障害児入所施設の在り方に関する検討会中間報告を発表します(令和元年11月11日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_07758.html◎「障害児入所施設の在り方に関する検討会 中間報告」
1.はじめに・平成 26 年7月「今後の障害児支援の在り方について」→その担うべき機能として、1)発達支援機能、2)自立支援機能、3)社会的養護機 能、4)地域支援機能の4つが整理。・平成29年8 月「新しい社会的養育ビジョン」→障害児入所施設も社会的養護の役割を担っているという認識を深める必要もある、とされている。
・これに加え、喫緊の課題→18歳以上の障害児入所施設入所者への対応(いわゆる「過齢児問題」)。とりわけ福祉型については、現に18歳以上の入所者が1,500人 に上る中で、
障害児入所施設の指定を受けていることをもって障害者支援施設の指定基準を満たすものとみなす措置が令和3年3月31日までとされており、この措置の在り方について検討する必要がある。 本検討会では、以上のような経緯や状況等を踏まえつつ、現在の障害福祉施策や社会的 養護施策等の動向、さらには障害児入所施設の実態等を考慮して、上述の「今後の障害児支援の在り方について」で整理された4つの観点を中心に、障害児入所施設の在り方に関する検討を行ったもの。これまで、関係団体からのヒアリングを含め、検討会を5回、福祉型・医療型のワーキンググループを各3回にわたり開催し、議論を重ねてきた。 その結果としてここに中間報告をとりまとめる。
2.障害児入所施設の現状 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課障害児・発達障害者支援室調べ→平成31年3月時点における施設数は福祉型が260施設、医療型が268施設、入所児童数は福祉型が6,944人、医療型が21,424人。 このうち、福祉型の多くを占める旧知的障害児入所施設→18歳以上の入所児童数の推移をみると、日本知的障害者福祉協会の調査では平成24年時点で1,809人→平成29年度には1,204人の減少傾向。 また、入所経路では、福祉型、医療型ともに家庭からが最も多くなっており、ともに過半数を超えている。続いて、福祉型は、児童相談所一時保護所、児童養護施設、乳児院からの順となっており、医療型は、GCU(新生児治療回復室)、医療機関、他の医療型障害児入所施設からの順となっている。 家庭環境などを主に調査した入所理由についてみると、福祉型、医療型ともに、措置で は虐待(疑いあり)が最も多くなっており、福祉型で43%、医療型で48%を占めている。 ついで、保護者の養育力不足が、福祉型で36%、医療型で35%。また、契約では、その他を除くと保護者の養育力不足が福祉型、医療型ともに最も多くなっている。 入所児童の措置と契約の割合→福祉型では、措置 66%、契約 34%。医療型では、 措置 29%、契約 71%。 また、入所児童に占める被虐待児の割合→平成 28・29 年度厚生労働科学研究事業「障害児入所支援の質の向上を検証するための研究」報告書によれば、福祉型で3割から5割程度、医療型で 1.5 割から4割程度となっており、全体では3割強となって いる。 入所児童の在籍年数→福祉型では、18 歳でみた場合、1年未満6%、1年以上 2年未満 11%、2年以上3年未満 24%、3年以上4年未満 11%となっており、4年未満 で約半数となっている。他方で、在籍年数が 20 年以上となっている 30 代、40 代、50 代の 入所者も一定数存在。また、医療型では、18 歳以上の入所者が多くなっている。 障害児入所施設における職員の配置に関しては、平成 28・29 年度厚生労働科学研究事業「障害児入所支援の質の向上を検証するための研究」報告書→福祉型障害児入所 施設の保育士・児童指導員の職員配置では「主として知的障害児」施設では、1.6:1〜2:1 の配置が、「主として盲児又はろう児」では、2.6:1〜2:8:1 の配置が、「主として肢 体不自由児」では、1.8:1〜2:1 の配置が一番多いという実態となっている。
3.障害児入所施設改革に関する基本的視点と方向性
「今後の障害児支援の在り方について」→
「基本理念」→「地域社会への参加・包容(インクルージョン)の推進と合理的配慮」「障害児の地域社会への参加・包容を子育て支援において推進するための後方支援としての専門的役割の発揮」「障害児本人の最善の 利益の保障」「家族支援の重視」の4つを基本的な視点として挙げている。障害児入所施設のあり方検討に当たっては、これらの視点を踏まえ更に現在の障害児入所施設の課題や関 連する他の施策の動向等を踏まえ、以下の基本的視点と方向性をもって進めていくことが必要。
(1)基本的視点 平成 28 年改正児童福祉法第1条で
児童の権利に関する条約の精神にのっとり、適切に養育されるべきことが規定、第2条では
子どもの最善の利益が優先して考慮されるべきことが規定。第3条の2において、子ども が家庭において健やかに養育されるよう、保護者を支援すること。ただし、子ども及び保護者の心身の状況、環境その他の状況を勘案し、家庭において養育することが困難又は適当でない場合は、
家庭における養育環境と同様の養育環境で、それが適当でない場合には 子どもはできる限り良好な家庭的環境で暮らすべきことが規定された。 それは、
子どもと特定の大人との愛着関係の形成こそが子どものその後の発達にとって 最も重要であること、そして、何より、子どものウェルビーイングにそうした環境が不可欠であることを示すもの。このことは、障害児童であっても例外ではない。 また、子どもの権利条約第6条第2項は、子どもの最大限の発達保障を規定し、第 20 条 では家庭環境を奪われた児童等の保護及び援助のあり方が、第 23 条では、障害を有する児 童に対する特別の養護及び援助のあり方がそれぞれ規定され、さらに、障害者の権利条約第7条では、障害のある児童の福祉に関する基本的視点が提示されている。障害児 入所施設のあり方を検討する際には、まず、これらの視点を最優先すべき。 障害児入所施設に入所している児童は、障害があるということに加え、何らかの理由に より自宅で暮らすことができないほど極めて困難な状況。こうした困難な状況にある障害児本人の最善の利益を保障する観点から、障害児入所施設の機能を考えることが必要である。
障害児入所施設は、平成 24 年に施行された児童福祉法の改正前は障害種別ごとに分かれており、これまで、主に障害の重い児童を受け入れる役割を担ってきた。現在でも、こう した機能が決して無くなったわけではないが、社会・経済環境の変化等を背景に、被虐待 児も多くなっており、このような変化にも対応した機能を発揮していくことが求められている。障害児入所施設→障害児支援全般に着目した検討の中で言及されることはあったものの、障害児入所支援の在り方について必ずしも十分な議論やそれを踏まえた支援 の充実がなされてきたとは言い難い。 このため、先に述べた「今後の障害児支援の在り方について」で整理された4つの機能 (@発達支援機能、A自立支援機能、B社会的養護機能、C地域支援機能)が、実際に支 援の現場で発揮されるよう、取組を強化することが必要。
(2)基本的な方向性
@ ウェルビーイングの保障:家庭的養護
障害児支援→子ども個々に応じたニーズを満たすためには、できる限り良好な家庭的環境 の中で、特定の大人との継続的で安定した愛着関係の中での育ちを保障することでウェ ルビーイングの向上を目指す必要がある。
A 最大限の発達の保障: 育ちの支援と合理的配慮
「子どもが 育つ環境を整える子どもの施設」「子ども本人が望む暮らしを保障する施設」といった 幼児期からライフステージを通じて、子どもの育ちを支援すること、加えて発達段階、 障害特性に応じて個々に配慮した環境設定、支援を行う必要がある。
B 専門性の保障: 専門的ケアの強化と専門性の向上
強度行動障害、医療的 ケア、虐待等による愛着形成の課題など、ケアニーズの高い入所児童が多くなっており、 こうした複合的な課題を抱える障害児への更なる支援を図る必要がある。こうした課題 に対応するために、医療機関との連携や医師・心理師等の専門職の配置の推進や専門性 を向上させる研修として強度行動障害支援者養成研修などが例として考えられるため、 更なる体制の整備や研修等により、専門性の向上を図っていく必要。
C 質の保障: 運営指針の策定、自己評価・第三者評価等の整備
支援の質を保障するという観点から自己評価、第三者評価の仕組みを導入する必要。
D 包括的支援の保障: 家族支援、地域支援の強化、切れ目のない支援体制の整備、他施 策との連携 ・ 障害児の支援を行うに当たっては、当該障害児のみならず、家族への支援も重要。障害児本人の状態像や取り巻く環境等の影響から、子育てに不安や孤立感を感じる家庭もあると考えられるため、地域全体で支える仕組みが重要である。障 害児入所施設→短期入所や有期有目的の入所の利用も視野に入れ、施設入所中であっても、家族の実情を考慮しながら可能な限り、親子関係が維持できる 支援を行う必要がある。このように、家族を孤立させないように、家族を含めたト ータルな支援を行っていくという視点が大切である。
・ 不適切な養育や虐待の疑い等で保護された児童→施設での養育の後、 その後の家庭環境を児童相談所や関係機関とアセスメントし、親子関係の再構築等 の家庭環境の調整や、家庭復帰後の虐待再発防止のための更なる親支援も必要。
・ 障害児入所施設が地域の医療的ケア児や里親等を支える地域支援や、短期入所の活用などによる地域の子育て支援の機能も重要。障害児入所施設においても 地域の児童発達支援センター等と連携し、地域の障害児と家族を支える中核的機能 の役割を担う必要がある。
・ 子どもと家族が、入所前に地域で支援を受けていた段階から、入所時、入所中、 退所後と子どもと家族が、今まで暮らしていた地域から離れ、支援の内容が継続さ れなかったり、家族が孤立するなど不利益が起こらないよう、切れ目なく支援が継続されることが必要。 その支援体制→障害児入所施設だけではなく、市町村域、児童相談所を含む都道府県等、また地域の障害福祉サービス事業所、学校等、関係機関が積極的 に関与し連携を図る必要。 これらの実現のためには、市町村域を基盤とした制度間の切れ目のない多機関・ 多職種連携による相補的なシステムづくり並びにそのシステムに基づく包括的で 継続的な支援を行える体制整備が必要である。
・ 地域を取り巻く課題が複雑化している昨今、また地域共生社会の実現を目指すと いう観点からも、障害児施策だけで完結するのではなく、母子保健施策、子ども子 育て支援施策、社会的養護施策等と連携をし、包括的に課題に対応していく必要がある。
4.施設種別ごとの課題と今後の方向性
(1)福祉型障害児入所施設の課題と今後の方向性
1)発達支援機能
@ 家庭的な養育環境の推進
障害児入所施設における支援→できる限り良好な家庭的環境 の中で、特定の大人との継続的で安定した愛着関係の下で行われる必要がある。 ユニット化等によりケア単位の小規模化を推進すべき。小規模化により、職員の質の向上や孤立化・密室化を防ぐための体制強化が必要になることから、小規模化に取り組む施設に対する更なる支援を図るとともに、新たに地域小規模 障害児入所施設(障害児グループホーム)(仮)を導入することについても検討すべき。より家庭的な環境として、里親やファミリーホームがある。ファミリーホームの活用を一層推進す るための検討をすべき。その際、障害に関する研修の実施など支援を強化することが重要である。
A 専門性の高い支援 愛着形成の課題や、強度行動障害など、ケアニーズの高い入所児童が多くなってお り、こうした複合的な課題を抱える障害児に対して特にきめ細かい支援が必要になる ことから更なる支援を図ることが必要。強度行動障害に関する研修の推進や、 強度行動障害児を受け入れた場合の更なる支援等により、職員の専門性を高めるため の支援を強化すべき。 また、視覚障害、聴覚障害のある子どもには、環境整備や支援機器の適切な活用も 大切。あわせて、医療機関や医師・看護師等の専門職との連携を強化すべきである。
2)自立支援機能
@ 自立に向けた支援の強化→入所児童が円滑に地域生活に移行していけるようにするため、早い段階から退所後 を見据えた支援に取り組むことが必要。また、本人に対する支援の強化とあわ せ、家族や地域、自治体、学校、相談支援事業所、障害福祉サービス事業所、医療機 関など関係者・関係機関との連携を強化することが重要である。このため、こうした 役割を担うソーシャルワーカーの配置等の促進について検討すべき。その際、 児童発達支援管理責任者の責務を確認し、ソーシャルワーカーとの関係を整理する必要がある。また、ソーシャルワーカーの配置等の促進とともに、関係者・関係機関 による協議が行われるような体制整備を図る必要性を次期障害児福祉計画や運営指針 等の中で明示することを検討すべきである。
A 18 歳以上の障害児入所施設入所者への対応(いわゆる「過齢児問題」)→令和3年3 月 31 日までとされている過齢児の経過措置の在り方については、次期障害児福祉計画 への位置づけも含めて、最終報告までに福祉型ワーキングで議論する。
3)社会的養護機能
@ 被虐待児等の増加を踏まえた支援力の強化→障害児入所施設が社会的養護機能を発揮することが求められている。児童の中には、愛着形成の課題と知的障害や発達障害との重複など、支援に当たり高い専門性が 求められるケースも少なくない。支援力を強化する観点から、心理的ケアを行う専門職の配置の推進や、職 員に対する更なる研修等を行うべき。 被虐待児の支援を考えるに当たっては、児童相談所との連携が不可欠。 入所施設と児童相談所が、定期的に入所児童の状況や支援方針について情報共有するなど、両者の連携を強化することが必要である
A 児童養護施設等との連携強化→お互いのノウハウや専門性を学びあうことにより、新たな課題への対応力を高めていくことが求められている。 児童福祉法の改正により、平成 30 年4月から、保育所等訪問支援事業の対象に児童養護施設や乳児院が追加された。障害児入所施設が、その専門性を児童養護施設等にも伝えていくことが期待される。
4)地域支援機能→家庭支援専門相談員の配置の必要性
5)その他
・職員の配置基準→ 上に述べたように、社会・経済環境の変化に伴い被虐待児が増加するなど、ケアニ ーズの高い入所児童が多くなっており、例えば、児童養護施設では就学期の基 本配置を6:1から4:1に引き上げることを目標とするなど、障害児入所施設の基 本配置を上回る目標水準となっている。他方で、障害児入所施設については、例えば、 旧知的障害児入所施設の基本配置は、昭和 51 年に 4.3:1となって以来、引き上げら れていない。少なくとも、児童養護施設の目標水準並み を目指して引き上げを図るべきである。その際、児童養護施設においては、愛着関係 の形成に配慮して児童の年齢に応じた配置基準となっていることを踏まえ、障害児入 所施設においても、同様の仕組みとすることを検討すべきである。
(2)医療型障害児入所施設の課題と今後の方向性
1)発達支援機能
@ 福祉的支援の強化→ 医療型の入所児童は、状態安定のための医療的な支援が日常的に必要不可欠、それとともに成長・発達のための福祉的支援を強化させていくことが必要。重度の障害児にとっての発達とは何かと いうことや、発達支援が重要であることの認識を職員間で共有することが重要。あわせて、支援の主な担い手となる保育士等について、その配置を促進すべきで ある。
A 強度行動障害児等への対応→ 医療型においても、著しい睡眠障害(昼夜逆転)、自傷・他傷、著しい多動、異食 行動など、常に見守りが必要な入所児童が一定数存在している。他方で、強度行動障 害児特別支援加算は福祉型に限られているなど、こうした児童に対する手当が十分に 行われていない現状にあるため、医療型における対応困難事例に対する更なる支援を 図る必要がある。
B 医療的ケア児への対応→ 医療技術の進歩等を背景に医療的ケア児が増加している。医療的ケア児の中には、歩ける児童や知的障害を伴わない児童もあり、この場合には重症心身障害児とならないことが一般的である。現行制度では、大島分類による区分に基づき重症心身障 害児の判定がなされ、これを踏まえた報酬設定となっている。このため、現在、障害 福祉サービスにおける医療的ケア児の判定基準について、厚生労働科学研究による研 究が行われており、その研究成果も踏まえ、こうした重症心身障害児以外の医療的ケ ア児に対する更なる支援を図る必要がある。
C 教育の強化→ 学齢期においては、訪問教育や院内学級等により教育が行われているが、子どもの一生涯を見据え、教育の強化を図ることが必要。特に就学前については、入所児童と地域の児童がふれあう機会が少ないため、子ども同士の育ちあいを促 進する等の観点から、入所児童と地域の児童との交流の機会を増やしていくべきある。
D 家庭的な養育環境の推進→ 子どもの養育の特質にかんがみれば、障害児入所施設における支援は、できる限り良好な家庭的環境の中で、特定の大人との継続的で安定した愛着関係の下で行われる必要がある。 このため、小規模化に取り組む施設に対する更なる支援を図るべきである。
2)自立支援機能
@ 児者一貫のもとでの発達・自立支援→療養介護への移行に当たり、家族や地域、自治体、教育機関、相談支援 事業所、障害福祉サービス事業所、医療機関など関係者・関係機関が連携して、対象 となる児童のアセスメントやその後の適切な支援の在り方について協議が行われるようにしなければならない。
A 地域生活への移行に向けた支援→ 医療型においても、在宅への移行に向け、週末や長期休暇などに外泊する取組が行 われており、保育士や児童指導員が支援に当たっている。他方で、外泊時の加算は福 祉型に限られているなど、こうした取組に対する支援が十分に行われていない現状にあるため、医療型における地域生活への移行に向けた更なる支援を図る必要がある。
B 有期有目的支援の強化→ 期限を限って集中的なリハビリテーションを行う等の有期有目的の入所支援は、主 に肢体不自由児に対して活用がなされており、運動機能予後に違いを生ずるなど効果を上げていることから、その一層の活用を促進すべき。重症児→在宅移行に必要となる医療的ケアや遊び方、リハビリテーションを親等が体験す る機会となりうることから、自立に向けた支援としてその活用促進について検討すべきである。
3) 社会的養護機能→被虐待児等の増加を踏まえた支援力の強化→支援力を強化する観点から、心理的ケアを行う専門職の配置の推進や、職員に対する更なる研修等を行うべき。児童相談所との連携→入所 施設と児童相談所が、定期的に入所児童の状況や支援方針について情報共有するなど、 両者の連携を強化することが必要である。
4) 地域支援機能
@ 短期入所を活用した支援について→ 障害児が在宅生活を送る上で家族のレスパイト等を考えたとき、短期入所は欠かせない支援。特に医療を必要とする障害児は利用できる事業所が地域によっては 限られていることから、医療型障害児入所施設が実施する短期入所の役割は大きいと考えられる。障害児の状態 像に応じて対応できる福祉型・医療型短期入所が地域の中で計画・運営されるよう、次 期障害児福祉計画の中で明示すべきである。また、体制を整備するうえでも、報酬の見直しも必要。
A 通所支援の活用について→特に乳幼児期 は早期療育の場でもあり家族にとっては障害受容や子育てを行う上での他家族との交 流の場としても意義がある。医療型障害児入所施設は医療・看護・福祉等の機能を有しており、多角的なアプローチが可能である。その有するノウハウを障害児とその家族へ の支援の場として通所支援の機能を保有し、支援の強化につながることを今後、更に期待する。
B ソーシャルワーカーの配置について→ 個別の課題(生活上の課題)の解決に向けて、障害児とその家族が望む生活の実現 など個々の場面に応じて、様々な社会資源の間に立って、必要な支援を適切に結びつ ける役割を担うソーシャルワーカーの支援への介入は重要。
(3)福祉型・医療型に共通する課題と今後の方向性
@ 契約入所と措置入所の整理→障害児入所施設への入所は、制度上、契約によるものと措置によるものがあり、その考え方については、「障害児施設給付費等への支給決定について」(平成 19 年3月 22 日付け障発第 0322005 号)及び「障害児施設の入所に係る契約及び措置 の適用について」(平成 21 年 11 月 17 日付け障障発 1117 第1号)において整理されているが、入所児童に係る契約入所と措置入所の割合をみると、全国でばらつきが生 じている実態にある。 このため、上記通知を再度周知するとともに、全国の状況についてフォローアップ を行い、その状況について継続的に把握・共有すべきである。
A 質の確保・向上→社会的養護の分野では、支援の質の向上を図るため、施設種類別の運営指針や手引 書が作成されるとともに、自己評価や第三者評価が義務づけられている。施設長の研修が義務化、2年に1回以上の受講が義務づけられている。障害児福祉の分野においても、児童発達支援及び放課後等デイサービスについて ガイドラインが策定。 こうしたことを踏まえ、障害児入所施設についても、運営指針の策定や第三者評価など、質の確保・向上を図る仕組みを導入することについて検討すべき。
B 入所施設間の連携強化について→ 人口減少社会の進展により、地域に障害児福祉施設が少なくなり、遠方に入所され、 子どもの精神的安定や家族再統合等に支障が出る例も出てきている。これらの解消のためには、医療の必要がなくなった児童について医療型障害児入所施設を経営する法 人が福祉型の地域小規模障害児入所施設(障害児グループホーム)(仮)を設置すること、 児童養護施設を経営する法人が地域小規模障害児入所施設(障害児グループホーム)を 併設できるようにするなど、施策間の連携を強化していくことが必要。さらに、 障害児入所施設がフォスタリング機関となって、障害児を受け入れる専門里親やファ ミリーホームなどを支援できるようにしていくことも必要とされる。 上記のような措置がとれるようになることで、例えば兄弟に障害がある場合に兄は 児童養護施設、弟は障害児入所施設へと地域を離れて別々に入所するようなことが起こらないようにすることが可能になる。地域の限りある資源を活用し、入所児童であ っても出来るだけ地域で育つことが出来る環境を整えられるよう検討すべきである。
C 障害児入所施設の名称の変更→平成 24 年の児童福祉法改正に伴い通所支援は児童発達支援と変更。入所支援も、 障害児入所施設から児童発達支援入所施設(仮)等に変更が求められているため、名 称の検討も必要。
D 権利擁護について→ 児童の権利に関する条約、障害者の権利に関する条約の批准、また児童福祉法の改正から子どもが権利の主体であり、最善の利益が保障されることが記載されている。 障害のある子ども達の意見表明については、「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」や、社会的養護分野で導入の検討が進められているアドボケイト 制度を参考に進めていく必要がある。検討するうえでは、子ども自身が自分の成長を 知るための権利を保障するために、社会的養護分野で取り組まれている権利ノートな ど好事例を収集するなどを行うべきである。
E 他の障害福祉サービスや他分野の施策の柔軟な利用→ 入所児童については、原則として、児童発達支援や放課後等デイサービス、生活介護といった他の障害福祉サービスを利用することができないが、発達の観点や生活の広がり、また、退所後の生活を見据えると、こうした地域の障害福祉サービスを、入所中から柔軟に利用できるようにすることについて検討すべき。なお、その際 には、障害児入所施設や療養介護との二重給付とならないよう配慮する必要がある。
F 都道府県・市町村の連携強化→ 入所児童の退所後の地域生活を支える役割は主として市町村が担うことに。入所の措置権限は都道府県等が有しているため、両者の連携を図る必要がある。上に述べた関係者・関係機関による協議に、 児童相談所を含めた都道府県等や市町村も積極的に参画するとともに、入所施設とこれら自治体職員とが日頃から顔の見える関係を築くことが重要である。地域で子ども の支援を構築していくが、入所と同時に関わりがなくなり、また退所の時に新たに支 援を構築するという現状があり、子どもと家族が地域から孤立せず、安心して暮らせ るよう切れ目のない支援を行う必要がある。 また、社会的養護における議論とあわせ、入所の決定権限を市町村に付与すること により、入所前から退所後まで市町村が一貫して支援を行う体制とすることについて も検討すべきである。
(
4)機能強化に向けた取り組み→ 以上に挙げた課題の解決に向け、国は児童福祉法改正などの取り組みを強化する必要がある。また、次期の第2期障害児福祉計画への反映や障害福祉サービス等報酬により 対応すべきものについては、令和3年度に予定されている次期報酬改定において、必要な財源を考慮しつつ実現が図られるよう、速やかに検討すべきである。さらに、運営指 針の策定など、研究が必要なものについては、来年度の調査研究において着手できるよう検討すべきである。
5 最終報告に向けて 本中間報告における記述は、福祉型・医療型ワーキンググループにおけるそれぞれの議 論を踏まえたもの。今後は、本報告の記述をワーキンググループにおいて相互に参 照しつつ、教育との連携、18 歳以上の障害児入所施設入所者への対応(いわゆる過齢児問題)等残された論点やさらに議論を深めるべき論点について検討し、
年度内に最終報告をとりまとめられるよう議論を進めていく。 とくに、障害児本人の最善の利益を保障することの重要性については「今後の障害児支 援の在り方について(報告書)」に明記はされているが、
障害児入所施設との関連性のなか で、これまで十分な検討がなされてこなかった。 この検討会を契機に障害児入所施設の果たすべき機能を考えるとともに障害児本人の発達を最大限に保障すべきことに光が当てられることを願っている。
次回は、「
キッズ・ゾーンの設定の推進について」からです。