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第12回 成年後見制度利用促進専門家会議(web会議) [2021年12月31日(Fri)]
第12回 成年後見制度利用促進専門家会議(web会議)(令和3年12月15日)
《議事》 第二期成年後見制度利用促進基本計画に盛りこむべき事項(最終とりまとめ) (案)についての意見交換
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22666.html
◎資料1第二期成年後見制度利用促進基本計画に盛りこむべき事項(最終とりまとめ)(案)
U 成年後見制度の利用促進に向けて総合的かつ計画的に講ずべき施策
3 権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり
(1) 権利擁護支援の地域連携ネットワークの基本的な考え方 −尊厳のある本人らしい生活の継続と地域社会への参加−

@ 権利擁護支援の地域連携ネットワークの必要性と趣旨
ア 権利擁護支援の地域連携ネットワークの必要性
⇒ ・ 権利擁護支援を必要としている人は、判断能力等の状態や取り巻く 生活の状況により、その人らしく日常生活を送ることができなくなったとしても、自ら助けを求めることが難しく、自らの権利が侵されている ことに気づくことができない場合もある。そして、こうした状況は、全国どの地域においても必ず起こり得ること。 ・ 本人らしい生活を継続するためには、地域でこうした状況に気づき、 意思決定の支援や、必要に応じて福祉や医療等のサービスの利用につな げることが重要。虐待や消費者被害などが生じている状況では、 行政の関与、法的な支援や成年後見制度の利用につなげることも必要になる。 ・ また、権利擁護支援を必要としている人の中には、身寄りがない、ま たは身寄りに頼ることができない状態や、地域社会とのつながりが希薄であるなど孤独・孤立の状態に置かれている人もいる。このことから、 権利擁護支援を必要としている人に対し、住民同士のつながりや支え合い、社会参加の支援を充実することも重要。 ・ 以上のことから、各地域において、現に権利擁護支援を必要としている人も含めた地域に暮らす全ての人が、尊厳のある本人らしい生活を継続し、地域社会に参加できるようにするため、地域や福祉、行政などに 司法を加えた多様な分野・主体が連携するしくみをつくっていく必要が ある。
イ 権利擁護支援の地域連携ネットワークづくりの方向性(包括的・多層 的なネットワークづくり)⇒ ・ 第一期計画では、上記の地域連携のしくみを、権利擁護支援の地域連 携ネットワーク(以下「地域連携ネットワーク」という。)とし、全国ど の地域においても、尊厳のある本人らしい生活を継続することができる よう、必要な人が成年後見制度を利用できるようにするという観点から、 その整備を進めてきた。 第二期計画→地域連携ネットワークの趣旨として、地域社会への 参加の支援という観点も含めていく。具体的には、地域包括ケアや虐待 防止などの権利擁護に関する様々な既存のしくみのほか、地域共生社 会実現のための支援体制や地域福祉の推進などと有機的な結びつきを 持って、地域における多様な分野・主体が関わる「包括的」なネットワ ークにしていく取組を進めていく必要。 さらに、権利擁護支援を必要としている人の世帯の中には、様々な課 題が生じいることもあり、このような場合には、個人ごとに権利擁護 支援の課題を捉えた上で、その状況に応じて、家族同士の想いも尊重しながら、それぞれを同時に支援していく必要がある。こうしたことを含 めた複合的な地域生活課題としては、支援困難な虐待やネグレクト、 未成年後見を含む児童の権利擁護などもあり、これらへの適切な支援が必要となる場合もある。 ・ 地域連携ネットワークは、住民に身近な相談窓口等のしくみを有する 市町村単位を基本として整備を進めてきたが、このような課題に対応するためには「包括的」なネットワークだけでは十分でなく、地域の実情 に応じて権利擁護支援を総合的に充実することができるよう、圏域など の複数市町村単位や都道府県単位のしくみを重ね合わせた「多層的」な ネットワークにしていく取組も併せて進めていく必要がある。
ウ 地域連携ネットワークづくりの進め方⇒ ・ イの方向性に基づいた具体的な取組は、(3)で後述するが、これから地域連携ネットワークづくりを始める地域では、できるだけ早期に、 以下を実施することのできる体制整備を優先すべき。 ・ 権利擁護支援に関する相談窓口を明確にした上で、本人や家族、地 域住民などの関係者に対し、成年後見制度の内容など権利擁護支援の 理解の促進や相談窓口の周知を図ること ・ 地域連携ネットワークのコーディネートを行う中核機関(Aウを参 照)の役割をどういった機関や体制で担うのかを明らかにすること ・ また、これらの体制を整備した地域では、後見人等の受任者調整等によって権利擁護支援チームの形成を支援し、その権利擁護支援チームが 本人への支援を適切に行うことができるようにする必要がある。こうし た地域連携ネットワークの機能を段階的・計画的に充実していくことで、 尊厳のある本人らしい生活の継続と地域社会への参加を図ることができ るようになる(充実が求められる機能や取組は、(2)Aイ・ウ、(3) Aイ・ウを参照)。 ・ なお、これらの体制整備は、市町村単独では取り組むことが難しい内 容もあるため、広域的な見地から、都道府県が主体的に取り組むことも 重要である。

A 地域連携ネットワークのしくみ→ 地域連携ネットワークは、「権利擁護支援チーム」、「協議会」、「中核となる機関(中核機関)」の3つのしくみからなる。↓
ア 権利擁護支援チーム→権利擁護支援チームとは、
権利擁護支援が必要な人を中心に、本人の 状況に応じ、本人に身近な親族や地域、保健・福祉・医療の関係者などが、協力して日常的に本人を見守り、本人の意思及び選好や価値観を継続的に把握し、必要な権利擁護支援の対応を行うしくみである。 既存の福祉・医療等のサービス調整や支援を行う体制に、必要に応じ、 法律・福祉の専門職や後見人等、意思決定に寄り添う者などが加わり、 適切に本人の権利擁護が図られるようにする。
イ 協議会→ 協議会とは、各地域において、専門職団体や当事者等団体などを含む 関係機関・団体が、連携体制を強化し、これらの機関・団体による自発的な協力を進めるしくみである。 各地域では、成年後見制度を利用する事案に限定することなく、権利擁護支援チームに対し、法律・福祉の専門職や関係機関が必要な支援を行うことができるように協議の場を設ける。なお、協議会は、地域の実情や議題等に応じ、個々の市町村単位、圏域などの複数市町村単位、都道府県単位など階層的に設置する。
ウ 中核機関 →中核機関とは、地域連携ネットワークのコーディネートを担う中核的 な機関や体制であり、以下のような役割を担う。⇒ ・ 本人や関係者等からの権利擁護支援や成年後見制度に関する相談を受け、必要に応じて専門的助言等を確保しつつ、権利擁護支援の内容の検討や支援を適切に実施するためのコーディネートを行う役割 ・ 専門職団体・関係機関の協力・連携強化を図るために関係者のコー ディネートを行う役割(協議会の運営等)→中核機関の運営は、地域の実情に応じ、市町村による直営又は市町村 からの委託などにより行う。市町村が委託する場合等の運営主体については、業務の中立性・公正性の確保に留意しつつ、専門的業務に継続的に対応する能力を有する法人(例:社会福祉協議会、NPO法人、公益 法人等)を適切に選定するものとする。 なお、国は、1の(1)に記載した成年後見制度等の見直しの検討に 併せて、中核機関の位置付け及びその役割にふさわしい適切な名称を検 討する。

B 権利擁護支援を行う3つの場面 →地域において、成年後見制度の利用を含む権利擁護支援を行う場面は、 以下の3つに整理できる。↓
ア 権利擁護支援の検討に関する場面(成年後見制度の利用前)
→本人を取り巻く関係者が、権利擁護支援に関するニーズに気づき、 必要な支援につなぐ場面。この場面では、成年後見制度につなぐ場合や、同制度以外の権利擁護 支援(権利擁護支援チームによる見守りや意思決定の支援、日常生活自 立支援事業の利用、虐待やセルフネグレクトの対応、消費生活センター の相談対応など)などにつなぐ場合がある。
イ 成年後見制度の利用の開始までの場面(申立ての準備から後見人等の 選任まで)→成年後見制度の申立ての必要性、その方法、制度利用後に必要となる 支援、適切な後見人等候補者などを検討・調整し、家庭裁判所に申し立て、後見人等が選任されるまでの場面。 この場面では、制度利用後の支援方針を検討する。その中で、適切な 権利擁護支援チームの体制も検討する。
ウ 成年後見制度の利用開始後に関する場面(後見人等の選任後)→家庭裁判所の審判により、後見人等が選任され、後見活動が開始されてからの場面。 この場面では、権利擁護支援チームに後見人等が参加し、チームの関係者間で、あらかじめ想定していた支援方針等を共有し、本人に対して、 チームによる適切な支援が開始される。

C 市町村・都道府県・国と関係機関の主な役割→権利擁護支援は、地域や福祉、行政、司法など多様な分野・主体が関わるもの。また、第二期計画の期間内に、2025年を迎えて認知症 高齢者が増加するなど、成年後見制度の利用を含む権利擁護支援のニーズが更に多様化、増大する見込みである。 このようなことに対応できるよう、地域連携ネットワークは、多様な主体の積極的な参画と適切な役割の発揮の下で、持続可能な形で運営できる ようにすることが重要。家庭裁判所においても、地域連携ネットワ ークの中で、持続可能な形で、各関係機関と必要な連携を行いながら、成 年後見制度の運用・監督にあたることが重要である。
ア 行政(市町村・都道府県・国) ↓
(ア)市町村
→ ・ 市町村は、権利擁護支援に関する業務が市町村の福祉部局が有する 個人情報を基に行われることや、行政や地域の幅広い関係者との連携を調整する必要性などから、協議会及び中核機関の整備・運営といった地域連携ネットワークづくりに主体となって取り組む必要がある。 その際、地域の実情に応じ、都道府県と連携して、重層的なしくみに することなど柔軟な実施体制も検討する。 ・ 市町村の地域連携ネットワークづくりに対する積極的な役割は、協議会及び中核機関の運営を委託等した場合であっても、同様である。 ・ 市町村は、権利侵害からの回復支援(虐待やセルフネグレクトの対応での必要な権限の行使等)など地域連携ネットワークで行われる支援にも、その責務に基づき主体的に取り組む必要がある。 ・ 上記に加え、市町村は、市町村長申立てや成年後見制度利用支援事業の適切な実施、担い手の育成・活躍支援、促進法に基づく市町村計画の策定といった重要な役割を果たす(4(2)、(3)、(4)を参照)。
(イ)都道府県→ ・ 都道府県は、市町村単位では解決が困難な広域的な課題に対する都道府県自らの取組、国との連携確保など、市町村では担えない地域連 携ネットワークづくりの役割を主導的に果たす。具体的には、担い手の育成・活躍支援、広域的観点から段階的・計画的にネットワークづ くりに取り組むための方針の策定といった重要な役割を果たす(4 (2)、(4)、(5)を参照)。 ・ また、人口規模が小さく、社会資源等が乏しい小規模市町村を始め とした市町村に対する体制整備支援の機能を強化し、地域連携ネット ワークづくりを促進する。
(ウ)国→ ・ 国は、市町村や都道府県が進める地域連携ネットワークづくりを後 押しする観点から、以下の役割を担う。⇒ ・ 成年後見制度利用促進ポータルサイトを活用した最新の情報や知見の共有。 ・ 都道府県等との連携や権利擁護支援体制全国ネット(K−ねっと) のしくみを通じて、全国の取組状況や地域による格差などの継続的 な把握と必要な助言の実施。 ・ 各取組の進捗状況等を勘案した必要な支援策の検討 。
イ 中核機関(再掲)→地域連携ネットワークのコーデ ィネートを行う役割を担う。
ウ 家庭裁判所 →家庭裁判所には、尊厳のある本人らし い生活の継続を実現することができるよう、地域連携ネットワークの中で、成年後見制度の適切な運用・監督を行うことが期待される。 ・ こうした観点も踏まえ、家庭裁判所には、地域連携ネットワークづくりや成年後見制度の運用改善等に向けて、その支部や出張所を含め、地 方公共団体、中核機関、専門職団体、協議会等と積極的に連携し、取組情報の交換や意見交換を図ることが期待される。
エ 専門職団体→ 権利擁護支援を必要としている人は、成年後見制度の利用に限られず、 権利擁護や意思決定に関し、福祉的又は法律的な支援が必要になる場合 があり、各専門職には、各種場面において、専門分野に応じた役割を発 揮することが期待される。 こうした観点も踏まえ、成年後見制度の利用促進に関わる専門職団体 には、地域における協議会等に積極的に参画することや、地域連携ネッ トワークにおける相談対応や権利擁護支援チームによる支援の活動など において、本人の特性等に合わせながら、専門性を生かした積極的な役 割を果たすことが期待される。
オ 当事者等団体 → 権利擁護支援を必要とする人が、同じような経験をしながら暮らして いる仲間と出会い、尊厳のある生活の継続の実態を知ることは、本人に とって非常に大きな力となり、自分のことを自分で考え決めていくため の基盤となる。 こうした観点も踏まえ、認知症、知的障害、発達障害、精神障害等、 成年後見制度を利用する可能性がある当事者等の団体には、本人へのピアサポートや、当事者の視点からの協議会や地域づくりへの参画などが 期待される。
カ 各種相談支援機関→権利擁護支援を必要としている人は、自ら助けを求めることが難しい。したがって、各地域での見守りや支え合いの中で、早期に身近な相 談窓口につなげた上で、成年後見制度の利用が必要かどうかなど権利擁 護支援ニーズの精査を行う必要がある。 こうした観点も踏まえ、介護や障害、生活困窮、子育てなどの各分野 において地域住民等からの相談を受けている相談支援機関には、権利擁護支援に関する課題を含む相談を受けた場合、中核機関や専門職等と連携して、必要な情報の収集や集約、整理を行い、必要な支援につなげることが期待される。 特に、従来より権利擁護業務を実施している地域包括支援センターや 基幹相談支援センター等には、これらの業務に対する積極的な関わりが 求められる。

2)地域連携ネットワークの機能 −個別支援と制度の運用・監督− ↓
@ 地域連携ネットワークの機能の考え方
→第一期計画では、地域連携ネットワークの機能について、広報機能、相談機能、成年後見制度利用促進機能(受任者調整(マッチング)等の支援、 担い手の育成・支援、関連制度からのスムーズな移行)、後見人支援機能の 4つを位置付けてきた。 今後は、権利擁護支援としての成年後見制度の適切な利用を通じて尊厳のある本人らしい生活の継続と地域社会への参加につなげていくように すること、そのために地域連携ネットワークが多様な主体の積極的な参画と適切な役割の発揮の下で、持続可能な形で運営できるようにすることが重要である。 このような観点から、これまでの4機能について、本人中心の権利擁護支援チームを支えるための機能(Aを参照)と、その機能を強化するための地域の体制づくりに関する取組((3)を参照)に大別した。 併せて、地域連携ネットワークが担う機能には、福祉・行政・法律専門 職などの連携による「支援」機能と、家庭裁判所による成年後見制度の「運用・監督」機能があることを、権利擁護支援を行う3つの場面に対 応した形で整理した。
A 権利擁護支援を行う3つの場面における「支援」機能と「運用・監督」/strong>→ 機能 福祉・行政・法律専門職など多様な主体による「支援」機能としては、 (1)Bで整理した権利擁護支援を行う3つの場面に応じて、以下の3つ が挙げられる。⇒ ・ 「権利擁護の相談支援」機能 ・ 「権利擁護支援チームの形成支援」機能 ・ 「権利擁護支援チームの自立支援」機能。   また、家庭裁判所による「運用・監督」機能としては、同様に、以下の 3つ。⇒ ・「制度利用の案内」機能 ・ 「適切な選任形態の判断」機能 ・ 「適切な後見事務の確保」機能
ア 「権利擁護の相談支援」機能と「制度利用の案内」機能 権利擁護支援の検討に関する場面(成年後見制度の利用前)における 「権利擁護の相談支援」機能と、「制度利用の案内」機能は、以下のとおり。 ↓
(ア)権利擁護の相談支援機能 各種相談支援機関が、本人や関係者からの相談を受け止め、地域の 実情に応じて、中核機関や専門職と役割分担や連携を行い、権利擁護 支援ニーズの確認と必要な支援へのつなぎを行う機能。↓
a 本人等からの相談対応と制度の説明
⇒ ・ 本人を取り巻く関係者30が、地域連携ネットワークのつながりや支 え合いを通じて、日頃から接している権利擁護支援を必要とする人 の状態や生活状況などを把握する。 ・ 日常生活などで課題を把握した場合は、地域の相談支援機関など につなぎ、地域の相談支援機関は寄せられた相談への対応を行う。 ・ 相談対応時には、本人と関係者に、成年後見制度のしくみやそれ 以外の権利擁護支援に関する説明を行う。
b 権利擁護支援ニーズの精査と必要な支援へのつなぎ⇒ ・ 相談支援機関による相談を通じた情報収集や、必要に応じて、中核機関や専門職がケース会議に参加するなどして、本人の意思及び 選好や価値観、判断能力や生活の状態、権利擁護や意思決定支援が 必要となる状況、支援の状況や支援者等との関係性等の情報などを集めて、成年後見制度の利用が必要かどうかなど権利擁護支援ニー ズの精査を行う。 ・ 精査の結果、成年後見制度の必要性を確認できた場合は、その適切な利用の検討につなぐ。他方、成年後見制度の必要性を確認でき ない場合も、本人の権利擁護支援ニーズに応じ、必要な見守り体制 や成年後見制度以外の支援へのつなぎを行う。
(イ)制度の利用の案内機能 家庭裁判所には、引き続き以下の機能を発揮することが期待。→ ・ 本人や関係者に対し、申立てなど家庭裁判所の手続を利用するた めに必要となる情報提供や、手続の案内を行う(パンフレット等に よる制度の説明、統一書式の提供、ハンドブックやDVD等各種ツ ールの充実による手続理解の促進)。また、必要に応じて、各地域の 中核機関や地域連携ネットワークの相談先を案内する。
イ 「権利擁護支援チームの形成支援」機能と「適切な選任形態の判断」 機能 成年後見制度の利用の開始までの場面(申立ての準備から後見人等の 選任まで)における「権利擁護支援チームの形成支援」機能と、「適切な選 任形態の判断」機能は、以下のとおり。 ↓(ア)権利擁護支援チームの形成支援機能 →中核機関が、専門職などと連携して、権利擁護支援の方針を検討。その方針に基づき、地域の実情に応じて都道府県等のしくみを活用((3)Bア(ウ)「都道府県による協議会」参照)して、成年後見 制度の申立て方法や適切な後見人候補者を調整しながら、本人を支え る権利擁護支援のチーム体制をかたちづくっていく機能。
権利擁護支援の方針の検討⇒ ・ 相談を通じて得られた情報を基にして、判断能力の低下の進行や 支援状況によって生じている具体的な課題(財産管理・各種手続の 課題、意思決定の課題、法的な課題、地域社会への参加に関する課 題など現時点で生じているものだけでなく、将来に生じる可能性の ある課題を含む。)を整理。・ その上で、本人の強みを活かすことや支援体制を調整することな ども含めて、成年後見制度の利用が適切か、他の支援につなぎ直す方が適切かなど支援方針の検討を行う。・ この支援方針を検討する前に、成年後見制度を利用することによ って、どういった支援が受けられるかを本人に説明し、本人の意向を確認しておくなど、支援の方針に本人の意向が反映できるようにする。
b 適切な申立ての調整⇒ ・ 本人の申立てに対する意向を確認した上で、本人の状態や親族との関係性などを踏まえ、市町村長申立ての検討を含む適切な申立人 の検討と調整を行う。 ・ 必要に応じて、診断書や本人情報シートなど申立てに必要となる 書類等の収集や、申立書に記載する情報の整理など、関係機関が適 切に役割分担して対応する。
c 権利擁護支援を行うことのできる体制を作るための支援(後見人等の参画を含む。)・ 支援方針を基に、対応すべき課題と後見人等に求められる役割、 補助・保佐の活用も含めた想定される類型や必要となる同意・代理行為、可能な範囲内で収支や財産状況、成年後見制度利用支援事業の対象かどうか、課題解決後の後見人等の交代の方向性(専門職後見人から市民後見人への交代など)などの確認や、必要に応じた支援方針の調整を行う。 ・ その上で、関係機関の連携により、必要に応じ、後見人等の候補者と選任形態(複数後見など)についての調整を行う。この際、市民後見人の育成状況や受任可能な専門職数などの地域の実情を踏まえつつ、専門職については、その専門性を適切に発揮できる事案や 場面で候補者とすることを考慮する。 ・ 併せて、後見人等が選任されるまでの一時的な支援や対応の調整、 役割分担を行うなど、本人の意向を踏まえた権利擁護支援のチーム 形成を進める。その際、地域の実情に応じて本人と後見人等候補の予定者が申立て前に面談して相性を確かめることも考えられる。
(イ)適切な選任形態の判断機能→ 家庭裁判所には、引き続き以下の機能を発揮することが期待される。⇒ ・ 権利擁護支援チームの形成支援機能により示された情報(本人の意向や、対応すべき課題、後見人等に求められる役割、補助・保佐 の活用も含めた想定される類型や必要となる同意・代理行為、収支や財産状況、成年後見制度利用支援事業の対象かどうか、課題解決後の交代を踏まえた後見人等の候補者と選任形態など)を共有し、 これらも含めた各事案の事情を総合的に考慮し、後見人等の適切な 選任を行う。

ウ 「権利擁護支援チームの自立支援」機能と「適切な後見事務の確保」機能→ 成年後見制度の利用開始後に関する場面(後見人等の選任後)における「権利擁護支援チームの自立支援」機能と、「適切な後見事務の確保」機能は、以下のとおり。 ↓
(ア)権利擁護支援チームの自立支援機能 →中核機関や専門職が、地域の実情に応じて各種相談支援機関などと 役割分担し、権利擁護支援チームの体制によって課題解決に向けた支 援を適切に行うことができるよう、必要な支援を行う機能。
a 権利擁護支援チーム開始の支援
⇒・ 後見人等の選任後、後見人等が加わった権利擁護支援チームによ る支援を開始するに当たり、関係者間で、申立て前に想定していた 方針を共有し、役割分担の再確認を行う。具体的には、本人や後見 人等、関係機関などが参加する会議を必要に応じて開催するなどして、支援内容、将来的に後見人等の交代が想定されている場合はその方針などについて共有し、必要に応じて方針を再調整した上で、 後見人等を含めた関係者間で役割を分担する。 ・ 上記の後、権利擁護支援チームの中で、支援の実施状況や課題の解決状況などを確認する時期について、支援の開始時点であらかじ め定めておく。また、必要に応じて、中核機関や専門職などのバッ クアップが必要になる場面や期間を確認しておく。
b 権利擁護支援チームの支援の開始後、必要に応じて行う支援⇒ ・ 支援の開始後は、専門職後見人を含む後見人等や権利擁護支援チ ームの関係者からの相談に応じる。 ・ 必要に応じて、追加して必要となる支援の調整や、後見人等の交代、類型・権限変更などの検討や調整を行う。交代後は、必要に応じて、本人や新旧の後見人等、関係機関などが参加する会議を開催するなどして、新しい後見人等に、本人の状況等が適切に引き継がれるようにする。・ また、あらかじめ定めた時期に、課題の解決の状況等を確認し、 当該チームの自立状況を踏まえて、一旦、中核機関や専門職などによる当該チームへの支援を終結する。ただし、状況が変化した際に、 速やかに相談できる体制を確保しておくことに留意する。
(イ)適切な後見事務の確保機能→ 家庭裁判所には、引き続き以下の機能を発揮することが期待される⇒ ・ 後見監督の一環として、後見人等が行う後見事務(財産管理、身上保護、意思決定支援のほか、報告書作成等の後見事務手続)の適切な遂行のため、司法機関としての立場から後見人等の相談対応や助言を行う。なお、司法機関である家庭裁判所では、身上保護や意 思決定支援に関する相談に対して、福祉的観点からの助言等を行うことは難しいことを考慮し、権利擁護支援チームの自立支援機能と連携して、司法機関としての立場から後見人等の相談対応や助言を行う。 ・ 必要に応じて、指導や指示、監督処分といった後見監督を行う。 ・ 権利擁護支援チームの自立支援機能によって確認された本人の状況や、後見人等の交代、類型・権限変更の検討や調整結果などを参考に、適切な交代や選任形態の見直しを行う。

(3)地域連携ネットワークの機能を強化するための取組−連携・協力による地域づくり

@ 地域連携ネットワークの機能を強化するための取組の考え方
→地域連携ネットワークにおいて、権利擁護支援を行う3つの場面に応じ、 福祉・行政・法律専門職など多様な主体の連携による「支援」機能と、家庭裁判所による「運用・監督」機能を適切に果たすことができるようにするためには、地域・福祉・行政・法律専門職や家庭裁判所などの地域連携 ネットワークの関係者が、以下の3つの視点を持って、自発的に協力して取り組む必要がある。
ア 「共通理解の促進」の視点→ 地域・福祉・行政・法律専門職、そして家庭裁判所など、異なる立場 を有する地域連携ネットワークの関係者が、それぞれの役割を理解し合い、機能を強化するための認識やその方向性を共有する必要がある。
イ 「多様な主体の参画・活躍」の視点→ 地域連携ネットワークの機能を高めていくため、現在活躍している関 係者のみならず、様々な立場の関係者が新たに地域の権利擁護支援に参画して、各々が可能な取組を行い、その取組を拡げていく必要がある。
ウ 「機能強化のためのしくみづくり」の視点→ 多くの関係者が円滑かつ効果的に連携・協力して活動できるしくみを 整備する必要がある。

A 地域連携ネットワークの機能を強化するための取組(地域の体制づくり)/strong>
(p35の一覧表に↓以下が整理されています。)
ア 「権利擁護の相談支援」機能と「制度利用の案内」機能を強化するための取組(権利擁護支援の検討に関する場面)→権利擁護支援の検討に関する場面(成年後見制度の利用前)における 「権利擁護の相談支援」機能と、「制度利用の案内」機能を強化するため の取組は、以下のとおり。↓
(ア)「共通理解の促進」の視点による取組
  a 成年後見制度の必要性など権利擁護支援についての理解の浸透(制度の広報を含む)
⇒・ 成年後見制度を利用する可能性のある本人や家族、地域住民、福祉・行政・法律専門職などの関係者に対し、一般的な広報に加え、 成年後見制度の利用の効果・留意点や制度の活用が有効な事案のほ か、声を上げることができない権利擁護支援を必要としている人を 発見し支援につなげることの重要性などを周知・啓発する(対象者 ごとに訴求内容・方法が異なることから、対象者に合わせて行う必 要がある。また、任意後見・補助・保佐に関する周知活動も強化する。)。 ・ この際、市町村・中核機関には、地域住民や福祉・司法の関係者を対象にした権利擁護支援に関する研修等を行うことが期待される。・ 家庭裁判所には、市町村や都道府県が広報に必要な知識や情報を 得ることができるようにするため、講師派遣や統計データを提供す ることが期待される。 ・ 国は、最新の情報や知見が全国的に共有されることによって地域 連携ネットワークの機能強化が図られるよう、成年後見制度利用促 進ポータルサイトの充実を図る。
b 権利擁護支援に関する相談窓口の明確化と浸透(相談窓口の広報を含む)⇒ ・ 市町村は、権利擁護支援や成年後見制度の利用に関する地域の相 談窓口を明確にする。 ・ その上で、明確にした窓口を地域連携ネットワークの関係者に周 知し浸透させる。
(イ)「多様な主体の参画・活躍」の視点による取組
a 地域で相談・支援を円滑につなぐ連携強化
⇒ ・ 地域の関係者・団体(当事者等団体、地域住民、民間事業者、専門職団体等)が、権利擁護支援を必要とする人やその家族などの様 子を把握したり、身近な立場で相談を受けたりしていることを共有する。 ・ その上で、関係者・団体が受け止めた権利擁護支援に関するニー ズへの対応に悩まないよう、地域で権利擁護支援や相談支援を担う機関(中核機関、地域包括支援センターや基幹相談支援センター等、 介護や障害、生活困窮、子育てなどの各相談支援機関など)は、その役割や連絡先の紹介、相談のつなげ方の確認などを行う。
b 中核機関と各相談支援機関との連携強化⇒・ 中核機関は、地域包括支援センターや基幹相談支援センター等、介護や障害、生活困窮、子育てなどの各相談支援機関と、事例検討 や支援の振り返りなどを通じて、緊急性の判断や、権利擁護支援の必要性、各種支援や中核機関につなげるタイミング、地域にある様々 な権利擁護支援策などを確認し合う。
(ウ)「機能強化のためのしくみづくり」の視点による取組
a 各相談支援機関等の連携のしくみづくり⇒ ・ 市町村は、(イ)の実践を踏まえ、中核機関や地域包括支援センター、基幹相談支援センター等、介護や障害、生活困窮、子育てなどの各相談支援機関が連携を図り、権利擁護支援を必要とする人や関 係者からの相談を受け止め、確認した権利擁護支援ニーズに対し、 必要な支援を行うことができるしくみを整備する。
b 成年後見制度の利用の見極めを行うしくみづくり⇒ ・ 権利擁護支援ニーズの整理から確認できた課題の性質によって、 各相談支援機関が成年後見制度の利用の必要性を確認するためのシ ートの共有、中核機関がケース会議に参加する際のルールづくり、 専門職の派遣のしくみづくりなどを行う。
c 成年後見制度以外の権利擁護支援策の充実・構築 ⇒・ 1(2)「総合的な権利擁護支援策の充実」の内容も踏まえ、地域において、日常生活自立支援事業などの既存の権利擁護支援策の充 実や、それ以外の新たな支援策を検討する。

イ 「権利擁護支援チームの形成支援」機能と「適切な選任形態の判断」 機能を強化するための取組(成年後見制度の利用の開始までの場面)→成年後見制度の利用の開始までの場面(申立ての準備から後見人等の選任まで)における「権利擁護支援チームの形成支援」機能と、「適切な 選任形態の判断」機能を強化するための取組は、以下のとおりで。↓
(ア)「共通理解の促進」の視点による取組
a 選任の考慮要素と受任イメージの共有と浸透
⇒ ・ 都道府県、市町村、中核機関、専門職団体、家庭裁判所などは、 権利擁護支援チームの形成支援としての受任者調整を地域の実情に 応じて進めるため、家庭裁判所が後見人等を選任する際の考慮要素をできる限り共有する。 ・ さらに、個人情報を含まない模擬事例の検討を通じて後見人候補者イメージの共通認識を深める。・ また、受任者調整の際に将来的な後見人等の交代も含めた初期方針が検討できるよう、個人情報を含まない模擬事例の検討を通じて、 交代のタイミングや引き継ぎ方法など交代に関するイメージの共有も進める。
(イ)「多様な主体の参画・活躍」の視点による取組
a 都道府県と市町村による地域の担い手の育成
⇒ 4(2)を参照のこと。
b 専門職団体による専門職後見人の育成⇒4(2)を参照のこと。
(ウ)「機能強化のためのしくみづくり」の視点による取組
a 後見人等候補者の検討・マッチング・推薦のしくみづくり
⇒都道府県と市町村、中核機関は、後見人等の候補者の的確な推薦 を行うことができるよう、家庭裁判所と専門職団体の積極的な協力も得て、候補者の検討方法(検討の体制や候補者推薦の目安など)、 マッチングの手法などを共有できる体制を整える。この際、市民後見人を候補にするのに適した事案かどうかや、どのような属性の候補者がよいかだけの検討ではなく、権利擁護支援チーム形成の観点から、本人の意向や後見人等との相性、課題等に応じた柔軟な選任 形態(複数後見など)、課題解決後の交代等の想定なども検討できる ように留意する。 ・ 家庭裁判所には、上記体制づくりへの協力と、チーム形成の観点から行われる受任者調整のプロセスへの理解が期待される。また、 地域の実情や協議事項等に応じ、家庭裁判所の支部・出張所も含め た協議の実施などの対応も期待される。 ・ 専門職団体には、家庭裁判所や中核機関と連携し、円滑かつ適切に後見人候補者等の推薦を行えるようにしておくことが期待される。
b 市町村と都道府県による市町村長申立て・成年後見制度利用支援 事業を適切に実施するための体制の構築 ・ 4(3)を参照のこと。

ウ 「権利擁護支援チームの自立支援」機能と「適切な後見事務の確保」 機能を強化するための取組(成年後見制度の利用開始後に関する場面)→ 成年後見制度の利用開始後に関する場面(後見人等の選任後)における「権利擁護支援チームの自立支援」機能と、「適切な後見事務の確保」機能を強化するための取組は、以下のとおり。↓
ア)「共通理解の促進」の視点による取組
a 意思決定支援や後見人等の役割についての理解の浸透
⇒ 後見人等の参画した権利擁護支援チームが、意思決定支援に取り組めるよう、保健、医療、福祉、介護、金融等幅広い関係者や地域 住民に対し、意思決定支援の重要性や考え方などについて、研修等 を通じた継続的な普及・啓発を行う。この際、チーム内で適切な役割分担を図るため、後見人等の役割を合わせて伝えていくことが重要。 また、都道府県等には、専門職団体の協力も得て、親族後見人や市民後見人等の後見人等、日常生活自立支援事業の関係者、市町村・ 中核機関の職員に対して、意思決定支援に係る研修等を継続的に行 うことが期待される。
(イ)「多様な主体の参画・活躍」の視点による取組
a 地域の担い手の活躍支援
⇒市町村は、都道府県と連携して、地域の関係機関や専門職団体か らの協力も得つつ、4(2)のとおり、地域の担い手(市民後見人、後見等実施法人)が地域で活躍できるようにするための支援を行う。 この際、住民の社会参加や地域づくりを促進する観点から、市民 後見人の活動内容ややりがいについて広く周知することも重要である。
b 制度の利用者や後見人等からの相談を受ける関係者との連携強化⇒成年後見制度を利用する本人やその家族、後見人等からの相談を 受けることがある地域の関係団体(当事者等団体、専門職団体等)を把握する。その上で、中核機関は、その役割や連絡先等の紹介、関係団体が 受けている相談内容や地域への参加の支援に関連する活動の確認などを行う。
ウ)「機能強化のためのしくみづくり」の視点による取組
a 後見人等では解決できない共通課題への支援策の構築
⇒特定の課題が解決した後の専門職後見人から市民後見人への交代を行うしくみづくりや、身寄りのない被後見人等への緊急時対応や 生活支援、地域への参加の支援等のしくみづくりなど、後見人等や 権利擁護支援チームのみでは解決することができない地域に共通する課題について、地域連携ネットワークの関係者が連携・協力して 実施する支援策を構築する。
b 家庭裁判所と中核機関の適時・適切な連携体制の構築⇒将来的に市民後見人への交代を行う想定をしていた事案について、 交代を検討すべき時期が来た場合や、地域連携ネットワークの関係 者が後見人等の不正を把握した場合などにおいて、家庭裁判所と中核機関が適時・適切に連絡できるしくみを整える。

B 中核機関のコーディネート機能の強化と協議会の運営を通じた連携・協力関係の推進→ 権利擁護支援の地域連携ネットワークが、持続可能な形でその役割を果たせるようにするためには、中核機関のコーディネート機能の強化と、多様な主体による参画や連携・協力を得るための協議会の運営が重要である。
ア 協議会の運営を通じた連携・協力関係の推進→協議会は、各地域において、権利擁護支援チームを支える専門職団体や当事者等団体などを含む団体や地方公共団体等の関係機関が連携を強化し、これらの団体・機関による自発的な協力を進めるしくみである。 成年後見制度が、尊厳のある本人らしい生活の継続を支援し、地域社会への参加を図るものとして利用されるようにするため、協議会の運営 を通じて、多様な主体が理念を共有し、それぞれの役割を発揮しながら 連携・協力していく関係を推進していく必要がある。
(ア)基本的な考え方→ ・ 第一期計画では、成年後見制度に関する専門相談への対応や、家庭裁判所との連携のために、法律・福祉の専門職団体(弁護士会、 リーガルサポート、社会福祉士会等)や地方公共団体等の関係機関 などの福祉関係者等が参画する協議会が設置された。それぞれの果 たしてきた役割は重要であり、引き続き、主体的な参画と自発的協 力が期待される。 ・ 第二期計画では、尊厳のある本人らしい生活の継続の支援という 観点が強められるよう、制度を利用する当事者等の意見を反映でき る団体等に対して、協議会への参画を求めることなども重要になる。 ・ さらに、本人に適切な支援を行えるようにするため、地域の実情に応じて、民生委員協議会、自治会、日本司法支援センター(法テ ラス)、税理士会・行政書士会・精神保健福祉士協会など成年後見制 度について実績のある専門職団体、法人後見を実施する等権利擁護に関する取組を行う団体、消費生活センター、公証役場、金融機関、生活支援サービス等のサービスに係る民間事業者等との連携も求められる。金融機関には、地域連携ネットワークとの連携を図り、 本人の意思を尊重しながら、見守り等の権利擁護支援で役割を発揮することが期待される。
(イ)市町村による協議会→・ 権利擁護支援に関する業務が市町村の福祉部局が有する個人情報を基に行われること、具体的な支援の実施のためには行政や地域の幅広い関係者との連携を調整する必要があることから、引き続き、 市町村は協議会の設置・運営に取り組む必要がある。 ・ 協議会では、多様な主体の参画と自発的協力の下で、権利擁護支 援を行う3つの場面での「支援」や、地域連携ネットワークの機能 を強化するための「取組」を協議する。この際、協議会の効率的な 設置・運営を行うため、権利擁護センター等の運営委員会など既存の会議体を活用する、協議事項に応じて参加者を柔軟に追加・変更する、個別事案の「支援」と地域連携ネットワークの機能を強化するための「取組」を分けて協議するなど、地域の実情に応じた工夫も求められる。
a 権利擁護支援を行う3つの場面における「支援」の検討・協議⇒ ・ 中核機関が成年後見制度を含めた権利擁護支援の相談を受けて、 適切な支援をコーディネートするためには、具体的な支援を検討・協議する場(ケース会議や受任調整会議など)が必要である。具体 的な検討・協議事項としては、場面に応じて以下の項目に記載して いる内容が挙げられる。 ・(2)Aア(ア)権利擁護の相談支援機能。・(2)Aイ(ア)権利擁護支援チームの形成支援機能。・ (2)Aウ(ア)権利擁護支援チームの自立支援機能。・なお、支援困難事案に適切に対応するためには、必要に応じて専 門職団体や当事者団体等から助言を受けられる機会を確保すること が重要である。また、必ずしも項目ごとに定期的に検討・協議の場 を設ける必要はなく、上記の3項目について合わせて検討・協議する、臨時の検討・協議の場を設定するなど、地域の実情に応じた工 夫が求められる。
b 家庭裁判所との連携⇒ 権利擁護支援を行う3つの場面における「支援」機能を強化する ためには、家庭裁判所との間での相互理解を図ることや、個人情報 を含まない模擬事例の検討によって後見人等受任イメージを共有することなど、家庭裁判所と連携するための協議の場を設置するこ とも求められる。
c 地域連携ネットワークの機能を強化するための取組の協議 ⇒・権利擁護支援チームによる支援を充実するためには、地域連携ネットワークの機能を強化するための「取組」を協議する必要がある。 具体的な協議事項としては、以下の項目に記載している内容が挙げられる。
(ウ)都道府県による協議会 →家庭裁判所や専門職団体は都道府県単位など広域で設置されていること、担い手確保などの広域的課題への取組の必要性、家庭裁判所との連携が難しい市町村や、人口規模が小さい山間部や島しょ部 など専門職との連携が十分でない市町村に対する支援の必要性に対 応するため、都道府県にも協議会を設置する必要がある。協議事項 によっては、家庭裁判所の支部・出張所の管轄区域も踏まえて協議 会を設置し、家庭裁判所の支部・出張所も含めて実施することも期 待される。 ・ 協議会では、以下の項目に記載している内容に取り組むことが考えられる。 ・ 担い手を確保・育成するための方針策定や交流の機会の支援(具体的には「4(2)担い手の確保・育成等の推進」に記載) ・ 管内市町村の体制整備等の取組を進めるための具体的支援策の検討(具体的には「4(5)都道府県の機能強化等による地域連携 ネットワークづくりの推進」に記載) ・ なお、都道府県には、受任者調整の検討・協議の場を単独で設置することが難しい市町村でも、具体的な事案で受任者調整を行えるようにするため、都道府県自ら受任者調整の検討・協議の場を設置 するなどの支援を行うことが期待される。
(エ)市町村・都道府県による協議会の運営に関する留意点→協議会の運営は、市町村又は都道府県による直営又は委託などにより行う。協議会の運営を委託等した場合であっても、取組の質が 担保されるよう、設置主体としての責任ある関与が必須となる。市町村又は都道府県が委託する場合等の運営主体については、業 務の中立性・公正性の確保に留意しつつ、専門的業務に継続的に対 応する能力を有する法人(例:社会福祉協議会、NPO法人、公益 法人等)を適切に選定するものとする。
イ 中核機関のコーディネート機能の強化
(ア)基本的な考え方→ 成年後見制度を必要とする人が適切に制度を利用できるようにするためには、中立、公正な立場で制度を説明する相談窓口が必要。全国どの地域においても、尊厳のある本人らしい生活を継続 できるようにするために、中核機関未整備の市町村には、早期に相談窓口を整備することが求められる。その上で、相談を受けた後には、本人の意思・意向を尊重して、 地域に存在する様々な権利擁護支援(権利擁護支援チームによる見守りや意思決定の支援、日常生活自立支援事業の利用、虐待やセルフネグレクトの対応、消費生活センターの相談対応など)など、最もふさわしい支援につなぐことが重要。一方で、権利侵害からの回復などのために早期に成年後見制度の利用による支援につな げるべき場合もある。 ・ 中核機関は、成年後見制度の利用を含めた権利擁護支援のニーズ を精査して見極め、具体的な支援に早期につなぐ必要がある。
(イ)コーディネート機能を強化等するための取組 ・ 実際に行う権利擁護支援を本人中心の支援とするためには、権利 擁護支援の3つの場面における「支援」のコーディネートが機能するしくみづくりが必要(具体的には「ア(イ)市町村による 協議会」、「ア(ウ)都道府県による協議会」に記載)。この際、権利擁護支援を行う3つの場面の「支援」がより効果的に機能するよう、 既存のしくみを活かして高齢・障害分野に分けて相談窓口を整備する、身近な相談窓口は直営、受任者調整の協議や後見開始後の相談 は広域対応という形に分担するなど、地域の実情に応じた工夫を行 うことも考えられる。なお、「支援」のコーディネートに当たっては、 中核機関が相談を受けた事案に永続的に関わり続けるのではなく、 本人に身近な権利擁護支援チームが本人中心の支援を自立して行うことができるようにするという視点も重要。 ・市町村は、中核機関が、専門職団体や当事者団体から助言を受け ながら、権利擁護支援の方針や受任者調整の検討・協議を行えるよ うにする必要がある。人口規模が小さい山間部や島しょ部に所在す る市町村は、オンライン等を活用して、専門的助言を受けられるた めの取組を進める必要がある。 ・ 地域の実情に応じて、中核機関に権利擁護支援の知見がある専門 職を配置する、単独市町村で対応が困難な事案を圏域単位・都道府 県単位で設置される協議の場に持ち込んで、より専門的な助言を得 られるようにすることなども考えられる。なお、中核機関によるア ウトリーチによって、潜在化している権利擁護支援ニーズ等を情報収集することなども期待される。 ・ このほか、市町村は、地域の関係者等に意思決定支援研修を実施 するなどにより意思決定支援の取組を拡げていく、成年後見制度に 関する研修等を実施して制度を必要とする可能性がある人を早期に 把握できるようにするなど、地域の権利擁護支援を充実したものとするための取組を実施する必要がある。 ・ なお、中核機関が、本人や関係者、後見人等との間で、相談を受けた事案に関する課題認識が共有できない場合には、対応が困難になる。このため、国、専門職団体は、このような事案に関して、市 町村・中核機関が関係機関・関係団体と連携しながら対応できるようにするための方策を検討する。
(ウ)中核機関の運営に関する留意点→中核機関の運営は、市町村による直営又は市町村からの委託など により行う。市町村は、中核機関の運営を委託等した場合であっても、取組の質が担保されるよう、設置主体としての責任ある関与が必須となる。 ・ 市町村が委託する場合等の運営主体については、業務の中立性・ 公正性の確保に留意しつつ、専門的業務に継続的に対応する能力を 有する法人(例:社会福祉協議会、NPO法人、公益法人等)を適切に選定するものとする。

(4)包括的・多層的な支援体制の構築
@ 基本方針
→(1)@イで示したとおり、地域連携ネットワークは、地域における多 様な分野・主体が関わる「包括的」なものとする必要があり、また、圏域 や都道府県単位の権利擁護支援のしくみも重ね合わせた「多層的」なもの にしていく必要がある。
A 市町村による「包括的」な支援体制の構築⇒市町村は、地域連携ネットワークを「包括的」なものにしていくため、 (3)Aに記載した地域連携ネットワークの機能を強化するための取組を進める中で、介護や障害、生活困窮、子育てなど各分野のしくみと有機的に連携できる体制づくりを行う。 ・ 権利擁護支援ニーズは、本人や家族、関係者等からの相談を受け止める 中で把握できるものである。このことから、以下に示す権利擁護の相談支 援機能を強化するための取組の中で、必要な人に権利擁護支援を行うためのしくみづくりを進めることが重要である。⇒ ・ 地域で相談・支援を円滑につなぐ連携強化((3)Aウ(イ)a) ・ 中核機関と各相談支援機関との連携強化((3)Aウ(イ)b) ・ 各相談支援機関等との連携のしくみづくり((3)Aウ(ウ)a) ・ また、第二期計画では、地域連携ネットワークの趣旨として、地域社会 への参加の支援の観点を含めていくことにしている。そのため、市町村に は、国が示した考え方を参考に、地域共生社会実現に向けた包括的な支 援体制づくり(包括的な相談対応や、継続的な支援・参加支援を図る多機関の協働、地域づくり)の中で、権利擁護支援を必要としている人のニー ズへの対応も含めたしくみをつくっていくことが期待される。

B 都道府県による「多層的」な支援体制の構築 →都道府県は、市町村による「包括的」な支援体制では対応が困難な事案 等に対して、助言等の支援を行うことができる「多層的」な権利擁護支援 のしくみをつくる必要がある。 ・ 具体的には、都道府県は、国が都道府県における権利擁護支援等の助言 の担い手として養成する専門的アドバイザーを活用して、必要な助言等を 行うなど市町村支援の体制を確保する。このほか、都道府県単位の協議会 で、市町村等からの相談等を通じて把握した権利擁護支援ニーズを共有し、これらに対応した圏域単位や都道府県単位の権利擁護支援のしくみを検 討することが期待される。

C 国による「包括的」「多層的」な支援体制づくりの支援→ 国は、市町村が包括的な地域連携ネットワークづくりを効果的に進める ことができるよう、例えば、以下のような重層的支援体制整備事業と連携 した取組を進める。⇒ ・ 市町村が、成年後見制度利用促進の取組と重層的支援体制整備事業を 連携して実施する際の留意点の明示。 ・ 権利擁護支援ニーズにも対応した、包括的な相談対応、継続的な支援・ 参加支援を図る多機関の協働、地域づくりの好事例の収集。 ・ 重層的支援体制整備や地域連携ネットワークづくりに関わる好事例等 を市町村の関係部局に情報提供。・ 国は、都道府県が権利擁護支援の体制づくりを効果的に進めることがで きるよう、成年後見制度利用促進などの権利擁護支援に関する事業間の連携を有機的に可能にするための考え方を示す。 ・ 国は、今後、重層的支援体制整備事業の実施状況等を勘案しつつ、その 見直しを検討する際には、市町村や都道府県による権利擁護支援の取組 状況等も踏まえた当該事業の効果的な取組方策を検討する必要がある。

次回も続き「4 優先して取り組む事項」からです。

第12回 成年後見制度利用促進専門家会議(web会議) [2021年12月30日(Thu)]
第12回 成年後見制度利用促進専門家会議(web会議)(令和3年12月15日)
《議事》 第二期成年後見制度利用促進基本計画に盛りこむべき事項(最終とりまとめ) (案)についての意見交換
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22666.html
◎資料1第二期成年後見制度利用促進基本計画に盛りこむべき事項(最終とりまとめ)(案)
U 成年後見制度の利用促進に向けて総合的かつ計画的に講ずべき施策
2 尊厳のある本人らしい生活を継続するための成年後見制度の運用改善等
(1)本人の特性に応じた意思決定支援とその浸透→
意思決定支援は権利擁護支援の重要な要素であり、意思決定支援の理念が地域に浸透することにより、成年後見制度を含む必要な支援に適時・適切に つなぐことができるようになることはもちろん、尊厳のある本人らしい生活 を継続することができる社会の実現にも適うことになる。 後見人等は、民法(明治29年法律第89号)第858条等の趣旨に基づ き、障害特性や本人の状況等を十分に踏まえた上で、本人の意思の尊重を図 りつつ、身上に配慮した後見事務を行う必要がある。後見人等が本人を代理して法律行為をする場合、これに加えて、本人の意思決定支援の観点からも、本人の自己決定権を尊重し、法律行為の内容に本人の意思及び選好(本人に よる意思決定の土台となる本人の生活上の好き嫌い)や価値観を適切に反映 させる必要がある。 後見人等が意思決定支援を踏まえた後見事務を行うに当たっては、日常的 に本人への支援を行う様々な関係者がチームとなって意思決定支援の考え方を理解し、実践することが重要。また、家庭裁判所職員における意 思決定支援についての理解と、意思決定支援を踏まえた対応も重要である。 そのため、以下の取組を行う必要がある。↓
@ 成年後見制度の利用促進における意思決定支援の浸透 ⇒・ 都道府県等には、専門職団体の協力も得て、親族後見人や市民後見人等 の後見人等、日常生活自立支援事業の関係者、市町村・中核機関の職員 に対して、意思決定支援に係る研修等を継続的に行うことが期待される。 ・ 国は、都道府県で意思決定支援の指導者となり得る人材を育成するため、 引き続き、「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」に関する 研修を実施するとともに、成年後見制度利用促進ポータルサイトで意思決 定支援に関する最新の情報や知見を紹介するなどの取組を行う。また、国は、互助・福祉・司法の支援を効果的に行うため、権利擁護支援・意思決 定支援に関する専門職のアドバイザーの育成を行うほか、地方公共団体に おける専門的助言についてのオンライン等の活用支援などを行う。 ・ 専門職団体は、4(2)Cのとおり、専門職に対する研修等を実施する。 ・ 「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」の普及・啓発に当 たっては、同ガイドラインが示す原則的な考え方や本人を支援する関係者 によって構成されるチームによる支援の重要性のほか、本人の意思及び選好や価値観を記録し関係者が確認できるしくみの紹介などの実践につな がる普及・啓発を併せて行うことに留意する必要がある。
A 様々な分野における意思決定支援の浸透⇒・「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」(平成 29年3月31日厚生労働省)、「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」(平成30年6月厚生労働省)、「身寄りが ない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」(令和元年5月「医療現場における成年後見制度への理解及び 病院が身元保証人に求める役割等の実態把握に関する研究」班)等につい て、引き続き研修等で活用するなど、幅広い関係者に普及・啓発を行っていく必要がある。 ・ 国は、関係者等における各ガイドラインの理解状況等を把握した上で、 各ガイドラインに共通する基本的な意思決定支援の考え方についての議論を進め、その結果を整理した資料を作成する。その上で、国、地方公共団体、地域の関係者は、意思決定支援の取組が、保健、医療、福祉、介護、 金融等幅広い関係者や地域住民に浸透するよう、意思決定支援の考え方を 整理した当該資料等も活用し、研修等を通じて継続的に普及・啓発を行う。 ・ 地域住民への意思決定支援の浸透は、市民後見人の果たす役割も大きい。 このため、国は、市民後見人養成研修修了者が、地域で行われている身寄りのない人等への生活支援等のサービス提供の際に行われる意思決定支 援に参画できる方策を検討する。 ・ 意思決定支援を踏まえた支援が適切に実施されるためには、継続的な取 組や定期的な見直しが必要である。国は、関係者における意思決定支援の 取組状況や課題を踏まえ、必要に応じて、医療、福祉、介護等幅広い関係 者による支援が適切に実践される方策を検討する。 ・ 家庭裁判所においても意思決定支援に対する理解が進むことや、意思決定支援を踏まえた対応が図られることが期待される。そのため、最高裁判所においては、家庭裁判所の職員に意思決定支援の理念が浸透するよう、「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」を踏まえた必要な対 応を図ることが期待される。

(2)適切な後見人等の選任・交代の推進等全国どの地域においても、成年後見制度の利用を必要とする人が、尊厳の ある本人らしい生活を継続できるようにするためには、本人の直面する財産管理や法的課題に適切に対応するとともに、本人の自己決定権を尊重し、身 上に配慮した後見事務を適切に行う後見人等が選任される必要がある。また、 本人の状況の変化等を踏まえ、後見人等の柔軟な交代が行われることを可能 とする必要がある。さらに、適切な後見人等の選任・交代は、本人が納得し た上で、後見人等に対して適切な報酬が支払われることとも関係するものと 考えられる。 そのため、後見人等の選任・交代や報酬等のあり方などについて、以下の 取組を行う。なお、以下の取組の中には、地域の連携協力体制がその基盤と なるものがあり、これについては3の「権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり」に記載。
@ 家庭裁判所による適切な後見人等の選任・交代の推進→ 家庭裁判所は、本人の自己決定権の尊重や身上保護の充実といった第一 期計画の方針を踏まえ、自主的な努力の積み重ねで、親族後見人の選任の推進など一定の成果を出してきた。裁判事項については、裁判所が個々の 事案に応じて独立して職権を行使する性質であるものの、各家庭裁判所には、こうした成果も踏まえながら、以下の取組を含め、事案や場面に応じ た適切な対応ができるよう、引き続き努力することが期待される。 なお、苦情等への対応は、Aに記載している。⇒・ 市民後見人・親族後見人等の候補者がいる場合は、その選任の適否を検 討し、本人のニーズ・課題に対応できると考えられるときは、その候補者を選任。親族後見人から相談を受けるしくみが地域で十分に整備されていない場合は、専門職監督人による支援を検討。・ 必要に応じて複数選任や、本人のニーズ・課題や状況の変化等に応じて 柔軟に後見人の交代や追加選任を行う。 ・ 補助の開始、代理権・同意権付与や、保佐の代理権付与の審判の際、そ の必要性についても適切に審査する。その際、意思決定支援に基づく本人 による意思決定の可能性も適切に考慮する。 ・ 後見類型についても、代理権行使の必要性が低下した場合、中核機関、 専門職団体、日常生活自立支援事業の実施団体等と連携し、市民後見人等 への交代や同事業の併用などにより、意思決定支援の観点を重視する。 ・ 上記のような運用が適切に行われるようにするため、後見等の開始の審判時に後見人等の職務に関する見直しの時期・観点について関係者間で認 識を共有し、その後の状況を踏まえ、本人のニーズ・課題の状況や後見人 等の適性を定期的に再評価する。

A 後見人等に関する苦情等への適切な対応 ↓
ア 基本方針

(ア)後見人等に関する苦情等には、後見人等の不適正、不適切な職務に 関するものがある一方で、後見人等が本人・親族や支援者の意向等に 沿わないことへの不満のほか、本人・親族等が成年後見制度・実務への十分な理解のないことや、本人や支援者とのコミュニケーション不 足によって生じる意見の食い違いなど様々なものがある。 そのため、まずは、成年後見制度等に関する広報や事前の説明によ り、本人や関係者の制度に関する理解を促進することが重要。 (イ)その上で、以下の役割を基本として、苦情等に適切に対応できるしくみを地域の実情に応じて整備していく必要。⇒ ・ 家庭裁判所には、後見監督の一環として、後見人等が本人のために その職務を適切に行うよう、その職務全般(財産管理、身上保護、意思決定支援のほか、報告書作成等の後見事務手続)について、司法機 関の立場から適切な助言、指導を行うことが予定されている。そのた め、家庭裁判所には、不適正、不適切な後見事務に関する苦情等について、司法機関の立場から、専門職団体や市町村・中核機関と連携し て対応することが期待される。 ・ 専門職団体には、当該団体に所属する専門職後見人等に関する苦情 等について、家庭裁判所などと連携し、その解決に向けて適切に対応 することが期待される。また、そのための団体内のしくみの検討を進 めることが期待される。 ・ 市町村・中核機関は、身上保護に関する支援への苦情等について、 その解決に向けて関係者と連携して対応(福祉、医療等のサービスの 調整を含む。)する。さらに、必要に応じて、専門職団体と連携して対 応するほか、不適正、不適切な事案については家庭裁判所に連絡する。 ・ 都道府県には、国が都道府県における権利擁護支援等の助言の担い 手として養成する専門アドバイザーを活用した市町村支援等の対応 を検討することが期待される。
イ 具体的な取組→ ・ 後見人等に関する苦情等を把握した機関(家庭裁判所、専門職団体、 市町村・中核機関など)は、苦情等に関する事情を十分に聴取・確認し、 本人の権利・利益の観点から、苦情として具体的な対応を必要とするものかどうかを検討する。その上で、具体的な対応を必要と判断した場合、 上記ア(イ)の役割や各地域における対応体制の実情などを踏まえ、自らが主体となって調整すべきものかどうかを検討する。検討の結果、他 の機関が調整することが適当な事案の場合は、適切な機関等に対応を引き継ぐ。 ・ 家庭裁判所には、後見人等に関する苦情等がある事案(解任事由がな い場合を含む。)について、家庭裁判所、専門職団体、市町村・中核機関 等が適切に連携することにより、本人のニーズと後見人等の適格性を評価し、必要性が認められる場合には、後見人等の追加選任や交代を実現 できるよう努力することが期待される。なお、成年後見制度利用促進専 門家会議において、家庭裁判所には、専門職団体に対して専門職後見人 の不正の防止・早期発見に向けた適切な情報提供をすることが求められるとの意見もあった。 なお、成年後見制度利用促進専門家会議においては、家庭裁判所が、 必要に応じ、家事事件手続規則に基づく後見人等への指示(例:後見人 等が身上保護に関する事務や意思決定支援を行うに当たり、本人の意向を尊重する旨の指示や、本人の支援方針を検討するケース会議等に出席 する旨の指示)や、家庭裁判所調査官による調査等を適切に活用することが期待されるとの意見もあった。

B 適切な報酬の算定に向けた検討及び報酬助成の推進等→ 後見人等の報酬のあり方は、後見人等が選任される際に期待された役割を後見人等がどのように果たしたかという評価の問題であり、後見人等の選任のあり方とも密接に関係することから、適切な後見人等の選任・交代のあり方と併せて検討された。全国どの地域においても、本人の所得や資産の多寡にかかわらず、成年後見制度を適切に利用できるようにすることが重要。そのため、後見人等の適切な報酬の算定に向けた検討と申立費用・報酬の助成制度の推進等については、併せて検討される必要がある。 なお、後見人等に対して適切な報酬が支払われるどうかは、後見人等の 担い手の確保とも密接に関連することから、担い手の確保についても併せ て推進する必要があり、その方策を4(2)に記載している。
ア 適切な報酬の算定に向けた検討⇒ ・ 後見人等の適切な報酬の算定→最高裁判所及び各家庭裁判所において、当事者団体や専門職団体の意見も踏まえ、後見人等の事務の内容や負担の程度、報酬額の予測可能性の確保の観点のほか、後見人等の報告事務の負担にも配慮する観点から検討が進められている(後見 人が行った事務の内容や負担等に応じて報酬を付与し、財産管理事務のみならず身上保護事務についても適切に評価して、報酬を算定するという方向性自体については、成年後見制度利用促進専門家会議で概ね異論 はなかった。)。 成年後見制度利用促進専門家会議では、本人への丁寧な面談やケア会 議などへの出席といった日常的な関わりに応える報酬設定とすることが望ましい、専門職後見人には専門性に応じた適切な報酬が支払われるべき、後見人等の質(地方公共団体や専門職団体等による能力向上のた めの研修の受講の有無)、属性(専門職か否か)、本人の財産の多寡、地域の状況も適切に評価すべきなどの指摘や、実態の把握を適切に行うべきなどの意見があった。 ・ 現行制度において報酬付与は裁判事項であるものの、最高裁判所及び 各家庭裁判所には、報酬の算定について、上記のような指摘も踏まえ、 利用者にとっての予測可能性をできる限り確保し得る形で、考え方を早期に整理することが期待される。
イ 成年後見制度利用支援事業の推進等 ⇒・ 低所得の高齢者・障害者に対して申立費用や報酬を助成する成年後見 制度利用支援事業→市町村により実施状況が異なり、報酬を 受け取ることができない事案が相当数あるとの指摘がされている。 ・ そのため、全国どの地域においても成年後見制度を必要とする人が制 度を利用できるよう、市町村には、同事業の対象として、広く低所得者 を含めることや、市町村長申立て以外の本人や親族による申立ての場合、 後見監督人等が選任される場合の報酬も含めることなど、同事業の実施 内容を早期に検討することが期待される。 ・ 国は、上記と同様の観点から、市町村の成年後見制度利用支援事業の 取扱いの実態把握に努め、同事業を全国で適切に実施する際に参考となる留意点を示すなど、全国的に同事業が適切に実施される方策を早期に 検討する。また、上記アにより早期に考え方が整理されることが期待さ れる適切な報酬の算定に向けた検討と併せて、市町村が行う同事業に国 が助成を行う地域支援事業及び地域生活支援事業についても、必要な見 直しを含めた対応を早期に検討する。 ・ 国は、被後見人等を当事者とする民事裁判等手続を処理した法律専門 職が、被後見人等の資力が乏しいために報酬を得られない事態が生じて いるとの指摘があること等を踏まえ、法律専門職を含めた後見人等が弁 護士又は司法書士に民事裁判等手続を依頼した場合に適切に民事法律 扶助制度が活用される方策を早期に検討する。
ウ 成年後見制度の見直しに向けた検討に併せた検討等⇒ 国は、裁判官が報酬を定めるという制度を見直すべきなどといった指摘があることを踏まえ、成年後見制度の見直しに向けた検討の際、報酬のあり方についても検討を行う。関係省庁は、成年後見制度を必要とする人が適切に制度を利用できるよう、報酬のあり方の検討と併せて、報 酬助成等の関連する制度のあり方について検討する。

C 適切な後見人等の選任・交代の推進等に関するその他の取組
ア 本人情報シートの活用の推進
→ 本人情報シートは、適切な医学的診断が行われ、本人にとって適切な 後見人等が選任されるために有益であり、後見等開始の審判において多 くの事案で提出されている。他方、本人情報シートが裁判所には提出されているが、診断書を作成する医師に提供されていない事案が一定数あ ることから、家庭裁判所には、専門職団体や市町村・中核機関等とも連携し、作成された本人情報シートが確実に医師に提供されるよう、申立人に対する分かりやすい説明や関係者への更なる周知などに取り組む ことが期待される。また、最高裁判所には、本人情報シートの活用の状況や実態の把握に努め、本人にとって適切な後見人等の選任・交代が促 進されるよう、専門職団体や福祉関係者等の関係者と連携し、本人情報シートの更なる活用に向けた方策(例えば、申立後の本人情報シートの活用、「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」の様式等の併 用)を検討することが期待される。
イ 後見申立等に関するその他の取組→ 最高裁判所・家庭裁判所には、本人にとって適切な後見人等の選任・ 交代が推進されるとともに、申立人・後見人等の事務負担の軽減や手続の迅速化にも資するよう、家庭裁判所への後見等開始の審判の申立てや 後見事務の報告に関する書類などのあり方を含め、必要な方策を検討す ることが期待される。

(2)不正防止の徹底と利用しやすさの調和等→不正事案は、第一期計画に基づく取組により減少しつつあるが、成年後見 制度をより安心かつ安全な制度とするため、引き続き不正防止の取組が重要。そのため、監督機能の充実・強化が必要、家庭裁判所のみならず関係機関・関係団体は、不正事案の発生を未然に抑止するための 方策を推進する必要がある。その際、成年後見制度の利用促進は、制度の利 用を必要とする人が尊厳のある本人らしい生活を継続することができるよ うにするものであることを踏まえ、本人の意思の尊重や利用しやすさも考慮 して進める必要がある。 また、利用者が安心して成年後見制度を利用できるようにするには適切な 事後救済策も重要であり、そのために必要な方策を推進する必要がある。 なお、任意後見制度における不正防止については、4(1)に記載している。

@ 成年後見制度支援信託及び成年後見制度支援預貯金の普及等→後見人等による 不正防止に有用であるとともに、財産管理の負担が軽減されることで親族後見人の適切な選任にも資するものである。また、成年後見制度支援預貯金は、身近な金融機関でも導入が比較的容易であるなどのメリットがある。 一方、その運用においては、財産の固定化によって本人の積極的な財産活 用や日常生活への柔軟な対応に支障が生じないよう留意が必要。 金融機関には、必要に応じ最高裁判所や関係省庁とも連携しつつ、これらのしくみの導入や改善を図ることが期待される。また、利用者の立場か らの意見を聴く場を設けるなどして、本人等の具体的なニーズや利用者側 から見た課題等、利用者側の意見を聴取することも期待。 家庭裁判所には、後見人等の担い手となる団体等に対して、これらのしくみを導入している金融機関に関して把握している情報を適切に提供することが期待される。 国は、最高裁判所と連携し、金融機関における自主的取組等や専門職団 体等における対応強化策の検討の状況を踏まえ、必要に応じ、より効率的 な不正防止のための方策を検討する。

A 家庭裁判所の適切な監督に向けた取組→ 最高裁判所・家庭裁判所には、引き続き、不正防止のため、成年後見制度支援信託・成年後見制度預貯金や後見監督人等の活用が難しい親族後見 人に対するものを含め、適切な監督に向けた取組をすることが期待される。

B 専門職団体や市民後見人を支援する団体の取組→専門職団体は各専門職に対して、市民後見人を支援する社会福祉協議会 等の団体は各市民後見人に対して、それぞれ後見事務における不正防止の取組を受任前・養成の段階から進めることが期待される。また、後見事務→不適正な点を発見した場合は、家庭裁判所と連携し適切に対応す る必要がある。

C 権利擁護支援の地域連携ネットワークによる不正行為の防止効果 本人の意思を尊重しつつ、後見人等による不正行為の防止を含めた本人 の権利擁護をより確実なものとするためには、後見人等を孤立させないよう、必要に応じた支援の下、権利擁護支援チームの一員として後見人等 が職務を行うことができる環境整備が重要。そのため、3のとおり、 権利擁護支援の地域連携ネットワークづくりを進めるほか、専門職団体は、 各団体に所属する専門職後見人等に対し積極的に助言等を行う。

D 成年後見制度を安心して利用できるようにするための更なる検討→不正防止 策に加えて、後見事務に起因して生じた損害を補償する保険などの適切な 事後救済策も重要。そのため、専門職団体や、市民後見人を支援す る社会福祉協議会等の団体には、保険会社とも連携し、後見人等の故意に よる損害を補償する保険を含め、適切な保険の導入に向けた検討を進めることが期待。 その上で、こうした保険の導入状況や成年後見制度の見直しの検討状況 なども踏まえ、関係省庁、最高裁判所、専門職団体、市民後見人を支援する社会福祉協議会等の団体は、保険会社とも連携し、必要に応じ、適切な 事後救済策の普及方策を検討する。

(4)各種手続における後見事務の円滑化等→市町村・金融機関の窓口において、成年後見制度の利用者が、成年後見 制度を利用したことによって不利益を被ることのないよう、国及び地方公共団体は、市町村の成年後見制度利用促進の担当部署以外の関係部署及び 金融機関の窓口担当者に対して、同制度の理解の促進を図る必要がある。 国及び地方公共団体は、新たな行政手続を創設する場合、成年後見制度の利用者が、同制度を利用したことによって不利益を被ることのないよう、 適切に対応する必要がある。また、国及び地方公共団体は、行政手続のデジタル化に当たり、成年後見制度の利用者が、成年後見制度を利用したこと によって、同制度以外の代理人による手続利用の場合と比較して不利益を 被ることのないよう、適切に対応する必要がある。 金融機関には、本人以外から預金取引の申出や保険金等の支払請求を受けた際、当該申出等が本人の日常生活の支援という目的・範囲に照らして 合理的なものであるかどうかの確認を行うだけでなく、本人の権利擁護の観点から、本人にとっての必要性や利便性とともに、権利侵害の防止も重視して対応することが期待される。上記の観点から、国は、金融機関に対し て、成年後見制度や権利擁護支援の理解を促進するための周知等を行う。

長いですが、次回も続き「3 権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり」からです。

第12回 成年後見制度利用促進専門家会議(web会議) [2021年12月29日(Wed)]
第12回 成年後見制度利用促進専門家会議(web会議)(令和3年12月15日)
《議事》 第二期成年後見制度利用促進基本計画に盛りこむべき事項(最終とりまとめ) (案)についての意見交換
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22666.html
◎資料1第二期成年後見制度利用促進基本計画に盛りこむべき事項(最終とりまとめ)(案)
はじめに ↓
1 成年後見制度利用促進基本計画の位置付け
→成年後見制度の利用の促進に関する法律(平成28年法律第29号。「促進法」)第12条第1項に基づき、成年後見制度の利用の促進に関する施 策の総合的かつ計画的な推進を図るために策定するもの、政府が講ずる成年後見制度利用促進策の基本的な計画として位置付。市町村は、国の基本計画を勘案し当該市町村の区域における成年後見制度の利用の促進に関する施策についての基本的な計画を定めるよう努めるものとされている。
2 新たな基本計画の必要性→平成29年度から平成33年度(令和3年度)までを最初の 計画(第一期計画」)、利用者がメリットを実感できる成年後見制度の運用改善、権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり、安心して成年後見制度を利用できる環境の整備などを進めてきた。 これにより、本人の意思決定支援や身上保護を重視した成年後見制度の 運用が進みつつあり、各地域で相談窓口の整備や判断能力が不十分な 人を適切に必要な支援につなげる地域連携のしくみが整備されつつある。 他方、成年後見人・保佐人・補助人(「後見人等」)が意思決定支援や身上保護を重視しない場合があり、利用者の不安や不満につながっているといった指摘や、成年後見制度や相談先等の周知が未だ十分でないな どの指摘がされている。権利擁護支援の地域連携ネットワークなどの 体制整備は、特に小規模の町村などで進んでいない。団塊の世代が 後期高齢者となる2025年を迎えて、認知症高齢者が増加するなど、成年 後見制度の利用を含む権利擁護支援のニーズが更に多様化、増大する見込みであり、こうした状況に適切に対応する必要がある。 そこで、新たな基本計画(「第二期計画」)を定め、更なる施策の推進を図ることとする。
3 第二期計画の対象期間 →令和4年度から令和8年度までの5年間とする。

T 成年後見制度の利用促進に当たっての基本的な考え方及び目標
1 成年後見制度の利用促進に当たっての基本的な考え方
(1) 地域共生社会の実現に向けた権利擁護支援の推進
→ノーマライゼーション、自己決
定権の尊重等を基本理念とする成年後見制度は、認知症、知的障害その他の精神上の障害により判断能力が不 十分な人の権利擁護を支える重要な手段であり、身上保護と財産管理の支援 によって、本人の地域生活を支える役割を果たしている。その利用促進の取組は、市民後見人等地域住民の参画を得ながら、家庭裁判所、関係行政機関、地方公共団体、専門職団体、民間団体等の協働による権利擁護支援の地域連携ネットワークを通じて推進されるべきもの。このネットワ ークは、他の様々な支援・活動のネットワークと連動しながら、地域におけ る包括的・重層的な支援体制をかたちづくっていくことによって、地域共生 社会の実現という共通の目的に資することになる。したがって、成年後見制 度の利用促進とは、単に利用者の増加を目的とするのではなく、全国どの地 域においても、制度の利用を必要とする人が、尊厳のある本人らしい生活を 継続することができる体制の整備を目指すものでなければならない。そこで、第二期計画ではこれを明確にした上で取組を進めていくことが重要。権利擁護支援とは、地域共生社会の実現を目指す包括的な支援体制における本人を中心 にした支援・活動の共通基盤であり、意思決定支援等による権利行使の支援 や、虐待対応や財産上の不当取引への対応における権利侵害からの回復支援 を主要な手段として、支援を必要とする人が、地域社会に参加し、共に自立 した生活を送るという目的を実現するための支援活動であると定義することができる。第二期計画では、地域共生社会の実現という目的に向け、本人を中心にした支援・活動における共通基盤となる考え方として「権利擁護 支援」を位置付けた上で、権利擁護支援の地域連携ネットワークにおける権 利擁護支援策の一層の充実などの成年後見制度利用促進の取組をさらに進 めていくこととする。
(2)尊厳のある本人らしい生活を継続できるようにするための成年後見制度の運用改善等→ @ 後見人等による財産管理のみを重視するのではなく、認知症高齢者や障 害者の特性を理解した上で、本人の自己決定権を尊重し、意思決定支援・ 身上保護も重視した制度の運用とすること。 A 法定後見制度の後見類型は、終了原因が限定されていること等により、 一時的な法的課題や身上保護上の重要な課題等が解決した後も、実際のニ ーズにかかわらず、成年後見制度が継続することが問題であるとの指摘や、一時的な利用を可能として、より利用しやすい制度とすべきではないか等 の指摘もある。そのため、上記@に加えて、成年後見制度を利用すること の本人にとっての必要性や、成年後見制度以外の権利擁護支援による対応 の可能性も考慮された上で、適切に成年後見制度が利用されるよう、連携 体制等を整備すること。 B そのため、成年後見制度以外の権利擁護支援策8を総合的に充実するこ と。 C 本人の人生設計についての意思を反映・尊重できるという観点から任意 後見制度が適切かつ安心して利用されるための取組を進めるとともに、本 人の意思、能力や生活状況に応じたきめ細かな対応を可能とする補助・保 佐類型9が利用される取組を進めること。 D 安心かつ安全に成年後見制度を利用できるようにするため、不正防止等 の方策を推進すること。
(3)司法による権利擁護支援などを身近なものにするしくみづくり→ 権利侵害からの回復支援を進める上での重要な核の一つが家庭裁判所や 法律専門職である。身近な相談窓口を通じて、家庭裁判所の手続の利用を円 滑にすることや法律専門職による支援などを適切に受けられるようにする ことで、権利侵害からの回復支援の実質を担保することができ、尊厳のある 本人らしい生活の継続と地域社会への参加が図られる。 そのため、権利擁護支援の地域連携ネットワークを通じた福祉と司法の連 携強化により、必要な人が必要な時に、司法による権利擁護支援などを適切 に受けられるようにしていく必要がある。

2 今後の施策の目標等
(1) 目標
@ 1の「成年後見制度の利用促進に当たっての基本的な考え方」を踏まえ、 障害の有無にかかわらず尊厳のある本人らしい生活の継続や本人の地域 社会への参加等のノーマライゼーションの理念を十分考慮し、成年後見制度の見直しに向けた検討を行う。また、同様の観点から、市町村長申立て 及び成年後見制度利用支援事業の見直しに向けた検討も行う。さらに、権 利擁護支援策を総合的に充実するための検討を行う。

A 1の「成年後見制度の利用促進に当たっての基本的な考え方」を踏まえ、 成年後見制度の運用改善等や、権利擁護支援の地域連携ネットワークづくりに積極的に取り組む。
(2)工程管理
@ (1)に基づく各施策について、工程表に基づき推進するとともに、施策の性質に応じて設定したKPIの達成に向けて取り組む(別紙参照)。 なお、成年後見制度利用促進専門家会議→家庭裁判所にもK PIを設定すべきとの意見もあった。最高裁判所は、成年後見制度の利用促進に関する各家庭裁判所の自律的な取組を支援するとともに、できる限り客観性を確保した形で定期的にその進捗状況を同会議に報告するなどして、取組を進めることが期待される。
A 成年後見制度利用促進専門家会議は、進捗管理が特に重要な施策(U1 (2)の「総合的な権利擁護支援策の充実」など)について、ワーキング・ グループを設置し、定期的に検討状況を検証する。

B 成年後見制度利用促進専門家会議→第二期計画の中間年度である令和6年度に、中間検証として、各施策の進捗状況を踏まえ、個別の課題の整理・検討を行う。国その他成年後見制度の利用促進に関わる関係機関・関係者は、中間検証の結果を踏まえ、第二期計画の取組を推進する。

U 成年後見制度の利用促進に向けて総合的かつ計画的に講ずべき施策→尊厳のある本人らしい生活の継続や地域社会への参加等のノーマライゼー ションの理念のより一層の実現を図るためには、成年後見制度等が適切に見直される必要がある。さらに、同制度等が見直されるまでにおいても、総合的な権利擁護支援策の充実、現行制度の運用の改善等、権利擁護支援の地域連携ネットワークづくりを進める必要がある。 そこで、以下のとおり取り組むこととする。
1 成年後見制度等の見直しに向けた検討と総合的な権利擁護支援策の充実
(1)成年後見制度等の見直しに向けた検討
→成年後見制度については、他の支援による対応の可能性も踏まえて本人に とって適切な時機に必要な範囲・期間で利用できるようにすべき(必要性・ 補充性の考慮)、三類型を一元化すべき、終身ではなく有期(更新)の制度として見直しの機会を付与すべき、本人が必要とする身上保護や意思決定支援の内容やその変化に応じ後見人を円滑に交代できるようにすべきといった制度改正の方向性に関する指摘、障害者の権利に関する条約に基づく審査の状況を踏まえて見直すべきとの指摘、現状よりも公的な関与を強めて後見等を開始できるようにすべきとの指摘などがされている。国は、こうした成年後見制度利用促進専門家会議における指摘も踏まえ、障害の有無にかかわらず尊厳のある本人らしい生活の継続や本人の地域社会への参加等のノーマライゼーションの理念を十分考慮し、成年後見制度の見直しに向けた検 討を行う。 また、市町村長の関与する場面の拡大など地方公共団体に与えられる権限を拡充すべきといった指摘や、成年後見制度利用支援事業の見直しに関する 指摘もされている。国は、こうした成年後見制度利用促進専門家会議における指摘も踏まえ、これらの権限・事業についても見直しに向けた検討を行う (成年後見制度利用支援事業については2(2)Bイ参照)。
(2)総合的な権利擁護支援策の充実→(1)の成年後見制度の見直しの検討をより深めていくためには、成年後見制度以外の権利擁護支援策を総合的に充実させていく必要がある。そのため、新たに意思決定支援12等によって本人を支える各種方策、司法による権利擁護支援を身近なものとする各種方策の検討を進め、これらの検討や成年後見制度の見直しの検討に対応して、福祉の制度や事業の必要な見直しを検討。
@ 成年後見制度と日常生活自立支援事業等との連携の推進及び同事業の実施体制の強化 ⇒・ 日常生活自立支援事業は、専門員が作成した支援計画の下で、地域住民 が生活支援員として本人に寄り添い、見守り、意思決定支援を行いながら適切な金銭管理等を支援することで、尊厳のある本人らしい生活の安定を 図る互助のしくみであり、そのことにより地域福祉が推進されている。一 方、地域によって同事業の待機者が生じていることや利用者数にばらつき があること、同事業からの成年後見制度への移行に課題があることも指摘。 ・ 国は、地域の関係者が個別事案において本人の尊厳保持のために適切な 支援の組合せを検討することができるよう、日常生活自立支援事業等関連 諸制度における役割分担の検討方法について各地域に周知する。また、 国は、成年後見制度の利用を必要とする人が、適切に日常生活自立支援事 業等から移行できるよう、市町村の関係部署や関係機関・関係団体との間 で個別事案における対応方針の検討等を行う取組を進めるなど、同事業の 実施体制の強化を行う。さらに、上記の指摘を踏まえ、生活困窮者自立支援制度等との連携も考慮しつつ、日常生活自立支援事業の効果的な実施方策について検討し、その結果を幅広く周知するなど、地域を問わず一定の 水準で利用できる体制を目指す。 ・ 家庭裁判所においても日常生活自立支援事業を含む権利擁護支援に対 する理解が進むことが期待される。そのため、最高裁判所においては、家庭裁判所の職員に権利擁護支援の理念が浸透するよう、必要な対応を図ることが期待される。
A 新たな連携・協力体制の構築による生活支援・意思決定支援の検討→ 多様な地域課題に対応するため、公的な機関や民間事業者において、身 寄りのない人等への生活支援等のサービス(簡易な金銭管理、入院・入所手続支援等各種の生活支援サービス。以下同じ。)、本来業務に付随した身 寄りのない人等の見守り、寄付等を活用した福祉活動等様々な取組が行わ れている。こうした取組については、公的な制度の隙間を埋めるものや公的な制度利用の入口として効果的であるとの指摘がある一方、一部の事業者については運営方法が不透明であるなどの課題も指摘。⇒ ・ そのため、国は、公的な機関、民間事業者や当事者団体等多様な主体による生活支援等のサービスが、本人の権利擁護支援として展開されるよう、 意思決定支援等を確保しながら取組を拡げるための方策を検討する。 ・ その際、身寄りのない人も含め誰もが安心して生活支援等のサービス を利用することができるよう、運営の透明性や信頼性の確保の方策、地 域連携ネットワーク等との連携の方策も検討する。 ・ 生活支援等のサービスの提供における意思決定支援等の確保の検討の際には、意思決定支援の取組の推進において市民後見人の果たしてきた役割が大きいこと、ピアサポートの支援が効果的であることに鑑み、 市民後見人養成研修の修了者や障害のある当事者等の参画方策の検討を進める。加えて、これらの者が、必要に応じて専門職等の支援等を受 けながら意思決定支援を行う方策を、市町村の関与のあり方も含めて検 討。 ・ 上記の検討の際、意思決定支援の場面において、権利侵害や法的課題 を発見した場合、専門職等が必要な支援を助言・実施したり、行政の関 与15を求めたり、専門職による法的支援や成年後見制度につないだりす ることなど、司法による権利擁護支援を身近なものとする方策について も検討を進める。 ・ そのほか、サービス等に関する丁寧な説明や本人に合わせた説明が意 思決定しやすい環境づくりに寄与することに鑑み、公的な機関、民間事 業者には、合理的配慮に関する取組を行うことが期待される。国及び地 方公共団体は、これらの取組が進むよう、関係者に理解を促す取組を進 めていく。 ・ 身寄り等がいなくとも、地域において安心して暮らすことができるよう、国及び地方公共団体は、身元保証人・身元引受人等がいないことを 前提とした医療機関の対応方法や、施設入所時の身元保証人や公営住宅 入居時の連帯保証人を求める必要はないことなどについて、事業者等に 理解を促す取組などを更に進めていく。
B 都道府県単位での新たな取組の検討
ア 寄付等の活用による多様な主体の参画の検討⇒・ 権利擁護支援を実施している団体(法人後見を実施している団体等) は、支援の具体的な実践や課題、解決策について、地域住民や企業等広く地域社会に周知して資金を調達することで、公的財源では性質上対応 困難な課題にも、柔軟な対応をすることが可能となる。また、地域住民や企業等が、権利擁護支援の実践への理解や共感をもち、寄付やボラ ンティア活動などによる参画をすることは、地域における権利擁護支援の意識の醸成につながり、参画者の積極性を生み出す。 ・ 国は、各地域(例えば都道府県単位)で、こうした取組が普及するよう、必要な方策を検討する。その際、サービス提供者がサービス利用者 から直接寄付等を受けることは利益相反のおそれがあるため、本人が不利益を被らないようなしくみ、資金の適切な管理方法・効果的な活用方法等も検討する。
イ 公的な関与による後見の実施の検討⇒ ・ 虐待等の支援困難な事案については、専門職後見人や一般的な法人後見では対応が困難な場合があると指摘されている。そのため、こうした 場合でも、尊厳のある本人らしい生活を安定的に支えることができるよう、国は、そのような事案を受任する法人が都道府県等の適切な関与を 受けつつ後見業務を実施できるよう、法人の確保の方策等を含め検討す る。

次回も続き「2 尊厳のある本人らしい生活を継続するための成年後見制度の運用改善等」からです。

社会保障審議会障害者部会(第124回) [2021年12月28日(Tue)]
社会保障審議会障害者部会(第124回)(令和3年12月13日)
《議事》(1)中間整理(案)について (2)その他
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000195428_00050.html
◎資料2 地方分権提案について(精神障害者保健福祉手帳の更新期間の延長等)
○地方分権提案内容→令和元年地方分権提案において、身体障害者手帳には有効期限がない一方、精神障害者保健福祉手帳は2年に1回の更新が必要であり、手帳所持者の増加に伴い、市町村窓口での事務手続きや審査・判定を行う精神保健福祉センターの業務量が増えており、業務負担軽減を図る必要があることから手帳の有効期限を現行の2年から4年に延長することが提案されていた。

○現状・課題↓
・ 令和元年の地方からの提案等に対する対応方針(令和元年12月23日閣議決定)においては、関係団体の意見を 把握した上で、有効期限の延長を含めた地方公共団体の事務負担を軽減する方策について検討し、令和2年中に結 論を得ることとされた。
・ その後、有効期限の延長に関し、精神疾患は病状が変化する可能性があり、4年間ごとの更新では長すぎるので はないかといった意見が公益社団法人日本精神神経学会からあった。令和2年においては、地方公共団体の事務負担軽減策として、手帳交付事務における年金関係情報の取得を円滑にするため、情報照会マニュアルを改正した。引き続き、医学的なデータや地方公共団体の実務の実態の把握を行い、これらの結果や社会保障審議会(障害者部会)からの意見を踏まえ、有効期間の延長を含めた事務負担を軽減する方策について検討し、令和3年度中 に結論を得る予定となっている。

○調査概要及び結果→<調査概要><調査対象者の選定と人数><調査項目>
<調査結果>→調査対象者の約半数において調査項目のいずれかで生活能力の状態に何らかの変化があり、2〜3割の者に状態の改善がみられた。

○調査を踏まえた検 討結果(案)⇒ 上記の検討結果を踏まえ、手帳の有効期限については現行どおり2年とする。なお、地方分権提案のあった地方公共団体へのアン ケート結果によると、手帳交付者数の増加が事務負担の一因となっていると分かった。国においては、デジタル庁を中心に地方公共団 体が使用する事務システムの標準化について検討を進めており、長期的にこうした取組等を通じて事務負担の軽減を図ることとする。

医学的調査結果詳細(その1 )→・調査対象時点:調査時点における1年前との比較
年代別」→20代 未満を除いて全世代変化あり。
「変化有無の割合」→47%の変化あり。

○医学的調査結果詳細(その2)→対応が出来るようになっている(19〜32%)。
○事務的調査結果詳細→提案のあった地方公共団体に対して行ったアンケート結果は以下 のとおり。( 調査対象地方公共団体:5団体)⇒1〜6までの参照。

次回は新たに「第12回 成年後見制度利用促進専門家会議(web会議)」からです。

社会保障審議会障害者部会(第124回) [2021年12月27日(Mon)]
社会保障審議会障害者部会(第124回)(令和3年12月13日)
《議事》(1)中間整理(案)について (2)その他
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000195428_00050.html
◎資料1 障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しについて 中間整理(案)
W 引き続き検討する論点について
4.精神障害者等に対する支援について
(1) 現状・課題 ↓
○ 精神障害の有無や程度に関わらず誰もが安心して自分らしく暮らすことができる よう
、本年3月の精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会報告書では、必要な諸制度の見直し、以下の具体的な取組についての検討の必要性について指摘されている。 ・ 支援体制→精神障害を有する方等の日常生活圏域を基本として、市町村 などの基礎自治体を基盤として進める必要がある。精神保健に関わる業務の市町村の位置付けを見直し、市町村が精神保健に関する相談指導等について積極的に担えるよう、必要な環境整備を行うべき。 また、長期在院者への支援→市町村が精神科病院との連携を前提に、病 院を訪問し、利用可能な制度の説明等を行う取組を、制度上位置付ける必要がある。 ・ 「本人の困りごと等」に関する多職種・多機関の情報共有→個別支援の場においては精神障害を有する方等の意向を確認した上で情報共有を図ること、協 議の場といった地域の基盤整備に係る議論をする場においては守秘義務の担保を前提とする等の観点が重要。 市町村における協議の場→精神科病院協会や医師会等の関係団体、精神科医療機関、保健関係者の参加を積極的に求めていく必要がある。 ・ 精神障害を有する方等がかかりつけとしている精神科医療機関が、精神科医療機関の多職種及び地域援助事業者、地域包括支援センター等や行政機関の職員等と連携しながらチームを総括し、ケースマネジメントを行うことや、精神科以外の診療科との連携を図り身体合併症等に対応すること等、いわゆる「かかりつけ精神科医」機能を果たすことが求められる。また、他科の「かかりつけ医」との連携の強化が 有効。 ・ 精神科医療機関には、入院中の精神障害を有する方等が地域で安心して生活することができるよう退院後支援を推進する役割もある。精神障害を有する方等へのわかりやすい説明や意思決定の支援等を含めた権利擁護のための取組の更なる充実を 図ることが求められる。 ・ 精神障害を有する方等の地域生活を支えるための重要な基盤の一つとして、精神 科救急医療体制を整備することは、誰もが必要な時に適切な精神医療を受けること ができる体制を構築する観点から特に求められており、整備に必要な諸制度による 手当てを行う必要がある。 ・ ピアサポーターには多職種との協働により、専門職等の当事者理解の促進及び意 識の変化や支援の質の向上、普及啓発や教育、精神保健相談、意思決定支援等に寄 与することが期待される。身近に経験を共有できる仲間やロールモデルの存在があることにより、エンパワメントを主眼としながら、内面的にも社会的にもリカバリ ーしていくことができるよう、ピアサポートの活用を更に進める必要がある。 ・ 精神障害を有する方等の家族にとっても、必要な時に適切な支援を受けられる体制が重要であり、市町村等は協議の場に家族の参画を推進し、家族のニーズを踏まえた家族支援の体制について話し合い、これを踏まえ、わかりやすい相談窓口の設置等の取組の推進が求められる。
(2) 検討の方向性 ↓
○ 本年 10 月に立ち上げられた地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会において、
「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に規定する入院に関わる制度の在り方、長期在院者への支援の在り方、患者の意思決定支援や患者の意思に基づいた退院後支援の 在り方、隔離・身体的拘束の最小化に係る取組、虐待の防止に係る取組等について、 当事者、家族、医療関係者、福祉関係者、行政関係者、学識経験者等の意見を踏まえ、 議論を深めるべき。
○ 今後の議論に当たっては、 ・ 精神保健に関する市町村の相談支援体制→市町村から充実した支援を受 けることができるよう、相談支援を担う職員の教育・研修の仕組みや財源の確保。・ 精神医療の提供体制→いわゆる「かかりつけ精神科医」機能の役割を含 むケースマネジメントの担い手や、他科の「かかりつけ医」との連携の在り方。・ 医療と福祉の緊密な連携のもと精神障害者の地域移行をより一層進めるため、精 神科医療機関の精神保健福祉士等と地域生活支援拠点等のコーディネーターとの 連携の強化等に留意しつつ、精神障害の有無や程度に関わらず、誰もが、制度の狭間に残されることなく、安心して自分らしく暮らすことができるよう、高次脳機能障害や発達障害を含め、多様な障害特性に配慮しながら、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステ ム」の構築に向けた検討を進めるべきである。

5.障害福祉サービス等の質の確保・向上について
(1) 現状・課題 ↓
○ 障害福祉サービス等の質の確保・向上
→これまでも、指定障害福祉サービス等の人員配置や設備・運営に関する基準の遵守や都道府県等による指導監査、障害福祉サービス等情報公表制度等により、実施してきた。 障害福祉サービス等の利用者が多様化するとともに、障害福祉サービス等を提供する事業者が増加する中で、利用者の個々のニーズに応じた良質なサービスを提供する観点から、これまでの取組における課題への対応も含め、事業者が提供する障害福祉サービス等の質の確保・向上を図っていくことが重要。
(2) 検討の方向性 ↓
(サービスの質の評価) ↓

○ すでに放課後等デイサービス、児童発達支援等一部のサービスで導入されている事 業者による自己評価や利用者評価について、各サービスの特性も踏まえつつ、具体的 な評価項目について整理した上で、他のサービスにも展開していくことや、専門的な 観点も含めた第三者による外部評価の導入について、検討する必要がある。 特に第三者による評価については、介護分野において、認知症グループホームなど の地域密着型サービスについて、地域に開かれたサービスとすることで、サービスの 質を確保することを目的として、指定基準において、第三者を含む運営推進会議を設置し、定期的に運営状況の評価を受けるなどの取組等が義務付けられている。障害福 祉サービス等においても、特に質の評価を行う必要性の高いサービスから、こうした 仕組みの導入により、サービスの質の確保・向上に取り組むことについて、研究・検討を進める必要がある。その際は、被評価主体が取組の改善に効果的につなげるため の助言が適切に行われることを意識しながら検討を進めることが重要である。
(障害福祉サービス等報酬によるサービスの質に係る評価) ↓
○ サービスの質の評価
→医療・介護分野においては、ストラクチャー(構 造)、プロセス(過程)、アウトカム(結果)の3つの視点からアプローチがなされている。 プロセス指標やアウトカム指標は、利用者に対するサービスの内容そのものを一層 評価することに資する。このため、今後の障害福祉サービス等報酬の改 定の検討等に当たっては、ストラクチャー、プロセス、アウトカムの3つの視点を持 って、障害福祉サービス等の目的・特性も踏まえつつ、プロセスの視点に基づく報酬 の評価をより充実させつつ、併せてアウトカムの視点に基づく報酬の評価についても、 当該評価手法が適切なサービスについては、その導入について研究・検討する必要がある。
(障害福祉サービス等情報公表制度) ↓
○ 障害福祉サービス等情報公表制度→利用者による個々のニーズに応じた 良質なサービスの選択に資すること等を目的として創設されたものであるが、こうし た目的を十分に達成するためには、全ての事業者における登録・公表を確実に実施するための方策を検討するとともに、障害福祉サービス等情報公表制度における事業者 からの報告内容を適切な記載としていくために必要な取組を進める必要がある。
障害福祉分野におけるデータ基盤の整備) ↓
○ 介護分野においては、要介護認定情報、介護レセプト等情報の収集等について
、既 に「介護保険総合データベース」として整備・運用されており、障害福祉分野におい ても、将来的にサービスの質の更なる向上等を図る観点も含め、障害福祉計画等の作成、実施及び評価並びに障害者の動向の把握等に資するため、介護保険総合データベースに相当するデータ基盤の整備に取り組んでいる。 当該データ基盤の整備に当たっては、介護保険法と同様、国の調査分析、市町村による補装具を含む自立支援給付等のデータ提供、第三者への提供等に係る仕組みを設けることが必要。 また、障害福祉分野においても、医療・介護分野において進められているデータの 連結解析ができるようにしていくべきとの意見もあることから、将来的に保健医療分野の公的データベースと連結解析が行えるような仕組みの整備についても併せて検 討することが必要である。
(実地指導・監査の強化)
○ 障害福祉サービス等の質・適正な給付を担保する仕組みとして、障害者総合支援法 に基づく国や都道府県等による調査の権限が規定されているが、障害福祉サービス等の利用者や事業所の増加に伴い、事業所の指導監督等の業務が増加し、十分な指導監督が実施できていないため、都道府県等に対する支援を検討する必要がある。 このため、実地指導・監査の機能についても、その他の質の向上に係る取組と合わせて強化するため、不適切な事業所が多いサービス等の実地指導・監査を重点実施するとともに、都道府県等監査担当職員と専門家の連携など各都道府県等の実地指導・ 監査の取組好事例や指導監査マニュアル作成等の実施を検討する必要がある。

6.制度の持続可能性の確保について
(1) 現状・課題 ↓
○ 事業者の指定に当たっては
、障害福祉サービス供給量のコントロールの観点から、 生活介護、放課後等デイサービス等→都道府県知事等は、指定を拒否する ことができる総量規制の仕組みが設けられている。 一方、政令市、中核市以外の一般市町村は、障害福祉計画等において必要なサービス見込み量等を定めることとされているにも関わらず、事業者の指定においては、基本的に一般市町村は関与できない仕組みとなっており、利用者の障害特性等のニーズに応じた事業所の適切な整備がなされていない可能性があるとの指摘や、市町村が知らない間に新規事業者の指定が行われるケースがあるとの指摘がある。
○ 障害福祉サービス等を安定的に提供していくために、障害福祉人材の確保は重要。また、人材の確保の観点からも、障害福祉現場の業務効率化や職員の負担軽減 を推進していくことが必要である。
(2) 検討の方向性
(障害福祉サービス等の事業者の指定) ↓

○ 地域ごとの障害福祉サービス等のニーズを適切に踏まえた事業所の整備が進むよう、事業者の指定に市町村が関与することが有益と考えられる場合もあることから、 都道府県知事の行う指定障害福祉サービス事業者等の指定において、市町村が意見を申し出ることを可能とし、都道府県は当該指定に当たり事業の適正な運営を確保するために必要と認める条件を付することができることとする仕組みの導入を検討する必要がある。
(ICT等の活用推進) ↓
○ 障害者本人のQOL向上への活用や障害福祉現場の業務効率化及び職員の負担軽 減をさらに推進していく必要があることを踏まえ、調査研究等の実施を通じて、障害福祉分野におけるICT活用やロボット導入に関する実証データの収集に努めながら、その方策等について検討を進める必要がある。 また、介護分野での状況も踏まえながら、ICT活用等による報酬上の評価や基準の見直し等も含め、具体的なICT活用等の推進方策の検討が必要。 特に、各種記録や計画の作成、移乗介護等の介護業務、相談支援、自立生活援助等の地域生活を支援する業務等において、障害特性に応じたICT活用やロボット導入 により、業務効率化や職員の業務負担軽減をさらに推進する必要がある。
(障害福祉サービス等における人材確保と育成)
○ 障害福祉サービス等を安定的に提供していくために、障害福祉人材の確保は重要で ある。このため、報酬改定による処遇改善や、障害福祉分野への多様な人材の参入を 促進するための障害福祉の仕事の魅力の情報発信、返済免除条件付きの就職支援金貸 付事業を実施しているが、必要な財源を確保しつつ、こうした取組を一層推進してい く必要がある。 障害福祉サービス分野において、質の高い人材の定着が図られるよう、従事者のやりがいやキャリアアップ、利用者との良好な関係性等の視点に着目して検討を進めるべき。また、専門性や経験年数等に応じた評価の在り方を検討していく必要が ある。

7.居住地特例について
(1) 現状・課題 ↓

○ 障害福祉サービス等の支給決定は、原則として、障害者又は障害児の保護者の居住地の市町村が行うこととされているが、障害者が障害者総合支援法に規定する特定施 設に該当する施設に入所した場合、施設所在市町村の財政負担を軽減する観点から、その支給決定は施設入所前にその者が居住していた市町村が実施することとする居 住地特例が設けられている。 地方分権改革に関する自治体からの提案において、介護保険施設等の入所者が障害 福祉サービスを利用する場合、介護保険施設等が所在する市町村に障害者福祉に関する財政的負担が集中する、利用申請手続を行う市町村が介護保険サービスと障害福祉サービスで異なり、利用者の負担になっている、との指摘があった。
(2) 検討の方向性 ↓
○ 介護保険施設等を居住地特例の対象に追加する必要
がある。その際、対象とする介 護保険施設等は介護保険制度の住所地特例の対象施設等(※)と同様とすることが適当。 ※ 特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護医療院、介護療養型医療施設、有料老人 ホーム(サービス付き高齢者向け住宅を含む)、軽費老人ホーム、養護老人ホーム(た だし、地域密着型施設を除く。)

8.高齢の障害者に対する支援等について
《8−1 高齢の障害者に対する支援》
(1) 現状・課題

○ 社会保障制度の原則である保険優先の考え方の下、サービス内容や機能から、障害 福祉サービスに相当する介護保険サービスがある場合は、原則介護保険サービスに係 る保険給付を優先して受けることになる。その際、介護保険サービスの利用に当たっ ての課題への対応として、共生型サービスや新高額障害福祉サービス等給付費が創設 された。 ○ 障害者が介護保険サービスを利用する場合も、それまで当該障害者を支援し続けて きた障害福祉サービス事業所が引き続き支援を行えるようにするため創設された共 生型サービスについては、当該サービスの指定事業所の数は未だ多くなく、十分に普 及しているとは言えない【令和2年 11 月審査分:共生型介護保険サービスの指定を 受けた障害福祉サービス等事業所 117、共生型障害福祉サービス等の指定を受けた介 護保険サービス事業所 739】。 ○ また、介護保険サービスの利用に伴う利用者負担の軽減を図るために創設した新高 額障害福祉サービス等給付費については、対象となり得る利用者への個別周知をして いる自治体は約3割となっており、積極的な周知を行っていない自治体や支給実績の ない自治体も一定程度存在する。
(2) 検討の方向性
○ 現行の介護保険優先原則を維持することは一定の合理性があると考えられるもの の、介護保険優先原則の運用に当たっては、一律に介護保険サービスが優先されるも のではなく、申請者ごとの個別の状況を丁寧に勘案し、介護保険サービスだけでなく 障害福祉サービスの利用も含めて、申請者が必要としている支援が受けられるよう、 支給決定を行う市町村において適切な運用がなされることが必要である。市町村によ って、運用状況に差異があるとの指摘を踏まえ、一律に介護保険サービスが優先され るものではないこと等の運用に当たっての考え方について改めて周知徹底を図るこ とが必要である。
○ また、介護保険サービスの利用に当たっての課題への対応として創設された制度の 普及が十分に進んでいるとは言えない状況であるため、 ・共生型サービスについては、関係事業者に対する制度そのものの周知や、当該サー ビスの立ち上げに必要な準備、手続き等についての周知に取り組むとともに、 ・新高額障害福祉サービス等給付費については、当該制度についての情報が対象となり得る利用者に伝わるよう自治体における積極的な周知を進めるとともに、自治体 による円滑な制度実施に向けた留意点や事例を示すことが必要である。

《8−2 入院中における医療機関での重度訪問介護》
(1) 現状・課題
○ 「重度訪問介護」を利用している障害支援区分6の重度障害者は
、入院中も引き続き「重度訪問介護」を利用して、本人の状態を熟知したヘルパーにより、病院等の職員と意思疎通を図る上で必要なコミュニケーション支援を受けることが可能。入院中における重度訪問介護の利用は、障害支援区分4や5の方にも対象を拡大すべきとの意見や、重度の知的障害や行動障害を抱える利用者等は、コミュニ ケーション自体が困難である場合が多く、加えて入院という環境の変化で症状が悪化するおそれがあり、入院の際には利用者にとって普段から接している支援者による支援を検討すべきとの意見がある。 また、入院中の重度訪問介護の利用→関係機関の理解や必要性の判断が課 題となっている。
(2) 検討の方向性 →入院中の利用者の状態像や支援ニーズ等に関するデータ等の収集を行い、入院中の重度訪問介護の利用によるコミュニケーション支援等の必要性を判断する基準や指標等を検討する必要がある。

9.障害者虐待の防止について
(1) 現状・課題
○ 障害者に対する虐待が障害者の尊厳を害するものであり、障害者の自立及び社会参加にとって障害者の虐待を防止することが極めて重要から、障害者に対する虐待の禁止、国等の責務、虐待を受けた障害者に対する保護及び自立の支援のための措置、養護者に対する支援のための措置等を定めた障害者虐待防止法が平成 24 年 10 月に施行
。 厚生労働省が実施する障害者虐待防止法に基づく対応状況調査では、養護者虐待は 警察からの通報の増加、施設従事者虐待は管理者等からの通報の増加を背景に相談・ 通報件数が増加の傾向にあるが、虐待判断件数は横ばいの傾向にある。一方で、通報 されたものの虐待と認定されなかったものについて検討が必要との指摘がある。また、障害者支援に専門性を有する職員を活用し、市町村が行う立入検査体制を強化する観点から、障害者虐待防止法に基づく立入調査について、基幹相談支援センターの職員も行えるようにすることを求める意見がある。 障害者虐待防止法附則第2条で検討することとされている学校、保育所等、医療機 関、官公署等における障害者に対する虐待の防止等の体制の在り方並びに障害者の安全の確認又は安全の確保を実効的に行うための方策→平成 29 年度に「障害者虐待事案の未然防止のための調査研究」において、附則第2条の関係機関における虐待防止のあり方について、通報義務に関する点を含めて検討が行われ、まずは既存の法制度において対応可能なことの充実・強化を図り、運用上の改善を進めること が適当とされた。また、同研究の検討結果を平成 30 年 10 月の障害者部会で議論した上で、この方向性に基づき、これらの機関の虐待防止の取組の充実・強化に取り組ん できた。
(2) 検討の方向性
障害者虐待の通報等を受けた場合の事実確認調査の実施や虐待判断件数→自治体間でばらつきが見られることから、障害者虐待防止法に基づく対応状況調査において、さらに分析を進める必要がある。 障害者支援に専門性を有する職員を活用し、市町村が行う立入検査等の強化を図るため、障害者虐待防止法第9条第1項に定める通報又は届出に対する安全の確認及び事実の確認のための措置及び同法第 11 条第1項に定める立入調査を基幹相談支援セ ンターに委託(立入調査は、市町村職員としての身分を有する者に限る)可能なことを明確化する必要がある。
○ 学校、保育所等、医療機関における障害者虐待の防止等の体制の在り方→これまでの検討結果を踏まえ、より実効性のある仕組みについて、さらに検討を行う 必要がある。

10.地域生活支援事業について
(1) 現状・課題
○ 地域生活支援事業
→市町村等において、地域の特性や利用者の状況に応 じた柔軟な事業形態により事業を実施しており、障害福祉分野において地域づくり等の役割を果たしている。 さらに、地域共生社会の実現等を図るため、理解促進研修・啓発事業や自発的活動 支援事業等の実施により、障害者等に対する理解の促進を図っている。 こうした中、事業ニーズは増大しているものの、予算額の伸びには一定の制約があるため、自治体や当事者団体から予算の確保や障害者個人に対する事業の個別給付化 を要望されている。
(2) 検討の方向性→地域生活支援事業の在り方については、自治体における執行状況やニーズ等を踏ま えて、障害福祉サービスの個別給付の在り方の見直しとあわせて、財源を確保しつつ、 引き続き検討する必要がある。

11.意思疎通支援について
(1) 現状・課題
○ 障害者の情報・意思疎通支援→日常生活その他の状況において、円滑に必要な情報を取得・利用し、意思表示やコミュニケーションを行えるよう、意思疎通 支援事業をはじめとする各種の事業等の実施により進めている。 その代表的な事業として、都道府県及び市町村において、手話通訳や要約筆記等の方法により、障害者等とその他の者との意思疎通を支援する者の派遣やこれを担う人材の養成等の事業(意思疎通支援事業等)が行われている。 意思疎通支援事業等→地域生活支援事業として、地域の特性や利用者の状況に応じた柔軟な形態により実施されているが、一方で地域によるばらつきがあるとの指摘もなされている。また、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける状況下において、遠隔手話サービス等の新たなニーズの増加なども見られたところである。
(2) 検討の方向性
○ 障害のある人とない人の双方の意思疎通支援を円滑にし、個別のニーズに基づいた 様々な支援を受けることを可能とするため、どの地域においても意思疎通支援事業等が確実に実施されることが必要。意思疎通支援事業等→遠隔手話サービス等の新たなニーズの増加や、地域ごとの取組状況の差異等の指摘を踏まえ、地域間格差を解消するために、障害者のICT及び情報通信システムの利用促進に取り組むとともに、学生や若者等を視野に入れた意思疎通支援従事者の確保等に資する新たな取組を検討する必要がある。 ○ 意思疎通支援事業の各種支援メニューにおいて、特に、代筆、代読などの支援が必 要な者に対して十分なサービスが行き届いていないとの意見があることから、必要な サービスを受けることができるよう、現行制度の運用の見直しなどを検討する必要がある。
○ さらに、手話通訳に係る意思疎通支援従事者の養成、設置及び派遣事業に関しては、聴覚障害者を取り巻く社会環境の変化に対応するよう見直すべきとの意見から、養成の在り方等についての調査研究や、設置・派遣事業の地域間格差の解消に引き続き取り組む必要。

12.療育手帳の在り方について
(1) 現状・課題
→ 療育手帳は、現時点で法的な位置づけはなく、各自治体が自治事務として運用しており、自治体ごとに検査方法等の判定方法や、IQの上限値や発達障害の取扱い等の認定基準にばらつきあり、手帳所持者が他の自治体に転居した際に判定に変更が生じる可能性や、正確な疫学統計が作成できない状況等が指摘されている。
(2) 検討の方向性 →国際的な知的障害の定義や自治体の判定業務の負荷等を踏まえた判定方法や認定 基準の在り方、比較的軽度な知的障害児者への支援施策の在り方、統一化による関連諸施策への影響及び法令上の対応等も含め、幅広く調査研究を続けるべきである。

○開催経緯→19回。
○ヒアリング団体一覧→(計46団体)
○社会保障審議会 障害者部会 委員名簿(令和3年 12 月 13 日現在)→29名。

次回も続き「資料2 地方分権提案について」からです。

社会保障審議会障害者部会(第124回) [2021年12月26日(Sun)]
社会保障審議会障害者部会(第124回)(令和3年12月13日)
《議事》(1)中間整理(案)について (2)その他
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000195428_00050.html
◎資料1 障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しについて 中間整理(案)
W 引き続き検討する論点について
1.障害者の居住支援について
(1) 現状・課題→
障害者の地域生活を支えるグループホーム⇒入所施設や精神科病院等からの地域移行を推進するために整備を推進してきた。障害者が重度化・高齢化する中、グループホームにおける重度障害者の受入体制の整備が課題であり、平成 30 年度報酬改定において新たに重度障害者に対応する日中サービス支援型グループホームを創設するとともに、令和3年度報酬改定において重度障害者支援加算の拡充等を図った。一方、グループホームの利用者の中には一人暮らしや家族、パートナー等との同居を希望する者が存在。平成 30 年度に障害者総合支援法のサービスとして、入所施設やグループホーム等か ら退居した一人暮らしの障害者等の地域生活を支援する自立生活援助を創設したがサ ービスが十分に行き渡っていない。 また、障害者の親亡き後を見据え障害者の地域生活を支える地域生活支援拠点等の整 備を進めているが、約5割の市町村における整備に留まっている。 グループホームについては、近年、障害福祉サービスの実績や経験が少ない事業者の 参入が多く見受けられ、障害特性や障害程度を踏まえた支援が適切に提供されないといった支援の質の低下が懸念される。
(2) 検討の方向性
(グループホームの制度の在り方について)→障
害者が希望する地域生活の実現を推進する観点から、グループホームの制度の在り方について検討する必要がある。 その際、グループホーム利用者の中に一人暮らしやパートナーとの同居等を希望する者が存在することを踏まえ、グループホームにおいて地域生活の希望の実現に向けた支 援を推進していくことが重要。 本人が希望する一人暮らし等に向けた支援を目的とするグループホームのサービス類型を新たに設けることを含め、さらに検討していく必要がある。こうした検討を進めるに当たっては、新たなサービス類型の検討について賛成の意見 がある一方で、現行のグループホームで一人暮らし等に向けた支援を実施することも検討すべきとの意見や宿泊型自立訓練との関係を整理すべきとの意見があったことを踏ま え、障害者が希望する地域生活の実現の推進に向けた施策を検討する必要がある。
〇 新たなサービス類型について検討を行う場合には、 @ 障害者のライフステージを見据えた支援や障害者の地域生活支援施策の全体像が見えないため不安 A 一人暮らし等に向けた支援はピアサポーターの配置が有効 B 地方ではまとまったニーズがなく整備が進まないのではないか C 一人暮らし等への移行により空室が生じるため安定的な事業運営が難しい D 報酬上の実績評価については、障害者の状態像等を踏まえた一人暮らし等に向け た支援の困難度を勘案して評価すべき 等の課題・指摘があったことを踏まえて、検討していく必要がある。
○また、新たなサービス類型の検討に当たって、対象となる利用者や支援内容等を検 討する場合については、以下の点に留意して検討を深めていく必要。 ・ 対象となる利用者→年齢や障害種別、障害支援区分等の一律の基準により決めるのではなく、本人が希望により、新たなグループホームか、継続的な支援 を行うグループホームか選択できる仕組みとすることが考えられる。 その際、本人の意思を最大限尊重する観点から、地域生活支援拠点等における体験 利用の活用や、相談支援専門員やサービス管理責任者等が中心となって行う意思決 定支援の実施推進と併せて検討を深める必要がある。 ・ また、グループホームの継続的な利用を希望する者→これまで通り現行のグループホームを利用できることとすることが考えられる。現行のグループホー ムの利用者についても、本人の今後の生活の希望を適切に把握する必要があることから、相談支援専門員やグループホームのサービス管理責任者が継続的に本人の今 後の生活の希望を把握することが重要であることに留意が必要。 ・ 新たなグループホームのサービス類型→事業者が申請により選択できる 仕組みとすることが考えられ、サービス管理責任者が本人の 希望を踏まえて一人暮らし等に向けた支援計画を作成し、当該計画を踏まえて、一 人暮らし等に向けた家事や金銭管理、住居確保の支援等、一人暮らし等の居宅生活 への移行のための支援を実施するとともに、退去後の一人暮らし等の居宅生活に円滑に定着ができるよう、居宅訪問等を通じた一人暮らし等を継続する上での相談や見守り等、グループホームの従業員が退居後においても一人暮らし等の居宅生活の定着を図るための支援を実施することが考えられる。 ・ 人員体制→グループホームの利用者の日常生活上の援助等を行う人員 に加えて、一人暮らし等の地域生活への移行に向けた支援及び退居後の地域生活の 定着のための支援を実施する社会福祉士や精神保健福祉士等の専門職員の配置を要件とすることが考えられる。 ・ 報酬による評価→一人暮らし等に向けた支援を実施する人員体制や本人が希望する一人暮らし等につながった実績等を適切に評価する仕組みとすること が考えられる。
〇 現行の介護サービス包括型、日中サービス支援型、外部サービス利用型のそれぞれ のグループホーム→障害者の高齢化や障害の重度化、医療的ケアを必要とする障害者への対応や、地域のニーズを踏まえた計画的な整備を推進していく必要がある。あわせて、平成 30 年度に創設した日中サービス支援型グループホームを含め、サービスの質の向上・確保等の観点から支援体制等について検討する必要がある。 特に、グループホームにおける強度行動障害者の受入れ体制→令和3年度 障害者総合福祉推進事業「強度行動障害児者の実態把握等に関する調査研究」をはじめ、適切なアセスメントや環境調整等を担う人材やスーパーバイザーの養成等の研究を実施。また、高次脳機能障害者の受入れ体制→厚生労働科学研究 において、令和元年度に障害福祉サービス事業者や相談支援事業者向けに高次脳機能 障害の基本的な対応と支援やサービス別の支援のポイントを盛り込んだ「高次脳機能 障害支援マニュアル」を作成し、現在、当該マニュアルを踏まえた研修カリキュラムや テキストの開発を行っている。 こうした調査研究結果や、令和3年度報酬改定における重度障害者支援加算の拡充 等の施行状況等を踏まえ、障害者の地域移行の推進や地域生活の継続の支援の観点から、強度行動障害者や高次脳機能障害者に対する手厚い支援を要する状態像を明らかにしていった上で、行動障害の評価の在り方や支援者養成等を含めた体制強化を体系的に検討する必要がある。 また、令和5年度末までの経過措置とされているグループホームにおける重度障害 者向けの個人単位の居宅介護等の利用→令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の影響や重度障害者に対する必要な支援を確保する観点等を踏まえつつ、引き続き検討していく必要。 さらに、グループホームで地域生活を送っていく際には、居住や社会参加等の生活 全般の組み立てを支える相談支援専門員と日常生活を支えるグループホームのサービス管理責任者等が、障害者本人の意思決定をサポートしつつ、医療(主治医や訪問看 護等)と連携し、あらかじめ本人の同意を得て日常的な健康状態などの必要な情報共 有等を行っていくことが重要。
〇 グループホームの質の確保・向上→グループホームに様々な事業主体が参 入している状況があることを踏まえつつ、障害福祉サービス等全体の検討の中で、 ・ ガイドライン等による自己評価・利用者評価の推進 ・ 第三者による外部評価の活用(介護分野における運営推進会議による事業者の運 営状況の評価の仕組みを参考として、障害福祉サービス等に導入することを含む。) について、検討する必要がある(P.29 参照)。
〇 障害福祉サービス等全体として、都道府県知事等の行う事業所指定の仕組みにおいて、市町村への意見聴取や条件付与の仕組みの導入を検討する方向であることを踏ま え(P.31 参照)、グループホームについても、こうした仕組みも活用し、地域のニーズ を適切に踏まえた事業所の整備に取り組むことが必要である。
(障害者支援施設の在り方について)→居住支援全体の中における障害者支援施設とグループホームそれぞれの役割や機能を踏まえ、安心できる居住環境を提供する観点から検討する必要。 開かれた障害者支援施設として、入所者の地域への移行や地域課題により一層取り組むため、障害者支援施設としての対応の在り方や、地域生活支援拠点等のコーディネーター、相談支援事業者、障害福祉サービス事業者、地域住民との連携の強化について 検討していく必要がある。
(地域生活支援拠点等の整備の推進について)→ 地域生活支援拠点等(地域生活支援拠点又は居住支援のための機能を備えた複数の 事業所・機関による面的な体制)については、障害者の重度化・高齢化や「親亡き後」 を見据え、 ・ 緊急時における相談や短期入所等の活用を可能とすることにより、地域生活の安心感を担保する機能や ・ 体験の機会の場の提供を通じて、入所施設や病院、親元からのグループホームや 一人暮らし等の地域生活への移行をしやすくする機能 等を地域の実情に応じて整備することにより、障害者が地域で安心して暮らせる支援体制を構築することを目的としたもの。 市町村における地域生活支援拠点等の整備を推進するため、市町村における地域生 活支援拠点等の整備の努力義務化なども含め、法令上の位置付けの明確化を検討する必要がある。 ○ 地域生活支援拠点等の目的である地域生活の安心の確保や地域移行の推進を踏ま えて備えるべき具体的な機能・役割・事業等について、基幹相談支援センター等の地域の関係機関との関係整理も含め検討する必要がある。権利擁護や災害への 対応を担う行政等の関係機関との連携について検討することも重要。 あわせて、市町村が主導的に地域生活支援拠点等の整備や機能強化を図る観点や、 地域生活支援拠点等が期待される役割を果たすことができるよう、地域生活の安心の確保や地域移行の推進を担うコーディネーターを含めた体制整備を図る観点から検討する必要がある。 また、地域生活支援拠点等において、福祉だけでなく、医療、行政などの関係機関との連携も含めた 24 時間の連絡体制の整備を推進していく方策を検討する必要がある。
〇 地域生活支援拠点等→形式的な整備が目的化している場合があるとの指摘。 地域生活支援拠点等については、市町村が、地域の利用者や家族等からニーズを把 握し、継続的に地域のニーズを踏まえた必要な機能が備わっているか検証し、地域の 実情に応じて必要な機能の強化を図っていくことが重要。 今後、各市町村が、地域のニーズを踏まえた必要な機能が備わっているか、PDCA サイクルを通じて継続的に検証・検討するための標準的な評価指標や評価のプロセスを 検討した上で、全国的に周知を図り、市町村における PDCA サイクルを通じて地域生活支援拠点等の機能の充実を推進していく必要がある。
〇 引き続き、国として、市町村に対する地域生活支援拠点等の整備や機能の充実の働きかけの実施や、好事例の周知などにより、地域生活支援拠点等の整備や機能の充実を図っていく方策を検討する必要がある。 また、都道府県については、広域的な見地から、管内市町村の地域生活支援拠点等の 整備状況や機能の状況を継続的に把握するとともに、未整備市町村への整備の働きか けや管内市町村と現状や課題の共有を図るなどにより、地域生活支援拠点等の整備や 機能の充実に向けた積極的な役割が期待される。

2.障害者の相談支援等について
(1) 現状・課題→
相談支援は、障害者等が希望する暮らしを送るために重要であり、障害者自立支援法により法定化され、以降も基幹相談支援センター及び地域相談支援、自立生活援助の創設や計画相談支援の対象の全利用者への拡大、自立支援協議会の法定化等の充実強化を行っており、利用者数、事業所数、相談支援専門員数とも増加傾向。一方で、相談支援専門員について、その人員の不足や更なる資質の向上を求める声があるほか、地域生活の支援を推進するためには各相談支援事業のなお一層の充実強化を求める声がある。 市町村が行う市町村障害者相談支援事業は、必須事業として全ての自治体で実施されているが、その内容や規模は多様であり、地域による特性や差がみられる。 基幹相談支援センターの設置は増加傾向にあるものの、設置市町村は半数以下【令 和2年4月時点:約 45%】にとどまっているほか、設置済みの場合であっても地域の中核的な役割を担う機関としての機能が充分果たせていないセンターが存在する。未設置自治体においては、人材育成や支援者をサポートするための取組が地域内で実施 されていないことがある。 自立生活援助は、事業所数や利用者数が想定より少ない状況がある。また、主な担い手の一つと想定した相談支援事業者が自立生活援助事業を実施しづらい仕組みとなっているとの声がある。 自立支援協議会はほぼ全ての市町村及び全ての都道府県に設置されているが、具体 的な課題を検討する部会の設置状況や開催頻度等は多様であり、形骸化を指摘する声がある。
(2) 検討の方向性 ↓
(基幹相談支援センターを核とする地域の相談支援体制の整備)↓
○ 市町村は住民にとってわかりやすく、アクセスしやすい相談の入口として、どのよ うな相談もまずは受け止める総合的な相談を実施することが必要。
地域の相談支援の中核となる機関である基幹相談支援センターについて、相談支援の質の向上等のため、設置を市町村の努力義務化する等の方策により設置促進をさらに進め、全ての市町村に基幹相談支援センターが設置されることを目指す必要がある。 また、既に設置されている基幹相談支援センターにおいても取組状況には地域による差があることから、相談支援専門員への実地教育や支援を検証する取組をはじめとする人材育成や支援者支援の取組の実施等の地域の相談支援の中核的な役割を確実に果たすため、必要な方策を講じる必要がある。また、こうした検討に際しては、地域の相談支援体制全体の中で、自治体、市町村相談支援事業、基幹相談支援センター、地域生活支援拠点等、(自立支援)協議会、計画相談支援、障害児相談支援、地域相談支援等の各主体が果たす役割・機能の整理を行い、わかりやすく提示していくことを併せて進める必要があるほか、就労等を含む 生活全般の相談を受けられるようにすることも重要な視点である。相談支援事業者が行う関係機関等との連携については調査研究等を推進し、その成果に基づき、計画相談支援等における指定基準等の業務の指針となるものを見直すことをはじめ、実効性のある連携を可能とするための方策をとる必要がある。 特に、相談支援と医療(かかりつけ医、訪問看護師等や難病を含む医療施策を担当 する都道府県)との実効性ある連携に留意して、かかりつけ医や訪問看護師等と相談 支援専門員の連携が必要であり、その情報連携を確保するための在り方を含め、検討を進める必要がある。
○ なお、障害者等の地域生活の実現や継続のために必要な相談支援専門員やピアサポ ーター等が行う業務の在り方→令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の影響等も踏まえつつ、利用者の心身や家族を含む環境の状況により多様な支援が発生しうることを踏まえた業務の範囲や仕組み、ピアサポートの有効性を踏まえた対象サービスの範囲等について、引き続き検討することが必要。その際、ピアサポーターによる支援→障害当事者相互にとって良い効果があることも踏まえ、 相談支援をはじめ、障害福祉サービス等におけるピアサポーターの活用の在り方を検 討する必要がある。 また、相談支援事業の運営において中立・公正性が担保されることの重要性を踏まえ、相談支援専門員のサービス提供事業者からの独立性・客観性の確保の在り方についても検討を進める必要がある。
○ 社会福祉法に基づく重層的支援体制整備事業が実施される市町村が今後増えるこ とも視野に入れ、あらゆる地域住民の多様な支援ニーズに対応するため、他法他施策による相談支援等との連携強化を図ることが求められる。
(「地域づくり」機能の強化と協議会の活性化)→自治体は協議会等を活用し、障害当事者や福祉サービス事業者、医療関係者等を含 む多様な主体の参加を得ながら住民の個別の課題の分析から地域内で共通して見ら れる課題を抽出し、解決を図ることが重要であるとされており、医師会等の関係者、 成年後見制度に係る中核機関等の権利擁護関係機関、管内の計画相談支援事業所等の 参加により、協議会の一層の活性化を図っていく必要がある。 このため、協議会においては利用者個別の事例の検討等をする場合があるが、協議 会に守秘義務がかけられていない現状があることから、検討等の実施を促進するため、 協議会について守秘義務を設ける必要がある。 協議会の活性化のためには、自治体は協議会の運営状況を適切に把握し、評価を行い、地域の関係機関等や地域住民に周知する必要があり、その効果的な方策を検討する必要がある。また、自治体と相談支援事業者が協働する取組が重要であり、特に市町村協議会においては、基幹相談支援センターが事務局機能の一 端を担う等の積極的関与が期待されていることから、それを促進するための方策を講 じる必要がある。 また、自治体が協議会等を構成する機関等の関係者の会議に係る負担を軽減する方 策を講じることを促進するため、事務局機能を強化する中で障害福祉分野における複 数の協議の場が合理的・効率的に開催されるような運用上の工夫を行っている取組等 を把握し、周知する等の必要な方策を講じる必要がある。 市町村や障害保健福祉圏域内にとどまらず、より広域での検討が必要な課題を市町 村協議会からの報告により都道府県協議会で取り扱うことや、広域での地域課題の抽 出にあたり、管内市町村協議会の整理した地域課題を把握すること等をはじめ、都道府県協議会と市町村協議会が効果的に連動するための方策を講じる必要がある。
(地域相談支援及び自立生活援助)→障害者の一人暮らし等の地域生活を支援する自立生活援助と地域定着支援の制度の在り方について、障害者が希望する地域生活の実現・継続を支援する観点から検討 を行う必要がある。 自立生活援助→一人暮らし等の障害者の居宅に定期訪問等を行い相談や 助言等を行うサービスであり、入所施設や精神科病院等からの地域移行を支援する地 域移行支援や、自立生活援助と同様に一人暮らし等の障害者に対して緊急時の連絡体 制の確保や緊急時の相談対応を行う地域定着支援との支援の継続性が必要であるが、 地域移行支援や地域定着支援を行う相談支援事業者にサービス管理責任者がいない 場合は自立生活援助の指定を受けることができない仕組みとなっている。このため、 相談支援事業者による自立生活援助の事業者指定の障壁となっており、自立生活援助の整備が進まない要因の一つになっている。 地域移行支援、地域定着支援との支援の継続性の確保や自立生活援助の整備の促進 の観点から、相談支援事業者が取り組みやすくなるよう、自立生活援助の人員基準の 在り方について検討を行うべき。 自立生活援助→令和3年度報酬改定における見直し後の支給決定の更新 の運用状況も踏まえつつ、引き続き、利用者の状況に応じた標準利用期間や更新手続 きの在り方について検討する必要がある。
○ 自立生活援助は概ね月4回程度の定期的な訪問を実施することとしているが、さらに手厚い訪問が必要な者への支援や、ICTを活用した安否確認や緊急通報の活用による効果的・効率的な支援など、障害者の地域生活の実現・継続を支援する観点から利用者の状況に応じた支援内容や報酬について検討する必要がある。その際には、一 人暮らしの障害者等への支援を行う地域定着支援についても一体的に検討する必要 がある。 各地域における自立生活援助と居住支援法人の連携を推進するための研修の実施 などにより、自立生活援助事業者等と居住支援法人との連携や、自立生活援助事業者 等の居住支援法人としての指定や居住支援法人の自立生活援助事業者等としての指 定を推進していく必要がある。 また、「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セー フティネット法)」に基づき、障害者等の要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録 制度や登録住宅の入居者に対する家賃の低廉化補助等の制度が設けられており、当該 制度を所管する国土交通省と連携し、障害者が希望する一人暮らし等のための住宅確 保の支援を推進していく必要がある。

3.障害者の就労支援について
(1) 現状・課題
○ 障害者の就労支援は
、雇用施策と福祉施策がそれぞれの政策体系や政策目的を持ち つつ、連携も図りながら進めてきており、就労系障害福祉サービスから民間企業への 就職が年々増加するとともに【令和元年:約 2.2 万人】、民間企業における雇用者数 【令和2年6月1日時点:約 57.8 万人】も着実に増加が続いている。 就労系障害福祉サービスの利用を希望する障害者の就労能力や適性を客観的に評 価し、可視化していく手法等が確立されていないため、障害者の就労能力や一般就労の可能性について、障害者本人や障害者を支援する者が十分に把握できておらず、適 切なサービス等に繋げられていない。
○ 就労継続支援事業(A型・B型)→直ちに企業等で雇用されることが難 しい者に対して、知識や能力の向上のための訓練等を実施するという趣旨・目的から、 原則、企業等で雇用されている間における利用は想定していないが、障害者の多様な 就労ニーズへの対応や「福祉から雇用」「雇用から福祉」のいずれについても段階的な 移行を進めていくことを考えた場合に、一般就労中の就労継続支援の利用について一 定のニーズが認められる。
○ 障害者の就労支援に携わる人材について、雇用・福祉分野の基礎的な知識やスキルが不十分である、実践的な研修の機会が限られている、専門人材の質・量ともに不足しているといった状況がある。また、一般就労への移行の促進や関係機関の機能や役 割を踏まえた地域における一般就労後の定着支援の円滑な実施のためには、雇用・福祉施策それぞれの分野における地域の支援機関の連携を強化する必要がある。
(2) 検討の方向性
○ 障害者の希望や能力に沿った就労につなげるため
、雇用施策と福祉施策の連携強化 により、就労支援の充実を図るべきであり、現在、労働政策審議会障害者雇用分科会 においても、障害者雇用率制度や納付金制度に係る論点について議論が継続。 このため、同分科会における今後の議論も踏まえつつ、以下の方向性に沿って検討を 進める必要がある。また、検討に当たっては、教育や医療(かかりつけ医、産業医等)などの関係機関 との連携の在り方についても検討する必要がある。
(新たな「就労アセスメント」の創設)→障害者本人のニーズを踏まえた上での一般就労の実現や適切なサービス提供等がなされるよう、就労系障害福祉サービスの利用を希望する障害者へのアセスメント (ニーズの把握と就労能力や適性の評価)の実施の制度化を検討する必要。 この制度化の検討に当たっては、本人の可能性を狭めることなく、個々の状況に応じた就労・支援の提供につなげることができるよう、計画相談支援との関係整理など を含めた支給決定プロセスにおける仕組み、アセスメントの実施内容や実施主体につ いて検討する必要があり、就労系障害福祉サービスの利用意向のある障害者を対象と した就労アセスメントに関するサービス類型の創設も含めて検討する必要がある。 就労系障害福祉サービスの利用意向のある障害者に係る就労経験や支援の内容、生 活面の状況・課題、希望する就労の形態や、地域における障害者雇用、就労系障害福 祉サービス事業所、就労支援機関等の状況などが様々であることを考慮しつつ、円滑 にアセスメント制度の導入を図ることが適当。このため、就労に関するニーズ や能力の変化等を考慮した継続的な対応も含めた支援の在り方や担い手となる人材 の養成、対象となる利用者の範囲の段階的な拡大についても十分に検討する必要があ る。
(一般就労中の企業における支援と就労系障害福祉サービスによる支援の連携)↓
○ 一般就労への円滑な移行のための短時間勤務中の支援や、加齢等の影響により一般就労から福祉的就労へ移行するときなど、企業等で雇用されている間における就労系 障害福祉サービスの利用が可能となるよう、就労継続支援だけではなく就労移行支援 も含めて、各サービスの現行の対象者や位置付けが変化する可能性も踏まえつつ検討 を進める必要がある。 その際、本人の意向等を十分に踏まえること、十分なアセスメントや必要性等の精 査を行うことのほか、その趣旨を踏まえた適切な活用が図られるようにするための具体的な方策を検討する必要がある。
障害者の就労を支えるための雇用・福祉施策の連携強化等)↓
○ 雇用・福祉両分野の基礎的な知識等を分野横断的に付与する基礎的研修の確立及び 専門人材の高度化に向けた階層的な研修の確立といった研修体系の見直しについて は、福祉分野における人材が、それぞれの立場や役割に応じて必要な専門性を身につ けて活躍することができるよう、両分野が連携して具体的に検討する必要がある。 また、企業等で雇用される障害者に対する定着支援の充実を図るため、地域における定着支援の実情やニーズを踏まえた上で、障害者就業・生活支援センター事業の運 営主体が就労定着支援事業を実施することを可能とするなど、地域において必要な支援が提供できるような方策を検討することも必要。さらに、地域の支援ネットワークの強化・充実を図るため、障害者就業・生活支援 センターについて、地域の実情に応じて、地域の支援機関に対するスーパーバイズ(個別の支援事例に対する専門的見地からの助言及びそれを通じた支援の質の向上に係 る援助)や困難事例の対応といった基幹型の機能も担う地域の拠点としての体制を整備するなど、雇用と福祉の両面から地域における支援の質の向上を図る方策を検討する必要がある。 加えて、就労継続支援A型については、これまでに指定基準の見直しや報酬改定等 を通じて、課題への対応を図ってきたが、雇用・福祉施策の連携強化を進めていく中 において、その在り方や役割→利用者や支援内容の実態等を踏まえて整理を進める必要がある。 重度障害者等に対する職場や通勤等における支援→雇用施策との連携に よる重度障害者等就労支援特別事業及び障害者雇用納付金制度に基づく助成金の実施状況や重度訪問介護、同行援護等の利用状況も踏まえつつ、今後に向けた検討を行う必要がある。

次回も続き「4.精神障害者等に対する支援について」からです。

社会保障審議会障害者部会(第124回) [2021年12月25日(Sat)]
社会保障審議会障害者部会(第124回)(令和3年12月13日)
《議事》(1)中間整理(案)について (2)その他
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000195428_00050.html
◎資料1 障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しについて 中間整理(案)
T はじめに
○ 障害者の日常生活及び社会生活の支援や障害児の発達支援のための障害福祉サービス 等
→障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者 総合支援法)及び児童福祉法により実施。平成 28 年には、障害者の望む地域生活や就労の実現、障害児支援ニーズへのきめ細かな対応、サービスの質の確保・向上を目的として、自立生活援助や就労定着支援といった新たなサービスの創設、保育所 等訪問支援の訪問先の拡大、情報公表制度の創設などを内容とする障害者の日常生活及 び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律(平成 28 年法律第 65 号)が成立し、平成 30 年4月に施行された。その際、施行後3年を目 途として施行の状況等を勘案しつつ検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ず ることとされた。
○ 令和3年3月、本部会は、障害者総合支援法等の施行状況等について議論を開始。事業者団体、当事者団体等の 46 団体からヒアリングを行うとともに、ヒアリング後には計 13 回にわたって障害者総合支援法等の施行状況や施策の見直しに関する議論を行ってきた。また、障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会、障害児の新た な移行調整の枠組みに向けた実務者会議及び障害児通所支援の在り方に関する検討会において各分野について横断的・専門的に検討が行われ、その報告書についても本部会において報告され、議論してきたところである。
○ 一方、現在、労働政策審議会障害者雇用分科会→障害者雇用率制度をはじめとした諸制度や施策について審議が行われており、雇用施策と福祉施策の連携強化や 就労系障害福祉サービス事業所の取扱いなども含めた議論が継続。 また、精神障害者に対する支援→令和3年 10 月に地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会が立ち上げられ、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築のより一層の推進に向けた具体的かつ実効的な仕組 み・体制についての議論が行われている。
以上のような、議論の経過及び関連する審議会等の議論の進捗状況を踏まえつつ、本 部会におけるこれまでの議論を、下記のとおり中間的に整理することとする。 (1)一定の方向性を得るに至った障害児支援に関する論点(P.7 V 障害児支援)→必要な措置を講じていくべき。 (2)また、それ以外のさらに議論が必要な事項(P.15 W 引き続き検討する論点)→引き続き本部会における議論を継続し、来年半ばまでを目途に最終的な報告 書をとりまとめることを目指す。

U 基本的な考え方→ 障害者総合支援法改正法の施行後3年間の施行状況を踏まえ、今回の見直しの基本的な 考え方について、「1.障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり」、「2.社会の 変化等に伴う障害児・障害者のニーズへのきめ細かな対応」、「3.持続可能で質の高い障害福祉サービス等の実現」の3つの柱に整理。こうした基本的な考え方に沿って、当事者中心に考えるべきとの視点をもち、どのように暮らしどのように働きたいかなど障害 者本人の願いをできる限り実現していけるよう、支援の充実を図っていくべき。その際、障害者自身が主体であるという考え方を前提に、行政や支援者は、「ともに生きる 社会」の意味を考えながら、当事者の目線をもって取り組むことが重要。また、家 族を含めた障害者の生活を支えていくという視点が重要である。

1.障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり
(1) 障害者が希望する地域生活を実現・継続するための支援の充実
→ 障害者の入所施設や病院からの地域移行を進め、障害者が地域生活を安心して送れるよう、障害者が希望する多様な地域生活の実現に向けた支援や地域生活支援拠 点等の整備・充実等を図ることが必要。 どのような相談もまずは受け止める、アクセスしやすい相談体制を整備するた め、地域で中核的な役割を果たす相談支援の機関を中心に、本人の希望する暮らし を形づくり、継続するための相談支援の充実・強化が必要。こうした取組を進めるに当たっては、障害者総合支援法の基本理念である「可能な限りその身近な場所において必要な日常生活又は社会生活を営むための支援を受けられることにより社会参加の機会が確保されること」、「どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され」ること等を踏まえ、入所施設や病院からの地域移行を促進する必要があることを明確化していくとともに、親元からの自立を含めた ライフステージ全体や、様々な地域生活を支える社会資源全体の基盤整備も視野に入れた総合的な支援を進めていく必要がある。
(2) 地域共生社会の実現 →高齢、子ども、生活困窮等の分野の施策と連携し、相談支援や社会参加支援、居場所づくりといった支援を一体的に実施する重層的支援体制の整備が進められており、今回の見直しにおいても、地域共生社会を実現する地域づくりに資する取組を推進する必要がある。 障害者総合支援法の基本理念でも掲げられているように、「地域社会において他の人々と共生することを妨げられ」ず、「障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去に資することを旨と」し、障害者のコミュニケ ーションやアクセシビリティを円滑にしていくことが重要。文化・芸術活動やスポーツ等の分野を含め、障害者の社会参加の機会が確保され、障害の有無に関わらず地域でいきいきと安心して暮らすことができる社会を目 指し、地域住民の障害理解の促進にも取り組む必要がある。
(3) 医療と福祉の連携の推進 →障害児・者の地域生活と健康を支えていくためには、本人の希望に応じた暮らし を実現する観点から、福祉と医療の両面からの支援・マネジメントが重要。 障害者の高齢化や障害の重度化、医療的ケア児や医療的ケアが必要な障害者、精神 障害者、難病患者などへの支援の必要性を踏まえ、多様な障害特性にも配慮しつつ、保健・医療、福祉及びその他の施策の連携を推進することが必要。このため、障害福祉サービスの利用や計画相談支援をはじめとする相談支援など、地域生活や就労等の様々な場面において医療と連携した支援が行われることが重要であり、その連携の在り方について、引き続き検討が必要。
(4) 精神障害者の地域生活に向けた包括的な支援 →精神障害の有無や程度にかかわらず、誰もが地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるよう、医療、障害福祉・介護、住まい、就労等の社会 参加、地域の助け合い、教育・普及啓発が包括的に確保された「精神障害にも対応 した地域包括ケアシステム」の構築をさらに推進する方策を引き続き検討する必要 がある。

2.社会の変化等に伴う障害児・障害者のニーズへのきめ細かな対応
(1) 障害児に対する専門的で質の高い支援体制の構築
→ 発達障害の認知の広がりや女性の就業率の上昇に伴う預かりニーズの増加により、児童発達支援や放課後等デイサービスのサービス量が大きく拡大している一方で、質の確保が重要な課題となっており、支援の質の向上を図り、相談対応を含め た地域の支援体制を整える必要がある。また、地域共生社会の実現・推進の観点から、年少期からのインクルージョンを推進し、障害の有無に関わらず、様々な遊び等を通じて共に過ごし、それぞれの子どもが互いに学び合う経験を持てるようにしていく必要がある。 また、障害のある子どもも、成長した後は、大人として個を尊重され、成人に相 応しい環境の中で過ごすことができることが必要。障害児入所施設に入所した児童が 18 歳以上となっても障害児入所施設に留まっている、いわゆる「過齢児」 の課題→児者それぞれに相応しい環境が確保されるよう、取組を一層進 めるため、新たな移行調整の枠組みを構築していく必要がある。 こうした障害児支援を検討するに際しては、障害のある子どもの最善の利益の保障を第一にしながら、家族支援の視点を大切にすることが重要である。
(2) 障害者の多様なニーズに応じた就労の促進→ 障害者の就労とその支援は着実に進展しているものの、利用者や働き方の多様化 等、障害者の就労を取り巻く環境も変化。こうした変化や課題に対応するため、雇用施策と福祉施策の一層の連携強化を図りながら、希望する障害者がより 働きやすい社会を実現していく必要がある。 障害者の希望や能力に沿った就労を支援→本人の就労ニーズや能 力・適性を客観的に把握・評価し、本人の可能性を狭めることなく、個々の状況に応じた適切な支援の提供につなげる必要がある。

3.持続可能で質の高い障害福祉サービス等の実現→障害福祉サービス等の利用者が多様化、障害福祉サービス等を提供 する事業者が増加する中で、利用者の個々のニーズに応じた良質なサービスを提供するためには、事業者が提供する障害福祉サービス等の質の確保・向上を図ってい くことが重要。 その際、計画相談支援は障害者の生活全般を支えるものであり、中立・公平性を 保ちつつ質の高いサービス提供が求められることから、相談支援専門員の資質向上 をはじめとする相談支援の質の向上に引き続き取り組む必要がある。 サービスの質の確保・向上に向けて、地域のニーズをより踏まえた事業所の指定の仕組みの見直しやサービスの質の適切な評価の在り方に関する検討、障害福祉分野におけるデータ基盤の整備、実地指導・監査の強化等についても、取組を推進する必要。 障害福祉人材の確保・育成に向けて、処遇改善や仕事の魅力発信などの取組をよ り一層進める必要があるほか、様々な障害保健福祉分野のサービスが整えられていく中で、サービス提供事業者にとっても事務・手続き等の負担感が少なく、わかりやすい制度の在り方を検討する必要がある。

V 障害児支援について
1 障害児通所支援
(1) 現状・課題
→障害児支援⇒平成 24 年施行の児童福祉法改正において、障害児や家族 にとって身近な地域で必要な発達支援を受けられるよう、障害種別毎に分かれていた 障害児の給付体系が通所・入所の利用形態別に一元化されるとともに、放課後等デイ サービスや保育所等訪問支援が創設された。 しかし、一部に併設の医療機関の医療を併せて実施している実態があること等を考慮し、児童発達支援センターは「福祉型」と肢体不自由児を対象とする「医療型」に分け、障害種別による類型が残された。また、児童発達支援・放課後等デイサービス→平成 24 年の制度再編以降、発達障害の認知の広がりや、女性の就業率の上昇に伴う預かりニーズの増加により、サービス量が大きく拡大している一方、一部の児童発達支援・放課後等デイサー ビスにおいて行っている支援は、十分な専門性を有しているとは言いがたく、適切な 発達支援を提供する環境整備の妨げとなっているとの指摘がある。
(2) 検討の方向性
(児童発達支援センターの役割・機能)
→児童発達支援センター⇒当該センター以外の施設との役割・機能の違い が明確でないため、多様な障害等への専門的機能を強化し、児童発達支援事業所等に 対する助言その他の援助を行う機関として、以下のような機能・役割を担うべきであ ることを明確化すべき。 @ 幅広い高度な専門性に基づく発達支援・家族支援機能 A 地域の障害児通所支援事業所に対するスーパーバイズ・コンサルテーション機能 (児童発達支援センターが障害児通所支援事業所に対し、支援内容等への助言・援 助等を行う機能) B 地域のインクルージョン推進の中核としての機能 C 地域の障害児の発達支援の入口としての相談機能 また、こうした役割・機能を総合的に果たすため、「児童発達支援センター」は、「保育所等訪問支援」や「障害児相談支援」としての指定を併せて有することを原則とする方向で検討する必要がある。「児童発達支援」⇒障害種別にかかわらず、身近な地域で必要な発達支援 を受けられるようにするという障害児通所支援の理念をさらに進めるため、「福祉型」と「医療型」に区別せずに一元化する方向とし、全ての児童発達支援事業所において 肢体不自由児以外も含めた障害児全般に対する支援を行うべきである。
児童発達支援事業及び放課後等デイサービスの役割・機能・在り方) ↓
○ 児童発達支援・放課後等デイサービスの在り方
→特定領域の支援のみを提供するのではなく、アセスメント及び個別支援計画の策定プロセスから個々の障害児の状態・発達過程・特性等に応じた日々の支援の中で、5領域(「健康・生活」「運動・ 感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」)全体をカバ ーした上で、特に重点を置くべき支援内容を決めていく「総合支援型」(仮称)を基本型とする方向で検討する必要。 その上で、特定領域のプログラムに特化した支援のみを行う事業所の場合でも、専門性の高い有効な理学療法、作業療法、言語療法等の発達支援→「特定プログラム特化型」(仮称)として位置付ける方向で検討する必要がある。なお、医療的ケア児に対する看護師による医療的ケアの提供は、児童発達支援・放課後等デイサービスの提供に際して不可欠なものとして、引き続き提供できるよう考慮する必要。 その際、引き続き適切な支援が行われるよう留意しながら、それぞれの類型に応じた人員基準と、親の就労に対応するための時間も含めた支援時間の長短が適切に評価されるよう検討する必要。 こうした親の就労への対応を検討する際には、保育所、放課後児童クラブ、日中一 時支援など他のサービスの実態を踏まえた役割分担を意識して検討する必要がある。 一方、見守りだけで個々の障害児に応じた発達支援がなされていない場合、学習塾 のような学習支援のみとなっている、ピアノや絵画のみの指導となっている等、必ずしも障害特性に応じた専門性の高い有効な発達支援と判断できない場合、サービス提 供からみて障害のない子どもであれば私費で負担している実態にあるような内容の場合は、公費により負担する障害児通所支援の内容として相応しいかを検討する必要がある。
〇 「放課後等デイサービスガイドライン」は、「児童発達支援ガイドライン」や「放課 後児童クラブ運営指針」と比較し、学齢期の障害児の発達支援(本人支援)の内容が 十分に示されていない面があるため、ガイドラインの見直しを検討する必要がある。 その際、「児童発達支援ガイドライン」に示した本人支援の5領域は一定の共通性 を持つと考えられる。その上で、放課後等デイサービスの対象が学童期・思春期であ るという点も踏まえ、この時期の発達支援に重要な要素である「自己肯定感」「達成感」「仲間形成」「孤立の防止」などを盛り込むことを検討する必要がある。 また、幅広い年代が利用する放課後等デイサービスは、小学生低学年・小学生高学年・中学生・高校生の4段階に分けて支援の目的や内容を検討することが適当。その上で、地域という単位の中で異年齢と関わりができることの大切さも考慮すべき。さらに、思春期等の各発達段階での関わりの難しさ等を踏まえ、放課後等デイサービスでも家族支援をしっかりと位置付けることを検討する必要がある。
○ 放課後等デイサービスの対象の範囲→専修学校・各種学校に通学中の障害児でも、障害の状態・発達段階や家庭環境等の状況から、学校終了後や休日に自立的に過ごすことが難しく、放課後等デイサービスによる発達支援を特に必要とするものとして市町村長が認める場合は、その給付決定を行うことを可能とすべき。 その際は、様々な観点からのアセスメントが必要となること等を踏まえれば、相談支援の関与の必要性や、発達支援の必要性判断のためのアセスメント指標等を併せて 検討する必要。 また、放課後等デイサービスと通学先である専修学校・各種学校との連携の在り方 についても併せて検討する必要がある。 なお、児童発達支援において用いられている「適応訓練」等の文言は、障害を治すもの、克服すべきもの等と捉える表現であり、相応しくないという指摘もあることか ら、この点については関係者に誤解を与えないための対処について、他法令との整合 性等の観点も含め、検討することが望まれる。
(インクルージョンの推進) ↓
<地域の中の役割分担・連携体制>
→インクルージョン(地域社会への参加・包摂)の推進に関する地域の中の役割分担・ 連携体制として、 ・ 児童発達支援センターは、地域の中核機関として保育所等からの要請を受けて行う保育所等訪問支援を積極的に活用して、地域全体の一般施策側の後方支援を進め、 ・ 児童発達支援・放課後等デイサービスの各事業所は、市町村や児童発達支援セン ター等と連携しつつ、自らの事業所に通所する個々の障害児について状態や希望を 踏まえながら移行支援(併行通園等の事例提供・提案や実現・継続のサポート)を 行う という方向性で検討する必要がある。
<児童発達支援事業や放課後等デイサービスにおけるインクルージョンの推進(※)>→児童発達支援や放課後等デイサービスにおいて、個々の通所する障害児について移 行支援が効果的に実施されるため、保護者等の意向の把握から保育所等への定着支援 に至る一連のプロセスを効果的な標準的手法としてまとめ、わかりやすく提示するこ とを検討する必要がある。 また、そうしたインクルージョン推進のための具体的なプロセスは、一定期間にわたり継続的に行われるべきことを踏まえ、適切な評価の在り方を検討する必要がある。 (※ここでは、年少期より、障害の有無に関わらず、子どもたちが様々な遊びを通じて共に過ごし、 それぞれの子どもが互いに学び合うことができる限り可能となるよう、児童発達支援事業や放課 後等デイサービスが、障害児及び家族の希望を踏まえ、保育所や放課後児童クラブ等への併行通園や移行の支援、一体的な支援の取組を行うことを指す。)
さらに、併行通園等の実現に関しては、市町村には、保育所等の関係者に向けて、インクルージョン推進の意義と保育所等訪問支援の目的・内容、児童発達支援事業や 放課後等デイサービスによる移行前後のサポートの状況や好事例などの理解・普及を 図ることなど、大きな役割が期待される。市町村との連携の在り方を含め、児童発達支援事業・放課後等デイサービスにおいてインクルージョンを推進するための具体的 なプロセスについて整理・提示していくことを検討する必要がある。この際には、学校との連携の視点も重要。 なお、現状の障害児通所支援の状況等を踏まえれば、こうした併行通園や移行の支 援の取組が積極的に行われるように制度の在り方を検討する必要があるが、本来的な 「インクルージョン」の推進とは地域社会への参加・包摂を進めることであることから、年少期より、障害の有無に関わらず、子ども達が様々な遊びなどの機会を通じて 共に過ごし、それぞれの子どもが互いに学び合い、成長することができる社会の実現 を目指して、こうした取組も進められる必要がある。
<保育所等訪問支援> →児童発達支援センターが地域のインクルージョンを推進する中核機関として果たす役割の重要性を勘案しつつ、個々の支援対象や時期、具体的な支援方法等の違いによる差異やタイムスタディ等の実態把握も踏まえ、改めて より適切な評価の在り方等を検討する必要。また、保育所等訪問支援の手引書について通知により示すとともに、同手引書において示している保育所等訪問支援の支援内容など支援の根幹に関わる重要部分については運営基準等に位置付け、それらが適切に実施される報酬体系となるよう検討する必要がある。 さらに、保育所等訪問支援は、基本的に、併行通園等の経験のない保育所等において、支援を実践しながら理解・展開・定着し、適切な支援を行うための経験と力量を向上させることを想定。このため、個々の支援対象施設等の状況を十分に踏まえ、支援の終了の目安となる標準的な期間の在り方を併せて検討する必要がある。
<児童発達支援・放課後等デイサービスにおける障害児以外の児との一体的な支援> → インクルージョンや地域共生社会の実現・推進等の観点からは、年少期より、障害の有無に関わらず、様々な遊びを通じて共に過ごし、それぞれの子どもが互いに学び合うことは、生涯にわたって記憶される貴重な経験となる。 児童発達支援及び放課後等デイサービスの人員基準では、児童指導員及び保育士に 専従規定を置いており、児童発達支援等を利用する障害児以外への支援はできないこ ととしているが、保育所や放課後児童クラブと一体的に支援できるよう検討することが必要。例えば、保育所と児童発達支援事業所が、一日の活動の中で、設定遊び等において子どもが一緒に過ごす時間を持ち、それぞれの人員基準以上の保育士等 が混合して支援を行う等、一体的な支援を可能とする方向で検討する必要がある。
障害児通所支援の給付決定の在り方)→ 5領域 11 項目の調査で把握できることは介助の有無、行動障害及び精神症状の頻度であり、給付決定においてどのような発達支援が障害児に必要かを判定するために は十分とは言えないと考えられる。 児童発達支援・放課後等デイサービスが、発達の只中にある子どもの育ちを支援することに鑑みれば、「児童発達支援・放課後等デイサービスの指標の在り方に関する研究」(令和3年度障害者総合福祉推進事業)の結果も踏まえ、介助の有無や行動上の 課題のみならず、個々の障害児に特に必要とされる発達支援の内容等について十分に 把握することができる指標を新たに設ける方向で検討する必要がある。 その際、子どもの育ちにくさ、学びにくさ、生活のしづらさ等の視点で、より適切に個々の障害児に必要とされる発達支援の領域・必要量等を把握しうる指標に見直す ことを検討する必要がある。その新たな指標を基に、子どもの生活全体を捉えた上で、適切な給付決定が行われ るよう、給付決定のプロセスの見直しを検討する必要がある。 特に、特定プログラム特化型(仮称)の支援に関しては、個々の障害児について、 特定領域のみでなく、全体的な発達支援の必要性を十分勘案できるよう、児童発達支援センター・相談支援事業所が適切にアセスメントを行い、複数事業所の併用等のコ ーディネートを担うことを給付決定のプロセスに組み込む方向で検討する必要がある。 ○ 必要な発達支援をコーディネートする上で相談支援事業所の果たす役割は重要で あるが、障害児の場合、セルフプラン率(障害児通所支援の申請を行う者が自ら障害 児支援利用計画を作成する割合)が依然として高い上に、成長・発達が著しくニーズ の変化が大きい児童期であるにも関わらず、モニタリング頻度は「6月に一回」に集 中している現状がある。 相談支援事業所の果たす役割の重要性を踏まえ、相談支援を必要とする家庭を必要な相談につなぐとともに、市町村の給付決定において個々の障害児の状況に応じたモ ニタリング頻度の設定が行われるよう、運用状況の把握を随時行いつつ、運用の徹底 を進めることを検討する必要がある。 また、給付決定に関する自治体間の格差が大きい現状を踏まえ、新たな指標を運用 していく際には、判断のバラツキが生じにくくなるよう、市町村職員向けのガイドラ イン等の整備を検討する必要がある。
障害児通所支援の事業所指定の在り方)→ 指定基準を満たせば事業者として指定することが原則である中で、都道府県としては総量規制による指定の拒否は慎重にならざるを得ない一方、できる限り障害児通所支援事業所の地域偏在やサービス不足・過剰をなくし、より身近な地域での整備・配置を促していくことも重要。 こうした観点から、都道府県の障害児福祉計画及びその積み上げの基となる市町村 の障害児福祉計画において、保護者や子どもが居宅からより容易に移動することが可能な区域での事業所配置を意識し、より狭い圏域でも必要量を見込んでいく方向で、 具体的な方法を検討する必要がある。 これにより、広域でのサービス全体の必要量に達しない限り総量規制の対象とならず、事業所指定を検討する者との意見交換等を行いにくい現状を、より狭い圏域で必要量に達している場合でも近隣の他の圏域での事業所指定の検討を促すなど、地域偏在やサービス不足・過剰をできる限り解消するよう検討する必要がある。 また、重症心身障害や医療的ケア等の支援が行き届きにくいニーズ→障 害児通所支援の全体の必要量とは別に、医療的ケアスコアの高い子どもの受け入れを含め、そのニーズを十分見込み、整備を促していく方向で検討する必要がある。 一方、人口の分散状況等から、狭い圏域ではニーズがまとまらず、事業運営の安定 性が確保できない地域も想定されるため、具体的な方法の検討に際しては、 ・ 例えば放課後等デイサービス等相対的に必要量が大きく充足しているサービスは、 より狭い圏域での必要量を基に総量規制の判断を行い ・ 例えば医療的ケアに対応する児童発達支援等相対的に必要量は少ないが充足していないサービスは、より広域での必要量を基に事業所の誘致等を働きかける 等、複数の圏域を組み合わせて判断することも含め検討する必要がある。
(支援の質の向上等)→ 障害児通所支援については、児童発達支援及び放課後等デイサービスの各ガイドラ インで定めた自己評価票・保護者評価票について改善に向けて改めて見直した上で、 現在、評価方法が任意とされている自己評価・保護者評価について、ガイドライン上 の評価票の内容を最低限実施する等、運営基準等での位置付けを見直す必要がある。 また、第三者による外部評価については、今後の障害福祉サービス全体の検討(P.29 参照)も踏まえつつ、評価の具体的な内容について、研究の報告(※)等を参考に検 討を進めることも考えられる。 (※事業所間の支援の質の格差が大きいことが課題となっていることから、事業所における自己 評価・保護者評価以外に、評価の第三者性や支援現場の実態の把握という観点から、令和元年度障 害者政策総合研究事業「障害児支援のサービスの質の向上のための外部評価の実施とその検証の ための研究」を行った。)
○ また、児童発達支援センターにおいて、こうした各事業所における自己評価・保護 者評価の結果を集約し、各事業所とともに、それぞれの事業所の強み・弱みを分析し、 地域の事業所が互いの効果的な取組を学び合いながら、より良い支援の提供につなげ ていくことを後押しすることを検討する必要がある。
こうした自己評価・保護者評価の分析・検討の場には、子ども自身の思いをできる 限り取り入れる観点からの保護者の参画や、相談支援事業所、保育所・学校等の地域 の関係者等の参画を検討し、事業所・利用者・関係者がチームとして協力しながら事 業所の質を高める方向で具体的な仕組みを検討する必要がある。

2 過齢児の移行調整
(1) 現状・課題
→平成 24 年施行の児童福祉法改正において、18 歳以上の障害者については、就労支 援施策や自立訓練を通じ、地域移行を促進するなど、大人としてふさわしい、より適切な支援を行っていくため、障害者施策で対応することとされた。 一方、施行後直ちに指定基準を満たすことが困難な場合、現に障害児入所施設に入 所している 18 歳以上の者が退所させられることがないよう特例措置を行ってきた経過がある。入所施設の中に子どもと大人が混在することにより、年齢に合った児童集 団の形成が困難であり、また年齢に合わせたきめ細かい支援体制の確保ができないな ど支援の質が低下するおそれがあることから、成人期にふさわしい暮らしの保障と適 切な支援を行っていくべき。
(2) 検討の方向性 ↓
(都道府県による新たな移行調整の枠組み)→
障害児入所施設からの円滑な移行を促進するため、都道府県及び政令市の責務とし て、関係者との協議の場を設け、移行の調整及び地域資源の整備等に関する総合的な 調整を行うこととすべき。 その際は、市町村(政令市を除く。)、児童相談所、障害児入所施設、相談支援事業 所等がそれぞれの役割を果たしながら都道府県又は政令市と連携し、円滑・速やかな 移行を図る必要がある。
(移行先確保・施設整備の在り方)→専門的な手厚い支援が必要な者も多いことから、各都道府県等において、15 歳以上 の移行支援対象者数の中長期的な見通しを考慮しながら、新たな整備(グループホー ム等)の要否・具体的な内容について検討し、都道府県・市町村の障害福祉計画・障害児福祉計画へ的確に反映させていくことを検討する必要。児者転換・児者併設により、地域から短期入所を含め障害児入所施設の定員が失わ れることとなる場合は、地域のセーフティネットとしての障害児の定員の在り方を障 害児福祉計画の改定等において改めて検討する必要がある。強度行動障害の適切なケアのための基盤整備は、ハード面だけでなく支援人材の育 成等ソフト面も重要であり、報酬改定による対応等を含め、検討する必要がある。
(移行支援のための新たな制度)→15 歳頃から、ソーシャルワーカー等の障害児入所施設職員が本人の意思決定を支援 しつつ、相談支援事業所が障害児施設入所中から成人としての生活への移行・定着ま でを一貫して支援することを可能とする仕組みを設けることを検討する必要。 その際には、本人の意思を最大限に尊重し、本人の状態像や保護者の状況等も踏まえつつ、まず家庭への復帰やグループホーム等への移行を十分に検討する必要。障害児入所施設の措置・給付決定主体である都道府県等が、移行調整に必要となる 相談支援やグループホーム等の体験利用について、障害児入所施設の支援の一環とし て、一元的・包括的に決定できる仕組みを設けることを検討する必要がある。
○ 現行制度では、満 20 歳到達時まで、措置又は契約の延長により、障害児入所施設 としての措置費又は給付費の支給が可能とされているが、特別な事情により移行が困難な者(@例えば 15 歳以上等一定年齢以上の入所児童で移行可能な状態に至っていない場合、A強度行動障害や情緒障害などの精神症状が 18 歳近くになって強く顕在化し、18 歳前後での移行が適切でない場合等)→都道府県等の協議の場で の判断を経て、満 22 歳満了時まで(満 23 歳に達するまで)入所が継続できるように すべきである。
(みなし規定の期限)→上記の対応を進めた上で、成人施設としての設備基準を満たさないまま「みなし規定」により継続する「経過的サービス費」の支給は、未移行者の移行完了に向けた「準 備期間」として、令和5年度末までは継続する必要がある。

次回も続き「W 引き続き検討する論点について」からです。

第2回生活保護制度に関する国と地方の実務者協議 資料 [2021年12月24日(Fri)]
第2回生活保護制度に関する国と地方の実務者協議 資料(令和3年12月13日)
《議題》(1)包括的な自立支援・就労支援 (2)子どもの貧困対策 (3)生活保護基準における級地制度 (4)その他
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22733.html
◎資 料 2 子どもの貧困対策について
○子どもの貧困への対応を巡る全体状況
→「教育の支援」では、各年代の子どもに対する様々な学習・生活面等の支援や就学等に 必要な金銭面の支援が推進されている。
○生活保護受給者に対する「子供の貧困」関連施策→教育・生活の支援、経済的支援、保護者に対する就労の支援、
【参考】生活保護世帯に属する子供の貧困 に関する指標(令和2年4月時点)→@ 高等学校等進学率:93.7% A 高等学校等中退率:4.1% B 大学等進学率:37.3% C 就職率(中学校卒業後):1.0% D 就職率(高等学校等卒業後):43.6%
○子どもの学習・生活支援事業について
・事業の概要→「貧困の連鎖」を防止するため、生活保護受給世帯の子どもを含む生活困窮世帯の子どもを対象に学習支援事業を実施。 各自治体が地域の実情に応じ、創意工夫をこらし実施(地域資源の活用、地域の学習支援ボランティアや教員OB等の活用等)。改正法において、生活習慣・育成環境の改善に関する助言や進路選択、教育、就労に関する相談に対する情報提供、助言、関係 機関との連絡調整を加え、「子どもの学習・生活支援事業」として強化。
・支援のイメージ→将来の自立に向けた包括的な支援:単に勉強を教えるだけではなく、居場所づくり、日常生活の支援、親への養育支援などを通じて、子どもの将来 の自立に向けたきめ細かで包括的な支援を行う。世帯全体への支援:子どもの学習・生活支援事業を入口として、必要に応じて自立相談支援事業等と連携することで世帯全体への支援を行う。

○法定事業の利用状況と支援効果:子どもの学習・生活支援事業→子どもの学習・生活支援事業の実施率は着実に増加しているが、6割程度から伸びが鈍化している。 平成30年改正において、学習支援に加え、生活習慣・育成環境の改善や教育及び就労に関する支援を法律上 規定したことにより、こうした生活支援を行う自治体が増加した。また、法改正の効果としては、「基本的な 生活習慣の確立や生活リズムの向上等」が最も多かった。
○生活保護世帯における高校生に対する支援→保護費で支給、進学準備給付金、保護費を減額しない取扱い・・・等々。
○高校生等の収入認定除外等の取扱いについて→「保護費のやり繰りによる預貯金」「収入認定除外(恵与金・貸付金)」「収入認定除外(アルバイト収入)」についての、使用目的、考え方、具体例、の説明あり。
○生活保護世帯の子どもの大学等への進学支援→生活保護世帯の子どもの大学等への進学率が全世帯の子どもより著しく低いことを踏まえ、貧困の連鎖を断ち切り、 生活保護世帯の子どもの自立を助長するため、生活保護制度に起因する課題に対応した支援策を講じる。
・進学準備給付金(H30〜)→生活保護受給世帯の子どもが大学等に進学した際に、新生活の立ち上げ費用として一時金を給付する。 (自宅通学で10万円〜自宅外通学で30万円)
○高等学校等、大学等進学率の推移→高等学校等進学率(生活保護世帯)93.7% 。大学等進学率(生活保護世帯)37.3%。
○生活保護世帯の子どもの進学率等の経過→@〜Dの参照。


◎資 料 3 生活保護基準における級地区分の検討について
1 級地区分見直しに係る検討の背景

(1)生活保護基準における級地制度の概要→生活保護制度においては、生活保護法第8条2項に基づき、地域における生活様式等の違いに より生活に要する費用に地域差が生じることを踏まえ、各地域において同一の生活水準を保障する 観点から、級地制度により基準額の地域差を設けてきたところ。現行の生活扶助基準の級地間の較差は、一般低所得者世帯の消費実態を踏まえて設定されている。
(2)級地区分に関する検証の背景→現行の級地区分については、昭和62年(1987年)に見直し(以下「前回見直し」という。)を行って 以降、市町村合併による上位級地への統合以外の見直しは行われていない。 地域における生活水準の実態は、昭和62年(1987年)当時から変化しており、自治体等からも級地区 分の見直しの要望がある。 こうしたことから、級地区分見直しに係る検討にあたって、現在の実態を把握するため、生活保護 基準部会において級地区分に関する統計的な検証を実施。その際、市町村単位よりも細かい地域区分 での利用可能な統計データが限られることもあり、市町村単位での地域差の分析が行われた。

2 生活保護基準部会における分析結果
(1)生活保護基準部会の分析結果のまとめ(報告)→級地の階級数に関しては、令和2年度に実施した委託事業「生活保護基準における級地制度に係る 調査研究等」のとりまとめによれば、「一般低所得世帯の生活扶助相当支出額の階層間較差と1987年 当時の基準額の級地間較差とを比べると、地域間の較差が小さいことや、級地の階級数を4区分以上とした場合には、隣接級地間で有意な較差が認められないことを踏まえると、級地の階級数を3区分 程度にまで減らすことも検討されるべきではないか」とされている。 本部会では、この調査研究事業でとりまとめられた結果を基に審議を行った結果、階層化結果を用 いた分析手法に留意点はあるものの、少なくとも階級数については6区分とする必要があるという結 果は得られなかったことを確認した。 もとより級地制度は極めて地域的な問題でもあるので、厚生労働省において級地のあり方を検討す るにあたっては、本部会における審議内容を踏まえ、また、その基となった分析内容と矛盾のないよ うに留意し、被保護世帯の生活実態を考慮しつつ、現場を把握し保護の実施責任を持つ福祉事務所を 管理する自治体等と適切かつ丁寧に調整されたい。
(2)生活保護基準部会で示された分析の概要(1/4)
@ 地域の生活水準を示す指標についての検討
A 級地の階級数について
B 各市町村の級地区分の指定について

3 分析結果の受け止めと検討の方向性(案)
(1)級地区分の体系について→生活保護基準部会の分析結果のまとめでは「少なくとも階級数については6区分とする必要がある という結果は得られなかったことを確認した」とされている。その基となった分析内容をみると、複数の手法により地域の階層化を行った上で体系的な検証が行 われており、いずれの階層化手法を採った場合にも ・一般低所得世帯の生活扶助相当支出額の階層間較差と1987年当時の基準額の級地間較差とを比べる と、全体として地域間の較差が小さいこと ・級地の階級数を4区分以上とした場合には、隣接級地間で有意な差がない箇所が生じること が示されている。
 厚生労働省において、級地制度において設けるべき区分数についての検討を行うことと するが、具体的な級地の区分数については、生活保護基準部会の分析結果のほか、地域の実態を踏ま えて検討することとし、その際、 ・前回見直しで1〜3級地の3区分をそれぞれ2つに区分したという制度の経緯 ・現行の1〜3級地の3区分を枠組みを変更する場合には、今回分析対象としていない生活扶助以外 の扶助や、同級地区分を参照する他法・他施策にも影響があること ・現行の1〜3級地の3区分の各階級間では一般低所得世帯の消費水準に有意な差があること を考慮し、級地区分の体系については、まず、現行の各階級における枝番をそれぞれ廃止するか否か の範囲内で検討を行うこととしてはどうか。
(2)個別市町村の級地区分の指定について→厚生労働省としては、個別の市町村に係る級地指定に関しては、被保護世帯を含む地域住民の生活 への影響の観点から、変更すべき積極的な根拠がなければ現行の級地指定を維持することが基本と考 えている。 同部会においても指摘があるように、級地制度は極めて地域的な問題でもあるので、今後、厚生労 働省においては、現場を把握し保護の実施責任を持つ福祉事務所を管理する自治体等の意見を参考と しつつ、分析結果に照らして個別市町村の級地区分の指定のあり方を検討していくこととしてはどう か。

4 今後の進め方(案)
・級地区分の体系(階級数)について→地域の実態を踏まえる観点から、各都道府県に対し、都道府県内の指定地域間における生活に要す る費用の較差についてのアンケート調査を実施。 その結果を参考としつつ、分析結果に照らして、厚生労働省において見直しの必要性の有無を含め 級地区分の体系のあり方を検討する。級地区分の体系の見直しを行う場合には、保護を実施する自治体に対して当該方向性を通知。
・個別市町村の級地区分の指定について→変更すべき積極的な根拠がない限り現行の級地指定を維持することを基本としつつ、厚生労働省に おいて、分析結果に照らして各市町村の級地区分の指定のあり方を検討。 当該検討の結果、個別の市町村の指定を見直し得る場合には、被保護世帯の生活を含む地域の実態 について福祉事務所を管理する自治体等の見解を聴取した上で見直しの判断をする。

○生活保護制度の地域区分に関するアンケート調査→@〜Fまで。その他「A地域での平均的な生活」と「B地域での平均的な生活」について、生活に要する費用の違 いに関する見解(自由記載)あり。

次回は新たに「社会保障審議会障害者部会(第124回)」からです。

第2回生活保護制度に関する国と地方の実務者協議 資料 [2021年12月23日(Thu)]
第2回生活保護制度に関する国と地方の実務者協議 資料(令和3年12月13日)
《議題》(1)包括的な自立支援・就労支援 (2)子どもの貧困対策 (3)生活保護基準における級地制度 (4)その他
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22733.html
◎資 料 1 就労支援・自立支援について
○生活保護受給者に対する就労支援施策について

・「就労までの4つの段階的な支援施策」と「就労に向けた3つの困難度(支援対象者)」がマトリックスになって説明されています。
・就労時には雇用先へのインセンティブ等として助成金等。
○被保護者就労支援事業について(改正生活保護法)
・概要
→被保護者の自立の促進を図ることを目的とし、被保護者の就労支援に関する問題について、福祉事務所に配置された就労支 援員が被保護者の相談に応じ、必要な情報提供及び助言を行う。実施主体は、都道府県、市、福祉事務所を設置する町村(社会福祉法人、NPO等に委託可)。負担割合は、国3/4 都道府県、市、福祉事務所を設置する町村1/4 令和3年度予算額:64.1億円。就労支援員の配置状況:2,941名(令和3年3月現在)(配置目安はその他世帯120世帯に対して1名)。直営実施:82.8% 委託実施:12.3% 直営+委託5.0%(令和3年3月現在)
○被保護者就労準備支援事業について
・概要
→就労意欲が低い者や基本的な生活習慣に課題を有する者など、就労に向けた課題をより多く抱える被保護者に対し、一般就労 に向けた準備として、就労意欲の喚起や一般就労に従事する準備としての日常生活習慣の改善を、計画的かつ一貫して実施。(平成27年4月9日社援保発0409第1号「被保護者就労準備支援事業(一般事業)の実施について」に基づく任意事業)。 実施主体は、都道府県、市、福祉事務所を設置する町村(社会福祉法人、NPO等に委託可)。負担割合は、国2/3 都道府県、市、福祉事務所を設置する町村1/3 令和3年度予算額:29.1億円。実施自治体数:319自治体(令和2年度実績)。⇒事業内容、支援の流れ(イメージ)、状態像に合わせた支援メニューの例  参照。
○生活保護受給者等就労自立促進事業→労働局・ハローワークと地方公共団体との協定等に基づく連携を基盤に、生活保護受給者等の就労による自立促進を図るため、ワンストッ プ型の就労支援体制を全国的に整備。地方公共団体にハローワークの常設窓口を設置するほか、福祉事務所や自立相談支援機関への巡回相談 等により、関係機関が一体となった就労支援を推進。 特に、新型コロナウイルス感染症の影響等により増加が見込まれる生活困窮者に対する就労支援を強化。

○1.生活保護受給者に対する就労支援の状況(令和元年度実績)→生活保護受給者に対しては、就労能力や就労意欲に応じて就労支援を実施しており、就労・増収に一定数繋がる 等の成果が見られる。
・就労支援の状況(世帯類型別)→対象者の約6割はその他の世帯に属する稼働年齢層にある者。 事業に参加した母子世帯の母は、約半数が就労・増収に結びついている。
・就労支援の状況(年齢別)→対象者の7割以上が40代以上。50代以上でも5割を超えている。 若年者である方が、就労・増収者割合ならびに廃止者割合が高い傾向にある。
○2−4 就労支援開始から就労開始までの期間→就労・増収者のうち、約7割が支援開始から6ヶ月未満で就労開始。 就労開始まで1年以上かかる者の割合が、全体では13.1%だが、被保護者就労準備支援事業では30.2%と約2倍となって いる。
・就労支援の実績(雇用形態)→就労・増収者の雇用形態は、正社員が15.4%、その他非正規雇用ではパートが 57.4%と最も高い。 廃止となった者の雇用形態は、正社員が34.5%、その他非正規雇用ではパートが 35.6%と高い割合を占める。
○就労支援事業等におけるKPIの設定について↓
・就労支援事業等の参加率2018年度(平成30年度)までに60% →就労支援事業等に参加可能な者の事業参加率2021年度(令和3年度)までに65%
・就労支援事業等の参加した者のうち、就労した者及び就労による収入が増加した者の割合は、2018年度までに50% →目標値を維持。2021年度までに50%
・「その他の世帯」の就労率(就労者のいる世帯の割合)2018年度までに45% →目標値を維持。2021年度までに45%

○新経済・財政再生計画 改革工程表2018 〔第17回経済財政諮問会議決定(平成30年12月20日)〕→上記に関する工程表2018⇒○40○41○42
○就労支援事業の実施状況の地域差→就労支援事業への参加率を都道府県別にみると、最も高い県と低い県との間には約51ポイントの差がある。 就労支援事業を通じた就労・増収率を都道府県別に見ると、最も高い県と低い県との間には約33ポイントの 差がある。
○新型コロナウイルス感染症セーフティネット強化交付金の創設→新型コロナウイルス感染症の影響により生活に困窮される方々を対象とする生活や住まい等に関する支援について、地域 の実情に応じて、柔軟かつ機動的に実施することができるよう、都道府県を中心とした取組を包括的に支援⇒2.生活や住まい等に関する支援の強化→福祉事務所や自立相談支援機関における相談支援体制の強化
○保護決定等体制強化事業→令和2年度 第三次補正予算 新型コロナウイルス感染症セーフティネット強化交付金(140億円)の内数
・新型コロナウイルス感染症の影響による要保護者からの生活保護に関する面接相談及び保護の決定の件数の増加に対応するため、必要な方へ必要な生 活保護が滞りなく決定されるように、福祉事務所における保護決定等の体制の強化を図る。⇒事業の必要性、事業の内容、面接相談件数の増、保護の決定事務処理件数の増⇒⇒迅速かつ適正な保護決定へ。
○就労自立給付金について(生活保護法第55条の4第1項)→生活保護から脱却すると、税・社会保険料等の負担が生じるため、こうした点を踏まえた上で、生活保護を脱却するためのインセンティブを強化するとともに、脱却直後の不安定な生活を支え、再度保護に至ることを防止することが重要。このため、保護受給中の就労収入のうち、収入認定された金額の範囲内で別途一定額を仮想的に積み立て、安定就労の機会を得たこと等により保護廃止に至った時に就労自立給付金を支給。
○勤労控除の概要→勤労控除は、就労収入のうち一定額を収入から控除し、収入の一部を手元に残すことにより、就労に伴う必要経費の補填や、就労 インセンティブの増進・自立助長を図ることを目的とする制度。
○就労活動促進費について→【趣旨】自立に向けての活動は、被保護者本人が主体的に取組むことが重要。しかし、就労活動の状況に関わらず、保護費の受給額は同じであることから、就労活動のインセンティブ が働かないとの指摘がある。 このため、就労活動に必要な経費の一部を賄うことで、就労活動のインセンティブとし、早期の保護脱却 を目指す。 なお、早期脱却に向けた集中的な就労支援(※)と合わせて実施する。 ※ 原則6か月の一定期間を集中的な活動期間とし、本人の納得を得て作成した計画的な取組に基づき集中的な就労支援を行う。 また、直ちに保護脱却が可能となる程度の就労が困難である場合には、低額であっても一旦就労することを基本的考えとする。⇒一時扶助費として支給月額5千円(支給対象期間:原則6か月以内、延長3か月、再延長3か月)
○家計に関する課題を抱える世帯への家計改善支援について【制度概要】↓
・生活保護受給者を含む生活困窮者→家計の状況を把握することが難しい方や中長期的な生活設計を立てた上 で日々の生活を組み立てることが難しい方が存在することが指摘されている。 生活保護受給世帯→就労等により生活保護から脱却した場合に、新たに税・保険料の支払いなど、家計の状況 に変化が生じるが、生活保護受給中から家計管理のスキルを身につけ、円滑に安定した家計管理に円滑に移行することによ り、保護脱却後に再び生活保護の受給に至ることを防止することが期待される。こうしたことを踏まえ、生活保護受給者の自立助長の観点から、家計に関する課題を抱える世帯に対する家計改善支援を実 施することとした。
○大学等への進学を検討している高校生等のいる世帯への家計相談支援【制度概要】
→大学等に進学する子どもがいる世帯が進学費用等を用意するような場合には、本人のアルバイト代や家 計のやりくり等により、受験料等の費用を収入認定から除外し、貯蓄することが認められているほか、進学 費用について奨学金や生活福祉資金貸付による教育支援資金の貸付を受けることにより進学費用を工面する場合がある。このような世帯についても、進学前の段階から進学に向けた各種費用についての相談や 助言、各種奨学金制度の案内等を行う家計相談支援を行うことにより、子どもの進学や世帯全体の自立を促進することが期待される。 こうしたことを踏まえ、生活保護受給者の自立助長の観点から、大学等への進学を検討している高校生等 のいる世帯に対する家計相談支援を実施。

次回も続き「資 料 2 子どもの貧困対策について」からです。

第4回雇用と福祉の分野横断的な基礎的知識・スキルを付与する研修の構築に関する作業部会(資料) [2021年12月22日(Wed)]
第4回雇用と福祉の分野横断的な基礎的知識・スキルを付与する研修の構築に関する作業部会(資料)(令和3年12月10日)
《議題》(1)雇用と福祉の分野横断的な基礎的知識・スキルを付与する研修の構築に関 する作業部会における議論等の整理(案)について (2)その他
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22697.html
◎参考資料1 「雇用と福祉の分野横断的な基礎的知識・スキルを付与する研修の 構築に関する作業部会」の開催について
1.概要
→ 障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会において、障害者の就労を支える人材の育成・確保に関して議論がなされ、雇用と福祉 の分野横断的な基礎的知識・スキルを付与する研修(「基礎的研修」)の必要性等について、一定の方向性が報告書で示されたところ。 これを踏まえ、さらなる具体的な事項を議論することを目的として、検討会の下 に「雇用と福祉の分野横断的な基礎的知識・スキルを付与する研修の構築に関する 作業部会」(以下「基礎的研修作業部会」という。)を開催し、下記2の事項につい て集中的に検討を実施。
2.主な検討事項
→ 雇用分野と福祉分野のそれぞれの現場において活躍できる人材の育成のために、 基礎的研修を実施するに当たって、以下の事項等について整理。 ・受講した人材の仕上がり像 ・カリキュラムに盛り込むべき内容 ・受講を必須とする者の要件 ・受講を必須とする者の規模感を踏まえた研修実施体制 ・受講を必須としない者の受講機会の確保 ・研修実施手法
3.参集者(別紙)→別紙のとおり。 ※検討会の下に開催されたワーキンググループの構成員のうち座長が指名する者が、中 心的な役割を担う者として参画。その他に実務経験に長けた者等に出席を依頼。
4.その他 ・ 令和3年度内に4〜5回程度開催し、基礎的研修作業部会として整理した事項 を取りまとめ、検討会に報告。 ・ 基礎的研修作業部会の運営は、検討会のそれと同様に実施。
○基礎的研修の構築に関する作業部会参集者→8名。(座長・専門アドバイザー)

参考資料2 専門人材の研修体系イメージ図 →現行の専門人材の研修体系イメージ図と今後の専門人材の研修体系イメージ図 あり。

◎参考資料3 各研修のカリキュラム →【基礎的研修】カリキュラムイメージ(案)、【就業支援基礎研修研修】(就労支援員対応型)、【障害者就業・生活支援センター就業支援 担当者研修】、【職場適応援助者養成研修】、【就業支援基礎研修】カリキュラム(就労支援員対応型)、【障害者就業・生活支援センター就業支援担当者研修】カリキュラム、【職場適応援助者養成研修】訪問型・企業在籍型モデルカリキュラム。

◎参考資料4 就業支援基礎研修の実施状況 →(都道府県別)実施状況。

◎参考資料5 各就労支援実施機関数と専門人材の数

・参考資料5-1→障害者総合支援法における就労系障害福祉サービス、・障害者就業・生活支援センター
・参考資料5-2→【事業所数、人員数、研修受講者数】
・参考資料5-3→都道府県別「就労移行支援」事業所、都道府県別「就労定着支援」事業所数、都道府県別「障害者就業・生活支援センター」数
・参考→都道府県別就労継続支援(A型)事業所数、都道府県別就労継続支援(B型)事業所数

◎参考資料6 大臣指定の職場適応援助者養成研修の研修機関に係る要件 ↓
研修機関が次の(1)〜(4)までに掲げるすべての要件を満たすこと。

(1) 法人格を有すること。
(2) 次の一から四までに掲げるいずれかの実績を有し、研修の実施に必要とされる相当程度の経験及び研修業務を一定の水準を保ちつつ継続的 に 運営する能力を有すること
一 次の@からBに掲げる全ての要件を満たすこと↓
@ 訪問型職場適応援助者による援助事業または企業在籍型職場適応援助者による援助事業を継続して行っており、かつ、一定の期間において、 地域障害者職業センターが作成または承認した支援計画による支援件数が10件以上あること。
A 企業在籍型職場適応援助者による援助を行っている法人の場合は、次のアからウに掲げる全ての要件を満たすこと⇒ ア 障害者を10人以上雇用していること イ 障害者の実雇用率が法定雇用率以上であること ウ 一定期間の間に雇い入れた障害者の雇入れ後6か月経過時点の定着率が80%以上であること。
B 職場適応援助者による援助に関する研修であって、次のアからウまでに掲げる全ての要件を満たす研修を各年1回以上実施していること。⇒ ア 企業、福祉、自治体関係者等の複数の分野から幅広い層の参加者を得ていること。 イ 2日以上の連続したカリキュラムであること。 ウ モデルカリキュラムに掲げる科目F〜Iの内容を含んだ研修であり、かつ、講義及び演習の形態で実施していること。
二 次の@及びAに掲げる全ての要件を満たすこと⇒ @ 障害者就業・生活支援センターの運営を継続して行っていること。 A 訪問型職場適応援助者による援助を行っており、かつ、複数の障害種別の支援対象者に対して、地域障害者職業センターが作成又は承認し た支援計画による支援件数が5件以上あること。
三 職場適応援助者養成研修を一定の期間において各年1回以上実施していること。
四 職場適応援助者による援助その他これに類する就労支援に関する研修であって、上記(2)一Bのアからウまで及び次の@からBまでに掲げる全 ての要件を満たすものを、年1回以上実施していること。⇒ @ 都道府県の圏域を超え、相当程度広域的な参加者を得ていること A 1回当たり20名以上の受講者を得ていること B 職場適応援助者による援助事業の実践経験を有していること又は団体会員の実践経験を集約する仕組みを有していること。
(3) 実習の実施に当たって、障害者雇用企業との連携により、多様な業種の実習先を確保できる見込みがあること。
(4) 労働関係法令の違反を行う等の社会通念上著しく信用を失墜させる行為をしていないこと。

○<参考>大臣指定の職場適応援助者養成研修の研修機関における養成数
1 訪問型ジョブコーチ養成数  2 企業在籍型ジョブコーチ養成数  
上記、それぞれ参照のこと。


◎参考資料7 オンラインによる障害者職業生活相談員資格認定講習実施状況 ↓
○令和2年度における障害者職業生活相談員資格認定講習の 一部オンラインによる試行実施について↓

・ 障害者職業生活相談員資格認定講習のオンラインによる実施に向けた課題等の検証を行うことを目的として、オンラインで の講習に参加を希望した者に対して、一部オンラインによる講習を試行的に実施。(※機構本部と神奈川支部が共催で 講習を実施したもの。) *神奈川支部において集合研修を小規模で開催していたことにより、受講対象とはならなかった受講希望者のうち19人が参加。*所定720分のうち、オンライン講習(演習・意見交換等を除く)180分間×3日と集合講習180分×1日(演習・意見交換 等)により実施。
・ オンライン講習はリアルタイム配信を行い、受講者からの質疑応答に対応出来る体制を整え、受講確認のために受講者は ビデオをオンの状態として、事務局側で受講者の様子を常時確認することにより出席を確認した。
・ 従前より、講習受講後の習熟度の確認テストは実施していないが、講習終了後の確認テストを実施した(比較のために集 合形式のみで実施した他の回でも実施)。 ⇒ 集合形式のみ講習受講者よりも、一部オンライン講習受講者の方が確認テストの正答率が高かった。
・【オンライン講習参加者へのアンケート結果】→ 望ましい実施方法について、一部オンラインの講習を受講した者の約半数(47.4%)が「意見交換を除き一部をオンラ インで行う」と回答しており、「全てオンライン形式で行う」は31.6%、「全て集合形式で行う」は10.5%であった。

○令和3年度における障害者職業生活相談員資格認定講習の オンラインによる実施状況
・令和2年度の試行結果を踏まえて、令和3年度においては、一部オンラインで開催することとしている。 * 所定720分の講習を通常2日間で実施しているところ、受講者の負担や集中力の持続に配慮し、3日以上に分けて実施。
・令和3年度限りの緊急措置(セーフティネット)として全国の受講希望者を対象に、講習の質及び双方向性を担保したオンライ ン形式での講習を計2回(1回あたり4日間)開催する予定。


◎参考資料8 オンラインによる職場適応援助者養成研修実施状
○職場適応援助者養成研修については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に配慮し、令和2年8月5日から一部科目のオンライン化を認めている。⇒オンラインでの実施状況、実施機関からの意見、受講者の確認方法(複数回答) 参照。

◆雇用と福祉の分野横断的な基礎的知識・スキルを付与する研修の構築に関する作業部会
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-rousei_126985_00010.html

次回は新たに「第2回生活保護制度に関する国と地方の実務者協議 資料」からです。

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