第136回労働政策審議会職業安定分科会資料(平成31年2月7日)
≪議題≫(1)職業安定法施行令の一部を改正する政令案要綱等について(諮問)(2)高年齢者等職業安定対策基本方針の一部改正案について(諮問)(3)2018年度の年度目標に係る中間評価について(4)その他
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03461.html◎参考資料2-2高年齢者等職業安定対策基本方針
○目次
はじめに
第1 高年齢者の就業の動向に関する事項
第2 高年齢者の雇用の機会の増大の目標に関する事項
第3 事業主が行うべき諸条件の整備等に関して指針となるべき事項
第4 高年齢者の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項
○ はじめに
1 方針のねらい
少子高齢化の急速な進行→「全員参加型社会」の実現が求められている。高年齢者についても、その能力の有効な活用を図ることが重要な課題、高年齢者が健康で、意欲と能力がある限り年齢にかかわりなく働き続けることができる社会(「生涯現役社会」)の実現を目指す必要あり。 平成25年度から公的年金の報酬比例部分の支給開始年齢が段階的に65歳へ引き上げられることに対応し、雇用と年金の確実な接続等を図るため、平成24年第180 回通常国会において高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号)の改正が行われた。 この基本方針は、この法改正の趣旨等を踏まえ、高年齢者の雇用・就業についての目標及び施策の基本的考え方を、労使をはじめ国民に広く示すとともに、事業主が行うべ き諸条件の整備等に関する指針を示すこと等により、高年齢者の雇用の安定の確保、再就職の促進及び多様な就業機会の確保を図るもの。
2 方針の対象期間 →平成25年度から平成30年度までの6年間。ただし、 この基本方針の内容は平成24年の法改正を前提とするものであることから、必要な場合は改正を行うものとする。
第1 高年齢者の就業の動向に関する事項
1 人口及び労働力人口の高齢化→平成22年 (2010年)から平成32年(2020年)までの10年間→15〜59歳の者が約492万人減少するのに対し、60歳以上の高年齢者が約418万人増加、3人に1人が60歳以上の高年齢者となるものと見込まれる。平成24年から平成26 年にかけていわゆる団塊の世代(昭和22年から昭和24年までに生まれた世代)が65歳に 達することから、平成22年と労働力率が同じ水準であるとすれば、平成22年(2010年) から平成32年(2020年)までの10年間においては、60〜64歳の労働力人口は154万人減少し、65歳以上の労働力人口は134万人増加すると見込まれる(総務省統計局「国勢調 査」(平成22年)、「労働力調査」(平成22年)及び国立社会保障・人口問題研究所「日本 の将来推計人口」(平成24年)の中位推計)。
2 高年齢者の雇用・就業の状況
(1) 高年齢者をめぐる雇用情勢→平成23年における完全失業率は、年齢計が 4.5%であるのに対し、60〜64歳層で5.1%となっており、
これを男女別に見ると、 男性については年齢計が4.8%、60〜64歳層で6.2%であるのに対し、女性について は年齢計が4.1%、60〜64歳層では3.4%となっている(総務省統計局「労働力調査」(平成23年の数値は、岩手県、宮城県及び福島県を除く結果。以下同じ。))。
(2) 高年齢者の就業状況常用労働者が31人以上の企業における60〜64歳層の常用労働者数は、平成21年の 約155万人から、平成24年の約196万人に増加(厚生労働省「高年齢者雇用状 況報告」)。また、同年齢層の就業率は、平成17年に52.0%、平成23年に57.3%となっている。これを男女別に見ると、男性は、平成17年に65.9%、平成23年に70.9% 。また、女性は、平成17年に39.0%、平成23年に44.2%となっており、 近年高まっている(総務省統計局「労働力調査」)。 55〜69歳の高年齢者の勤務形態を見ると、男性の雇用者に占めるフルタイム勤務 以外の者の割合は、55〜59歳層で13.2%、60〜64歳層で35.0%、65〜69歳層で64.4% となっている。また、
女性の雇用者に占めるフルタイム勤務以外の者の割合は、55 〜59歳層で55.1%、60〜64歳層で65.1%、65〜69歳層で81.1%となっており、
年齢層が高くなるほど高まっている(独立行政法人労働政策研究・研修機構「高年齢者の雇用・就業の実態に関する調査」(平成22年))。
3 高年齢者に係る雇用制度の状況
(1) 定年制及び継続雇用制度の動向→ 平成24年6月1日現在、常用労働者が31人以上の企業のうち97.3%が年金支給開始年齢(平成24年現在、64歳)までの改正前の法第9条第1項の規定に基づく高年齢者雇用確保措置(定年の引上げ、継続雇用制度をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう)の導入又は定年の定めの廃止をいう)を実施済みである。そのう ち、
定年の定めの廃止の措置を講じた企業の割合は2.7%、定年の引上げの措置を講 じた企業の割合は14.7%、継続雇用制度の導入の措置を講じた企業の割合は82.5%となっている。定年到達前の労働者が継続雇用時に希望する働き方と実際の状況を比較すると、正社員を希望する者の割合が44.2%と最も多いが、実際には正社員となる者の割合は18.6%、嘱託・契約社員やパート・アルバイトとなる者の割合は45.7%。フルタイムを希望する者の割合が51.6%であるのに対し、フルタイムとなる者の割合は33.2% (独立行政法人労働政策研究・研修機構「高年齢者の雇用・就業の実態に関する調査」 (平成22年))。 また、高年齢者雇用確保措置を講じている企業で、継続雇用時の雇用契約期間を1 年単位とする企業の割合は83.5%、1年を超える期間とする企業の割合は6.0%、期間を定めない企業の割合は2.1%(独立行政法人労働政策研究・研修機構 「高齢者継続雇用に向けた人事労務管理の現状と課題」(平成19年))。
(2) 賃金の状況 イ 賃金決定の要素→「業績・成果に対応する賃金部分の拡大」(23.7%)、「職務・職種などの仕 事の内容に対応する賃金部分の拡大」(23.3%)、「職務遂行能力に対応する賃金部分の拡大」(22.1%)を多く挙げている。業績評価制度を導入している企業の 割合は、45.6%と半分近くになっている(厚生労働省「就労条件総合調査」(平成19 年))。
ロ 転職者の賃金→10%以上の減少となっている者の割合は、 一般に年齢が高いほど高くなる傾向にあり、45〜49歳で18.7%、50〜54歳で20.0%、 55〜59歳で31.5%、60〜64歳で55.2%。ただし、65歳以上では39.2% 、
その割合は減少している(厚生労働省「雇用動向調査」(平成23年上 半期))。
ハ 継続雇用時の賃金→継続雇用時の年収の見通しについては、年金等も含めて定年到達前の年収の6〜 7割となる者の割合が31.6%、4〜5割となる者の割合が27.6%(独立行 政法人労働政策研究・研修機構「60歳以降の継続雇用と職業生活に関する調査」(平 成20年))。 ニ 継続雇用時の賃金水準決定の要素→60代前半の継続雇用者の賃金水準決定の際に考慮している点(複数回答)をみる と、
「60歳到達時の賃金水準」(41.1%)、「高年齢雇用継続給付の受給状況」(25.0%)、 「在職老齢年金の受給状況」(22.2%)、「担当する職務の市場賃金・相場」(21.7%)、 「業界他社の状況」(18.9%)(独立行政法人労働政策研究・研修機構「高齢者の雇用・採用に関する調査」(平成22年))。
4 高年齢者の労働災害の状況→平成23年における労働災害の発生状況を休業4日以上の死傷者数でみると、50歳以上 の労働者の割合は44.4%、60歳以上の労働者の割合は20.5%(厚生労働省 「労働者死傷病報告」(平成23年))。
5 高年齢者の就業意欲 →60歳くらいまで仕事をしたい者の割合が9.7%、65歳くらいまで仕事をしたい者の割合が19.2%、70歳くらいまで仕事をしたい者の割合が23.0%、75歳くらいまで仕事をしたい者の割合が8.9%、76歳以上まで仕 事をしたい者の割合が2.4%、働けるうちはいつまでも仕事をしたい者の割合が36.8%(内閣府「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」(平成20年))。
第2 高年齢者の雇用の機会の増大の目標に関する事項生涯現役社会を実現することが必要。平成25年度から公的年金の報酬比例部分の支給開始年齢が段階的に65歳へ引き 上げられることから、雇用と年金の確実な接続を図ることが重要。このため、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律(平成24年法律第78号。以下 「改正法」)に基づき、希望者全員の65歳までの高年齢者雇用確保措置が全ての企業において講じられるようにするとともに、年齢にかかわりなく働ける企業の普及を図り、高年齢者の雇用の場の拡大に努める。 高齢期には、個々の労働者の意欲、体力等個人差が拡大し、その雇用・就業ニー ズも雇用就業形態、労働時間等において多様化することから、このような多様なニーズに 対応した雇用・就業機会の確保を図る。
これらの施策により、新成長戦略(平成22年6月18日閣議決定)で示された平成32年まで の目標(同戦略において、「平成32年度までの平均で、名目3%、実質2%を上回る成長」 等としていることを前提。)である60〜64歳の就業率を63%とすることを目指すとともに、 同年までに65〜69歳の就業率を40%とすることを目指す第3 事業主が行うべき諸条件の整備等に関して指針となるべき事項
1 事業主が行うべき諸条件の整備に関する指針→事業主は、高年齢者が年齢にかかわりなく、その意欲及び能力に応じて働き続けることができる社会の実現に向けて企業が果たすべき役割を自覚しつつ、労働者の年齢構成 の高齢化や年金制度の状況等も踏まえ、労使間で十分な協議を行いつつ、高年齢者の意欲及び能力に応じた雇用機会の確保等のために次の(1)から(7)までの諸条件の整備に努めるものとする。
(1) 募集・採用に係る年齢制限の禁止→労働者の一人ひとりに、より均等な働く機会が 与えられるよう、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の 充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)において、募集・採用における年齢制限 が禁止されているが、高年齢者の雇用の促進を目的として、60歳以上の高年齢者を 募集・採用することは認められている。
(2) 職業能力の開発及び向上→高年齢者の有する知識、経験等を活用できる効果的な職業能力開発を推進するため、 必要な職業訓練を実施する。その際には、公共職業能力開発施設・民間教育訓練機関において実施される職業訓練も積極的に活用する。
(3) 作業施設の改善→作業補助具の導入を含めた機械設備の改善、作業の平易化等作業方法の改善、照明 その他の作業環境の改善、福利厚生施設の導入・改善を通じ、身体的機能の低下等に 配慮することにより、体力等が低下した高年齢者が職場から排除されることを防ぎ、 その職業能力を十分発揮できるように努める。
(4) 高年齢者の職域の拡大→企業における労働者の年齢構成の高齢化に対応した職務の再設計を行うこと等により、身体的機能の低下等の影響が少なく、高年齢者の能力、知識、経験等が十分に活用できる職域の拡大に努める。 合理的な理由がないにもかかわらず、年齢のみによって高年齢者を職場から 排除することのないようにする。
(5) 高年齢者の知識、経験等を活用できる配置、処遇の推進→高年齢者の意欲及び能力に応じた雇用機会を確保するため、職業能力 を評価する仕組みや資格制度、専門職制度等の整備を行うことにより、その知識、経験等を活用することのできる配置、処遇を推進する。
(6) 勤務時間制度の弾力化→高齢期における就業希望の多様化や体力の個人差に対応するため、短時間勤務、隔 日勤務、フレックスタイム制等を活用した勤務時間制度の弾力化を図る。
(7) 事業主の共同の取組の推進→高年齢者の雇用機会の開発を効率的に進めるため、同一産業や同一地域の事業主が、 高年齢者の雇用に関する様々な経験を共有しつつ、労働者の職業能力開発の支援、職 業能力を評価する仕組みの整備、雇用管理の改善等についての共同の取組を推進する。
2 再就職の援助等に関する指針→事業主は、解雇等により離職することとなっている高年齢者が再就職を希望するときは、当該高年齢者が可能な限り早期に再就職することができるよう、当該高年齢者の在 職中の求職活動や職業能力開発について、主体的な意思に基づき次の(1)から(5)までの事項に留意して積極的に支援すること等により、再就職の援助に努めるものとする。
(
1) 再就職援助等の対象者 再就職の援助の対象となる高年齢者は、離職日において45歳以上65歳未満の者で あって、解雇(自己の責めに帰すべき理由によるものを除く。)又は改正法附則第3項の規定によりなおその効力を有することとされる改正法による改正前の法第9条第2 項の継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めた場合における、当該基準 に該当しなかったことその他事業主の都合により離職する者をいう。
(2) 再就職の援助等に関する措置の内容→(1)に該当する高年齢者(以下「離職予定高年齢者」という。)に対しては、その有する職業能力や離職予定高年齢者から聴取した再就職に関する希望等を踏まえ、例えば、 次の@からDまでの援助を必要に応じて行うよう努める。
@ 教育訓練の受講、資格試験の受験等求職活動のための休暇の付与
A @の休暇日についての賃金の支給、教育訓練等の実費相当額の支給等在職中の求職活動に対する経済的な支援
B 求人の開拓、求人情報の収集・提供、関連企業等への再就職のあっせん
C 再就職に資する教育訓練、カウンセリング等の実施、受講等のあっせん
D 事業主間で連携した再就職の支援体制の整備
(3) 求職活動支援書の作成等→離職予定高年齢者については、求職活動支援書の交付希望の有無を確認し、当該離 職予定高年齢者が希望するときは、当該者の能力、希望等に十分配慮して、求職活動 支援書を速やかに作成・交付する。交付が義務付けられていない定年退職者等の離職予定者についても、当該離職予定者が希望するときは、求職活動支援書を作成・交付 するよう努める。
(4) 公共職業安定所等による支援の積極的な活用等→求職活動支援書の作成その他の再就職援助等の措置を講ずるに当たっては、必要に応じ、公共職業安定所等に対し、情報提供その他の助言・援助を求めるとともに、公 共職業安定所が在職中の求職者に対して実施する職業相談や、地域における関係機関 との連携の下で事業主団体等が行う再就職援助のための事業を積極的に活用する。
(5) 助成制度の有効な活用→求職活動支援書の作成及び交付を行うことにより、離職予定高年齢者の再就職援助 を行う事業主等に対する雇用保険制度に基づく助成制度の有効な活用を図る。
3 職業生活の設計の援助に関する指針
事業主は、その雇用する労働者が、様々な変化に対応しつつキャリア形成を行い、高 齢期に至るまで職業生活の充実を図ることができるよう、次の(1)及び(2)の事項の実施を通じて、その高齢期における職業生活の設計について効果的な援助を行うよう努めるものとする。 この場合において、労働者が就業生活の早い段階から将来の職業生活を考えることが できるよう、情報の提供等に努める。
(1) 職業生活の設計に必要な情報の提供、相談等→ 職業生活の設計に関し必要な情報の提供を行うとともに、職業能力開発等に関する きめ細かな相談を行い、当該労働者自身の主体的な判断、選択によるキャリア設計を 含めた職業生活の設計が可能となるよう配慮する。 また、労働者が職業生活の設計のために企業の外部における講習の受講その他の活 動を行う場合に、勤務時間等について必要な配慮を行う。
(2) 職業生活設計を踏まえたキャリア形成の支援→労働者の職業生活設計の内容を必要に応じ把握しつつ、職業能力開発に対する援助 を行う等により、当該労働者の希望や適性に応じたキャリア形成の支援を行う。
第4 高年齢者の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項
1 高年齢者雇用確保措置の円滑な実施を図るための施策の基本となるべき事項
(1) 高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針の周知徹底→65歳未満定年の定めのある企業において、65歳までの高年齢者雇用確保措置の速やかな実施、希望者全員の65歳までの安定した雇用の確保に関する自主的かつ計画的な取組が促進されるよう、法第9条第3項に基づく高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針(平成24年厚生労働省告示第560号)の内容について、その周知徹 底を図る。
(2) 高年齢者雇用確保措置に係る指導等→都道府県労働局及び公共職業安定所においては、全ての企業において高年齢者雇用 確保措置が講じられるよう、周知の徹底や企業の実情に応じた指導等に積極的に取り 組む。
(3) 高年齢者雇用アドバイザーとの密接な連携→企業が高年齢者雇用確保措置のいずれかを講ずるに当たり高年齢者の職業能力の 開発及び向上、作業施設の改善、職務の再設計や賃金・人事処遇制度の見直し等を行う場合において、機構に配置されている高年齢者雇用アドバイザーが専門的・技術的 支援を有効に行えるよう、公共職業安定所は、適切な役割分担の下で、機構と密接な 連携を図る。
(4) 助成制度の有効な活用等→高年齢者の雇用の機会の増大に資する措置を講ずる事業主等に対する助成制度の有効な活用を図るとともに、必要に応じて、当該助成制度について必要な見直しを行う。
2 高年齢者の再就職の促進のための施策の基本となるべき事項
(1) 再就職の援助等に関する指針の周知徹底 企業において、離職予定高年齢者に対する在職中の求職活動の援助等に関する自主 的な取組が促進されるよう、第3の2の内容について、その周知徹底を図る。
(2) 公共職業安定所による求職活動支援書に係る助言・指導→ 離職予定高年齢者については、法により事業主に義務付けられている高年齢者雇用 状況報告や多数離職届、事業主からの雇用調整の実施に関する相談や本人からの再就 職に関する相談等を通じてその把握に努め、また、離職予定高年齢者が希望した場合 には求職活動支援書の交付が事業主に義務付けられていることについての十分な周 知徹底を図る。
(3) 助成制度の有効な活用等 在職中の求職活動を支援する事業主に対する助成制度の有効な活用を図るとともに、高年齢者の円滑な労働移動の支援を図る。
(4) 公共職業安定所による再就職支援→ 公共職業安定所において、求職活動支援書の提示を受けたときは、その記載内容を 十分参酌しつつ、可能な限り早期に再就職することができるよう、職務経歴書の作成 支援等、的確な職業指導・職業紹介及び個別求人開拓を実施する。
(5) 募集・採用に係る年齢制限の禁止に関する指導、啓発等→高年齢者の早期再就職を図るため、積極的な求人開拓を行う。また、高年齢者に対 する求人の増加を図り、年齢に係る労働力需給のミスマッチを緩和するため、募集・ 採用に係る年齢制限の禁止について、民間の職業紹介事業者の協力も得つつ、指導・ 啓発を行うとともに、労働者の募集・採用に当たって上限年齢を設定する事業主がその理由を求職者に提示しないときや当該理由の内容に関し必要があると認めるとき には、事業主に対して報告を求め、助言・指導・勧告を行う。
3 その他高年齢者の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項
(1) 生涯現役社会の実現に向けた取組→高齢期を見据えた職業能力開発や健康管理につ いて、労働者自身の意識と取組や企業の取組への支援を行うほか、多様な就業ニーズ に対応した雇用・就業機会の確保等の環境整備を図る。 また、生涯現役社会の実現に向けて、国民各層の意見を幅広く聴きながら、当該社 会の在り方やそのための条件整備について検討するなど、社会的な気運の醸成を図る。 このため、都道府県労働局及び公共職業安定所は、機構その他の関係団体と密接な連携を図りつつ、各企業の実情に応じて、定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の定めの廃止等によって、年齢にかかわりなく雇用機会が確保されるよう周 知するなど必要な支援に積極的に取り組む。
(2) 高齢期の職業生活設計の援助→ 労働者が、早い段階から自らのキャリア設計を含めた職業生活の設計を行い、高齢期において、多様な働き方の中から自らの希望と能力に応じた働き方を選択し、実現 できるようにすることが重要。個々の労働者がそのキャリア設計に沿った職業能力開発を推進できるよう、 相談援助体制の整備に努める。
(3) 各企業における多様な職業能力開発の機会の確保→労働者が高齢期においても急激な経済社会の変化に的確かつ柔軟に対応できるよう、教育訓練の実施、長期教育訓練休暇の付与等を行う事業主に対して必要な援助を行い、各企業における労働者の希望、適性等を考慮した職業能力開発の機会を確保。
(4) 職業能力の適正な評価等の促進→高年齢者の職業能力が適正に評価され、当該評価に基づく適正な処遇が行われるこ とを促進するため、各企業における職業能力を評価する仕組みの整備に関し、必要な 情報の収集、整理、提供に努める。また、技能検定制度等労働者の職業能力の公正な 評価に資する制度の整備を図る。
(5) 教育訓練給付制度等の周知徹底及び有効な活用 高年齢者の主体的な職業能力開発を支援するため雇用保険制度に基づく教育訓練給付制度の周知徹底及びその有効な活用を図る。
(6) 労働時間対策の推進→高年齢者の雇用機会の確保、高年齢者にも働きやすい職場環境の実現等に配慮しつ つ、所定外労働時間の削減、年次有給休暇の取得促進、フレックスタイム制等の普及 促進を重点に労働時間対策を推進する。
(7) 高年齢者の安全衛生対策→高年齢者の労働災害防止対策、高年齢者が働きやすい快適な職場づくり、高年齢者の健康確保対策を推進する。
(8) 多様な形態による雇用・就業機会の確保→定年退職後等に、臨時的・短期的又は軽易な就業を希望する高年齢者に対しては、 地域の日常生活に密着した仕事を提供するシルバー人材センター事業の活用を推進する。
(9) 高年齢者の起業等に対する支援→ 高年齢者の能力の有効な発揮を幅広く推進する観点から、高年齢者が起業等により自ら就業機会を創出する場合に対して必要な支援を行う。
(10) 地域における高年齢者の雇用・就業支援 事業主団体と公共職業安定所の協力の下、企業及び高年齢者のニーズに合ったきめ 細かな技能講習や面接会等を一体的に実施、高年齢者の雇用・就業を 支援する。
(11) 雇用管理の改善の研究等→高年齢者の雇用機会の着実な増大、高年齢者の雇用の安定を図り、また、生涯現役 社会の実現に向けた環境整備を進めるため、必要な調査研究を行うとともに、企業に おいて取り組まれている高年齢者の活用に向けた積極的な取組事例を収集、体系化し、 各企業における活用を促進する。また、高年齢者雇用状況報告等に基づき、高年齢者の雇用の状況等の毎年度定期的な把握及び分析に努め、その結果を公表する。さらに、 国際的に高年齢者の雇用に係る情報交換等を推進するとともに、年齢差別禁止など、 高年齢者の雇用促進の観点について、さらに検討を深める。
改正文 (平成二七年九月三〇日厚生労働省告示第四〇七号) 抄
平成二十七年十月一日から適用する。
附 則 (平成三〇年七月六日厚生労働省告示第二六一号) 抄
(適用期日)
1 この告示は、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成三十年法律 第七十一号)附則第一条第一号に掲げる規定の施行の日から適用する。
(施行の日=平成三〇年七月六日)
次回は、「
参考資料3-1労働政策の点検評価に係るスケジュール」からです。