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第22回社会保障審議会福祉部会 資料 [2019年07月31日(Wed)]
第22回社会保障審議会福祉部会 資料(令和元年7月22日)
《議事》(1)地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進について
(2)社会福祉法人の事業展開等の在り方について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05799.html
◎資料4「社会福祉法人の事業展開等に関する検討会」 (第1回〜第3回) これまでの議論の整理
1.社会福祉法人における連携や協働化、大規模化の意義
【現状】
・社会福祉法人
→経営組織のガバナンスの強化、事業運営の透明性の向上等の改革を行い、概ね順調に施行されてきた。人口減少や急速な高齢化、地域社会の脆弱化等の社会構造の変化の中で、法人の責務として、既存の社会保障制度や社会福祉制度では対応が困難な地域ニーズを積極的に把握・対応していくことが求められており、今後とも、この取組(地域における公益的な取組)をより一層進めていくことが期待されている。
・一方、我が国の人口動態を見ると、2040年に向けて、現役世代(担い手)の減少が課題となる中、中長期的に、人手不足などの問題が更に深刻化。また、「経済政策の方向性に関する中間整理」(平成30年11月26日未来投資会議・まち・ひと・しごと創生会 議・経済財政諮問会議・規制改革推進会議)において、「経営の安定化に向けて、医療法人・社会福祉法人それぞれの経営統合、運営の共同化の方策や、医療法人と社会福祉法人の連携方策を検討する。」とされ、さらに、近年、地域包括ケアシステムの構築や地域共生社会の実現等、地域で連携してサービス提供することが求められてきている。
・以上を踏まえ、人手不足などの問題が深刻化することが見込まれる中、地域における福祉サービスを確保するとともに、社会福祉法人が地域貢献の取組等をより一層進めていく必要があり、そのため、社会福祉法人における 連携や協働化、大規模化の対応を推進しやすい環境整備を図っていく。
【検討会における主な意見】
・社会福祉法人が地域貢献への期待等に応えるために、社会福祉事業の現業から離れ、役員を含め、法人本部で経営戦略等を考える人材を確保することは有効ではないか。また、そうした体制を整える上で、連携、協働化とい う方策は有効と考えられる。社会福祉法人の支援、ネット ワーク、人材等を活用できるよう連携を深めることが重要。
・人手不足などの問題が深刻化する中で、社会福祉法人が地域における多様な福祉ニーズへの対応や、地域包括ケアシステムの構築、地域共生社会の実現等に向けた取組等を進めるため、連携や協働化、大規模化に取り組むことは有効ではないか。 地域共生社会を具体的に展開するためには、身近な地域での小規模多機能化と子どもから高齢者までの包括的支 援をどのように展開できるかということが重要であり、社会福祉法人による支援の在り方を検討してはどうか。
【今後の対応に向けた考え方】
・連携や協働化、大規模化などの組織再編を含む方法は、あくまで、希望る法人の自主的な判断のもと進められるべきものであるが、一般に、これらの方法は、社会福祉法人が高まる地域の期待や役割等に応えていくために 有効な手段であると考えられる。
・例えば、連携・協働化は、社会福祉法人が地域貢献の取組を行うにあたり、それぞれの強みを生かした活動を展開することが可能となるといった効果が考えられるほか、人材確保にあたっても、法人間で連携・協働化することで、新規職員の採用、離職防止に資する活動の効果的な実施につながり、また、人口減少下において、地域の 福祉サービスの維持や、事業の効率化に資する活動が可能となると考えられる。
・また、大規模化についても、非効率な施設が増えても単純に経営が効率化・安定化するものではないものの、一 般には、新たな福祉サービスの拡充(事業の多角化)により、様々な福祉ニーズへの対応等の観点から有効と考 えられるほか、大規模化による資材調達等の合理化も可能となると考えられる。

○連携・協働化が効果を発揮する場面・観点@ABCD
@ 人材確保・資質向上→人手不足の問題が深刻化する中で、福祉ニーズに的確に対応できる人材を安定的に確保する上で、連携・協働化は効果が期待できる。
A 地域における公益的な取組→地域の多様な福祉ニーズへの期待に積極的に応えられるよう、連携・協働化を進めることで、法人単独では取り組みにくいものにも取り組みやすくなるとともに、法人それぞれの強みを生かしながら活動を展開する効果が期待できる。
B 地域共生社会の実現に向けた取組→地域共生社会の実現に向けて、地域における社会福祉法人が種別を超えて連携・協働化することで、課題への総合的包括的な対応力が増進し、地域住民と協働した地域づくりに向けた積極的な取組がより進むことが期待できる。
C 地域の状況に応じた福祉ニーズへの対応→人口減少地域において、量としての福祉ニーズは減少する中で、子育て支援から高齢者ケアに至る幅広い 福祉ニーズに対応する機能を維持していく上で、連携・協働化は重要性が高まると考えられる。
D 事業運営の効率化・安定化→効率的かつ安定的な事業運営を進めていく上で、連携・協働化は効果が期待できる。

2.具体的な対応の方向性
(1)社会福祉法人の連携・協働化の取組の推進

【現状】
・厚生労働省
→単独で地域貢献の取組を実施することが困難な小規模法人において円滑な取組を推進できるような環境整備を図る観点から、平成30年度から、「小規模法人のネットワーク化による協働推進事業」を実施しており、平成30年度は合計23府県市でネットワークの構築の取組が行われている。
・都道府県社会福祉協議会→都道府県域での複数法人間連携による地域貢献の取組が進められており、平成31年3月末時点で45都道府県において、居場所づくりや総合相談、生活困窮者支援等の取組進められている。
【検討会における主な意見】
・「地域における公益的な取組」を単独で実施する余裕のない法人もあり、協働化して実施していくことが有効
。 社会福祉法人が施設職員をソーシャルワークに人員を割いた時に、施設の専従要件が連携の阻害要因とならないよう配慮すべき。例えば、本来、通所・入所施設等の機能として、地域活動は位置付けうるものであり、そういった観点からも、「専従」の考え方を検討していくべきではないか。人材確保が難しい現状を踏まえ、柔軟な人員配置を可能とし、少ない人材を複数の法人で活用できるようにすべ きではないか。人手不足の中で、社会福祉法人で外国人の受入を進める場合、社会福祉法人が協働化して受入を進めるということが考えられるのではないか。 法人間連携は、大規模な法人であったり、理念がはっきりした法人が中核を担うことで、前向きに参加する法人 が増えるのではないか。
・社会福祉協議会は、その地域で社会福祉事業等を経営する者の過半数が参加する組織、社協が法人間連携の核となるべき。社会福祉協議会を活用していく上で、社会福祉協議会が、社会福祉法人から人的資源や資金の拠出を受けながら、 社会福祉法人の意向を踏まえた連携・協働による事業展開がしやすくなる仕組みを検討してはどうか。
・法人間連携により、住民課題を把握しながら、規模の大きな地域貢献が可能になり、地域全体の福祉活動の幅が 広がった。具体的な活動による地域課題へのチャレンジや地域住民の変化が職員のモチベーションとなり、各法人 の連携事業への参加につながるとともに、職員にとっても働きがいとなり、普段の業務における連携につながった り、離職防止・新規の人材確保につながっている。
【今後の対応に向けた考え方】
・社会福祉協議会の役割に鑑み、社会福祉法人の連携の中核として、都道府県域での複数法人間連携による地域貢 献の取組を更に推進するなど、社会福祉協議会の積極的な活用を図っていくことが重要である。厚生労働省は、社会福祉協議会の連携の取組とも連携しながら、「小規模法人のネットワーク化による協働推進事業」における実施状況や課題を把握し、法人間連携の更なる推進を図る。また、多様化・複雑化する福祉ニーズへの対応など、地域貢献の責務を負っている個々の社会福祉法人が、自主的に連携・協働化の取組を進めることも重要であり、厚生労働省は事例収集等による横展開にも努める。さらに、各都道府県において、平時から災害時の支援体制(災害福祉支援ネットワーク)の構築を進めるケースが増加しており、厚生労働省も「災害福祉支援ネットワーク構築推進事業」により推進しているが、災害対応の重要性に鑑み、こうした災害時に備えた連携が法人間連携のきっかけとしても有効であることから、取組を更に進めていくことが望ましい。

(2)社会福祉法人が主体となった連携法人制度の創設の検討
【現状】
・医療分野
→連携・協働化の方策の一つとして、地域医療連携推進法人制度という制度が設けられており、社会福祉法人も参画している事例が存在する。
【検討会における主な意見】→社会福祉法人においても、地域医療連携推進法人のような仕組みを選択肢として設けるのは一つの方策ではないか。 連携法人制度→法人の外へ出資できないことが大前提としてあり、連携法人の解散時の残余財産の取扱いなどを慎重に検討する必要がある。
・連携法人制度→@人材(特に1法人1施設の法人における後継者問題への対応やキャリアパスの構築等)、A モノ・資源(共同購入等)、B資金(財務安定等)などから有効ではないか。
【今後の対応に向けた考え方】
○ 社会福祉の分野では、2.(1)で述べたとおり、法人間連携の枠組として社会福祉協議会の仕組みがあり、その活用が重要であるが、連携に自主的に取り組む際、採りうる連携方策の選択肢の一つとして、社会福祉法人の 非営利性・公益性等を踏まえつつ、社会福祉法人主体の連携法人制度の創設に向け検討を進める。その際、現状、社会福祉法人の収入・収益について、法人外への支出は認められていないことに留意が必要。 法人合併による大規模化については、歴史や経営理念の相違等により、法人間の合意形成が難しい側面もあるため、希望する法人が取り組みやすいような環境整備という観点からも、連携法人制度の活用が考えられる。

(3)希望する法人が大規模化・連携に円滑に取り組めるような環境整備
【現状】
→社会福祉法人の数は約2万件であるのに対し、合併認可件数は、年間10〜20件程度で推移。実績が 少なく、行政庁が不慣れな点もあり、取り組みにくい環境にある。
【検討会における主な意見】
・大規模化を進めるためには、それによりどういう良いことがあるのか等について、法人にお伝えすることが重要。 合併等を阻む要因として、法人種別ごとの処遇改善の仕組みの相違や就業規則の不一致の調整等のコストがある のではないか。 ○ 一般市区が法人の設立業務等に不慣れであり、人事異動もあることを考慮すれば、ガイドラインだけでなく、都道府県の関与のあり方も検討した方が良いのではないか。事業譲渡をする際に、会計的に縛りとなっていることや、債権者保護の問題、社会福祉法人独自の規制について、 整理し、ガイドラインに掲載してはどうか。 ○ ガイドラインに、合併によるメリット、サービスの質の標準化、キャリアパスの構築などの具体例を掲載して欲しい。また、合併に際した人事管理面の着眼点や留意点、課題解決の好事例等を整理してはどうか。
・合併等の相手方を見つけることが困難であるとの声を踏まえ、希望法人向けのマッチング支援を拡充してはどうか。マッチングを所轄庁が担うと県域等を超えてマッチングしにくいため、行政区域を越えた枠組を考えると良いと考えられる。合併、事業譲渡のマッチングの際には、単純に相手方を見つけるだけではなく、事業内容の見直しなど経営の技術的な問題が含まれているのではないか。
【検討会における主な意見(続き)】 ○ 会社法では、法人間の合併契約の中で、合併の効力が生じる日を決めることができるが、社会福祉法では合併の 登記が効力発生日とされており、法人間の合意で決められないという課題がある。
【今後の対応に向けた考え方】→大規模化・連携は、希望する法人の自主的な判断のもと進められるべきものであり、その環境整備を進めることが重要。所轄庁が合併等の手続きに疎いとの声や、実際に法人が合併等に苦労したとの声等を踏まえ、合併や、事業譲渡、 法人間連携の好事例の収集等を行い、希望法人向けのガイドラインの策定(改定)を進める。
・組織再編に当たっての会計処理について、社会福祉法人は法人財産に持分がないことなどに留意しつつ、会計専門家による検討会で整理を進める。

次回は、以上に関する「(参考資料)参考資料集」からです。

第22回社会保障審議会福祉部会 資料 [2019年07月30日(Tue)]
第22回社会保障審議会福祉部会 資料(令和元年7月22日)
《議事》(1)地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進について
(2)社会福祉法人の事業展開等の在り方について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05799.html
◎資料3「社会福祉法人の事業展開等に関する検討会」 (第1回〜第3回) これまでの議論の整理(概要)
○社会福祉法人の事業展開等に関する検討会

1 設置の趣旨→人口減少や急速な高齢化、地域社会の脆弱化等の社会構造が変化し、国民の抱える福祉ニーズの多様化・複雑化が進み、また、 2040年に向け、生産年齢人口の減少による人手不足などの問題が更に深刻化する恐れがある中、社会福祉法人の事業展開等の在り方 について検討を行うため、有識者による検討会を開催する。
2 主な検討項目→・複数法人による協働化等、社会福祉法人の事業の効率性やサービスの質の向上に向けた連携の促進方策について。・社会福祉法人の「地域における公益的な取組」の促進方策について 等
3 構成員
4 審議スケジュール・開催状況

○社会福祉法人の事業展開等に関する検討会 これまでの議論の整理(抄)
1 社会福祉法人における連携や協働化、大規模化の意義

○ 連携や協働化、大規模化などの組織再編を含む方法は、あくまで、希望する法人の自主的な判断のもと進められるべきものであるが、一般に、これらの方法は、社会福祉法人が高まる地域の期待や役割等に応えていくために有効な手段であると考えられる。
○ 例えば、連携・協働化は、社会福祉法人が地域貢献の取組を行うにあたり、それぞれの強みを生かした活動を展開することが可能となるといった効果 が考えられるほか、人材確保にあたっても、法人間で連携・協働化することで、新規職員の採用、離職防止に資する活動の効果的な実施につながり、 また、人口減少下において、地域の福祉サービスの維持や、事業の効率化に資する活動が可能となると考えられる。
○ また、大規模化についても、非効率な施設が増えても単純に経営が効率化・安定化するものではないものの、一般には、新たな福祉サービスの拡充 (事業の多角化)により、様々な福祉ニーズへの対応等の観点から有効と考えられるほか、大規模化による資材調達等の合理化も可能となると考えられる。

2 具体的な対応の方向性(主なもの)
(1)社会福祉法人の連携・協働化の取組の推進
→社会福祉協議会の役割に鑑み、社会福祉法人の連携の中核として、都道府県域での複数法人間連携による地域貢献の取組を更に推進するな ど、社会福祉協議会の積極的な活用を図っていくことが重要。 厚生労働省は、社会福祉協議会の連携の取組とも連携しながら、「小規模法人のネットワーク化による協働推進事業」における実施状況や課題を 把握し、法人間連携の更なる推進を図るとともに、連携・協働化の事例収集等による横展開に努める。
(2)社会福祉法人が主体となった連携法人制度の創設の検討→社会福祉の分野では、2.(1)で述べたとおり、法人間連携の枠組として社会福祉協議会の仕組みがあり、その活用が重要であるが、連携に自 主的に取り組む際、採りうる連携方策の選択肢の一つとして、社会福祉法人の非営利性・公益性等を踏まえつつ、社会福祉法人主体の連携法人 制度の創設に向け検討を進める。
(3)希望する法人が大規模化・連携に円滑に取り組めるような環境整備→所轄庁が合併等の手続きに疎いとの声や、実際に法人が合併等に苦労したとの声等を踏まえ、合併や、事業譲渡、法人間連携の好事例の収集 等を行い、希望法人向けのガイドラインの策定(改定)を進める。 組織再編に当たっての会計処理について、社会福祉法人は法人財産に持分がないことなどに留意しつつ、会計専門家による検討会で整理を進める。

○(参考)成長戦略フォローアップ→社会福祉法人の事業の協働化・大規模化の促進方策等について、有識者による検討 会を開催し、2019年度中に結論を得る。また、希望する法人が、大規模化や協働化 に円滑に取り組めるよう、合併等の際の会計処理の明確化のための会計専門家による検討会による整理も含め、2019年度中を目途に、好事例の収集やガイドラインの 策定等を行う。

○(参考)社会福祉法人会計基準検討会

1 設置の趣旨→社会福祉法人会計基準に基づく社会福祉法人の会計処理に係る課題等について検討を行う。
2 主な検討項目 (1)法人の組織再編に関する会計処理 (2)他の法人形態で適用されている会計処理の社会福祉法人会計基準への適用の要否 (3)平成23年の新基準策定時から検討課題として残っている項目(社会福祉協議会に関する事項) 等
3 構成員
4 審議スケジュール・開催状況
(第1回)2019年6月10日
(第2回) 2019年7月17日
(第3回)2019年7月下旬
※ 第4回以降は議論の進捗状況に応じて、随時、開催する。

次回は、「資料4「社会福祉法人の事業展開等に関する検討会」 (第1回〜第3回) これまでの議論の整理」からです。

第22回社会保障審議会福祉部会 資料 [2019年07月29日(Mon)]
第22回社会保障審議会福祉部会 資料(令和元年7月22日)
《議事》(1)地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進について
(2)社会福祉法人の事業展開等の在り方について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05799.html
◎資料2地域共生社会推進検討会中間とりまとめ(本文)
W 今後の検討に向けて
○ 本中間とりまとめで明らかとしたように、福祉政策の新たなアプローチとして求められているのは
、複雑・多様な問題を抱えながらも一人ひとりの生が 尊重され、多様な社会との関わりを基礎として自律的な生を継続していくことを支援する機能の強化である。
○ このため、政策を検討する際には→・個人や世帯が地域やコミュニティとのつながりを回復するために、専門職 等が伴走しながらつなぎ戻し、参加を支援していく包摂の観点と、 ・ 地域やコミュニティにおける多様なつながりが生まれやすくなるための 環境整備を行う観点 の双方を重視することが必要である。 社会への包摂を目指す対人支援→従来の具体的な課題解決を目的とするアプローチに加えて、つながり続けることを目的としたアプローチ により重点を置くべきであり、その中核の機能として、断らない相談支援を確 立していくことが課題である。 また、本人の自律的な生の継続を支える、地域やコミュニティにおける多様なつながりが生まれやすくなる環境整備→共同体の機能の低下などの背景を踏まえると、福祉の観点からの地域づくりを推進する取組を強化 していくことはもちろんのこと、地方創生やまちづくりなど他分野の政策との連携なども確実に政策の射程として捉え、具体化していく必要がある。
○ 地域ごとの地理的条件や地域資源の実態などを踏まえながら、断らない相談支援を中核とする包括的な支援体制の構築を進めるためには、属性 ごとの縦割りを超えて、地域ごとの多様な体制整備を支援するための柔軟な財政支援が不可欠。
○ このように、計5回にわたる検討会での議論により→・福祉政策の新たなアプローチの在り方、・包括的支援に求められる機能、・包括的支援を具体化する際の体制整備と財政支援の在り方 については、大きな方向性において意見の一致を見た。
○ 今後、本検討会においては、更なる議論を重ねながら、政策の具体化を検討していくことになるが、特に、包括的支援を行う枠組みについては→・参加支援の具体的内容、・包括的な支援体制を構築する圏域の考え方、・包括的支援を進める際の協議体の考え方(既存の協議体との整理)、・事業の実施に係る計画など包括的支援の適正性を担保するための仕組みの在り方(地域福祉計画を始めとする既存の各種計画との関係性の整理)、・包括的支援に求められる人員配置要件や資格要件の在り方、・広域自治体としての都道府県の役割、・保健医療福祉の担い手の参画の促進方策 等の論点について検討を深める必要がある。
○ このほか、 ・ ソーシャルワーカーの本来の役割である対人支援に時間を充てられるよ う、ICT などのテクノロジーの活用等により事務量の軽減を図るべきである、・断らない相談支援を始めとする包括的支援に関わる人材の育成の在り方や人材の確保に向けた環境整備を図るべきである、・地域福祉行政の拠点としての福祉事務所の今後の在り方について、企画機能の位置づけやそれに附帯した人材育成の必要性も含め検討すべきである、・地域においてケア・支え合う関係性を広げ、地域ごとの多様性に対応するためには、人づくりや人材確保に重きを置くべきであり、当事者と人として 出会い、その経験や苦労から学ぶ機会を与えるような福祉教育や専門職教育 が必要である、・人材養成に際しては、同一の研修に参加するなど専門職と地域住民が相互 に学び合う場面を設ける必要がある、・社会福祉法人が、地域における公益的活動の一環として、より積極的に、 民間の公共的セクターとしての役割を担えるように後押しする必要がある、・地域づくりは地域の多様な領域の関係者の参画を要するものであり、かつ 地理的条件や地縁の強弱など背景が異なることから、地域・コミュニティ支 援の施策には長期的な視点が必要であり、その評価についても長期的な指標 を用いるべきである との意見もあった。
○ 最後に、本検討会に求められているのは、今回の議論を通じて、今一度、一 人ひとりが生まれながらにして持つ権利と存在そのものへの承認を中心に据 えた福祉政策の在り方について、道筋を立てることである。今後の検討にあたっても、常にこの点に立ち戻りながら議論を進めていきたい。

次回は、「資料3「社会福祉法人の事業展開等に関する検討会」 (第1回〜第3回) これまでの議論の整理(概要)」からです。

第22回社会保障審議会福祉部会 資料 [2019年07月28日(Sun)]
第22回社会保障審議会福祉部会 資料(令和元年7月22日)7/28
《議事》(1)地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進について
(2)社会福祉法人の事業展開等の在り方について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05799.html
◎資料2地域共生社会推進検討会中間とりまとめ(本文)
V 包括的な支援体制の整備促進のための方策
1 対応の骨格
○ 本検討会
→社会福祉法第 106 条の 3 第 1 項に規定する市町村における 包括的な支援体制の全国的な整備を推進するための方策について、モデル事業の実施状況やモデル事業実施自治体におけるニーズ等を踏まえつつ検討を行ってきた。
○ 後述するように、これまでの検討から、Uで述べたような福祉政策の新たなアプローチを実現するための包括的な支援体制は、大きく以下の3つの支援の機能を一体的に具えることが必要と考えられ、そのような体制の整備に積極的に取り組む市町村に対して、国としても政策的な支援を行うべきである。→・ 断らない相談支援、・ 参加支援(社会とのつながりや参加の支援)、・ 地域やコミュニティにおけるケア・支え合う関係性の育成支援
○ 現在、相談機関等の支援体制に対して個別制度がそれぞれ補助する形をとっていることで、このような断らない相談支援を中心とした包括的な支援体制を市町村において構築しづらくなっている。こうした課題を解消し、包括的な支援体制を、各自治体の状況に合わせて整備することを後押しする観点から、属性や課題に基づいた既存の制度の縦割りを再整理する新たな制度枠組みの創設を検討すべきである。 なお、その際、社会保険制度と社会福祉制度の性質の違いなど、既存の社会保障制度の機能の在り方についても留意する必要がある。

2 断らない相談支援について
(1) 断らない相談支援の機能
→モデル事業における包括的な支援体制の構築は、以下の2つの体制づくりから構成。→ ・住民に身近な圏域において、住民が主体的に地域課題を把握して解決を試 みる体制づくり、・市町村圏域において、地域住民が把握した地域課題のうち複合化・複雑化 した課題に対応できる、多機関の協働による総合的な相談支援体制づくり
○ モデル事業実施自治体との協議から、これらの体制づくりには、以下の機能が必要であることが明らか。 →(ア) 多機関協働の中核を担う機能(・制度の狭間・隙間や、課題が複合化・複雑化したケースの支援調整、・個別支援から派生する新たな社会資源・仕組みの創出の推進 懐中電灯 多機関のネットワークの構築、・相談支援に関するスーパーバイズ、人材育成。 (イ) 属性にかかわらず、地域の様々な相談を受け止め、自ら対応又はつなぐ 機能(・分野横断的・複合的な相談であっても受け止める機能、・関係機関と連携しながら、課題解決に向けた対応を行い、必要に応じて適切な機関につなぐ機能)
○ 一方で、モデル事業を始めとする相談支援の実践においては、本人・世帯単 位で複合化した課題に対応する柔軟な支援の必要性に加えて→・ 本人や世帯に関わっていく中で主訴と異なる課題が明らかになるケース、・ 中長期で捉えると、本人のライフステージが変化するに従って、抱える課 題が変化したり、新たな課題が発生したりするケース などが見られ、個別課題の解決のための支援と合わせ、継続的な関わりそのものを目的とする支援の必要性が明らかとなっている。
○ 本検討会における議論においても、→・ 断らず受け止めるという入口とともに、受け止めた後、継続的に関わる支援も併せて重要であり、・ 継続的な支援を展開する際にいずれの者が中心として関わっていくか、支援体制の構築に当たって困難を感じることもある との意見があった。
○ これを踏まえると、断らない相談支援の機能としては、「(ア) 多機関協働の 中核を担う機能」、「(イ) 属性にかかわらず、地域の様々な相談を受け止め、 自ら対応又はつなぐ機能」に加え、「(ウ) 継続的な関わりを可能とする機能」 を確保することが必要と考えられる。

(2) 断らない相談支援の具体化のための体制
○ 上記(ア)から(ウ)までの機能について、市町村において具体化することを念 頭に、それを担う主体や圏域を想定して分解すると→ @ 属性にかかわらず、地域の様々な相談を受け止め、自ら対応し、又は他の支援関係者につなぐ機能 A 制度の狭間・隙間の事例、課題が複合化した事例や、生きづらさの背景が 十分明らかでない事例にも、本人・世帯に寄り添い対応する機能 B 上記を円滑に機能させるために、福祉、医療、住宅、司法、教育など、本人・世帯を取り巻く支援関係者間の調整を行い、多機関のネットワークの構築や、個別支援から派生する新たな社会資源・仕組みの創出、相談支援に関 するスーパーバイズや人材育成などを行う機能。
○ 上記@からBまでの機能を担う主体については→・ @の機能については、断らない相談支援に関わる全ての相談支援機関で行う、・ Aの機能については、多機関協働の中核を担う主体による調整の下、全ての支援関係機関が協働して行う体制を作る、・ Bの機能については、多機関協働の中核の機能が行う との整理の下で体制整備を行うべきである。
○ また、それぞれの機能が確保される圏域については、基本的には ・ @の機能については、住民に身近な圏域を中心に確保し、 ・ A及びBの機能については、市町村圏域等において確保する との方向性で検討を行うべきである。
○ 一方、本検討会では体制整備の在り方→各市町村の地理的条件や人口規模などの違いにより多様性があるのではないか、という意見や、小規模自治体においては日常生活を考えると@及びAの機能を担う関係者が、地域住民に身近な「かかりつけ」として存在していることが重要ではないかとの意見もあり、地理的・社会経済的条件等市町村がそれぞれ異なる実情にあるこ とを踏まえつつ検討を行っていく必要がある。

(3) 断らない相談支援の具体化に向けた検討事項
○ 本検討会の議論では、
断らない相談支援を担う従事者が行うべき支援に関 する基本的な姿勢・理念→・ アウトリーチを含む早期的な支援、・ 本人・世帯を包括的に受け止め支える支援、・ 本人を中心とし、本人の力を引き出す観点からの支援、・ 信頼関係を基盤とした継続的な支援、・ 地域とのつながりや関係性づくりを行う支援。
○ 加えて、断らない相談支援に関わる支援者の専門性→・ 属性にかかわらず様々な相談を受け止めるためには、相当の専門性が必要 となるのではないか という意見があった一方で、・専門性を確保するためにも、まずは、自治体の中の共通理念として「断らない」ことを掲げることが大事なのではないか、「断らない」と掲げれば、 受け止め対応するための工夫や努力、知恵を出すことにつながる との意見があった。
○ さらに、断らない相談支援と地域との関係性について→・ 本人や世帯を地域から切り離すことがないよう、相談支援を行う際も常に 地域とのつながりや関係性を考えることが必要、・ 早期対応という観点からは、日常の営みとして特段意識されていない、既 存の地域におけるつながりや支え合う関係性を含むインフォーマルな支援として、地域の力が重要であり、地域の中に見守りから気付きにつながる支援を生むことが必要 といった意見が複数あった。
○ したがって、断らない相談支援の機能の具体化に向けては、上記@からBま での機能をベースにしつつ、断らない相談支援に求められる専門性(人員配置 や資格要件等)を明らかにするとともに、入口の相談支援のみならず社会との つながりも視野に入れた制度設計とすべきである。 その際、支援員個人の力量に過度に依存せずにチームとして機能できるような仕組みとするとともに、長期的な視点に立って支援の効果を多元的にとらえる適切な評価の在り方を検討することが必要である。

3 参加支援(社会とのつながりや参加の支援)について
○ 社会的孤立など関係性の貧困が課題の複合化・複雑化の背景となっていることが多いことから、本人・世帯と地域との接点をどのように確保するかが重要、そのためには断らない相談支援と一体的かつ縦割りを克服した多様な参加支援(社会とのつながりや参加の支援)が求められている。参加支援を考えるに当たっては、本人・世帯と地域とのつながりや関係性の構築を中心に考え、場合によっては地域や参加の機会を作る主体(例えば、就労支援であれば、地域の中小企業など)への支援も行っていく必要がある。
○ 参加支援として求められる具体的な内容(支援メニュー)(本検討会)→ ・ 断らない相談支援で受け止めた課題を整理し、次なるアクションにつながるまでの期間、本人との関わりを続けながら生活支援(一時的な生活保障) を行うことが必要、・ 多様な仕事づくり・就労支援が重要(例えば、障害者だけではなく、働きたい高齢者や不安定雇用等の若者も利用できる弾力的な就労支援サー ビスや就労機会等)、・ 血縁の脆弱化を考えると、居住支援や就労支援に際して一定程度公的な身元保証の仕組みが求められている、・介護や子育て、障害者支援、就労支援、身元保証等の日常的な関わりが「かかりつけ」となれば、生活課題の深刻化を防ぐことにもなる、・孤立した状態から社会参加ができるようになるまでには多くの隔たりが存在しているため、まず社会とのつながりを築く第一歩として、本人の生きがい・やりがいになる活動ができる場の提供が必要。 また、参加支援を構築していく際の留意点→・各種制度のサービスにおいて、弾力的な運用(利用者の範囲、既存資源の活用等)を行えることが必要であり、効果的である、・現場においていかに柔軟に、本人・世帯のニーズに合わせた参加支援を行 うことができるかが重要、・地域全体でかつ公民協働で参加支援を作っていく意識の醸成(当事者意識) と仕組みの構築が求められている といった意見があった。
○ 今後、参加支援を具体化していくに当たっては、上記意見も踏まえ、地域の実践や実際の制度に照らしながら支援メニューの具体化を図りつつ、現場 において柔軟性をもって取り組むことができるような仕組みを検討すべきである。

4 地域やコミュニティにおけるケア・支え合う関係性の育成支援など地域づくりについて
(1)今後の地域づくりの在り方について

○ 住民が抱える困難は、地域における暮らしの中で生まれており、地域やコミュニティにケア・支え合う関係性があることで、断らない相談支援や参加支援 が有効に機能することにもつながる。実際に、地域の実践では、地域住民の気付きの力と一体となった相談支援等 の体制を作ることによって、地域における包摂が進んでいる例が見られる。また、参加する個々の住民の意欲や関心に基づく取組を進めることで、住民が地 域づくりの主体となっていく動きも見られる。
○ このため、地域における包括的な支援体制の構築に当たっては、断らない相 談支援や参加支援とともに、地域やコミュニティにおける多様なつながりを育むための方策(地域づくり)を検討する必要がある。しかしながら、断らない相談支援や参加支援が、政策として具体化しやすいのに対して、多様なつながりを育むための政策は立案と実施のそれぞれの段階における丁寧な対応を欠くと、十分な成果をあげることが難しく、お仕着せのものになってしまう可能性もある。あるいは、日常の営みとして特段意識されていない、地域の祭りや自治会行事などをきっかけにつながりが築かれる場合も含め、既存の地域のつながりや支え合う関係性が存在する場合、それを十分に把握しないままに、政策的に新たなつながりを生み出そうとすると、既にある住民の自発的な取組を損なうことになってしまう場合がある。
○ これを踏まえ、地域住民の主体性を中心に置き、地域のつながりの中で提供されているケア・支え合う関係性を尊重するという姿勢が不可欠である。その上で、住民同士が共に生き、暮らし続けられる地域としていくことを目指して、 地域のつながりが弱くなっている場合には行政からつなぎ直しを行うための支援を行うこと、また都市部などで地域のつながりがとりわけ弱い場合には 新たなつながりを生み出すための支援を行うといったように、地域ごとの状況に合わせて、地域の支え合いを支援するきめ細かな対応を行うべき。 ○ 同時に、地域づくりにおいては、福祉の領域を超えて、地域全体を俯瞰する視点が不可欠である。地域の暮らしを構成しているのは福祉だけではなく、本人や世帯、地域が抱える課題も直接福祉に関係するものだけではない。また、 福祉を含む地域の社会経済活動は、地域社会の持続を前提としている。 誰もが多様な経路で社会に参加することができる環境を確保する観点からは、地域の持続可能性への視点を持つとともに、まちづくり・地域産業など他の分野との連携・協働を強化することが必要と考えられる。

(2)地域住民同士のケア・支え合う関係性(福祉分野の地域づくり)
○ 福祉の観点をきっかけとする地域づくりの実践から、地域づくりを進めていく上では、世代や属性にかかわらず、以下の機能の確保が必要
→・ケア・支え合う関係性を広げつなげていく、全世代対応のコーディネート機能、・住民同士が出会うことのできる場、気にかけ合う関係性をつくるための居場所の機能。
○ コーディネート機能→@ 既存の社会資源の把握と活性化 A 新たな社会資源の開発 B 住民・社会資源・行政間のネットワークの構築(連携体制の構築、情報の共有)C 地域における顔の見える関係性の中での共感や気付きに基づく、人と人、人と社会資源のつなぎ。
○ 地域の実践については、コーディネート機能の@の役割の一部及びCの役 割は、日常的な関わりに基づいて住民が担う一方、これを支援するために行政や専門職が@からBまでの役割を担うことで、持続性の高い取組を展開している例が見られる。 このように、コーディネート機能の確保に当たっては、機能のすべてを一つの主体が担う形態だけでなく、役割の性格に応じて異なる主体が連携して担う柔軟性を確保するとともに、特に住民が役割の一部を担うのであれば行政や専門職がそれを支えるという視点が必要。
○ さらに、福祉分野において講じられてきた地域づくりの実践では、一つの属性に着目して始まった取組が、属性を超える取組へと進化していく動きが見られる。また、地域づくりの取組は、子どもから高齢者まで多様な住民が参加し得るものであり、取組によって生まれ広がるケア・支え合いの関係性は、世代・属性を問わず住民の暮らしを支える基盤となる。また、多世代の関わりが生まれることにより、幼少期の頃から地域の文化や多様な暮らしぶりに触れ、 地域への意識を育むことができるとともに、従来の地域のつながりの在り様 が、新たな文化や価値観を受け入れるように変化していくことにもつながっている。 これを踏まえ、コーディネーターの配置や居場所を始めとする多様な場づくりなど、福祉の各分野における地域づくりの支援について、全世代・全属性対応へと再構成する必要性について検討すべきである。
○ また、地域住民同士のケア・支え合う関係性を育むに当たっては、幼少期の頃から多様性を認め合う意識を持ち、学びと対話、福祉教育を通して多様な人たちとの関わりができるようになることにより、既存の地域におけるつながりの質を高め、福祉課題に対する地域の無関心、偏見や差別といった問題を軽減することができることを認識することも重要。

3)多様な担い手の参画による地域共生に資する地域活動の促進
○ 近年、他の政策領域においても、地域の持続可能性の向上や地方創生の観点から、地域やコミュニティの多様な活動に対する支援の在り方や、新たな公・ 共・私の役割分担の在り方を模索する試みが見られている。地域住民同士のケア・支え合う関係性を地域において広げていく際も、地域の企業や産業など経済分野、教育分野など他の分野と連携することで、一人ひ とりの暮らしを地域全体の視点から捉えることが可能となり、社会とのつな がりや参加に向けた一層多様な支援を展開することができる。
○ また、福祉も地域の持続を前提として成り立っていることを踏まえると、福祉の関係者が地域を構成する他の主体との連携(例えば、人手不足を抱える地 元企業や農業との連携)にも視野を広げ、地域の持続に向けた主体的な担い手 として参画することが必要となると考えられる。そのような福祉の関係者の変化が、地域の持続を支えることにつながる。
○ 地域やコミュニティの支援政策を重ね合わせることによる相乗効果を念頭に置くと、分野ごとの支援につながる政策を今後も一層強化していくとともに、福祉、地方創生、まちづくり、住宅施策、地域自治、環境保全などの領域の関係者が相互の接点を広げ、地域を構成する多様な主体が出会い、学びあう ことのできる「プラットフォーム」を構築することが必要である。また、特に若い世代にとっては、地域やコミュニティに関わる入口が多様にあることが望ましいことから、「プラットフォーム」についても、地域において単一のものであることを前提とするのではなく、多様な「プラットフォーム」 が複数存在することのできるモデルとすることが求められる。さらに、この「プラットフォーム」における気付きを契機として、複数分野の関係者が協働しながら地域づくりに向けた活動を展開するための支援方策 についても検討すべきである。

5 包括的な支援体制の整備促進の在り方
○ モデル事業においては、柔軟性や余白のある事業設計とすることで
、→・支援関係者の問題意識、自治体の規模やこれまでの取組、地域資源の状況 等に合わせ、それぞれの創意工夫の下、相談機能・窓口や多機関協働の連携 における中核機能の配置を行う。・一度整備した体制についても、振り返りや関係者間の議論を行うことで、 試行錯誤しながら改善したり軌道修正するなど、自治体の実情に合った包括的な支援体制を整備することが可能となっている。
○ 包括的な支援体制の構築→このように自治体内で分野横断的な議論を行い、試行錯誤を重ねることができるプロセスの柔軟性が重要。 新たな制度の創設を検討する場合にも、それが可能な制度設計を目指し、自治体の裁量の幅を確保できるようにすべきである。
○ また、支援対象者が市町村域を超えて居住地を転々とするなど、市町村域を超えた調整等が必要な場合や、専門的な機能について小規模市町村では個々 に確保することが難しい場合もある。このため、例えば、 ・ 基礎自治体である市町村を中心とした包括的な支援体制の構築を進める 一方、都道府県が市町村における体制づくりを支援すること、・市町村の体制から漏れてしまう相談を受け止めて、もう一度市町村につな ぎ戻していくこと、・市町村域を超える広域での調整や必要に応じた助言・人材育成等に当たること など、都道府県の役割の具体化を図っていくべきである。 加えて、支援につながる力の極端に弱い人たちや平日日中に相談窓口に来ら れない人たち等の存在も考慮し、都道府県域を超えるより広域での支援体制の 検討や、SNS など様々なツールを活用した支援への多様なアクセス手段の確保についても、引き続き取り組む必要がある。
○ このような重層的な支援体制を構築していくに当たり、本人や世帯に対する包括的な支援を実効性のあるものとするために、福祉以外の医療、住宅、司法、教育などの支援関係者においても本人や世帯に寄り添い伴走する意識を持って支援が行われることが必要。
○ 国による財政支援についても、包括的な支援体制の構築を後押しする観点から→・地域の多様なニーズに合わせて、分野・属性横断的に一体的・柔軟に活用 することができる。・煩雑な事務処理を行うことなく支援を提供できる など、一人ひとりのニーズや地域の個別性に基づいて、柔軟かつ円滑に支援が提供できるような仕組みを検討すべき。
○ その際、自治体における事業の実施の支障とならないよう留意しつつ、経費 の性格の維持など国による財政保障の在り方にも十分配慮して今後検討を進 めることが必要である。

次回は、「W 今後の検討に向けて」、資料2を終わります。

第22回社会保障審議会福祉部会 資料 [2019年07月27日(Sat)]
第22回社会保障審議会福祉部会 資料(令和元年7月22日)7/27
《議事》(1)地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進について
(2)社会福祉法人の事業展開等の在り方について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05799.html
◎資料2地域共生社会推進検討会中間とりまとめ(本文)
T 検討の経緯
○ 厚生労働省
→「地域共生社会の実現」を今後の福祉改革を貫く基本コンセプトとして、「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」において、社会福祉法が改正され、地域福祉の推進の理念 が明記されるとともに、市町村が包括的な支援体制づくりに努める旨が規定された。
○ 改正法の附則→公布後3年(令和2年)を目途に、包括的な支援体 制を全国的に整備するための方策について検討を加え、その結果に基づいて 所要の措置を講ずることとされている。
○ これらを受けて、包括的な支援体制づくりを具体化するため、平成 28 年度 より「地域共生社会」の実現に向けた地域づくりの強化を図る取組の推進のた めのモデル事業が実施。昨年度(平 成 30 年度)時点で、151 の自治体がモデル事業を活用しながら、体制の構築 の検討と実践を進めている。
○ また、昨年 10 月に厚生労働省に設置された「2040 年を展望した社会保障・ 働き方改革本部」→論点の一つの柱として地域共生・地域の支え合いの実現に向けた取組の検討が据えられ、本年5月 29 日に検討の方向性が示されており、本年6月 21 日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方 針 2019」(骨太の方針)においては、「全ての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り高め合う地域共生社会を実現する」として、「断らない相談支援な どの包括支援や多様な地域活動の普及・促進について、新たな制度の創設の検 討を含め、取組を強化する」との方向性が示された。
○ このような政策の流れを踏まえて、包括的な支援体制を全国的に整備する ための方策について検討を行うとともに、より広い視点に立って、社会の変化 や個々人のニーズの変化、各地域で生まれつつある実践等を踏まえ、今後社会 保障において強化すべき機能や、多様な社会参加と多様な主体による協働を推進していく上で必要な方策について検討を行うことを目的として本検討会は設置され、これまで、計5回にわたり議論を重ねてきた。

U 福祉政策の新たなアプローチ
1 個人を取り巻く環境の変化と今後強化すべき機能
(1)これまでの福祉政策の枠組みと課題
→他の先進国同様に、人生において典型的と考えられるリスクや課題を想定し、個々のリスク・課題の解決を目的として現金給付や福祉 サービスなどの現物給付を行うという、基本的なアプローチの下で、公的な福祉サービスの量的な拡大と質的な発展を実現してきた。これにより、経済的な意味での生活保障やセーフティネットの確保は大きく進展。その一方で、高齢、障害といった対象者別の制度の専門性は高まったものの、 個別制度の適用要件に該当しない者は支援の対象とならない、8050 問題のような複合的なニーズに柔軟に対応できない、人生を通じた一貫した支援が受けられないといった課題が指摘され、相談支援の実践は、このような課題への対応に苦慮している様子が明らかとなってきている。
(2)個人や世帯を取り巻く環境の変化 →例えば、個人や世帯が抱える生きづらさやリスクが複雑化・多様化しており、・ 社会的孤立など関係性の貧困の社会課題化、・ 生活困窮を始めとする複合的な課題や、人生を通じて複雑化した課題の顕在化、・ 雇用を通じた生活保障の機能低下(例えば、就職氷河期世代の就職困難、不安定雇用) などの変化が見られている。 また、世帯構造についても、 ・ 高齢化や生涯未婚率の上昇に伴う単身世帯の増加 ・ ひとり親世帯の増加 など、生活保障の一部を担ってきた家族の機能にも変化が見られている。 さらに、社会の変化→・ 共同体機能の低下(血縁、地縁、社縁の脆弱化)、・ 少子高齢化や急速に進む人口減少などの人口動態の変化、・ 経済のグローバル化や安定成長への移行など経済環境の変化、 などが見られている。
○ このような個人や世帯を取り巻く環境の変化に呼応する形で、個人の価値観やライフスタイルの多様化が見られており、例えば、・ 他者や自然とつながりながら生きるといった、経済的な豊かさに還元できない豊かさの追求、・ 家族観や結婚観の変化、・ 働き方の多様化 などが生じている。
(3)今後強化が求められる機能→元来、個人の人生は複雑・多様であるが、近年その複雑化・多様化が一層進んでいるといえる。相談支援の実践においても、経済的困窮や、病気、住まいの不安定などの課題が複合化した事例が多く見られている。また、教育問題など福祉領域以外の課題が関係する場合、生きづらさの背景に、家族の問題や本人の不安、ひきこもりなど本人や家族の社会的孤立といった関係性の貧困が存在する場合、自己肯定感・自己有用感が低下している場合など、既存制度の 枠組みのみでは対応が難しい事例、支援に時間を要する事例も多く見られている。このことから、今後の福祉政策を考えるに当たり、典型的なリスクを抽出し対応する従来の枠組みの延長・拡充のみでは限界があるといえる。 今求められているのは、一人ひとりの生が尊重され、複雑・多様な問題を抱えながらも、社会との多様な関わりを基礎として自律的な生を継続していくこ とができるように支援する機能の強化である。

2 対人支援において今後求められるアプローチ
○ 福祉の専門職による対人支援は→
・ 具体的な課題解決を目的とするアプローチ、・ つながり続けることを目的とするアプローチ に大別できる。このうち、「具体的な課題解決を目的とするアプローチ」は、本人が有する特定の課題を解決に導くことを目的とするものであり、このアプローチを具体化する制度は、それぞれの属性や課題に対応するための支援(現金・現物給付) を重視した設計となっている。このアプローチは、その性質上、本人や世帯の抱える課題や必要とされる対応が明らかな場合に有効である。これに対して、「つながり続けることを目的とするアプローチ(以下「伴走型 支援」)」は、支援者と本人が継続的につながり関わりながら、本人と 周囲との関係を広げていくことを目的とするもの。それを具体化する制度は、本人の暮らし全体を捉え、その人生の時間軸も意識しながら、継続的な関わりを行うための相談支援(手続的給付)を重視した設計となる。また、 伴走型支援は、生きづらさの背景が明らかでない場合、自己肯定感・自己有用 感が低下している場合、8050 問題など課題が複合化した場合、ライフステー ジの変化に応じた柔軟な支援が必要な場合に特に有効であるが、同時にこれは、直面する困難や生きづらさの内容にかかわらず、長期にわたる場合も含め、 本人の生きていく過程に寄り添う支援として、広く用いることができる。
○ 対人支援→一人ひとりの生が尊重され、自律的な生を継続していくことができるよう、本人の意向や本人を取り巻く状況に合わせて、2つのアプローチを「支援の両輪」として組み合わせていくことが必要。特に、 冒頭に示した日本の福祉政策の課題と個人を取り巻く環境の変化に鑑みれば、 伴走型支援の意義を再確認し、その機能を充実していくことが求められている。
○ そして、いずれのアプローチにおいても、本人を中心として寄り添い伴走する意識をもって支援に当たることを、今後より重視していくことが求められている。

3 伴走型支援を具体化する際の視点
○ 専門職が伴走型支援を用いることによって、対人支援において以下のよう な質的な変化が起こり、個人の自律的な生を支えることにつながることが期待される。
→・ 個人が複雑・多様な問題に直面しながらも、生きていこうとする力を高めることに力点を置いた支援を行うことができる、・「支える」「支えられる」という一方向の関係性ではなく、支援者と本人 が人として出会い、そして支援の中で互いに成長することができる、・具体的な課題解決を目的とするアプローチとともに機能することによって、支援者と本人との間に重層的な支援関係を築くことができる、・孤立した本人の他者や社会に対する信頼が高まり、周囲の多様な社会関係 にも目を向けていくきっかけとなり得る
○ 一方で、元来、個人の人生は多様かつ複雑なものであることを踏まえると、個人の自律的な生を支える、社会へ関わるための経路についても多様であることが望ましく、専門職による支援のみを社会とつながるきっかけとして想定することは適切でない。
地域の実践では、専門職が関わる中で、地域住民が出会い、お互いを知る場 や学び合う機会を設けることを通じて、徐々に住民同士のケア・支え合う関係 性が新たなつながりを生んでいる事例が見られる。従来からの民生委員・児童 委員の活動に加え、最近ではボランティア団体などによる「子ども食堂」、「認知症カフェ」など、地域において多様な社会的課題への取組が広がっている。相互の学びから生じるつながりは、多様な参加の機会を生み、一人ひとりの 生の尊重や自律的な生の継続へとつながる。そして、こうしたつながりは、制度を通じた包摂と相まって、地域におけるセーフティネットの基礎となるが、 これと同時に、専門職による伴走型支援が普及し、福祉の実践が地域に開かれていくことで、本人と地域や社会とのつながりを回復させることができ、社会における包摂が実現されていく。
○ このように、現行の現金・現物給付の制度に加えて、専門職による伴走型支援と住民同士のケア・支え合う関係性の双方を基盤として、地域における多様 な関係性が生まれ、それらが重なり合うことで、地域における重層的なセーフ ティネットが構成されていく。
○ したがって、福祉政策の新たなアプローチに基づく制度を検討するに当た っては、一方において専門職の伴走型支援により地域や社会とのつながりが希薄な個人をつなぎ戻していくことで、包摂を実現していく視点と、他方にお いて専門職との関係以外に社会に多様なつながりが生まれやすくするための 環境整備を進めるという視点という、双方の視点が重要である。

4 重層的なセーフティネットの構築に向けた公・共・私の役割分担の在り方 ○ 福祉政策の新たなアプローチの下では、公・共・私の役割分担についても、 「自助・互助・共助・公助」を固定的に捉えるのではなく、・(準)市場の機能を通じた保障(福祉サービス、就労機会など)、・共同体・コミュニティ(人と人との関係性)の機能を通じた保障(地域におけるケア・支え合いなど)、・行政により確保される機能を通じた保障(現金・現物給付、伴走型支援を 含む手続的給付など)、のそれぞれが連携しながら、バランスの取れた形で役割を果たし、個人の自律を支えるセーフティネットを充実させていくという考え方に転換していく必要がある。

次回は、資料2の続き「V 包括的な支援体制の整備促進のための方策」からです。
第22回社会保障審議会福祉部会 資料 [2019年07月26日(Fri)]
第22回社会保障審議会福祉部会 資料(令和元年7月22日)
《議事》(1)地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進について
(2)社会福祉法人の事業展開等の在り方について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05799.html
◎資料1「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会」 (地域共生社会推進検討会) 中間とりまとめ(概要
○改正社会福祉法の概要(地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律による改正)→「地域共生社会」の実現に向けた地域づくり・包括的な支援体制の整備→1〜3の参照(市町村の地域福祉計画を上位計画として位置づけ)
※ 附則→法律の公布後3年を目途として、市町村の包括的な支援体制づくりの体制を全国的に整備するための方策について検討を加え、 必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずる旨を規定。
※ 2017年(平成29年)6月2日公布。2018年(平成30年)4月1日施行
○「地域共生社会」の実現に向けた地域づくりの強化のための取組の推進
(1)地域力強化推進事業(補助率3/4
)→住民が主体的に地域課題を把握して解決を試みる体制
2)多機関の協働による包括的支援体制構築事業(補助率3/4)→総合的な相談支援体制作り
○地域共生・地域の支え合いの実現に向けて→、@丸ごと相談(断らない相談)の実現、A地域共生に資す る取組の促進、B高齢者も障害者も利用できるサービスの推進について検討を行う。

○地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会→第1回〜第5回(今回の中間とりまとめ案について↓)
○地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会 中間とりまとめ(抄)
1 福祉政策の新たなアプローチ
→・専門職の伴走型支援により地域や社会とのつながりが希薄な個人をつなぎ戻していくことで包摂を実現していく視点。 ・地域社会に多様なつながりが生まれやすくするための環境整備を進める視点 の双方が重要であり、これらが相まって地域における重層的なセーフティネットとして機能。

2 具体的な対応の方向性
(1)包括的支援体制の整備促進のための方策→3つの機能を一体的に具えることが必要、そのような体制の整備に積極的に取り組む市町村に対して、国としても政策的な支援を行うべき。→ ・ 断らない相談支援 ・ 参加支援(社会とのつながりや参加の支援) ・ 地域やコミュニティにおけるケア・支え合う関係性の育成支援。このような包括的支援体制を、各市町村がそれぞれの状況に合わせて整備することを後押しする観点から、属性や課題に基づいた縦割りの制度を再整 理する新たな制度枠組みの創設を検討すべき。新たな制度枠組みに対する国の財政支援についても、市町村が住民一人ひとりのニーズや地域の個別性に基づいて、柔軟かつ円滑に支援が提供でき るような仕組みを検討すべき。その際、従来の経費の性格の維持など、国による財政保障の在り方にも十分配慮すべきである。
(2)多様な担い手の参画による地域共生に資する地域活動の促進→地方創生施策やまちづくり施策など他の分野との連携を進めていくとともに、福祉、地方創生、まちづくり、住宅施策、地域自治、環境保全などの関係 者が相互の接点を広げ、地域を構成する多様な主体が出会い、学びあうことのできる「プラットフォーム」を構築するとともに、「プラットフォーム」における 気づきを契機として、複数分野の関係者が協働し地域づくりに向けた活動を展開することのできる方策を検討すべき。

3 今後の主な検討項目→・参加支援の具体的内容 ・広域自治体としての都道府県の役割 ・包括的支援体制の圏域、協議体、計画、人員配置等のあり方 ・保健医療福祉の担い手の参画促進

○個人を取り巻く環境の変化と今後強化すべき機能 (新たな福祉政策のアプローチ@)
・これまでの社会福祉政策の枠組みと課題→公的な福祉サービスの量的な拡大と質的な発展がみられ、経済的な意味での生活保障やセーフティネットの確保が進展した一方で、専門性は高まったものの、対象者別の仕組みとなり、8050問題のような複合的なニーズに柔軟に対応で きない、人生を通じた一貫した支援が受けられないといった課題が指摘。
・個人を取り巻く環境の変化→生きづらさやリスクの多様化・複雑化、社会の変化、個人の価値観・ライフスタイルの 多様化、→複雑に絡み合っている。

○対人支援において今後求められるアプローチ (新たな福祉政策のアプローチA) →「具体的な課題解決を目的とするアプローチ」「つながり続けることを目的とするアプローチ」→個人が自律的な生を継続できるよう、本人の意向や取り巻く状況に合わせ、2つのアプ ローチを組み合わせていくことが必要なのではないか。(支援の“両輪”と考えられるアプローチ)

○伴走支援と多様なケア・支え合う関係性の充実によるセーフティネットの構築 (新たな福祉政策のアプローチB)→伴走支援と「地域住民同士のケア・支え合う関係性」が必要。その際に「セーフティネットの構築に当たっての視点」が大事。

○新たな包括的な支援の機能等について→これまでのご意見を踏まえ整理→断らない相談と一体で参加支援(社会とのつながりや参加の 支援)や「地域住民同士のケア・支え合う関係性」を広げる取組を含む市町村における包括的な支援体制を構築することにより、「つながり続ける」伴走支援が具体化でき、 −社会とのつながりや参加を基礎とした個々人の自律的な生 −地域やコミュニティにおける包摂 を目指すことができる。

○現行の各種相談支援事業の財政支援等の状況→介護・障害・子ども・生活困窮、の分野の実施主体・事業の性質・・・などが一覧です。

○総合的な包括支援体制の構築のための財政支援のあり方
・財政支援に関する考え方
→自治体における事業実施の柔軟性と、自治体による積極的な事業実施の支 障とならないような財政保障を図りつつ、検討を行う必要がある

○地域共生に資する取組の促進 〜多様な担い手の参画による地域共生に資する地域活動の普及促進〜
1.概要
→地域における重層的なセーフティネットを確保していく観点から、住民をはじめ多様な主体の参画による地域共生に資する地域活動を普及・促進。 ○地域共生に資する地域活動の多様性を踏まえ、住民などの自主性や創意工夫が最大限活かされるよう、画一的な基準は設けず、各主体に対し積極的な活動への参画を促す方策など環境整備を推進。
2.考えられる取組→12頁参照のこと。プラットフォームのイメージあり。

○多様な主体による地域活動の展開における出会い・学びのプラットフォーム→今後の政策の視点として、地域において多様な主体が 出会い学びあう「プラットフォーム」をいかに作り出すか、という検討を行っていくことが求められている。

○(参考)「経済財政運営と改革の基本方針2019(骨太の方針)」
(令和元年6月21日 閣議決定)→断らない相談支援などの包括支援や多様な地域活動の普及・促進について、新たな制度の創設 の検討を含め、取組を強化

○(参考)まち・ひと・しごと創生基本方針2019
(令和元年6月21日 閣議決定)→【具体的取組】地域課題を解決するための包括的な支援体制の強化

次回は、「資料2地域共生社会推進検討会中間とりまとめ(本文)」からです。
第8回「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」資料 [2019年07月25日(Thu)]
第8回「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」資料(令和元年7月9日) 
《議題》報告書(案)について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05690.html
◎参考資料1:第7回検討会における委員の主なご意見
1.健康管理について
○ 健康管理をどうするか→上限規制の通算をどうするかが、本来枠組みとして先にあるのではないか。
○ 2つの会社にまたがる健康問題になるので、それを複数の会社に分けて判断すること自体が、健康管理の観点からしたら無理と認識されているのではないか。
仕組みとして産業医の場合は権限強化なども行われているが、本人以外に何らかの意見を出すこと自体がほとんど無理という認識は、もう一度 確認しておく必要があるのではないか。あなたはこっちで何時間働いて、こっちで何時間働く仕事をしているから、この会社に原因がありますということを、健康管理の観点から区別することは難しいのではないかと整理をしておく必要があるのではないか。
○ 現行の枠組みの狭間に位置するようなケースが恐らく兼業・副業を観点に 入れると出てくるということをどう考えるか。 ストレスチェックの対象になる方は、常勤の方の4分の3を超える以上の 時間にかかわっている方が対象になっているが、現実的に兼業・副業を考え ると、どちらも4分の3には達していないけれども、複数の事業所で働いているような方が、通算をすると4分の3を当然超えることが出てくる。こう いうことが起こった場合に、そもそもストレスチェックの対象にするのかと か、対象とするならば誰が責任主体となってやるのかということは、制度的 にどのように考えるか。 もう一つは、ストレスチェックの場合には、基本的には本人の情報の保護が 重視されているので、ストレスチェックの結果そのものは、直接は最初に事業 者にはフィードバックされない。申し出があればとなっているが、特に兼業・ 副業のようなケースであると、必ずしも会社側に申し出をする前の、例えば保 健師に相談するとか、そういうところでとどまる可能性もあるので、実効性をどう担保するのかという議論は少し広く考えておく必要があるのではないか。
○ 50 人未満の事業所の場合には、ストレスチェックは努力義務になっている が、長時間の面接指導は全事業所が対象になっているので、50 人を超えない場合に、片方は努力義務で、片方は全事業所の義務になっているものに対して、制度上どのように手当てをして整理をするのか、もう少し確認しておく必要があるのではないか。
○ 健康確保は本人に委ねるという考え方もあり得る。 また、事業主に健康確保措置を義務付けるのではなく、兼業・副業先での 労働時間把握義務を課すにとどめ、実際には労働者自身による長時間労働の抑制を促すということも考えられる。
○ 健康管理と労働時間管理を切り分けて議論することは難しいので、上限規制をどうするのかということ、それがどういう形になった場合には健康管理 はどうなのかということの両方を見ながら議論する必要があり、労働時間を通算するのかどうかとか、労働時間管理についての方針が決まらないと、なかなか健康管理単独では議論が難しいのではないか。

○ 健康管理だけの議論をすると、基本的には御本人の自己管理ですというような方向で議論をせざるを得なくて、ほかの理由から時間通算する、もしく は時間把握をするのであれば、それを使ってということもあり得るが、これだけ議論すると何となく、最終的には本人に任せるという方向で行かざるを得なくなってしまうのではないか。

2.上限規制について
○ 行政解釈が裁判で覆ることがあり得ることは、今一度考えなければいけな いし、副業・兼業促進の観点からの議論となると、昭和 22 年当時の行政解釈 をそのまま維持することが適切かどうか、いまの時代に合った解釈も考えなければいけないのではないか。
○ 厳密な労働時間管理の上で上限規制を厳格に適用する場合、兼業・副業の 事実や労働時間についての不申告を理由とする懲戒等を招くおそれがある。 他方、健康確保や労働者が家庭生活や地域社会で活動する時間の確保の観点から、上限規制を超える労働は労働者にとっても許されないとして、規制を及ぼすということも考えられる。
○ 上限規制を適用するかどうかと、健康確保措置をどうするかという点は連動してくる。仮に上限規制を通算して適用しないという選択肢をとるのであ れば、健康確保のほうでもしかしたら何らかの対応をとらなくてはいけないのではないか。 一方で、仮に上限規制を通算して適用しない、本人の裁量に任せるというよ うな選択肢をとったとしても、結果として、例えば社員が健康を損ねて裁判に なったときに、果たしてどちらの企業が責任を負うのかの判断が難しいとなると、企業としては社員の健康確保という観点に加えて、企業のリスクマネジメ ントという観点からも、通算して長時間労働することはできれば避けてほしいと考えるのではないか。 例えば最近予め通算の労働時間の上限を設定し、通算してその上限の範囲であれば副業・兼業を認めるような事例も出てきているので、そのような形で副 業・兼業を促進していくことはあり得るのではないか。 すでにモデル就業規則で、副業を制限・禁止できる条件が列挙されているが、その中に通算した労働時間が一定の上限を超えると、副業・兼業を制限・ 禁止できるという条件を加える、つまりモデル就業規則を一部変更するのも 1つのやり方なのではないか。もちろん、通算した労働時間の上限もいくつか段階があり、どこを上限にするかは検討する必要がある。
○ 複数就業の場面では、上限規制との関係で通算をしないとしても、企業側 がリスクマネジメントとして副業先の労働時間を制限することはありうる。 反対に、通算するとした場合には、仮に企業側が副業先の労働時間を制限し ていたとしても、労働者がこれを超えて労働した場合には、企業側が刑事責任 を問われるおそれも生じることになる。 いずれにしても、副業先での疲労により体調不良が明らかに認められるケ ースでは、副業の事実について本業使用者が認識していないとしても、安全 配慮義務に基づく対応をすることが求められる可能性がある。
○ 通算をしないことにすれば、自由に副業・兼業ができて促進できるという 議論があり得る。 しかしそうは言っても、副業・兼業で健康を害する人がいた場合に、それを 全く規制しない、そういう状況でよいのかということになってくると、潜在的 なリスクの観点から、むしろ副業・兼業を企業のほうでも抑制することになる かもしれない。そういうことも考えておく必要があるのではないか。 副業・兼業をできるいわば枠のようなものを仮に考えるとしたときに、どういう枠が実際上設定できるのかは、かなり技術的にも難しいことになってくるのではないか。 本業の使用者がある程度の時間、自分のところで残業させる枠も確保した上で、その余った部分でのみ副業を許容するような枠になるのか。 それとも、ある労働者にとっては、むしろ副業のほうが自分にとっては能 力を活かせる活動であって、むしろそちらに注力したいという人にとって、 その枠を本業の使用者のほうが先にとってしまうというような枠の設定でよいのか。これは一例だが、そのように枠を設定するとしても、望ましい副業・ 兼業というのはどういうものか。これは非常に多様なので、妥当な枠の設定 が可能かどうかということも詰めて検討する必要が出てくるのではないか。
○ バイトの掛け持ちみたいなものをたくさんやっている人がいた場合に、そ のときにどこが主なのか、従なのかはなかなか決めにくい状況もある。機械 的に決めることはできるのかもしれないが、主と従という部分も少し考え直 す必要はあるのではないか。マルチで仕事している人たちにどのような総労 働時間規制をかけていくのかという議論をしたほうがいいのではないか。 ○ 労働政策として妥当な副業・兼業を認めていこうという方向からすると、 一定の雇用・雇用の場合に施策を展開することは十分あり得る。昭和22年以来の通算するという行政解釈をとってきたことを踏まえたソフトランディン グ的な対応かもしれないが、そういう対応はあり得る。 昭和22年当時のように1日単位で時間外労働を全部把握して、それに違反 した場合に罰則をかける形でのやり方は非常に困難であるし、しかも、弊害 のほうが大きいであろうということであれば、副業・兼業をしたいという人 たちは、むしろ非雇用という形で働いたり、あるいは健全でない形での展開 が生じてしまうこともあるのではないか。 そこで、非雇用で働く場合には、これは雇用の問題でないとなると、もとも と規制はかからないので、副業・兼業をするかどうか自体は本人の選択だとい うことも加味して考えると、雇用・雇用の場合に本人がそれを申告してきた場 合には、一定の労働政策としての対応を考えるという選択肢はあり得るのでは ないか。
○ 企業人事の立場では、自己申告をさせることは、内容はもちろん労働時間 についても、企業にとっては重要なことではないか。例えば競業でやってい ないか、どういう仕事をしているのかとか、どのぐらいの収入があるのかと か、収入はともかくとしても、その一環として、労働時間を報告してもらう のは、人事上はそんなに追加的な手間には多分ならないはずなので、それは、 十分可能ではないか。 割増賃金の議論とも関連するが、ある程度長い期間で自己申告をしてもらう ということは、健康確保という先ほどの議論とも関連した上では、十分あり得 るのではないか。
○ 労働時間の把握については、兼業開始するタイミングで申告を求める方法 の他、労働者自身に労働時間の把握を委ね、上限規制に抵触しそうになった タイミングで申告を求める方法が考えられる。 本業使用者が副業先の労働時間を制限できるとの建前をとった場合、副業の 比重が労働者自身の中で高まったときに、本業使用者に対して、労働時間の調 整を求める権利を認めるかという点も立法的課題となりうる。 ○ 副業・兼業が労働者の自由な意思によってなされていること、これは建前 かもしれないが、このことを前提にして議論を進めなければいけないのでは ないか。 副業・兼業の促進は、労働者が強制された副業・兼業をすることを促進する ものではないはずである。そうすると、労働者の自由な意思によって、副業・ 兼業が選択されていると見るべきである。そのように考えていくと、申告に基 づく上限規制の適用という考えはなじむのではないか。 通算した上限規制を厳格に適用しない場合に懸念されるのは、実態としては ほぼ同一の使用者同士が労働者に副業をさせるようなケースが出てくるのではないか。そうしたときに、同一の使用者と認定できれば問題ないが、別の使 用者と判断せざるを得ない場合に何か上限規制をかける方法というか、使用者 側が副業・兼業制度を悪用して、労働時間規制を免れることが起きないように することを考えることは必要ではないか。
○ 実態としては使用者が異なってるとはいえないような場合には、厳格に1 つの使用者と見て規制すべきであり、その潜脱は許されてはならない。 もう一つ、副業・兼業は自発的な意志による副業・兼業が前提ということ で、自己申告がある場合には、労働時間の規制も考えるといった場合におい て、どのようにやるかというのは次の実効性の確保とも関連してくる。 労働基準法の32条によると、1日単位で把握しなければいけないことにな る。これまでの過労死認定基準なども、月単位での時間外労働が80時間とか 100時間というように一定のタームにおける時間外労働として議論してきて いるところだが、労働基準法自体は1日8時間という1日単位で規制をして いる。 この点は仮に副業・兼業という形であって通算をする場合、実効性があるよ うな通算の仕方を考えておかないと、形式上通算をすることになったのだけれ ども、実態として回らないことになると、その規制の実効性がなくなり、違法 状態が蔓延しかねない状況にもなって、労働基準法上の規制としては非常に問 題がある。実効性のある規制としてどのように考えられるかということについ て、さらに検討を深める必要があるのではないか。
○ 請負労働者が別の事業所の企業でも雇用される、つまりダブルワークのよ うになったときに、双方の労働時間が通算されないとすると、トータルの労 働時間が長時間化する懸念もそれなりにあるので、特に請負労働者の副業化 みたいなものが起こったときに、どういう支障が出てくるかということにつ いては少し整理しておく必要があるのではないか。
○ 仕事を始めた時点での副業は、使用者の制度悪用ではなくて、労働者側の 意思だが、時間外労働が組み合わさったときにどのように判断すべきか。副 業・兼業は、労働者の意思といえる場合であっても、時間外労働を強制され た、余儀なくされたような場合にどのように考えていくという問題があるの ではないか。 ○ 例えば会社の社長が別に経営している法人で仕事をするケースや会社同士 の関連性がみられるケースについてまで、上限規制との関係での通算を行わ ないとするのか、あるいは、上限規制の緩やかな適用を認めるのかといった 点については更に検討の必要がある。 ○ 上記の例について、仮に同一使用者でないとした場合であっても、これを 副業・兼業として、やはり自分の健康を守るために労働時間規制を適用してほしいと労働者自身が思って、自己申告した場合には、通算して労働時間に 規制をかけることが可能だとすると、そういうことでなければ、むしろ自発 的なものとして許容するという形で受けることは可能ではないか。
○ 雇用・非雇用で非雇用が兼業的な働き方の場合には規制しないというのが 大方の今回の流れなので、極限な例を考えれば、労働者に非雇用で業務委託 をさらにさせていくような雇用主もあり得ないわけではない。その場合も総 労働時間を自己申告してもらうことは可能なのかもしれないが、上限規制で あるとか、労働時間の規制という話からは、今の私たちの議論だと外れてし まうように思うので、原則論として一応総労働時間を把握することを、極端 に言えば非雇用であったとしても、設ける必要はあるのではないか。
○ 雇用か非雇用かというのは客観的に判断されるというのが前提。非雇用の 業務請負契約という当事者間の了解で役務を提供していても、客観的にそれ が指揮命令に服した労務の提供と評価されたら、それは雇用・労働であって、 労働法制は適用されるということは前提としている。当事者間がこれは非雇 用だねと了解していても、裁判所に訴えた場合には、これは非雇用ではなく て雇用ということは十分あり得る。そのように客観的にも雇用と評価されな いものについては、労働法制が規制することはできない。つまり指揮命令に 服していないし、業務の委託についても自由に断れるような、そういう自由 があっての役務提供ということであれば、これは純然たる非雇用ということ になる。それについては恐らく通算とかいう話は問題となってこない。これ は世界中で同様の議論があり、雇用類似の検討会でも議論しているが、非雇 用と当事者が思っていても客観的にはそれは労働・雇用であるという誤った 分類(ミスクラシフィケーション)の問題は常に生じ得るので、それについ ては厳格に、客観的に労働法制を適用していくことを前提の上で整理すべき ではないか。
○ 労働基準法32条は、週単位40時間、1日単位8時間という規制であり、こ れを本人の自己申告によった場合には通算するという制度を仮に考えた場合 には、それは本当に1日単位でやるのかということになってくる。しかし、 諸外国でも大体通算をすると言っているのは週単位の40時間とか、そういう 規制を前提に通算する話が展開しているので、もし通算を考えるということ であれば、やはり実効性も考えた上でワーカブルな制度を考える必要が出て くる。その場合に現在の労働基準法のままでよいのか、その点も併せて考え る必要が出てくるかもしれない。
○ モデル就業規則にあるとおり、副業・兼業を制限・禁止できるという前提 に立つと、最初に副業・兼業を社員が申し出てきたときに、どれぐらい副業 先で働くのかを申告してもらう。その後、副業のウエートを高めるという場合には、もう一回、副業・兼業をどう位置づけるかを、特に本業の会社と社 員が話し合うというステップが必要になるのではないか。 個別の労働時間をそんなに厳密に管理する必要はないということは賛成だ が、多分副業のウエートが高まるのであれば、やはり相談してもらわないと本 業の会社が困ってしまうのではないか。 ○ 労働時間規制を通算して適用してほしいと申告するという選択肢を設ける のであれば、働いている先全部に申告するプロセスになるのか。そのあたり も整理する必要があるのではないか。 ○ 自己申告とは一体どの程度の頻度で、どのタイミングでやってもらうのか という議論はやはりある。年に1回とか定期的に報告させて、変わったのな らば、そこでもう一回話し合うようなこともあり得る。 何となく変わり始めたときと言っていると、実務上結構難しいのではないか。 自己申告といったときに、どの程度の頻度で出してもらうのか、そこまで法律 で考える必要はないのかもしれないが、実務上は考えておいたほうがいいので はないか。 ○ 自己申告を定期的に求める設計のほか、本業使用者に対し、労働時間の調 整を求めるといったニーズが生じたその都度、申告をするという選択肢もあ り得る。後者については、本業使用者に対して労働時間調整を求める権利を そもそも認めるかという点が前提として問題となりうる。
○ 上限規制を緩やかに通算する場合、その適用を特例として認める方法と労 使協定の締結により認める方法が考えられる。労使協定の締結による方法に ついては、副業している労働者の利益をどこまで反映できるかという点に疑義がある。
○ 例えば自己申告があった場合に、使用者は違っても労働時間を通算すると、 現行法では1日単位で必ず通算して、それで8時間をちょっとでも超えたら 罰則がかかり割増賃金規制もかかるということになりかねない。そういう状 況を現実にワーカブルな形にするために、労基法の最低基準の例外を認めるための労使協定ということであれば、これまでの労基法上の原則的な規制の 例外を認めるための労使協定と同じ位置づけなので、可能ではないか。

3.割増賃金について
○ 副業・兼業を推進する立場に立つのであれば、通算しないことが結論になり得るが、さまざまな選択肢を提示するという観点からあえて割増賃金通算する場合について申し上げると、上限規制の議論のところでも出てきたよう に、一日一日の割増賃金の計算はおよそ現実的ではないので、そこの計算の仕方や、あるいは申告の仕方を簡易化するような運用、特例を考える必要があるのではないか。
○ 労働基準法32条は、週40時間、1日8時間を超えて「労働させてはならな い」ことを使用者を名宛て人にして命じている。仮に割増賃金を副業・兼業 と通算して両者を足して法定時間を超えた場合に割増賃金を払わせることに なると、自分が時間外労働を「させ」たのではないにもかかわらず、割増賃 金の支払い義務が発生し得ることになるのは、現行法の解釈としても、本当にそれでよいのかという問題がある。昭和22年以来、通達としてそうなって いたが、本当にそれはそうなのかは考える必要があるのではないか。 昨年調査に行ったヨーロッパの3カ国では、使用者が違う場合に割増賃金 請求権に関して通算して割増賃金が発生するような制度をとっている国はいずれもなくて、それは賃金の問題であって、健康確保のための労働時間の通算とは全く別の問題であるという整理がされていた。労働基準法32条も、基本的には健康確保のために法定時間以上働かせてはならないという規制であ り、そういうことを踏まえて再度この問題を位置づけてみる。すなわち割増 賃金については通算するのは必ずしも合理性がないという考え方は十分成り立ち得るのではないか。
○ 労働者が割増賃金を期待して時間外労働を引き受ける傾向は、一定程度見られるが、そのような理由から副業・兼業をする、また、そうした副業・兼 業を促進するのは、副業・兼業の促進の趣旨から逸脱するのではないか。 割増賃金の1つの意義として、1つの会社、1人の使用者が労働者を必要以 上に拘束することに対する補償という面がある。副業・兼業は一定程度労働者 の意思、選択によることを考えると、使用者が拘束しているからその補償的な 意味合いで割増賃金を支払うという論理は、副業・兼業の場合には当てはまら ないと考える。
○ 割増賃金→労働時間を通算すべきではないという考えだが、多様な選択肢という観点から、仮にこの制度を維持するのであれば、日々の労 働時間で割増賃金を請求する形ではなく、月単位で請求する形があり得る。 ただ、副業労働者が割増賃金を請求しやすくする仕組みを採用した場合、副 業労働者の雇用を回避する方向に動く可能性もあり、こうした仕組みの採用に は疑問がある。
○ 自己申告によって、いわば健康確保のために通算して上限規制を及ぼし得るとしても、割増賃金規制もかかることにするかどうかは選択の問題となるのではないか。 上限規制をかけたとしても、割増賃金規制については別にすることが、選 択肢としてあり得るのではないか。自己申告をすることによって、割増賃金が発生すると、使用者としては最初からほかの人より1.25倍払わないと雇えない労働者ということになると、そういう方は雇わないし、例えば有期契約 であったら次の更新はやめておこうということになる。副業・兼業をしてい る大多数の方は、収入が低いので副業・兼業をしておられるわけで、その労 働者のニーズにかえって背く結果をもたらしかねない。 健康の確保が必要だということであれば、長時間規制はやるけれども、割増賃金規制については別に扱う。そういう選択肢もあり得るのではないか。
○ 自己申告と割増賃金をかけるという、その2つは矛盾があるのではないか。 いずれにしても労働者が正しいことを言っているかは、どこかの段階で問題 にはなるのだろうが、雇用主として見た場合に、自己申告で労働時間を言ってもらったときに、オーバーに言っているのではないかという要素をどのようにコントロールするのか。 健康管理のほうは、十分論理は成り立つが、割増賃金を自己申告で進めていくのは、実態上そういうことをやっているところはあるけれども、制度として は矛盾があるのではないか。

4.その他
○ 副業・兼業の推進
→@生産性の向上やイノベーションを進めるようなものの推進であり、A収入面からのものを別に禁止するという趣旨ではないけれども、Aを積極的に推進するということではないのではないか。 そうなると、@を特別扱いする方向は、大いにあり得る。ただ、@とAの区 分が難しいので現実的ではない。もし仮に区別ができるのであれば、異なる 規制のほうが@の副業・兼業の推進に寄与するのではないか。
○ 生産性の向上と収入面の区別は、いずれもセルフインタレストであり、区別は難しい。 生産性の向上やイノベーションにつき、当該企業における利益に還元されるものに限定するのであれば、一応の区別は可能だが、法律の適用に際しての切り分けは困難ではないか。企業が副業を推進している場合に労働契約上の配慮義務がより重くなることはありうるかもしれないが、労働時間規制の適用の場面でこれによる相違を設けることは困難と考える。
○ 副業・兼業は基本的には私生活の領域である。つまり、モデル就業規則で示されているような、本業に支障が出る等、雇用者が何らかの不利益を被る 場合に限っては、ある程度規制がかけられるかもしれないが、私生活の領域 には介入できないというのが基本原則。 そうすると、逆もしかりで、生産性の向上やイノベーションにつながるか ら促進したいという、そういうコントロールも本来はできず、ここを分けて考えるのは、やはりなかなか難しいのではないか。
○ 生産性の向上は2種類あって、企業の生産性向上と個人の能力アップという話と両方あって、能力アップのためであったらば、区別をするという議論もあり得るという話。ただ、それが回り回って企業の利益につな がるとなると、それはちょっとグレーなところに入ってくるかなという気はするので、やはり分けられないのではないか。
○ 雇用・非雇用→非雇用のほうを労働法制で規制することは難しい。 ただ、現行の兼業・副業ガイドラインなどを見ていても、個人事業主として 兼業・副業を行う場合についても、過労等により業務に支障をきたさないようにする観点から、就業時間を把握することを通じて、長時間にならないように配慮することが望ましいといったような規定は入っており、とりわけ健康管理という観点からは、そういった就業時間の把握が望ましいこともあり 得る。 ただ、実際問題として、使用者に健康確保措置を義務付ける立法を行う場合 に、自営の就業時間も含めることが妥当かは慎重な検討が必要である。
○ もし割増賃金が通算なしという方向に行くのであれば、実際に日々なり 月々の総労働時間の把握ということの実効性がかなり難しいことを認めざる を得ないのではないか。 そうすると、何のために時間を通算するのか、もし健康管理という観点であ るのであれば、例えばもともと最初の時点で雇用主のほうは兼業・副業をする かどうかは、労働契約のところでも出てくるので、その時点で、今でいう長時 間の面接指導の枠組みに入れてしまえば、別に時間の把握は無理にしなくても、 健康障害の防止も可能になるのではないか。今の雇用・非雇用の議論も、それ を申告した時点で長時間の枠組みに入れてしまう。 もう一つの意味は、そもそも兼業が悪いのか、主が悪いのかを健康管理上区 別できない以上、どんな形であれきちんと健康管理を受けていただくという仕 組みとしては、もうそれでいいのではないか。
○ 難しいのは非雇用といったときに健康を害する活動というか、健康に支障のある活動は、非雇用でも十分起こり得る。そのグレーゾーンが結構あって、 例えばボランティアであるとか、そういうものをどのように考えるのか、考慮する必要はあるのではないか。
○ 労働時間規制は、労働者の健康確保ということなので、健康確保が目的だ とすれば、何も労働時間を必ず通算するのだけが唯一の選択肢ではなくて、 労働時間規制ができたときは、工場労働者のような肉体労働者が8時間以上 働いたら健康を害するだろうということからできてきたが、非常に多様な働き方がなされている中で、健康確保のためにはむしろストレスチェックとか、別の方策が有効かもしれないということであれば、それで同じ目的が達せら れるのであれば、技術的に非常に困難な問題がたくさんある通算をどこまで やっていくか。いずれの選択がより妥当なのかというのは、十分に議論して 詰めるべき課題ではないか。

次回は、「第22回社会保障審議会福祉部会 資料」からです。
第8回「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」資料 [2019年07月24日(Wed)]
第8回「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」資料(令和元年7月9日) 
《議題》報告書(案)について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05690.html
◎資料1「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」報告書(案)
X.実効性のある労働時間管理や健康管理の在り方に向けて
→ここまでの概略から見えてきたこととして、我が国の労働の実状等に鑑み、実効性のある労働 時間管理や健康管理の在り方を考えるに当たっての課題と、これを解決するための方向性としては、↓↓

1.現行制度の課題
(1)健康管理につい
て→現行制度では、労働安全衛生法において、事業者に対し、定期健康診断や、 ストレスチェック制度、1か月の労働時間に基づいて把握した長時間労働を 行っている者への医師の面接指導等を義務付けるとともに、労働者の健康状 態に応じ、必要な就業上の措置を行わなければならないこととしている。ただし、複数の事業者間での労働時間は通算せずに、実施対象者の選定をすること となっており、主に、以下の課題が考えられる。→副業・兼業をしている者の労働の状況が把握される仕組みとなっていない ことから、副業・兼業をしている者に対する特別の健康確保対策はとられていないこと。
(2)上限規制について→現行制度では、通算の結果、上限規制を超えて労働させた事業主が法違反となるが、主に、以下の課題が考えられる。→上限規制を遵守するためには、少なくとも、通算した労働時間が上限規制 を超えそうな労働者については、日々厳密に労働時間把握を行う必要性あるが、こうした厳密な労働時間の把握は実務上かなり難しく、使用者からすると副業・兼業自体を認めることに慎重になり得ること。
(3)割増賃金について→・ 割増賃金規制が時間外労働の抑制装置になり得るのは、同じ事業主の下で 働いていることが前提であって、別の事業主の下で働く場合に、本業・副業 間での割増賃金の通算が時間外労働の抑制装置となり得るか疑問であること。 ・ 現行制度では、労働時間の通算に当たっては、労働契約の先後で判断する こととなっており、日々、副業・兼業先の労働時間数の把握が必要となるが、こうした厳密な労働時間の把握は実務上かなり難しく、使用者からすると、 副業・兼業自体を認めることに慎重になり得ること。また、この煩雑さは 日々の法定労働時間超えで直ちに生ずることから、上限規制の場合よりも その頻度は大きい。 ・ 使用者としては、このような煩雑さから、通算して法定労働時間を超える者は雇わないこととなり、副業・兼業をして収入を得たいという労働者の雇 用をかえって阻害するというデメリットとなり得ること。
(4)副業・兼業先の労働時間の把握方法について→現行制度では、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」において、労働 者からの自己申告により副業・兼業先での労働時間を把握することが考えら れるとされているが、上記(1)から(3)に関連し、以下のとおり課題が考 えられる。 ↓↓
労働者からの自己申告で労働時間を把握する場合)→ 副業・兼業を行う者が増えると事務量が増え、煩雑になること。 ・ 企業としては自己申告が正しいかどうかが分からないこと。 ・ 労働者が副業・兼業の事実を使用者に知られたくないなど、自己申告を 望まないことがあり、企業が副業・兼業先の労働時間数を把握することが 困難な場合があること。 ・ 労働者の自己申告といった場合、労働者が副業・兼業をしている事実の みを申告し、労働時間数の申告は拒むことがあり得ること。
(使用者間で、労働者の労働時間数などの情報のやりとりをする場合)→自己申告の場合と比較すると、使用者から積極的に情報収集する必要があり、副業・兼業を行う者が多くなると、事務量がより膨大となること。 ・ 副業・兼業先の労働時間数も通算した労働時間管理を適切に行おうとしても、他社の適切な対応がなければ困難となること。
(上記のいずれの場合でも生じうる課題)→ ・ 労働時間に関する法制度や労働者の働き方が制度創設時と異なってお り、フレックスタイム制が創設されたり、短い時間を複数組み合わせて 働く者がいたり、副業・兼業先の労働時間の把握が困難となっていること。

2.今後の方向性
(1)議論の前提
→労働時間の通算制度については、前述のとおり、工場法の時代からあるものであるが、当時も今も、労働者の健康を保護するための規定であることには変わりはないと考えられる。しかし、当時とは異なり、現在では、変形労働時間制、フレックスタイム制 などの弾力的な労働時間制の創設や、非正規雇用労働者の増加、様々な働き方 の普及などに伴い、労働時間を通算して把握することや、通算した労働時間に 基づく上限規制の遵守や割増賃金の支払いが実務的に非常に困難となっている。 また、働き方の多様化によって、必ずしも労働時間だけが、労働者に負荷を 与える要素では無くなってきているという側面も生じつつある。 一方、副業・兼業を希望する労働者や実際に副業・兼業を行う労働者が増え ている現状においては、副業・兼業による長時間労働が懸念されることも踏ま えれば、副業・兼業を行う労働者の健康確保の充実は重要な課題となっている。これらを踏まえ、本検討会では、今後の方向性について、以下の通り整理。↓↓
(2)健康管理について→副業・兼業を行う労働者の健康確保の観点から、新たに、労働者の自己申告を前提に、各事業者が通算した労働時間の状況(例:月の総労働時間)を 把握することも考えられる。ただし、副業・兼業は労働者のプライバシーに配慮する必要があること、 事業者を跨がることから、労働者自身による健康管理も重要になり、また、 事業者は副業・兼業先の労働までは把握しきれないことから、事業者に責任 を課すとしても、副業・兼業せずに自社のみで働いている労働者に対する責 任とは差違が生ずるものと考えられる。また、産業医については、委嘱されている事業者との関係で専門的な立場 から健康管理の一端を担っており、委嘱関係にない副業・兼業先の労働につ いて直接的に対応することは困難であることに留意が必要。 ○ このようなことを前提として、健康確保措置に係る制度の見直しの方向性 としては、例えば、以下のようなことが考えられる。↓↓
@ 事業者は、副業・兼業をしている労働者について、自己申告により把握 した通算労働時間などを勘案し、当該労働者との面談、労働時間の短縮その他の健康を確保するための措置を講ずるように配慮しなければならないこととすること(公法上の責務)
・ 現行においては、通算した労働時間に基づく労働者の健康管理が労働安 全衛生法令上位置づけられていないため、事業者に通算した労働時間を把 握の上、労働者の状況に応じて、必要があれば労働時間の短縮等の何らか の措置を講ずることを求めるもの。
・ 公法上の責務として設けるため、いかなる措置も講じていない場合は行政指導の対象。
・ 一方で、この措置のみでは不十分ではないかという指摘はあり得るとこ ろであり、労働者自身による健康管理がより重要になる。

A 事業者は、副業・兼業をしている労働者の自己申告により把握した通算 労働時間について、休憩時間を除き一週間当たり四十時間を超えている時 間が一月当たり八十時間を超えている場合は、労働時間の短縮措置等を講 ずるほか、自らの事業場における措置のみで対応が困難な場合は、当該労 働者に対して、副業・兼業先との相談その他の適切な措置を求めることを 義務付けること。また、当該労働者の申出を前提に医師の面接指導その他 の適切な措置も講ずること。
・ 通算した労働時間が現行の労働安全衛生法においても健康管理上の措置 が求められているほどの長時間労働となった場合に、より強い措置を求め るもの。 ・ ただし、この場合においても、労働者のプライバシーに配慮する必要が あること、他の事業場の労働時間を直接コントロールすることができない こと等の理由により、労働者の自主性を尊重した措置にならざるを得ない と考えられるもの。 ・ また、適切な事後措置まで視野に入れた場合には、当該責務は所定労働 時間の長さ等により事業者間で差をつけることも検討課題。 〇 上記は、あくまで、考えられる選択肢の例示である。その他、労働時間の長さにかかわらず、労働者から副業・兼業を行っている旨の申告があった場合に、 現行の健康確保措置の枠組みの中に組み込むこと等も考えられる。また、副業・兼業の場合の健康管理の在り方については、労働時間の上限規制や割増賃 金などその他の部分でどのような選択肢をとるかによっても、変わり得ると 考えられることに留意すべき。
(3)上限規制について→(2)に記載された現行制度の課題で見たように、上限規制を遵守するためには、労働時間を通算することを前提としている。しかし、この通算を行うために、複数の事業場の労働時間を日々厳密に管理することは、企業 にとって、実施することが非常に困難な場合が多い。この結果として、@違 法状態が放置され労働基準法に対する信頼性が損なわれかねないこと、A労 働者が保護されない事態になりかねないこと等を踏まえ、制度見直しの方向性としては、↓↓
例えば、 @ 労働者の自己申告を前提に、通算して管理することが容易となる方法を 設けること(例:日々ではなく、月単位などの長い期間で、副業・兼業の 上限時間を設定し、各事業主の下での労働時間をあらかじめ設定した時間 内で収めること。) ・ 副業・兼業先の月の労働時間の上限を設定し、それを前提に自社の労働時間管理を行うことを認めること等により、労働時間管理を容易にしよ うとするもの。 ・ 他の事業場における労働時間の変動を考慮する必要がなくなるため、企 業の予測可能性が高まり、リスクマネジメントを図ることが可能になる。 ・ 一方で、自社における労働時間を長く確保しようとするため、副業・ 兼業の上限時間を限りなく短くする可能性があり、無限定に設定すること を認めて良いかは検討が必要である。・ また、本業及び副業・兼業の業務状況に応じて、複数の事業場間の労働 時間を変動させることがあるような場合、本業の労働時間を短縮してもらうなど本業の企業と調整できるようにすることも課題であり、引き続き検 討して行くことが必要。・なお、全企業が当該方法をとることができるとするやり方もあるが、労使協定が締結された企業のみ当該方法をとることができるとするやり方もあると考えられる。
A 事業主ごとに上限規制を適用することとするが、通算した労働時間の状 況を前提に適切な健康確保措置を講ずることとすること ・ 上限規制を事業主ごとの適用とすると、事業主はより労働時間の管理がしやすくなり、労働者も副業・兼業を行いやすくなる。 ・ しかしながら、この場合、通算した労働時間が過労死ラインを超えるよう な場合が生じることになり、労働者の健康確保が図られないおそれがある。 ・ このことから(2)で述べた健康確保措置を適切に行わないと、労働者の 保護が図られなくなるおそれがあることに留意が必要である。 ・ なお、この案を採った場合でも、別の事業主の下で働く場合と異なり、同 じ事業主との間で複数の異なる労働契約を締結する場合や、同一の事業主 の複数事業場で働く場合、事業主間で同一の労働者を雇用していることについて明確な認識がある場合等については、法の潜脱とならないよう、通算することが適切だと考えられる。 ・ また、実務的には、各企業において、自社と副業・兼業先の労働時間を通 算した上限時間を就業規則に盛り込むなどの対応をとることが望ましいと 考えられる。
〇 上記は、あくまで、考えられる選択肢の例示である。その他、労働者自身が 月の総労働時間をカウントし、上限時間に近くなったときに各事業主に申告 すること等も考えられる。また、副業・兼業の場合の上限規制の在り方につい てどうしていくかについては、健康管理や割増賃金などその他の部分でどの ような選択肢をとるかによっても、変わり得ると考えられることに留意が必要である。
(4)割増賃金について→その支払いのために、(3)の上限規制と同等以上 の厳密な労働時間管理を実施することが必要となる。しかし、日々、他の事 業主の下での労働時間を把握することは、企業にとって、実施することが非 常に困難であって、結果として、@違法状態が放置され労働基準法に対する 信頼性が損なわれかねないこと、A別の事業主の下で働く場合に、現行の通 り労働時間を通算して割増賃金の支払い義務があることが、時間外労働の抑 制装置となっていない面もあること等を踏まえ、制度の見直しの方向性とし ては、例えば、以下のようなことが考えられる。↓↓
@ 労働者の自己申告を前提に、通算して割増賃金を支払いやすく、かつ時 間外労働の抑制効果も期待できる方法を設けること(例:使用者の予見可 能性のある他の事業主の下での週や月単位などの所定労働時間のみ通算し て、割増賃金の支払いを義務付けること)
・ 現行の制度においては、契約の先後関係や所定外労働時間の実労働の順 序で割増賃金の支払いが決まることになっており他の事業場における労働 時間に影響を受けるが、他の事業場における実労働時間を日々把握するこ とは困難であることから、契約の先後関係や所定外労働時間の実労働の順 序に影響を受けず、予見可能性のある仕組みとすることが考えられる。 ・ そうした場合、例えば、労働者からの自己申告により把握した他の事業場 の所定労働時間のみを前提として、自社における所定労働時間と通算し、割 増賃金の支払いは、自社における所定外労働時間について対象にすること にすると、使用者の予見可能性を高めることが可能になる。もちろん、この 場合、割増賃金の支払いが義務付けられるのは、自らの労働時間と他の事業場の所定労働時間の合計が法定労働時間を超えていることが前提。・また、例えば日ごとではなく週単位の法定労働時間を上回るかどうかにより、割増賃金の支払いを行うようにすれば、実務上も簡易に行うことが可能になる。 ・ このようにした場合、自社における所定外労働時間の変動が自ら支払う割増賃金の増減に影響するようになるので、割増賃金の時間外労働の抑制装 置としての機能がより働きやすくなると考えられる。 ・ 一方で、様々な働き方がある中で、所定労働時間が日々変化する労働者も いることから、実務上の手間がそれほど軽減されない場合もあり得る。また、割増賃金の支払いを抑制するため、自社の所定労働時間を長めにとるよう になる可能性があることに留意が必要。・また、労働者の自己申告を前提として、割増賃金を通算する制度とする 場合、企業にとっては、(2)や(3)に比べ、特にその客観性が重要になると考えられる。
A 各事業主の下で法定労働時間を超えた場合のみ割増賃金の支払いを義務 付けること
・各事業主の下での法定外労働時間についてのみ割増賃金の対象とする場合、予見可能性は高まり、労働時間管理の煩雑さは解消されるほか、自社 の労働時間のみを考慮すればよいことから、割増賃金の時間外労働の抑制 措置はより働きやすくなる。 ・ 一方で、この場合、現行の解釈における取扱いを変更することになることから、労働者の保護に欠けることのないよう、上限規制や労働者の健康 確保措置を含めた全体の措置の中での対応にすることが求められることに 留意が必要。・また、別の事業主の下で働く場合と異なり、同じ事業主との間で複数の異 なる労働契約を締結する場合や、同一の事業主の複数事業場で働く場合、事 業主間で同一の労働者を雇用していることについて明確な認識がある場合 等については、法の潜脱とならないよう、通算することが適切だと考えられる。
〇 上記は、あくまで、考えられる選択肢の例示。その他、割増賃金の支 払いについて、日々計算するのではなく、計算・申告を簡易化すること等も考えられる。
5)他の事業主の下での労働時間の把握方法について
〇 上記(2)〜(4)のいずれについても、他の事業主の下での労働時間の把 握方法については、労働者のプライバシーへの配慮や HR Tech(Human Resource Technology)の普及状況等に鑑みると、労働者の自己申告が基本となると考えられる。労働者の同意もあり、事業主間でのやりとりでできる場合には、それを妨げるものではないと考えられる。
〇 一方、労働者の自己申告を基本とするとしても、1(4)で触れたように、 副業・兼業の事実のみ申告し、労働時間数の申告を拒む場合はどうするのか、 また、どの程度の客観性を求めるのか、例えば何らかの証明書を求めるのかに ついては、(2)〜(4)でどのような選択肢をとるのかによっても変わり得 ると考えられる。
○ また、どのようなタイミング、どのような頻度で労働者の自己申告を求める かについては、(2)〜(4)でどのような選択肢をとるのかによっても変わ り得ると考えられ、引き続き検討をしていくことが必要である。
(6)その他 →@主に年収の高い層が、企業内だけでは身につけられない 幅広い経験を身につけ、生産性の向上やイノベーションを進めるようなもの、 A主に年収の低い層が、収入面の理由から行うものがある。これらについて、 取り扱いを変えることも考えられるが、実際には区分の基準を検討すること は困難だと考えられる。
〇 また、副業・兼業は雇用の場合だけでなく、非雇用の場合もあるが、本業も 副業・兼業も雇用の場合は、指揮命令下に入って残業せざるを得ないというこ ともあり、労働法制で保護する必要性もあると考えられる。しかし、雇用の副 業・兼業の保護を図ろうとして厳格な規制になってしまうと、労働者が副業・ 兼業をしにくい、企業が副業・兼業を行う者を雇わないなどにより、副業・兼 業の非雇用化が進み、かえって労働法制の保護が及ばない事態を招きかねず、 かえって収入面から掛け持ちをしている者の不利益に繋がりかねないことに も留意が必要である。

Y.おわりに→本検討会においては、労働時間法制の歴史的経緯、企業や労使団体へのヒアリング、諸外国の視察結果等を踏まえ、精力的に議論を行い、以上の通り、検討結果をとりまとめたところである。この報告書を踏まえ、労働者の健康確保や企業 の予見可能性にも配慮した、副業・兼業の場合の実効性のある労働時間管理の在 り方について、労使の参画の場である労働政策審議会において、引き続き積極的な議論が行われることを期待する。

次回は、「参考資料1:第7回検討会における委員の主なご意見」からで第8回最後の資料てす。


第8回「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」 [2019年07月23日(Tue)]
第8回「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」資料(令和元年7月9日) 
《議題》報告書(案)について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05690.html
◎資料1「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」報告書(案)
T.はじめに

社会の状況が変化していく中で、労働者を含め た働き手が副業・兼業を希望する傾向が強まっているとともに、「働き方改革実 行計画」(平成 29 年 3 月 28 日働き方改革実現会議決定)に副業・兼業の促進が 盛り込まれるなど、社会全体として副業・兼業に対する機運が高まっている。
1.副業・兼業の現状
(1)働き手側
→副業を希望している雇用者数は増加傾向、実際に本業も副業も雇用者として働いている者についても増加傾向。副業をしている者を本業の所得階層別→本業の所得が 299 万円 以下の者が全体の約7割。雇用者総数に対する副業をしている者の割合を本業の所得階層別→本業の所得が 199 万円以下の階層と 1,000 万円以上の階層で割合が比較的高くなっており、分布が二極化。さらに、正規の職員・従業員に限って副業をしている者を本業の 所得階層別→全体と同様に年収の比較的低い層と高い層で副業をしている者が多くなっている。一方、非正規の職員・従業員→二極化のような傾向はなく、全体に比べて副業をしている者の割合が高い。 また、「複数就業者についての実態調査」(JILPT 調査、2017 年)によると、 以下の状況。 ↓↓
・ 副業をしている者(本業・副業ともに雇用)について、本業の業種別に副業の業種→全体的に本業と副業が同じ業種である割合が高い。一方、 副業の業種のうち、「卸売業・小売業」、「宿泊業、飲食サービス業」等→本業の業種に関わらず比較的副業をしている者がいる。
・ 副業をする理由として最も当てはまるもの→本業の収入、副業の 数にかかわらず、「収入を増やしたいから」、「1つの仕事だけでは収入が少なくて、生活自体できないから」が多い。一方、本業の収入が高くなると、 収入面を理由とする割合が低くなるに従い、「自分が活躍できる場を広げた いから」等を理由とする割合が高くなる傾向。
・ 本業の就業形態別に副業の就業形態→「パート・アルバイト」が 多い。また、本業・副業ともに「パート・アルバイト」である者や、本業が 「正社員」で、副業が「パート・アルバイト」である者が多い。
・ 副業をしている者(雇用)の副業の平均実労働時間→収入が1番目に多い副業において、およそ週 13 時間となっている。
・ 本業と副業(ともに雇用)の合計した平均実労働時間→およそ週 48 時間。一方、本業の就業形態が「正社員」の者に限ってみると、 およそ週 57 時間程度となっている。
(2)企業側→副業・兼業を認めていない企業は 85.3%、推進していないが容認している企業は 14.7%。また、副業・兼業に関する企業側の課題・懸念として、@本業がおろそかに なる、A長時間労働につながる、B労務・労働時間管理上の不安があるなどがある。

2.副業・兼業の促進に向けた政府の対応状況
(1)働き方改革実行計画
→2017(平成 29)年3月に策定された「働き方改革実行計画」では、政府 として、副業・兼業の普及促進を図るという方針が示され、この実行計画で は、「副業や兼業は、新たな技術の開発、オープンイノベーションや起業の手段、そして第2の人生の準備として有効である」とされている。また、「企業が副業・兼業者の労働時間や健康をどのように管理すべきかを盛り込ん だガイドラインを策定し、副業・兼業を認める方向でモデル就業規則を改定する」ことが示された。さらに、複数の事業所で働く方の保護や副業・兼業の普及促進などの観点 から、労働時間管理及び健康管理の在り方などについて、検討を進めるとされた。
(2)柔軟な働き方に関する検討会→上記「働き方改革実行計画」を受けて、厚生労働省では、2017 年 10 月か ら「柔軟な働き方に関する検討会」を開催。この検討会においては、@ 副業・兼業の促進に関するガイドラインの策定、A改定版モデル就業規則の策定、B副業・兼業に関する制度的課題の把握・整理に向けた検討を行った。 当該検討会での議論を踏まえ、平成 30 年1月に「副業・兼業の促進に関す るガイドライン」及び改定版「モデル就業規則」を策定した。
(3)制度的課題の検討→2018 年6月 15 日に閣議決定された「未来投資戦略 2018」では、「副業・ 兼業の促進に向けて、ガイドライン及び改定した「モデル就業規則」の周知に努めるとともに、働き方の変化等を踏まえた実効性のある労働時間管理 や労災補償の在り方等について、労働者の健康確保や企業の予見可能性にも配慮しつつ、労働政策審議会等において検討を進め、速やかに結論を得る。」とされた。これを受け、本検討会は、2018 年 7 月から●回にわたり議論を重ね、労 働者の健康確保や企業の予見可能性にも配慮した、事業主を異にする場合 の実効性のある労働時間管理の在り方について、検討を進めてきた。

U.労働時間法制の変遷と労働時間通算の規定等について
1.労働時間法制の変遷→
1947(昭和 22)年に労働基準法が制定された当時は、1日8時間、1週 48 時間の通常の労働時間制と4週間以内の期間を単位とする変形労働時間制の み規定されていた。その後、様々な社会的背景を踏まえ、1箇月単位の変形労働時間制、フレッ クスタイム制、1年単位の変形労働時間制、事業場外みなし労働時間制、裁量 労働制など、様々な弾力的な取扱いについて法整備が進められてきた。

2.労働時間通算の規定等について
(1)労働時間通算の歴史的経緯→
工場法(1911(明治 44)年法律第 46 号)第3条において、「就業時間ハ工場ヲ異ニスル場合ト雖・・・之ヲ通算ス」とされており、昼間は甲工場で労働し、夜間は乙工場で労働するというような場合の労働者の保護の徹底を期そうとするものであった。なお、同時の解釈本からは、事業主が異なる場合にも同規定が適用されることが読み取れ、その後、労働基準法(1947(昭和 22)年法律第 49 号)が制定されたが、第 38 条において、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に 関する規定の適用については通算する。」とされ、通達(1948(昭和 23)年 5 月 14 日基発第 769 号)において、「「事業場を異にする場合」とは事業主を異 にする場合をも含む」とされた。なお、当時の解釈には、「事業場を異にする場合は使用者が同一であつても又別人であつても、本法の労働時間制の適用についてはこれを通算する。工場法でも(第三條第三項)同様の趣旨の規定 があつた。」との記載がある。また、これまで、厚生労働省で開催された検討会等において、労働時間通算 について議論され、見直すべきとの指摘がなされたことがある。
(2)労働時間通算の現行の取扱いについて→上記のとおり、現行制度の行政解釈では、労働基準法第 38 条及び通達によ り、事業主が異なる場合であっても、労働時間に関する規定の適用については 通算されるが、労働時間を通算した結果、労働基準法第 32 条又は第 40 条に 定める法定労働時間を超えて労働させる場合には、使用者は、自社で発生した 法定外労働時間について、同法第 36 条に定める時間外及び休日の労働に関す る協定(いわゆる 36(サブロク)協定)を締結し、また、同法第 37 条に定め る割増賃金を支払わなければならないこととなる。このとき、労働基準法上の義務を負うのは、当該労働者を使用することによ り、法定労働時間を超えて当該労働者を労働させるに至った(すなわち、それ ぞれの法定外労働時間を発生させた)使用者となる。従って、一般的には、契 約の締結に当たって、当該労働者が他の事業場で労働しているか否かを確認 した上で契約を締結すべきことから、通算により法定労働時間を超えること となる所定労働時間を定めた労働契約を時間的に後から締結した使用者が、 同法上の義務を負うこととなる。一方、通算した所定労働時間が既に法定労働 時間に達していることを知りながら労働時間を延長するときは、先に契約を 結んでいた使用者も含め、延長させた各使用者が同法上の義務を負うこととなる。なお、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」において、企業の対応と しては、「労働者からの自己申告により副業・兼業先での労働時間を把握する ことが考えられる」とされている。
(3)健康管理について→事業者は、労働者が副業・兼業をしているかにかかわらず、労働安全衛生法 第 66 条等に基づき、その使用する労働者に対して健康診断等を実施しなければならない。なお、労働安全衛生法第 66 条に基づく一般健康診断及び第 66条の 10 に基づくストレスチェックは、常時使用する労働者(常時使用する短 時間労働者を含む。)が実施対象となる。この際、常時使用する短時間労働者 とは、短時間労働者のうち、以下のいずれの要件をも満たす者となる(平成 26 年7月 24 日付基発 0724 第2号等抜粋)。→期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契 約により使用される者であって、契約期間が1年以上である者並びに契約 更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き 続き使用されている者を含む。)、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労 働者の1週間の所定労働時間の3/4以上である者。上記措置の実施対象者の選定にあたって、副業・兼業先における労働時間の 通算は不要である。ただし、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」にお いては、「使用者が労働者に副業・兼業を推奨している場合は、労使の話し合 い等を通じ、副業・兼業の状況も踏まえて、健康診断等の必要な健康確保措置 を実施することが適当である。」と記載されている。

V.企業、労使団体へのヒアリング結果→@ 自社社員に企業内だけでは身につけられない幅広い経験を身につけさせる ことにより、自社の人材の能力を高め、企業として、生産性の向上やイノベー ションを進めていきたいという考え方。 A 収入面や自己実現の観点から労働者が希望することについて、「労働者の自 由」を実現するため、法令遵守できる範囲や企業秩序に反しない範囲で認めよ うという考え方。加えて、このような自由を認めることにより、労働者に魅力 を感じてもらい、人材確保に役立てたいという考え方。

1.労働時間管理について(ヒアリングをした企業の多くに共通)→@ 副業・兼業先に「雇用」を認めていない、又は、 A 労働時間通算の問題が生じないように、本業、副業・兼業の通算した労働 時間が法定労働時間内となるような副業・兼業しか認めていない、 という取扱いであった。→副業・兼業先に「雇用」を認め、かつ、 法定時間外労働を認めることとすると、労働基準法第 38 条及び通達の適用を 受けることとなるが、これを遵守した制度運営ができず企業としてのコンプライアンス上、実施できないということであった。具体的には、 @ 日々の労働時間管理が実務上できない A 労働者の申告に信頼性がない B 裁量労働制、フレックスタイム制など、様々な労働時間制度がある中で、 実務ができない といったもの。→こうした労働時間通算の問題が運用可能な状況になれば、副業・兼業 先に「雇用」を認めたり、他社雇用の労働者を受け入れたりすることができる ようになると回答した企業も多かった。
○ 企業ヒアリングの中で、副業・兼業に関する現行制度への意見要望を聞いた。→ ・ 労働者の健康確保などの観点から、副業・兼業者の労働時間通算が必要であることは、考え方としては理解できるが、実務の取扱いが困難なために対応ができないと感じている。
○ また、労働団体へのヒアリング→・ 副業・兼業については、本業と合わさることにより長時間労働が発生しか ねないという問題、使用者の安全配慮義務の責任分担の問題、労災の認定や 補償の問題、社会・労働保険の適用、在職中の秘密保持義務や競業避止義務 など、多くの課題がある。また、現実に副業・兼業をしている者の中には、 1つの勤務先の所得では不十分であるため、やむを得ず複数の仕事を掛け 持ちしている者もいる。このような状況を踏まえれば、政府として労働者の 副業・兼業をいたずらに後押しすべきものではない。・ 複数の仕事が合わさることによって、長時間労働が生じる問題があること から、使用者は私生活への過度な介入とならないように配慮しつつ、副業・ 兼業に関して労働時間を適切に把握し、労働基準法第 38 条の労働時間通算 規定などの現行の労働時間ルールを遵守すべき。・労働時間の通算について、自己申告によりかかった制度にするべきかどう かということには慎重な意見を持っており、申告しなかった場合に、労働者 保護が外れて良いのかということが課題。 との意見があった。
○ 使用者団体へのヒアリング→ ・ 副業・兼業の推進に当たっては、企業としては、長時間労働のみならず、 職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務など様々な観点から懸念すべきことがまだ多い。 ・ 労働時間通算→企業はどこまで対応すれば、これらの就業時間 の把握義務を履行したことになるのか。具体的には、 @ 労働者からの自己申告以外の方法が考えられるのか、 A 本業にて、副業・兼業先の始業時刻を超えた時間の時間外命令が必要な 場合に、当該時間外命令と副業先の就業義務はどちらが優先されるのか などが明確にされていないと、現場は混乱するのではないか。 ・ 割増賃金の算定に当たっては、日々管理していくことは極めて困難である し、自己申告による場合はさらに把握が難しい。副業・兼業については様々 なケースが想定され、企業の対応も、本業先の企業と副業・兼業先の企業で は異なってくるため、ケースごとに対応が異なるという実態になるのでは ないか。 ・ 現在の職場では自分のやってみたいことがなかなかできにくい環境であ る場合、違うところで自分の力を試してみたいということもあると思うの で、今後、副業・兼業が増える可能性はあるのではないか。との意見があった。

2.健康管理(ヒアリングをした企業)→・ 独自の基準により、本業、副業・兼業の通算した労働時間(又は副業・兼 業のみの労働時間)の上限を設けている例、・ 自己管理に委ねつつも、相談窓口等の案内や、健康教育の実施などにより 対応している例、・ 本業、副業・兼業の通算した労働時間が法定労働時間内に収まるようにしており、副業・兼業をしている者に対する特別な健康管理を行っていない例、・ 万が一、副業・兼業により健康上の問題が生じた場合は、副業・兼業の許 可を取り消すこととしている例、などが見受けられた。
○ 労働団体へのヒアリング→・ ストレスチェックや健康診断、特殊健康診断の対象を選定するに当たって も、副業・兼業先における労働時間や就業環境などについても通算を行った 上で、要件を満たす者について必要な措置を講じることが必要。 との意見があった。
○ 使用者団体へのヒアリング→・ 企業にとっては副業・兼業の導入によって長時間労働が懸念されるので、 労働時間を削減し、過労死を防止するという働き方改革法の理念に鑑みる と、それを両立させるのは大変難しい状況ではないか。 との意見があった。

W.諸外国の状況について→諸外国では労働時間を通算するという制度が、実際にどう運用され、法が適用されているかという実態を把握するため、フランス、ドイ ツ、オランダに現地視察に行き、行政機関、研究者、労使団体へのヒアリングを行った。その結果、↓
1.フランス
(1)制度の概要
最長労働時間規制(1日 10 時間、週 48 時間、12 週平均週 44 時間)に違反する副業は許されない。@忠実義務や競業避止義務違反にならないか、A複数 就業の通算により労働時間規制に違反しないかを使用者がチェックする目的 で、労働者が副業を行うときは使用者に対してその旨届出を行うことが必要(様式などの定まった方法はない。)。また、監督署からの働きかけ などを契機として、副業による長時間労働の問題が発生していると疑われる 場合には、使用者は、労働者に対して労働時間規制を遵守していることを証明する書類を提出するように求める。その場合、労働者が副業に関する情報を報 告する義務がある。報告の内容は、@使用者が誰かということ、A副業先で何 時間働いているかということ。情報提供により労働時間の超過が確認された場合には、労働者に、どちらの労働契約を打ち切るかを選ばせる。労働者が選択しない場合、なお、問題が残る場合には、労働者に帰責性がある と判断して使用者がその労働者の解雇を行うことが可能。
○ 労働者が労働時間を報告する結果→副業先での労働時間を使用者が 把握することはある。また、監督署が報告を求めた場合には、使用者は報告する義務がある。ただし、労働時間管理簿に副業先の労働時間まで記録するという法律上の義務はない。複数の使用者がいる場合の調整について、理論的には、 両使用者に労働者から情報提供がなされているという前提で労働時間規制を 遵守しないといけないが、調整を行うことは難しく、実務上できているかどう かは別問題。
○ 割増賃金の通算→労働時間は通算しない。
健康診断→複数の使用者で雇用されている者か否かで使用者に課される実施義務に違いはない。
(2)監督等の状況→監督署が使用者に対して、労働時間通算に関する働きかけを行うケースは 非常に稀であり、研究者によると、実務上は、労働監督官は点検できていない。

2.ドイツ
(1)制度の概要→
最長労働時間規制(1日 10 時間、週 48 時間、6か月平均1日8時間)を超える副業はできない。使用者は労働者に副業の有無を質問することを労働契 約に設ける権利があり、労働契約を締結する際に副業の有無を聞くことができるが、その場合に労働者は真実を伝えることとなっている。労働契約におい て、使用者に、労働者に対して副業先の労働時間数を聞く権利が認められる場合、使用者から質問された労働者は正確に答える義務があるため、それによって労働時間を把握可能。使用者に労働時間の調整を義務付ける明文の規定はないが、使用者は労働時間規制を守らなければならないことから、副業 先の労働により労働時間法違反とならないよう調整する(例えば副業を承認 しない)、あるいは調整される(超える部分の労働契約が無効となる)こととなっている。
○ 労働団体→割増賃金については、法律上の規制はなく、協約により 設定される。算定に当たっては、労働時間は通算しない。 健康診断→複数の使用者で雇用されている者か否かで使用者に課 される実施義務に違いはない。
(2)監督等の状況→労働時間法については、監督署の人手不足の影響もあり、あまり監督等はさ れていない。

3.オランダ
(1)制度の概要
→研究者によると、最長労働時間規制(1日 12 時間、週 60 時間、16 週平均 48 時間)について、複数就業の場合に、労働時間を通算して規制が適用され ることとなっており、そのため労働者は使用者に自分の労働時間を伝える義 務が課されている。複数就業を知った使用者は、使用者間で調整するためにコ ンタクトを取らないといけない。ただし、法律上はそれに関する問 題・紛争を解決するための手続は用意されていないが、理論的には、双方が調 整せずに放置した場合は、双方の使用者が法違反に問われること。 ○ 研究者によると、割増賃金について、法律上の規制はなく、協約により設定。また、割増賃金でなく、労働からの解放時間(代替休暇又は自由時間) の付与によって調整するケースが多い。 健康診断→複数の使用者で雇用されている者か否かで使用者に課 される実施義務に違いはない。
(2)監督等の状況→研究者によると、副業は個人の問題、労働者本人の意思によって行っているものなので、労働者が違法を申告しない限り、発見は困難であり、監督は事実上されていない状況。

長いですので、区切ります。次回は、「X.実効性のある労働時間管理や健康管理の在り方に向けて」からです。
平成 30 年版 厚生労働白書 [2019年07月22日(Mon)]
平成 30 年版 厚生労働白書 (平成 29 年度厚生労働行政年次報告) ―障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会に― 〔 概要 〕(令和元年7月9日)
https://www.mhlw.go.jp/content/000524475.pdf
今回の白書は、「障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会に」をテーマに、障害や病気を有する方などに焦点を当て、障害の特性や病状などの事情に応じ、就労や社会参加を通じて自分らしく生きることができる社会の実現に向け、現状や国民の意識、事例の分析を整理しています。その上で、全ての人が活躍できる社会の実現に向けた方向性を示しております。

◎平成30年版厚生労働白書の全体像
第1部(テーマ編*) 「障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会に」→障害者、難病患者、がん患者などが、職場や地域などのあらゆる場で最大限に活躍できる 「一億総活躍社会」の実現に向けて政府が取り組んでいる中、障害者雇用、治療と仕事の 両立支援などに関する現状と課題を整理するとともに、国民の自立支援に関する意識(地域での支え合い・就労などに関する意識)の調査を実施。 様々な取組みを行っている企業や支援団体の調査も行い、本文に掲載。 これらを踏まえ、包摂と多様性がもたらす持続的な社会の実現に向けて必要な取組みを、 障害や病気を有する者など本人、身近にいる者、その他の者の三類型について整理。 ※ 国の行政機関の多くで、障害者である職員の不適切な計上があり、法定雇用率が達成されていない状況が長年にわ たって継続していた事案と対応を記載。

第2部(年次行政報告) 「現下の政策課題への対応」→年次行政報告として、厚生労働省が様々な政策課題にどのように対応しているのかを、わ かりやすく国民に報告。
第1章 子どもを産み育てやすい環境づくり
第2章 働き方改革の推進などを通じた労働環境の 整備など
第3章 女性、若者、高齢者等の多様な働き手の参画
第4章 自立した生活の実現と暮らしの安心確保
第5章 若者も高齢者も安心できる年金制度の確立
第6章 医療関連イノベーションの推進
第7章 国民が安心できる持続可能な医療・介護 の実現
第8章 健康で安全な生活の確保
第9章 障害者支援の総合的な推進
第10章 国際社会への貢献
第11章 行政体制の整備・情報政策の推進

○第1章 障害や病気を有する者などの現状と取組み
・第1節 障害者などの現状と取組み@A→P2・3参照。
・第2節 病気を有する者などの現状と取組み→P4→がん患者の約半数が勤務を継続。がん治療は入院治療から通院治療にシフトしており、働きながら治療を受けられる可能性が高まっている。
・第3節 社会活動を行うのに困難を有する者の現状と取組み→P5。障害や病気以外の要因で、社会活動を行うのに困難を有する者(例えばひきこもり状態にある者等)もいる。 広義のひきこもり状態にある者は推計54.1万人。広義のひきこもり群と一般群を比較すると、 広義のひきこもり群は、規則正しい生活習慣や社会参加に課題を有する者の割合が、一般群に比べて多い傾向。家族会の調査では、会員のうち、40歳代以上の中高年層でひきこもり状態にある者が、一定程度存在。 若年無業者を多く含む地域若者サポートステーションの利用者の中にも、生活習慣の改善や社会参加に向け た支援を必要とする者が存在する。
○第2章 自立支援に関する国民の意識調査
・第1節 概要、第2節 地域での支え合いに関する意識(1)→地域や職場で障害や病気で困っている者がいたら助けたいかという問いに対し、「積極的に助けたい」及び 「助けたい」と思う者の割合は、身近に障害や病気を有する者がいる者において最も高い。助けたいと思う理由は「困っているときはお互い様という気持ちから」、助けよう と思わない理由は「自分にとって負担になるような気がするから」が最多。
・第2節 地域での支え合いに関する意識(2)、第3節 就労などに関する意識(1)→【A過去1年間に地域や職場で障害や病気で困っている者を助けた経験がない理由】(出会う機会が ないからが一番多い)
・第3節 就労などに関する意識(2)→障害や病気を有する 者が職場にいることで「仕事の進め方について職場内で見直すきっかけになった」が最多。
○第3章 障害や病気を有する者などを支える現場の取組み事例
・第1節 取組み事例の紹介(1)→障害者雇用・障害者就労支援などの取組み事例
・第1節 取組み事例の紹介(2)→治療と仕事の両立支援・健康づくりの取組み事例、社会活動を行うのに困難を有する者などへの支援の取組み事例、参照。
・第2節 取組み事例の分析→取組み事例全体を通しての取組みのポイントは、「理解・意識改革」、「体制整備・働き方の見直し」、「連携」、「相談体制」の4点。
○第4章 包摂と多様性がもたらす持続的な社会の発展に向けて
・第1節 一億総活躍社会の実現→全ての人が包摂される社会、一億総活躍社会が実現できれば、安心感が醸成され、将来の見通しが確かになり、消費の底上げ、投資の拡大にもつながる。さらに、一人一人の多様な能力が十分に発揮され、多様性が認められる社会を実現できれば、新たな着想によるイノベーションの創出を通じて、生産性が向上し、経済成長 を加速することが期待される。また、政府は一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジとして、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多 様な働き方を選択できる社会を目指した「働き方改革」にも取り組んでいる。
・第2節 障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会の実現に向けた方向性(1)→@早期・積極的な対象者の把握、A関係機関の連携・協働による就労支援、B治療と仕事の両立支援の推進、C段階的自立に向けた包括的・継続的支援といった取組みが必要。
・第2節 障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会の実現に向けた方向性(2)
・第2節 障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会の実現に向けた方向性(3)
・第2節 障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会の実現に向けた方向性(4)

◎資料編はこちら↓↓
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/18-2/

◎簡便でこちらもわかりやすい↓↓
○100人でみた日本

https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/18-3/
○日本の1日
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/18-3/dl/02.pdf

次回は、「第8回「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」資料」からです。
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