第4回 生活保護基準の新たな検証手法の開発等に関する検討会資料(令和2年3月3日)3/27
《議題》・現行の検証手法の課題 ・最低限度の生活に関する検討
・現時点における議論と今後の検討課題の整理
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09722.html◎資料3 現時点におけるこれまでの議論と今後の検討課題の整理(案)
1 最低限度の生活を送るために必要な水準
1)貧困の概念→最低限度の生活を送るために 必要な所得や消費という量的な観点に加え、社会との関係も含む生活の質的な観点も踏まえて多面的に貧困を捉えてきている。
2)生活扶助基準の改定方式→・マーケットバスケット方式(昭和23年〜35年)やエンゲル方式(昭和36年〜39年)が採用、・格差縮小方式(昭和40年〜58年)を経て、水準均衡方式(昭和59年 〜現在)へ、・水準均衡方式に至る審議報告においては、生活保護基準に関する基本的な考え方に言及しており、貧困の概念と同様、衣食住に要 する経費のみでなく、社会的経費にも着目する必要性が指摘されるに至っている。
3)生活扶助基準の水準検証の考え方→概ね5年に1度の頻度で定期的に検証を実施。、一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているかという観点 から検証。【これまでの主な意見】→セーフティーネットの 役割と国民からの信頼と納得を得られる水準はどのような水準なのかということ。憲法第25条の趣旨から健康で文化的な最低限度の生活を保障していかなけれ ばいけない。その他あり。
・今後の検討課題→@ セーフティーネットの役割を果たせる水準 A 国民からの信頼と納得を得られる水準
2 最低限度の生活を送るために必要な水準を検証・検討するための手法
1)これまでの生活扶助基準の検証手法・生活保護基準部会において報告のあった検証手法【これまでの主な意見】
・これまでに行われてきた方法や今まだ使われていない方法も考慮に入れつつ、いくつかの方法を組み合わせながら最低生活費を 検討して算出していくということしかないのではないか。
2)生活保護世帯における生活の質の面からみた消費支出や生活実態等の分析・最低限度の生活に関する検討を行うにあたって一つの試みとして、「社会保障生計調査」(生活保護世帯に対する家計簿 調査)や「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」の個票データを用いて、生活保護世帯における生活の質の面からみた消費支 出や生活実態等の分析を行い、これを一般世帯及び一般低所得世帯と比較するという質的な観点からの分析を行った。→(主な分析結果)1〜3の参照。
【これまでの主な意見】
・消費支出の割合や剥奪指数の状況を見ると、生活保護制度に制約されて生活していることが色々なところで見てとれる。剥奪の 度合いは生活保護世帯の方が高いように思うが、これが最低生活費の問題なのか、生活保護制度の運用の問題なのかは解釈が難しい。
・生活保護世帯の場合、等価実収入が増えても剥奪指数は下がらないという点に関して、これは比較的うまく生活保護基準が設定 されているから、世帯の規模によって等価実収入を調整しても指数は落ちないのだという解釈について、そのように考えてよいか どうかというのは、今後の検討課題の中で見ていかなくてはいけないところだと思う。
・その他あり。
3)諸外国における公的扶助制度の検討→最低限度の生活に関する検討を行うにあたり、諸外国の公的扶助制度の現状(給付基準額の設定の考え方など)を把握した上で、 今後参考とすべき点があるかどうかも含めて検討することとした。
【これまでの主な意見】
・ドイツの給付水準の改定方法→物価上昇率と手取り賃金の上昇率を7対3で合算してスライドさせるというのは、年金の 改定方法に並んでいるのかもしれないが、水準検証を行わない間の時期について、物価と実質賃金の動向を合わせてウエイト付けを するという方法も興味深い。
・どの国もある程度の資産保有を認めていることは共通しているのではないか。急な出費への対応という点を考えると、例えば、 イギリスでは、ユニバーサル・クレジットと年金クレジットでは資産の保有要件が異なっており、年齢で分けていたり、資産保有の 限度も分けている。他制度との関係でこのような仕組みになっている可能性もあり、日本とは年金制度もそもそも異なるので、これ を直接生活保護に参照するのは難しいけれども、他国における状況を確認しておくのは重要であると思う。
【今後の検討課題】・最低生活費の算定については、これまでも時代の変遷に合わせて様々な方法が採られているが、唯一この方法が正しく、 何でも説明できるというような方法はないことから、これまでの検証手法も含め、多角的な観点からの検証を行い、いく つかの考え方や方法を組み合わせながら、算定していくことを基本的な方向性とすることについて、どのように考えるか。
・最低限度の生活を考えるにあたり、どの年齢階級やどの世帯類型にも通じるものを明確にするのは難しいことを踏まえ、 どのような検証・検討手法が考えられるか。
・今年度の調査研究として実施している「MIS手法による最低生活費」
(
https://www.jstage.jst.go.jp/article/spls/4/1/4_KJ00008229582/_article/-char/ja/)や「主観的最低生活費」の研究成果を今後の検 証・検討に活用する方法について、これらの検証手法の特徴を踏まえつつ、どのように考えるか。 これまでの意見を踏まえて、例えば、 ・ 総体としては、これまでの検証結果との整合性等を踏まえて、一般低所得世帯の消費実態との均衡を図るという これまでの考え方を基本としつつ、 ・ 特定の年齢階級や特定の世帯類型における生活実態から見られる需要等については、消費実態のみではなく、 今回の調査研究で実施しているような理論生計費の考え方も部分的に取り入れる ことについて、どのように考えるか。
[生活保護世帯における生活の質の面からみた消費支出や生活実態等の分析]
[諸外国における公的扶助制度の検討]
【次年度の検討課題(案)】・MIS手法による最低生活費の試算や主観的最低生活費の試算の研究成果等を踏まえた検討→現行の生活保護基準の水準や体系などに関する評価を行う。
・マーケットバスケット方式による最低生活費の算出事例を踏まえた検討→このような算出方法を採用している国における算出の考え方 や算出にあたって勘案されている具体的な品目等を分析していくことにより、最低限度の生活を送るために必要な水準 に関する検討を進める(社会的経費や栄養摂取量を考慮した食費の取扱い等)。
・級地制度の現状と課題→各自治体の級地を指定するにあたっての適切な指標や手法の検討に向けて、消費支 出等に関する地域差の現状分析等に関する調査研究を実施しているところであり、次回の基準検証を見据えつつ、その 研究成果も含め、級地制度の現状と課題について検討する。
3 現行の検証手法→平成29年検証における手法→基準部会において、評価されている一方、様々な課題も指摘。 このため、次回の基準検証へ向けて、現行の検証手法について、これまでの指摘も踏まえて、その検討課題を整理する。
1)水準検証における比較対象の設定 ア 比較対象とする所得階層→昭和58年の検証結果→平均消費水準を生活扶助基準の比較対象。平成29年検証→家計の消費構造が変化(固定的経費の支出割合が上昇)する点の分析を行った。
イ 比較対象とするモデル世帯→夫婦子1人世帯(勤労者)については、変曲点分析等の結果を参照することができたが、高齢者世帯については、 他の年齢階層に比べて貯蓄を取り崩して生活費を賄う世帯が多いものと想定されることを踏まえて、年収階級別の分析において 貯蓄額を年収に換算した上で分析を試みたが、分析結果にバラツキが見られ、高齢者世帯の変曲点分析の結論は得られなかった。
ウ 展開後の世帯類型別の基準額と一般世帯の消費水準との格差
【これまでの主な意見】
・内閣府において、高齢者世帯の消費構造を分析し、どのように資産を取り崩しているかという研究を行っていたが、前提としては、 自分の寿命から逆算してある程度のペースで取り崩そうとしているが、実際は寿命をかなり長く見込み、取り崩しのペースを抑えて 消費を抑えているというレポートを出している。その抑えられた消費が保護基準の水準等に影響を与えてくる。
・ カテゴリー別扶助と一般扶助という観点でみた場合、日本の場合、一般扶助の形はとっているが、実際には、各種加算という形で、 カテゴリー的な要素も組み込んでいる。基準検証にあたっては、生活扶助基準の本体の話が出てから加算の話になるので、その点も 考えて行く必要があると思うが、ただし、カテゴリー別に考えていく場合、それに耐え得るようなデータをどうするのかを検討する ことも必要になる
2)年齢・世帯人員・級地別の体系検証 ア 指数展開による検証手法→、年齢間、世帯人員間、級地間のバランスの比較を目的
イ 第1類費と第2類費の区分→第1類費の 基準額は、個人の年齢による消費の差に着目して年齢別に設定、第2類費の基準額は、世帯人員数によるスケールメリットを 考慮して世帯人員別に設定している。
ウ 検証に使用する統計データ→「全国家計構造調査」
【これまでの主な意見】→前回の有子世帯の扶助・加算の検証において、生活扶助(第1類費・第2類費)の中でどこまでみるのか、どこの部分を加算に 移すのかという検討を行ったと思う。そのような議論を整理しておくと、次の基準部会における検討の際にとても大きな参考になる のではないか。
3)基準見直しの影響把握の方法→平成29年検証においては、平成25年8月から平成27年度にかけて行った生活扶助基準の見直し及び平成27年11月(一部10月)に行った冬季加算の見直しによる影響把握について、 @ 生活保護世帯に適用される基準額に与えた影響 A 生活保護世帯の家計(消費支出の内容)に与えた影響 B 生活保護世帯の生活実態及び生活意識に与えた影響 という3つの観点からのその影響の把握を行った。
【これまでの主な意見】
4)生活扶助基準の定期検証年以外の年における社会経済情勢の反映方法等
【これまでの主な意見】
以上より【今後の検討課題】→(水準検証における比較対象の設定)(年齢・世帯人員・級地別の体系検証)(基準見直しの影響把握の方法)(生活扶助基準の定期検証年以外の年における社会経済情勢の反映方法等)の柱の検討課題となる。
◯貧困等の概念・「絶対的貧困」に関する概念→ラウントリーの一次貧困・二次貧困
・「相対的貧困」に関する概念→「タウンゼントの相対的剥奪」「OECD等の相対的貧困」
・その他→「ソーシャル・エクスクルージョン(社会的排除)」「センのアプローチ(潜在能力アプローチ)」
◯生活扶助基準の改定方式及び検証手法等の整理・毎年度の改定方式→水準均衡方式(昭和59年〜現在)→当時の生活扶助基準が、一般国民の消費 実態との均衡上ほぼ妥当であるとの評価を踏まえ、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度まで の一般国民の消費実態との調整を図る方式。
・近年における定期的検証の手法→(基本的な考え方)(モデル世帯の水準検証の手法)平成29年検証(全消調査)参照の事。
・基準部会委員より報告のあった 最低生活水準の検証手法↓
(絶対的基準)→MIS(注)手法による最低生活費。マーケットバスケット方式による試算
(相対的基準)→家計実態消費アプローチ
(その他)→主観的最低生活費 ・ 専門家ではなく一般市民が合意できる最低生活 費を模索するため、インターネット調査による 市民参加型の簡易な測定方法を試行。 ・ インターネット上で、「@切り詰めるだけ切り詰めて最低限いくら必要か」「Aつつましいながらも人前で恥ずかしくない社会生活をおくるため にいくら必要か」という2種類の調査を行い、 主観的な最低生活費の幅を検証。次回も続き第4回検討会資料
「参考資料1〜参考資料2」からです