科医療機関の職員等 が、行政機関への通報を躊躇し、悪質な虐待行為が潜在化することのないよう、通報義 務及び通報者保護の仕組みを設けることについて、制度上の対応を検討するべき。
こうした仕組みが整備されることにより、早期の通報が可能となり、虐待の被害がエスカレートすることを防ぐことが可能となる。さらに、通報を契機に精神科医療機関が 再発防止策を講じることが可能となり、より良質な精神科医療の提供に向けて、虐待を 起こさない組織風土の構築・徹底に資する効果も期待される。 具体的な仕組みのあり方については、検討会では、障害者虐待防止法を改正して設ける考え方と、精神保健福祉法を改正して設ける考え方について議論が行われ、双方を支持する意見があったが、いずれにしても、精神科医療機関における虐待行為の早期発見、 再発防止に資する実効的な方策となるよう、制度化に向けた具体的な検討を行うべき
(虐待防止委員会の開催等)→ 虐待が起きないための組織風土の構築にも資するよう、虐待防止委員会の開催、 虐待防止のための指針の整備、虐待防止のための研修の実施等についての規定を設ける ことを検討すべきである。 注 外部の第三者を活用するための方策の検討が必要である。

次回も続き「V 各論点 5.障害福祉サービス等の質の確保・向上について」からです。

社会保障審議会障害者部会(第131回) [2022年06月28日(Tue)]
社会保障審議会障害者部会(第131回)(令和4年6月2日)
《議事》(1)報告書(案) (2)その他
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000195428_00058.html
◎資料 障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しについて
〜社会保障審議会 障害者部会 報告書〜(案)
T はじめに↓

○ 令和3年3月、本部会は、障害者総合支援法等の施行状況等について議論を開始。 事業者団体、当事者団体等の 46 団体からヒアリングを行うとともに、ヒアリング後には 令和3年末までに計 13 回にわたって障害者総合支援法等の施行状況や施策の見直しに 関する議論を行ってきた。
○ 以上のような経過を経て、関連する審議会等の議論の進捗状況を踏まえつつ、本部会 においては令和3年 12 月 16 日に下記の方針をまとめ、中間整理を公表。 ⇒(1)一定の方向性を得るに至った障害児支援に関する論点については必要な措置を講じていくべき。 (2)また、それ以外のさらに議論が必要な事項→引き続き本部会における議 論を継続し、来年(令和4年)半ばまでを目途に最終的な報告書をとりまとめること を目指す。
○ その後、上記(1)の論点⇒令和4年3月に対応する児童福祉法の改正法案 が第 208 回通常国会に提出された。一方で、上記(2)の引き続き本部会における議論 を継続するとされた論点⇒令和4年3月より最終的な報告書のとりまとめに向けた議論を再開し、各論点について一層議論を深めてきた。また、障害者雇用率制度をはじめとした諸制度や施策⇒本部会と並行して、労働政策審議会障害者雇用分科会において議論されており、その状況が報告された。この間、とりまとめに向け た議論も含め、計●回にわたって障害者総合支援法等の施行状況や施策の見直しに関する議論を行った。
○ 令和3年 10 月に地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討 会が設置され、「精神障害者等に対する支援」について●回にわたり議論が行われてきた。この議論の状況⇒令和4年4月及び同年6月に本部会において報告・議論され、今後の方向性について本報告書にとりまとめた。
○ 以上のような審議経過を経て、ここに障害者総合支援法及び児童福祉法改正後3年を 目途とする見直しの議論を本部会としてとりまとめる。政府には、本報告書に基づく今後の対応として、関係法令等の改正や次期報酬改定等について検討を進め、可能な限り 早期に実現するよう取り組んでいくことを求める。 なお、今回の障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しの後、今後の障害者部会に おける議論に当たっては、障害福祉施策に関する各論点のみならず、制度や障害福祉サービス等の在り方そのものに関する中長期的な議論をいかに進めていくべきか、が課題 である。

U 基本的な考え方→「1.障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり」、「2.社会の変 化等に伴う障害児・障害者のニーズへのきめ細かな対応」、「3.持続可能で質の高い障害 福祉サービス等の実現」の3つの柱に整理。意思決定の支援に配慮しながら当事者自身の言葉や発信をそのままに受け止め、当事者の目線を大切に取り組み、地域住民の障害理解も促進していく。本年 8月には国連・障害者権利委員会による対日審査が予定されており、今後もこうした国際 的な動き、障害者基本法など関連する国内法の動きに対応する見直しが求められる。
1.障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり
(1) 障害者が希望する地域生活を実現・継続するための支援の充実
→どの地域においても安心 して地域生活を送れるよう、本人の意思を尊重すること、個々の障害者の支援の必要性に即することを基本と した総合的な支援を進めていく
(2) 地域共生社会の実現→「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」)」
(3) 医療と福祉の連携の推進→福祉と医療の両面からの支援・マネジメントが重要
(4) 精神障害者の地域生活に向けた包括的な支援→精神障害の有無や程度にかかわらず、誰もが地域の一員として安心して自分らしい 暮らしをすることができるよう、医療、障害福祉・介護、住まい、就労等の社会参加、 地域の助け合い、教育・普及啓発が包括的に確保された「精神障害にも対応した地域 包括ケアシステム」の構築をさらに推進する必要。

2.社会の変化等に伴う障害児・障害者のニーズへのきめ細かな対応
(1) 障害児に対する専門的で質の高い支援体制の構築→障害特性や保護者の障害受容等に十分配慮しな がらも、早期発見・早期支援を重視。さらに、障害児への支援にあたっては、居 宅における介護に係る支援も含め、個々の状況に応じた適切な支援の提供が図られる ようにしていく必要がある。
(2) 障害者の多様なニーズに応じた就労の促進

3.持続可能で質の高い障害福祉サービス等の実現→障害福祉人材の確保・育成⇒管理者やサービス管理責任者等への専門職(社会福祉士、介護福祉士等)の任用や職員の研修の状況等を把握しつつ、必要な人 材の確保、サービスの質の向上を図っていく必要がある。

V 各論点について
1.障害者の居住支援について

(1) 現状・課題
(2) 今後の取組
(重度障害者の支援体制の整備)
→注 令和4年度において、更に強度行動障害や高次脳機能障害を有する者の評価の在り方について 検討予定。
○グループホーム→医療的ケア、強度行動障害、高次脳機能障害等の特性に対 応できる専門性を持つ人材配置を推進するための方策について検討する必要がある。強度行動障害の点数が特に高い者や高次脳機能障害を有する者など特に支援が必要な者を 評価するための基準を検討した上で、報酬上の評価や支援体制の在り方について検討すべき。(※)
○また、令和5年度末までの経過措置とされているグループホームにおける重度障害者 向けの個人単位の居宅介護等の利用→令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の影響や重度障害者に対する必要な支援を確保する観点から恒久化すべきとの意見等を 踏まえつつ検討すべき。(※)
○グループホームや在宅で状態が悪化した強度行動障害を有する者に対し、環境を一時的に変えて、適切なアセスメントや環境調整を行った上で、本人の特性に合 うよう環境調整した元の住まいや新たな住まいに移行するための集中的支援をグループ ホーム、障害者支援施設等で当該支援を行うための具体的方策について検討すべき。(※)
(地域生活支援施策の充実)↓
○地域生活支援拠点等→地域生活の安心の確保を図るための緊急時の短期入所の受入体制の整備を図るとともに、入所施設や精神科病院等における地域移行のニーズの把握と働きかけの実施、地域移行支援や体験利用へのつなぎなどの地域移行の推進 に向けた役割を担うことが重要。地域生活支援拠点等及び基幹相談支援センター の機能の明確化や、役割分担の在り方を検討するとともに、地域生活支援拠点等にこう した役割を担うコーディネーターについて、その必置化を求める意見があったことも踏 まえ、配置の促進やスキルアップや養成に向けた方策を検討すべき。(※) また、地域生活支援拠点等については、基幹相談支援センター、グループホーム、障害者支援施設、宿泊型自立訓練、短期入所など、地域の社会資源の活用による効果的な支援 体制の整備を推進するとともに、福祉だけでなく、医療、行政などの関係機関との連携も 含めた 24 時間の連絡体制の整備を推進していく方策やその支援の在り方を検討する必要がある。 あわせて、権利擁護や災害への対応を担う行政等の関係機関との連携について検討す ることも重要。

(グループホームにおける障害者が希望する地域生活の継続・実現)
<居住支援におけるこれからのグループホームが果たす役割>

<グループホームにおける一人暮らし等の希望の実現に向けた支援の充実>
○グループホームにおいて、利用者が安心して暮らすための支援を行うとともに、指定 基準(省令)において、本人が一人暮らし等を希望する場合の一人暮らし等に向けた支 援の充実を検討すべき。(※) @ 入居中の一人暮らし等に向けた支援の充実(サービス管理責任者が一人暮らし等に向けた目標や支援内容等に関する計画を作成 した上で、一人暮らし等に向けた支援を行った場合に報酬上の評価を検討すべき。(※)その際、報酬の評価に当たって特別な人員配置を要件とするのではなく、一 人暮らし等を希望する者に対して幅広く支援ができる仕組みとすることも考えられる。) A 退居後の一人暮らし等の定着のための支援の充実(グループホームの事業者が退居後に一人暮らし等の地域生活の定着に向けた見守り や相談等の支援を一定期間実施できるよう、退居後における見守りや相談等の支援に ついての報酬上の評価を検討すべき。(※))
○障害者が希望する地域生活の実現に向けた多様な選択肢を設ける観点から、指定基準 (省令)において、本人が希望する一人暮らし等に向けた支援を目的とする新たなグル ープホームのサービス類型を検討すべきである。(※)
○また、新たなグループホームのサービス類型の創設の方向性について賛成との意見が ある一方で、経営の難しさ、利用期間や成果主義に陥る危惧が懸念されることから現行 のグループホームの支援の充実を優先すべき、人口減少社会における新たな資源投入は 慎重に検討すべき、地方で実施検証してから全国展開が望ましい等の意見があった。 これらの意見を踏まえ、現行のグループホームの支援の充実を図るとともに、事業所 指定や人員配置など、新たなグループホームのサービス類型の細部については、先行事 例や地方における事業運営、経営面における課題等も踏まえ、調査研究事業等を実施す るとともに、グループホームにおける重度障害者向けの必要な支援についての検討も踏 まえ、当事者等の声を丁寧に聴きながら、地域の課題を抽出しつつ検討を進めるべきで ある。(※)
○また、適切かつ効果的な事業運営を確保する観点から、⇒支援に当たっては、個々の課題を踏まえた一人暮らし等に向けた支援計画を作成し、一定期間の中で一人暮らし等に向けた支援を実施するとともに、退居後に地域生活に 定着するための相談等の支援を実施。 人員配置⇒サービス管理責任者に専門職(社会福祉士・精神保健福祉士等)を常勤で配置することやピアサポーターの活用の評価。一定の利用期間を設定した上で対象者の状況に応じて更新が可能な仕組みとするとともに、新たなグループホーム事業者の責務として、一人暮らし等が難しい場合には 継続的な支援を行うグループホームへの移行支援を実施することについての義務化。事業所指定に当たって運営方針等に係る協議会等への事前協議の実施や、定期的な 運営状況の報告の義務化。報酬⇒人員体制や支援プロセスを重視した評価とすることや地域生活への 定着状況について適切に評価 すること等について、丁寧に検討すべき。(※)
(障害者支援施設の在り方)
<障害者支援施設における重度障害者等の支援体制の充実> ↓

○ 障害者支援施設では、これまでも強度行動障害や医療的ケアのある方など様々な障害 者に対する支援を実施しているが、個々の利用者に対する支援の質の向上に向けて、ユ ニット化や個室化など適切な個別支援に向けた必要な生活環境の把握を進めるととも に、障害者支援施設が果たしている専門的な支援等における役割を踏まえ、現行の人員 配置や支援内容に対する報酬上の評価等について検討すべき。(※)
<地域移行の更なる推進>
<障害者支援施設の計画相談支援のモニタリング頻度等>
<障害者支援施設と地域の関わり>

2.障害者の相談支援等について
(1) 現状・課題
(2) 今後の取組→(分かりやすくアクセスしやすい相談支援体制)(相談支援専門員やピアサポーターの業務の在り方等)(相談支援事業の中立・公正性の確保)(基幹相談支援センターの更なる設置促進)(基幹相談支援センターが果たすべき役割等)(「地域づくり」に向けた協議会の機能の強化と活性化)

3.障害者の就労支援について
(1) 現状・課題
(2) 今後の取組
(就労を希望する障害者への就労アセスメントの手法を活用した支援の制度化)
→<基本的な考え方><就労アセスメントの手法を活用した新たなサービスの対象者><就労アセスメントの手法を活用した新たなサービスの内容→各地域の実情を踏まえた実施が図られるよう留意><就労アセスメントの手法を活用した新たなサービスの実施主体等について><就労アセスメントの手法を活用した新たなサービスを含めた就労支援に関する手続き等について>
(一般就労中の就労系障害福祉サービスの一時的な利用)→<基本的な考え方→週 10 時間〜20 時間未満程度から段階的に勤務時間を増やしていく場合や休職か ら復職を目指す場合><一般就労中の就労系障害福祉サービスの一時的な利用の期間→利用期間は原則3〜6か月以内、延長が必要な場合は合計1年まで。休職から復職を目指す場合2年間上限><適切な支援の実施が図られるための具体的な方策について>
障害者の就労を支えるための雇用・福祉施策の連携強化等に関する取組)→ <障害者の就労支援に携わる人材の育成→基礎的研修の運用開始後の状況や限られた財源状況等も踏まえながら就労継続支援A型及びB型事業所を含む就労系障害福祉サービス事業所の全ての支援員の受講を必須とすること等について、今後、検討を進めていく>
<企業等で雇用される障害者の定着支援の充実>↓
○企業等で雇用される障害者の定着を図る観点から、⇒就労定着支援事業→最大3年間の支援期間内における就労定着を図る だけでなく、この事業による生活面の支援がなくても一人の職業人として就労定着できる状態を目指して、本人や企業等と現状や方向性を確認しながら、本人が課題 解決のスキルを徐々に習得できるように、本人の主体的な取組を支える姿勢で支援 するとともに、支援の状況を企業等に共有することを通じて、本人の障害特性に応 じた合理的配慮の検討など、企業等における雇用管理に役立つものとなるよう取り 組むこと。就労定着支援事業の利用前後の期間等において定着に向けた支援を担う就労移行 支援事業所等や障害者就業・生活支援センター事業との役割の違いを踏まえて連携 することや、現行の仕組みでは就労移行支援事業等が支援することとしている一般 就労移行からの6か月間において、本人や地域の状況などを踏まえて、就労定着支 援事業を活用すること。 などに関する方策について、就労定着支援事業の支援の実態について把握を進めた上 で検討すべきである。(※)
○ また、就労定着支援事業の提供体制の現状を踏まえ、就労移行支援事業等の障害福 祉サービスを経て企業等に雇用された者が、就職後の定着に向けて地域において必要 な支援を受けられる環境整備を図る観点から、就労定着支援事業の実施主体に、障害者就業・生活支援センター事業を行う者を加えることを検討すべき。(※)
○ その検討にあたっては、地域の中で補助的な役割を果たすものとすることが適当であるため、⇒既存の就労定着支援事業所の状況や今後の新設の見込み等の地域における実情や ニーズを踏まえて連携を図ること。障害者就業・生活支援センター事業の実施により蓄積されているノウハウ等を十分に活用できるよう配慮すること。障害者就業・生活支援センター事業本体の運営に支障が生じることがないよう配 慮すること。 などの観点に十分に留意して検討すべき。(※)
<地域の就労支援に関するネットワークの強化> ○ 多様な障害特性のある方の就労が進展するとともに、特別支援学校卒業時に一般就 労を選択する方が増えるなど、働く障害者が増加する中で、福祉分野のみならず、企 業を含めた雇用分野、学校等の教育分野等の幅広い関係者の連携による支援を充実さ せる必要がある。このため、必要な財源の確保について検討しつつ、障害者就業・生活支援センター⇒地域の実情に応じて、 地域の就労支援機関に対するスーパーバイズ(個別の支援事例に対する専門的見地か らの助言及びそれを通じた支援の質の向上に係る援助)や困難事例の対応といった基幹型の機能も担う地域の拠点としての体制の整備を進めていく必要がある。
<就労継続支援A型の在り方や役割の整理>
○これまでの経緯や、就労継続支援A型の利用者・事業所や支援内容が多様であることを踏まえれば、就労継続支援A型の在り方や役割としては、障害者の稼得能力だけ でなく、障害特性等を含め、一般就労が難しい障害者に就労や訓練の機会を適切に確 保するための事業であることが求められる。今後、さらに実態の把握を進 めながら、一般就労への移行も含めた利用者のニーズに沿った支援の提供や十分な生 産活動の実施が図られるように、具体的な方策を講じていくことを検討すべきである。(※)
○ その際、A型における支援の質の向上や生産活動の活性化を促す観点から、⇒スコア方式の導入後の状況を検証・分析した上で、より充実した支援や生産活動に取り組む事業所を的確に評価できるようにするために、どのような評価項目や評 価点を設定することが考えられるか。経営改善計画の作成等の措置によっても早期の改善にはつながっていない事業所 があることを踏まえて、特に、複数年にわたって経営改善計画の対象となっている 事業所に対して、どのような実効性のある対応を図ることが考えられるか 等について検討すべき。(※)
<重度障害者等に対する職場や通勤等における支援>→重度障害者等の就労の促進を図るため、職場や通勤等における支援を必要と する方の利用がさらに拡がるよう、事業の利用が進まない背景の検証や利用事例に関 する情報収集などを含めて、その実施状況を踏まえながら、特別事業の周知や必要な 運用改善を行う。

次回も続き「V 各論点について 4.精神障害者等に対する支援について」からです。

第14回 社会保障審議会「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」(資料) [2022年06月27日(Mon)]
第14回 社会保障審議会「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」(資料)(令和4年6月2日)
《議事》(1)生活困窮者自立支援制度及び生活保護制度の見直しについて (2)「今後の福祉事務所における生活保護業務の業務負担軽減に 関する調査研究」報告書
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26029.html
◎参考資料1 社会保障審議会関係法令
○社会保障審議会令(平成 12 年政令第 282 号)(抄)
(部会)
第六条
審議会及び分科会は、その定めるところにより、部会を置くことができる。 2 部会に属すべき委員、臨時委員及び専門委員は、会長(分科会に置かれる部会にあって は、分科会長)が指名する。 3 部会に部会長を置き、当該部会に属する委員の互選により選任する。 4 部会長は、当該部会の事務を掌理する。 5 部会長に事故があるときは、当該部会に属する委員又は臨時委員のうちから部会長が あらかじめ指名する者が、その職務を代理する。 6 審議会(分科会に置かれる部会にあっては、分科会。以下この項において同じ。)は、 その定めるところにより、部会の議決をもって審議会の議決とすることができる。


◎参考資料2 生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理
1 生活困窮者自立支援法の果たしてきた役割、課題と今後の方向 性〜新型コロナウイルス感染症の影響や地域共生社会の推進を踏 まえて〜
→(法施行後の状況)(新型コロナウイルス感染症の影響)(地域共生社会や関連施策との関係について→令和3年度から、地域共生社会の実現に向けた重層的支援体制 整備事業(「重層事業」)が施行され、市町村にお ける属性を問わない包括的な支援体制を構築する仕組みがスター トした。)(議論の視点→【各事業のあり方に関するもの】(1)〜(8)まで。【横断的課題に関するもの】(1)〜(5))

2 個別論点 →目次のみ。再掲のため。
(1)生活困窮者自立支援のあり方
(2)自立相談支援のあり方
(3)就労支援のあり方
(4)家計改善支援のあり方
(5)居住支援のあり方
(6)貧困の連鎖防止・子どもの貧困への対応のあり方
(7)生活保護制度との連携のあり方・
(8)自立支援に関連する諸課題(地域づくり・居場所づくり、 関係機関との連携、身寄りのない方への支援)
(9)支援を行う枠組み(人材育成のあり方、都道府県の役割、 中間支援のあり方等)


◎参考資料3 生活保護制度に関する国と地方の実務者協議 これまでの議論の整理
○生活保護制度に関する国と地方の実務者協議におけるこれまでの議論の整理(令和4年4月22日)
→【構成】【開催実績】の参照のこと。
○これまでの議論の整理 目次

1.現下の経済社会状況を踏まえた生活保護制度による支援の在り方について@A
・現状と基本的な方向
→生活保護受給者数等の推移⇒約204万人(令和4年1月時点)と平成27年3月をピークに減少に。生活保護受給世帯数⇒約164万世帯(令和4年1月時点)→高齢者世帯が増加している一方、母子世帯及び障害者・傷病者世帯は減少傾向。高齢者世帯⇒単身世帯が約9割(令和4年1月時点:92.2%)。 いわゆる稼働年齢層である「その他世帯」の世帯数⇒世界金融危機後、大きく上昇し(平成25年度: 28.8万世帯)、小幅な低下だが、依然として一定数が存在(令和 4年1月時点:25.0万世帯)。今後、生活保護受給世帯の高齢化・単身化や、世界金融危機後の「その他世帯」が小幅な減少に 止まっている状況等を踏まえた対応をしていく必要。 また現下の新型コロナウイルス感染症による経済社会状況への影響により、生活困窮者自立支援制度や緊急小 口資金等の特例貸付等を活用する者が増加していることを踏まえ、引き続き状況を注視するとともに、生活困窮 者自立支援制度との連携等により、生活保護を必要とする者が速やかに保護につながり、自立できるような適切 な支援が必要。
・具体的な議論→単身の高齢者が増加している状況に加え、頼れる親族のいない高齢者も増加、認知機能が急激に低下して在宅での生活が困難となる事例も発生している状況にある。 稼働年齢層→ひきこもりも含め、就労自立までに至らない場合でも、社会生活自立や日常生活自立に つなげていくことが必要。 新型コロナウイルス感染症の影響下においても、生活保護受給者の急激な増加には至っていない。その理由⇒生活困窮者自立支援制度や緊急小口資金等の特例貸付等の支援策の効果があったことの意見が多くあった。 コロナ禍で、生活困窮者自立支援制度から生活保護制度につながらない人の中には、生活保護は受けたくないと いう人がいるため、自立相談支援機関と福祉事務所のより一層の連携が重要。 生活保護制度について入りやすく出やすい制度とすべきとの指摘⇒生活困窮者自立支援制度との連携強化や就労インセンティブの強化による意欲喚起といった対応が考えられる。
2.関係機関と連携した包括的な自立支援について@A
・現状と基本的な方向
→被保護者の抱える課題が多様化する中でケースワーカーを中心に包括的な自立に向けた支援を行っていくため、 自立支援プログラムによる実施状況等も踏まえ、複数の関係機関による支援を必要とする被保護者について、 ケースワーカーと各事業の実施者や関係機関とが、自立支援に係る計画の策定等を通じて役割分担を明確にし、 緊密に連携を取りながら支援に取り組んでいく仕組みや、生活困窮者自立支援制度とのより一層の連携のための 方策が必要。
・具体的な議論↓
(ケースワーカーに求められる役割)
→被保護者へのアセスメントを行い、必要な社会資源を組み合わせて支援していくコーディネーターのような役割が求められる。 一方で、就労支援事業等を行う事業者等が担う業務範囲が広くなり、ケースワーカーの経験・専門性が不足している場合があり、多様な課題を抱える被保護者への対応に係る理念として、自立支援プログラムにおける就労自立、社会生活自立及び日常生 活自立の考え方を法律等において位置づけることが考えられる。
(関係機関との連携)→関係機関から被保護者への支援はケースワーカーの役割と認識され、関係機関の対応が消極的となり、連携がうまくいかな いという課題がある。 関係機関との連携⇒例えば関係機関の役割を確認するため、会議体において調整を行った上で、自立支援に向け た計画を作成する仕組みを設けるなど、何らかのかたちでのしかけ作りが必要。その一方で、福祉事務所で組織的に対応す ることにより現状でもうまく連携できており、新しい仕組みを作る必要はないという意見もあった。 連携のための会議体を設置するにあたっては、会議開催のための調整業務・関係者の制度理解の醸成等の対応が生じること に留意が必要である。
(各種自立支援関係事業の制度上の位置づけ)→予算事業となっている各種事業について、取組を広げるためには法定化する必要がある。
生活困窮者自立支援制度との連携)→保護の申請の際には連携できているが、保護受給中や保護廃止のタイミングにおいては、被保護者が望まない等 の事情から、十分な連携ができていない。 生活困窮者自立支援制度との更なる連携強化の観点から、生活困窮者就労準備支援事業、生活困窮者家計改善支 援事業等の中で、被保護者の支援を行うことができるようにすることが考えられる。 生活困窮者自立支援制度による支援を受けていた者が被保護者となった後も、生活困窮者自立支援制度の事業実 施者が関わり続けることは、継続的な支援の観点から効果的と考えられる。一方で、制度の趣旨や必要な支援の 差異などには留意が必要であり、被保護者の状態像に応じた支援を行っていく必要がある。 生活困窮者自立支援制度で使っている仕組みを生活保護制度に取り込むことで、生活困窮者自立支援制度を利用する要保護者が生活保護制度につながりやすくなるのではないか、という意見があった。 小規模自治体等において、生活保護の担当が生活困窮者自立支援制度の担当も兼務している場合には、連携に支 障がない一方で、体制が薄いことにより、支援の充実そのものに課題がある。

3.就労支援等について
(1)就労支援事業等について@
・現状と基本的な方向
→今後、就労までに一定の時間を要する者(就労意欲を失い、日常 生活自立や社会生活自立に向けた支援が必要な者等)が少なくないことも踏まえ、利用者の状態像に応じたきめ 細かな支援を行えるようにしていく必要。また、就労準備支援事業や家計改善支援事業⇒その実施率の向上を図っていく必要。その他自立支援プログラムにおける社会生活自立や日常生活自立に係る取組⇒効果的な推進 を図っていく必要がある。
・具体的な議論→就労支援等自立支援関係事業⇒ひきこもりも含め、就労自立まで至らない社会生活自立や日常生活自立につなげ ていくような取組は有効。 ここ数年をみると、就労可能な被保護者の多くが就労し、保護脱却が図られている中で、保護脱却が図られていない方は 就労意欲が低いこと等により、就労に結びついていない状況。 就労準備支援事業⇒本人の生活にある程度深く関わることができ、生活習慣の改善や社会参加のためには有効。 被保護世帯は家計のやりくりが不得手な場合も多く、特に、保護廃止後を見据えて中長期的な生活設計のスキルを身につ けるための支援や、子育て世帯における養育の支援、大学等に進学する子どもがおり進学費用等を用意する必要がある世 帯に対する支援等として、被保護者家計改善支援事業を行うことも有効。 予算事業となっている各種事業について、取組を広げるためには法定化する必要があると考えられる。就労準備支援事業や家計改善支援事業の実施率の向上のためには、地域によっては受入れ先の確保などが難しいなどの点 を踏まえると、都道府県等による広域的な実施が効果的。 就労後の定着支援について、一旦就労しても離職してしまうといったケースもあり、当該支援を行う団体等につなぐこと が重要。また、中間的就労やボランティア的な働き方も、社会とのつながりを持ち続けるという点では意義がある。 • 生活保護において、家計面での支援という場合には、金銭管理支援も重要、金銭管理支援については、自立支援プログラムにおいて取り組むことも可能であるが、本人同意が必要であり、同意が取 れない場合、金銭管理につながらないことが少なくない。また、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業も、事業定員の 問題もあり、なかなか利用できない状況。

(2)就労インセンティブについて
・現状と基本的な方向
→就労に伴う必要経費の補填や、就労インセンティブの増進・自立助長を図ることを目的として、就労収入のうち 一定額を収入から控除して収入の一部を手元に残す、勤労控除の仕組みを設けている。これは、保護廃止になると、税・社会保険料等の負担が生じるため、こうした点を踏まえた上で、自立のためのイン センティブを強化するとともに、保護廃止直後の不安定な生活を支え、再度保護に至ることを防止することを目的。 上記各種就労インセンティブについては、就労・増収等を通じた自立への意欲を高めることができるよう、効果 的な推進を図っていく必要がある。
・具体的な議論→保護廃止後の費用負担に不安を覚え、保護廃止にならないよう就労を調整する、各種控除を説明して就労を勧めると、勤労控除の範囲内に就労を制限するということがあり、就労に結びついても保護廃止にならないケースが 多くある。 • 保護廃止後の不安を解消できるようなインセンティブの方が、より重要になると考えられる。 短期間での再就職の場合の給付等、就労意欲に訴求するインセンティブについて、よりいっそうの推進が 必要という意見があった。

4.子どもの貧困対策について
・現状と基本的な方向
→生活保護世帯も含めた生活困窮家庭に対し、子どもの学習・生活支援事業において、進路相談、中退防止のための支援、子どもの居場所づくりに関する支援を含む学習・生活支援を行っている。平成30年法改正により、生活保護受給世帯の子どもが大学等に進学した際に、新生活の立ち上げ費用として一時 金を給付する「進学準備給付金」を創設。併せて、大学進学後も引き続き、出身の生活保護世帯と同居して通学している場合は、大学等に通学している間 に限り、子どもの分の住宅扶助額を減額しない措置を講じた。 平成26年より、生活保護世帯の高校生のアルバイト収入等について、大学等に就学するために事前に必要な入学 料等に充てられる場合、収入認定から除外している。さらに、平成30年からは、これに受験料や受験に必要 な交通費、宿泊費も含むことを明示。子どもの貧困対策⇒政府全体として、生活困窮者自立支援法に基づく子どもの学習・生活支援事業等、 様々な取組が行われている。こうした取組とも連携し貧困の連鎖の防止に向けた取組を推進する必要。生活保護世帯の親の子育てや教育に関する意識等が高くないケースがあることや、親の抱える課題が子ど もの養育環境にも影響を与えることが少なくないことも踏まえ親も含めた世帯全体に対する効果的な支援方策の検討必要。
・具体的な議論→生活保護世帯については、親の教育への意識が高くないケースがある、子どもに直接アプローチする機会がない 等の課題があり、有効なアプローチがしづらい。 進学準備給付金等の取組により、生活保護世帯の子どもに対して大学等への進学を勧めやすくなり、効果をあげられていると考えられる。大学等への進学に向けた各種支援策が拡充されている中で、一般世帯の中にも、高等学校卒業後、大学等に進学 せずに就職する者や、奨学金やアルバイトなどで自ら学費や生活費を賄いながら大学等に通う者が存在すること との均衡も踏まえれば、世帯内修学を認めるような段階にはないと考えられる。令和2年度修学支援新制度が開始、生活保護の現場には浸透しておらず更なる周知が必要。

5. 被保護者健康管理支援事業及び医療扶助について
(1) 被保護者健康管理支援事業及び頻回受診対策等について@
・現状と基本的な方向
→「頻回受診者に対する適正受診指導要綱」に基づき、同一傷病⇒同一月内に同一診療科目を15日以上受 診しており、短期的・集中的な治療を行う者(※)を除いたものを抽出し、主治医訪問・嘱託医協議により、頻 回受診と認められた者を対象として、訪問指導、医療機関受診への保健師の同行、改善状況の確認を行うとともに、改善状況について報告。 ※ 前2月との通院日数の合計が40日未満の者。令和3年1月から頻回受診指導を必須の取組として位置づけ。本人と面談等を行い、頻回受診になる要因・支援の方向性を分析するとともに、同行受診による主治医 の説明の理解のサポート、社会資源への繋ぎなどの取組を実施。なお、有効期間を1ヶ月よりも短期に設定した医 療券(短期医療券)の発行により面談機会を増加する取組も可能としている。レセプトデータ等を用いたPDCAサイクルに基づく取組としていく観点から、事業の実施に係る指標の設定・ 評価、各種データの効率的な収集・活用等を推進していくことが重要。 また、頻回受診者に対する健康管理支援の側面からの効果的な実施方策、重複投薬や多剤投与等に着目した支援 方策、生活面に着目したアプローチの推進方策等、機能の強化を検討していく必要。
・具体的な議論→頻回受診の背景として、健康不安や孤独があると考えられるという意見が多数あり、原因の解消に向けて、被保 護者健康管理支援事業において、社会参加も含めた生活全般の支援を強化することが考えられる。 今後、オンライン資格確認を導入するにあたっては、例えば、被保護者の受診状況について医療機関が即時に把 握出来るようにするなど、適正受診指導につなげていくような仕組みを構築することが考えられる。医薬品の適正使用の推進⇒レセプトデータを分析した重複投薬等の対象者リストの作成や服薬管理な どによる指導も考えられるが、福祉事務所単独で取り組める範囲は限定的で、医療機関と薬局間の連携が不可欠 といった意見もあり、福祉事務所と医療機関・薬局等の関係機関との連携強化が欠かせない。

(2) 都道府県による関与について@
・現状と基本的な方向
→医療扶助を実施する医療機関については、生活保護法に基づいて指定を行うこととしており、平成25年法改正に より、指定要件(欠格事由)及び取消要件を明確化する、指定の有効期間(6年)を設けて当該期間ごとの更新 制とする等の見直しを行った。 医療の給付が適正に行われるよう医療扶助制度の趣旨、事務取扱等の周知徹底を図るために、指定医療機関に対 して、厚生労働省(地方厚生局)又は都道府県等による指導を行うとともに、診療内容及び診療報酬の請求の適 否を調査して診療方針を徹底させる検査を行うこととしている。都道府県による、管内における被保護者健康管理支援事業や医療扶助の実施状況に係る情報の収集・分析等を通じた管内自治体や指定医療機関に対する助言・指導等の効果的な実施や、その際の専門的・技術的な支 援等を行う機関の設置など、都道府県による実効的な支援方策を検討する必要がある。
・具体的な議論→福祉事務所においては医療の専門知識を有していないため、医療扶助の適正化のために医療機関に対するアプ ローチを行うことが難しく、都道府県により、管内市町村の医療扶助に関するデータ分析や、指定医療機関に対 する指導の実施等の、後方支援を行うことが必要であるという意見があった。具体的には、取組指標の設定等による見える化を行う、それを基に都道府県が管内市町村の取組状況を把握し、助言等を行うことが考えられる。 また、都道府県等は、指定医療機関に対する指定権限を有しているが、データ分析や医療機関への指導等に必要 となる専門知識が不足していることから、自治体や医療関係者等から構成される第三者機関を都道府県等に設置し専門的・技術的なサポートを行う体制が有効。 指定医療機関に対する指導⇒より効果的な指導権限が必要である一方で指定医療機関との協力関係に支障が生じることで被保護者の受診の機会が損なわれることがないように注意する必要があるといった意見があり、バランスを考慮する必要がある。

6. 居住支援について
(1) 保護施設について@
・現状と基本的な方向
→これまで他法他施策優先の中で、最後のセーフティネットとして、様々な生活課題を抱える者の受け入れ支援を行ってきた。昨今、精神疾患や身体・知的障害のある者、アルコールや薬物などの 依存症のある者、DVや虐待の被害を受けた者、ホームレスや矯正施設退所者など、様々な対象者に対する多様な 支援が求められてきている。 保護施設からの地域移行に向けては、保護施設通所事業や救護施設居宅生活訓練事業において、支援を実施。 支援の多様化等も踏まえ様々な生活課題に柔軟な対応をしていく観点から、各施設の機能面に着目した整理も含め、その機能のあり方を検討していく必要がある。保護施設入所者の状態像に応じた支援や、福祉事務所による関与も重要。地域共生社会の実現に向けた取組が進められる中で、様々な生活課題を抱える者に対する支援を行う保護施設の役割は重要地域の関係機関のネットワークの一翼を担うことが期待されている。
・具体的な議論→
介護や障害福祉のサービスが充実してきている中で、救護施設も次の施設等に進むための生活訓練の場としての 通過施設という機能を持つのではないか。他施策の施設が充実していく中でも、制度のはざまにある被保護者を受け入れるセーフティネットとして、保護 施設の役割は重要。対象者の状況が複雑・多様化しているため、現在の保護施設の区分では対象像に合わない事例が増加しており、今後、保護施設の在り方について、対象や機能面で柔軟に対応できるような工夫が必要。医療保護施設⇒指定医療機関との関係性を考えると、その必要性や運用について整理する必要。入所者の地域移行を進める観点や退所後の情報共有の観点から、救護施設等において事実上取り組まれている、 個別支援計画の作成を義務化することが考えられ、ケースワーカーも関与し、福祉事務所における 援助方針に反映させる仕組みが必要。保護施設通所事業等⇒地域の被保護者の受入れを進めていくということは一つの考え方。ただし、本来 の利用者を圧迫しないことや、職員の負担が過大にならないといったことへの配慮が必要となる。 救護施設等保護施設については、精神障害者や依存症の対応が難しいケースなど多様な支援が求められ、より専門性の高いスキルが必要になってきているが、研修の機会もあまりない状況のため、全国単位の課題別の研修や 事例研修の機会があるとよい。

(2) 無料低額宿泊所及び日常生活支援住居施設等について@
・現状と基本的な方向
→平成30年改正法により、 @新たに事前届出制の導入、A従来ガイドライン(通知)で 定めていた設備・運営に関する基準を最低基準として法定化、B当該最低基準を満たさない事業所に対する改善 命令の創設等、法令上の規制を強化した(令和2年4月施行)。 あわせて、単独での居住が困難な生活保護受給者に対し、一定の支援体制が確保された施設として、必要な日常 生活上の支援を提供する「日常生活支援住居施設」の仕組みを創設(令和2年10月施行)。日常生活支援住居施設における支援の質を確保するた め、令和3度から国の委託事業として関係団体による研修事業を開始。無料低額宿泊所⇒平成30年改正法により導入された事前届出制の実効性の確保を図っていくこと。 日常生活支援住居施設⇒施行後間もない状況を踏まえて、支援の質の向上を図る取組の推進を図る必要。 その他、居住支援に関して、地域で暮らしていくにあたっての居場所づくり(互助機能の強化等)に係る取組について、現行の居住不安定者等居宅生活移行支援事業の更なる推進や生活困窮者自立支援制度における一時生活 支援事業(地域居住支援事業)との連携の観点から進めていくことが重要である。
・具体的な議論↓
(無料低額宿泊所について)
→無料低額宿泊所の事前届出制の実効性確保⇒調査や届出勧奨に関するノウハウが不足していることが 課題。また、無届の施設に対して、同様の届出制度を設けている他制度と同様の規制は必要と考えられる。
(日常生活支援住居施設について)→今後、自力での在宅生活が難しい人も増えるため、支援を受けながら生活できる居住の場の選択肢として、日常 生活支援住居施設のニーズはあると考え、地域資源の乏しい自治体において居住ニーズに対応するため、広域連携の方策も効果的と考えられる。日常生活支援住居施設⇒自ずとその必要性についての認識も高まっていく中で研修は必要であり、その 際、都道府県が果たすべき役割も大きい。
(その他居住支援等について)→居宅生活に移行した被保護者が安定した生活を継続するための定着支援⇒24時間の支援が求められる ことがあり、ケースワーカーでは対応が難しい。居住不安定者等居宅生活移行支援事業のような事業を活用する ことにより、ケースワーカーの負担軽減にもなるのではないか。被保護者の地域移行・地域定着の取組や就労支援の取組について、様々な主体が取り組めるようにしていくこと もあり得る。生活保護受給者の半数以上を高齢者世帯が占め、経済的支援のみを必要とする世帯が存在する状況に鑑み、例え ば居住支援の重要性に着目して、借家に暮らす高齢者のうち、少額預金又は少額年金である者に対し、家賃相当 額を扶助する制度を創設してはどうかという意見があった。持ち家世帯等との公平性や財源等の問題があり、慎重に検討していく必要との意見、支給に期限を設けないのであれば要件についてよく検討する必要との意見もあった。

7.事務負担の軽減について
・現状と基本的な方向→
ケースワーカーの配置は全国的に社会福祉法に定める標準数(市部80世帯に1人、郡部65世帯に1人)を下回る状況が続いている。 これら配置に当たっては、必要な交付税措置を行うとともに、自治体に対する指導監査において、保護の運用上の課題が認められる場合⇒必要な人員体制を確保するよう助言指導を行っている。ケースワーカーが真に必要な業務に重点化できるようにするために、事務負担の軽減が課題。この点については、 より適切な支援や助言を行うという、ケースワークの質向上の観点からも議論を行っていく必要がある。 現在、自立支援プログラムの活用による助言・支援の外部委託や、被保護者就労準備支援事業や被保護者健康管理支援事業の外部委託 が認められているが、ケースワークの質向上と負担軽減を両立するため、これらの取組を効果的に実施していく必要がある。
具体的な議論→被保護者の多様で複雑な課題を解決するにあたって、ケースワーカーのみで支援にあたることは難しいため、ケース診断会議等を通じ た組織的な支援方針の検討や、関係他機関との連携等のチームアプローチ等により、支援の質の確保と負担軽減を図ることが有効であ る。このとき、他機関の関与を引き出すため、会議体を設置し、ケースワーカーとの役割分担を明確にするといった手法をとることも 考えられる。 また、他機関との連携を通じて被保護者の生活実態をより丁寧に把握し、ケースワークの質向上を図るため、他制度における会議体に 参画した場合に、訪問調査活動を柔軟に取り扱うことも考えられる。 全てのケースについて関係機関との連携を行うまでの必要はなく、連携して課題を解決することが必要なケースに絞ることが効率的・ 効果的。 事務の合理化が考えられる分野として、定型的な業務のデジタル化や医療券・調剤券等の電子化、各種調査の効率化等について、意見 が挙がった。 生活保護に関わる業務の外部委託を検討は、事業者が行う支援の質の確保や、いわゆる「偽装請負」の防止等に留意必要。 特に小規模自治体では、社会的資源や対象者の少なさから、外部委託の活用が困難な場合があるため、広域的な対応も考えられる。

8. 生活保護費の適正支給の確保策等について
・現状と基本的な方向
→不正・不適正受給対策⇒平成25年の法改正、福祉事務所の調査権限の拡大、罰則の引上げや 不正受給に係る返還金の上乗せ規定の導入を行ったほか、福祉事務所が必要と認めた場合には、その必要な限度で、扶養義務者に対して報告するよう求めることとする等、対策を強化した。 また、平成30年の法改正においては、資力がある場合の返還金について、保護費との調整を可能とする等の改正 を行った。引き続き、必要な方に必要な保護を行うとともに、制度の信頼性を担保するため、現在発生している問題事例に 応じて対策を講じていく必要がある。
・具体的な議論→不正・不適正受給となる事案には収入の無申告や過少申告が多く、 本人が申告の必要性に気づかないようなケー スもあるため、ケースワーカーが丁寧に説明を行う、ICT・マイナンバー制度における情報連携(情報提供ネット ワークシステム)等の利活用を通じて福祉事務所の側でも効率的に収入の状況を把握できるようにする、といっ た対応が考えられる。 • 複数の福祉事務所で保護を受給する事案の防止のため、住民票上の住所地と異なる自治体で保護申請があった場合、状況に応じて住民票所在自治体に保護受給確認をすることが考えられる。一方で、この確認にあたっては、 住民票がない者や偽名を利用する者には効果がないことに留意が必要という意見があった。 平成30年の法改正居住地特例の対象として、新たに特定施設入居者生活介護を行う特定施設を追加した。この範囲を拡大した場合には、遠方の施設に入所した際の訪問調査の負担も課題になるところではあ るが、地域間の公平な負担の観点、実務を行う上でのわかりやすさの観点から、基本的には、介護保険制度の住 所地特例の対象範囲と平仄を合わせて、対象範囲を特定施設入所者全体に拡大することが適当という意見があっ た。

9. 生活保護基準における級地区分について@
・現状と基本的な方向
→生活保護基準部会の分析結果のほか、地域の実態を踏まえて、厚生労働省において検 討されるものとなるが、同省から現行の各階級における枝番をそれぞれ廃止するか否かの範囲内で検討する方向 性が提案され、その検討の参考とするため都道府県に対してアンケート調査が行われた。 アンケート調査の結果によれば、 1〜3級地のいずれの級地においても、枝番1と枝番2の地域間の平均的な生 活に要する費用の違いについて「どちらともいえない・わからない」という意見が大部分を占めており、枝番1 の地域が枝番2の地域より生活に要する費用が高いという意見はほとんど見られなかった。具体的な意見として は、1〜3級地のいずれの級地においても、食料品、衣料品等のチェーン店が存在するため、枝番1の地域と枝 番2の地域間で日常生活にかかる費用の差異はあまりないとする意見があったほか、3級地では、枝番2の地域 の方が、大型量販店等が少なく選択肢がないために費用が割高であったり、交通機関が脆弱で移動コストが高い ことがあるといった意見もあった。級地の階級数⇒@国の統計による分析において、級地の階級数を4区分以上とした場合には隣接級地 間で一般低所得世帯の消費水準に有意な差がない箇所が生じ、また、現行の1〜3級地の各級地における枝番1 と枝番2の地域間でも一般低所得世帯の消費水準に有意な差がないこと、Aアンケート調査の結果からも、各階 級における枝番を廃止することは地域の実情に即したものと考えられることから、各階級における枝番を廃止し1〜3級地の3区分とする方向性は妥当なものと考えられる。 (個別の級地指定)→ 変更すべき積極的な根拠がない限り、現行の級地指定を維持することを基本としつつ、分析結果に照らして各市町村の級地指定のあり方を検討し、その結果、個別の市町村の指定 を見直し得る場合には、被保護世帯の生活を含む地域の実態について福祉事務所を管理する自治体等の見解を聴 取した上で見直しの判断をするという方向性が厚生労働省から提案された。
・具体的な議論→国の統計による分析結果を踏まえれば、枝番を廃止する方向性が妥当で、 同系列のスーパーを使っていれば物価はほとんど変わらず、交通費等を踏まえると生活コストは郡部と都市部に 大差は無いと考えられる。

◎参考資料4 委員名簿→22名。

次回は新たに「社会保障審議会障害者部会(第131回)」からです。

第14回 社会保障審議会「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」(資料) [2022年06月26日(Sun)]
第14回 社会保障審議会「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」(資料)(令和4年6月2日)
《議事》(1)生活困窮者自立支援制度及び生活保護制度の見直しについて (2)「今後の福祉事務所における生活保護業務の業務負担軽減に 関する調査研究」報告書
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26029.html
◎資料7−1 「今後の福祉事務所における生活保護業務の業務負担軽減に関する調査研究」報告書(概要)
・事業目的
→生活保護に関する業務の外部委託に対す る基本的な考え方、外部委託が可能な業務の条件、委託先選定等における条件・留意事項等をとりまとめることを目的として事 業実施主体において本調査研究を実施した。
・事業概要→事業実施主体において学識経験者や自治体職員等で構成される研究会を設置し、ケースワーク業務における外部委託のあり方 について議論した。 議論にあたっては、個々の業務の特性をおさえるとともに、懸念されている事項や、外部委託を活用した事例における課題や 行われた配慮・工夫、得られた成果等に関し文献調査や有識者ヒアリングを行い、生活保護制度を利用する受給者に対する支援 を向上させる観点から検討を行った。
○(参考)「令和元年の地方からの提案等に関する対応方針」 (令和元年12月23日閣議決定)(抄)→現行制度で外部委託が困難な業務については、地方公共団体等の意見を踏まえつつ、外部 委託を可能とすることについて検討し、令和3年度中に結論を得る。その結果に基づいて必 要な措置を講ずる。
○生活保護に関わる業務の負担軽減方策の全体像(「今後の福祉事務所における生活保護業務の業務負担軽減に関する調査研究報告書」より引用)
・業務負担軽減に関する基本的な考え方
→業務の見直し⇒「ケースワーク」の質向上の観点から議論→ケースワークに必要な専門的な知識を外部から取り入れ、ケースワーカーが自信を持って 安心して業務にあたり、質の高いケースワークにつながることを目指すべき。 特に、専門的な知識を要する問題や多様な問題が複雑に絡んでいる課題を解決するためには、福祉事務所以外の他機関との連携によって、専門性を統合し支援に活用されることが望ましく、それにより本来のケースワーク業務に充てられる時間を確保しやすくなり、生活保護における支援の質を高めることができる、結果的にケースワーカーの業務負担の軽減にもつながると考えられる。
・生活保護に関わる業務の負担軽減方策の全体像→方策として、直接雇用(正規職員の増員、会計年度任用職員の活用)を増やすという考え方等がある。 関係機関等との連携を適切に行うための会議体等を制度上明確に位置付けることも必要と考えられ、定型的な業務はICT等を活用し業務の効率化を図ることも必要であり、国を挙げて推進すべき。 生活保護に関わる業務の外部委託は、こうした方策を検討してなお業務負担の軽減が十分でないと判断される場合の手段、また、 外部機関が保有する知見を活用する方が質が高まると考える場合の手段として位置づけられるべきである。
・外部委託の活用の検討(外部委託の対象とする業務の検討)→@窓口初期対応業務、A助言・支援系業務、B定期訪問系業務に検討対象を絞り、研究会で 議論を行った。⇒A助言・支援系業務について、B定期訪問系業務について、@窓口初期対応業務について、検討している。
・委託先選定時の留意事項等→委託先の選定⇒受託者の能力要件や確保すべき業務水準を設定し、遂行能力や遂行プロセスの適切性を評価できる方法を選択することが必要。外部委託開始後は、業務の遂行状況を適切な周期でモニタリング・評価することが必要である。外部委託の終了時の報告に おいても、成果のみではなく業務遂行の状況や対応実績の報告とすることが望ましい。


◎資料7−2 「今後の福祉事務所における生活保護業務の業務負担軽減に関する調査研究」報告書 →資料7−1「今後の福祉事務所における生活保護業務の業務負担軽減に関する調査研究」報告書(概要)の本文です。


◎資料8 委員提出資料
○意見書
→社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会(第 14 回)の開催にあたり、 めざすべき社会的セーフティネットのあり方について、以下のとおり意見表明いたし ます。↓
@ オーダーメイド型支援を可能にする「社会的セーフティネット」体系の実現
a)第 1 層のセーフティネット→ ア)雇用労働環境の変化などに対応するワークルールを整備・確立するとともに 積極的雇用政策をさらに推進する。 イ)社会保険・労働保険の完全適用および給付改善をはかる。 ウ)日本に居住するすべての者が高齢期における一定水準の所得保障を確保するため、所得比例年金が低額である者に対しては、最低保障年金を支給する。
b)第 2 層のセーフティネット→ ア)生活困窮者自立支援制度における各任意事業の必須事業化と一体的実施をはかるとともに、事業の質の改善を行う。また、好事例の横展開を進めるなど、 地域差の平準化をはかる。これらに対する財源を確保する。イ)生活困窮者の相談・把握を「入口」として、早期の支援につなげるべく、アウトリーチ手法を中心にさまざまなチャネルを活用した包括的かつ持続的な相談支援体制を整備する。そのために、相談員や支援員の人材確保・養成を積極的に進めるとともに、これらの者の雇用の安定と処遇改善をはかる。 ウ)「働くことを軸とする安心社会」の実現に向けて、求職者支援制度をはじめとする他の就労支援関連施策との整合性や連続性がはかられた生活困窮者就労 準備支援事業を再整備し、本人の事情や状況に応じた息の長い本人伴走型の就労支援を強化する。 エ)就労困難者を就労へと橋渡す求職期間中の住居と生活を保障するための制度 (「住居・生活保障制度」)を創設する
c)第 3 層のセーフティネット→ ア)生活保護は権利であることを明確にし、「生活保障給付」制度によるセーフテ ィネットの再整備を行う。 具体的には、@)「生活保障給付」は「健康で文化的な最低限度の生活」を営 むために必要な保護基準とする、A)不適切な給付抑制を排除し、給付基準を 法定化する、B)補足性の原則を前提に資産調査を適切に実施し、給付期間は 定めない、C)本人への継続的な支援という観点を踏まえ、第 2 層と第 3 層と を連続的に機能させていくことなどを内容とする。 イ)幅広い事案に総合的に対応するため、ケースワーカー(生活保護担当職員) を増員し人員体制の充実をはかるとともに、これらに対する財源を確保する。
d)新たな横断的セーフティネット→ ア)生活困窮者自立支援制度(第 2 層)と生活保護制度(第 3 層)とも組み合わさる「住宅支援制度」と「医療・介護費補助制度」を整備する(生活保護受給 者を国民健康保険の被保険者とし、低所得者を含め保険料(税)と自己負担分 を手当てするものとする)。
e)所得再分配機能の強化 →ア)拡大する所得格差やその固定化や貧困の連鎖を是正するために、税による所 得再分配機能を強化するとともに、社会保険においても所得再分配を行う。また、制度単位ではなく家計全体をトータルに捉えて、医療・介護・保育・障がいに関する自己負担の合計額に上限を設定する「総合合算制度」を導入する。
f)支援の担い手の育成→ ア)ソーシャルワークの実践などにより、地域における生活上の課題をすくい上げ、相談者の自立に向けたオーダーメイド型支援を行う人材の育成・確保を進める。 イ)地方連合会・地域協議会、地域の労働組合が一体となり、地域の実態に応じ た社会活動参加を推進する。

A だれもが住居を確保し安心して暮らせる社会の実現
a)自立の基盤となる質を伴った住宅セーフティネットの構築→ア)人間の尊厳と生存の確保のため、「居住の権利」を基本的人権として位置づ ける。 イ)公的賃貸住宅をリノベーション等による老朽化対策を講じたうえで活用する。 また、居住ニーズと住宅ストックをマッチングさせ、全国にある空き家を積極 的に活用する。 ウ)だれもが住居を確保し、安心して暮らせるよう、住宅確保要配慮者や離職に よって住居や生活に困っている者のそれぞれニーズを踏まえた家賃補助と現 物サービスの組み合わせによる住居の確保を強力に推進する。 具体的には、@)生活困窮者自立支援制度における住宅確保給付金の支給要 件の緩和や支給期間の延長、A)新たな住宅セーフティネット制度をより活用 すべく、制度を積極的に周知するとともに登録手数料の平準化や居住支援協議 会による支援強化等を行ったうえで、以下の制度を創設する。
居住保障T】就労困難者や高齢者に対する住宅補助制度の創設 → 住居を失った人や失うおそれのある者が一定基準以下の所得であると きに住居の現物支給ないし家賃補助等を行う。支給水準は、最低居住面 積基準を勘案し、収入に応じて逓減するものとし、年収要件を設けたう えで期限は定めない。
【居住保障U】求職期間中の居住・生活保障制度の創設 → 求職後も生活基盤を確立することができるようになるまでの居住・生活 保障として、長期継続性のある家賃補助制度を創設する。

b)安心の住まい確保に向けた居住環境の改善→ ア)個人の尊厳を重視し、介護保険施設や社会福祉施設等の居住環境の抜本的な 改善をはかる。 具体的には、@)高齢者に関して、住み慣れた自宅での生活を基本としつつ、 やむを得ず施設に入所する場合には、個室ユニットを基本とする(「4.介護・ 高齢者福祉」参照)。A)老人福祉施設、障がい者支援施設、母子家庭支援施設 等の入所施設については、必要な介護や介助のための環境を勘案しつつ、住環 境基本計画の最低居住面積水準を踏まえ、居住環境の向上をはかる。

B 互いに認めあう共生社会の実現

a)地域でつながるまちづくり→ア)地域の実情に留意しつつ、公務の多様な人材やNPOなどの民間団体やサークル、労働組合など、地域の社会資源を活用しながらコンパクトなまちづくり 等の政策との連携をはかる。また、過疎化や高齢化の進行による買い物弱者の増加については、宅配ネットワーク維持のための「小さな拠点」の形成など、 持続可能な買い物環境の確保に向けた仕組みを構築する。 イ)共助型共同居住や外国人留学生向け共同居住、新たな住宅セーフティネット 制度を活用した共同居住用への改修、居住支援協議会への市町村の参画推進等、セーフティネット住宅を活用したまちづくりを推進する。
ウ)安定的に地域で暮らし続けていくために、社会的孤立などにより緊急連絡先の確保に困難を生じている者に対して、地域のつながりを活用した相互の見守り・支え合いを行う。

b)地域コミュニティの活性化→ ア)相談のたらい回しを防ぐとともに、相談者が迷わず容易に抜け漏れなく必要 とする行政サービスにたどり着くことができるよう、行政サービスのワンストップ化を進める。 イ)地域ごとに担当者を集めたセンターや集まる場を設置するとともに、チーム アプローチ体制を構築するため、問題発見と対応策開発を担う人材(地方自治体職員、社会福祉協議会職員、NPO団体職員等)の確保・養成を行う。 ウ)生活者としての外国人に対する日本語教育や公共サービス、多文化理解等 の共生施策を進めるとともに財源を確保する。 エ)「職域における助け合い」を「地域における助け合い」へと広げ、地域コミュ ニティの一員として、地域に根ざした労働組合としての取り組みを進める。
c)「つなぐ社会基金」の創設→ ア)縦割りの公的支援制度を横断・連携し、さらに共生社会づくりへとつなげて いくべく、一般財源のもと、都道府県単位で「つなぐ社会基金」を創設し、地 域の居場所づくりや地域コミュニティの活動等を行う。    以上

次回も続き「参考資料1」からです。

第14回 社会保障審議会「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」(資料) [2022年06月25日(Sat)]
第14回 社会保障審議会「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」(資料)(令和4年6月2日)
《議事》(1)生活困窮者自立支援制度及び生活保護制度の見直しについて (2)「今後の福祉事務所における生活保護業務の業務負担軽減に 関する調査研究」報告書
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26029.html
◎資料5 生活保護制度の現状について
1 生活保護受給者数等の推移等
○被保護人員、保護率、被保護世帯数の年次推移
→約204万人。平成27年3月をピークに減少。世帯数は約164万世帯。高齢者世帯が増加、母子世帯は減少傾向が続いている。
○世帯類型別の保護世帯数と構成割合の推移→世界金融危機後、「その他の世帯」の割合が大きく上昇。 「母子世帯」は減少傾向だが、「高齢者世帯」は増加傾向にある。
○年齢階級別被保護人員の年次推移→65歳以上の者の増加が続いている。 被保護人員のうち、半数は65歳以上の者となっている。
○生活保護受給者数の推移→令和4年3月現在で203万6,045人。世界金融危機以降急増したが季節要因による増減はあるものの近年、減少傾向で推移。過去10年間でも低い水準。
○都道府県別保護率(令和4年3月時点)→全国保護率:1.63%(1.62%)
○生活保護費負担金(事業費ベース)実績額の推移→約3.7兆円(令和4年度当初予算)。 実績額の約半分は医療扶助。

2 平成30年法改正後の状況について
○生活困窮者等の自立を促進するための 生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律の概要
→2.生活保護制度における自立支援の強化、適正化(生活保護法、社会福祉法)
  ⇒(1)〜(4) 参照。
@ 自立支援・就労支援について
○自立支援プログラムの概要→自立の助長の内容(経済的自立 → 就労 等。日常生活自立 → 入院から在宅復帰 等。社会生活自立 → ひきこもり防止、社会参加 等。)
○生活保護受給者に対する就労支援施策について→「就労に向けた困難度(支援対象者)」に対して「就労までの段階的な支援施策」、「就労・自立インセンティブの強化」あり。
○生活保護受給者等就労自立促進事業→労働局・ハローワークと地方公共団体との協定等に基づく連携を基盤に、生活保護受給者等の就労による自立促進を図るため、ワンストップ型 の就労支援体制を全国的に整備。地方公共団体にハローワークの常設窓口の設置や巡回相談等により、関係機関が一体となった就労支援を実施。 特に、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う離職等により増加している生活保護受給者や生活困窮者について、福祉事務所や自立相談支援機 関等との連携による就労支援を推進。
○被保護者就労支援事業について(改正生活保護法)→被保護者の自立の促進を図ることを目的、被保護者の就労支援に関する問題⇒福祉事務所に配置された就労支 援員が被保護者の相談に応じ、必要な情報提供及び助言を行う。法第55条の7に基づく必須事業(平成27年4月施行)。 実施主体⇒都道府県、市、福祉事務所を設置する町村(社会福祉法人、NPO等に委託可)。負担割合⇒国3/4 都道府県、市、福祉事務所を設置する町村1/4。 令和4年度予算額:55.7億円。就労支援員の配置状況:2,948名(令和4年3月現在)(配置目安はその他世帯120世帯に対して1名)。直営実施:81.8% 委託実施:13.1% 直営+委託5.7%(令和4年3月現在)。⇒事業内容、事業の流れ(イメージ)参照。
○被保護者就労準備支援事業について→就労意欲が低い者や基本的な生活習慣に課題を有する者など、就労に向けた課題をより多く抱える被保護者に対 し、一般就労に向けた準備として、就労意欲の喚起や一般就労に従事する準備としての日常生活習慣の改善を、 計画的かつ一貫して実施する。
○就労支援事業等におけるKPIの設定について→平成30年度に一部見直し。
○就労支援事業等の実施状況の地域差→就労支援事業等への参加率を都道府県別にみると、最も高い県と低い県との間には約60ポイントの差がある。就労支援事業等を通じた就労・増収率を都道府県別に見ると、最も高い県と低い県との間には約32ポイントの 差がある。
○就労自立給付金について(生活保護法第55条の4第1項)→支給時期:世帯を単位として保護廃止時に一括支給。毎月の就労収入の10%を仮想的に積立。積立額 76,640円
○勤労控除の概要→1基礎控除 2新規就労控除 320歳未満控除 参照。
○就労活動促進費について→就労活動の状況に関わらず、保護費の受給額は同じであることから、就労活動のインセンティブ がうまく働くように、就労活動に必要な経費の一部を賄うことで、就労活動のインセンティブとし、早期の保護脱却 を目指す。月額5千円(支給対象期間:原則6か月以内、延長3か月、再延長3か月)
○家計に関する課題を抱える世帯への家計改善支援について→大学等への進学を検討している高校生等のいる世帯など。

A 子どもの貧困への対応について
○子どもの貧困への対応を巡る全体状況→子どもの貧困対策の「教育の支援」では、各年代の子どもに対する様々な学習・生活面等の支援や就学等に 必要な金銭面の支援が推進されている。
○生活保護受給者に対する「子供の貧困」関連施策→教育・生活の支援、保護者に対する就労の支援、経済的支援、【参考】生活保護世帯に属する子供の貧困 に関する指標(令和3年4月時点)あり。
○生活保護世帯における高校生に対する支援→高等教育の修学支援新制度 (文部科学省)
○生活保護世帯の子どもの大学等への進学支援→生活保護世帯の子どもの大学等への進学率が全世帯の子どもより著しく低いことを踏まえ、貧困の連鎖を断ち切り、生活保護世帯の子ども の自立を助長するため、生活保護制度に起因する課題に対応した支援策を講じる。
○高校生等の収入認定除外等の取扱いについて→生活保護制度は利用し得る資産・能力その他あらゆるものを活用することを前提として行われる制度、金銭収入は全て収入として認定するのが原則。 一方で、生活保護の目的である自立助長の観点から、特定の金銭収入について、支給の趣旨、当該世帯の自立の可能性 を考慮し、自立更生のために使われた分については収入認定から除外することとしている。
○生活保護世帯の子どもの進学率等の経過→「【参考】全世帯(直近値)」に比べて保護世帯は明らかに数字が低い。施策対策の課題でしょう。
○高等学校等、大学等進学率の推移→特に、大学等進学率(生活保護世帯)が極端に低い。

B 被保護者健康管理支援事業及び医療扶助について
○生活保護受給者の健康管理支援の推進 〜被保護者健康管理支援事業の実施〜→多くの健康上の課題を抱えていると考えられ、医療と生活の両面から健康管理に対する支援を行うことが必要。このため、医療保険におけるデータヘルスを参考に、福祉事務所がデータに基 づき生活習慣病の発症予防や重症化予防等を推進する。 令和3(2021)年1月から「被保護者健康管理支援事業」が必須事業化され、全福祉事務所で実施することとなったため、全ての自治体が効果的・効率的に実施するために必要な経費を負担する。
・被保護者健康管理支援事業の流れ→@〜C。⇒健康の保持増進により自立を助長。
○【事例1】 豊中市→医療扶助に特化したデータヘルス計画を策定し、評価指標と数値目標の設定と外部評価を取り入れ、PDCAサイクルに沿って事業を展開。 実施体制を強化しながら取組内容の充実化を図るとともに、より効果的かつ持続可能な支援に向け、市独自の「健康管理支援事業実施マニュアル」を作成。
○【事例2】 横須賀市→多職種から構成される「被保護者健康管理支援プロジェクトチーム」(PT)を編成し、PTが中心となって他部署とも連携しながら取組を推進。 大学機関と連携して、健診受診勧奨の効果検証や、被保護者の包括的なデータに基づく多面的な分析により最適な支援方法を検討。
○【事例3】 長野県安曇野市→被保護者の健診受診率向上に向けて、健診の機会を増やすなど被保護者にとって受診しやすい環境を構築。 健康管理支援担当の専門職として管理栄養士を雇用し、被保護者の適切な生活習慣の形成を目的に、被保護者向けの「健康管理プログラム」等を実施。
○生活保護における後発医薬品の使用促進の取組→医師等が医学的知見等に基づいて、後発医薬品を使用することができると認めたものについては、原則として、 後発医薬品による給付を行うことを法律に規定(平成30年10月1日施行)
○頻回受診の適正化について→同一傷病について、同一月内に同一診療科目を15日以上受診しており、短期的・集中的な治療(※)を行う者を除き、治療にあたった 医師や嘱託医が必要以上の受診と認めた者
○医療扶助に関する検討会について→生活 保護の医療扶助については、令和元年12月20日に閣議決定された「新デジタル・ガバメント実行計画」において、個人番号カードを 利用したオンライン資格確認について、令和5年度の導入を目指し検討を進めることとなっている。 この閣議決定を踏まえ、医療扶助制度に対応したオンライン資格確認について、制度的・実務的な課題を整理し、実現に向けた検 討を行う必要がある。 医療扶助については、従来から、頻回受診者等の適正化対策の必要性が指摘されており、こうした課題への対応も必要となっている。 このため、今般、こうした医療扶助に関する諸課題について、検討会を開催し、有識者・自治体関係者からの意見を聴取することと する。
○今後のスケジュール案について→C令和4年8月下旬 (主な議題:方向性のとりまとめ 等)右矢印1夏以降、社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会の場においても議論

C 居住支援について
○保護施設の概要→「救護施設」「更生施設」「医療保護施設」「授産施設」「宿所提供施設」の「設置根拠」「目 的」「設置主体」などの説明。その他説明もあり。参照。
○救護施設等における各種事業→「保護施設通所事業」「救護施設居宅生活訓練事業」「一時入所」の「目的」「事業内容」など各説明、一覧表。
○保護施設及び無料低額宿泊所等の分布 イメージ→7つの施設の全国分布イメージ。
○貧困ビジネス対策と単独での居住が困難な方への日常生活支援<令和2年4月施行>→見直し内容(規制の強化@〜B)あり。⇒日常生活支援住居施設として。
○日常生活支援住居施設管理職員等資質向上研修費→日常生活支援住居施設⇒令和2年度から施設の認定及び生活支援の委託が開始され、本人の状況や生活課題等を把握し、本人の抱えている課題等を踏まえた支援目標や支援計画の策定が求められる。これらの一連の支援業務について標準的な実施方法や支援を行う上での視点や留意点等を示し、全国の日常生活支援住居施設における支援業務の標準化を図る とともに支援の質の向上を図る必要がある。 支援の標準化⇒令和2年度の調査研究事業(社会福祉推進事業:一般社団法人居住支援全国ネットワーク)で修カリキュラム及び研修 テキストの開発を進めた。 令和4年度も引き続き、本研修を実施することにより、日常生活支援住居施設の管理者及び生活支援提供責任者等の資質向上を目指す。
○居住不安定者等居宅生活移行支援事業の創設→令和2年度第2次補正予算⇒生活困窮者と生活保護受給者の住まい対策を一体的に支援する「居宅生活移行緊急支援事業」を新設。 支援対象者の狭間を無くすとともに、居住の確保とその後の安定した住まいを継続的に支援することを可能とし、長期化すると見込まれる居住不安定者に対する支援を実施(令和2年度第2次補正予算「居宅生活移行緊急支援事業」から継続的な実施が可能な仕組み)。

D 事務負担の軽減及び生活保護費の適正支給の確保策等について
○生活保護ケースワーカー数等の状況→平成21年から約5千人増、1人当たり担当世帯数は減少。 ケースワーカーの配置については、社会福祉法の標準数(※)を踏まえて必要な交付税措置を行うとともに、自治体に対す る指導監査において必要な人員体制を確保するよう助言指導。 ※ ケースワーカーの配置は、社会福祉法において市部80世帯に1人、郡部65世帯に1人を「標準」として定められている。
○不正受給の状況→不正受給件数及び金額は、ここ数年は減少傾向。 内容の約6割は稼働収入の無申告や過小申告。


◎資料6 生活保護制度に関する国と地方の実務者協議 これまでの議論の整理(概要)
○生活保護制度の見直しの検討にあたり、令和3年11月より6回にわたって、国と地方自治体の実務者が協議を行い、 今般、これまでの議論の整理を行った。今後、これを踏まえ、地方自治体の首長級との協議である「生活保護制度に関する国と地方の協議」を開催する予定。 また、今後、社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会において、これまでの議論の整理を報告し、生 活保護制度の見直しについて更に議論する予定。


○現下の経済社会状況を踏まえた生活保護制度による支援の基本的な方向→今後、生活保護受給世帯の高齢化・単身化や、世界金融危機後の「その他世帯」が小幅な減少に止まっている状況等を踏まえた対応が必要。また、現下の新型コロナウイルス感染症による経済社会状況への影響により、生活困窮者自立支援制度や緊急小口資金等の特例貸付等を活用する者が増加していることを踏まえ、生活困窮者自立支援制度との連携等により、生活保護を必要とする者が速やかに保護につながり、自立できる ような適切な支援が必要。↓
○包括的な自立支援→自立支援プログラムによる実 施状況等も踏まえ、関係機関と緊密に連携を取りながら支援に取り組んでいくことが必要。生活困窮者自立支援制度とのより一層の連携のための方策が必要
○就労支援 等→利用者の状態像に応じたきめ細かな支援を行えるようにしていくことが必要。また、就労準備 支援事業や家計改善支援事業については、その実施率の向上を図る対応が必要。勤労控除、就労自立給付金などの各種就労インセンティブ⇒就労・増収等を通じた自立への意欲を高めることができるよう、効果的 な推進を図っていくことが必要。
○子どもの貧困対策→生活保護世帯の親の子育てや教育に関する意識等が高くないケースがあることや、親の抱える課題が子どもの養育環境にも影響を与えることが 少なくないことも踏まえ、貧困の連鎖の防止に向けた取組を推進する必要⇒親も含めた世帯全体に対する効果的な支援方策等を検討すべき。大学等への進学に向けた各種支援策が拡充されている中で、一般世帯の中にも、高等学校卒業後、大学等に進学せずに就職する者や、奨学金やアルバイトな どで自ら学費や生活費を賄いながら大学等に通う者が存在することとの均衡も踏まえれば、世帯内修学を認めるような段階にはないと考えられる。
○健康管理支援事業・医療扶助→被保護者健康管理支援事業⇒保健部局との連携等効果的・効率的な実施体制の構築が必要。レセプトデータ等を用いたPDCAサイクルに基づく取組とすべく、事業実施に係る指標設定・評価、各種データの効率的な収集・活用等の推進 が重要。被保護者健康管理支援事業のより効果的な実施を図る観点から、機能強化が必要。
○居住支援→日常生活支援住居施設について、施行後間もない状況を踏まえて、支援の質の向上を図る取組の推進が必要⇒研修に関する都道府県の役割、地域資源の乏しい自治体における広域連携の推進方策を検討すべき。
○生活保護基準における級地区分→@国の統計による分析において、級地の階級数を4区分以上とした場合には隣接級地間で一般低所得世帯の消費水準 に有意な差がない箇所が生じ、また、現行の1〜3級地の各級地における枝番1と枝番2の地域間でも一般低所得世帯の消費水準に有意な差がな いこと、Aアンケート調査の結果からも、各階級における枝番を廃止することは地域の実情に即したものと考えられることから、各階級における 枝番を廃止し、1〜3級地の3区分とする方向性は妥当なものと考えられる。個別の市町村の級地指定⇒提案された統計的な手法を用いて指定を見直し得る市町村を検討の対象とし、丁寧に自治体の意向を確認した上で指定の見直しの判断をするという方向性は妥当なものと考えられる
○事務負担の軽減・生活保護費の適正支給の確保策→ケースワーカーが真に必要な業務に重点化できるようにする観点から検討していく必要⇒被保護者の多様で複雑な課題を解決するにあたって、ケース診断会議等を通じた組織的な支援方針の検討や、関係他機関との連携等のチームアプローチ等に より、支援の質の確保と負担軽減を図ることについて検討、 他機関との連携を通じ、ケースワークの質向上を図るため、他制度における会議体に参画した場合に、訪問調査活動を柔軟に取り扱うことも考えられる。事務の合理化が考えられる分野として、定型的な業務のデジタル化や医療券・調剤券等の電子化、各種調査の効率化等について、意見が挙がった

次回も続き「資料7−1 「今後の福祉事務所における生活保護業務の業務負担軽減に関する調査研究」報告書(概要)」からです。

第14回 社会保障審議会「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」(資料) [2022年06月24日(Fri)]
第14回 社会保障審議会「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」(資料)(令和4年6月2日)
《議事》(1)生活困窮者自立支援制度及び生活保護制度の見直しについて (2)「今後の福祉事務所における生活保護業務の業務負担軽減に 関する調査研究」報告書
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26029.html
◎資料3 生活困窮者自立支援制度の現状について
1.相談者の状況
○生活困窮者自立支援制度の概要→R4年度予算:594億円 ※重層的支援体制整備事業分を含む。再就職のため居住 の確保が必要な者 国費3/4。
○生活困窮者自立支援制度における支援状況調査 集計結果(平成27年4月〜令和3年3月)
→【令和2年度】新規相談受付件数とプラン作成件数⇒新型コロナの影響 急激に増加。プラン作成者のうち自立に向けた 改善が見られた者の割合90% (※令和元年度 85%、令和2年度83%)
○新型コロナウイルス感染症による新規相談受付件数等の変化→令和元年度の約3.2倍、プラン作成件数は約1.8倍となっているが、令 和3年度は、令和2年度に比べて新規相談受付件数は減少。月単位⇒1回目、2回目の緊急事態宣言が発令されていた期間、相談件数が急増
○新型コロナウイルス感染症による相談者像の変化(性別・年代)→男性の割合が微増加。新規相談者数⇒20・30代男性の増加幅が最も大きく、次いで20代女性、40代男性が増加。
○新型コロナウイルス感染症による相談者像の変化(世帯類型)→感染拡大後に「多い」と回答した自治体のほうが多かった。

○新型コロナウイルス感染症による相談者像の変化(相談者の属性)→相談件数が増えた83.4%
○新型コロナウイルス感染症による相談者像の変化(就労状況・男性)→コロナ前後を比較すると、20代以上の全ての年代において「就労している」者からの相談が大きく増加
新型コロナウイルス感染症による相談者像の変化(就労状況・女性)→女性も男性と同様に、コロナ前と比較すると、20代以上の全ての年代において「就労している」者からの 相談が大きく増加している。また、「仕事を探したい/探している(現在無職)」者も増加
○新型コロナウイルス感染症による相談者像の変化(自治体区分別)→新規相談受付件数については、都道府県・一般市・町村に比べ、指定都市・中核市・特別区において増加 幅が大きく、コロナによる影響が大きく出ている。
○新型コロナウイルス感染症による相談者像の変化(課題・特性)→「経済的困窮」(3.2倍)、「住まい不安定」(2.2倍)、「ホームレス」(1.6倍)、「ひとり親」(1.5 倍)、「外国籍」(7.0倍)が大きく増加している。
○新型コロナウイルス感染症による相談者像の変化(抱える課題の数)→コロナ流行下( 2 0 2 1年 1 月)⇒3個以上の割合:51.6%
○新型コロナウイルス感染症による相談者像の変化( プラン作成者の課題・男性 )→新型コロナ流行下では、 10代において「社会的孤立」 、20代以上において「住まい不安定」や「ホーム レス」といった住まいに関する課題が多く見られるようになった。
○新型コロナウイルス感染症による相談者像の変化( プラン作成者の課題・女性 )→新型コロナ流行下では、 10代において「コミュニケーションが苦手」 、20代以上において「住まい不安 定」という課題が多く見られるようになった。30,40代においては「ひとり親」という特性も増加している。

2.法定事業の利用状況と支援効果
○法定事業の利用状況と支援効果:自立相談支援事業
→就労支援対象者数は増加傾向。令和2年度はコロナ禍の影響で約27%に減少。
○住居確保給付金の利用状況→休業等の者が63.6%、離職・廃業等の者は36.4%。また、住居喪失のお それのある者(現に賃貸住宅等に居住している者)が約99.6%。 令和2年度の利用者⇒年齢別では30〜39歳が最も多くなっており、令和元年度において対象外であった65歳以上 も計7.4%利用している。世帯構成は、令和2年度において、令和元年度と比べて2人世帯、3人以上の世帯がやや増加した。
○住居確保給付金の実施状況等(〜令和元年度)→雇用情勢の改善により新規支給決定件数は減少傾向にあるが、高い常用就職(※) 率を示しており、離職者対策としての効果が確認できる。
○任意事業の実施状況→いずれも増加。
○就労準備支援事業、家計改善支援事業の実施見込み→今後の任意事業実施予定状況を調査した結果、両事業ともに、令和3年度の実施率は70%、令和4年度の実施 率は80%を超え、令和5年度には約85%に達する見込み。
○認定就労訓練事業所の認定状況(令和3年3月31日時点)
○就労準備支援事業の利用状況
○就労準備支援事業の支援効果
○認定就労訓練事業の利用状況・支援効果
○家計改善支援事業の利用状況
○家計改善支援事業の支援効果@→事業利用の効果については、「債務・滞納の解消に役立った」や「世帯への包括的な支援」といった回答が多い。利用者の見られた変化としては、「家計の改善」「債務の整理」の差が顕著である。
○家計改善支援事業の支援効果A(事例)→家計改善支援事業を利用することによって、税・保険料の滞納が改善された効果も確認されている。
○一時生活支援事業の実施状況・支援効果→利用人数は、平成30年度をピークにやや減少傾向にあったものの、令和2年度は男女ともに利用人数が増加した。 また、約7割の退所者が、就職や福祉等の措置の利用に結びついている。
○地域居住支援事業の実施状況・支援効果→「令和2年度の事業効果と実施課題」参照。
○子どもの学習・生活支援事業の実施状況等→事業の対象世帯は自治体によって様々であり、参加者の属性別では生活保護世帯が33.3%となっている。また、学 年別では中学1年〜2年が32.0%と最も多く、次いで中学3年が25.8%である一方、高校生以上は10.5%とそれほど 多くない状況である。

○子どもの学習・生活支援事業の支援効果→平成30年改正において、学習支援に加え、生活習慣・育成環境の改善や教育及び就労に関する支援を法律上規定し たことにより、こうした生活支援を行う自治体が増加した。また、法改正の効果としては、「基本的な生活習慣の確 立や生活リズムの向上等」が最も多かった。 参加した中学3年生のうち、高校進学した者は98.9%(令和2年度)であり、全世帯平均値に近い実績である。
○プラン作成対象者に係る初回面談時の状態像→「自立意欲」「自己肯定感」「社会参加」⇒いずれの項目においても、4の状態像がほぼ半数を占めており、1や2については、いずれも1割程度に とどまっている。
○プラン作成対象者に係る状態像の変化(就労準備支援事業の効果)→いずれの項目も、就労準備支援事業を利用している者は利用し ていない者に比べて2割程度ステップアップ率が高くなっており、事業の効果が現れている。
○プラン作成対象者に係る状態像の変化(家計改善支援事業の効果)→いずれの項目も、家計改善支援事業を利用している者は利用し ていない者に比べて1割程度ステップアップ率が高くなっており、事業の効果が現れている。
○プラン作成対象者における変化→ほとんどのプラン作成対象者は、何らかの変化が生じていることがわかる。

3.平成30年改正を踏まえた動き
@ 基本理念・定義の明確化
→法 改正後、さらに取り組みが進んでいる。一方、「対象者像を把握するための各種調査・統計の整理や、潜在的なニーズ把握調査 」は「法改正前後とも取り組んでいない」の割合が高い。
A 自立相談支援事業等の利用勧奨の努力義務の創設 →法改正前後を比較すると、連携強化のための取組の実施が進む一方、2割以上の自治体が「特に実施して いない」と回答。
B 関係機関間の情報共有を行う会議体(支援会議)の設置状況 →約4割の自治体が設置済み・設置予定ありの状況であ り、効果としては、関係機関間の情報共有やそれによる役割分担の促進が挙げられている。
C 自立相談支援事業・就労準備支援事業・家計改善支援事業の 一体的実施の促進 →3事業を全て実施している自治体数は増加している。また、新規相談受付件数やプラン作成件数は、自立・就 労・家計の3事業を全て実施している自治体において最も多くなっている。
D 都道府県による市等への支援事業の創設 →都道府県による支援の数は増加している(法改正前: 平均3.2個→法改正後:平均3.8個)。 約3割の都道府県は支援の数が1個または2個にとどまっており、そうした都道府県の底上げも必要。
E 福祉事務所を設置していない町村による相談の実施 →都道府県が設置する自立相談支援機関⇒約7割の町村において設置されておらず、そのうち「福祉事務 所を設置していない町村における相談事業」を実施している(予定を含む)町村は約4割。 町村における支援内容⇒「相談者からの要望・課題の聞き取り」「自立相談支援機関を含む他機関等の情報提供・助言」が多い。
F 子どもの学習支援事業の強化 →生活支援のうち、「子どもに対する支援」⇒「居場所の提供・相談」「日常生活習慣の形成」「社会性の育成」はいずれも約80%程度取り組んでいる、「体験活動等」は50.3%。「保護者に対する支援」⇒「養育に必要な知識の情報提供」「自立相談支援機関や各種支援施策の情報提供・利用勧奨」はいずれも約80%。「教育及び就労」⇒「進学に関する情報提供」「進路選択に関する相談」 はいずれも80%を超えている一方で、「就労に向けた相談支援」は50.5%であった。
G 地域居住支援事業の創設→令和2年度の事業効果と実施課題  参照。

《参考資料》
○任意事業の都道府県別の実施割合@A→就労準備支援事業 実施割合、家計改善支援事業 実施割合、一時生活支援事業 実施割合、子どもの学習・生活支援事業 実施割合 参照。
○前回改正事項@AB
1.基本理念・定義の明確化
→@〜B参照。定義規定を「生活困窮者とは、就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情により、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者」に見直す。
2.自立相談支援事業等の利用勧奨の努力義務の創設→事業実施自治体の各部局(福祉、就労、教育、税務、住宅等)において、生活困窮者を把握した場合には、自立相談支援事業等の利用勧奨を行うことを努力義務化。
3.関係機関間の情報共有を行う会議体の設置→関係機関等を構成員(※)とする、生活困窮者に対する支援に関する情報の交換や支援体制に関 する検討を行うための会議の設置をできることとする。 (※)自治体職員(関係分野の職員を含む)、自立相談支援事業の相談員、就労準備支援事業・家計改善支援事業等法定事業の支援員、 各分野の相談機関、民生委員等を想定。 ・生活困窮者に対する支援に関する関係者間の情報共有を適切に行うため、会議の構成員に対する守秘義務を設ける。
4.自立相談支援事業・就労準備支援事業・家計改善支援事業の一体的実施の促進→@〜B参照。家計改善支援事業の補助率を引き上げる(1/2→2/3)。 三事業の一体的実施
5.都道府県による研修等の市等への支援事業の創設、福祉事務所を設置していない町村による相談の実施
6.子どもの学習支援事業の強化→主な課題⇒「学習支援(高校中退防止の取組を含む)」「生活習慣・育成環境の改善」「教育及び就労(進路選択等)に関する支援」
7.居住支援の強化(一時生活支援事業の拡充)右矢印1支援を必要とする人同士や地域住民とのつながりをつくり、相互に支え合うこと(互助)にも寄与することにより、地域で継 続的・安定的な居住を確保。


◎資料4 生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理(概要)について
○「生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理」について(概要)
→「生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理のための検討会」及びその下に設置されたワーキンググループにおいて、「生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理」をとりまとめ、公表(令和4年4月26日)。 今後、社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会において論点整理を踏まえた検討を行い、検討結果に応じて、令和5年以降、生活困窮者自立支援法等の見直しを行う予定。

1 . 総 論
(法施行後の状況)
→生活困窮者自立支援法は、理念として「生活困窮者の自立と尊厳の確保」及び「生活困窮者支援を通じた地域づくり」 という2つの目標と、包括的・個別的・早期的・継続的・分権的・創造的な新しい支援のかたちを掲げ、全国で様々な実践が重ねられてきた。 新規相談者数や継続的に支援した人数は年々増加し、その多くに自立に向けた変化が見られるなど、着実に効果が現れている。
(新型コロナウイルス感染症の影響)→令和2年春から続くコロナ禍は、社会の脆弱性を照らし出し、その影響は世代・属性を超えて非常に広範囲に及んだ。自立相談支援機関の相談窓口における新規相談受付件数や緊急小口資金等の特例貸付、住居確保給付金の申請ケンスウハ急増し、とりわけ個人事業主やフリーランス、外国人、若年層などこれまで生活困窮の相談窓口にあまりつながっていなかった新たな相談者層からの相談が増加した。こうした状況に対して、支援現場⇒感染防止対策を講じつつ急増する相談・申請等に連日対応し、新たな相談者層の支援ニー ズに対応するため、試行錯誤を重ねてきた。こうした取組により、コロナ禍において法が生活困窮者の生活の下支えとして大きな役割を果 たしたこと、すなわち法が必要不可欠なものであることが改めて認識された。一方で、コロナ禍においては、従来法が想定していなかった特例的な給付・貸付事務に対応した結果、従来の伴走型支援の実践が難しくなり、法の理念が揺らいでいるのではないかとの声も聞かれる。 また、コロナ禍における法と生活保護法の関係についても、検証を行う必要。
(地域共生社会や関連施策との関係について)→地域共生社会は、法の考え方と他の福祉分野や政策領域の考え方を合わせて共通理念化したものであり、令和3年度から施行された重層的支援体制整備事業(「重層事業」)は、この理念を実現するための1つの仕組み。法において積み重ねられた実践は、地域共生社会の実現に向けて、市町村の包括的な支援体制の整備における重要な基盤となり得るものである。 法施行以降も、様々な関連施策がとりまとめられている。生活困窮者を取り巻く施策の多様化という良い面がある一方、法の目指す包括 的な支援を実現するためには、生活困窮者支援の分野として、そうした施策との連携体制の構築が必要。

2.個別論点→↓以下の⑴〜⑼まで「現状の評価と課題」「主な論点」に整理された表あり。
⑴生活困窮者自立支援 のあり方
⑵ 自立相談支援のあり 方
⑶ 就労支援のあり方
⑷ 家計改善支援のあり 方
⑸ 居住支援のあり方
⑹ 貧困の連鎖防止等
⑺ 生活保護制度との連携のあり方
⑻ 自立支援に関する諸課題
⑼ 支援を行う枠組み

○令和3年度 生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理のための検討会 ・ワーキンググループ 構成員名簿あり。

次回も続き「資料5 生活保護制度の現状について」からです。

第14回 社会保障審議会「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」(資料) [2022年06月23日(Thu)]
第14回 社会保障審議会「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」(資料)(令和4年6月2日)
《議事》(1)生活困窮者自立支援制度及び生活保護制度の見直しについて (2)「今後の福祉事務所における生活保護業務の業務負担軽減に 関する調査研究」報告書
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26029.html
◎資料1 今般の制度見直しの検討について
○生活困窮者等の自立を促進するための 生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律の概要
・改正の趣旨
→生活困窮者に対する包括的な支援体制の強化、生活保護世帯の子どもの大学等への 進学支援、児童扶養手当の支払回数の見直し等の措置を講ずるほか、医療扶助における後発医薬品の原則化等の措置を講ずる。
・改正の概要↓
1.生活困窮者の自立支援の強化(生活困窮者自立支援法)
(1) 生活困窮者に対する包括的な支援体制の強化
→ @ 自立相談支援事業・就労準備支援事業・家計改善支援事業の一体的実施を促進(就労準備支援事業・家計改善支援事業を実施する努力義務を創設。両事業を効果的・効率的に実施した場合の家計改善支援事業の国庫補助率を引上げ(1/2→2/3) )。A 都道府県等の各部局で把握した生活困窮者に対し、自立相談支援事業等の利用勧奨を行う努力義務の創設  B 都道府県による市等に対する研修等の支援を行う事業を創設
(2) 子どもの学習支援事業の強化 →@ 学習支援のみならず、生活習慣・育成環境の改善に関する助言等も追加し、「子どもの学習・生活支援事業」として強化
(3) 居住支援の強化(一時生活支援事業の拡充)→ @ シェルター等の施設退所者や地域社会から孤立している者に対する訪問等による見守り・生活支援を創設 等
2.生活保護制度における自立支援の強化、適正化(生活保護法、社会福祉法)
(1) 生活保護世帯の子どもの貧困の連鎖を断ち切るため、大学等への進学を支援
→@ 進学の際の新生活立ち上げの費用として、「進学準備給付金」を一時金として給付
(2) 生活習慣病の予防等の取組の強化、医療扶助費の適正化→@ 「健康管理支援事業」を創設し、データに基づいた生活習慣病の予防等、健康管理支援の取組を推進 A 医療扶助のうち、医師等が医学的知見から問題ないと判断するものについて、後発医薬品で行うことを原則化
(3) 貧困ビジネス対策と、単独での居住が困難な方への生活支援→@ 無料低額宿泊所について、事前届出、最低基準の整備、改善命令の創設等の規制強化 A 単独での居住が困難な方への日常生活支援を良質な無料低額宿泊所等において実施
(4) 資力がある場合の返還金の保護費との調整、介護保険適用の有料老人ホーム等の居住地特例 等
3.ひとり親家庭の生活の安定と自立の促進(児童扶養手当法)
(1) 児童扶養手当の支払回数の見直し(年3回(4月,8月,12月)から年6回(1月,3月,5月,7月,9月,11月)) 等
・施行期日
→平成30年10月1日(ただし、1.(2)(3)は平成31年4月1日、2.(1)は公布日、2.(2)@は平成33年1月1日、2.(3)は平成32年4月1日、3.は平成31年9月1日※ 等)

○生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する 法律案に対する衆議院厚生労働委員会附帯決議→ 一〜五まで。四 生活困窮世帯の子どもに対する学習支援については、福祉関係者だけでなく教育関係者等とも緊密な連携が 図られるとともに、生活面も含めた包括的なサポートが行われるよう、地方自治体に対する支援の充実を図るこ と。
○生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する 法律案に対する参議院厚生労働委員会附帯決議(抄)→ 一〜十四まで。十一、生活保護世帯の子どもの大学等への進学支援については、貧困の連鎖を解消し、教育の機会均等を確保 する観点から、更なる改善と拡充に向けて、進学準備段階に必要とされる支援の在り方や、進学時の世帯の取 扱いも含めて早期に検討を行い、給付型奨学金の検討・実 施状況も踏まえ必要な措置を講ずること。また、進 学準備給付金の支給に当たっては、個々の実情に柔軟に対応した支給基準とするよう努めること。
○経済財政運営と改革の基本方針2021(令和3年6月18日閣議決定)(抄)→生活困窮者や孤独・孤立状態にある方などに対し、一人ひとりに寄り添ったきめ細かなサービスを提供。住まいの確保を含め生活を下支えする重層的なセーフティネットによる支援に万全を期す。デジタル利用等の実態を把握し、必要な支援策を検討。生活困 窮者自立支援制度による住まいのセーフティネットの強化を含めその在り方を検討。地域共生社会の実現に向け、重層的支援体制整備事業など市町村における包括的支援体制の構築を進める。
○新経済・財政再生計画改革工程表2021(令和3年12月23日経済財政諮問会議)(抄)→社会保障 5.再生計画の改革工程表の全44項目の着実な推進⇒22年〜24年計画。
○地域共生社会とは→すべての人の生活・社会・経済活動の基盤としての地域
○「地域共生社会」の実現に向けた地域づくりに関するこれまでの経緯↓
平成27年9月 「新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」(「新たな福祉サービスのシステム等のあり方検討PT」報告) 多機関の協働による包括的支援体制構築事業(平成28年度予算)⇒⇒⇒⇒令和2年3月 6月 社会福祉法等改正法案(地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案)を提出 改正社会福祉法の可決・成立
※市町村における包括的な支援体制の構築に関する改正規定は令和3年4月施行
○重層的支援体制整備事業(社会福祉法第106条の4)の概要→地域住民が抱える課題が複雑化・複合化(※)する中、従来の支援体制では課題がある。このため、属性を問わない包括的な支援体制の構築を、市町村が、創意工夫をもって円滑に実施できる仕組みとすることが必要。(※)一つの世帯に複数の課題が存在している状態(8050世帯や、介護と 育児のダブルケアなど)、世帯全体が孤立している状態(ごみ屋敷など)
社会福祉法に基づく新たな事業(「重層的支援体制整備事業」社会福祉法第106条の4)の創設→市町村⇒既存の相談支援等の取組を活かしつつ、地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応する包括的な支援体制を 構築するため、T相談支援、U参加支援、V地域づくりに向けた支援を一体的に実施する事業を創設。新たな事業は実施を希望する市町村の手あげに基づく任意事業。ただし、事業実施の際には、T〜Vの支援は必須。新たな事業を実施する市町村に対して、相談・地域づくり関連事業に係る補助等⇒一体的に執行できるよう交付金を交付する。右矢印1令和3年4月1日施行。
○生活困窮者自立支援法及び生活保護法の見直しの枠組み
→「論点整理検討会」「国と地方の実務者協議」⇒令和4年6月以降社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会における議論
○社会保障審議会生活保護基準部会について→設置の趣旨及び審議事項 (平成23年2月10日 社会保障審議会(総会)において了承)。委員名簿8名。
○当面のスケジュール(案)
→今回から7回目〜(第20回〜)9月以降〜⇒ 前半の議論を踏まえ、各テーマについてさらに検討を進める


◎資料2 新型コロナウイルス感染症への対応について  
1 生活困窮者支援関係
○支援現場への影響↓

・支援現場の状況→@ 相談件数の増加(新規相談受付件数(令和2年度):約78.6万件(令和元年度の24.8万件の約3.2倍)。プラン作成件数(令和2年度) :約13.9万件(令和元年度の7.9万件の約1.7倍)。) A 特例的な経済支援策(緊急小口資金等の特例貸付(令和2年度):約189.2万件(令和元年度の約1.0万件の約182倍)。 住居確保給付金の支給件数(令和2年度):約13.5万件(令和元年度の約4000件の約34倍)。 生活困窮者自立支援金の支給件数(令和4年2月末時点):約17.3万件。)B 新たな相談者層の顕在化や相談内容の複雑化(個人事業主やフリーランス、外国人、若年層など、これまで相談窓口にあまりつながっていなかった新たな相談者層が顕在化。 コロナ禍では、3個以上の課題を抱える相談者が半数以上に増加しており、複合的な課題を抱える相談者が増加。)
・支援現場への主な影響→@ 伴走型支援の実践が困難(従来法が想定していなかった特例的な給付貸付事務に連日対応。令和2年度の調査⇒ 90.6%の自治体が自立相談支援機関 における本来業務の実施に負担や困難さを感じ、56.1%の自治体が、継続的な支援につながっていないケースがあると回答。) A 労働環境の悪化・人手不足(相談員等の時間外労働が過重となっている社協は56.6%。(人口20万人以上の市では76.5%)。 コロナ禍に伴う対応強化に向けて、支援員の負担が過大となっ ている自治体は79.6%、人員配置の充実が必要だが、増員等の 予定がなかった(ない)自治体は29.8%。)
○支援現場や国の対応↓
・支援現場における対応→相談員等の加配による自立相談支援体制の強化( 相談者の増加に対応するため、35.8%の自治体において、支援員等の加配を実施。)。 ○ 電話・メール・SNS等を活用した相談支援 ・ 感染防止の観点から、対面での面談が難しくなったなどにより、39.2%の自治体において、 電話・メール・SNS等を活用した支援を実施。)。個人事業主や外国人など新たな相談者層への支援( 持続化給付金等事業者向けの制度など、他制度も含めたパンフレットを配布。 通訳の配置、多言語対応のための機器購入等により、日本語を話せない外国人への支援を実施。)。 他の支援機関・支援団体との連携強化 (約半数の自治体が生活保護(福祉事務所)やハローワーク、社会福祉協議会、フードバンク活動団体等と新たに連携強化。 59.7%の自治体で社会福祉協議会やNPO法人等と連携した食料支援を実施。)。 任意事業の活用(住居を失った生活困窮者に対して、一時生活支援事業により宿泊場所を提供するとともに包括的な支援を実施。 コロナ禍の影響で収入が減少した場合や、特例貸付を利用する場合などに、支出の見直しを行うための家計相談を実施。)
・国の対応→1.経済支援策(緊急小口資金等の特例貸付、住居確保給付金、新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金) 2.生活困窮者自立支援の機能強化、NPO等民間団体と連携した支援(新型コロナウイルス感染症セーフティネット強化交付金、 生活困窮者等支援民間団体活動助成事業) 3.住まい対策の推進

○個人向け緊急小口資金等の特例貸付の実施
○緊急小口資金、総合支援資金の申請件数の推移
○住居を失うおそれのある困窮者への住居確保給付金の支給
○住居確保給付金の支給実績の年度別推移(平成27年度〜令和3年度)→生活困窮者の生活の下支えとして大きな役割を果たした。
○R2〜R3住居確保給付金の申請・決定件数の推移
○「新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金」について→支給期間:3か月(申請受付期限を令和4年6月末から8月末へ延長)
○新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金 申請・決定件数
○生活支援についての情報発信(個別施策について)→緊急小口資金等・住居確保給付金⇒リーフレットの配布、SNSでの情報発信、生活支援特設ホームページ (厚生労働省HP)
○生活困窮者自立支援の機能強化事業→新型コロナウイルス感染症セーフティネット強化交付金(都道府県等実施分)62億円の内数(令和3年度 補正予算51億円 + 令和4年度 予備費11億円)予算規模あり。
○居住不安定者等居宅生活移行支援事業の概要→令和2年度第2次補正予算において、生活困窮者と生活保護受給者の住まい対策を一体的に支援する「居宅生活移行緊急支援 事業」を新設。 ※ 令和3年度:34自治体が実施(国庫補助協議)
○生活困窮者等支援民間団体活動助成事業→6億円(令和3年度補正予算 5億円 令和4年度予備費 1億円)新型コロナウイルス感染症の影響により、孤独・孤立に陥 る危険性の高い生活困窮者やひきこもり状態にある者等に対 する支援活動を実施する民間団体の取組を支援することを目 的。
○(参考)住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金→1世帯当たり10万円の現金を「プッシュ型」で給付する。
○(参考)低所得の子育て世帯に対する子育て世帯生活支援特別給付金→@ 児童扶養手当受給者等(低所得のひとり親世帯) A @以外の令和4年度分の住民税均等割が非課税の子育て世帯⇒児童一人当たり一律5万円

2 生活保護関係
○新型コロナ感染拡大の前後における保護の申請・決定の動向→令和3年度は前年の急増を受け、4月に減少した後、5月以降は8ヶ月連続で増 加していたが1〜3月は減少した。
○被保護実人員の対前年同月比と失業率の推移→世界金融危機時と比べ、失業率の上昇は小幅に抑えられており、被保護人員の増加も抑制されている。
○世帯類型別 保護開始世帯数の構成割合→新型コロナウイルス感染拡大の前(令和元年度)と感染拡大後(令和2年度)とで、保護を開始した世帯の世帯 類型の構成割合を比較⇒「その他の世帯」の割合が4%程度高くなっており、他の世帯類型の割合は低くなっ ている。
○保護開始の主な理由別 保護開始世帯数の構成割合→「働きによる収入の減少・喪失」は令和元年度にか けて減少していたが、令和2年度には増加している。
○新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前後での相談者の変化 ―相談者の属性→感染拡 大後の方が、「中年・単身(男性)」が8.5ポイント、「若年・単身(男性)」が少ないものの5.7ポイント高くなっている。
○新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前後での相談者の変化 ―相談者の特徴→「病気 (メンタルヘルス含む)」、「低年金」の順に多いことは変わっていないが、感染拡大後の方が「就職活動困難」、 「不安定就労(非正規雇用等)」で増加が見られる。
○新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前後での相談者の変化 ―生活保護を受ける前に利用していた支援→「自立相談支援機関での相談」が最も多い、それに次いで、感染拡大後では、「社会福祉協議会での貸付」「住居確保給付金」からのつなぎが大幅に増えたことがうかがえる。
○新型コロナウイルス感染症の影響により生活保護の申請につながったケース ―就労状況→「一般就労していたが、コロナ禍により休業中」が最も多かった。また、就労中も しくは就労していた方の就労形態としては、「非正規雇用(パート・アルバイト)」が約半数を占め、次いで「自 営その他」が約2割であった。
○新型コロナウイルス感染症の影響により生活保護の申請につながったケース ―ターニング・ポイント→ターニング・ポイント(困窮状態等に至ったきっかけや人生の転換期となった出来事)としては、「コロナの影 響による休業や就業時間の減少等に伴う収入減」が最も多く、次いで「(世帯主ご本人の)疾病の発症」「コロナ の影響により勤め先が休業・廃業(倒産)となり解雇や雇止め」の順に多い。
○自立相談支援機関による支援につながった利用者へのアンケート結果 ― 生活保護の利用について ―→新型コロナウイルス感染症による影響を受け、自立相談支援機関による支援につながった利用者にアンケートを行った結果、生活保護⇒過去に利用していた者が約1割、一度も利用していない者が約8割であった。生活保護の利用⇒「利用したいが抵抗感がある・利用したくない」と回答した理由としては、「車や持ち家、生命保険等の保有が認められるか分からないから」、「公的支援に頼らず、自分の力でがんばりたいから」、「自分は利用できな いと思っているから」の順に多い。
○新型コロナウイルス感染症対策に伴う生活保護における対応について(概要)→1.適切な対応(申請権の侵害の防止、速やかな保護決定など5項目あり)  2.予算措置(面接相談等の業務の臨時職員雇上げ費用、業務のデジタル化による効率化の試行事業)
○新型コロナ対策としての一連の対応について(運用面詳細版)@ABC→総論(事務連絡で周知・平時であれば硬直化し がちな運用について、弾力的に実施できるよう、面接相談や要否判定時の対応について示したもの)。保護の申請権侵害の防止、速やかな保護決定(令和2年3月10日事務連)、面接相談及び訪問調査活動に係る対応、一時的な居所の確保が緊急的に必要な場合の支援、小学校の臨時休校に伴う学校給食費の取扱い(令和2年3月13日事務連)、要否判定の弾力的運用@・・・稼働能力活用(令和2年4月7日事務連)、要否判定の弾力的運用A・・・一時的に要保護となる者の資産、コロナにより死亡した者及びその疑いがある者の葬祭(令和3年4月7日課長通知)、ワクチン接種に必要な移送費、自立相談支援機関との連携
○新型コロナウイルス感染症に伴う対応と世界金融危機に伴う対応の比較→新型コロナウイルス影響下においては、生活保護制度の運用面において、様々な措置を講じてきている。
○個人や世帯に対する経済的な支援策(主なもの)
○保護決定等体制強化事業
→新型コロナウイルス感染症の影響による要保護者からの生活保護に関する面接相談及び保護の決定の件数の増加に対応するため、必要な方へ必 要な生活保護が滞りなく決定されるように、福祉事務所における保護決定等の体制の強化を図る。
○被保護者就労支援機能強化事業(令和3年度補正予算:3.2億円)→リーマンショック以降、「その他世帯」の構成割合が大きく上昇している状況を踏まえ、コロナ禍において、 生活に困窮し生活保護の受給に至った稼働年齢層を中心に就労に向けた支援を積極的に行い、早期自立に向けた 支援を強化する。⇒【事業内容】 【事業スキーム等】 参照。
○保護施設等における感染拡大防止対策支援事業→、新型コロナウイルスの感染拡大を防止する観点から、都道府県等が施設等へ配布する衛生用品の卸・販社からの一括購入 等、施設等の消毒、感染症予防の広報・啓発、無料低額宿泊所の入居者等の感染拡大防止のための一時滞在場所確保、事業継続に向けた各種 取組に必要な費用を補助する。
○コロナ禍に伴う相談体制の強化等の取組状況→「現在、取り組んでいる・取り組んだことがある」ものとして、「ひとり親や子どものいる世帯への支援の強化」、 「就労支援等の補助業務を行う職員の配置」、「要保護者に対する面接相談の相談員の雇用」の順に多く実施されてい た。

次回も続き「資料3 生活困窮者自立支援制度の現状について」からです。

第120回労働政策審議会障害者雇用分科会(資料) [2022年06月22日(Wed)]
第120回労働政策審議会障害者雇用分科会(資料)(令和4年6月1日)
《議題》(1)意見書(案)について (2)その他
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26002.html
◎資料1−2 意見書(案)※第 119 回意見書(案)からの変更点 →資料1−1。
◎参考資料1 労働政策審議会障害者雇用分科会委員名簿
・(公益代表)6名。(労働者代表)5名。(使用者代表)5名。(障害者代表)4名。

◎参考資料2 障害者雇用分科会における今後の主な論点
これまでの障害者雇用分科会における議論を踏まえ、今後、以下の 論点を中心に議論を進めてはどうか。
○ 障害者雇用率制度の在り方(→障害者雇用率制度における障害者の範囲。精神障害者に関する雇用率カウント。 長期継続雇用の評価。)
○ 障害者雇用納付金制度の在り方
○ 障害者雇用と福祉の連携の促進
○ 自宅や就労施設等での障害者の就業機会の確保
○ 中小企業における障害者雇用の促進
○ 除外率制度に関する対応


◎参考資料3 障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しについて(議論の整理(案))
《総 論》
○論点
→「障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しについて 中間整理(令和3年12月16日)」⇒以下のとおり基本的な考え方を とりまとめたが、最終報告に向けて、どのような考え方とすべきか。
○中間整理→(基本的な考え方)今回の直しの基本的な考え方について、以下の「1〜3」の3つの柱に整理。⇒当事者中心に考えるべきとの視点をもち、どのように 暮らしどのように働きたいかなど障害者本人の願いをできる限り実現していけるよう、支援の充実を図っていく。その際、障害者 自身が主体であるという考え方を前提に、行政や支援者は、「ともに生きる社会」の意味を考えながら、障害者自身が主体であるという考 え方や当事者の目線を尊重して取り組み、地域住民の障害理解も促進していくこと。また、家族への支援 を含め、障害者の 生活を支えていくという視点が重要である。  国際的な障害福祉に関する流れを振り返ると、2006年に採択された障害者権利条約を、日本政府においては2014年に批准し、 それに伴う国内法の整備として、2012年障害者総合支援法が施行され、障害者権利条約に沿った取組が推進されてきた。今後もこうした 国際的な動きに対応する見直しも、引き続き求められると考えられる。

1.障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり
(1) 障害者が希望する地域生活を実現・継続するための支援の充実
→障害者の入所施設や病院からの地域移行を進め、地域生活を安心して送れるよう障害者が希望する多様な地域生活の 実現に向けた支援や地域生活支援拠点等の整備・充実等を図ること。 どのような相談もまずは受け止める、アクセスしやすい相談体制を整備するため、地域で中核的な役割を果たす相談支援の機関を中心 に、本人の希望する暮らしを形づくり、継続するための相談支援の充実・強化が必要。こうした取組を進めるに当たっては、障害者総合支援法の基本理念である「可能な限りその身近な場所において必要な日常生活又は 社会生活を営むための支援を受けられることにより社会参加の機会が確保されること」、「どこで誰と生活するかについての選択の機会が 確保され」ること等を踏まえ、入所施設や病院からの地域移行を促進する必要があることを明確化していくとともに、親元からの自立を含 めたライフステージ全体や、様々な地域生活を支える社会資源全体の基盤整備も視野に入れた、障害者本人の意思を尊重した総合的な 支援を進めていく必要。 さらに、障害者のための支援を行うピアサポートの取組が、障害者のエンパ ワーメント等の観点から重要な意義があることを踏まえつつ、進められる必要。 また、障害者支援施設→重度障害者等に対する専門的・個別的支援の提供の推進、施設の有する知識・経験等の地域の事 業者への還元等による地域への貢献などを行いつつ、施設からの地域移行を進める必要がある。

(2)地域共生社会の実現→高齢、子ども、生活困窮等の分野の施策と連携し、相談支援や社会参加支援、居場所づくりといった支援を一体的に実施する重層的支援体制の整備が進められており、今回の見直しにおいても、誰もが社会の一員として尊厳と誇りをもって暮らすことができる地域共生社会を実現する地域づくりに資する取組を推進する。障害者総合支援法の基本理念でも掲げられているように、「地域社会において他の人々と共生することを妨げられ」ず、「障壁となるよう な社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去に資することを旨と」し、第208回通常国会において「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」が成立したことも踏まえ、障害者のコミュニケーションやアクセシビリ ティを円滑にしていくことが重要。その際、判断やコミュニケーションに支援が必要な障害者の場合は、その特性に配慮したコミュニ ケーション支援・意思決定支援に取り組む必要。意思疎通支援の担い手を数・質ともに確保できるよう長期的・段階的に検討 していく。 文化・芸術活動やスポーツ等の分野を含め、障害の有無に関わらず地域でいきいきと安心して 暮らすことができる社会を目指し、地域住民の障害理解の促進にも取り組む必要がある。

(3) 医療と福祉の連携の推進→本人の希望に応じた暮らしを実現する観点から、福祉と医療の両面からの支援・ マネジメントが重要。障害者の高齢化や障害の重度化、医療的ケア児や医療的ケアが必要な障害者、精神障害者、難病患者など への支援の必要性を踏まえ、多様な障害特性にも配慮しつつ、保健・医療、福祉及びその他の施策の連携を推進することが必要である。このため、障害福祉サービスの利用や計画相談支援をはじめとする相談支援など、地域生活や就労等の様々な場面において医療と連携した支援が適切な形で行われることが重要、その連携の在り方について、引き続き検討が必要である。
(4) 精神障害者の地域生活に向けた包括的な支援→精神障害の有無や程度にかかわらず、地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるよう、医療、障害福祉・ 介護、住まい、就労等の社会参加、地域の助け合い、教育・普及啓発が包括的に確保された「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築をさらに推進する方策を引き続き検討する必要がある。

2.社会の変化等に伴う障害児・障害者のニーズへのきめ細かな対応
(1)障害児に対する専門的で質の高い支援体制の構築
→障害児に対する支援⇒早期発見・早期支援を重視して進めることが重要。 発達障害の認知の広がりや女性の 就業率の上昇に伴う預かりニーズの増加により、児童発達支援や放課後等デイサービスのサービス量が大きく拡大している一方で、質の確保が重要な課題、支援の質の向上を図り、相談対応を含めた地域の支援体制を整える必要がある。 地域共生社会の実現・推進の観点から、年少期からのインクルージョンを推進し、障害の有無に関わらず、様々な遊び等を通じて 共に過ごし、それぞれの子どもが互いに学び合う経験を持てるようにしていく必要がある。
・障害のある子どもも、成長した後は、大人として個を尊重され、成人に相応しい環境の中で過ごすことができることが必要。 障害児入所施設に入所した児童が18歳以上となっても障害児入所施設に留まっている、いわゆる「過齢児」の課題については、児者それ ぞれに相応しい環境が確保されるよう、取組を一層進めるため、新たな移行調整の枠組みを構築していく必要がある。こうした障害児支援を検討するに際しては、障害のある子どもの最善の利益の保障を第一にしながら、家族支援の視点を大切にすること、また、教育と福祉の連携に留意しながら進められることが重要である。この基本的な考え方に沿って、障害児支援に関する論点→対応する児童福祉法改正法案を、第208回通常国会に提出した。また、こども家庭庁の創設が国会で議論されている、障害者施策とも整合性を図り、関係省庁が緊密に連携した障害児施策 の推進に取り組む必要がある。

(2) 障害者の多様なニーズに応じた就労の促進→障害者の就労とその支援は着実に進展しているものの、利用者や働き方の多様化等、障害者の就労を取り巻く環境も変化している。 こうした変化や課題に対応するとともに、福祉から一般就労へつなげることも含めてさらに障害者の就労を支援するため、雇用施策と福祉 施策の一層の連携強化を図りながら、障害や病気があっても本人が希望を叶え、力を発揮して活躍できる働きやすい社会を実現していく。 障害者の希望や能力に沿った就労を支援するためには、本人と協同して、就労ニーズや能力・適性とともに、就労するに当たって必要 な支援や配慮を整理し、本人の可能性を狭めることなく、個々の状況に応じた適切な支援の提供につなげる必要がある。

3.持続可能で質の高い障害福祉サービス等の実現 →障害福祉サービス等の利用者が多様化するとともに、障害福祉サービス等を提供する事業者が増加する中で、利用者の個々のニーズ に応じた良質なサービスを提供するためには、事業者が提供する障害福祉サービス等の質の確保・向上を図っていくことが重要。 サービスの質の確保・向上に向けて、地域のニーズをより踏まえた事業所の指定の仕組みの見直しやサービスの質の適切な評価の 在り方に関する検討、障害福祉分野におけるデータ基盤の整備、実地指導・監査の強化等についても、取組を推進する必要がある。 障害福祉人材の確保・育成に向けて、処遇改善や仕事の魅力発信などの取組をより一層進める必要があるほか、様々な障害保健福祉分野のサービスが整えられていく中で、サービス提供事業者にとっても事務・手続き等の負担感が少なく、わかりやすい制度の在り方 を検討する必要がある。

《3.障害者の就労支援について》
○論点
→障害者がより働きやすい社会の実現に向けて、障害者の希望や能力に沿った就労の機会を提供していく ための支援を推進する観点から検討してはどうか。
1 就労を希望する障害者への就労アセスメントの手法を活用した支援の制度化
○議論を踏まえた方針(案)↓
(基本的な考え方)
→就労を希望する障害者が、本人の強みや課題、職場における合理的配慮に関する事項等を整理する機会を得ることで、⇒就労アセスメントの結果を踏まえて、就労先や働き方をより適切に検討・選択できる。就労開始後は、本人の特性を踏まえた就労支援が受けやすくなり、その結果、知識や能力の発揮・向上につながる。就労開始後の就労ニーズや能力等の変化を客観的に知るため、就労アセスメントの機会を設けることにより、就労先や働き方について改めて検討・選択ができる。 ことを目指すべき。具体的には、就労アセスメントの手法を活用して整理した情報に係る書面の作成・提供、関係機関(ハローワーク等の雇用支援機関、 計画相談支援事業所、教育や医療などの関係機関等)との意見交換等を行うことにより、障害者本人が一般就労や就労系障害福祉 サービス事業所などを自ら選択することや、就労開始後の配慮事項の整理等を通じて本人の能力や適性、地域社会や地域の事業所の 状況に合った選択ができることを目指して、必要な支援を行う新たなサービス(就労選択支援(仮称))を創設すべきである。 市町村が就労系障害福祉サービスの支給要否決定を行う際の勘案事項の1つとして、就労アセスメントの手法を活用して整理し た情報に係る書面を新たに位置付けることを検討。新たなサービスの創設にあたっては、人材の質及び量の確保を着実に行う必要があるため、実施までに十分な準備期間を確保すべき。必要性が高い者の利用を促進するにあたっては、新たなサービスの支援体制の整備状況を踏まえつつ、段階的な実施を 検討すべきである。

(就労アセスメントの手法を活用した新たなサービスの対象者)→就労系障害福祉サービスを利用する意向のある(就労系障害福祉サービスを利用しており、支給決定の更新の意向がある場合を含む)障害者を対象とし、年齢や障害種別等にかかわりなく、就労アセスメントの手法を活用した支援を希望する障害者が利用できることと すべき。 その上で、以下の者については、就労先や働き方を選択するに当たって新たなサービスの必要性が高いと考えられることから、新たなサービスを就労開始時に利用することについて、支援体制の整備の状況を踏まえつつ、以下の順で段階的な促進を検討すべき。 @ 新たに就労継続支援B型を利用する意向の者 A 新たに就労継続支援A型を利用する意向の者及び標準利用期間を超えて就労移行支援を更新する意向の者。また、就労開始前に新たなサービスを利用することを原則としつつ、制度の円滑な実施を図る観点から、⇒新たにB型を利用する意向の者⇒現行の取組を参考に就労経験のない者を中心に新たなサービスの利用を促進すること。新たにA型を利用する意向の者⇒一定の例外的な場合(例えば、A型利用開始後も一般就労に向けた就職活動を継続する 場合)にはA型の利用開始後の一定期間のうち(例:半年や1年以内など)に就労アセスメントの手法を活用した支援を利用することも可能とすること。特別支援学校の生徒⇒卒業後の円滑な就労の開始に支障が生じないよう、在学中に新たなサービスを利用することを基本とした上で、現行の取組を参考に、特別支援学校による進路指導等において把握・整理される情報の活用や実施場所等について地域の 状況に応じた対応も可能とすること。 同様のアセスメントが実施されている場合、重複しない範囲で支援すること。本人の事情(障害特性や病状等)その他の合理的な事情(経済的に困窮しており早期の就労収入の確保が必要等)により、新たなサービスの利用に困難を伴う場合を考慮すること について検討すべきである。

(就労アセスメントの手法を活用した新たなサービスの内容について)→就労に関する本人のニーズを相談等により把握するとともに、実際の作業場面等を活用し、相談場面等では把握しにくい、就労に必要な能力の整理を行うこと。必要な情報の整理がスムーズに行えるよう、必要な視点が網羅された項目立てに沿って整理が進められるツールを活用することや、 一般就労に向けた課題に留まらず、強みや合理的配慮を踏まえた状況なども含めて、本人と協同して状況を整理すること。支援の質と中立性の確保を図るため、地域の関係機関とケース会議(協議会の就労支援部会等の場やオンライン会議等の活用を含む)を開催すること等により、支援を通じて把握した情報や関係機関が有している情報(例えば、就労面以外の支援に関する情報や主 治医からの情報など)を相互に共有すること。就労に係る選択肢の幅を広げ、本人の的確な選択につながるよう、支援の実施前後において、地域における企業等での雇用事例や 就労支援に係る社会資源などに関する情報提供、助言・指導等を行うこと。支援後の本人の選択に応じて、計画相談支援事業所やハローワーク等の雇用支援機関との連携、連絡調整等を行い、支援を通じて 整理した情報がその後の就労支援において効果的に活用されるように取り組むこと とすべきである。 また、作業場面等を活用した情報の整理や関係機関とのケース会議等を含めた、新たなサービスの支援全体を実施する期間⇒実際の就労を開始するにあたって過度な負担とならないことを考慮する必要があることから、概ね2週間(最大でも2か月)程度としつつ、利用する障害者のニーズや状況に応じて、柔軟に取り扱うことを検討すべき。
(就労アセスメントの手法を活用した新たなサービスの実施主体等について)→地域における就労系障害福祉サービス事業所を含めた就労支援機関等の状況。地域における企業等の障害者雇用の状況 等について、適切に対象者へ情報提供できることを、実施主体に求めることを検討すべきである。また、適切かつ効果的な事業運営を確保するため⇒就労支援に関する一定の経験を有する人材の配置。相談や作業場面等を活用したアセスメントを行うことができる設備の確保。障害福祉サービス事業者等からの利益収受の禁止をはじめとした中立性の確保 等の観点から、地域における一定の支援体制の確保に留意しつつ検討すべきである。 さらに、新たなサービスを担う人材の養成や支援体制の整備⇒現在、就労アセスメントに携わっている支援機関や人材の活 用も図りながら、専門的なスキルに基づいた支援を行うことができるよう、既存の就労支援に関する研修等を活用するとともに、新たなサービスの実施に向けて、今後、国による独自の研修の構築等に向けた調査研究、地域の関係機関の連携による支援体制の整備やス キルアップに関する取組のモデル的な実施を進めることが必要である。

(就労アセスメントの手法を活用した新たなサービスを含めた就労支援に関する手続き等について)→新たなサービスの利用を経た上で、就労系障害福祉サービスの利用申請を行う際の支給決定(変更)に関する手続き⇒既に把握されている情報を活用する などして、本人の負担が軽減されるように取り扱うなどの工夫を検討する必要がある。 また、本人が円滑に就労を開始できるよう、 新たなサービスの実施主体は、就労面のアセスメント及び地域の企業等に関する情報の提供を通じて、障害者本人の選択を支援す る役割を担うものであること。 就労系以外の障害福祉サービスを併せて利用する者もいることなどを踏まえ、新たなサービスを含めたサービス等利用計画案の作成 から、就労系障害福祉サービスの支給決定後のモニタリング等までを含めた一連の流れに、計画相談支援事業所が利用者のた めのケアマネジメント全体を担う役割を果たすものであること を踏まえた上での連携の在り方として、新たなサービスにおいて本人と協同して作成するアセスメント結果等の情報を、その後の計画相 談支援においてサービス等利用計画案の作成にあたって踏まえることや、新たなサービスの実施主体からの助言等を参考にすることを 検討すべきである。
なお、新たなサービスを利用した時点で把握・整理された本人の状況は、その後に変化する可能性もあることを踏まえつつ、就労選択支援の利用を経て本人が利用する就労系障害福祉サービス事業所やハローワーク等の雇用支援機関において、新たなサービスの実施主体から共有された情報を活用するとともに、その後の本人の状況に応じて就労支援を進めること。 就労系障害福祉サービスを利用する場合には、本人に改めて新たなサービスを利用する意向があるか、計画相談支援事業所による定 期的なモニタリングにおいて留意すること。一般就労する場合には、企業等においても職場環境の整備や合理的配慮の提供を検討する際に、新たなサービスやその後の支援(産 業医や衛生管理者との連携を含む)を通じて得られた情報を活用すること が重要であることから、新たなサービスの創設の趣旨・目的や支援の内容について、新たなサービスの実施主体だけではなく、障害者の就労支援を担う者への幅広い周知を検討する必要がある。


○論点→障害者がより働きやすい社会の実現に向けて、障害者の希望や能力に沿った就労の機会を提供していく ための支援を推進する観点から検討してはどうか。
2 一般就労中の就労系障害福祉サービスの一時的な利用
○議論を踏まえた方針(案)↓
(基本的な考え方)
→障害者の希望する一般就労の実現を多様な手法で支援するため、企業等での働き始めに週10時間〜20時間未満程度から段階的に勤 務時間を増やしていく場合や休職から復職を目指す場合、就労系障害福祉サービスの一時的な利用を法令上可能とすることで、⇒通い慣れた就労系障害福祉サービス事業所でも引き続き就労することにより、生活リズムを維持したまま、段階的に勤務時間の増加 を図ることができる。企業等と就労系障害福祉サービス事業所が相互に情報共有して、時間をかけながら支援することにより、合理的配慮の内容等につ いて調整が受けやすくなるなど、その後の職場定着につながる。復職に必要な生活リズムを確立するとともに、生産活動等を通じて、体力や集中力の回復・向上、復職後の業務遂行に必要なスキル や対処方法の習得などに取り組むことができる。企業等における復職プロセスに沿って、主治医や産業医とも連携を図りながら対応することができ、円滑な職場復帰につながる といった効果をもたらすことや、支援の選択肢を広げて本人の一般就労への移行や復職を支援しやすくすることを目指すべき。具体的には、就労移行支援及び就労継続支援の対象者として、企業等での働き始めに週10時間〜20時間未満程度から段階的に勤務 時間を増やす者や、休職から復職を目指す場合に一時的なサービス利用による支援が必要な者を、現行の対象者に準ずるものとして法令上位置付けることとすべき。
・一方、中高齢の障害者が企業等を退職して福祉的就労へ移行する場合等⇒雇用主である企業等が責任を持って雇用を継続することが望ましいという指摘や、既存の雇用施策・福祉施策と役割が重なる部分があるため整理が必要であるという指摘があること なども踏まえ、一般就労中の就労系障害福祉サービスの利用に関して、引き続き、市町村による個別の必要性等の判断に基づくものと しつつ、現行の取扱いの中でより適切な運用を図るよう検討する必要がある。

(一般就労中の就労系障害福祉サービスの一時的な利用の期間について)→ 企業等での働き始めに週10時間〜20時間未満程度から段階的に勤務時間を増やしていく場合については、就労系障害福祉サービス の利用により、企業等で働く準備を進めた上で、勤務時間を増やす時期を目標として定めつつ、状況に応じて進めることが効果的と考え られる。このため、利用期間は原則3〜6か月以内、延長が必要な場合は合計1年までとした上で、一時的な利用の後において円滑に職 場定着が図られるように、個々の状況に応じて設定できる方向で検討すべき。休職から復職を目指す場合⇒現行の運用でも就労移行支援の標準利用期間(2年)のほかに、期間を制限する取扱いは行っていないことから、これを上限として、企業の定める休職期間の終了までの期間を利用期間とすることを検討すべき。

(適切な支援の実施が図られるための具体的な方策について)→企業等及び就労系障害福祉サービス事業所それぞれにおける支援が、一般就労への移行や復職といった目的に沿って適切に行われ ることを確保する観点から、⇒ 一般就労中の就労系障害福祉サービスの一時的な利用の必要性を検討するにあたって、考慮すべき事項や、関係機関からの助言 等の在り方について整理すること(一時的な利用の前や利用中にどのような支援を実施するのか等)。休職から復職を目指す場合⇒一時的な利用の必要性に関して医療と連携して判断すること。サービス等利用計画や個別支援計画において、支援の目標や内容を具体的に整理すること。企業等と就労系障害福祉サービス事業所が一時的な利用の期間中の支援内容等をあらかじめ共有すること。 企業等と就労系障害福祉サービス事業所が、支援内容や本人の状況の変化等を共有し、必要に応じて互いの支援内容の調整や関 係機関への相談を行うなどの連携をすること。 関係機関が効果的な助言等を行うために、支援内容や企業等と本人との雇用契約の内容など情報共有すること について検討するとともに、一時的な利用を行う者の利用形態も踏まえつつ、報酬上の取扱いを検討すべき。 また、今後、円滑な活用や関係者の連携を図るため、本人だけではなく、企業等や就労系障害福祉サービス事業所、医療を含めたその 他の関係機関に対して、具体的な連携方法などを含めたわかりやすい周知を行っていく。併せて、現在でも、個々の様々な事情などから、市町村による個別の必要性等の判断に基づいて、例外的に一般就労中の利用が認められているケースがあることも踏まえ て、引き続き、適切な運用を図る必要。
さらに、一般就労中の就労系障害福祉サービスの一時的な利用の不適切な活用を防ぐ観点から、⇒企業等及び就労系障害福祉サービス事業所それぞれにおいて、活用にあたって必要となる規程等の整備、その内容。本人にとって過重な負担にならないことを前提とした企業等での勤務とサービス利用の時間の組み合わせの考え方。他の既存のサービスや施策等による支援策との機能や役割の違いについての整理 等も重要であり、今後、具体的な仕組みを検討すべきである。


○議論→障害者がより働きやすい社会の実現に向けて、障害者の希望や能力に沿った就労の機会を提供していく ための支援を推進する観点から検討してはどうか。
3 障害者の就労を支えるための雇用・福祉施策の連携強化等に関する取組 (1) 障害者の就労支援に携わる人材の育成 (2) 企業等で雇用される障害者の定着支援の充実 (3) 地域の就労支援に関するネットワークの強化 (4) 就労継続支援A型の在り方や役割の整理 (5) 重度障害者等に対する職場や通勤等における支援
○議論を踏まえた方針(案)↓
(1)障害者の就労支援に携わる人材の育成
→基礎的研修⇒「雇用と福祉の分野横断的な基礎的知識・スキルを付与する研修の構築に関する作業部会」(令和3年9月〜12月)において、その実施にあたっての具体的な事項(カリキュラムのイメージや受講対象者、実施主体、実施手法等)に関する一定の整 理がなされていることを踏まえ、引き続き、両分野が連携して開始に向けた準備を進めていく必要がある。特に、受講を必須とする者に含まれている就労移行支援事業所の就労支援員、就労定着支援事業所の就労定着支援員及び障害者就業・生活支援センターの生活支援担当者⇒まずは確実な受講が図られるよう取り組むとともに、更なる専門性の向上を図るため、 職場適応援助者養成研修などの専門的な研修等の受講の促進について検討すべき。 また、基礎的研修の運用開始後の状況や限られた財源状況等も踏まえながら就労継続支援A型及びB型事業所を含む就労系障害福 祉サービス事業所の全ての支援員の受講を必須とすること等、今後、検討を進めていく必要がある。専門人材の高度化に向けた階層的な研修の確立⇒基礎的研修が新たに実施されることに伴う現行の研修の見直しなどにつ いて、福祉分野における人材が、それぞれの立場や役割に応じて必要な専門性を身につけて活躍することができるよう、今後、両分野が 連携して具体的に検討を進めていく必要がある。

(2)企業等で雇用される障害者の定着支援の充実→企業等で雇用される障害者の定着を図る観点から、⇒就労定着支援事業→最大3年間の支援期間内における就労定着を図るだけでなく、この事業による生活面の支援がなくて も一人の職業人として就労定着できる状態を目指して、本人や企業等と現状や方向性を確認しながら、本人が課題解決のスキルを 徐々に習得できるように、本人の主体的な取組を支える姿勢で支援するとともに、支援の状況を企業等に共有することを通じて、本人の 障害特性に応じた合理的配慮の検討など、企業等における雇用管理に役立つものとなるよう取り組むこと。就労定着支援事業の利用前後の期間等において定着に向けた支援を担う就労移行支援事業所等や障害者就業・生活支援センター 事業との役割の違いを踏まえて連携することや、現行の仕組みでは就労移行支援事業等が支援することとしている一般就労移行から の6か月間において、本人や地域の状況などを踏まえて、就労定着支援事業を活用すること などに関する方策について、就労定着支援事業の支援の実態について把握を進めた上で検討すべき。また、就労定着支援事業の提供体制の現状を踏まえ、就労移行支援事業等の障害福祉サービスを経て企業等に雇用された者が、就職後の定着に向けて地域において必要な支援を受けられる環境整備を図る観点から、就労定着支援事業の実施主体に、障害者就業・ 生活支援センター事業を行う者を加えることを検討すべき。
その検討にあたっては、地域の中で補助的な役割を果たすものとすることが適当であるため⇒既存の就労定着支援事業所の状況や今後の新設の見込み等の地域における実情やニーズを踏まえて連携を図ること。障害者就業・生活支援センター事業の実施により蓄積されているノウハウ等を十分に活用できるよう配慮すること。障害者就業・生活支援センター事業本体の運営に支障が生じることがないよう配慮すること などの観点に十分に留意して検討すべきである。
(3)地域の就労支援に関するネットワークの強化→障害者就業・生活支援センターについて、地域の実情に応じて、地域の就労支援機関に対するスーパーバイズ(個別の支援事例に対 する専門的見地からの助言及びそれを通じた支援の質の向上に係る援助)や困難事例の対応といった基幹型の機能も担う地域の拠点 としての体制の整備を進めていく。まずは、先進事例の収集やモデル的な取り組みを通じて、地域の就労支援機関からの具体的なニーズや効果的な手法について整理を進め、今後、各地域における支援の質の向上を図るために必要な取組が実施できるよう、具体的な方策を検討する必要がある。

(4)就労継続支援A型の在り方や役割の整理→これまでの経緯や、A型の利用者・事業所や支援内容が多様であることを踏まえれば、その在り方や役割としては、障害者の稼得能力だけでなく、障害特性等を含め、一般就労が難しい障害者に就労や訓練の機会を適切に確保するための 事業であることが求められるもの。今後、さらに実態の把握を進めながら、一般就労への移行も含めた利用者のニーズに沿った支援の提供や十分な生産活動の実施が図られるように、具体的な方策を講じていくことを検討すべき。その際、A型における支援の質の向上や生産活動の活性化を促す観点から、⇒スコア方式の導入後の状況を検証・分析した上で、より充実した支援や生産活動に取り組む事業所を的確に評価できるようにするた めに、どのような評価項目や評価点を設定することが考えられるか。経営改善計画の作成等の措置によっても早期の改善にはつながっていない事業所があることを踏まえて、特に、複数年にわたって経 営改善計画の対象となっている事業所に対して、どのような実効性のある対応を図ることが考えられるか 等について検討すべきである。

(5)重度障害者等に対する職場や通勤等における支援→「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」⇒令和2年度においては2市で8人、令和3年度(令和4年1月 1日時点)においては11市区町村で27人が利用しているが、使いづらさや実施する自治体の少なさが課題となっている。このため、事業 の利用が進まない背景の検証や利用事例に関する情報収集などを含めて、その実施状況を踏まえながら、特別事業の周知や必要な運用改善を行うことにより、重度障害者等に対する職場や通勤等における支援を推進していく必要がある。

《参考資料》→総括的に言えば新たなサービスに関わる本人中心の支援策提言。
○就労支援施策の対象となる障害者数/地域の流れ→障害者総数約965万人中、18歳〜64歳の在宅者数約377万人 (内訳:身体436.0万人、知的 109.4万人、精神419.3万人)⇒一般就労への移行の現状 参照。
○障害者総合支援法における就労系障害福祉サービス
○就労を希望する障害者の就労・障害福祉サービスの選択に係る支援の創設 〜専門的なアセスメントと本人中心の就労選択の支援(就労選択支援 [仮称])〜→今後の方向性⇒新たなサービスによる支援 を法令上位置づ ける→アセスメントに基づく利用者の選択。
○新たなサービス(就労選択支援[仮称])創設後の利用の流れ(概要)→イメージ(新たなサービスを就労開始時に利用する場合)  各プロセスの実施主体  参照。
○一般就労中の企業における支援と就労系障害福祉サービスの一時的な利用による 支援の連携による効果@→とくに精神障害の場合、一般就労への円滑な移行のための就労系障害福祉サービスの「一時 的な利用」⇒「6ヶ月間の 定着支援」⇒「就労定着支援」 「一時利用 により期待される効果」参照。
○一般就労中の企業における支援と就労系障害福祉サービスの一時的な利用による 支援の連携による効果A→休職からの円滑な復職のための就労系障害福祉サービスの一時的な利用   一時利用 により期待される効果  参照。
○就労系障害福祉サービスの利用段階から 一般就労への移行、定着段階における支援策のイメージ

次回は新たに「第14回 社会保障審議会「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」(資料)」からです。

120回労働政策審議会障害者雇用分科会(資料) [2022年06月21日(Tue)]
第120回労働政策審議会障害者雇用分科会(資料)(令和4年6月1日)
《議題》(1)意見書(案)について (2)その他
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26002.html
◎資料1−1 意見書(案)
今後の障害者雇用施策の充実強化について(案)
(労働政策審議会障害者雇用対策分科会 意見書)
第1 はじめに

○ 近年、障害者の就労意欲が高まるとともに、積極的に障害者雇用に取り組む民間企業が 増加するなど、障害者雇用は着実に進展している。
○ 他方で、障害者雇用率(「雇用率」)の達成が目的となり質の確保が不十分となっている側面がある、一般就労の可能性がある障害者を適切な支援につなげるため には雇用施策と福祉施策の連携強化を図る必要がある、これまで就業が想定されにくかっ た重度障害者や多様な障害者の就業ニーズが高まっている等の課題が生じている。
○ 特に、雇用施策と福祉施策の連携強化→令和2年 11 月から約7カ月にわたって開催された「障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会」によって幅広く議論され、その議論の成果が令和3年6月に「障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会報告書」(「検討会報告書」)としてとりまとめられた。加えて、障害福祉施策における障害者の就労支援に関する制度等の検討についても、社会保障審議会障害者部会における議論の状況が当分科会で共有された。
○ また、平成 31 年2月 13 日付け労働政策審議会障害者雇用分科会意見書(「分科会意見書」)を踏まえた障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律(令和元年法律第 36 号。「令和元年改正法」という。)では、国及び地方公共団体における障害者雇用の促進に係る措置が改正の中心となっており、分科会意見書において、大企業及び就労継続支援A型事業所(「A型」)に対する障害者雇用調整金(「調整金」)の取扱い、除外率制度に関する対応等、民間部門の課題につ いて引き続き検討することが求められている。 ○ このような状況や令和元年改正法の施行後3年を目途とした検討規定を踏まえ、検討会 報告書や分科会意見書において引き続き検討すべきとされた事項をはじめ、障害者雇用施 策全般について議論を進めてきたところであり、以下のとおり、今後の障害者雇用施策の 充実強化について結論を得たものである。

第2 雇用の質の向上に向けた事業主の責務の明確化
○ 障害者雇用→
例えば、民間企業の実雇用率は 10 年連続で、実雇用者数は18年連続で過去最高を更新するなど、着実に進展しているが、他方で、障害者が能力を発揮して活躍することよりも、雇用率の達成に向け障害者雇用の数の確保を優先するような動きもみられる。今後は、障害者雇用の数に加えて、障害者が個々に持てる能力を発揮して活き活きと活躍し、その雇用の安定に繋がるよう、障害者本人、事業主、関係機関が協力して障害者雇用の質を向上させることが求められる。
○ 障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和 35 年法律第 123 号。「法」)において、事業主は、雇用する障害者に対して、その有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場の提供や適正な雇用管理に努めなければならないとされている。
○ 法に掲げられたこうした責務を事業主が真摯に果たしていくためには、事業主に対して、 障害者が持てる能力を十分に発揮できる雇用の場を提供するとともに、雇用後もその活躍 を促進するため、キャリア形成の支援を含めて、適正な雇用管理をより一層積極的に行う ことを求めることが適当である。
○ キャリア形成の支援に際しては、事業主が中途障害者を含め、資格取得の促進や職業訓 練、研修機会を設ける等障害者の能力開発を行うことが重要であり、こうした取組は障害 者が働き続ける上でモチベーションやエンゲージメントの向上に資するという意見があ った。あわせて、事業主は合理的配慮の提供はもとより、持てる能力を発揮できるよう障害特性に応じた業務の選定や再構築を行うとともに、これについて採用時のみならず、雇 用継続期間中を通じて適宜見直すことが望ましいという意見があった。
○ また、行政による、事業主に対する支援として、ハローワークにおいてはアセスメント やマッチング支援を強化することが適当である。
○ 加えて、障害者雇用の質を高める観点からは、障害者の定着支援を図ることが重要であ り、助成金による支援の充実を含め、職場適応援助者(「ジョブコーチ」)の活用を促進することが適当である。この点、障害種別に対応できるジョブコーチの育成が重要という意見があった。
○ なお、雇用の質の向上を図っていくに当たっては、将来的にはこれに向けた事業主の取 組を評価する手法を検討することが考えられるという意見があった。

第3 障害者雇用と障害者福祉の連携の促進
○ 検討会報告書
→雇用施策と福祉施策の連携強化に関する対応策の具体的な検討の方向性として、雇用・福祉それぞれのサービス体系におけるアセスメントの仕組みの構築・機能強化、障害者就労を支える人材の育成・確保、障害者の就労支援体系の整理等の必要性が指摘されている。これを踏まえ、障害者雇用と障害者福祉の連携を促進するため、以下のとおり措置することが必要である。
1 アセスメントの機能強化
○ アセスメント→検討会報告書において、障害者の就労能力や一般就労の可能性が十分に把握されておらず、適切なサービス等に繋げられていない場合もあるのではないかといった指摘がされており、ハローワークについては特にアセスメントの機能強化の必要性が指摘されている。
○ これらを踏まえ、当分科会において議論を行い、以下の対応が適当であるとされた。
・ ハローワークにおいては現在でも一定のアセスメントが行われているものの、実施の 必要性の判断等が個々の担当者に任せられている側面があることから、アセスメントの必要性を判断する考え方や実施方法、地域障害者職業センターや障害者就業・生活支援センターとの連携が必要な場合の考え方等について改めて整理する。
・ ハローワークが職業指導や職業紹介を行う場合や、障害福祉サービスも含めた関係機 関への誘導等の支援を行う場合に、アセスメントの実施を強化する。また、就職後も必要に応じて適時アセスメントを実施し、定着やキャリアアップに向けた障害者と事業主双方への支援に活用する。
・ ハローワークは、就労アセスメントの手法を活用した新たな障害福祉サービスとして 検討されている支援を利用した上で、一般就労を希望する障害者については、その結果も踏まえて支援を行う。
・ 地域障害者職業センターにおける知見が、就労に係る障害福祉サービスにおいても必 要に応じて活かされるようにするなど、十分に雇用と福祉の連携を図る。
○ また、ハローワークにおけるアセスメントの機能強化に当たっては、ハローワーク職員 の専門性の向上が重要であり、人材育成を図っていくことが適当である。
○ 加えて、障害者の企業等での就労状況に係るアセスメント結果について、必要に応じて、 ハローワークにフィードバックしてもらうことで、ハローワークでの障害者と企業等との マッチングの精度を高めることが適当である。 ※「アセスメント」:本人の就労能力や適性の客観的な評価を行うとともに、本人と協同して就労に関するニーズ、強みや職業上の課題を明らかにし、ニーズを実現するために必要な支援や配慮を整理すること

2 障害者就労を支える人材の育成・確保
○ 障害者就労を支える人材の育成・確保
→検討会報告書において、福祉と雇用の切れ目のない支援を可能とするために、障害者本人と企業双方に対して必要な支援ができる専門人材の育成・確保を目指し、雇用・福祉の分野横断的な基礎的な知識・スキルを付与する研修(「基礎的研修」)を確立することが必要であるとの方向性が示された上で、令和3年9月から同年 12 月まで開催された「雇用と福祉の分野横断的な基礎的知識・スキルを付与する研修の構築に関する作業部会」で、具体的な検討がなされたところである
○ これらを踏まえ、当分科会において議論を行い、以下の対応が適当であるとされた。
・ 基礎的研修は、雇用・福祉分野の横断的な知識等について一定レベルの習得を目指すこととし、研修受講者の仕上がり像は、障害者本人や企業に対して基本的な支援を開始できるレベルの人材とする。
・ 上述の目的を踏まえ、基礎的研修の実施期間は3日以内(概ね 900 分以内)とし、一 部にオンラインの活用も可能とする。
・ 基礎的研修の受講を必須とすべき者は、当面、就労移行支援事業所の就労支援員、就労定着支援事業の就労定着支援員、障害者就業・生活支援センターの就業支援担当者・生活支援担当者の者とする。
・ 基礎的研修は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(「高障求機構」)が実施する。その上で、民間機関も活用していくこととするが、質の確保の観点から、まずは、厚生労働大臣指定の職場適応援助者養成研修実施機関とする。
○ また、基礎的研修→効果検証をしっかり行った上で効率的な運用に努めるとともに、研修内容を適時適切に見直していくことが適当である。
○ なお、基礎的研修→受講を必須とすべき者だけでなく、A型及び就労継続支援B型事業所の支援員や、就労アセスメントの手法を活用した新たな障害福祉サービスとして検討されている支援の担当者の受講機会が確保されることが望ましいという意見があった。加えて、受講を必須とする者については基礎的研修の運用状況等を踏まえ、その拡大の可能性についても検討することが望ましいという意見があった。

3 地域の就労支援機関の役割分担
○ 地域の就労支援機関の役割分担
→検討会報告書において、
・ 地域障害者職業センターは、地域の支援力向上を図るため、各支援機関に対する職業リハビリテーションに関する助言・援助等に積極的に取り組んでいくことが必要。
・ 障害者就業・生活支援センターは基幹型の機能を果たす機関として、地域の支援ネットワークの強化、充実を図ることが必要。 との方向性が示されたところである。
○ これらを踏まえ、当分科会において議論を行い、以下の対応が適当であるとされた。
・ 障害者職業総合センターは、職業リハビリテーションの中核機関としての機能を生か し、地域障害者職業センターと連携して、基礎的研修を実施するとともに、就労支援機関等に対する助言・援助を強化する。
・ 地域障害者職業センターは、基礎的研修を実施するとともに、地域の就労支援機関等に対して、個別に計画的・体系的な人材育成を提案するなど、これまで以上に地域において障害者の職業生活における自立を支援する人材の育成に努め、地域の就労支援の基盤整備を図る。
・ 障害者就業・生活支援センターは、地域の実情に応じて、地域の支援機関に対するスーパーバイズ(個別の支援事例に対する専門的見地からの助言及びそれを通じた支援の質の向上に係る援助)や困難事例に対応するという基幹型の機能を果たす機関として位置付け直し、地域障害者職業センターとの連携を強化する。

第4 多様な障害者の就労ニーズを踏まえた働き方の推進
○ 近年、精神障害者である労働者が著しく増加するとともに、これまで就業が想定されに くかった重度障害者などの就業ニーズが高まっており、多様な障害者の就労ニーズを踏ま えた働き方を推進するため、以下のとおり措置する必要がある。

1 障害者雇用率制度における障害者の範囲
(1) 週所定労働時間 10 時間以上 20 時間未満の障害者の取扱い

○ 現行の障害者雇用率制度(「雇用率制度」)や障害者雇用納付金制度(「納付金制度」)においては、週所定労働時間(「週」)20 時間未満での雇用は対象とされていない。これは、通常の労働者の週の半分に満たない時間での労働は、それにより職業生活において自立しているとは言えないという考え方に基づくもの。
○ 他方で、週 20 時間未満の労働者→いずれの障害種別でも一定数存在しており、特に精神障害者においてその割合が増加傾向にある。また、週 20 時間未満での雇用を希望する新規求職者についても、いずれの障害種別でも一定数存在しており、特に近年雇用者数の伸びが著しい精神障害者で多くなっている。加えて、症状の悪化等による一時不調等により障害者が週 20 時間以上働けなくなったとしても、障害者本人の希望等を踏まえ、雇用を継続していくことが望ましい。
○ こうしたことから、週 20 時間未満での雇用を希望する障害者や、週 20 時間以上での雇用が困難である障害者について、その雇用機会を確保することが重要であり、特にニーズが多い精神障害者とその雇用に多くの負担を伴うことから従来から雇用率制度の適用上 配慮している重度身体障害者及び重度知的障害者について、雇用率制度において特例を設 けることが適当である。
○ 具体的には、週 10 時間以上 20 時間未満の精神障害者、重度身体障害者、重度知的障害者は、その障害によって特に短い労働時間以外での労働が困難な状態にあると認められるため特例的な取扱いとして、その雇用を実雇用率の算定対象に加えることが適当である。
なお、A型の利用者は、週 20 時間未満であるか否かにかかわらず、利用者の希望に応じた労働時間や労働日数等での就労が可能となるよう支援を行うものであり、特例的な実雇 用率算定により週 20 時間未満の障害者の雇用の機会を確保する必要性が高くないため、 本取扱いを適用しないことが適当。
○ 算定に当たっては、1人をもって 0.5 カウントすることとし、また、週 20 時間以上の雇用への移行に要する期間には個人差があるとともに、障害特性から、中長期にわたり週 20 時間以上の雇用に移行できない者も一定程度存在するため、本取扱いは一律に適用期限を区切ることはしないことが適当である。
○ ただし、職業的自立を促進する観点から、雇用義務の対象は週 20 時間以上の障害者と しているが、今般、この取扱いは変更せず、新たに実雇用率の算定の対象として加える週20 時間未満の障害者は雇用義務の対象としない、すなわち、雇用率の算定式には週 20 時 間未満の障害者を含めないことが適当である。
○ そのため、今般の特例措置の趣旨や、あくまで職業的自立を促進する観点からは週 20時間以上の雇用の実現を目指すことが望ましいこと等について、障害者本人、事業主、関係機関に対して周知を図り、それぞれがその方向で努力することが適当である。さらに、安易に週 20 時間未満の雇用が増えることのないように、障害者本人が希望していること を前提として、ハローワークのアセスメントや医師等専門家の意見も踏まえた取扱いとす ることが適当。また、週 20 時間未満の雇用に留め置かれないよう、障害者本人が労働時間の延長を希 望する場合、事業主に対しその有する能力に応じた労働時間の延長について努力義務を課 すことが適当。さらに、ハローワークが障害者本人からの相談や定着支援等を通じて労働時間の延長に向けて対応が必要なケースを把握した場合には、事業所訪問を通じて職場環境・就業状況等を確認し、必要に応じて関係機関と連携しつつ助言・支援や雇用管理指導を行うことが適当である。
○ なお、週 20 時間以上の就業が困難な者等を障害者雇用納付金(「納付金」)、調整金の算定の対象とすることにより、当該者に対する就業機会の拡大を直接的に図るこ とが可能となることから、特例給付金は廃止することが適当である。

(2) 障害者手帳を所持していない精神障害者、発達障害者及び難病患者の取扱い
○ 雇用義務制度は、雇用の場を確保することが極めて困難な者に対し、社会連帯の理念の 下で、全ての事業主に雇用義務を課すものである。したがって、事業主が社会的な責任を果たすための前提として、@事業主がその対象者を雇用できる一定の環境が整っていること、A対象範囲は明確であり、公正、一律性が担保されることが必要であり、現在、雇用率制度における対象障害者の範囲は身体障害者、知的障害者、精神障害者とし、その取扱いに当たっては、原則、障害者手帳(「手帳」)の所持者に限っている。
○ 手帳を所持しない精神障害者⇒当分科会では、就労促進等の観点から自立支援 医療受給者証の所持者等は雇用率制度の対象にすべきという意見がある一方で、自立支援 医療受給者証はその目的が医療費の自己負担額を軽減することであり手帳と同一に取り 扱うべきではない、自立支援医療受給者証の提出を事業主に提出することに抵抗を感じる 障害者もいるのではないかという意見があった。また、自立支援医療受給者証所持者のう ち「重度かつ継続」を雇用率の対象にしてはどうかという意見や、個別の就労困難性を判断することが重要という意見等、様々な意見があった。
○ 発達障害者→比較的早期に診断を受け、手帳を取得する割合も高く、就職に当たっても可能な限り手帳の取得を促す支援が重要という意見があった。他方で、それまでに診断等に繋がらず、障害者本人の障害認識が無いまま就職後に職場での具体的な状況から困難が生じ、障害を理解・認知する事例もある。こうした場合であっても、障害者本人の特性により就労場面において生じる課題は個別性が高い一方で、適切なマッチング、雇用管理等により、活躍できる事例もみられる。
○ 難病患者→疲れやすさ、倦怠感など全身的な体調の崩れやすさといった一定の共通する点もある一方で、その症状の有無や程度は、疾病により個別性が高く、さらには治療の状況により個人差も大きい。他方で、適切なマッチング、雇用管理等により、活躍できる事例もみられる。
○ こうしたことから、現状において、手帳を所持していない発達障害者及び難病患者につ いて、個人の状況を踏まえることなく、一律に就労困難性があると認めることは難しい。
○ これらを踏まえ、手帳を所持していない精神障害者、発達障害者及び難病患者について、 雇用率制度における対象障害者の範囲に含めることをただちに行うのではなく、手帳を所 持していない者に係る就労の困難性の判断の在り方にかかわる調査・研究等を進め、それ らの結果等も参考に、引き続きその取扱いを検討することが適当である。 なお、精神障害者保健福祉手帳は有効期限があることから、手帳更新ができなかった場 合であっても就業上の困難性が継続しているケースもあり、その場合に一定の期間→引き続き雇用率制度の対象とすることについて検討課題とすることが望ましいという意見があった。
○ また、個人の特性に合わせた配慮の下活躍できるよう、ハローワークにおける専門的支援等、就労支援の強化を図ることが適当である。

(3) 就労継続支援A型事業所の利用者の取扱い
○ A型の利用者→当該事業が障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成 17 年法律第 123 号)に基づく障害福祉サービスに位置付けられている一方で、雇用労働者であるため、雇用率制度の対象になっている。
○ 当分科会では、障害福祉サービスに位置付けられており、障害福祉サービス等報酬が支払われているA型→事業主が社会連帯の理念に基づき、障害者に雇用の場を提供する共同の責務を有していることを前提とした雇用率制度上、一般企業と同列に扱うべきではなく、その利用者は雇用率・納付金・調整金等の対象から外すべきという意見が多数あった。他方で、こうした見直しは、A型の利用者に与える影響を考慮して慎重に議論するべきという意見や加齢により企業での就業が困難になった者の受け皿として社会的貢献度は大きいことも考慮すべきであるという意見もあった。
○ また、A型→雇用・福祉施策の連携強化を進めて行く中において、その在り方や役割について、利用者や支援内容の実態等を踏まえて整理を進めることとしており、現在、その実態把握を行っているところ。
○ こうしたことから、雇用率制度におけるA型の利用者の扱い→実態把握に基づきA型が障害福祉制度においてどのように整理されるかも踏まえた上で、雇用率制度・納付金制度からの除外の可能性も視野に入れ、一方で様々な影響も考慮しつつ引き続き検討していくことが適当。この点、A型の実態把握等の状況は当分科会においても定期的に共有されることが望ましいという意見や、見直しに向けて検討していくべきという意見があった。

2 精神障害者に対する障害者雇用率等の算定
(1) 精神障害者の算定特例の延長

○ 平成 30 年4月から精神障害者の雇用が義務化されるとともに、雇用率が引き上げられたことに伴い、精神障害者の職場定着を進める観点から、精神障害者である短時間労働者 の実雇用率の算定に関して、令和4年度末まで短時間労働者を1カウントとする特例措置を設けている。 精神障害者の職場定着率は週 20 時間以上 30 時間未満勤務の場合が相対的に高くなっており、その職場定着を進める観点から、精神障害者である短時間労働者を1カウントとする特例を継続することが適当。
○ また、精神障害者の個別性の高さを踏まえると、週 30 時間以上の雇用への移行に要す
る期間には個人差があるとともに、障害特性から、中長期にわたり週 30 時間以上の雇用に移行できない者も一定程度存在するため、特例を継続するに当たっては、一律に適用期間を区切ることはせず、新規雇入れ又は手帳取得から3年間という要件を外すことが適当である。 ただし、週 30 時間以上の勤務を希望する障害者が短時間勤務のまま留め置かれることがないよう、ハローワークが障害者本人からの相談や定着支援等を通じて労働時間の延長に向けて対応が必要なケースを把握した場合には、ハローワークが事業所訪問を通じて職場環境・就業状況等を確認し、必要に応じて関係機関と連携しつつ助言・支援や雇用管理指導を行うことが適当。 なお、特例の期間については、当分の間、特例を継続することとし、今後、(2)のとおり、精神障害者の重度に係る検討について一定の整理がされた際に改めて検討すること が適当である。

(2) 精神障害者に係る重度の取扱い
○ 精神障害者は身体・知的障害者と異なり「重度」といった取扱いがない。精神障害者の就労困難性と精神障害者保健福祉手帳の等級は必ずしも関係するものではないという意見等様々な意見があることを踏まえると、精神障害者の「重度」という取 扱いについては、ただちにこれを設けるのではなく、調査・研究等を進め、それらの結果等も参考に、引き続き検討することが適当である。

3 長期継続雇用の評価
○ 社会全体が高齢化していく中で、中高年齢者等、長期継続雇用されている障害者のキャリア形成を支援し、その活躍を推進していくことが重要。
○ 当分科会では、中高年齢者等、長期継続雇用に対する事業主の取組について雇用率制度における評価を求める意見がある一方で、加齢による影響は職種・職場等の違いを含め個人で異なるものであり、事業主が適切な配慮をすれば、年齢に関係なく活躍できる事例も 多くみられることから、年齢や勤続年数で一律に判断することは適当ではないという意見があった。また、障害者権利条約を批准している現在において、ダブルカウントという措置を継続すべきかどうかについて議論が必要という意見もあった。
○ これらを踏まえ、中高年齢者等、長期継続雇用されている障害者について、一律に就労困難性が高いとみなして雇用率制度で評価することは適当ではない。この点、個々の企業 による長期継続雇用に向けた取組を客観的に評価し、雇用率制度上評価する方策について引き続き検討することが望ましいという意見があった。
○ 他方で、中高年齢者であって継続して雇用されている障害者の活躍や雇用の継続のため、個々の障害者の状況に応じて事業主が実施する取組を支援することが適当。また、企業からは中高年齢者である障害者を継続して雇用する中で生じる課題について相談できる窓口を求める声もあることから、障害者就業・生活支援センターについて、関係機関との連携を強化し、地域の実情や個々の事業主の状況に応じて中高年齢者である障害者を継続して雇用するための課題に関する相談機能を強化することが適当である。

第5 障害者雇用の質の向上の推進
○ 納付金制度は、障害者の雇用に伴う事業主間の経済的負担を調整するとともに、障害者の雇用の促進・継続を図るために設けられている。この目的のためには、納付金制度の財政の安定的運営を図り、事業主が障害者雇用に積極的に取り組むことができるよう、その 具体的取組を支援することが重要。
○ こうした中、民間企業における障害者雇用が大きく進展した結果、今後の納付金制度の財政の見通しが厳しくなっている。さらに、現状、障害者雇用の数を評価する調整金や報奨金の支出が大半を占め、障害者雇用の質の向上に向けた事業主の取組を評価する納付金助成金(「助成金」)の支出が少なくなっているなど、事業主に対する助成・ 援助が不十分になっている。 今後、障害者雇用について、その質の向上に重点を置いて推進していくためには、納付金制度の財政の安定的な運営の上に立って、障害者を雇い入れる事業主の具体的な取組に対して支援を充実させるなど、限られた財源を効果的に運用することが重要であり、以下のとおり措置する必要がある。

1 障害者雇用調整金、報奨金による対応
○ 限られた財源を事業主への支援に充てていくため、納付金関係業務を行う高障求機構の 業務経費について事務の効率化等により削減するとともに、助成金について活用状況等を踏まえ見直すなど支出の効率化を図ることを前提に、調整金・報奨金について、一定の場合の減額等を行うことが適当である。 減額等の対応に当たっては、人数基準や減額率等について様々意見があったところであるが、具体的には、調整金について、その支給状況や一定の場合の減額等により見込まれる財政削減の効果等を踏まえ、支給対象人数が 10 人を超える場合には、当該超過人数分に対しては支給額を 50%にすることが適当である。
○ 報奨金→調整金受給企業と報奨金受給企業との実態の違いや、報奨金は障害者雇用を奨励等することを目的に納付金の納付義務のない事業主に対して支給するものであることを踏まえ、支援対象人数が 35 人を超える場合には、当該超過人数分に対しては支給しないことが適当。
○ 今回の措置で調整金が減額される企業においても調整金を障害者の定着支援や訓練等に活用している現状がある、これまで障害者雇用に積極的に取り組んできた企業ほど調整 金が減額される対象になるという意見もあったところであり、上記の措置による財政削減の効果については、こうした個々の事業主の取組状況やニーズ等をヒアリング等により把 握した上で、これらを踏まえた支援策の強化に積極的に充てていく必要がある。
○ また、調整金・報奨金の減額等に当たっては、対象となる事業主が余裕を持って対応できるよう積極的に周知を行うとともに、十分な準備期間を設けることが適当である。
○ なお、中長期的な課題→財源が枯渇する場合であっても、障害者に対する支援が継続できるよう緊急的な公的資金の投入についても検討することが望ましいという意見や将来的には調整金等は廃止し、企業を支援する助成等に注力することが適当という意見があった。

2 障害者雇用納付金の適用範囲の拡大
○ 納付金制度
→原則として、雇用義務のかかる全ての事業主に適用されるものであるが、制度創設時に、中小企業の負担能力等に対する配慮等から、当分の間、常用労 働者 300 人超の事業主に適用対象が限定され、現在は、常用労働者 100 人超の事業主にまで対象が拡大されている。この適用範囲の拡大の検討に当たって、常用労働者 100 人以下の事業主については、ノウハウ不足等により、障害者の雇用数が0人であるところが多く、雇用率未達成企業が半数以上となっている。また、コロナ禍での経営環境の悪化、雇用保険料率の引上げ、健康保険・厚生年金保険の適用拡大等、中小企業を取り巻く雇用環境等は厳しいものとなっている。そのため、常用労働者 100 人以下の事業主に対する納付金の適用範囲の拡大については、これらの事業主における障害者雇用が進展した上で、実施することが適当である。 この点、100人以下の企業における法定雇用率達成企業割合の改善状況等を踏まえるなど、一定の雇用環境が整った場合に検討すべきという意見があった。
○ そのため、まずは、常用労働者 100 人以下の事業主における障害者雇用が進むよう、これらの事業主、特に障害者雇用ゼロ企業が抱えるノウハウ不足の課題に対して支援することが適当である。 具体的には、ハローワークにおいて、大企業に比べて障害者雇用の取組が遅れている中小企業に対し、企業ごとの属性やニーズを踏まえたチーム支援を積極的に実施することが適当。このようにハローワークが個々の中小企業をきめ細かく支援することに加えて、特に障 5 害者の雇用を進めることが困難な障害者雇用ゼロ企業を中心に、障害者雇用に関するコンサルティングを行う事業者等から、雇入れから雇用管理まで一体的な伴走型の相談支援を受けることで、障害者雇用の取組を促進する事業主に対して支援することが適当。この場合には、特に地域の中小企業に対する身近な支援者である訪問型のジョブコーチが配置されている社会福祉法人やNPOの活用が適当という意見や、相談支援の質を確保することが必要という意見があった。

3 障害者雇用を推進する事業主の取組に対する支援
○ 調整金、報奨金の一定の場合の減額措置等による納付金制度の財政の安定的な運営の上に立って、障害者雇用の質を高める観点から、各事業主の個々の取組を支援できるように、事業主のニーズを踏まえる形で助成金を充実させることが適当。具体的には、中高年齢者の障害者の雇用継続のため事業主が実施する取組に対する助成(第3の3)や、障害者雇用に関するコンサルティングを行う事業者等から相談支援を受けることで障害者雇用を促進する事業主に対する助成(第4の2)を行うことが適当。 加えて、既存の助成金についても、事業主のニーズのみならず多様な障害特性の実態や、 障害者の職場定着を図るという観点等も踏まえて、充実させることが適当である。

第6 その他の諸課題
1 在宅就業障害者支援制度の活用促進

○ 通勤等に困難を抱える障害者の就労機会の選択の幅を拡げるとともに、そうした障害者の雇用への円滑な移行を進めていくことが重要。こうした観点から、在宅就業障害者支援制度の更なる活用を促進する必要があるが、そのためには、当該制度において重要な役割を果たしている在宅就業支援団体を増やしていくことが重要。
○ したがって、在宅就業支援団体の実態や本制度の運用状況等を踏まえ、在宅就業支援団体として一定規模の業務を継続的に受注でき、また、在宅就業障害者に対する支援等その 業務が適切に実施できる範囲で、在宅就業支援団体の登録要件を緩和するとともに、登録 申請の手続を簡素化し、在宅就業支援団体の新規登録の促進を図ることが適当である。
○ 具体的には、在宅就業支援団体の登録のために必要な「在宅就業障害者の人数」→10 人としている要件を5人に引き下げるとともに、「在宅就業支援団体としての業務を実施する者の人数」について、従事経験者を2名以上配置する要件を1名に引き下げることが適当。あわせて、管理者の要件について専任以外でも認めることが適当。 また、在宅就業支援団体の登録申請に必要な提出書類を一部簡素化し、登録申請に当たっての負担軽減を図ること。加えて、在宅就業障害者を積極的に雇用へ移行させることが重要であり、その円滑な移行が図られるよう、各労働局・ハローワークにおいて、在宅就業支援団体の支援を受けている障害者の雇用への移行ニーズを適時に把握した上で、そのニーズを踏まえたアセスメント、求人とのマッチングなど適切な職業指導を実施することが適当。
○ コロナ禍において特にそのニーズが高まっているテレワーク→環境整備等必要な支援策を積極的に進めていくことが適当。なお、障害特性にかかわらず、全ての障害者がテレワーク等のICTを活用した働き方にアクセスできるよう環境整備を行うとともに、事業主は合理的配慮の提供はもとより、障害者が在宅で働くことにより社内 で孤立することがないようにコミュニケーションの促進に留意するなど、障害者がテレワークをしやすいように適切な雇用管理を行うことが望ましいという意見があった。

2 有限責任事業組合の算定特例の全国展開
○ 個々の中小企業の取組のみでは、障害者雇用を進めることに困難がある場合、複数の中小企業が共同で雇用機会を確保することができる事業協同組合等算定特例(「算定特例」)は有効な対応策となり得る。そのため、算定特例をより効果的に活用する必要がある。
○ この点、現在、有限責任事業組合(「LLP」)は、国家戦略特区においてのみ算定特例の対象とされているが、LLPには、異業種の企業の参画がより期待できる、行政の許認可等が不要で設立手続きが簡便であるといった特徴があり、これを活用して中小企業が障害者雇用を進めることが期待される。そのため、現在、国家戦略特区内においてのみ算定特例の対象とされているLLPについて、全国においてもその対象とすることが適当。なお、LLPを活用した算定特例の事例が現時点では一例のみであり、当該一例の評価をもって全国展開を図ることについて慎重に検討すべきという意見があった。
○ また、算定特例の活用を促進するためには、LLPを活用した算定特例の全国拡大も含め、算定特例について、厚生労働省ホームページや都道府県労働局を通じて、改めて周知徹底を図るとともに、算定特例の認定要件である「営業上の関係」の範囲を拡大し、算定特例をより活用し易くすることが適当である。この点、活用促進のためには、今後も、引き続き要件緩和について検討することが望ましく、また、算定特例を受けている者に対して、官公需における発注が優先的に行われることも重要であるという意見があった。
○ 他方で、LLPも含め、算定特例が活用される際には、都道府県労働局が雇用促進事業の具体的な内容を踏まえた上で、実施計画で掲げた目標の達成に向け、事業協同組合等及び特定事業主に対する助言等の支援を積極的に実施することが適当。この点、特定事業主間での障害者雇用の取組に差が生じないよう、それぞれの特定事業主に対してきめ細かく支援していく必要があるという意見があった。 また、実施計画の終了時において組合全体で通算した実雇用率が雇用率を下回る場合や、実施計画に掲げた目標を達成できなかった場合には、次期の計画期間中に達成に向けた支援を積極的に実施し、それでも、組合全体で通算した実雇用率が雇用率を下回る状況が続いた場合は、算定特例の認定を取り消すことが適当である。 なお、LLPを活用した算定特例の全国拡大に当たっては、A型を特定事業主の対象に含めると、他の特定事業主での障害者雇用が進まなくても、A型における障害者雇用のみで、組合全体で通算した実雇用率が容易に嵩上げされてしまうため、A型は特定事業主の対象外とするべきという意見があった。

3 除外率の引下げによる障害者雇用の促進
○ 除外率制度
→平成 14 年の法改正により廃止し、特例措置として、当分の間、除外率設定業種ごとに除外率を設定するとともに、廃止の方向で段階的に除外率を引き下げ、縮小することとされた。これを踏まえ、平成 16 年4月と平成 22 年7月にそれぞれ一律に 10 ポイントの引下げを実施した。廃止の方向で段階的に引き下げ、縮小することとされているが、10 年以上引下げが行われていないことは重大な問題である、廃止に向けてピッチを上げるべきという意見があったところであり、また、民間企業全体の実雇用率が上昇する中で、除外率設定業種の実雇用率についても着実な上昇がみられる。これらを踏まえ、除外率を一律に10 ポイント引き下げることが適当。この際、除外率設定業種がそれぞれ余裕を持って対応できるよう積極的に周知を行うとともに、十分な準備期間を設けることが適当。加えて当該業種における障害者雇用の促進に向けた取組を支援することが適当である。
この点、雇用の実態を踏まえ、障害者雇用の困難性が高い職種や、中小企業に配慮した支援が必要という意見があった。さらに、今般の引下げ後においても、除外率が既に廃止された制度であることを踏まえ、次々期以降の雇用率の設定のタイミングにおいて、除外率についても段階的に見直してい くことが適当。この点、10 ポイント以上引き下げることを含めて検討することが必要という意見や、制度廃止から長期にわたり廃止に向けたロードマップが示されていないことには懸念があり、企業側の取組に課題があるのであれば、必要な支援を措置し早期の廃止実現に向けて取り組むべきという意見があった。他方、見直しに当たっては、除外率が既に廃止された制度であることを重く受け止め、 廃止に向けた引下げを前提とするものの、企業を取り巻く雇用環境や除外率設定業種の障害者雇用の状況等を踏まえ検討することが必要という意見があった。

4 その他
○ 重度障害者等に対する職場や通勤等における支援(重度訪問介護サービス利用者等職場介助助成金、重度訪問介護サービス利用者等通勤援助助成金)→引き続き、その実施状況を踏まえながら、より活用が図られるよう取組を進めることが適当。当該助成金の対象とならない場合であっても、障害特性や症状によって通勤が困難である場合等、実態を把握して、こうした障害者に対する支援を充実させていくことが望ましいという意見があった。
○ 障害者雇用に関する優良な事業主の認定制度(もにす認定制度)→企業にとってもダイバーシティに取り組んでいることをアピールできる有益なもの、より一 層、認定企業を増やし、障害者雇用に対する地域の社会的関心を高め、インセンテ 26 ィブを増やすとともに、周知を強化することが適当である。

第7 おわりに
○ 今般、新たに措置することが適当とされた週 10 時間以上 20 時間未満の障害者に対する雇用率制度における特例、除外率の引下げや、長期継続雇用の推進等、個別の施策を進めるに当たり、雇用の質の向上という観点では合理的配慮の提供が重要であり、事業主は合理的配慮の提供→その意義を改めて認識し対応することが適当。引き続き検討すべきとされているものについては、調査・研究等、検討に当たって必要となる前提が整った上で、可能な限り早期に検討し結論を得ることが必要という意見があった。
○ 障害者の雇用機会拡大と雇用継続は、長期的な視点で、持続可能な制度によって達成する必要があるが、そのためには、過度に複雑な制度や、労働者・事業主・行政それぞれの手続の負担が過大な制度を避けることが望ましいという意見があった。

次回も続き「資料1−2 意見書(案)※第 119 回意見書(案)からの変更点」からです。

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